(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6739684
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】地表下地層のかさ密度、気孔率、および気孔径分布を決定するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 24/08 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
G01N24/08 510Z
G01N24/08 510N
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-507010(P2020-507010)
(86)(22)【出願日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】US2018045931
(87)【国際公開番号】WO2019032783
(87)【国際公開日】20190214
【審査請求日】2020年3月27日
(31)【優先権主張番号】15/673,996
(32)【優先日】2017年8月10日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジリン
(72)【発明者】
【氏名】アルトハウス,ステイシィ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジン‐ホン
【審査官】
嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2016/0334343(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0341680(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0289628(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0272812(US,A1)
【文献】
国際公開第2017/048737(WO,A1)
【文献】
Suggested Methods for Determining Water Content, Porosity, Density, Absorption and Related Properties and Swelling and Slake-Durability Index Properties,International Society for Rock Mechanics,1977年 4月 1日,URL,https://fenix.ciencias.ulisboa.pt/downloadFile/1688987299217431/1154021144isrm_sm_water_content,_density,_etc_-_1977.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00−22/04
G01N 24/00−24/14
G01R 33/28−33/64
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表下地層を特性評価する方法であって、
前記地表下地層の流体飽和試料の空中質量を測定することであって、前記空中質量が、前記試料の
基質または粒子の質量、前記試料の周囲の流体の質量、および前記試料内部の流体の質量を含み、前記液体飽和試料の前記空中質量m
sが式
で与えられ、
式中、ρ
mが前記地表下地層の基質の密度であり、ρ
lが前記試料の内部および周囲の前記流体の密度であり、V
mが前記基質の体積であり、V
φが前記試料内部の前記流体の体積であり、V
surが前記試料の周囲の前記流体の体積である、測定すること、
核磁気共鳴(NMR)を使用して前記試料内部の前記流体の体積V
φおよび前記試料の周囲の前記流体の体積V
surを決定すること、
前記
流体飽和試料を所定の体積の計量流体中に配置すること、
計量流体中の前記流体飽和試料の前記質量を測定すること、
前記計量液中
にあって周囲の流体を含まない前記
流体飽和試料の
質量m
fが式
によって決定すること、
式中、ρ
fが前記計量流体の密度である、測定すること、および
式
を使用して
周囲の流体を含まない前記
流体飽和試料の体積V
cを決定すること、
を含む方法。
【請求項2】
式
を使用して
周囲の流体を含まない前記
流体飽和試料のかさ密度ρ
bを決定すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式
を使用して
基質の前記体積V
mを決定すること
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式
を使用して前記地表下地層の
基質または粒子の密度ρ
