【文献】
Harold S. Stone et al.,"A Fast Direct Fourier-Based Algorithm for Subpixel Registration of Images",IEEE Transaction on Geoscience and Remote Sensing,米国,IEEE,2001年10月31日,Vol.39, No.10,pp.2235-2243
【文献】
青木 孝文、外3名,“位相限定相関法に基づく高精度マシンビジョン”,Fundamentals Review,日本,社団法人電子情報通信学会,2007年 7月 1日,Vol.1, No.1,pp.30-40
【文献】
藤山 雅晶、外3名,“位相差スペクトルを用いた画像間位置ずれ検出”,電子情報通信学会2001年総合大会講演論文集 情報・システム2,日本,社団法人電子情報通信学会,2001年 3月 7日,p.163
【文献】
幸月 勇、外4名,“位相差からの画像シフト量検出精度の検討”,映像情報メディア学会技術報告,日本,(社)映像情報メディア学会,2002年 1月25日,Vol.26, No.7,pp.31-36
【文献】
Harold Stone et al.,"Subpixel Registration of Images",Conference Record of the Thirty-Third Asilomar Conference on Signals, Systems, and Computers,米国,IEEE,1999年10月24日,pp.1446-1452
【文献】
Yifan Cheng et al.,"A Primer to Single-Particle Cryo-Electron Microscopy",Cell,NL,Elsevier B. V.,2015年 4月23日,Vol.161, No.3,pp.438-449
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロセッサ命令が、前記プロセッサに、前記一連の画像のうちの複数の画像に前記画像シフト情報を適用することによって、前記複数の画像を整列させることを行わせる、請求項9に記載のシステム。
前記プロセッサ命令が、前記プロセッサに、前記複数のフーリエ変換画像の各画像について複数対の画素を選択させることを行わせ、選択された前記複数対の画素の各々について複数の画像シフトベクトルが決定され、
前記プロセッサ命令が、前記プロセッサに、
所定の量よりも大きく逸脱している前記複数の画像シフトベクトルのうちの画像シフトベクトルを前記複数の画像シフトベクトルのうちの他の画像シフトベクトルから特定することと、
前記複数の画像シフトベクトルから一組の画像シフトベクトルを形成することであって、特定された前記画像シフトベクトルが前記一組の画像シフトベクトルに含まれない、ことと、
前記一組の画像シフトベクトルに統計計算を行い、決定された前記空間シフトを生成することと、を更に行わせる、請求項12に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の例示的な実施形態の説明では添付図面を参照する。異なる図面における同じ参照番号は同一又は同様の要素を示す。以下の詳細な説明は本発明を限定するものではなくて、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定められるものである。以下の実施形態では、分かり易くするために、高分解能透過型電子顕微鏡法(HRTEM)の用語及び構造に関して説明する。しかしながら、以下で説明される実施形態は、HRTEMに限定されるものではなくて、比較的高い信号対ノイズ比を有する一連の画像の整列を要するあらゆる種類の画像分析、例えば、他の種類の顕微鏡法の画像分析、医療用画像、コンピュータビジョンにも適用可能である。
【0012】
明細書全体に亘る「一実施形態」への言及は、或る実施形態に関して説明される特定の特徴、構造、特性が、本開示の主題の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。従って、明細書全体に亘って色々な箇所に登場する「一実施形態」との記載は、必ずしも同一の実施形態について言及するものではない。また、特定の特徴、構造、特性は一つ以上の実施形態において適切に組み合わせ可能である。
【0013】
