特許第6739563号(P6739563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739563
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0668 20160101AFI20200730BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20200730BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20200730BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20200730BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20200730BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20200730BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20200730BHJP
   H01M 8/2495 20160101ALI20200730BHJP
   C01B 3/50 20060101ALI20200730BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20200730BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20200730BHJP
   H01M 8/14 20060101ALN20200730BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20200730BHJP
【FI】
   H01M8/0668
   H01M8/0438
   H01M8/04858
   H01M8/04746
   H01M8/04537
   H01M8/0662
   H01M8/04 J
   H01M8/2495
   C01B3/50
   C01B3/38
   B01D53/22
   !H01M8/14
   !H01M8/12 101
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-28929(P2019-28929)
(22)【出願日】2019年2月20日
(62)【分割の表示】特願2016-227852(P2016-227852)の分割
【原出願日】2016年11月24日
(65)【公開番号】特開2019-133938(P2019-133938A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2019年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多久 俊平
(72)【発明者】
【氏名】中村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】道幸 立樹
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−184503(JP,A)
【文献】 特開2016−115495(JP,A)
【文献】 特開2016−184504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04−8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池と、
前記第1燃料電池から排出された未反応の前記燃料ガスを含むアノードオフガスから、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する分離膜と、
前記分離膜の下流に配置され、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離された前記アノードオフガスを用いて発電を行う第2燃料電池と、
前記分離膜の透過側に配置され、前記第1燃料電池の発電に用いられる前記燃料ガスとなる原料ガス、前記第1燃料電池の発電に用いられる酸素を含むカソードガス、前記第2燃料電池から排出されたアノードオフガス、前記第1燃料電池から排出され、前記第2燃料電池に供給されるカソードオフガス又は前記第2燃料電池から排出されたカソードオフガスを流通させる流通経路と、
を備え、
前記分離膜の透過係数比α1(PCO2/PH2)が30以上であり、水素が前記分離膜を透過することによるシステムの発電効率低下の影響よりも二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が前記分離膜を透過することによるシステムの発電効率向上効果の影響が大きい燃料電池システム。
【請求項2】
燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池と、
前記第1燃料電池から排出された未反応の前記燃料ガスを含むアノードオフガスから、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する分離膜と、
前記分離膜の下流に配置され、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離された前記アノードオフガスを用いて発電を行う第2燃料電池と、
前記分離膜の透過側に配置され、前記第1燃料電池の発電に用いられる前記燃料ガスとなる原料ガス、前記第1燃料電池の発電に用いられる酸素を含むカソードガス、前記第2燃料電池から排出されたアノードオフガス、前記第1燃料電池から排出され、前記第2燃料電池に供給されるカソードオフガス又は前記第2燃料電池から排出されたカソードオフガスを流通させる流通経路と、
を備え、
前記分離膜の透過係数比α1(PCO2/PH2)が30以上である燃料電池システム。
【請求項3】
燃料ガスを用いて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池から排出された未反応の前記燃料ガスを含むアノードオフガスから、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する分離膜と、
前記分離膜の下流に配置され、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離された前記アノードオフガスを前記燃料電池に供給するオフガス循環経路と、
前記分離膜の透過側に配置され、前記燃料電池の発電に用いられる前記燃料ガスとなる原料ガス、前記燃料電池の発電に用いられる酸素を含むカソードガス、又は前記燃料電池から排出されたカソードオフガスを流通させる流通経路と、
を備え、
前記分離膜の透過係数比α1(PCO2/PH2)が30以上であり、水素が前記分離膜を透過することによるシステムの発電効率低下の影響よりも二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が前記分離膜を透過することによるシステムの発電効率向上効果の影響が大きい燃料電池システム。
【請求項4】
燃料ガスを用いて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池から排出された未反応の前記燃料ガスを含むアノードオフガスから、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する分離膜と、
前記分離膜の下流に配置され、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離された前記アノードオフガスを前記燃料電池に供給するオフガス循環経路と、
前記分離膜の透過側に配置され、前記燃料電池の発電に用いられる前記燃料ガスとなる原料ガス、前記燃料電池の発電に用いられる酸素を含むカソードガス、又は前記燃料電池から排出されたカソードオフガスを流通させる流通経路と、
を備え、
前記分離膜の透過係数比α1(PCO2/PH2)が30以上である燃料電池システム。
【請求項5】
前記原料ガスを改質して前記燃料ガスを生成する改質部及び燃焼反応により前記改質部を加熱する燃焼部を有する改質器をさらに備える請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃焼部から排出された排ガスを流通させる排気経路をさらに備え、
前記流通経路の代わりに前記排気経路が前記分離膜の透過側に配置された請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃焼部から排出された排ガス中の水蒸気を回収する水蒸気回収手段と、
水蒸気回収手段にて回収された水蒸気を前記改質部に供給する水蒸気供給経路と、
をさらに備える請求項5又は請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記原料ガスを改質して前記燃料ガスを生成する際に用いられる水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方を流通する経路をさらに備え、
前記流通経路の代わりに前記経路が前記分離膜の透過側に配置された請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
さらに、前記分離膜の透過係数比β1(PCO2/PCO)及び前記分離膜の透過係数比β2(PH2O/PCO)の少なくとも一方が6以上である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記分離膜の透過係数比α1(PCO2/PH2)及び前記分離膜の透過係数比α2(PH2O/PH2)の少なくとも一方が60以上である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常600℃以上の温度で作動する固体酸化物形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池などの高温作動形燃料電池のシステムでは、高効率化を図るため、高温作動形燃料電池のアノードから排出されるアノード排ガスを再利用することが検討されている。例えば、アノード排ガス中の二酸化炭素又は水蒸気を除去し、そのガスを再利用することで、システム全体の燃料利用率を向上させる技術がいくつか提案されている。また、分離膜を用いて二酸化炭素又は水蒸気をアノード排ガスから除去する手法についてもいくつか提案されている。
【0003】
例えば、第1の燃料電池スタックと、第1の二酸化炭素除去装置と、第2の燃料電池スタックと、を備え、第2の燃料電池スタックに供給される排出ガス中の二酸化炭素を除去する第1の二酸化炭素除去装置としてサブナノセラミック膜フィルターを用いる燃料電池発電システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、第1燃料電池と、水蒸気分離膜と、第2燃料電池と、を備え、水蒸気分離膜により第1燃料電池から排出された未反応の燃料ガスを含むオフガスから、水蒸気を気体の状態で除去し、かつ、オフガスから水蒸気を除去した再生燃料ガスを用いて第2燃料電池にて発電を行う多段式燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、燃料電池と、水蒸気分離膜と、再生燃料ガス経路と、を備え、水蒸気分離膜により、第1燃料電池から排出された未反応の燃料ガスを含むオフガスから、水蒸気を気体の状態で除去し、かつ、再生燃料ガス経路を通じて、オフガスから水蒸気を除去した再生燃料ガスを燃料電池に供給し、発電を行う循環式燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