mを決定すること
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
測定前に洗浄流体を使用して前記試料を洗浄することであって、前記洗浄流体が掘削流体と同じであること
をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記流体飽和試料の少なくとも1つの寸法が約0.5mm〜3mmである、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記計量流体が、掘削流体、または前記掘削流体と同様の重量測定特性を有する流体である、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記計量流体がディーゼル油である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記流体飽和試料が周囲の流体の物理的除去を必要としない、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
コンピュータ実行可能命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ実行可能命令は、コンピュータが、
地表下地層の流体飽和試料の空中質量を受け取る動作であって、前記空中質量が前記試料の
基質または粒子の質量、前記試料の周囲の流体の質量、および前記試料内部の流体の質量を含み、前記液体飽和試料の前記空中質量m
sが式
で与えられ、
式中、ρ
mが前記地表下地層の基質の密度であり、ρ
lが前記試料の内部および周囲の前記流体の密度であり、V
mが前記基質の体積であり、V
φが前記試料内部の前記流体の体積であり、V
surが前記試料の周囲の前記流体の体積である、動作と、
核磁気共鳴(NMR)を使用して前記試料内部の前記流体の体積V
φおよび前記試料の周囲の前記流体の体積V
surを決定する動作と、
計量流体中の前記流体飽和試料の質量を受け取る動作
と、
前記計量流体中の前記
流体飽和試料の
質量m
fが式
によって決定する動作と、
式中、ρ
fが前記計量流体の密度である、動作と、
式
を使用して
周囲の流体を含まない前記
流体飽和試料の体積V
cを決定する動作と、
を実行するのを誘発する、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項11】
前記コンピュータ実行可能命令はさらに、前記コンピュータが、
式
を使用して
周囲の流体を含まない前記
流体飽和試料のかさ密度ρ
bを決定する動作を実行するのを誘発する、請求項10に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記コンピュータ実行可能命令はさらに、前記コンピュータが、
式
を使用して前記基質の
体積V
mを決定する動作を実行するのを誘発する、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記コンピュータ実行可能命令はさらに、前記コンピュータが、
式
を使用して前記地表下地層の
基質または粒子の密度ρ
mを決定する動作を実行するのを誘発する、請求項12に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
地表下地層を特性評価するためのシステムであって、
地表下地層の流体飽和試料と、
前記流体飽和試料を受け取って前記
流体飽和試料の空中質量を出力するように構成された天秤と、
1つまたは複数のプロセッサとコンピュータ実行可能命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体とを備えるコンピュータであって、前記コンピュータ実行可能命令は、前記1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、前記コンピュータが、
前記地表下地層の流体飽和試料の空中質量を受け取ることであって、前記空中質量が前記試料の質量、前記試料の周囲の流体の質量、および前記試料内部の流体の質量を含み、前記流体飽和試料の前記空中質量m
sが式
で与えられ、
式中、ρ
mが前記地表下地層の基質の密度であり、ρ
lが前記試料の内部および周囲の前記流体の密度であり、V
mが前記基質の体積であり、V
φが前記試料内部の前記流体の体積であり、V
surが前記試料の周囲の前記流体の体積である、受け取ること、
核磁気共鳴(NMR)を使用して前記試料内部の前記流体の体積V
φおよび前記試料の周囲の前記流体の体積V
surを決定すること、
計量流体中の前記液体飽和試料の質量を受け取ること、
前記計量流体中の
周囲の流体を含まない前記
流体飽和試料の前記質量m
fが式
によって決定され、
式中、ρ
fが前記計量流体の密度である、受け取ること、および
式
を使用して
周囲の流体を含まない前記
流体飽和試料の体積V
cを決定すること、
