【実施例】
【0017】
図1に示されるように、2系統対応の車両用ブレーキ液圧制御装置10は、第1マスタシリンダ12と、第1リザーバ13と、常開型電磁弁である第1入口制御弁15と、常閉型電磁弁である第1出口制御弁16と、第1ポンプ17と、第2マスタシリンダ22と、第2リザーバ23と、常開型電磁弁である第2入口制御弁25と、常閉型電磁弁である第2出口制御弁26と、第2ポンプ27と、第1・第2ポンプ17、27を駆動するモータ29と、このモータ29の駆動制御及び前記第1・第2入口制御弁15、25と前記第1・第2出口制御弁16、26の開閉制御をなす制御装置30と、基体40に設けられブレーキ液を流す第1系統のブレーキ液路A1、B1、C1、D1、E1及び第2系統のA2、B2、C2、D2、E2とを備えている。
【0018】
前記第1マスタシリンダ12は、ブレーキレバー11の操作に応じて作動液を加圧し液圧を発生する。
前記第1リザーバ13は、前輪ブレーキキャリパ14側から逃がされた作動液を一時的に貯留する。
前記第1入口弁15及び前記第1出口制御弁16は、第1マスタシリンダ12と前輪ブレーキキャリパ14の間に設けられる組付部品である。
前記第1ポンプ17は、第1リザーバ13に貯留された作動液を吸入して第1マスタシリンダ12側に戻す組付部品である。
前記第2マスタシリンダ22は、ブレーキペダル21の操作に応じて作動液を加圧し液圧を発生する。
前記第2リザーバ23は、後輪ブレーキキャリパ24側から逃がされた作動液を一時的に貯留する。
前記第2入口制御弁25及び前記第2出口制御弁26は、第2マスタシリンダ22と後輪ブレーキキャリパ24の間に設けられる組付部品である。
前記第2ポンプ27は、第2リザーバ23に貯留された作動液を吸入して第2マスタシリンダ22側に戻す組付部品である。
【0019】
第1・第2ポンプ17、27の吸入側に各々吸入弁31が設けられ、吐出側に各々吐出弁32が設けられている。
また、基体40は、第1マスタシリンダ12から延びる液路(ブレーキ配管)が接続される入口ポート12Pと、第2マスタシリンダ22から延びる液路(ブレーキ配管)が接続される入口ポート22Pと、前輪ブレーキキャリパ14へ延びる液路(ブレーキ配管)が接続される出口ポート14Pと、後輪ブレーキキャリパ24へ延びる液路(ブレーキ配管)が接続される出口ポート24Pとを備えている。
【0020】
前記ブレーキ液路A1は、入口ポート12Pから第1入口制御弁15に至る液路であり、前記ブレーキ液路B1は、第1入口制御弁15から出口ポート14Pに至る液路である。
前記ブレーキ液路C1は、ブレーキ液路B1から第1リザーバ13に至る液路であり、前記ブレーキ液路D1は、第1リザーバ13から第1ポンプ17に至る液路である。
前記ブレーキ液路E1は、第1ポンプ17からブレーキ液路A1に至る液路である。
前記ブレーキ液路A2、B2、C2、D2、E2については、説明が重複するため、説明を省略する。
【0021】
次に、車両用ブレーキ液圧制御装置10の動作を説明する。なお、ブレーキレバー11から前輪ブレーキキャリパ14までの第1系統と、ブレーキペダル21から後輪ブレーキキャリパ24までの第2系統とは、動作が同じであるため、第1系統のみを説明する。
【0022】
・ABS非作動状態:前輪がロックする心配がないときは、制御装置30で、第1ポンプ17を停止し、第1入口制御弁15を開き、第1出口制御弁16を閉じる。この状態で、ブレーキレバー11が制動側に操作されると、第1マスタシリンダ12で液圧が高められ、この液圧が第1入口制御弁15を介して前輪ブレーキキャリパ14に伝えられる。
【0023】
・ABS(減圧モード):前輪がロックしそうになると、制御装置30は、第1入口制御弁15を閉じ、第1出口制御弁16を開く。前輪ブレーキキャリパ14内の液圧は、第1出口制御弁16を介して第1リザーバ13へ逃がされる。これで前輪ブレーキキャリパ14のブレーキ液圧が減圧される。
【0024】
・ABS(保持モード):制御装置30は、第1入口制御弁15と第1出口制御弁16を共に閉じる。これによって、前輪ブレーキキャリパ14のブレーキ液圧が一定に保持される。
【0025】
・ABS(増圧モード):ブレーキ液圧を増圧する際は、制御装置30は、第1入口制御弁15を開け、第1出口制御弁16を閉じる。これによって、マスタシリンダ12で発生された液圧が、前輪ブレーキキャリパ14に伝えられる。これで前輪ブレーキキャリパ14のブレーキ液圧が増圧される。
【0026】
図2に示されるように、基体40に、第1入口制御弁としての電磁弁15及び第1出口制御弁としての電磁弁16が取付けられるとともに、第1リザーバ13が内蔵され、ブレーキ液路A1、C1などが設けられ、ブレーキ液路A1とブレーキ液路C1との間に第1ポンプ17が設けられている。
【0027】
電磁弁15及び電磁弁16は、軸方向の長さにおいて約半分程度が、基体40から突出し、これらの突出部分が樹脂製部品36に収納される。以下、樹脂製部品36をハウジング36と読み替える。電磁弁15及び電磁弁16は各々駆動用の電磁コイル33を備えている。
【0028】
ハウジング36は、表側(カバー38側)および裏側(基体40側)に開口部を有し制御基板99を収納する周壁部84を備えている。