一実施形態によると、物体の一連の画像を受信するが、その一連の画像のうちの少なくとも二つの連続した画像は互いに空間的にシフト(変位)している。一連の画像のうちの各画像は、フーリエ変換を用いてフーリエ領域に変換されて、対応する複数のフーリエ変換画像を生成する。複数のフーリエ変換画像の振幅成分に基づいて、振幅フィルタリングされたパターンがフーリエ領域において計算される。振幅フィルタリングされたパターンを用いて、一連の画像のうちの連続する画像の対についての空間シフトが決定される。決定された空間シフトに基づいて、一連の画像のうちの複数の画像が整列されて、整列された複数の画像が足し合わされて、画像シフトが補正され足し合わされた画像を形成する。
【0014】
図1は、一実施形態に係るTEMの概略図である。システム100は、ホルダ108に置かれた物体106(調べられているサンプルであり得る)に電子線104を当てる電子銃102を含む。サンプル106を通過する電子線110を撮像検出器112によって受け、その撮像検出器112は、フィルムやデジタル画素検出器、例えば、直接検出電子計数(DDEC,direct‐detection electron‐counting)カメラ(例えば、Gatan社のK2 Summit)や、電荷結合素子(CCD,charge coupled device)カメラである。DDECカメラは超低電子線量を可能にする高い検出量子効率(DQE,detective quantum efficiency)に起因して特に有用である。例えば、DDECカメラは、原子分解能(つまり、0.57Å×0.57Åの画素サイズ)に達する少なくとも55000倍の倍率での画像取得を、1画素当たり2〜4個のe
−という低さの電子線量(つまり、6〜12e
−Å
−2という低さの線量)で可能にする。撮像検出器が、サンプル106の画像を取得するための或る種の構造を代表するものであることを当業者は認識しているものである。
【0015】
また、システム100は制御システム114を有し、その制御システム114は、プロセッサ116と、メモリ118と、入出力インターフェース120と、サンプルホルダ位置決めコントローラ122とを含み、これらはバス124を介して互いに通信可能である。入出力インターフェース120は、操作者が、プロセッサ116、メモリ118、及び/又は位置決めコントローラ122と通信して、TEMを操作することを可能にする。例えば、入出力インターフェース120は、撮像検出器112によって撮像されたサンプルを表示するための一つ以上のディスプレイと、TEMの多様な性状(例えば、焦点、サンプル位置等)を手動制御するための、また、以下でより詳細に説明する画像系列整列を開始するための一つ以上の入力デバイスとを含み得る。
【0016】
位置決めコントローラ122が、サンプルの向きを制御するためにTEMで用いられる或る種の構造を称することを当業者は認識しているものである。分かり易くするために図示していないが、プロセッサ116は、電子銃102及び撮像検出器112にもバス124を介して通信可能に結合されて、これらのデバイスを制御する命令を提供し、これらのデバイスからの出力を受信する。
【0017】
説明を簡単にするために、TEMの幾つかの部品を図示していない。そうした追加の部品は本開示の実施形態を理解するために必要ではない。
【0018】
本開示の画像系列整列は、メモリ118に記憶されプロセッサ116によって実行されるプロセッサ命令を用い、撮像検出器112から得られた一連の画像を用いて実行され得る。従って、プロセッサ命令は、以下で説明する方法を行うようにTEMにロードされ得る。代わりに、画像系列整列を、TEMの外部のプロセッサを用いて行うことができ、この場合、システム100が、入出力インターフェース120を介して外部プロセッサに一連の画像を提供する。外部プロセッサはTEMと同じ場所にあるか、又は異なる離れた場所に置かれ得る。従って、プロセッサ116への言及は、内部プロセッサと外部プロセッサのいずれを称するものとして理解されるものである。
【0019】
図2は、一実施形態に係る時系列の一連の画像を整列させる方法のフローチャートを示す。まず、プロセッサ116は、画像検出器112から物体の一連の画像を受信する(ステップ205)。上述のように、撮像段階中には不可避な動きやドリフトがあるので、一連の画像のうちの少なくとも二つの連続した画像は互いに空間的にシフトしていて、つまり、ホルダ108が延在する平面内においてシフトしている。プロセッサ116は、一連の画像(f
1(x,y)、f
2(x,y)、…、f
n(x,y))のうちの各画像(f
i)をフーリエ変換を用いてフーリエ領域に変換して、対応する複数のフーリエ変換画像(F
i)を生成する(ステップ210)。
【0020】
次いで、プロセッサ116は、複数のフーリエ変換画像(F