他にも、分離膜を用いてアノード排ガス中の二酸化炭素又は水蒸気を除去する循環型燃料電池システムが提案されている。例えば、分離膜の透過側に空気を供給して、アノード排ガス中の二酸化炭素又は水蒸気を除去する方式、あるいは、真空ポンプにより分離膜の透過側を減圧して、アノード排ガス中の二酸化炭素又は水蒸気を除去する方式を採用した循環型燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−201266号公報
【特許文献2】特開2016−115495号公報
【特許文献3】特開2016−115496号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0108936号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜4には、アノード排ガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離膜により除去することで、燃料である水素又は一酸化炭素の濃度を高め、システムの発電効率を向上させることが記載されている。しかしながら、一般的な分離膜では、水素を100%透過させないことは困難であり、アノード排ガスに含まれる水素が一部透過してしまう。そのため、水素の透過によって、再利用できる燃料が減少してしまい、システムの発電効率が低下するおそれがあるが、特許文献1〜4ではこの点について何ら考慮されていない。水素が分離膜を透過することによるシステムの発電効率低下の影響を鑑みた上で、分離膜における二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の透過性と水素の透過性との比率(透過係数比)を適切な範囲とすることにより、システム全体の発電効率を向上させることが好ましい。
【0007】
本発明は、分離膜における二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の透過性と水素の透過性との比率を適切な範囲とすることにより、システム全体の発電効率に優れた燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、例えば以下の手段により解決される。
<1> 燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池と、前記第1燃料電池から排出された未反応の前記燃料ガスを含むアノードオフガスから、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する分離膜と、前記分離膜の下流に配置され、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離された前記アノードオフガスを用いて発電を行う第2燃料電池と、前記分離膜の透過側に配置され、前記第1燃料電池の発電に用いられる前記燃料ガスとなる原料ガス、前記第1燃料電池の発電に用いられる酸素を含むカソードガス、前記第2燃料電池から排出されたアノードオフガス、前記第1燃料電池から排出され、前記第2燃料電池に供給されるカソードオフガス又は前記第2燃料電池から排出されたカソードオフガスを流通させる流通経路と、を備え、前記分離膜の透過係数比α1(PCO2/PH2)及び前記分離膜の透過係数比α2(PH2O/PH2)の少なくとも一方が30以上である燃料電池システム。
【0009】
本形態に係る燃料電池システムは、第1燃料電池と第2燃料電池とを備える多段式の燃料電池システムであるため、循環式の燃料電池システムと比較して燃料利用率が向上しており、高い発電効率を得ることができる。
【0010】
また、分離膜により分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、分離膜の透過側に配置された上記いずれかのガスが流通する流通経路内を流通するため、分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、流通経路内を流通する上記いずれかのガスとともに、流通経路内を流通する。したがって、空気等のスイープガスを分離膜の透過側に供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設けることなく、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の分離を促進することができる。よって、製造コストを削減しつつ、システム全体の発電効率を高めることができ、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0011】
ここで、第1燃料電池から排出された未反応の燃料ガスを含むアノードオフガスから、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離膜により分離することで、水素、一酸化炭素等の燃料ガスの濃度を高め、システムの発電効率を向上させることができると考えられる。しかしながら、通常の分離膜では、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方とともにアノードオフガスに含まれる水素が分離されてしまうため、燃料ガスである水素の減少により、システムの発電効率が低下するおそれもある。
【0012】
一方、本形態に係る燃料電池システムでは、透過係数比α1(PCO2/PH2)及び透過係数比α2(PH2O/PH2)の少なくとも一方が30以上である。このため、水素が分離膜を透過することによるシステムの発電効率低下の影響よりも二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離膜を透過することによるシステムの発電効率向上効果の影響が大きくなり、システム全体の発電効率に優れている。
【0013】
<2> 燃料ガスを用いて発電を行う燃料電池と、前記燃料電池から排出された未反応の前記燃料ガスを含むアノードオフガスから、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する分離膜と、前記分離膜の下流に配置され、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離された前記アノードオフガスを前記燃料電池に供給するオフガス循環経路と、前記分離膜の透過側に配置され、前記燃料電池の発電に用いられる前記燃料ガスとなる原料ガス、前記燃料電池の発電に用いられる酸素を含むカソードガス、又は前記燃料電池から排出されたカソードオフガスを流通させる流通経路と、を備え、前記分離膜の透過係数比α1(PCO2/PH2)及び前記分離膜の透過係数比α2(PH2O/PH2)の少なくとも一方が30以上である燃料電池システム。
【0014】
本形態に係る燃料電池システムは、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離されたアノードオフガスを燃料電池に供給する循環式の燃料電池システムであり、このようなシステムであっても、燃料利用率が向上し、高い発電効率を得ることができる。また、本形態に係る燃料電池システムは、前述の燃料電池システムと同様、空気等のスイープガスを分離膜の透過側に供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設けることなく、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の分離を促進することができる。よって、製造コストを削減しつつ、システム全体の発電効率を高めることができ、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0015】
さらに、本形態に係る燃料電池システムでは、透過係数比α1(PCO2/PH2)及び透過係数比α2(PH2O/PH2)の少なくとも一方が30以上である。このため、水素が分離膜を透過することによるシステムの発電効率低下の影響よりも二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離膜を透過することによるシステムの発電効率向上効果の影響が大きくなり、システム全体の発電効率に優れている。
【0016】
<3> 前記原料ガスを改質して前記燃料ガスを生成する改質部及び燃焼反応により前記改質部を加熱する燃焼部を有する改質器をさらに備える<1>又は<2>に記載の燃料電池システム。
【0017】
本形態に係る燃料電池システムは、原料ガスを改質して燃料ガスを生成する改質器をさらに備えており、第2燃料電池又は燃料電池は、改質器にて生成された燃料ガスを用いて発電を行う。
【0018】
<4> 前記燃焼部から排出された排ガスを流通させる排気経路をさらに備え、前記流通経路の代わりに前記排気経路が前記分離膜の透過側に配置された<3>に記載の燃料電池システム。
【0019】
本形態に係る燃料電池システムは、流通経路の代わりに排気経路が分離膜の透過側に配置されており、分離膜により分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、排気経路内を流通する排ガスとともに排気経路内を流通する。したがって、空気等のスイープガスを分離膜の透過側に供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設けることなく、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の分離を促進することができる。よって、製造コストを削減しつつ、システム全体の発電効率を高めることができ、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0020】
<5> 前記燃焼部から排出された排ガス中の水蒸気を回収する水蒸気回収手段と、水蒸気回収手段にて回収された水蒸気を前記改質部に供給する水蒸気供給経路と、をさらに備える<3>又は<4>に記載の燃料電池システム。
【0021】
本形態に係る燃料電池システムは、排ガス中に含まれる水蒸気を回収する水蒸気回収手段、例えば、水蒸気を凝縮させて回収する凝縮器を備えており、水蒸気回収手段にて回収された水蒸気が改質部に供給されて原料ガスの水蒸気改質に用いられる。そのため、外部から水蒸気又は改質水の供給が不要となる水自立の成立、あるいは、外部からの水蒸気又は改質水の供給量の削減が可能である。
【0022】
<6> 前記原料ガスを改質して前記燃料ガスを生成する際に用いられる水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方を流通する経路をさらに備え、前記流通経路の代わりに前記経路が前記分離膜の透過側に配置された<1>〜<3>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【0023】
本形態に係る燃料電池システムは、流通経路の代わりに水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方を流通する経路が分離膜の透過側に配置されており、分離膜により分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、経路内を流通するガスとともに原料ガスの改質に用いられる。したがって、空気等のスイープガスを分離膜の透過側に供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設けることなく、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の分離を促進することができる。よって、製造コストを削減しつつ、システム全体の発電効率を高めることができ、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0024】
