(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739763
(24)【登録日】2020年7月28日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】回転式熱処理炉における扉の開閉機構
(51)【国際特許分類】
F27B 9/30 20060101AFI20200730BHJP
F27D 1/18 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
F27B9/30
F27D1/18 N
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-103143(P2016-103143)
(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-211112(P2017-211112A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】591114102
【氏名又は名称】大同プラント工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516152996
【氏名又は名称】明研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】杉本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】上原 孝
(72)【発明者】
【氏名】橋西 哲哉
【審査官】
伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−180568(JP,A)
【文献】
特開平07−270082(JP,A)
【文献】
中国実用新案第203432348(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00− 9/40
F27D 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式熱処理炉の炉本体に開設されたワークの装入及び抽出用の開口を開閉する扉の開閉機構であって、シリンダ機構と、4リンク機構と、支腕とを備え、
前記4リンク機構は、静止リンクと、駆動リンクと、中間リンクと、従動リンクとを備え、前記静止リンクの一端部と前記駆動リンクの他端部とが、また前記駆動リンクの一端部と前記中間リンクの他端部とが、更に前記中間リンクの一端部と前記従動リンクの他端部とが、更にまた前記従動リンクの一端部と前記静止リンクの他端部とが、相互に軸受されており、
前記シリンダ機構のシリンダロッドの先端部が前記4リンク機構の前記駆動リンクに接続されており、また前記支腕の基端部が前記4リンク機構の前記中間リンクに接続されると共に前記支腕の先端部が前記扉に接続されていて、前記4リンク機構の前記中間リンクが前記静止リンクよりも長く形成されていることを特徴とする回転式熱処理炉における扉の開閉機構。
【請求項2】
4リンク機構の中間リンクの長さが静止リンクの長さの1.1〜1.5倍である請求項1記載の回転式熱処理炉における扉の開閉機構。
【請求項3】
4リンク機構の駆動リンクの回転角が60〜110度である請求項1又は2記載の回転式熱処理炉における扉の開閉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転式熱処理炉における扉の開閉機構に関し、更に詳しくは回転式熱処理炉の炉本体に開設されたワークの装入及び抽出用の開口を開閉する扉の開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
閉鎖系の竪置き円筒状の炉本体と、該炉本体内の軸線方向(上下方向)に軸受された回転軸と、該回転軸の上下方向に1段又は2段以上で取付けられた棚板と、ヒータ等とを備え、該炉本体に開設された開口から該棚板上へロボットアームにより装入したワークを、該回転軸と共に該棚板を間欠的に回転させながら熱処理した後、該開口から該ロボットアームにより抽出するようにした回転式熱処理炉が使用されている。かかる回転式熱処理炉の開口にはこれを開閉する扉が装備されており、該扉には開閉機構が接続されている。
【0003】