i)の振幅成分に基づいて、フーリエ領域において振幅フィルタリングされたパターン(H)を計算する(ステップ215)。振幅フィルタリングされたパターンは、振幅閾値以上の振幅を有する画素を含み、閾値未満の振幅成分を有する画素を排除している。複数のフーリエ変換画像(F
i)の位相成分と振幅フィルタリングされたパターンを用いて、一連の画像のうちの連続した画像の対についての空間シフトが決定される(ステップ220)。周波数フィルタを採用している従来の方法とは対照的に、振幅フィルタは、振幅に基づいて画素をフィルタリングする。次いで、プロセッサ116は、決定された画像シフトに基づいて、一連の画像のうちの複数の画像を整列させて(ステップ225)、整列させた複数の画像を足し合わせて、画像シフトが補正され足し合わされた画像を形成する(ステップ230)。次いで、画像シフトが補正され足し合わされた画像が、例えば入出力インターフェース120を介してディスプレイに出力され得る(ステップ235)。
【0021】
図2に関して説明されるいくつかのステップの更なる詳細については、残りの図面の説明に関して以下で与えられる。
【0022】
図3は、一実施形態に係る時系列の一連の画像を整列させるための方法のフローチャートを示す。本フローチャートは、一実施形態に係る
図2のフローチャートのステップの追加的な詳細を与える。まず、プロセッサ116は、複数の別々の期間にわたって物体に電子線を当てることによって物体の一連の画像を生成するように電子銃102及び撮像検出器112を制御する(ステップ302)。
図4Aは、一連の画像の内の一枚の画像の例であり、各画像に非常にノイズが多く、コントラストがノイズレベルに近いことを示しているが、これは、各画像を取得するための曝露時間が非常に短いこと、及び/又は、画像を生成するために適用される電子線量が低いことに起因し得る。複数の別々の期間は、一連の画像の画像数に対応する。
【0023】
図4Aの画像及び図面に示されている他の全ての例の画像は、K2‐IS CMOSカメラ(Gatan社製)を搭載したTitan Image Cs補正キューブ型透過型電子顕微鏡(FEI社製)を用いて、画像毎に0.05秒間の曝露で、全部で120枚の画像で、各画像において略0.013e/画素の平均計測数で撮影されたものである。撮像された物体は、UiO‐66ナノサイズ金属有機構造体(MOF,metal organic framework)結晶である。対照的に、従来の方法では、信頼できる整列のための十分な信号対ノイズ比を得るために、各フレームで画素毎に0.67e
−よりも高い線量を要する。
【0024】
プロセッサ116は、撮像検出器112から物体の一連の画像(f
1(x,y)、f
2(x,y)、…、f
n(x,y))を受信し(ステップ305)、その一連の画像は、上述のように、互いに空間的にシフトした一連の画像のうちの少なくとも二つの連続した画像を含む。次いで、プロセッサ116は、一連の画像(f
1(x,y)、f
2(x,y)、…、f
n(x,y))の各画像(f
i)をフーリエ変換を用いてフーリエ領域に変換して、対応する複数のフーリエ変換画像(F
i)を生成する(ステップ310)。i個の画像(f
1(x,y)、f
2(x,y)、…、f
n(x,y))を含む一連の画像の場合、各画像(f
i(x,y))のフーリエ変換は以下のようになる:
【0028】
ここで、|F
i(u,v)|は振幅であり、φ(u,v)はF
i(u,v)の位相である。
【0029】
プロセッサ116は、フーリエ変換画像(F
i)の振幅成分を足し合わせて振幅パターン(F
A)を形成し(ステップ315A)、次いで、振幅パターン(F
A)に振幅閾値を適用して、振幅フィルタリングされたパターン(H)を生成すること(ステップ315B)によって、フーリエ領域において振幅フィルタリングされたパターンを計算する。振幅フィルタリングされたパターン(H)は、振幅閾値以上の振幅を有する振幅パターン(F
A)の画素を含む。具体的には、一連の画像のうちの全ての画像からのフーリエ変換振幅成分が振幅パターン(F
A)を形成し、以下のように表示することができる:
【0031】
非限定的な一実施形態では、振幅閾値I
tは以下の範囲内の値となり得る:
【0033】
ここで、I
meanとI
minは、振幅パターン(F
A)の全ての画素の平均値と最小値である。式(4)は振幅閾値I
tをどのように計算するのかの一例を説明するものであって、振幅閾値I
tを計算する他の多数の方法が存在することを認識されたい。
【0034】
振幅フィルタリングされたパターンを以下のように表すことができる:
【0036】
ここで、I
uvは、振幅パターンF