<7> さらに、前記分離膜の透過係数比β1(PCO2/PCO)及び前記分離膜の透過係数比β2(PH2O/PCO)の少なくとも一方が6以上である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【0025】
本形態に係る燃料電池システムでは、透過係数比β1(PCO2/PCO)及び透過係数比β2(PH2O/PCO)の少なくとも一方が6以上である。このため、一酸化炭素が分離膜を透過することによるシステムの発電効率低下の影響よりも二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離膜を透過することによるシステムの発電効率向上効果の影響が大きくなり、システム全体の発電効率に優れている。
【0026】
<8> 前記分離膜の透過係数比α1(PCO2/PH2)及び前記分離膜の透過係数比α2(PH2O/PH2)の少なくとも一方が60以上である<1>〜<7>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【0027】
本形態に係る燃料電池システムでは、水素が分離膜を透過することによるシステムの発電効率低下の影響よりも二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離膜を透過することによるシステムの発電効率向上効果の影響がより大きくなり、システム全体の発電効率により優れている。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、分離膜における二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の透過性と水素の透過性との比率を適切な範囲とすることにより、システム全体の発電効率に優れた燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図2】第2実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図3】第3実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図4】第4実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図5】第5実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図6】第6実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図7】第7実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図8】第8実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図9】第9実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図10】第10実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図11】透過係数比α1とシステム効率との関係を示すグラフである。
図12】透過係数比α2とシステム効率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0031】
[第1実施形態]
以下、本発明の燃料電池システムの一実施形態について図1を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。第1実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池11と、第1燃料電池11から排出された未反応の燃料ガスを含むアノードオフガスから、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する分離膜16と、分離膜16の下流に配置され、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離されたアノードオフガスを用いて発電を行う第2燃料電池12と、分離膜16の透過側16Bに配置され、第2燃料電池12から排出されたカソードオフガスを流通させる空気供給経路44(流通経路)と、を備えるシステムである。さらに、本実施形態に係る燃料電池システム10では、分離膜16の透過係数比α1(PCO2/PH2)及び分離膜16の透過係数比α2(PH2O/PH2)の少なくとも一方が30以上である。
さらに、本実施形態に係る燃料電池システム10は、原料ガスを改質して燃料ガスを生成する改質部19及び燃焼反応により改質部19を加熱する燃焼部18を有する改質器14を備えていてもよい。
【0032】
本実施形態に係る燃料電池システム10は、第1燃料電池11と第2燃料電池12とを備える多段式の燃料電池システムである。循環式の燃料電池システムでは、循環系内での二酸化炭素濃度の増加を抑制するため、アノードから排出されるアノードオフガスを循環系外に一部排出する必要があるが、そのときに未反応の燃料ガスも循環系外に一部排出されてしまうため、燃料利用率を高めることに限界がある。一方、多段式の燃料電池システムでは、前段の燃料電池のアノードから排出されるアノードオフガスに含まれる燃料ガス(分離膜16を透過した燃料ガスを除く)が、後段の燃料電池のアノードに全て供給される。そのため、多段式の燃料電池システムは、循環式の燃料電池システムと比較して燃料利用率が向上しており、高い発電効率を得ることができる。
【0033】
また、分離膜16により分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、分離膜16の透過側16Bに配置されたカソードオフガスが流通する空気供給経路44内を流通するため、分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、空気供給経路44内を流通するカソードオフガスとともに、空気供給経路44内を流通する。したがって、空気等のスイープガスを分離膜16の透過側16Bに供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設けることなく、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の分離を促進することができる。よって、燃料電池システム10では、製造コストを削減しつつ、システム全体の発電効率を高めることができ、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0034】
ここで、第1燃料電池11から排出された未反応の燃料ガスを含むアノードオフガスから、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離膜16により分離することで、水素、一酸化炭素等の燃料ガスの濃度を高め、システムの発電効率を向上させることができると考えられる。しかしながら、通常の分離膜では、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方とともにアノードオフガスに含まれる水素が分離されてしまうため、燃料ガスである水素の減少により、システムの発電効率が低下するおそれもある。
【0035】
一方、本実施形態に係る燃料電池システム10では、透過係数比α1(PCO2/PH2)及び透過係数比α2(PH2O/PH2)の少なくとも一方が30以上である。このため、水素が分離膜16を透過することによるシステムの発電効率低下の影響よりも二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離膜16を透過することによるシステムの発電効率向上効果の影響が大きくなり、システム全体の発電効率に優れている。
【0036】
以下、本実施形態に係る燃料電池システム10にて、分離膜16の透過側16Bにカソードオフガスが流通する空気供給経路44を設けたことにより、分離膜16の透過側16Bに第1燃料電池11のカソードに供給される空気(カソードガス)を流通する空気供給経路44を設けた場合よりも、発電効率に優れ、かつ分離膜の耐久性が好適に維持されていることについて説明する。
【0037】
分離膜16の透過側16Bに第1燃料電池11のカソードに供給される空気を流通する空気供給経路44を設けた構成では、第1燃料電池11のカソードに供給されるガスに、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が含まれてしまい、カソード側の酸素分圧が低下し、その結果、第1燃料電池11の起電力が低下してしまうおそれがある。
【0038】
また、分離膜16により第1燃料電池11のアノードから排出されるオフガスから二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する場合、アノードオフガス中に含まれる水素及び一酸化炭素も微量に分離されうる。水素及び一酸化炭素は、酸素との反応性が高いため、分離膜16の透過側16Bに分離された水素及び一酸化炭素が、透過側16Bを流通する酸素と反応することで、局所的な分離膜16の温度上昇が発生しやすく、分離膜16の耐久性が低下するおそれがある。そのため、分離膜16の耐久性を好適に維持するため、酸素比率がより低いガスを分離膜16の透過側16Bに供給することが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る燃料電池システム10では、空気よりも酸素比率が小さいカソードオフガスを分離膜16の透過側16Bに供給しているため、酸素と分離膜16を透過しうる水素又は一酸化炭素との反応が生じにくく、局所的な分離膜16の温度上昇が抑制されており、分離膜16の耐久性を好適に維持することができる。
【0040】
さらに、燃料電池システム10の第2燃料電池12から排出されたカソードオフガス中に含まれる二酸化炭素及び水蒸気の濃度は、例えば、燃焼部18から排出される排ガスと比較して小さい。そのため、燃料電池システム10は、排ガス(二酸化炭素及び水蒸気を含むガス)を分離膜16の透過側16Bに供給する後述の第4実施形態に係る燃料電池システム40よりも、分離膜16における供給側16Aと透過側16Bとの水蒸気分圧差及び二酸化炭素分圧差が大きくなっており、水蒸気及び二酸化炭素の分離が促進されている。よって、燃料電池システム10は、発電効率により優れる。
【0041】
以下、本実施形態に係る燃料電池システム10の各構成について説明する。
【0042】
(原料ガス供給経路)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、原料ガスを改質器14に供給する原料ガス供給経路24を備えており、原料ガス供給経路24は、原料ガスを流通させるためのブロワ25が設置されている。
【0043】
原料ガス供給経路24内を流通する原料ガスとしては、改質可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料が挙げられる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、特にメタンが好ましい。なお、炭化水素燃料としては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよく、上述した低級炭化水素ガスを天然ガス、都市ガス、LPガス等のガスと混合したガスであってもよい。
【0044】