従来、前記のような回転式熱処理炉における扉の開閉機構として、扉を炉本体の機枠にヒンジで取付け、該扉にはシリンダ機構のシリンダロッドの先端部を接続して、シリンダ機構によるシリンダロッドの進退により、扉をヒンジを支点としてドア方式で開閉するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところが、かかる従来の回転式熱処理炉における扉の開閉機構には、1)扉をドア方式で開閉するため、ワークの装入及び抽出を行なうロボットアームと扉との動作干渉域が広く、その分だけワークの装入及び抽出に時間がかかり、2)ワークの装入及び抽出に時間がかかる分だけ熱処理炉から開口を介して放出される熱エネルギの損失が大きく、3)扉をドア方式で開いたときに扉の内側面からの輻射熱がロボットアームに向けられるため、ロボットアームの輻射熱対策が必要であり、4)扉をドア方式で閉じるときに扉の内側面が開口の周縁に衝突して破損し易く、密閉性も不充分、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−163231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、回転式熱処理炉における開口を開閉するための扉がドア方式で開閉することに起因する複数の問題、すなわち1)ワークの装入及び抽出を行なうロボットアームと扉との動作干渉域が広く、その分だけワークの装入及び抽出に時間がかかり、2)ワークの装入及び抽出に時間がかかる分だけ熱処理炉から開口を介して放出される熱エネルギの損失が大きく、3)扉をドア方式で開いたときに扉の内側面からの輻射熱がロボットアームに向けられるため、ロボットアームの輻射熱対策が必要であり、4)扉をドア方式で閉じるときに扉の内側面が開口の周縁に衝突して破損し易く、密閉性も不充分、という問題を解決する回転式熱処理炉における扉の開閉機構を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決する本発明は、回転式熱処理炉の炉本体に開設されたワークの装入及び抽出用の開口を開閉する扉の開閉機構であって、シリンダ機構と、4リンク機構と、支腕とを備え、該シリンダ機構のシリンダロッドの先端部が該4リンク機構の駆動リンクに接続されており、また該支腕の基端部が該4リンク機構の中間リンクに接続されると共に該支腕の先端部が該扉に接続されていて、該4リンク機構の中間リンクが静止リンクよりも長く形成されていることを特徴とする回転式熱処理炉における扉の開閉機構に係る。
【0008】
本発明に係る扉の開閉機構は回転式熱処理炉における扉の開閉機構である。扉の開閉機構を除き、回転式熱処理炉それ自体は、従来のものと同様、閉鎖系の竪置き円筒状の炉本体と、該炉本体内の軸線方向(上下方向)に軸受された回転軸と、該回転軸の上下方向に1段又は2段以上で取付けられた棚板と、ヒータ等とを備え、該炉本体に開設された開口から該棚板上へロボットアームにより装入したワークを、該回転軸と共に該棚板を間欠的に回転させながら熱処理した後、該開口から該ロボットアームにより抽出するようになっている。棚板の段数によっては炉本体に2個以上の複数の開口が開口されている場合があるが、この場合には各開口毎で同様にワークの装入及び抽出が行なわれる。
【0009】
本発明に係る扉の開閉機構は、シリンダ機構と、4リンク機構と、支腕とを備えている。4リンク機構は、静止リンク(固定リンク)と、駆動リンクと、中間リンクと、従動リンクとを備え、静止リンクの一端部と駆動リンクの他端部とが、また駆動リンクの一端部と中間リンクの他端部とが、更に中間リンクの一端部と従動リンクの他端部とが、更にまた従動リンクの一端部と静止リンクの他端部とが、相互に軸受されていて、静止リンクが通常は炉本体の機枠に支持部材を介して取付けられ、同様にシリンダ機構のシリンダ筒も通常は炉本体の機枠に支持部材を介して取付けられている。
【0010】
本発明に係る扉の開閉機構では、シリンダ機構のシリンダロッドの先端部が4リンク機構の駆動リンクに接続されており、また支腕の基端部が4リンク機構の中間リンクに接続されると共に該支腕の先端部が扉に接続されていて、4リンク機構の中間リンクが静止リンクよりも長く形成されている。一般に4リンク機構では、駆動リンクに駆動源が接続され、また従動リンクに従動先が接続されるが、本発明に係る扉の開閉機構では、駆動リンクにシリンダ機構のシリンダロッドの先端部(駆動源)が接続されているものの、従動リンクではなく中間リンクに支腕を介して扉(従動先)が接続されているのであり、しかもかかる4リンク機構の中間リンクは静止リンクよりも長く形成されているのである。
【0011】
本発明に係る扉の開閉機構では、前記したように4リンク機構の中間リンクは静止リンクよりも長くなっているが、中間リンクの長さは静止リンクの長さの1.1〜1.5倍であることが好ましい。また4リンク機構の駆動リンクの回転角(静止リンクの駆動リンク側への延長上と駆動リンクとの間の角度)が60〜110度であることが好ましい。
【0012】