を誘発する、コンピュータと、
を備えるシステム。
【請求項15】
前記コンピュータ実行可能命令はさらに、前記コンピュータが、
式
を使用して
周囲の流体を含まない前記
流体飽和試料のかさ密度ρ
bを決定することを誘発する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記コンピュータ実行可能命令はさらに、前記コンピュータが、
式
を使用して前記基質の
体積V
mを決定することを誘発する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記コンピュータ実行可能命令はさらに、前記コンピュータが、
式
を使用して前記地表下地層の
基質または粒子の密度ρ
mを決定することを誘発する、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、貯留層の評価に関する。より詳細には、実施形態の例は、地表下地層のかさ密度、気孔率、および気孔径分布を決定するための方法およびシステムに関する。これらの方法およびシステムでは、NMR(核磁気共鳴)と重量測定技術とを組み合わせたものを利用する。
【背景技術】
【0002】
かさ密度は、貯留層の評価における最も重要なパラメータのうちの1つである。かさ密度は、貯留層内の炭化水素の埋蔵量の推定に広く使用されている。これまでの貯留層の評価および説明のための主要な貯留層物性パラメータを得るための2つの手法は、坑井検層およびコア測定である。これらの測定には費用がかかり、多くの場合、これらの測定には追加のリグ時間を必要とし、これにも非常に費用がかかる。
【0003】
例えば、かさ密度は、掘削中検層(LWD)密度検層でリアルタイムに測定することができ、あるいはワイヤライン(WL)密度検層を使用して測定することもできる。両方ともガンマ線源を使用し、地層と相互作用した後で検出器に到達する減衰したガンマ線を測定する。一般に、LWD密度測定は孔隙内に地層流体を有する岩石のかさ密度を表すのに対して、WL密度は侵入流体を有する岩石のかさ密度を測定するものであり、浸透率の低い非在来型岩石の場合、差は最小限であるものとする。かさ密度は、コアプラグが利用可能であるときに使用して正確に測定することができる。
【0004】
ドリルカッティングから正確な貯留層物性パラメータを得ることは、少なくとも2つの理由で有益であり望ましい。第一に、ドリルカッティングは、任意の掘削済み坑井から容易に入手可能であり、したがって作業に追加リグ時間または追加費用は付加されない。第二に、測定は坑井現場で行うことができ、掘削やその後の水圧破砕などのリアルタイムの業務上の決定のためのデータを提供することができる。
【0005】
しかしながら、カッティングの表面上の流体を除去するのは困難であるので、カッティングの体積を正確に測定することは課題である。従来の試料調製方法では、湿った紙タオルを使用して表面から余分な流体を除去するが、表面特徴の形状が不規則であるため、表面流体の完全な除去の確実性は常に疑わしい。さらに、紙タオルが乾燥し過ぎていると、カッティング試料内の液体は毛管力により失われる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書で開示される諸実施形態の例は、地表下地層のかさ密度、気孔率、および気孔径分布を決定するための改善された方法およびシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一例が、地表下地層の基質または粒子の密度を決定する方法である。この方法は、地表下地層の流体飽和試料の空中質量を測定することを含み、空中質量は、試料の質量、試料の周囲の流体の質量、および試料内部の流体の質量を含む。流体飽和試料の空中質量m
sは式
で与えられる。
【0008】
式中、ρ
mは地表下地層の基質の密度であり、ρ
lは試料の内部および周囲の流体の密度であり、V
mは基質の体積であり、V
φは試料内部の流体の体積であり、V
surは試料の周囲の流体の体積である。この方法は、核磁気共鳴(NMR)を使用して、試料内部の流体の体積V
φおよび試料の周囲の流体の体積V
surを別々に決定することも含む。この方法は、試料を所定の体積の計量流体中に配置すること、および、計量流体中の流体飽和試料の質量を測定すること、をさらに含むことができる。計量流体中の試料の質量m
fは式
で与えられる。
【0009】
式中、ρ
fは計量流体の密度である。この方法は、式
を使用して試料の体積V
cを決定することをさらに含むことができる。
【0010】
この方法は、式
を使用して試料のかさ密度ρ
bを決定することも含むことができる。
【0011】
この方法は、式
を使用して基質の体積V
mを決定することをさらに含むことができる。
【0012】
この方法は、式
を使用して地表下地層の基質または粒子の密度ρ
mを決定することも含むことができる。
【0013】