原料ガス供給経路24は、後述する水蒸気供給経路37と接続しており、水蒸気供給経路37内を流通する水蒸気が原料ガス供給経路24に供給される。そして、水蒸気供給経路37より供給された水蒸気は、原料ガスとともに改質器14に供給される。なお、原料ガス供給経路24は、経路内での水蒸気の凝縮を防ぐ観点から、水蒸気供給経路37と接続されずに水蒸気が水蒸気供給経路37を通じて改質器14に直接供給される構成であってもよい。
【0045】
(改質器)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、原料ガスを水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器14を備えている。改質器14は、例えば、バーナ又は燃焼触媒を配置した燃焼部18と、改質用触媒を備える改質部19とにより構成される。
【0046】
改質部19は、上流側にて原料ガス供給経路24と接続しており、下流側にて燃料ガス供給経路42と接続している。そのため、原料ガス供給経路24を通じてメタンなどの原料ガスが改質部19に供給され、改質部19にて原料ガスを水蒸気改質した後に、生成された燃料ガスが燃料ガス供給経路42を通じて第1燃料電池11に供給される。
【0047】
燃焼部18は、上流側にて空気供給経路44及びオフガス経路46と接続しており、下流側にて排気経路48と接続している。燃焼部18は、第2燃料電池12のカソード側から排出され、空気供給経路44を通じて供給された未反応の酸素を含むガス(カソードオフガス)と、オフガス経路46を通じて供給されたアノードオフガスとの混合ガスを燃焼させ、改質部19内の改質用触媒を加熱する。燃焼部18からの排ガスは、排気経路48内を流通する。
【0048】
改質部19で起こる水蒸気改質は大きな吸熱を伴うので、反応の進行のためには外部から熱の供給が必要であり、そのため、燃焼部18で発生する燃焼熱により改質部19を加熱することが好ましい。あるいは、燃焼部18を設置せずに各燃料電池から放出される熱を用いて改質部19を加熱してもよい。
【0049】
原料ガスとしてC(n、mはともに正の実数)で表される炭化水素ガスを水蒸気改質させた場合、改質部19にて、以下の式(a)の反応により一酸化炭素及び水素が生成される。
+nHO→nCO+[(m/2)+n]H・・・・(a)
【0050】
また、原料ガスの一例であるメタンを水蒸気改質させた場合、改質部19にて、以下の式(b)の反応により一酸化炭素及び水素が生成される。
CH+HO→CO+3H・・・・(b)
【0051】
改質部19内に設置される改質用触媒としては、水蒸気改質反応の触媒となるものであれば特に限定されないが、Ni,Rh,Ru,Ir,Pd,Pt,Re,Co,Fe及びMoの少なくとも一つを触媒金属として含む水蒸気改質用触媒が好ましい。
【0052】
改質器14の改質部19に供給される単位時間当たりの水蒸気の分子数Sと、改質器14の改質部19に供給される単位時間当たりの原料ガスの炭素原子数Cとの比であるスチームカーボン比S/Cは、1.5〜3.5であることが好ましく、2.0〜3.0であることがより好ましく、2.0〜2.5であることがさらに好ましい。スチームカーボン比S/Cがこの範囲にあることにより、原料ガスが効率よく水蒸気改質され、水素及び一酸化炭素を含む燃料ガスが生成される。さらに、燃料電池システム10内での炭素析出を抑制することができ、燃料電池システム10の信頼性を高めることができる。
【0053】
また、燃焼部18は、水蒸気改質を効率よく行う観点から、改質部19を、600℃〜800℃に加熱することが好ましく、600℃〜700℃に加熱することがより好ましい。
【0054】
本発明に係る燃料電池システム(特に、高温型の燃料電池を備える燃料電池システム)では、改質器が第1燃料電池の外部に取り付けられている必要はなく、第1燃料電池に原料ガス及び水蒸気を直接供給し、第1燃料電池の内部で水蒸気改質(内部改質)を行い、生成された燃料ガスを第1燃料電池での発電に用いる構成であってもよい。特に第1燃料電池が高温型の燃料電池である場合、内部での反応温度は600℃〜800℃と高温であるため、第1燃料電池内で水蒸気改質を行うことが可能である。
【0055】
排気経路48内を流通する排ガスは、気化器の役割を有する熱交換器31にて、改質水供給経路33内を流通する改質水と熱交換を行う。これにより、排気経路48内を流通する排ガスは冷却された後に水タンク32(水蒸気回収手段、例えば、凝縮器)に供給され、改質水供給経路33内を流通する改質水は気化された後に水蒸気供給経路37を通じて原料ガス供給経路24に供給される。
【0056】
水タンク32は、排気経路48内を流通する排ガス中に含まれる水蒸気を凝縮して得られた水を貯留する容器である。水タンク32では、水蒸気以外の排ガスは外部に排出され、所定量以上の水が貯留された際には、例えばオーバーフローによりドレン排水される。
【0057】
水タンク32は、改質水供給経路33と接続しており、改質水供給経路33には、改質水ポンプ34が設けられている。改質水ポンプ34により、水タンク32に貯留された水は改質水として、改質水供給経路33を通じて熱交換器31に供給される。
【0058】
なお、排気経路48内を流通する排ガスから水蒸気を分離する構成としては、水タンク32に限定されず、例えば、分離膜により水蒸気と、水蒸気以外のガスとを分離してもよく、吸着剤に水蒸気以外のガスを吸着させて、水蒸気改質用の水蒸気を分離してもよい。
【0059】
また、排気経路48内を流通する排ガスと、改質水供給経路33内を流通する改質水との間で熱交換を行う熱交換器31の代わりに、改質部19、第1燃料電池11、第2燃料電池12の内少なくとも一つより放出される熱を利用して、改質水を気化する気化器を設けてもよい。
【0060】
空気供給経路44は、空気などの酸素を含むガス(カソードガス)及び未反応の酸素を含むガス(カソードオフガス)が流通する経路であり、空気供給経路44には熱交換器22が設置されており、第1燃料電池11の上流側の空気供給経路44内を流通するカソードガスと、第2燃料電池12の下流側の空気供給経路44内を流通するカソードオフガスと、の間で熱交換を行う。これにより、第2燃料電池12の下流側の空気供給経路44内を流通するカソードオフガスは分離膜16により二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する際に好ましい温度まで冷却され、第1燃料電池11の上流側の空気供給経路44内を流通する空気は、第1燃料電池11の作動温度に適した温度に加熱された後に第1燃料電池11のカソードに供給される。
【0061】
(第1燃料電池)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料ガス供給経路42を通じて改質器14から供給された燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池11を備えている。第1燃料電池11としては、例えば、空気極(カソード)、電解質及び燃料極(アノード)を備える燃料電池セルであってもよく、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよい。また、第1燃料電池としては、600℃〜800℃程度で作動する高温型の燃料電池、例えば、700℃〜800℃程度で作動する固体酸化物形燃料電池、600℃〜700℃程度で作動する溶融炭酸塩形燃料電池が挙げられる。
【0062】
第1燃料電池11が固体酸化物形燃料電池の場合、第1燃料電池11のカソード(図示せず)には、空気供給経路44を通じて空気が供給される。空気がカソードに供給されることにより、以下の式(c)に示す反応が起こり、その際、酸素イオンが固体酸化物電解質(図示せず)の内部を移動する。
+4e→2O2−・・・・(c)
【0063】
第1燃料電池11が固体酸化物形燃料電池の場合、第1燃料電池11のアノード(図示せず)には、燃料ガス供給経路42を通じて水素及び一酸化炭素を含む燃料ガスが供給される。固体酸化物電解質の内部を移動する酸素イオンからアノードと固体酸化物電解質との界面にて水素及び一酸化炭素が電子を受け取ることにより、以下の式(d)、式(e)に示す反応が起こる。
+O2−→HO+2e・・・・(d)
2CO+2O2−→2CO+4e・・・・(e)
【0064】
第1燃料電池11が溶融炭酸塩形燃料電池の場合、第1燃料電池11のカソード(図示せず)には、空気供給経路44を通じて酸素及び二酸化炭素を含むガスが供給される。酸素及び二酸化炭素を含むガスがカソードに供給されることにより、以下の式(f)に示す反応が起こり、その際、炭酸イオンが電解質(図示せず)の内部を移動する。
+2CO+4e→2CO2−・・・・(f)
【0065】
第1燃料電池11が溶融炭酸塩形燃料電池の場合、第1燃料電池11のアノード(図示せず)には、燃料ガス供給経路42を通じて水素を含む燃料ガスが供給される。電解質の内部を移動する炭酸イオンからアノードと電解質との界面にて水素が電子を受け取ることにより、以下の式(g)に示す反応が起こる。
+CO2−→HO+CO+2e・・・・(g)
【0066】
第1燃料電池11が溶融炭酸塩形燃料電池の場合、発生した水蒸気と、燃料ガス供給経路42を通じて供給された一酸化炭素と、が反応して以下の式(h)に示す反応が起こり、水素及び二酸化炭素が発生する。そして、発生した水素は、前述の式(g)の反応に消費される。
CO+HO→H+CO・・・・(h)
【0067】
上記式(d)、式(e)、式(g)及び式(h)に示すように、第1燃料電池11での燃料ガスの電気化学的な反応により、固体酸化物形燃料電池及び溶融炭酸塩形燃料電池では主に水蒸気及び二酸化炭素が生成される。また、アノードで生成された電子は、外部回路を通じてカソードに移動する。このようにして電子がアノードからカソードに移動することにより、第1燃料電池11にて発電が行われる。
【0068】
カソードから排出されたカソードオフガスは、下流側の空気供給経路44を通じて、第2燃料電池12のカソード(図示せず)に供給される。
【0069】
一方、アノードから排出された未反応の燃料ガスを含むアノードオフガスは、オフガス経路52を通じて分離膜16の供給側16Aへ供給される。ここで、未反応の燃料ガスを含むアノードオフガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気などを含む混合ガスである。
【0070】
オフガス経路52及びオフガス経路54には熱交換器21が設置されており、熱交換器21により、オフガス経路52内を流通するアノードオフガスと、オフガス経路54内を流通する二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離されたアノードオフガスと、の間で熱交換を行う。これにより、オフガス経路52内を流通するアノードオフガスは、分離膜16により二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する際に好ましい温度まで冷却され、オフガス経路54内を流通する二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離されたアノードオフガスは、第2燃料電池12の作動温度に適した温度に加熱される。そのため、システム全体の発電効率及び熱効率がより向上する。
【0071】
(分離膜)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、第1燃料電池11から排出された未反応の燃料ガスを含むアノードオフガスから、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する分離膜16を備えている。分離膜16は、透過係数比α1(PCO2/PH2)及び透過係数比α2(PH2O/PH2)の少なくとも一方が30以上を満たす膜である。
【0072】
