特許第6739505号(P6739505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739505
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】拭取装置及び拭取方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 1/04 20060101AFI20200730BHJP
   B08B 7/04 20060101ALI20200730BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   B08B1/04
   B08B7/04 A
   B08B3/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-227401(P2018-227401)
(22)【出願日】2018年12月4日
(65)【公開番号】特開2020-89821(P2020-89821A)
(43)【公開日】2020年6月11日
【審査請求日】2019年11月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591159228
【氏名又は名称】東和化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(72)【発明者】
【氏名】洞口 勝則
(72)【発明者】
【氏名】洞口 勝也
【審査官】 高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−183190(JP,U)
【文献】 特開2016−140850(JP,A)
【文献】 特開2003−050338(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/141405(WO,A1)
【文献】 特開2015−213847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の拭取部材の巻出ロールと、前記拭取部材を拭取対象物の所定箇所に当接させて所定汚染物を拭取るための拭取ヘッドと、前記拭取部材を移送する駆動ロールと、前記拭取部材の巻取ロールと、を備えた拭取装置であって、
前記巻出ロール、前記駆動ロール及び前記巻取ロールを直線状に配置してあり、
前記直線状の方向に沿う仮想直線を想定し、当該仮想直線に直交する方向を幅方向と定義し、かつ、前記巻出ロール、前記駆動ロール及び前記巻取ロール各々の前記幅方向の中心点をP1、P2、P3と定義したとき、これら中心点P1、P2、P3各々が前記仮想直線上に位置するように、前記巻出ロール、前記駆動ロール及び前記巻取ロールを配置してあり、
前記巻出ロール、前記駆動ロール及び前記巻取ロールを搭載しているロール搭載部と、前記ロール搭載部から外部に張り出しているアーム部と、をさらに備え、前記拭取ヘッドは、前記アーム部の先端に設けてあり、
前記拭取部材は、前記巻出ロール、前記駆動ロール及び前記巻取ロールと前記拭取ヘッドとの間に、懸架してあることを特徴とする拭取装置。
【請求項2】
移動手段が設けてあり、当該移動手段がロボットであることを特徴とする請求項1に記載の拭取装置。
【請求項3】
前記拭取ヘッドは、マルチヘッドであることを特徴とする請求項1または2に記載の拭取装置。
【請求項4】
前記拭取ヘッドは、当該拭取ヘッドの外周面に、弾性部材層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の拭取装置。
【請求項5】
前記巻出ロールと、前記拭取ヘッドとの間に、前記拭取部材に対して、給水、洗浄剤、帯電防止剤の少なくとも一つを噴霧するためのノズルを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の拭取装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の拭取装置を用いて、前記巻出ロール、前記拭取ヘッド、前記駆動ロールと、前記巻取ロールとの間に、懸架してある、前記拭取部材を連続的又は所定時間間隔で断続的に、拭取対象物の所定箇所に当接させて、所定汚染物を拭取ることを特徴とする拭取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拭取装置及び拭取方法に関し、特に、種々の形態の拭取対象物に適用可能な拭取装置及びそれを用いた拭取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業用製品を構成する金属、ガラス、樹脂等の表面における油膜や汚染物を除去するための拭取装置や拭取方法が、各種提案されている。
【0003】
このような拭取装置として、車両用ウインドガラスの周縁面部に付着した油脂等を拭取るための装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、図17(a)に示すように、フレーム101と、保持部103と、クランプ手段105と、圧接ロール107と、処理液供給手段109と、引き出し装置111と、切断装置113と、を備えている。
そして、フレーム101に支持された保持部103は、拭取り布117を保持する部材である。この保持部103は、拭取り布117が巻かれる回転軸103aと、回転軸103aの回転を停止する停止装置103bと、を備えている。
また、クランプ手段105は、拭取り布117の先端部をクランプする部材である。
そして、切断装置113は、引き出し装置111が引き出した拭取り布117を切断する装置である。
【0004】
また、他の拭取装置として、エッジガイドを有するスライドコータのスライド面、エッジ部等を清掃するための装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、図17(b)に示すように、枠体201と、ロール体203と、ブレーキ205と、押し付け搬送ロール207と、巻取手段209と、を備えている。
そして、この拭取装置200は、ロボット等の移動装置211に取り付けられると共に、ブレーキ205によって、ロール体203が停止状態にて、押し付け搬送ロール207によって、拭取部材213が拭取対象物215に押し付けられて、拭取対象物215に対する拭取作業が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−277419号公報(特許請求の範囲、図1、段落14〜17等)