別の実施形態例は、コンピュータ可読媒体に保存されたコンピュータプログラムに関する。非一時的コンピュータ可読媒体は、例えば、コンピュータが地表下地層の流体飽和試料の空中質量を受け取る動作を実行するのを誘発するコンピュータ実行可能命令を有することができ、空中質量は、試料の質量、試料の周囲の流体の質量、および試料内部の流体の質量を含む。流体飽和試料の空中質量m
sは式
で与えられる。
【0014】
式中、ρ
mは地表下地層の基質の密度であり、ρ
lは試料の内部および周囲の流体の密度であり、V
mは基質の体積であり、V
φは試料内部の流体の体積であり、V
surは試料の周囲の流体の体積である。コンピュータ実行可能命令は、コンピュータがNMR測定値から試料内部の流体の体積V
φおよび試料の周囲の流体の体積V
surを決定するのを誘発することもできる。コンピュータ実行可能命令は、コンピュータが計量流体中の流体飽和試料の質量を受け取るのを誘発することもできる。計量流体中の試料の質量m
fは式
で与えられる。
【0015】
式中、ρ
fは計量流体の密度である。コンピュータ実行可能命令は、コンピュータが式
を使用して試料の体積V
cを計算するのを誘発することもできる。
【0016】
コンピュータ実行可能命令はさらに、コンピュータが式
を使用して試料のかさ密度ρ
bを計算するのを誘発することができる。
【0017】
コンピュータ実行可能命令はさらに、コンピュータが式
を使用して基質の体積V
mを計算するのを誘発することができる。
【0018】
コンピュータ実行可能命令はさらに、コンピュータが式
を使用して地表下地層の基質または粒子の密度ρ
mを計算するのを誘発することができる。
【0019】
別の実施形態例は、地表下地層の基質または粒子の密度を決定するためのシステムである。このシステムは、地表下地層の流体飽和試料および計量天秤を含むことができ、計量天秤は、流体飽和試料を受け取って試料の空中質量および流体中質量を出力するように構成され得る。このシステムは、1つまたは複数のプロセッサとコンピュータ実行可能命令を含み得る非一時的コンピュータ可読媒体とを有するコンピュータであって、コンピュータ実行可能命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、コンピュータが計量はかりから地表下地層の流体飽和試料の空中質量を取得するのを誘発する、コンピュータも含むことができる。空中質量は、試料の質量、試料の周囲の流体の質量、および試料内部の流体の質量を含むことができる。流体飽和試料の空中質量m
sは式
で与えられる。
【0020】
式中、ρ
mは地表下地層の基質の密度であり、ρ
lは試料の内部および周囲の流体の密度であり、V
mは基質の体積であり、V
φは試料内部の流体の体積であり、V
surは試料の周囲の流体の体積である。このシステムはNMRも含むことができ、NMRは、コンピュータに動作可能に接続され、NMRを使用して試料内部の流体の体積V
φおよび試料の周囲の流体の体積V
surを決定するように構成され得る。コンピュータは、NMRから試料内部の流体の体積V
φおよび試料の周囲の流体の体積V
surと、計量はかりから計量流体中の流体飽和試料の質量とを受け取るように構成され得る。計量流体中の試料の質量m
fは式
で与えられる。
【0021】
式中、ρ
fは計量流体の密度である。コンピュータ実行可能命令は、コンピュータが式
を使用して試料の体積V
cを決定するのを誘発することもできる。
【0022】
コンピュータ実行可能命令はさらに、コンピュータが式
を使用して試料のかさ密度ρ
bを決定するのを誘発することができる。
【0023】
コンピュータ実行可能命令はさらに、コンピュータが式
を使用して基質の体積V
mを決定するのを誘発することができる。
【0024】
コンピュータ実行可能命令はさらに、コンピュータが式
を使用して地表下地層の基質または粒子の密度ρ
mを決定するのを誘発することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の実施形態の一例による、地表下地層の試料またはドリルカッティングの例を示す図である。
【0026】
【
図2】本開示の実施形態の一例による、地表下地層の流体飽和試料の空中質量を決定するための装置例を示す図である。
【0027】
【
図3】本開示の実施形態の一例による、様々な量の洗浄流体を加えた地表下地層からの試料のNMRスペクトルの例を示す図である。
【0028】
【
図4】本開示のいくつかの実施形態例による、地表下地層の試料のNMR結果を示すグラフの例である。
【0029】
【
図5】本開示の実施形態の一例による、追加流体を少しも加えていない地表下地層からの試料のNMRスペクトルの例(一方のスペクトルが増分、他方のスペクトルが累積)を示す図である。
【0030】
【
図6】本開示の実施形態の一例による、地表下地層の試料のNMR結果を示すグラフの例である。
【0031】
【