A(u,v)中の点(u,v)における強度値である。式(5)は振幅フィルタリングされたパターンH(u,v)をどのように計算するのかを一例を説明するものであって、振幅フィルタリングされたパターンH(u,v)を計算する他の多数の方法が存在することを認識されたい。そうした代替案の一つは、I
uv≧I
tの場合にI
uvの値を保つことを含むものであり得る(I
uv−I
tの値を用いる代わりに)。
【0037】
図4Bに示されるように、振幅パターン(F
A)は信号対ノイズ比を低減して、撮像された物体の原子構造に対応する振幅ピークをノイズ上に観測することができるようにする。
図4Cの画像は、振幅フィルタリングされたパターンH(u,v)であり、振幅フィルタの振幅閾値未満の振幅値を有する振幅パターンの全ての画素を排除している一方で、振幅フィルタの振幅閾値を超える振幅値を有する画素を保持している。
図4Cの画像は、フーリエ変換されて足し合わされた画像の最高の振幅を有する略100画素に対応するものを除いて全ての画素を排除する振幅閾値を用いて生成されたものである。従って、例えば、振幅フィルタリングされたパターン(H)に所定の数の画素をもたらすように振幅閾値を設定することができる。
【0038】
次に、プロセッサ116は、個々のフーリエ変換画像F
i(u,v)の振幅成分|F
i(u,v)|を振幅フィルタリングされたパターンH(u,v)に置き換えて、複数のフィルタリングされたフーリエ変換画像(G
i)を形成する(ステップ320A)。これを以下の式で表すことができる:
【0040】
次いで、プロセッサ116は、複数のフィルタリングされたフーリエ変換画像(G
i)の各々に逆フーリエ変換を行い、対応する複数の逆変換されたフィルタリング画像(g
i)を生成する(ステップ320B)。具体的には、各フィルタリングされた画像g
i(x,y)は以下のように表される:
【0042】
図4Dは、振幅成分を振幅フィルタリングされたパターン(H)で置き換えて、元の領域に変換し直した後の
図4Aの画像の例を示す。見て取れるように、撮像された物体の格子の特徴が目に見えるようになっているが、この特徴は
図4Aに示される元の個々の画像では目に見えないものである。
【0043】
次いで、プロセッサ116は、複数の逆変換されたフィルタリング画像(g
i)を、それら複数の逆変換されたフィルタリング画像のうちの連続した次のもの(g
i+1)と相互相関させて、複数の逆変換されたフィルタリング画像(g
i)の各々について画像シフト情報を生成する(ステップ320C)。従って、一番目の画像(g
1)についてはシフト情報が計算されず、後続の各画像(g
i+1)についての画像シフト情報は、その前の順序の画像(つまり、二番目の画像についてはg
1、二番目の画像の後の各画像についてはそれぞれg
i−1)に基づいたものとなる。固定された画像は相互相関には使用されない。何故ならば、フィルタリングされた画像g
i(x,y)は周期的な格子を含むので、ドリフトの決定は、周期単位内での動きに対してのみ有効だからである。相互相関に連続した画像を使用することで、この問題に対処する。何故ならば、二つの連続した画像の間のドリフトが、単位格子の長さを超えることはないからである。
【0044】
図4Eは、相互相関から計算されたドリフトプロットの一例のグラフであり、一連の画における前の画像に対する各画像のX軸及びY軸のドリフト量を示す。この例のドリフトプロットは比較的線形であるが、全ての実施形態でこうなる訳ではなくて、撮像中の物体の動きに応じて、ドリフトプロットはあらゆる形状を取り得るものであり、一例では、ランダムなシフトを含むように現れる。
【0045】
次いで、プロセッサ116は、一連の画像の元の各画像(f
i)に画像シフト情報を適用することによって、一連の画像(f
1(x,y)、f
2(x,y)、…、f
n(x,y))の元の画像(f
i)を整列させる(ステップ325)。従って、相互相関の一回の反復サイクルが、一連の画像の全ての画像のドリフト決定工程とドリフト補正工程を含む。ドリフト補正の決定がm回のサイクルを含み、反復サイクルkにおいて(画像1に対して)画像iについて決定されたドリフトがr
ik=[Δx
ik,Δy
ik]であるとすると、画像1に対する画像iの全ドリフトr
iは以下のようになる:
【0047】
従って、複数回の反復サイクルを行うことによって、全体的な整列を改善することができる。一実施形態では、反復サイクルの回数は、例えば10サイクルである。
【0048】
次いで、プロセッサ116は、整列させた複数の画像を足し合わせて、画像シフトが修正されて足し合わされた画像を形成する(ステップ330)。次いで、画像シフトが修正されて足し合わされた画像を、例えば入出力インターフェース120を介してディスプレイに出力することができる(ステップ335)。