オフガス経路52内を流通するアノードオフガスは、分離膜16の供給側16Aに供給され、アノードオフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、供給側16Aから透過側16Bへ矢印A方向に分離膜16を通過する。二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離した後のアノードオフガスは、供給側16Aからオフガス経路54内を流通し、第2燃料電池12へ供給される。一方、分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、透過側16Bを流れる第2燃料電池12から排出されたカソードオフガスと混合され、透過側16Bから空気供給経路44内を流通し、改質器14の燃焼部18へ供給される。そのため、第2燃料電池12から排出されたカソードオフガスは燃焼部18での燃焼反応に利用され、燃焼部18に酸素を別途供給する必要が無い。
【0073】
さらに、カソードオフガスを流通させるための空気供給経路44を分離膜16の透過側に設けて、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離膜16の透過側に透過させている。そのため、酸素を分離膜16の透過側に供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設ける必要は無く、システムが簡略化されている。
【0074】
さらに、分離膜16を透過した二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方はカソードオフガスとともに空気供給経路44内を流通するため、分離膜16の透過側16Bの水蒸気分圧及び二酸化炭素分圧は低くなり、供給側16Aと透過側16Bとの水蒸気分圧差及び二酸化炭素分圧差を大きくすることができる。そのため、より多くの水蒸気及び二酸化炭素を透過側16Bへ移動させることができ、水蒸気及び二酸化炭素の分離が促進される。
【0075】
したがって、燃料電池システム10では、システムの簡略化とともに二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の分離が促進されている。その結果、第2燃料電池12に供給されるアノードオフガス中の水蒸気濃度及び二酸化炭素濃度の少なくとも一方をより小さくすることができ、燃料電池システム10の発電効率をより高めることができる。
【0076】
さらに、分離膜16は、透過係数比α1(PCO2/PH2)及び透過係数比α2(PH2O/PH2)の少なくとも一方が30以上であるため、水素が分離膜16を透過することによるシステムの発電効率低下の影響よりも二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離膜16を透過することによるシステムの発電効率向上効果の影響が大きくなり、システム全体の発電効率に優れている。
【0077】
分離膜16は、システム全体の発電効率により優れている点から、透過係数比α1(PCO2/PH2)及び透過係数比α2(PH2O/PH2)の少なくとも一方が60以上であることが好ましく、透過係数比α1(PCO2/PH2)及び透過係数比α2(PH2O/PH2)の少なくとも一方が120以上であることがより好ましい。なお、分離膜16における透過係数比α1(PCO2/PH2)及び透過係数比α2(PH2O/PH2)の上限値は特に限定されない。
【0078】
さらに、分離膜16は、透過係数比β1(PCO2/PCO)及び透過係数比β2(PH2O/PCO)の少なくとも一方が、6以上であってもよく、好ましくは12以上であってもよく、より好ましくは24以上であってもよい。これにより、一酸化炭素が分離膜を透過することによるシステムの発電効率低下の影響よりも二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離膜を透過することによるシステムの発電効率向上効果の影響が大きくなり、システム全体の発電効率に優れている。なお、分離膜16における透過係数比β1(PCO2/PCO)及び透過係数比β2(PH2O/PCO)の上限値は特に限定されない。
【0079】
なお、透過係数の単位は、barrer(バーラー)であり、1barrer=1×10−10cm(標準状態)・cm・cm−2・s−1・cmHg−1を表す。また、透過係数は、JIS K7126−1:2006「プラスチック−フィルム及びシートのガス透過度試験方法」の第1部に記載の差圧法に準拠して測定された値である。
【0080】
分離膜は、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を透過し、かつ透過係数比α1(PCO2/PH2)及び透過係数比α2(PH2O/PH2)の少なくとも一方が30以上である膜であれば特に限定されず、例えば、有機高分子膜、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜、液体膜などが挙げられる。また、分離膜は、ガラス状高分子膜、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜、アルミナ膜、シリカ膜、炭素膜、ゼオライト膜、セラミック膜、アミン水溶液膜又はイオン液体膜であることがより好ましい。
【0081】
分離膜としては、例えば、ガラス状高分子膜、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜などの有機高分子膜が挙げられる。有機高分子膜の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリピロール、ポリフェニレンオキシド、ポリアニリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール等の各種有機材料が挙げられる。また、有機高分子膜は、1種の有機材料から構成される膜であってもよく、2種以上の有機材料から構成される膜であってもよい。
【0082】
また分離膜としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体、ポリエチレングリコールなどの吸水性を有する有機高分子と、二酸化炭素と親和性を有し、かつ水溶性を示す二酸化炭素キャリアとを含む有機高分子膜であってもよい。
【0083】
二酸化炭素キャリアとしては、無機材料及び有機材料が用いられ、例えば、無機材料としては、アルカリ金属塩(好ましくはアルカリ金属炭酸塩)、アンモニア、アンモニウム塩などが挙げられ、有機材料としては、例えば、アミン、アミン塩、ポリアミン、アミノ酸などが挙げられる。なお、二酸化炭素キャリアは、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜、液体膜等に含まれていてもよい。
【0084】
分離膜としては、例えば、アルミナ膜、シリカ膜、炭素膜、ゼオライト膜、セラミック膜などの無機材料膜が挙げられ、無機材料膜としては、中でもゼオライト膜が好ましい。ゼオライトとしては、例えば、A型、Y型、T型、ZSM−5型、ZSM−35型、モルデナイト系などが挙げられる。また、無機材料膜は、1種の無機材料から構成される膜であってもよく、2種以上の無機材料から構成される膜であってもよい。
【0085】
分離膜は、有機高分子−無機材料複合膜であってもよい。有機高分子−無機材料複合膜としては、有機材料及び無機材料から構成される膜であれば特に限定されないが、例えば、上述した有機材料から選択される少なくとも1種の有機材料及び上述した無機材料から選択される少なくとも1種の無機材料から構成される複合膜であることが好ましい。
【0086】
分離膜としては、例えば、アミン水溶液、イオン液体などの液体膜が挙げられる。これら液体膜は、前述の有機高分子膜、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜に、アミン水溶液又はイオン液体を含浸させたものであってもよい。
【0087】
分離膜として、アミン水溶液膜を用いた場合、アノードオフガス中の二酸化炭素をアミン水溶液膜に化学的に吸着させた後、加熱することで二酸化炭素が分離され、アミン水溶液膜の透過側に二酸化炭素が移動する。アミン水溶液としては、モノエタノールアミンなどのアミノアルコールなどが挙げられる。
【0088】
分離膜として、イオン液体膜を用いた場合、アノードオフガス中の二酸化炭素がイオン液体膜に吸着し、吸着された二酸化炭素をイオン液体膜から分離することで、イオン液体膜の透過側に二酸化炭素が移動する。ここで、イオン液体は、150℃以下の比較的低温の融点を有する塩であり、例えば、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオンなどの陽イオンと、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンなどの陰イオンと、から構成される。
【0089】
分離膜の厚さは、特に限定されないが、機械的強度の観点からは、通常、10μm〜3000μmの範囲が好ましく、10μm〜500μmの範囲がより好ましく、15μm〜150μmの範囲がさらに好ましい。
【0090】
なお、分離膜は、多孔質性の支持体に支持されていてもよい。支持体の材質としては、紙、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、金属、ガラス、セラミックなどが挙げられる。支持体を設けた場合、分離膜の厚さは、二酸化炭素透過性及び水蒸気透過性を好適に確保する点から、100nm〜100μmの範囲が好ましく、100nm〜50μmの範囲がより好ましい。
【0091】
二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する分離膜としては、例えば、「Journal of Membrane Science Vol.320(2008)390-400,The upper bound revisited」等に記載の膜を用いてもよい。また、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する分離膜、特に、二酸化炭素を分離する分離膜として、特許第5329207号公報に記載の高分子膜、特許第4965928号公報に記載のCO促進輸送膜、特許第5743639号公報に記載の分離膜、特許第5738704号公報に記載の透過膜等を用いてもよい。
【0092】
二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離した後のアノードオフガスは、供給側16Aからオフガス経路54内を流通し、第2燃料電池12へ供給される。このとき、前述のように、オフガス経路52及びオフガス経路54に設置された熱交換器21により、オフガス経路54内を流通する二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離されたアノードオフガスは、第2燃料電池12の作動温度に適した温度に加熱される。
【0093】
(第2燃料電池)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、分離膜16の下流に配置され、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離されたアノードオフガスを用いて発電を行う第2燃料電池12を備えている。第2燃料電池12としては、例えば、空気極(カソード)、電解質及び燃料極(アノード)を備える燃料電池セルであってもよく、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよい。なお、第2燃料電池12は、上述の第1燃料電池11と同様の構成であるため、共通する事項に関する説明は省略する。
【0094】