【特許文献2】特開2004−195383号公報(特許請求の範囲、図5、段落46〜51等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された拭取装置の場合、拭取部材の保持部103とクランプ手段105とが、圧接ロール107の両側にワーク面に沿った状態で配置されているため、保持部103とクランプ手段105も、拭取対象物に近接するという問題があった。
従って、より複雑な形状を有する拭取対象物等の、種々の形態の拭取対象物に、迅速かつ適切に適用することができないという問題があった。
その上、拭き取り処理後の拭取り布117を切断するための切断装置113が必須構成であって、拭取装置の構成が大型化したり、複雑化したりすると共に、切断時間を含む、拭き取り処理自体の時間が長くかかるという問題も見られた。
【0007】
また、特許文献2に開示された拭取装置の場合、ロール体203と巻取手段209とが、押し付け搬送ロール207の両側にワーク面に沿った状態で配置されているため、特許文献1と同様に、ロール体203と巻取手段209とが、拭取対象物に近接してしまう問題があった。
すなわち、特許文献2に開示された拭取装置においても、より複雑な形状を有する拭取対象物等の、種々の形態の拭取対象物に、迅速かつ適切に適用することができないという問題があった。
その上、ロール体203と巻取手段209が、拭取装置の内部に収容されているため、拭き取り部材の態様(長さや幅等)に対する制約が過度に大きいという問題が見られた。
【0008】
そこで、本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、巻出ロール、駆動ロール、巻取ロール及び拭取ヘッドを所定の配置関係とし、拭取ヘッドを所定の構造とすることで、種々の形態の拭取対象物に対して適用性が高くなることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明によれば、より複雑な形状を有する拭取対象物であっても、拭取対象物に付着した汚染物を安定して拭取ることができる拭取装置及び拭取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の拭取装置によれば、テープ状の拭取部材の巻出ロールと、拭取部材を拭取対象物の所定箇所に当接させて所定汚染物を拭取るための拭取ヘッドと、拭取部材を移送する駆動ロールと、拭取部材の巻取ロールと、を備えている。
また、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロールを直線状に配置してある。
また、直線状の方向に沿う仮想直線を想定し、仮想直線に直交する方向を幅方向と定義し、かつ、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロール各々の幅方向の中心点をP1、P2、P3と定義したとき、これら中心点P1、P2、P3各々が仮想直線上に位置するように、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロールを配置してあり、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロールを搭載しているロール搭載部と、ロール搭載部から外部に張り出しているアーム部と、をさらに備え、拭取ヘッドは、アーム部の先端に設けてある。
そして、拭取部材を、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロールと、拭取ヘッドとの間に、懸架してあることを特徴とする。
【0010】
このような構成とすることにより、少なくとも、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロールが直線状に配置されるので、これら部材がワークに沿って横並びの状態とならず、拭取対象物に対向することがない。
従って、複雑な形状をもつ種々の形態の拭取対象物に対し、所望の押圧力でもって、拭取ヘッドを的確に当接させることができる。
また、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロールが幅方向に張り出すことをさらに有効に防止できると共に、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロールの配置に関する設計自由度もさらに得られる。
そして、拭取ヘッドは、アーム部の先端に設けられ、一方、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロール等の比較的大きな部材は、拭取ヘッドからアーム部を介在した適正に離れた位置にあるロール搭載部に設けられる。
その結果、巻出しロール、駆動ロール及び巻取ロール等の部材が、拭取対象物へ接触する危険性をより軽減した状態で、拭取ヘッドによって、拭取部材を取対象物に確実に接触させることができる。
【0011】
本発明を構成するにあたり、移動手段を設けてあり、移動手段が、ロボットであることが好ましい。
このような構成とすることにより、拭取装置の制御をロボット側から行うことができ、ひいては、拭取部材を無人でかつ安定に移送できる。
【0014】
本発明を構成するにあたり、拭取ヘッドは、マルチヘッドであることが好ましい。
このように、複数の拭取ヘッドを備えた構成とすることにより、複数の拭取ヘッド間に拭取部材を懸架することができ、ひいては、接触面同士の距離を離すことができ、一度に広範囲の拭取作業をすることができる。
【0015】
本発明を構成するにあたり、拭取ヘッドは、拭取ヘッドの外周面に、弾性部材層を有することが好ましい。
このような構成とすることにより、拭取対象物の表面に追従性を高くでき、ひいては、拭取部材の密着性を高くできる。
【0016】
本発明を構成するにあたり、巻出ロールと、拭取ヘッドとの間に、拭取部材に対して、給水、洗浄剤、帯電防止剤の少なくとも一つを噴霧するためのノズルを備えることが好ましい。
このような構成とすることにより、摺動する動きだけでは落ちにくい汚れであっても、適した洗浄剤等を噴霧しながら拭取ヘッドを接触させることができ、より効果的に拭取作業を行うことができる。
【0017】
本発明の別の態様によれば、本発明の上述したいずれかの拭取装置を用いて、巻出ロール、拭取ヘッド、駆動ロールと、巻取ロールとの間に、懸架してある、拭取部材を連続的又は所定時間間隔で断続的に、拭取対象物の所定箇所に当接させて、所定汚染物を拭取る拭取方法である。