図4Fは、一連の画像の画像整列を行わずに足し合わせて生成された画像を示し、
図4Gは、
図3に関して説明したようにして整列させて足し合わせた画像を示す。見て取れるように、
図4Fのものと比較すると、
図4Gの足し合わされた画像では格子の特徴がはるかに明らかになっている。
【0049】
図5A及び
図5Bは、一実施形態に係る時系列の一連の画像を整列させるための方法のフローチャートを示し、
図2の方法の追加的な詳細を与える。本実施形態は、振幅フィルタと、位相に基づいた画像整列方法とを採用し、フーリエ領域の各画像の特定の画素の位相成分を用いて画像系列の画像を整列させる。
【0050】
フーリエ変換は、画像を異なる空間周波数の成分に分解し、これら成分が空間周波数の複素関数を構築及び生成し、各空間周波数は、元の画像に存在していたその周波数の大きさを表す振幅成分と、その周波数の基本正弦曲線の位相オフセット(ずれ)成分とを有する。フーリエ領域に変換された周期的特徴を有する画像は、実空間における周期的配列を表すピークのアレイを含む。一連の画像のうちの画像間の平面的なシフトは、振幅成分に影響を与えず、代わりに、画像間の平面的なシフトに対応する位相成分の変化を生じさせる。
【0051】
さて、
図5A及び
図5Bの方法の詳細に話を移すと、
図2及び
図3に例示される方法に関して上述したのと同様に、プロセッサ116は、電子銃102及び撮像検出器112を制御して、複数の別々の期間にわたって電子線を物体に当てることによって、物体の一連の画像(f
1(x,y)、f
2(x,y)、…、f
n(x,y))を生成し(ステップ502)、撮像検出器112から物体の一連の画像(f
1(x,y)、f
2(x,y)、…、f
n(x,y))を受信し(ステップ505)、一連の画像のうちの各画像(f
i)をフーリエ変換を用いてフーリエ領域に変換して、対応する複数のフーリエ変換画像(F
i)を生成する(ステップ510)。
【0052】
次いで、プロセッサ116は、まず、フーリエ変換画像(F
i)の振幅を足し合わせて振幅パターン(F
A)を形成し(ステップ515A)、次いで、振幅パターン(F
A)に振幅閾値値を適用して振幅フィルタリングされたパターン(H)を生成すること(ステップ515B)によって、振幅フィルタリングされたパターンを計算する。上述のように、振幅フィルタリングされたパターンは、振幅閾値以上の振幅を有する振幅パターン(F
A)の画素を含むので、本実施形態では、フーリエ変換画像(F
i)の位相変化の評価のための候補となる画素を特定する。フーリエ領域におけるノイズレベルは、特に信号対ノイズ比が低い場合において位相分析の精度に影響するので、振幅フィルタリングされたパターンが、信号対ノイズ比が最大であるフーリエ領域のピークの中心に後続の位相分析を限定することを可能にする。
図6Aは、整列させずに一連の画像を足し合わせた画像であり、
図6Bは、ステップ515Aの結果である振幅パターン(F
A)である。見て取れるように、
図6Aと比較すると
図6Bの足し合わされた画像においては、対象画素をノイズ上により簡単に観測することができる。
【0053】
次いで、プロセッサ116は、まず、フィルタリングされた振幅パターン(H)の複数の画素に対応する複数のフーリエ変換画像(F
i)の各々から位相成分を抽出すること(520A)によって、連続した画像の対についての空間シフトを決定する。複数の画素は、振幅閾値以上の振幅を有するフィルタリングされた振幅パターン(H)の画素に対応する。次いで、プロセッサ116は、複数のフーリエ変換画像(F
i)の各画像の複数の画素から少なくとも一対の画素を選択して(ステップ520B)、選択された少なくとも一対の画素について抽出された位相成分に基づいて、複数のフーリエ変換画像(F
i)の各画像についての画像シフトベクトルを決定する(ステップ520C)。
【0054】
本実施形態では、画像シフトベクトルを決定するために画像シフトサークルを採用し、その一例が
図6Cに示されていて、このようにして画像シフトサークルを採用する方法が
図5Bに示されている。
図6Cにおいて、O
Fはフーリエ変換画像の中心であり、Oは画像シフトサークルの中心であり、vは画像シフトベクトルであり、v
nは選択された画素に対応するシフトベクトルである。画像シフトサークルの中心Oと画像シフトベクトルvは処理のこの時点においては未知であるが、フーリエ変換画像の中心O
Fは既知であるので、画像シフトサークルを定めて、O
FからOに向かうベクトルvに対応する画像シフトを決定するのには画像シフトサークルの円周上のあと二つの点のみが必要となる。
【0055】