燃料電池システム10では、第2燃料電池12は、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離されたアノードオフガスを用いて発電を行う。そのため、第2燃料電池12では、電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧が向上するとともに、アノードオフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方に起因する濃度過電圧が低減され、特に高電流密度時に高い性能を発揮することができる。よって、燃料電池システム10は、後段の燃料電池にて水蒸気が分離されていないアノードオフガスを用いて発電を行う多段式の燃料電池システムと比較して、高い発電効率を得ることができる。
【0095】
第2燃料電池12のカソードから排出されたカソードオフガスは、下流側の空気供給経路44を通じて、分離膜16により分離された水蒸気及び二酸化炭素とともに改質器14の燃焼部18へ供給される。一方、第2燃料電池12のアノードから排出されたアノードオフガスは、オフガス経路46を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。
【0096】
(変形例)
本実施形態では、空気供給経路44が直列となっているため、第1燃料電池11に空気を供給した後、第2燃料電池12に第1燃料電池11から排出されたカソードオフガスが供給されるが、空気供給経路44は並列であってもよい。つまり、空気が流通する空気供給経路44が分岐し、第1燃料電池11及び第2燃料電池12のカソードに空気をそれぞれ供給する構成であってもよい。このとき、第1燃料電池11のカソードから排出されたカソードオフガス及び第2燃料電池12のカソードから排出されたカソードオフガスの少なくとも一方が分離膜16の透過側16Bに供給される構成であればよい。
【0097】
本実施形態では、2つの燃料電池(第1燃料電池11及び第2燃料電池12)を備える燃料電池システムについて説明したが、本発明はこれに限定されず、3つ以上の燃料電池を備える燃料電池システムであってもよく、例えば、第2燃料電池12の下流に第3燃料電池を備える構成であってもよい。このとき、第3燃料電池のカソードから排出されたカソードオフガスが、下流側の空気供給経路を通じて、分離膜により分離された水蒸気及び二酸化炭素とともに改質器の燃焼部へ供給され、第3燃料電池のアノードから排出されたアノードオフガスが、オフガス経路を通じて改質器の燃焼部へ供給される構成であってもよい。
【0098】
本実施形態では、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する分離膜を一つ設ける構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、複数の分離膜を配置する構成であってもよい。例えば、分離膜として二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜及び水蒸気を分離する水蒸気分離膜をそれぞれ別々に配置してもよい。このとき、二酸化炭素分離膜は、透過係数比α1(PCO2/PH2)が上述の範囲を満たせばよく、水蒸気分離膜は、透過係数比α2(PH2O/PH2)が上述の範囲を満たせばよい。なお、二酸化炭素分離膜及び水蒸気分離膜を厳密に区別する必要は無く、二酸化炭素分離膜が二酸化炭素とともに水蒸気を透過する分離膜であってもよく、水蒸気分離膜が水蒸気とともに二酸化炭素を分離する分離膜であってもよい。また、水蒸気分離膜及び二酸化炭素分離膜の材質としては、前述の分離膜の材質と同様であってもよい。また、二酸化炭素分離膜としては、CO促進輸送膜を用いてもよい。
【0099】
本実施形態にて、分離膜16として水蒸気を分離する水蒸気分離膜を配置した場合、燃料電池システム10は、第1燃料電池11の下流かつ第2燃料電池12の上流にアノードオフガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去部をさらに備えていてもよい。これにより、本実施形態にて、第2燃料電池12は水蒸気及び二酸化炭素が分離されたアノードオフガスを用いて発電を行うため、発電効率をより高めることができる。
【0100】
二酸化炭素除去部は、アノードオフガスから二酸化炭素を除去するためのものであり、例えば、二酸化炭素を吸着、吸収するフィルター、二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収剤、二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去材を含むものが挙げられ、他にも、電気化学的な反応によりアノードオフガスから二酸化炭素を除去するものであってもよい。二酸化炭素除去部が電気化学的な反応によりアノードオフガスから二酸化炭素を除去するものである場合、アノードの反応では、水(水蒸気)が必要となるため、分離膜16の上流側に二酸化炭素除去部を配置することが好ましい。これにより、電気化学的な反応を行う際に必要となる水を十分に供給することができ、二酸化炭素を好適に除去することができる。
【0101】
本実施形態にて、分離膜16として二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜を配置した場合、燃料電池システム10は、第1燃料電池11の下流かつ第2燃料電池12の上流にアノードオフガスから水蒸気を除去する水蒸気除去部をさらに備えていてもよい。これにより、本実施形態にて、第2燃料電池12は水蒸気及び二酸化炭素が分離されたアノードオフガスを用いて発電を行うため、発電効率をより高めることができる。
【0102】
水蒸気除去部は、アノードオフガスから水蒸気を除去するためのものであり、水蒸気を分離する分離膜、水蒸気を吸着する吸着剤、水蒸気を凝縮する凝縮器などであればよい。水蒸気除去部として水蒸気を凝縮する凝縮器を配置した場合、水蒸気を凝縮して得られた凝縮水を水タンク32に供給することにより原料ガスの水蒸気改質に用いてもよい。
【0103】
[第2実施形態]
以下、本発明の燃料電池システムの第2実施形態について図2を用いて説明する。図2は、第2実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。第2実施形態に係る燃料電池システム20は、分離膜16の透過側16Bに第1燃料電池11の発電に用いられる空気(カソードガス)を流通する空気供給経路(流通経路)44を配置した点、水タンク32、水蒸気供給経路37等の代わりに改質器14の改質部19に水蒸気を供給する水蒸気供給経路26を配置した点、及び熱交換器22の代わりに排気経路48内を流通する排ガスと、空気供給経路44内を流通し、かつ第1燃料電池11の発電に用いられる空気と分離膜16により分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方との混合ガスと、の間で熱交換を行う熱交換器41を配置した点で、第1実施形態に係る燃料電池システム10と相違する。なお、本実施形態及び以下の第3実施形態〜第10実施形態では、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0104】
本実施形態に係る燃料電池システム20においても、分離膜16により分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、分離膜16の透過側16Bに配置された第1燃料電池11の発電に用いられる空気を流通する空気供給経路44内を流通するため、分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、空気供給経路44内を流通する空気とともに、空気供給経路44内を流通する。したがって、空気等のスイープガスを分離膜16の透過側16Bに供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設けることなく、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の分離を促進することができる。よって、燃料電池システム20では、製造コストを削減しつつ、システム全体の発電効率を高めることができ、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0105】
燃料電池システム20は、第1実施形態とは異なり、分離膜16の透過側16Bよりも下流側の空気供給経路44、及び排気経路48に熱交換器41が設置されており、熱交換器41により、排気経路48内を流通する排ガスと、空気供給経路44内を流通する空気と分離膜16により分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方との混合ガス(以下、「混合ガス」とも称する)と、の間で熱交換を行う。これにより、排気経路48内を流通する排ガスは冷却された後にシステム外に排出される一方、空気供給経路44内を流通する混合ガスは第1燃料電池11の作動温度に適した温度に加熱される。
【0106】
第1燃料電池11のカソードには、空気供給経路44を通じて混合ガスが供給されて発電が行われ、次いで、第1燃料電池11のカソードから排出されたカソードオフガスは、下流側の空気供給経路44を通じて第2燃料電池12のカソードに供給されて発電が行われる。
【0107】
第2燃料電池12のカソードから排出されたカソードオフガスは、下流側の空気供給経路44を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。一方、第2燃料電池12のアノードから排出されたアノードオフガスは、オフガス経路46を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。
【0108】
空気供給経路44を通じて供給されたカソードオフガスと、オフガス経路46を通じて供給されたアノードオフガスとの混合ガスを燃焼部18にて燃焼させて発生する排ガスは、排気経路48に排出される。排気経路48内を流通する排ガスは、前述のように、熱交換器41にて、空気供給経路44を流通する混合ガスと熱交換を行う。
【0109】
本実施形態において、改質器14の改質部19に水蒸気を供給する水蒸気供給経路26を配置しているが、外部からの改質水又は水蒸気供給が不要となる水自立を成立させる、あるいは、外部からの改質水又は水蒸気の供給量を削減する観点から、第1実施形態と同様に、排気経路48内を流通する排ガス中に含まれる水蒸気を凝縮させて回収し、改質水として利用してもよい。
【0110】
また、本実施形態において、水蒸気供給経路26の代わりに、改質器14の改質部19に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給経路を配置し、改質部19にて二酸化炭素改質を行ってもよい。
【0111】
[第3実施形態]
以下、本発明の燃料電池システムの第3実施形態について図3を用いて説明する。図3は、第3実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。第3実施形態に係る燃料電池システム30は、分離膜16の透過側16Bに第1燃料電池11の発電に用いられる燃料ガスとなる原料ガスを流通する原料ガス供給経路24を配置した点、及び水蒸気供給経路26を配置せずに分離膜16を透過した二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を原料ガス供給経路24を通じて改質部19に供給する点で、第2実施形態と相違する。
【0112】