図7】本開示の実施形態の一例による、追加流体(この例では1.5ml)を加えた地表下地層の試料からのNMR結果の例を示す図である。
【0032】
【
図8】本開示の実施形態の一例による、地表下地層の試料からのNMR結果を示すグラフの例である。
【0033】
【
図9】本開示のいくつかの実施形態例による、地表下地層の流体飽和試料の流体中質量を決定するための装置例を示す図である。
【0034】
【
図10】本開示のいくつかの実施形態例による、地表下地層の基質または粒子の密度を決定する方法のステップ例を示す図である。
【0035】
【
図11】本開示のいくつかの実施形態例による、地表下地層の基質または粒子の密度を決定するためのコンピュータセットアップ例である。
【0036】
【
図12】本開示のいくつかの実施形態例による、地表下地層の基質または粒子の密度を決定するためのシステム例である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
開示される実施形態の例は、試料調製をほとんどせずに複数の主要な貯留層物性パラメータを正確に得るために、核磁気共鳴(NMR)測定値と空中および流体中の質量測定値とを組み合わせたものを使用してドリルカッティングを測定し分析する方法を提案する。実施形態の例は、飽和ドリルカッティングを使用してかさ密度を測定する新しい正確な方法を提示し、飽和ドリルカッティングは、任意の掘削される炭化水素坑井に容易に利用できる。この方法は、NMRと重量測定技術とを組み合わせたものであり、その結果には、ドリルカッティングのかさ密度、粒子密度、気孔率、および気孔径分布が含まれる。
【0038】
ここで図を参照すると、
図1は、炭化水素貯留層などの地表下地層のドリルカッティングなどの試料10を示す。例示の方法では、第1のステップは、地表下地層を代表するドリルカッティング10を収集することである。次のステップは、通常はケービングからのものである大きいサイズの粒子を除去するように、および、掘削泥水と共にアップホールとダウンホールのサイクルで複数回循環しているかもしれない小さ過ぎるサイズの粒子を除去するようにサイズ分類をすることである。いくつかの実施形態では、流体飽和試料の少なくとも1つの寸法が約0.5mm〜3mmであり得る。しかしながら、これらの制限は、特定の地層および掘削に使用されるビットに応じて調整することができる。
【0039】
さらに、収集されたカッティングは、十分な流体を使用して、その流体が、カッティングの表面に付着する掘削泥水からの小粒子、または質量測定値とNMR測定値の両方に影響を与え得る周囲の流体中の小粒子の影響を最小限に抑えるように洗浄され得る。洗浄は、ドリルカッティング上のガンマ線測定などの他の後続の測定にも役立つことがある。というのは、ガンマ線測定に対する小粒子の影響が大きくなり得るからである。
【0040】
図1の左側、Aと付された図は、体積V
surを有する、表面上の流体30を有するドリルカッティングチップ10を示す。流体エンベロープ内部のカッティングの体積はV
cとして与えることができる。
図1の右側、Bと付された図は、体積V
mおよび密度ρ
mを有する基質粒子20(球体または他の幾何形状であり得る)と体積V
Φを有し密度ρ
lの流体で満たされた孔隙15とでなるカッティングチップ10の内部の拡大部分である。
【0041】
この方法の次のステップは、収集されたドリルカッティング10の空中質量を測定することである。例えば、
図2は、カッティング試料10の空中質量を測定するために使用され得る支持装置12を備えた計量天秤25などの装置を示す。空中質量は、試料の質量、試料の周囲の流体の質量、および試料内部の流体の質量を含む。流体飽和試料の空中質量m
sは式
で与えられる。
【0042】
式中、ρ
mは地表下地層の基質の密度であり、ρ
lは試料の内部および周囲の流体の密度であり、V
mは基質の体積であり、V
φは試料内部の流体の体積であり、V
surは試料の周囲の流体の体積である。
【0043】
次のステップは、核磁気共鳴(NMR)を使用して試料内部の流体の体積V
φおよび試料の周囲の流体の体積V
surを別々に決定することである。カッティング内部の液体およびカッティング周囲の液体に対するNMR信号を明確に分離するために、十分な量の周囲流体が1回または段階的に使用され得る。粘土の鋭敏性の問題のために、非在来型プレイ(plays)内の多くの坑井が油性泥水(OBM)を使用して掘削される。開示される実施形態例は、2つの仮定、すなわち(1)頁岩カッティング内部の流体は短い緩和時間を有する、(2)OBMからの流体はカッティングの存在下でも長いT
2を有する、に基づいてカッティング表面上の流体およびカッティング試料の内部細孔からの流体のNMR信号を分離する新しい方法を提案する。
【0044】
図3は、本開示の実施形態の一例による、試料に様々な流体内容物を加えた地表下地層のNMR読取値(スペクトル)試料を示す例のグラフ35を示す。カッティング試料に対して一連のNMR実験を行うことができ、例えば