従って、プロセッサ116は、まず、選択された少なくとも一対の画素について抽出された位相情報に基づいて、画像シフトベクトルの少なくとも二つの同一直線上にない画像シフト成分ベクトルを決定すること(ステップ520C
1)によって、画像シフトベクトルを決定する(ステップ520C)。次いで、プロセッサ116は、少なくとも二つの同一直線上にない画像シフト成分ベクトルの係数を二倍にする(ステップ520C
2)。二倍にした係数に基づいて、プロセッサ116は画像シフトサークルを決定し、画像シフトベクトルは画像シフトサークルの半径に対応する。
【0056】
本方法は一対の画素のみを用いて行うことができるものであるが、複数対の画素を用いることによってシフト決定の精度を上昇させることができ、その詳細がステップ520C
3〜ステップ520C
5に示されている。選択される画素対の数が、精度の上昇とプロセッサ116の負荷の上昇(本開示の方法を行うのに必要な総時間を増やし得る)との間のトレードオフであることを当業者は認識しているものである。従って、プロセッサ116は、複数のフーリエ変換画像(F
i)の各画像の複数の画素対を選択して、選択された複数の画素対の各々について複数の画像シフトベクトルを決定する。
【0057】
具体的には、プロセッサ116は、所定の量よりも大きく逸脱している複数の画像シフトベクトルのうちの画像シフトベクトルを複数の画像シフトベクトルのうちの他の画像シフトベクトルから特定して(ステップ520C
3)、複数の画像シフトベクトルから一組の画像シフトベクトルを形成する(ステップ520C
4)。特定された画像シフトベクトルは異常値とみなされるので、一組の画像シフトベクトルには含まれない。最後に、プロセッサ116は、一組の画像シフトベクトルに統計計算を行い、決定された空間シフトを生成する(ステップ520C
5)。平均値、最頻値、中央値等のあらゆる種類の統計計算を適用することができる。
図6Dは、画像毎に画像シフトベクトルの二つよりも多くの同一直線上にない画像シフト成分ベクトルの組を用いて決定された位相を示し、
図6Eは、最終的に計算された位相シフトを示す。
図6Dにおいては、各画像に対して複数の位相シフトが計算されていて、これらに統計計算を行い、
図6Eに示される最終的な位相シフトが得られる。
【0058】
図5Aに戻ると、次いで、プロセッサ116は、決定された空間シフトに基づいて、一連の画像のうちの複数の画像を整列させる(ステップ525)。最後に、プロセッサは、整列された画像を足し合わせて、画像シフトが補正され足し合わされた画像を形成する(ステップ530)。次いで、画像シフトが補正され足し合わされた画像を、例えば入出力インターフェース120を介してディスプレイに出力し得る(ステップ535)。
図6Fは、画像シフトが補正され足し合わされた画像の一例を示し、
図6Aの整列されていない画像を足し合わせたものと比較すると、画像ノイズから明確に区別して、物体の結晶学的な詳細を示している。
【0059】
例示的な実施形態を透過型電子顕微鏡(TEM)、高分解能透過型電子顕微鏡法(HRTEM)、物体を撮像するための電子線の使用に関して説明してきたが、本発明は、物体の画像系列が透過型電子顕微鏡、高分解能塔型電子顕微鏡法、電子線を用いて生成されたものであるかにかかわらず、周期的な特徴を含む物体の画像系列に関しても使用可能である。
【0060】
本開示の実施形態は、一連の画像を整列させるためのシステム及び方法を与える。本説明は本発明を限定するものではないことを理解されたい。逆に、例示的な実施形態は代替物、変更物、等価物をカバーするものであって、これらも添付の特許請求の範囲によって定められる要旨及び範囲内に含まれるものである。更に、例示的な実施形態の詳細な説明においては、特許請求される発明の包括的な理解を与えるために多数の具体的な詳細が与えられている。しかしながら、そのような具体的な詳細を有さずに多数の実施形態を実施することができることを当業者は理解するものである。
【0061】
本願の例示的な実施形態の特徴や要素が実施形態においては特定の組み合わせで説明されているが、各特徴や各要素は、実施形態の他の特徴や要素を用いずに単独で使用可能でもあり、本開示の他の特徴や要素と多様に組み合わせて又は組み合わせずにも使用可能である。
【0062】
本説明は、開示されている主題の例を当業者がそれを実施すること(デバイスやシステムを作製して使用すること、組み込まれる方法を行うことを含む)ができるように用いている。本主題の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定められるものであり、当業者に想起される他の例も含み得る。そのような他の例も特許請求の範囲内にある。