このように実施することにより、小型の拭取対象物、複雑な形状を有する拭取象物の拭取作業を従来に比べて容易かつ確実に、自動で行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第1の実施形態の拭取装置の斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態の拭取装置の側面図である。
図3図3は、第1の実施形態の拭取装置の上面図である。
図4図4は、巻出ロール、駆動ロール、巻取ロール及び拭取ヘッドを直線状に配置するときの許容値の考え方の説明図である。
図5図5(a)は、抱き角度の説明図、図5(b)は、弾性部材層を備えた拭取ヘッドの説明図である。
図6図6は、曲面及び平面を有する拭取ヘッドの例の説明図である。
図7図7は、2以上の接触面と、その間に非接触面とを有する拭取ヘッドの説明図である。
図8図8(a)は、2以上の接触面と、その間に非接触面とを有する拭取ヘッドの第1の具体例であるマルチヘッド型の例の説明図、図8(b)は、同じく第2の具体例である断面が繭玉状のヘッドの説明図である。
図9図9は、マルチヘッド型の拭取ヘッドの他の例の説明図である。
図10図10は、アーム部が伸縮する構造の例の説明図である。
図11図11は、薬液等供給手段を備える例の説明図である。
図12図12(a)は、拭取装置10に付加する保護カバーや、拭取った汚染物等の回収構造例の説明図であり、図12(b)は、拭取装置に付加する補強構造の一例の説明図である。
図13図13は、この発明の拭取装置及び拭取方法の使用例1の説明図である。
図14図14(a)、(b)は、この発明の拭取装置及び拭取方法の使用例2の説明図である。
図15図15は、この発明の拭取装置及び拭取方法の使用例3の説明図である。
図16図16は、この発明の拭取装置及び拭取方法の使用例4の説明図である。
図17図17(a)は、特許文献1に開示された従来の拭取装置の斜視図、図17(b)は、特許文献2に開示された従来の拭取装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、この発明の拭取装置及び拭取方法の実施形態について具体的に説明する。
なお、説明に用いる各図は、この発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。
また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については、同一の符号を付して示し、その説明を省略する場合もある。
また、以下の説明中で述べる形状、寸法、材質等は、この発明の範囲内の好適例にすぎない。
従って、特に理由なく、本発明は、以下の実施形態の記載に限定されるものではない。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の拭取装置10を示した斜視図である。図2は、拭取装置10の側面図であり、図1中のP方向から見た側面図である。図3は、拭取装置10の上面図であって、図1中のQ方向から見た上面図である。
【0021】
1.基本構成
第1の実施形態の拭取装置10は、主構成として、テープ状の拭取部材23の巻出ロール11と、拭取部材23を拭取対象物の所定箇所に当接させて所定汚染物を拭取るための拭取ヘッド13と、拭取部材を移送する駆動ロール15と、拭取部材の巻取ロール17を備えている。
また、この拭取装置10は、さらにロール搭載部19と、アーム部21とを備えており、移動手段としての例えばロボットの作動アーム(図13等参照)に取り付けて使用される装置である。
以下、各構成成分の詳細と相互の関係について説明する。
【0022】
2.巻出ロール
巻出ロール11は、テープ状の拭取部材23の巻出しを行う部材である。
巻出ロール11は、ボビン状のロール部11aと、このボビン状のロール部11aの軸に接続されていて、トルク調整手段(図示せず)を有する第1トルクモータ11bと、を含むことが好ましい。
この理由は、後述する駆動ロールのトルクによらず、巻出しされる拭取部材の張力を所定の値に保つことができ、拭取部材を常に張られた状態とすることができるからである。
【0023】
また、ボビン状のロール部を用いると、テープ状の拭取部材23の蛇行防止が図り易いので好ましい。ボビン状のロール部11aは、軽量素材、例えば樹脂、アルミニウム等で構成するのが良い。ただし、拭取装置の使用環境に応じて材料を選択するのが良い。
この理由は、拭取装置自体の軽量化が図れるので、ロボット等の移動装置への負荷を低減でき、さらには、ロボットの作動アームの動作速度を高め易いからである。
なお、このボビン状のロール部11aは、拭取装置10に対し着脱可能な部材であり、拭取作業によって拭取部材23を使い切った場合に、ボビン状のロール部11aごと、新しいものに交換できる。
また、ボビン状のロール部11aの上面のフランジ11aa(図1参照)を着脱自在の構造としておき、フランジ11aaを外して拭取部材23を着脱できるようにしても良い。
【0024】
また、第1トルクモータ11bは、例えば、トルク調整手段としてのパワーコントローラ(図示せず)を有するトルクモータで構成でき、シーケンサ、コンピュター等の制御手段からこれらのモータに有線又は無線で送られる所定の信号によって駆動することが好ましい。
この理由は、拭取部材を無人でかつ安定に長時間、移送できるからである。
なお、このような制御手段は、この拭取装置に内蔵しても良いし、この拭取装置を取り付ける移動手段、例えばロボット側にも設けても良い。
第1トルクモータ11bの具体例としては、これに限られないが、例えば、オリエンタルモータ製トルクモータTMシリーズ(商品名)等の中から選ぶことができる。
【0025】
3.駆動ロール
駆動ロール15は、拭取部材23を連続的又は所定時間間隔で断続的に移送する部材である。
詳細には、この駆動ロール15は、移送速度を、2〜30mm/秒の範囲内の値とすることが好ましく、断続的に移送される場合の時間間隔を、2〜60秒の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、拭取部材23が過度に汚れて、拭取り不良が発生することを防ぐと共に、拭取部材23が必要以上に更新されることを防ぐことができるからである。
また、この駆動ロール15は、拭取作業時は、拭取部材23を適切に把持して巻取ロール17と協働して拭取部材23を所定の張力状態にし、また、拭取部材23を巻出ロール11から移送する(繰り出す)ときは、所定方向に回転する部材である。