図3に示すようにT
2増分分布スペクトルを得ることができる。既知量の掘削流体、例えばディーゼル油をカッティング試料に徐々に加えることができ、測定を行うことができ、例えば、「1.5MLディーゼル油増分」は、元のカッティング試料に1.5mlのディーゼル油が加えられた後の増分T
2分布曲線を表す。T
2分布の2つのモード、例えば、自由流体を表す25ms前後の大きなモードおよびカッティング試料内部の流体を表す1ms未満の小さなピークに注目することができる。
【0045】
カッティングに対する一連のNMR実験では、カッティング外側のOBMのT
2信号のモード位置は、さらなる流体が徐々に加えられるにつれてより長い緩和時間へ移動し(
図3)、加えられた流体の体積が表面上の流体の元の量に比べて比較的大きいときに移動が止まることを示している。また、T
2分布には2つのモードがあるので(
図3)、大量の掘削流体が存在するときのカッティング内部の流体の分離および定量化が達成できることにも留意されたい。25ms前後の大きなピークはカッティング外側の自由流体を表し、1ms未満の小さなピークはカッティング試料内部の流体を表す。最上の曲線(1.5mlディーゼル油増分、ただし、「増分」という語は増分T
2分布を表す)において、2つのモードは最下の曲線(受け取ったままの、すなわち、追加のディーゼル油は加えられない)よりもさらに明確に分離される。
【0046】
図4は、カッティング試料に加えられた追加流体(ml、横軸)に対するNMRによって測定された流体の総量(縦軸)の例のグラフ40を示す。このグラフから、線45が1のすぐ上で縦軸と交差していることが分かり、この交差部は、ディーゼル油を加える前のカッティング試料の表面上および内部の流体の総量である。
図5は、追加流体が加えられていない場合のグラフ50、V
surとV
Φの分離の単一点法を示す。ここでは、NMR測定からの流体のT
2分布の累積体積52(右側の目盛り)およびNMR測定からの流体の増分体積53(左側の目盛り)がプロットされていることが分かる。
【0047】
上記方法のこのバリエーションでは、追加の流体は加えられない。カットオフ51は増分T
2分布線から選択される(
図5の増分曲線の谷に描かれた垂直境界線、その線の左側の体積はカッティング内部の流体体積を表し、線の右側の体積は表面上の体積、またはさらなる流体が加えられるときの可動かさ体積(BVM)を表す)。カッティング内部の流体の全体積(54、破線)は累積曲線52から読み取ることができ、カッティングの表面上の体積は、全体積とカッティング内部の体積との差(
図5のV
sur、または既知の量の追加流体が加えられるときの実験でのBVM)である。
【0048】
過剰な流体が存在する場合、
図6のようにプロットをグラフで示すことができる。
図4に示した線45と同様に、
図6に示すグラフ60の線65は、追加流体がカッティング試料に加えられるにつれてNMRからのBVM体積測定値が増加することを示す。グラフ60は、V
surおよびV
Φを分離するためのBVMからの多点測定値、すなわちカッティング試料に加えられた流体の量に対するBVMを示す。回帰線65の切片は、カッティングの表面上の流体の体積を示す(V
surは回帰線の切片、すなわちこの例では1.0073mlである)。
【0049】
図7は、1.5mlの流体が試料に加えられた場合の別の例のグラフ70を示す。この場合も、NMR測定からの流体のT
2分布の累積体積75(右側の目盛り)とNMR測定からの流体のT
2分布の増分体積72(左側の目盛り)の両方がプロットされている。T
2分布曲線の増分体積72(左側の目盛り)から、「T
2BVM」と表記した可動かさ体積の平均が見られる。様々な量の流体が試料に加えられると、ここで概説される方法またはここで概説される方法に類似した他の方法で一連の「T
2BVM」値を得ることができ、「T
2BVM」の使用は
図8に示す。
図8に示すグラフ80は、T
2BVM値を使用してカッティングの表面上の流体の量V
surを得る第3の方法を示す。回帰線85の切片の負は、試料の表面上の流体の体積である(V
surは回帰線の負の切片、すなわち、この例では1.00222mlである、ただしT
2bulkmudは、試料を洗い流すための流体(掘削流体またはその他であり得る)のT
2緩和時間である。
【0050】
次のステップは、計量流体中の試料質量を測定することである。
図9は、実施形態の一例による、試料の流体中質量を測定するための装置25を含む実験セットアップ90を示す。この例では、流体飽和試料10は計量流体94中に配置することができ、計量はかり25は、試料10の流体中質量を測定するために使用することができる。計量流体は、掘削流体、または掘削流体と同様の重量測定特性を有する流体とすることができる。実施形態の一例では、計量流体はディーゼル油である。
【0051】
計量流体中の試料の質量m
fは式
で与えられる。
【0052】
式中、ρ