以上説明した本発明に係る扉の開閉機構では、シリンダ機構を作動させてシリンダロッドを前進させると、4リンク機構の駆動リンク、中間リンク及び支腕を介し扉が全体として前進するが、その前進状況は、あたかも楕円の弧のように、当初は炉本体の周面に沿うかの如く前進するが、終盤は炉本体に開設された開口を斜め上方から覆うかの如く前進して、開口周縁の炉本体に密着し、扉を閉じる。扉を開くときは、以上のような前進状況と逆の後退状況となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る扉の開閉機構によると、1)扉を炉本体の周面に沿いあたかも楕円の弧のように開閉するため、ワークの装入及び抽出を行なうロボットアームと扉との動作干渉域が狭くなり、その分だけワークの装入及び抽出にかかる時間が短くなり、2)ワークの装入及び抽出にかかる時間が短くなる分だけ熱処理炉から開口を介して放出される熱エネルギの損失が小さくなり、3)扉を開いたときに扉の内側面からの輻射熱は炉本体に向けられ、ロボットアームに向けられることはないため、ロボットアームの輻射熱対策は必要でなく、4)扉をあたかも楕円の弧のように閉じるときに扉の内側面が開口の周縁に無理なく密着するため、開口の周縁を破損することはなく、密閉性も良い、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る扉の開閉機構を扉を閉じた状態で例示する横断面図。
【
図2】
図1の扉の開閉機構において扉を開いた状態から閉じた状態へと作動させるときの状態を示す部分拡大横断面図。
【実施例】
【0015】
図1において、回転式熱処理炉11は、閉鎖系の竪置き円筒状の炉本体12と、炉本体12内の軸線方向(上下方向)に軸受された回転軸13と、回転軸13に取付けられた円筒14の上下方向に2段以上で取付けられた棚板15と、図示しないヒータ等とを備え、炉本体12に開設された開口21から棚板15上へロボットアーム(図示しない、以下同じ)により装入したワーク(図示しない、以下同じ)を、回転軸13及び円筒14と共に棚板15を間欠的に回転させながら熱処理した後、開口21からロボットアームにより抽出するようになっている。
図1に例示した回転式熱処理炉11では、図示を省略するが、炉本体12に2段以上の各棚板14,14・・を臨んで2個以上の開口21,21・・が開設されており、これらの各開口21,21・・毎で同様にワークの装入及び抽出が行なわれるようになっている。
【0016】
図1において、扉31の開閉機構41は、シリンダ機構51と、4リンク機構61と、支腕71とを備えている。4リンク機構61は、静止リンク(固定リンク)62と、駆動リンク63と、中間リンク64と、従動リンク65とを備え、静止リンク62の一端部と駆動リンク63の他端部とが、また駆動リンク63の一端部と中間リンク64の他端部とが、更に中間リンク64の一端部と従動リンク65の他端部とが、更にまた従動リンク65の一端部と静止リンク62の他端部とが、相互に軸受されていて、静止リンク62は炉本体12の機枠16に支持部材17を介して取付けられ、同様にシリンダ機構51のシリンダ筒52も炉本体12の機枠16に支持部材17を介して取付けられている。
【0017】
図1の扉の開閉機構41は、シリンダ機構51のシリンダロッド53の先端部が4リンク機構61の駆動リンク63に接続されており、また支腕71の基端部が4リンク機構61の中間リンク64に接続されると共に支腕71の先端部が扉31に接続されていて、4リンク機構61の中間リンク64が静止リンク62よりも長く形成されている。
図1の扉の開閉機構41では、駆動リンク63にシリンダ機構51のシリンダロッドの先端部(駆動源)53が接続されており、また従動リンク65ではなく中間リンク64に支腕71を介して扉(従動先)31が接続されていて、しかもかかる4リンク機構61の中間リンク64は静止リンク62よりも長く形成されているのである。より具体的には中間リンク64は静止リンク62の1.25倍の長さになっており、また駆動リンク63の回転角(静止リンク62の駆動リンク63側への延長上と駆動リンク63との間の角度θ)は65〜100度となっているのである。
【0018】
図2は
図1の扉の開閉機構における扉の開閉状態を示しているが、説明の便宜上、扉が
図1と同じ閉じた状態にあるときは
図1と同じ符号で示し、扉が開いた状態にあるときは各符号にaを付記して示している。シリンダ機構51のシリンダロッドを前進させて、4リンク機構及び支腕を介して扉を開いた状態から閉じた状態にするとき、4リンク機構は61aの状態から61の状態に作動し、また支腕は71aの状態から71の状態に作動して、扉を31aの状態から31bの状態を介して31の状態に作動させている。全体として扉は、図において一点鎖線で示す軌跡Aのように作動しているのである。
【0019】
図1及び
図2に示した扉の開閉機構では、シリンダ機構51を作動させてシリンダロッド53を前進させると、4リンク機構61の駆動リンク63、中間リンク64及び支腕71を介し扉31が全体として前進するが、その前進状況は、あたかも楕円の弧のように、当初は炉本体12の周面に沿うかの如く前進するが、終盤は炉本体12に開設された開口21を斜め上方から覆うかの如く前進して、開口21の周縁の炉本体12に密着して扉31を閉じ、扉31を開くときは、以上のような前進状況と逆の後退状況となるのである。
【符号の説明】
【0020】
11 回転式熱処理炉
12 炉本体
13 回転軸
14 円筒
15 棚板
21 開口
31,31a,31b 扉
41 開閉機構
51 シリンダ機構
53 シリンダロッド
61,61a 4リンク機構
62 静止リンク
63,63a 駆動リンク
64,64a 中間リンク
65,65a 従動リンク
71,71a 支腕