特許第6739774号(P6739774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6739774がんの治療、予防、改善、抑制又は転移抑制用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739774
(24)【登録日】2020年7月28日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】がんの治療、予防、改善、抑制又は転移抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/02 20060101AFI20200730BHJP
   A61K 36/06 20060101ALI20200730BHJP
   A61K 36/064 20060101ALI20200730BHJP
   A61K 36/18 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200730BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20200730BHJP
   A23L 33/145 20160101ALI20200730BHJP
   C12P 1/02 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   A61K36/02
   A61K36/06
   A61K36/064
   A61K36/18
   A61P35/00
   A23L33/105
   A23L33/145
   C12P1/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-120159(P2018-120159)
(22)【出願日】2018年6月25日
(65)【公開番号】特開2020-2025(P2020-2025A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2019年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(73)【特許権者】
【識別番号】508352584
【氏名又は名称】株式会社リスペクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 定紀
【審査官】 金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/032568(WO,A1)
【文献】 特開2011−236245(JP,A)
【文献】 国際公開第98/001042(WO,A1)
【文献】 特開2006−298871(JP,A)
【文献】 Biol Pharm Bull,2012年,35(6), 984-987
【文献】 Journal of Food Biochemistry,2003年,27(6), 449-459
【文献】 Annals of the New York Academy of Sciences,2009年,1155(1), 273-277
【文献】 ニューフードインダストリー,1996年,38(1), 65-68
【文献】 ITO式 Premium酵素 パンフレット,2017年11月
【文献】 リスペクト社パンフレット
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/02
A61K 36/06
A61K 36/064
A61K 36/18
A23L 33/105
A23L 33/145
C12P 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ITO Probioエキスを有効成分とする、がんの治療、改善、進行抑制又は転移抑制用組成物であって、
ITO Probioエキスは、pH1の環境下で生存可能であり且つ完全培地で胞子形成能を示すサッカロマイセス・セレビシエに属する酵母を含み、
ITO Probioエキスの原料が、野菜類、果物類、豆類、糖類、海藻類、及びキノコ類を含む、組成物。
【請求項2】
前記ITO Probioエキスは、前記酵母を用いて植物エキスを発酵したものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
飲食品又は医薬品である、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの治療、予防、改善、抑制又は転移抑制用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年の間、細胞毒性の化学療法が、最大耐量(MTD)に従ってがんの体系的な管理を支配してきた。MTD療法は、最も高い治療効果を達成するために、最も高い許容される薬の投与量が患者に投与されることを必要とする。低い腫瘍選択度のために健康な組織の回復と骨髄抑制を減少させるために、MTD療法は延長することができない。治療休止期間における、腫瘍の速い増殖と転移のために、化学療法剤抵抗性と加速した血管新生を伴った急激ながん細胞の増殖が起こりうる。それ故、進んだステージのがんの管理の見直しが、サプリメントと治療を組み合わせることによって、最大耐性から最少有効量へ進んでいる。