fは計量流体の密度である。貯留層の特性評価に関する以下のセクションで概説するように、2つの質量測定値とNMR測定値とを組み合わせたものから複数の主要なパラメータを得ることができる。これらのパラメータは、気孔率、カッティングの全体積、かさ密度、および基質/粒子密度を含む。例えば、この方法は、式
を使用して試料の体積V
cを決定することをさらに含むことができる。
【0053】
次のステップでは、この方法は、式
を使用して試料のかさ密度ρ
bを決定することも含む。
【0054】
次のステップでは、この方法は、式
を使用して基質の体積V
mを決定することをさらに含むことができる。
【0055】
最後のステップとして、この方法は、式
を使用して地表下地層の基質または粒子の密度ρ
mを決定することを含むことができる。
【0056】
これらの測定は、掘削された坑井全体に沿ってカッティング試料に対して行うことができ、したがって、垂直坑井または水平坑井の不均一性を評価するためにデータを得ることができる。このデータは、潜在的には、非在来型貯留層の破砕ステージの数および配置を最適化するためにリアルタイムで使用することができる。
【0057】
ここでは、試料支持装置(
図1の12)の寄与は、試料支持装置の体積がカッティングの体積に比べて最小になるように試料支持装置が選択されるので、無視される。ドリルカッティングの分析に必要な3種類の流体、すなわち、カッティング試料内の流体、掘削流体、および計量流体がある。坑井の現場では、岩石の浸透性に応じて、内部の流体は掘削流体で様々な程度に置き換えられる可能性がある。例えば、非在来型岩石のカッティングでは、カッティングの表面上の流体は内部の流体とは異なる可能性があるのに対して、非常に浸透性の高い岩石のカッティングでは、カッティング内部の元の流体は掘削流体でかなり迅速に置き換えられる。掘削流体を計量流体として選択した場合、最も複雑な状況は、2種類の流体、すなわち細孔内部の元の流体および掘削流体を伴う。高浸透性岩石に対して3つの流体のすべてが同じである場合、以下の計算はさらに簡略化され得る。以下の計算では、例として2種類の流体を使用する。
【0058】
図10は、地表下地層の基質または粒子の密度を決定する例の方法100を示す。方法は、ステップ102で地表下地層の流体飽和試料の空中質量を測定することを含み、空中質量は、試料の質量、試料の周囲の流体の質量、および試料内部の流体の質量を含む。流体飽和試料の空中質量m
sは式
で与えられる。
【0059】
式中、ρ
mは地表下地層の基質の密度であり、ρ
lは試料の内部および周囲の流体の密度であり、V
mは基質の体積であり、V
φは試料内部の流体の体積であり、V
surは試料の周囲の流体の体積である。方法100は、ステップ104で、核磁気共鳴(NMR)を使用して試料内部の流体の体積V
φおよび試料の周囲の流体の体積V
surを別々に決定することも含む。方法100は、ステップ106で試料を所定の体積の計量流体中に配置すること、および、ステップ108で計量流体中の流体飽和試料の質量を測定すること、をさらに含むことができる。計量流体中の試料の質量m
fは式
で与えられる。
【0060】
式中、ρ
fは計量流体の密度である。ステップ110で、方法100は、式
を使用して試料の体積V
cを決定することをさらに含むことができる。
【0061】
方法100は、式
を使用して試料のかさ密度ρ
bを決定することも含むことができる。
【0062】
ステップ112で、方法100は、式
を使用して基質の体積V
mを決定することをさらに含むことができる。
【0063】
最後に、ステップ114で、方法100は、式
を使用して地表下地層の基質または粒子の密度ρ
mを決定することを含むことができる。
【0064】
〔コンピュータ可読媒体〕
別の実施形態例は、コンピュータ可読媒体に保存されたコンピュータプログラムに関する。
図11を参照すると、
図1〜
図10を参照して説明した前述のプロセスは、コンピュータ可読コードで具現化することができる。コードは、例えば、ディスクドライブ156、158で読み取ることができるフロッピーディスク164、CD−ROM162や汎用プログラマブルコンピュータの一部を形成する磁気(または他種)ハードドライブ160などの非一時的コンピュータ可読媒体に保存することができる。当該技術分野で知られているコンピュータは、中央処理装置150と、キーボード154などのユーザ入力装置と、フラットパネルLCDディスプレイやブラウン管ディスプレイなどのユーザディスプレイ152と、を含む。この実施形態によれば、コンピュータ可読媒体160、162、164は、コンピュータが上記に記載され、前の図に関して説明された動作を実行するのを誘発するように動作可能なロジックを含む。非一時的コンピュータ可読媒体160、162、164は、例えば、コンピュータが地表下地層の流体飽和試料の空中質量を受け取る動作を実行するのを誘発するコンピュータ実行可能命令を有することができ、空中質量は、試料の質量、試料の周囲の流体の質量、および試料内の流体の質量を含む。流体飽和試料の空中質量m