この実施形態の場合の駆動ロール15は、駆動モータを含むことが好ましく、ニップロール15aと、このニップロール15aの一方のロールである第1ロール15aaの軸に接続された直流型のギヤードモータ15bと、を含む部材であることが好ましい。
この理由は、例えば電源等の装置構成が簡易であり、しかも、拭取部材の一定量の繰り出し品質が確保し易い等の利点が得られるからである。
このニップロール15aは、第1トルクモータ11bのトルク以上の力で拭取部材23を把持するロールである。
この把持力は、具体的には、ニップロール15aの他方のロールである第2ロール15abと、この第2ロール15abにテンションをかけているバネ部材15acと、第1ロール15aaと、によって発生させている。
【0026】
また、ギヤードモータ15bは、この駆動ロール15を駆動させたいとき、すなわち、第1ロール15aaを回転させるとき、第1トルクモータ11bのトルク以上の力で拭取部材23を巻取ロール17側に移送するモータである。
第1ロール15aaは、拭取部材23の把持動作や移送動作を安定して行うために、表面に摩擦性に優れる部材を設けておくのが良い。ニップロール15aを構成する第1、第2ロール15aa、15ab及びバネ部材15acは、周知のものから選択する。
また、ギヤードモータ15bは、シーケンサ、コンピュター等の制御手段からこれらのモータに有線又は無線で送られる所定の信号によって駆動することが好ましい。
この理由は、拭取部材を無人でかつ安定に長時間、移送できるからである。
なお、このような制御手段は、この拭取装置に内蔵しても良いし、この拭取装置を取り付ける移動手段、例えばロボット側にも設けても良い。
また、直流型のギヤードモータ15b具体例としては、これに限られないが、例えばオリエンタルモータ製のギヤードモータVGシリーズ(商品名)の中から選ぶことができる。
【0027】
4.巻取ロール
巻取ロール17は、駆動ロール15によって移送される拭取部材23を巻き取る部材である。この実施形態の巻取ロール17は、ボビン状のロール部17aと、第2トルクモータ17bと、を含む部材であることが好ましい。
第2トルクモータ17bは、ボビン状のロール部17aの軸に接続されていて、駆動ロール15から繰り出される拭取部材23を巻取できるトルク以上のトルクを有しかつトルク調整手段(図示せず)を有するトルクモータを備えるものである。
ボビン状のロール部を用いると、テープ状の拭取部材23の蛇行防止が図り易いので好ましい。ボビン状のロール部17aは、軽量素材、例えば樹脂、アルミニウム等で構成するのが良い。ただし、拭取装置の使用環境に応じて材料を選択するのが良い。
この理由は、拭取装置自体の軽量化が図れるので、ロボット等の移動装置への負荷を低減でき、さらには、ロボットの作動アームの動作速度を高め易いからである。
なお、このボビン状のロール部17aは、拭取装置10に対し着脱可能な部材であり、拭取作業に用いた拭取部材23を巻き終えた後は、新たな空のボビン状のロール部17aに交換できる。
また、ボビン状のロール部17aの上面のフランジ17aa(図1参照)を着脱自在の構造としておき、フランジ17aaを外して拭取部材23を着脱できるようにしても良い。
【0028】
また、第2トルクモータ17bは、例えば、トルク調整手段としての例えばパワーコントローラ(図示せず)を有するトルクモータで構成でき、シーケンサ、コンピュター等の制御手段からこれらのモータに有線又は無線で送られる所定の信号によって駆動することが好ましい。
この理由は、拭取部材を無人でかつ安定に長時間、移送できるからである。
なお、このような制御手段は、この拭取装置に内蔵しても良いし、この拭取装置を取り付ける移動手段、例えばロボット側にも設けても良い。
第2トルクモータ17bの具体例としては、これに限られないが、例えば、オリエンタルモータ製トルクモータTMシリーズ(商品名)の中から選ぶことができる。
【0029】
5.ロール搭載部
次に、ロール搭載部19の実施形態について説明する。
ロール搭載部19は、巻出ロール11、駆動ロール15及び巻取ロール17を配置してある部材である。さらに、このロール搭載部19は、拭取部材23の搬送をガイドするためのガイド部材22として、この場合は、柱状のガイド部材22を適所に適正な個数備える。
【0030】
また、ロール搭載部19の材料は、軽量素材、例えば、アルミニウム材料、チタン材料、セラミック材料、又は樹脂材料(ガラス繊維強化樹脂や炭素繊維強化樹脂を含む。)等からなるフレームで構成するのが良い。
これらの材料中、アルミニウム材料は、加工が容易であって、価格が安く、その上、所定強度が得られる等の利点があるので、特に好ましい。
ただし、拭取装置の使用環境に応じて、耐薬品性や耐腐食性に優れる材料、例えば、ステンレス材料を選択することも好ましい。
なお、拭取装置10の全長L0(図3参照)は、例えば、350〜600mmであり、ロール搭載部19の寸法は、長さL1(図3参照)は、250〜500mm、幅W1は、50〜150mmである。
【0031】
次に、ロール搭載部19に設けてある巻出ロール11、駆動ロール15及び巻取ロール17の配置関係について説明する。
この拭取装置10では、ロール搭載部19に、巻出ロール11、駆動ロール15及び巻取ロール17を直線状に配置してある。
すなわち、図4に示したように、巻出ロール11、駆動ロール15及び巻取ロール17各々の幅方向(図4参照)における中心点P1、P2、P3各々と、仮想直線Mとの距離が、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロール各々の幅、すなわち自身の幅Wa、Wb、Wc(図4参照)の半分以下の距離内になるように、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロールを配置することが好ましい。
この理由は、自身の幅の半分を上限として幅方向の広がりに制約をかけておけば、ロール搭載部19が幅方向に広がることによる拭取作業への影響を抑制できるからである。
なお、P1、P2、P3の各々と、仮想直線Mとの距離が、例えば、4分の1以下であることがより好ましく、すべてが仮想直線M上に位置することが最も好ましい。
【0032】
さらに、拭取ヘッド13も、巻出ロール11、駆動ロール15及び巻取ロール17に対し直線状に配置してあることが好ましい。
すなわち、図4に示したように、拭取ヘッド13の、幅方向Wにおける中心点P4と、仮想直線Mとの距離が、拭取ヘッドの幅、すなわち自身の幅Wdの半分以下の距離内になるように、拭取ヘッドを配置することが好ましい。