本実施形態に係る燃料電池システム30においても、分離膜16により分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、分離膜16の透過側16Bに配置された原料ガス供給経路24に供給される。原料ガスが原料ガス供給経路24内を流通するため、分離された水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方は、原料ガスとともに改質部19に供給される。したがって、空気等のスイープガスを分離膜16の透過側16Bに供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設けることなく、水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方の分離を促進することができる。さらに、分離された水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方を改質部19に供給するために供給経路及びブロワを別途設ける必要は無く、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0113】
本実施形態では、分離膜16により分離された水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方が改質器14の改質部19に供給され、原料ガスの改質に用いられる。そのため、本実施形態において、原料ガスを水蒸気改質する構成に限定されず、原料ガスを二酸化炭素改質する構成であってもよく、原料ガスを水蒸気改質及び二酸化炭素改質する構成であってもよい。
【0114】
[第4実施形態]
以下、本発明の燃料電池システムの第4実施形態について図4を用いて説明する。図4は、第4実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。第4実施形態に係る燃料電池システム40は、分離膜16の透過側16Bに燃焼部から排出された排ガスを流通させる排気経路48を配置した点、ならびに熱交換器22の代わりに排気経路48内を流通し、分離膜16を透過した二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方と混合された排ガスと、空気供給経路44内を流通し、かつ第1燃料電池11の発電に用いられる空気と、の間で熱交換を行う熱交換器43を配置した点で第1実施形態と相違する。
【0115】
燃料電池システム40では、分離膜16により分離された水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方は、分離膜16の透過側に配置された排気経路48に供給される。燃焼部18から排出された排ガスが排気経路48内を流通するため、分離された水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方は、この排ガスとともに排気経路48内を流通する。したがって、排気経路48を分離膜16の透過側16Bに設けることにより、空気等のスイープガスを分離膜16の透過側16Bに供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設ける必要は無く、製造コストを削減し、システム全体の発電効率を高めることができる。さらに、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0116】
また、分離膜16を透過した水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方は排ガスとともに排気経路48内を流通するため、分離膜16の透過側16Bの水蒸気分圧及び二酸化炭素分圧は低くなり、水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方の分離が促進される。したがって、燃料電池システム40では、システムの簡略化とともに水蒸気及び二酸化炭素の分離が促進されている。
【0117】
さらに、本実施形態に係る燃料電池システム40は、第1実施形態に係る燃料電池システム10と同様に、第1燃料電池11の発電に用いられる空気(カソードガス)を流通する空気供給経路44を分離膜16の透過側16Bに設けた場合よりも発電効率に優れる。
【0118】
また、本実施形態に係る燃料電池システム40では、空気よりも酸素比率が小さい燃焼部18から排出された排ガスを分離膜16の透過側16Bに供給しているため、酸素と、分離膜16を透過しうる水素又は一酸化炭素との反応が生じにくく、局所的な分離膜16の温度上昇が抑制されており、分離膜16の耐久性を好適に維持することができる。
【0119】
燃料電池システム40は、第1実施形態とは異なり、排気経路48及び空気供給経路44に熱交換器43が設置されており、熱交換器43により、排気経路48内を流通する排ガスと、空気供給経路44内を流通する空気と、の間で熱交換を行う。これにより、排気経路48内を流通する排ガスは冷却された後に水タンク32(凝縮器)に供給され、空気供給経路44内を流通する空気は第1燃料電池11の作動温度に適した温度に加熱された後に第1燃料電池11のカソードに供給される。
【0120】
第1燃料電池11のカソードに空気供給経路44を通じて空気が供給されて第1燃料電池11にて発電が行われる。次いで、第1燃料電池11のカソードから排出されたカソードオフガスは、下流側の空気供給経路44を通じて第2燃料電池12のカソードに供給されて第2燃料電池12にて発電が行われる。
【0121】
第2燃料電池12のカソードから排出されたカソードオフガスは、下流側の空気供給経路44を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。一方、第2燃料電池12のアノードから排出されたアノードオフガスは、オフガス経路46を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。燃焼部18に供給されたアノードオフガスとカソードオフガスとの混合ガスを燃焼させることで発生する排ガスは、排気経路48に排出される。
【0122】
排気経路48内を流通する排ガスは、改質水供給経路33内を流通する改質水を気化する熱交換器31にて、改質水と熱交換を行う。これにより、熱交換器31の下流側の排気経路48内を流通する排ガスは分離膜16により水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方を分離する際に好ましい温度まで冷却された後に分離膜16の透過側16Bに供給され、改質水供給経路33内を流通する改質水は気化された後に水蒸気供給経路37を通じて原料ガス供給経路24に供給される。
【0123】
[第5実施形態]
前述した第1実施形態〜第4実施形態は、多段式の燃料電池システムであるが、本発明はこれに限定されず、循環式の燃料電池システムであってもよい。以下、本発明の一実施形態に係る循環式の燃料電池システム100について、図5を用いて説明する。図5は、第5実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
【0124】
図5に示すように、第5実施形態に係る燃料電池システム100は、水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方が分離されたアノードオフガスを燃料電池61に再度供給するオフガス循環経路56、57を備える循環式の燃料電池システムである。なお、燃料電池61は前述の第1燃料電池11と同様の構成であるため、その説明を省略し、第1実施形態と同様の構成については、その説明を省略する。
【0125】
燃料電池システム100では、燃料電池61から排出された未反応の燃料ガスを含むアノードオフガスについて、その一部がオフガス経路46内を流通して燃焼部18に供給され、残りがオフガス循環経路56内を流通して分離膜16の供給側16Aに供給される。分離膜16は供給されたアノードオフガスから水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方を分離し、水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方が分離されたアノードオフガスはオフガス循環経路57内を流通する。オフガス循環経路57内を流通するアノードオフガスは、燃料ガス供給経路42内に供給され、かつ燃料ガス供給経路42内を流通する燃料ガスと混合された後、混合ガスが燃料電池61のアノードに供給されて発電が行われる。燃料電池システム100では、水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方を分離せずにアノードオフガスを再利用する循環式の燃料電池システムよりも高い発電効率を得ることができる。なお、オフガス循環経路57内を流通するアノードオフガスは、燃料ガス供給経路42内に供給される構成の代わりに、改質部19に供給される構成であってもよい(以下の第6、第7、第8、第10実施形態でも同様である)。
【0126】
オフガス循環経路57には、アノードオフガスを流通させるためのリサイクルブロワ28が配置されている。なお、リサイクルブロワの配置は、特に限定されず、分離膜16の上流であってもよく、分離膜16の下流であってもよいが、分離膜16の上流に設ける場合には、熱交換器21と分離膜16との間に配置することが好ましく、分離膜16の下流に設ける場合には、分離膜16と熱交換器21との間に配置することが好ましい。
【0127】
また、分離膜16により分離された水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方は、分離膜16の透過側16Bに配置された空気供給経路44に供給される。燃料電池61から排出されたカソードオフガスが空気供給経路44内を流通するため、分離された水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方は、カソードオフガスとともに、空気供給経路44内を流通する。したがって、空気供給経路44を分離膜16の透過側16Bに設けることにより、酸素等のスイープガスを分離膜16の透過側16Bに供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設ける必要は無く、製造コストを削減し、システム全体の発電効率を高めることができる。さらに、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0128】
[第6実施形態]
以下、本発明の燃料電池システムの第6実施形態について図6を用いて説明する。図6は、第6実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。第6実施形態に係る燃料電池システム200は、燃料電池61を備える循環式の燃料電池システムである点で、第2実施形態に係る燃料電池システム20と相違する。
【0129】
本実施形態に係る燃料電池システム200においても、第2実施形態と同様、分離膜16により分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、空気供給経路44内を流通する空気とともに、空気供給経路44内を流通する。したがって、空気等のスイープガスを分離膜16の透過側16Bに供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設けることなく、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の分離を促進することができる。よって、燃料電池システム200では、製造コストを削減しつつ、システム全体の発電効率を高めることができ、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0130】
[第7実施形態]