ハウジング36内に制御基板99が配置されており、この制御基板99と電磁コイル33が端子91で電気的に接続されている。
【0029】
図2の3c部拡大図を
図3(c)に示す。
図3(a)に示されるように、ハウジング36に備えるカバー38は、カバー38の外周に一方(ハウジング36側)に突出する挿入凸部38aが形成され、この挿入凸部38aに樹脂を溜める溜まり溝38bを備えているとともに、上下に延びる突起38cを備えている。そして、基板収容部85を囲う周壁部84には、カバー38を取付ける取付部36aが形成され、この取付部36aには挿入凸部38aが差し込まれると共に接着剤36bが充填される上部溝36cが形成されている。
【0030】
カバー38は、挿入凸部38aより外側に、ハウジング36側の取付部36aに当たる当接部39を備えている。
【0031】
挿入凸部38aに突起38cを設け、カバー38の取付時に突起38cが上部溝36cの内面に摺接するようにした。カバー38が水平方向に移動しようとすると、突起38cが上部溝36cの内面に当たっているため、水平方向の移動が防止される。結果、カバー38をハウジング36に取り付ける際のがたつきを防ぐことができる。
挿入凸部38aの下端部にテーパー面38fを設けることにより、挿入凸部38aの下端を先尖り形状にする。この形状であれば、挿入凸部38aが、円滑に溝36cに収容されると共に、接着剤36bを円滑に押し分ける。
【0032】
上部溝36cに接着剤36bを置き、カバー38を下げると、上部溝36cに挿入凸部38aが進入する。
図3(b)に示されるように、接着剤36bは挿入凸部38aで押され、一部が周壁部84外や周壁部84内へ向かう。
図3(c)に示されるように、接着剤36bは、溜まり溝38bに流れるため、ハウジング36の外面に溢れることがなくなる。
【0033】
なお、第2溜まり溝36dを、ハウジング36側に設けることで、溜まり溝38b、36dの断面積を拡大することは望ましいことである。
【0034】
次に、変更例を、
図4及び
図5に基づいて説明する。
図4に示されるように、ハウジング36の取付部36aにおいて、上部溝36cに溜まり溝38bを形成しても良い。その他の構成は、
図3と同じであるため、
図3の符号を流用し、詳細な説明は省略する。
図5に示されるように、カバー38側に溜まり溝38bを形成しても良い。その他の構成は、
図3と同じであるため、
図3の符号を流用し、詳細な説明は省略する。
【0035】
このように、溜まり溝38bは、ハウジング36側に設けることや、カバー38側に設けることや、ハウジング36とカバー38とに跨って設けることができる。
すなわち、溜まり溝38bは、ハウジング36の取付部36aに備える上部溝36cに設けることや、カバー38の挿入凸部38aと当接部39の間に設けることができる。
溜まり溝38bは、カバー38の挿入凸部38aと当接部39の間、又は取付部36aの上部溝36cの少なくとも一方に備えられる。
【0036】
図6に示されるように、ハウジング36からカバー38側へ突出部36eが突出形成されている。この突出部36eは、カバー38の挿入凸部38aを収容する上部溝36cが形成されている取付部36aに設けられている。この突出部36eは、カバー38を固定(正確には接着固定する際の仮固定)する。以下、突出部36eを固定部36eと言う。
この固定部36eは、取付部36aからカバー38側へ延びる門型部材である。固定部36eの角穴36fに、カバー38に設けた突起38eが掛かるため固定(仮固定)される。
【0037】
カバー38は、所定ピッチで複数の突起38cを備えており、これらの突起38cが上部溝36cの外側壁面に接するため、カバー38は水平移動や、回転することなく、ハウジング36に取付けられる。
尚、実施例では、突起38cはカバー38の外面に設けたが、突起38cをカバー38の内面に設けてもよい。この場合は、突起38cは上部溝36cの内側壁面に接する。
【0038】
図2の7b部拡大図が
図7(b)で示され、
図7(b)の分解図が
図7(a)に示される。
図7(a)に示されるように、ハウジング36の周壁部84は、基体40に当接するフランジ92を備え、このフランジ92は、周壁部84より外側に張り出しており、基体40側の面に接着剤92aを溜める下部溝92bを有している。そして、下部溝92bの底面92cが粗面92dとされている。
【0039】
接着剤92aが下部溝92bに収容されるようにしつつ、基体40にハウジング36を当てる。
すると、
図7(b)に示されるように、接着剤92aは、アンカー効果により粗面92dに接着され、基体40にハウジング36が強固に接着され、界面剥離を防止できる。
【0040】
また、
図7(b)において、フランジ92の基体40側の面は、下部溝92bで外側面92eと内側面92fとに区分されているが、内側面92fと基体40との間に微小な隙間92gを設けるようにした。
接着剤92aの余剰分が、微小な隙間92gに流入するため、接着剤92aがハウジング36内部へ侵入する心配が無くなる。
【0041】
図面は省略するが、本発明は、1系統対応の車両用ブレーキ液圧制御装置にも適用できる。
【0042】
尚、本発明は、自動二輪車に好適であるが、三輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。