この理由は、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロールが拭取対象物の拭取作業の邪魔になることを一層防止できるからである。
また、P4と、仮想直線Mとの距離が、4分の1以下であることがより好ましく、仮想直線M上に位置することが最も好ましい。
【0033】
このような配置関係とすることで、ロール搭載部19の幅W1は、必要最小限の寸法となるので、ロール搭載部19が拭取対象物25に接触するおそれを従来に比べ、低減できる。
すなわち、拭取対象物25が種々の形態の小型なものや複雑な形状を有するものでも、ロール搭載部19が拭取対象物25に接触することなく、所望の拭取作業を行える。
従って、種々の形態の拭取対象物に対して適用性の高い拭取装置を実現できる。
【0034】
6.アーム部
次に、アーム部21の構成について説明する。
かかるアーム部21は、ロール搭載部19から外部に張り出している部材である。さらに、拭取部材23が、ロール搭載部19からこのアーム部21を経由して拭取ヘッド13に懸架してある。
さらに、この拭取部材23のアーム部21での移送を安定して行うため、アーム部21には、拭取部材23の一次側経路上、二次側経路上各々に、拭取部材の搬送をガイドする少なくとも1つずつのガイド部材22を設けてある。
【0035】
より具体的には、アーム部21には、拭取部材23の一次側経路上、二次側経路上各々に、3本ずつのガイド部材22を設けてあり、これらガイド部材に拭取部材23を適正に懸架してある。
もちろん、ガイド部材22の本数や配置は、各種用途に応じて、好適な本数とできるが、例えば、4〜50本の範囲とすることが好ましく、6〜20本とすることが好ましい。
これらのガイド部材22は、例えば、柱状又は円柱状部材で構成できる。
【0036】
また、アーム部21の材料は、ロール搭載部19と同様に、軽量素材、例えばアルミニウム、チタン又は樹脂等からなるフレームで構成するのが良い。
アルミニウムは、加工が容易、価格が安い、所定の強度が得られる等の利点があるので、特に好ましい。
ただし、拭取装置の使用環境に応じて耐薬品性に優れる材料、例えばステンレスを選択することも好ましい。
【0037】
また、アーム部21の寸法に関し、通常、幅W2(図3参照)は、10〜40mm、長さL2(図3参照)は、50〜150mmであることが好ましい。
ただし、長さL1は、アーム部21とロール搭載部19との境界付近の、平面視で三角形状の補強部材27(図1参照)を設けた部分も含んだ寸法であることが好ましい。
なお、この補強部材27は、拭取対象物25への影響が実質的に無いように設計してあるので、この補強部材27を寸法L1に含めても問題はない。
また、この拭取装置10の重量は、3〜10Kgである。この拭取装置10が小型かつ軽量な装置であることが理解できる。
その他、アーム部21の長さL2と幅W2との比L2/W2は、通常、1.25〜15の範囲内の値とすることが好ましい。
【0038】
ここで、アーム部21を長尺なものとする場合は、アーム部21の長さL1(図3参照)は、アーム部21の幅W2の2倍以上が良く、さらに好ましくは3倍以上が良い。
この理由は、L1/W2をこのような比としておけば、拭取ヘッド13は、ロール搭載部19から寸法L1だけ離れる配置になるためである。
また、アーム部21自体の幅の影響も軽減でき、ロール搭載部19が拭取対象物25に接触するおそれを従来に比べ、低減できるからである。
すなわち、拭取対象物25が小型なものや複雑な形状を有するものでも、ロール搭載部19が拭取対象物25に接触することなく、所望の拭取作業を行える。
【0039】
そして、このアーム部21の幅や長さ、幅と長さとの比は、拭取装置の用途等に応じて任意に設計できる。
この実施形態の場合は、アーム部21は、ロール搭載部19の幅W1(図3参照)より狭い幅W2(図3参照)を有し、長尺で、かつ、直線状のフレームとしてある。
そして、このアーム部21の先端に、拭取ヘッド13を設けてある。なお、アーム部21は直線状の形状に限られず、設計に応じ変更できる。
例えば、アーム部21はロール搭載部19から直線状に張り出した後、曲がってゆく形状、すなわちL状の形状のアーム部でもよいし、ロール搭載部19から曲率をもった状態で張り出す形状のものでも良い。
【0040】
7.拭取部材
拭取部材は、所定幅(例えば、2〜70mm)及び所定厚さ(例えば、0.1〜20mm)を有するテープ状であって、巻出ロールの形態となって、拭取対象物の所定箇所に当接させた場合に、所定汚染物を吸収して拭取り、さらには、それを吸収した状態で、巻取りロールの形態となる構成であればよい。
従って、拭取部材は、ポリオレフィン系樹脂(オリアクリル系樹脂を含む。)、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等を原料とした不織布が典型的である。
但し、所定汚染物に対する吸収性あるいは拭取性が良好なことから、用途によっては、ポリウレタン系スポンジや、マイクロファイバー等からなるテープ状の拭取部材であっても良い。
【0041】
また、不織布の場合、その製法の違いに起因して多種類存在している。
例えば、樹脂を溶融して紡糸ノズルの周囲から噴射する高温エアにより、繊維を細くしてシート状に集積してなるメルトブローン法、原料樹脂を溶融・紡糸させ得られる連続した長い繊維を直接集積してフリースを形成するスパンボンド法、低融点の熱融着繊維を混合したフリースを熱ロールの間を通して熱圧着する。又は熱風を当て、繊維同士を接着させるサーマルボンド法等のいずれであって良い。
また、フリースにバインダの溶液をスプレーし、乾燥させて嵩高な状態で繊維間を結合するケミカルボンド法、フリースを高速で上下するニードル(針)で繰り返し突き刺し、ニードルに刻まれたバーブという突起により繊維を絡ませるニードルパンチ法、フリースに高圧の水流を柱状に噴射して繊維を絡ませる交絡水流法、短繊維をカードと呼ばれる機械やエアレイと呼ばれる空気流で一定方向又は、ランダムに並べて形成する乾式法等のいずれであっても良い。
【0042】
なお、不織布の場合、僅かな力の付与で過度に伸びると、駆動ロールによって、スムースに移送することが困難となる場合がある一方、全く伸びないとすると、所定汚染物を吸収性が過度に低下する場合がある。
【0043】
従って、一例であるが、厚さ0.1〜20mm、幅2〜70mmにおいて、それぞれJIS L1913:2010に準拠して測定される不織布の伸び率を1〜400%の範囲内の値とすることが好ましく、10〜150%の範囲内の値とすることがより好ましく、20〜100%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0044】