以下、本発明の燃料電池システムの第7実施形態について図7を用いて説明する。図7は、第7実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。第7実施形態に係る燃料電池システム300は、燃料電池61を備える循環式の燃料電池システムである点で、第3実施形態に係る燃料電池システム30と相違する。
【0131】
本実施形態に係る燃料電池システム300においても、第3実施形態と同様、分離膜16により分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、原料ガスとともに改質部19に供給される。したがって、空気等のスイープガスを分離膜16の透過側16Bに供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設けることなく、水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方の分離を促進することができる。さらに、分離された水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方を改質部19に供給するために供給経路及びブロワを別途設ける必要は無く、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0132】
[第8実施形態]
以下、本発明の燃料電池システムの第8実施形態について図8を用いて説明する。図8は、第8実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。第8実施形態に係る燃料電池システム400は、燃料電池61を備える循環式の燃料電池システムである点で、第4実施形態に係る燃料電池システム40と相違する。
【0133】
燃料電池システム400では、分離膜16により分離された水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方は、排ガスとともに排気経路48内を流通する。したがって、排気経路48を分離膜16の透過側16Bに設けることにより、空気等のスイープガスを分離膜16の透過側16Bに供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設ける必要は無く、製造コストを削減し、システム全体の発電効率を高めることができる。さらに、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0134】
[第9、第10実施形態]
以下、本発明の燃料電池システムの第9、第10実施形態について図9、10を用いて説明する。図9は、第9実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図であり、図10は、第10実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。第9実施形態に係る燃料電池システム50及び第10実施形態に係る燃料電池システム500は、分離膜16の透過側16Bに水蒸気を改質部19に供給する水蒸気供給経路26を配置した点で、それぞれ第2実施形態に係る燃料電池システム20及び第6実施形態に係る燃料電池システム200と相違する。
【0135】
燃料電池システム50及び燃料電池システム200では、水蒸気が流通する水蒸気供給経路26が分離膜16の透過側16Bに配置されており、分離膜16により分離された二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方は、水蒸気供給経路26内を流通する水蒸気とともに改質部19に供給されて原料ガスの改質に用いられる。したがって、空気等のスイープガスを分離膜の透過側に供給するための経路及び空気ブロア又は減圧ポンプを別途設けることなく、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の分離を促進することができる。よって、製造コストを削減しつつ、システム全体の発電効率を高めることができ、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0136】
なお、これらの実施形態において、水蒸気供給経路26の代わりに、改質部19に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給経路を分離膜16の透過側16Bに配置してもよい。
【0137】
また、水蒸気供給経路26の代わりに、外部からの改質水又は水蒸気供給が不要となる水自立を成立させる、あるいは、外部からの改質水又は水蒸気の供給量を削減する観点から、排気経路48内を流通する排ガスに含まれる水蒸気を凝縮させて回収する水タンク32、水タンク32に貯留された凝縮水由来の水蒸気を改質部19に供給する水蒸気供給経路37等を配置してもよい。このとき、水蒸気供給経路26の代わりに、水タンク32に貯留された凝縮水由来の水蒸気を改質部19に供給する水蒸気供給経路37を分離膜16の透過側16Bに配置してもよい。
【0138】
本発明は、前述の第1実施形態〜第10実施形態に限定されず、本発明の技術的思想内で、当業者によって、前述の各実施形態を組み合わせて実施される。また、熱交換器の設置場所、組み合わせなどについてもこれら実施形態に限定されない。
【0139】
[本発明の一例]
以下、本発明の一例の燃料電池システムのシステム効率について、通常の燃料電池システムのシステム効率と対比して説明する。
【0140】
〔通常の燃料電池システムのシステム効率〕
特開2016−115479号公報の図3、4に示されるように固体酸化物型で多段式の燃料電池システム(固体酸化物型の燃料電池スタックを2つ設けた構成)において、前段の第1の燃料電池スタックの燃料極から排出された排ガスから、電気化学的水素ポンプによって水素を取り出す、すなわち電気化学的水素ポンプによって排ガス中の水素(H)と水(HO)及び二酸化炭素(CO)とを分離することで、燃料電池スタックの開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)がどの程度向上するか試算を行った。
【0141】
この試算では、前提条件として、固体酸化物型の第1の燃料電池スタックにおける反応を750℃での平衡反応とし、一例としてS/C=2.5に設定した。上記試算の結果を次の表1に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
なお、表1における「平均OCV」は、燃料電池スタックの入口部及び出口部の平均OCVを意味する。表1からも明らかなように、電気化学的水素ポンプによって排ガス中の水素(H)と水(HO)及び二酸化炭素(CO)とを分離することで、第2の燃料電池スタックに供給されるガスのうち、水素(H)+一酸化炭素(CO)の濃度は22.5%から92.1%へ大幅に向上する一方、二酸化炭素(CO)の濃度は14.6%から0.6%へ、水(HO)の濃度は62.8%から3.3%へ大幅に低下する。そして、上記組成のガスが第2の燃料電池スタックに供給されることで、第2の燃料電池スタックの平均OCVは874mVから1020mVへ向上し、燃料電池システム全体のOCVも935mVから969mVへ向上することが明らかになった。
【0144】
上記のように、第1の燃料電池スタックから排出されるアノードオフガスから水及び二酸化炭素を除去すると、燃料電池システム全体のOCVを向上させることができる。ここで、燃料電池システム全体のOCVが935mVのときのシステム効率を60%とした場合、セルの作動電圧がOCVに比例するとし、燃料電池システム全体のOCVが969mVのときのシステム効率(通常の燃料電池システムのシステム効率)は、62.18%(60%×969/935)であることが想定される。また、この効率向上分の2.18ポイントの、HO及びCO除去の効果の内訳は、濃度の比率より、HOによるものが、1.77ポイント(2.18×62.8÷(62.8+14.6))、COによるものが、0.411ポイント(2.18×14.6÷(62.8+14.6))と試算される。
【0145】
なお、燃料電池システムの効率(システム効率)ηは、一般的に以下の式(1)で表される。
η=−(nF/ΔH)×V×Uf×ηaux×ηinv (1)
ここで、nは反応電子数、Fはファラデー定数、ΔHは発熱量、Vは固体酸化物形燃料電池セルの作動温度、Ufはシステム全体の燃料利用率、ηauxは補機効率、ηinvはインバータ効率を表す。式(1)中、−(nF/ΔH)は、燃料により決まる値であり、Uf、ηaux、ηinvが同じ値である場合、作動電圧Vに比例してシステム効率は向上する。
【0146】
〔本発明の一例の燃料電池システムのシステム効率〕
次に、本発明の一例の燃料電池システムのシステム効率について検討する。
ここで第1の燃料電池スタックから排出されるアノードオフガスから透過係数比α1の値又は透過係数比α2に従い水素が分離膜の透過側に透過する場合、システム効率は図11又は図12のように変化する。ここで、第1の燃料電池スタックの燃料利用率は70%とする。
【0147】
図11に示すように、α1=29の場合、システム効率は、前述の通常の燃料電池システムのシステム効率と同様に60.0%となる。したがって、α1<29のときにシステム効率は60.0%未満となり、第1の燃料電池スタックから排出されるアノードオフガスから二酸化炭素を除去することによって得られたシステム効率向上の影響よりも、水素が分離膜の透過側に透過するHリークによるシステム効率低下の影響のほうが大きくなると推測される。したがって、本発明の一例の燃料電池システムでは、システム効率を高める観点から、α1>29とすることが好ましい。
【0148】
また、例えば、α1=57の場合、システム効率は60.209%となる。このとき、Hリークによるシステム効率低下の影響0.202ポイント(60.411−60.209)よりも、第1の燃料電池スタックから排出されるアノードオフガスから二酸化炭素を除去することによって得られたシステム効率向上の影響(0.411ポイント)のほうが約2倍大きいといえる。
【0149】
図12に示すように、α2=29の場合、システム効率は、前述の通常の燃料電池システムのシステム効率と同様に60.0%となる。したがって、α2<29のときにシステム効率は60.0%未満となり、第1の燃料電池スタックから排出されるアノードオフガスから水蒸気を除去することによって得られたシステム効率向上の影響よりも、水素が分離膜の透過側に透過するHリークによるシステム効率低下の影響のほうが大きくなると推測される。したがって、本発明の一例の燃料電池システムでは、システム効率を高める観点から、α2>29とすることが好ましい。
【0150】
また、例えば、α2=57の場合、システム効率は60.877%となる。このとき、Hリークによるシステム効率低下の影響0.893ポイント(61.77−60.877)よりも、第1の燃料電池スタックから排出されるアノードオフガスから水蒸気を除去することによって得られたシステム効率向上の影響(1.77ポイント)のほうが約2倍大きいといえる。
【符号の説明】
【0151】
10、20、30、40、50、100、200、300、400、500…燃料電池システム、11…第1燃料電池、12…第2燃料電池、14…改質器、16…分離膜、16A…供給側、16B…透過側、18…燃焼部、19…改質部、21、22、31、41、43…熱交換器、24…原料ガス供給経路、25…ブロワ、26、37…水蒸気供給経路、28…リサイクルブロワ、32…水タンク、33…改質水供給経路、34…改質水ポンプ、42…燃料ガス供給経路、44…空気供給経路、46、52、54…オフガス経路、48…排気経路、56、57…オフガス循環経路、61…燃料電池
図1
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