sは式
で与えられる。
【0065】
式中、ρ
mは地表下地層の基質の密度であり、ρ
lは試料の内部および周囲の流体の密度であり、V
mは基質の体積であり、V
φは試料内部の流体の体積であり、V
surは試料の周囲の流体の体積である。コンピュータ実行可能命令は、コンピュータが核磁気共鳴(NMR)を使用して試料内部の流体の体積V
φおよび試料の周囲の流体の体積V
surを決定するのを誘発することもできる。コンピュータ実行可能命令は、コンピュータが計量流体中の流体飽和試料の質量を受け取るのを誘発することもできる。計量流体中の試料の質量m
fは式
で与えられる。
【0066】
式中、ρ
fは計量流体の密度である。コンピュータ実行可能命令は、コンピュータが式
を使用して試料の体積V
cを決定するのを誘発することもできる。
【0067】
コンピュータ実行可能命令はさらに、コンピュータが式
を使用して試料のかさ密度ρ
bを決定するのを誘発することができる。
【0068】
コンピュータ実行可能命令はさらに、コンピュータが式
を使用して基質の体積V
mを決定するのを誘発することができる。
【0069】
コンピュータ実行可能命令はさらに、コンピュータが式
を使用して地表下地層の基質または粒子の密度ρ
mを決定するのを誘発することができる。
【0070】
〔システムの例〕
別の実施形態例は、地表下地層の基質または粒子の密度を決定するためのシステム1200である。システム1200は、
図1、
図2、および
図9に示すような地表下地層の流体飽和試料10を含むことができる。システム1200は、
図2および
図9に示すような計量はかり25も含むことができ、計量はかり25は、流体飽和試料10を受け取るとともに、試料10の空中質量および流体中質量を出力するように構成され得る。システム1200は、1つまたは複数のプロセッサ150および非一時的コンピュータ可読媒体160を有するコンピュータ200も含むことができ、非一時的コンピュータ可読媒体160は、1つまたは複数のプロセッサ150によって実行されると、コンピュータ200が計量はかり25から地表下地層の流体飽和試料10の空中質量を受け取るのを誘発するコンピュータ実行可能命令を含むことができる。空中質量は、試料の質量、試料の周囲の流体の質量、および試料内部の流体の質量を含むことができる。流体飽和試料の空中質量m
sは式
で与えられる。
【0071】
式中、ρ
mは地表下地層の基質の密度であり、ρ
lは試料の内部および周囲の流体の密度であり、V
mは基質の体積であり、V
φは試料内部の流体の体積であり、V
surは試料の周囲の流体の体積である。システム1200はNMR装置500も含むことができ、NMR装置500は、コンピュータ200に動作可能に接続され、核磁気共鳴(NMR)を使用して試料内部の流体の体積V
φおよび試料の周囲の流体の体積V
surを決定するように構成され得る。コンピュータ200は、NMR装置500から試料内部の流体の体積V
φおよび試料の周囲の流体の体積V
surを受け取り、計量はかり25から計量流体中の流体飽和試料の質量を受け取るように構成され得る。計量流体中の試料の質量m
fは式
で与えられる。
【0072】
式中、ρ
fは計量流体の密度である。コンピュータ実行可能命令は、コンピュータが式
を使用して試料の体積V
cを決定するのを誘発することもできる。
【0073】
コンピュータ実行可能命令はさらに、コンピュータが式
を使用して試料のかさ密度ρ
bを決定するのを誘発することができる。
【0074】
コンピュータ実行可能命令はさらに、コンピュータが式
を使用して基質の体積V
mを決定するのを誘発することができる。
【0075】
コンピュータ実行可能命令はさらに、コンピュータが式
を使用して地表下地層の基質または粒子の密度ρ
mを決定するのを誘発することができる。
【0076】
本発明は、限られた数の実施形態に関して記述されているが、本開示の利益を有する当業者なら、本明細書で開示される本発明の範囲から逸脱しない他の実施形態が考案され得ることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるべきである。
【要約】
本明細書では、地表下地層の基質または粒子の密度を決定するための方法およびシステムが記述される。この方法は、地表下地層の流体飽和試料の空中質量を測定することを含み、空中質量は、試料の質量、試料の周囲の流体の質量、および試料内部の流体の質量を含む。試料内部の流体の体積V
φおよび試料の周囲の流体の体積V
surは核磁気共鳴(NMR)を使用して決定される。次いで、試料は所定の体積の計量流体中に沈めることができ、計量流体中の流体飽和試料の質量m
fが測定される。測定された値および決定された値を使用して、試料の体積V
c、試料のかさ密度ρ
b、基質の体積V
m、および地表下地層の基質もしくは粒子の密度ρ
mを決定することができる。