また、同じく一例であるが、JIS L1913:2010に準拠して測定される不織布の破断伸びを1〜50kN/mの範囲内の値とすることが好ましく、2〜30kN/mの範囲内の値とすることがより好ましく、5〜20kN/mの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0045】
8.拭取ヘッド
拭取ヘッド13は、拭取部材23を拭取対象物25の所定箇所に当接させて所定汚染物を拭取るための部材である。拭取ヘッド13は、拭取装置10の本体に回転可能に軸支されるものであり、この実施形態では、アーム部21の先端に設けてある。
この第1の実施形態の拭取装置10の場合、拭取ヘッド13は、ベアリング部材13aと、このベアリング部材13aに接続された柱状部材13bとを含んでいる。
この柱状部材13bは、円柱部材である。この柱状部材13bに拭取部材23は、懸架される。
従って、拭取部材23の拭取部材24対する接触面は、曲面であり、拭取対象物25に対する拭取ヘッド13の接触は線接触の状態になる。
また、柱状部材13bが回転可能であるため、巻取ロール17が動作した際は、拭取部材23は、拭取ヘッド13の部分をスムースに移送される。
【0046】
また、この実施形態の拭取装置10では、拭取部材23の拭取ヘッド13における抱き角度を150度以上、より好ましくは180度以上としてある。
ここで、抱き角度とは、図5(a)に示した角度αのことである。すなわち、拭取部材23が拭取ヘッド13に接している部分の広がり角度である。
図5(a)の角度αの状態は、抱き角度が180度を超えている例である。
かかる抱き角度を大きくすると、拭取部材23における拭取ヘッドの先端部分以外の部分が、ワークに沿って横並びとはならず、むしろ拭取対象物25からロール搭載部19側に垂直に遠ざかることになる。
このため、拭取部材23における拭取ヘッドの先端部分以外の部分が拭取作業を邪魔することがない。
【0047】
なお、図5(b)に斜視図で示したように、柱状部材13bの外周面に弾性部材層13cを設けても良い。このように弾性部材層13cを設けると、拭取ヘッド13の拭取対象物への密着性が高まるので、拭取作業をさらに安定して行える。
【0048】
[第2の実施形態]
次に、図6を参照して、曲面及び平面を有する拭取ヘッドを含む第2の実施形態の拭取装置30について説明する。
図6は、この第2の実施形態の拭取装置30の上面図である。ただし、拭取装置30の拭取ヘッド13xに着目した拡大図も併せて示した図である。
【0049】
第1の実施形態の拭取装置10では、拭取ヘッド13は、円柱状の柱状部材13bを用いたヘッドであり、拭取部材23に曲面で接し、このため、拭取対象物25に対し線接触するヘッドであった。
これに対し、この第2の実施形態の拭取装置30の拭取ヘッド13xは、柱状部材であるものの、柱状部材の長手方向に直交する断面でみたとき、小判状の断面を有する拭取ヘッド13xである。
従って、拭取ヘッド13xの場合は、拭取部材23に曲面で接すると共に平面でも接することができる。
その結果、拭取ヘッド13xの場合は、拭取対象物に接する接触面として、平面13xaを有する拭取ヘッドとなる。拭取対象物の中には、拭取ヘッドが平面で接触した方が良いものもある。
このような要請がある場合に、この第2の実施形態の拭取装置30は好ましい。なお、平面13xaの大きさは、小判状形状の長軸方向の寸法を調整することで、任意に変更できる。
また、この第2の実施形態の拭取ヘッド13の場合、平面で拭取対象物に拭取部材を接触させることの他に、拭取ヘッド13xの曲面部分を用いて拭取対象物に拭取部材を線接触させてももちろん良い。
【0050】
[第3の実施形態]
次に、図7図8(a)及び(b)を参照して、2以上の接触面とその間に非接触面を有する拭取ヘッドを含む第3の実施形態の拭取装置40について説明する。
ここで、図7は、この第3の実施形態の拭取装置40の上面図、図8(a)は、この拭取装置50の特に拭取ヘッド13zに着目した拡大上面図、図8(b)は、この拭取装置50の他の例の拭取ヘッド13yに着目した拡大上面図である。
この第3の実施形態の拭取装置40の、第1、第2の実施形態の拭取装置10、30と相違する点は、拭取ヘッドが、拭取部材に対する接触面として2以上の接触面と、それら面の間に拭取部材と非接触な非接触面と、を有する点である。
【0051】
まず、図7図8(a)の例は、拭取ヘッドを複数個のヘッド、すなわちマルチヘッドで構成した点である。
この図の例では、第1の拭取ヘッド13zaと第2の拭取ヘッド13zbとの2個のヘッドで拭取ヘッド13zを構成してある。
また、第1の拭取ヘッド13za及び第2の拭取ヘッド13zb各々は、例えば、第1の実施形態の拭取装置10における拭取ヘッド13と同様の構成で良い。すなわち、ベアリング部と柱状部材とを含む構成で良い。
拭取ヘッドは小型の方が良いことが多いので、そのような要請の場合は、これら拭取ヘッド13za、13zbの設計にあたり小型化を考慮するのが良い。
【0052】
この拭取ヘッド13zでは、2つの拭取ヘッド13za、13zbの曲面部分に拭取り部材と接触する領域が生じる。
また、2つの拭取ヘッド13za、13zbの間に、2つの拭取ヘッド13za、13zbいずれも拭取部材に接触しない非接触面が生じる。ただし、この非接触面の上方の拭取部材は、拭取対象物に平面で接することができ、拭取作業に用いることができる。
【0053】
また、図8(b)に示した拭取ヘッド13yは、柱状部材であるものの、柱状部材の長手方向に直交する断面でみたとき、繭玉状の断面を有する拭取ヘッド13yである。
従って、拭取ヘッド13yの場合は、一部に凹部13ybをもつ拭取ヘッドになる。
そのため、この拭取ヘッド13yは、拭取部材23に曲面で接すると共に、凹部13ybの辺りに拭取部材23に接触しない非接触面が生じる。
ただし、この非接触面の上方の拭取部材は、拭取対象物に平面で接することができ、拭取作業に用いることができる。
拭取対象物の中には、拭取ヘッドによる直接の力を受けずにソフトに拭取部材を接触させた方が問い場合もある。このような要請に対し、第3の実施形態の拭取装置40は好適である。
なお、拭取装置の使用用途によっては、図9に示したように、マツチヘッド構成の場合、拭取ヘッドが並んだ方向での幅が、拭取装置10の幅とほぼ同程度となったり、それ以上となっても良い。
【0054】
[第4の実施形態]
次に、図10を参照して、伸縮型のアーム部を含む第4の実施形態の拭取装置50について説明する。
なお、図10は、この第4の実施形態の拭取装置50の上面図である。
この第4の実施形態の拭取装置50の、第1〜第3の実施形態の拭取装置10、30、40と相違する点は、アーム部21xである。すなわち、アーム部21xは、長手方向に伸縮するアーム部である。
伸縮構造として、例えば、アーム部21x内に中子的にスライドフレーム21xaを有した構造とし、このスライドフレーム先端に拭取ヘッド13を設けた構造を挙げることができる。
スライドフレームの出具合を調整するために自動調整機構を設けても良いが、簡単には事前に手動で調整するのが良い。その方が、拭取装置の簡略化、軽量化が図れる。
拭取作業を行う際、拭取対象物や装置用途によっては、アーム部21xが比較的短い方が良い場合、反対に、比較的長い方が良い場合等、いろいろ要請が変わることがある。
このような要請がある場合に、アーム部の長さを変えることができるこの第4の実施形態の拭取装置50は好ましい。
【0055】
[第5の実施形態]
次に、図11を参照して、薬液等の供給手段を含む第5の実施形態の拭取装置60について説明する。なお、図11は、この第5の実施形態の拭取装置60の上面図である。
第5の実施形態の拭取装置60は、第1〜第4の実施形態の拭取装置10、30、40、50に加えて、巻出ロール11と、拭取ヘッド13との間に、拭取部材23に対して、給水、洗浄剤、帯電防止剤の少なくとも一つを噴霧するため薬剤等の供給手段61を備えることが好ましい。
この理由は、拭取対象物に適した拭取条件を選択し易いからである。
薬液等の供給手段61とは、巻出ロール11と、拭取ヘッド13との間に、拭取部材23に対して、給水、洗浄剤、帯電防止剤の少なくとも一つを噴霧するための部材である。
薬液等の供給手段61の供給物用タンク、供給用ノズル、供給制御装置は、目的に応じて公知の技術で構成できるので、詳細な説明は省略する。
拭取対象物の中には、拭取作業の前に又は拭取作業中に水や薬剤を供給したり、帯電防止を図る方が良いものもある。このような要請がある場合に、この第5の実施形態の拭取装置60は好ましい。
【0056】
[第6の実施形態]
次に、図12(a)を参照して、保護カバーや染物回収構造を含む第6の実施形態の拭取装置62について説明する。なお、図12(a)は、この第6の実施形態の拭取装置62の側面図である。
第6の実施形態の拭取装置62は、装置の使用環境からの異物や、拭取対象物から出る汚染物から拭取装置を保護するための保護カバー62aを有した装置である。
例えば、薬液を使用する拭取作業環境において、使用前の拭取部材や拭取装置の各部を守るためのものである。
保護カバー62aの材質は、拭取装置の使用条件等を考慮して決めるのが良い。例えば、透明樹脂、着色樹脂、導電性樹脂、例えば、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂、さらには、導電材料を含むアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等を用いることができる。
また、この発明の拭取装置は、汚染物が拭取部材に付着せずにはがれ落ちるような場合を考慮して、拭取作業で拭取った汚染物の回収部材62bを備えても良い。
汚染物の回収部材62bの典型例は、拭取ヘッド近傍に設ける汚染物の回収容器である。
また、汚染物の回収部材62bでは、拭取ヘッドの近傍に、振動機構やバイブレーション機構を設けておいて、振動等によって汚染物、特に、汚染物に含まれる固形物を別途準備した回収容器に回収する等の構造を採用しても良い。
【0057】
[第7の実施形態]
次に、図12(b)を参照して、補強構造を含む第7の実施形態の拭取装置64について説明する。
なお、図12(b)は、この第7の実施形態の拭取装置64の側面図である。
第7の実施形態の拭取装置では、巻出ロール、駆動ロール、巻取ロール、ガイド部材、拭取ヘッドは、それぞれの軸の一方の端部で、ロール搭載部やアーム部に配置してあった。すなわち、片持ち構造であった。
しかし、例えば拭取部材の幅が広く、かつ重いものである場合等は、片持ち構造であると装置の耐久性や拭取部材の安定的な移送に支障を来す場合がある。
これを防止するため、第7の実施形態の拭取装置64では、巻出ロール、駆動ロール、巻取ロール、ガイド部材、拭取ヘッドは、それぞれの軸の他端に補強フレーム64aを設けている。
補強フレームの構造や材質は、拭取装置の使用に応じて任意好適な構造、材質で構成すればよい。なお、補強フレームを設けた拭取装置に保護カバーや汚染物の回収部材を設けてももちろん良い。
【0058】
[第8の実施形態]
次に、第8の実施形態として、図13図16を参照して、この発明の拭取装置及び拭取方法が、種々の形態の拭取対象物に使用できるものであることの理解を深めるべく、これら拭取装置及び拭取方法の使用例を説明する。
【0059】
<使用例1>
図13は、この発明の拭取装置及び拭取方法の使用例1を示した図である。
拭取装置10は、拭取ヘッドとは反対側の端部にて、移動手段としてのロボット70の作動アーム71の先端に取り付けられている。拭取対象物25aは、例えばベルトコンベヤ73によって、次々と拭取装置10が取り付けられたロボット70の付近に送られてくる。ロボット70は、あらかじめティーチングされた動作に従い、拭取装置10の拭取ヘッド13によって拭取対象物25aの所定位置に拭取部材を接触させ、所定の拭取作業を行う。
この使用例1の場合の拭取対象物25aは、例えば、プリント基板の、ICや能動部品を半田付けするためのソルダーペースト塗布領域や、LEDヘッドのLED発光面等々の種々のものである。
また、適した拭取部材としては、既に第1の実施形態の好適例として例示されているように、例えば、ポリプロピレン系材料からなる厚さ0.1〜20mm、幅2〜70mm、長さ1〜50mの不織布を使用することができる。
なお、図13において、75、77で示したロボットは、拭取作業以外の他の作業をしているロボットである。
【0060】
<使用例2>
図14(a)、(b)は、この発明の拭取装置及び拭取方法の使用例2を示した図である。ただし、拭取対象物と拭取装置10の先端付近のみに着目した図であり、ロボットの図示は省略した図である。
この使用例2の場合、特に、車のエンジン周辺部品に付着している異物等の拭取作業の例である。特に(a)図は、エンジンのシリンダヘッド25bに対し、拭取装置10の拭取ヘッド13によって拭取部材23を接触させて、所望の拭取作業を行う例である。
また、(b)図は、エンジンのインジェクションノズル25cに対し、拭取装置10の拭取ヘッド13によって拭取部材を接触させて、所望の拭取作業を行う例である。
また、適した拭取部材としては、例えば、ポリプロピレン系材料からなる厚さ0.1〜20mm、幅2〜70mm、平均直径0.1〜30μm長さ1〜50mのマイクロファイバーを使用することができる。
なお、この種の他の使用例として、例えば、エンジン組み立て作業におけるボルト締め付け部の拭取作業に対し、本発明の拭取装置及び拭取方法を使用することもできる。
【0061】
<使用例3>
図15は、この発明の拭取装置及び拭取方法の使用例3を示した図である。ただし、図10同様に、拭取対象物と拭取装置10の先端付近のみに着目した図であり、ロボットの図示は省略した図である。
この使用例3の場合、拭取対象物は、レトルト容器25dである。具体的には、レトルト容器25dの、フィルム(図示せず)によって封止される縁領域25daを拭取装置10によって拭取作業する例である。
この縁領域25daに対し、拭取装置10の拭取ヘッド13によって拭取部材を接触させて、所望の拭取作業を行う。
また、適した拭取部材としては、例えば、ポリプロピレン系材料からなる厚さ0.1〜20mm、幅2〜70mm、長さ1〜50mの不織布を使用することができる。
なお、必要に応じ、レトルト容器25dの底面とか底面の縁等、他の個所の拭取作業を行っても良い。
【0062】
<使用例4>
図16は、この発明の拭取装置及び拭取方法の使用例4を示した図である。
この使用例4は、図16に示したように、作業者80が拭取作業を行うには危険が伴うような拭取対象物に対し、作業者80の代わりに、本発明の拭取装置10及び拭取方法を適用した例を示したイメージ図である。
このような危険が伴う拭取対象物としては、例えば、直径が数メートルもあるような大型かつ高速度で回転するドラム状部材25e等がある。
目的の拭取作業のために、従来は、回転動作中のドラム状部材25eの下側に作業者80が入り、所定の拭取用具81をドラム状部材25eに接触させて拭取作業を行っていた。
大型かつ高速回転するドラム状部材25eの場合等は、作業者80が万一ドラム状部材25eに接触したり、拭取用具81がドラム状部材25eに弾かれてこの拭取用具81が作業者80に及んだ場合、作業者80が大怪我をしたり、死亡する等の危険がある。
そこで、ドラム状部材25eの下方に本発明の拭取装置10を装着したロボット70を配置する。
そして、ドラム状部材25eに対し、拭取装置10の拭取ヘッド13によって拭取部材を接触させて、所望の拭取作業を行う。
このような危険な拭取作業に対し、本発明の拭取装置及び拭取方法を適用すれば作業者への危険を回避でき、しかも、終日、任意のときに、無人で拭取作業を行えるので、好適である。
また、適した拭取部材としては、例えば、厚さ0.1〜20mm、幅2〜70mm、密度0.1〜100kg/m、長さ0.1〜20mのポリウレタン系スポンジを使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上の説明から明らかなように、本発明の拭取装置及びそれを用いた拭取方法によれば、テープ状の拭取部材の巻出ロールと、拭取部材を拭取対象物の所定箇所に当接させて所定汚染物を拭取るための拭取ヘッドと、拭取部材を移送する駆動ロールと、拭取部材の巻取ロールと、を備えている。
また、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロールを直線状に配置してあり、拭取部材は、巻出ロール、駆動ロール及び巻取ロールと拭取ヘッドとの間に、懸架してあることで、より複雑な形状を有する拭取対象物等の、種々の形態の拭取対象物に適用可能となる。
【0064】
その上、駆動ロールは、巻出ロールから連なる拭取部材を把持するニップロール及び駆動時に巻出ロールから拭取部材を巻取ロール側に移送する駆動モータを含んでいる。さらに、巻取ロールは、駆動モータから移送される拭取部材を巻取できるトルク以上のトルクを有しかつトルク調整手段を有するトルクモータを含む場合、拭取対象物の拭取作業を自動で、安定して行うことができる。
また、拭取ヘッドを複数個のヘッドで構成している場合、接触面同士の距離を離すことができ、一度に広範囲の拭取作業をすることができる。
また、巻出ロールと、駆動ロールと及び巻取ロールを搭載しているロール搭載部と、ロール搭載部から外部に張り出しているアーム部を備えている場合、巻出ロール等が拭取対象物に接触する危険性を軽減することができる。
よって、本発明の拭取装置及びそれを用いた拭取方法であれば、例えば、人が立ち入りにくい危険個所の拭取や、凹凸が大きい複雑な形状をもつ拭取対象物に対して使用できることから、拭取作業の自動化手段として幅広く使用されることが期待される。
【符号の説明】
【0065】
10:第1の実施形態の拭取装置
11:巻出ロール
11a:ボビン状のロール部
11b:第1のトルクモータ
13、13x、13y、13z:拭取ヘッド
13a:ベアリング部材
13b:柱状部材
13c:弾性部材層
13xa、13yb、13yb:平面の接触面
13ya:凹部
13za:第1の拭取ヘッド
13zb:第2の拭取ヘッド
15:駆動ローラ
15a:ニップロール
15aa:第1のロール
15ab:第2のロール
15ac:バネ部材
15b:直流型のギヤードモータ
17:巻取ロール
17a:ボビン状のロール部
17b:第2のトルクモータ
19:ロール搭載部
21:アーム部
W:幅方向
L:張り出し方向
W1:ロール搭載部の幅
L1:ロール搭載部の長さ
W2:アーム部の幅
L2:アーム部の長さ
21、21x:アーム部
22:拭取部材のガイド部材
23:テープ状の拭取部材(不織布から成るテープ)
25:拭取対象物
25a:拭取対象物(電子部品)
25b:拭取対象物(シリンダヘッド)
25c:拭取対象物(インジェクションノズル)
25d:拭取対象物(レトルト容器)
25e:拭取対象物(大型かつ高速回転するドラム状部材)
30:第2の実施形態の拭取装置
40:第3の実施形態の拭取装置
50:第4の実施形態の拭取装置
60:第5の実施形態の拭取装置
62:第6の実施形態の拭取装置
62a:保護カバー
62b:汚染物の回収部材
64:第7の実施形態の拭取装置
64a:補強フレーム
70:移動手段(ロボット)
71:ロボットの作動アーム
73:ベルトコンベヤ
80:作業者
81:拭取用具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17