最たる例は、抗PD-1抗体でも、効果と安全性に関して、非常に大雑把な用量・反応関係はあっても、きれいな「用量・反応曲線」が出にくいこと、ごく少量でも安全で良く効いた症例がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Topalian SL, et al. Safety, Activity, and Immune Correlates of Anti-PD-1 Antibody in Cancer. N Engl J Med 2012;366:2443-2454.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、サプリメント(食品)として使用可能であり優れた抗がん作用及び抗転移作用を有する、がんの治療、予防、改善、抑制又は転移抑制用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、pH1の環境下で生存可能であり且つ完全培地で胞子形成能を示す酵母を用いて植物エキスを発酵することにより得られた植物発酵エキスが優れた抗がん作用及び抗転移作用を示すことを見出した。
【0006】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次のがんの治療、予防、改善、抑制又は転移抑制用組成物を提供するものである。
【0007】
項1.植物発酵エキスを有効成分とする、がんの治療、予防、改善、抑制又は転移抑制用組成物であって、
該植物発酵エキスは、pH1の環境下で生存可能であり且つ完全培地で胞子形成能を示す酵母を含む、組成物。
項2.前記植物発酵エキスは、前記酵母を用いて植物エキスを発酵したものである、項1に記載の組成物。
項3.前記酵母が、サッカロマイセス・セレビシエに属する酵母である、項1又は2に記載の組成物。
項4.飲食品又は医薬品である、項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の植物発酵エキスは、優れた抗がん作用及び抗転移作用を有するので、がんの治療、予防、改善、抑制又は転移抑制用組成物の有効成分として有用である。
【0009】
また、本発明の植物発酵エキスは、植物エキスを発酵して製造する物であるので天然の物であり安全性が高く、サプリメント(食品)として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】マウスへ4T1-luc細胞移植後の移植腫瘍を示す写真である。
図2】マウスへ4T1-luc細胞移植後の移植腫瘍の腫瘍体積(mm3)の経時変化を示すグラフである。データは平均±SEMを示す。n=5
図3】マウスへ4T1-luc細胞移植後の肺を示す写真である。
図4】マウスへ4T1-luc細胞移植後の肺のルシフェラーゼ活性を示すグラフである。データは平均±SEMを示す。n=5
図5】マウスへ4T1-luc細胞移植後の脾臓を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
なお、本明細書において「含有する、含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0013】
本発明のがんの治療、予防、改善、抑制又は転移抑制用組成物(以下、「本発明の組成物」と称することもある)は、植物発酵エキスを有効成分とすることを特徴とし、該植物発酵エキスは、pH1の環境下で生存可能であり且つ完全培地で胞子形成能を示す酵母を含むことを特徴とする。植物発酵エキスは、好ましくは、pH1の環境下で生存可能であり且つ完全培地で胞子形成能を示す酵母を用いて植物エキスを発酵することにより製造されたものである。
【0014】
本発明において「pH1の環境下で生存可能である」とは、pH1の環境下で酵母が、好ましくは3時間以上、より好ましくは4時間以上、更に好ましくは5時間以上生存可能であることを意味する。このように耐酸性が高いことで、酵母を口から摂取した場合、胃の中で死滅することなく、生きたまま腸に届くことが可能である。
【0015】
本発明において「完全培地で胞子形成能を示す」とは、YPD培地などの完全培地で酵母を培養した場合に、好ましくは10%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上の胞子形成率を示すことを意味する。このように、完全培地でも胞子形成を行うということは、製品中でも胞子を形成することになり、製品が高い安定性を有することになる。
【0016】
本発明の植物発酵エキスの原料となる植物としては、特に制限されず、例えば、青シソ、赤シソ、ウリ、エゴマ、大麦若葉、カブ、カボチャ、カリフラワー、キャベツ、キュウリ、ケール、ゴーヤ、ゴボウ、セロリ、小松菜、ズッキーニ、春菊、生姜、大根、タマネギ、チンゲン菜、トマト、茄子、ニラ、人参、ニンニク、ネギ、パセリ、ピーマン、フキ、ブロッコリー、ほうれん草、水菜、メキャベツ、モロヘイヤ、ヨモギなどの野菜類、アケビ、イチゴ、イチジク、柿、キンカン、桑の実、スダチ、夏ミカン、ハッサク、ブルーベリー、ミカン、柚子、レモン、ブラックベリー(野イチゴ)などの果物類、大豆などの豆類、玄米などの穀類、黒糖などの糖類、コンブ、ヒバマタなどの海草類、アガリスク、カバノアナタケ、椎茸、舞茸などのキノコ類等が挙げられる。原料の野菜としては、上に挙げた物全て(59種類)を使用することが好ましい。これらの59種類の野菜の中には多様なアブラナ科の野菜が含まれている。原料の野菜は、特に、化学肥料及び農薬を使用していない物、旬に収穫した物、及び露地栽培の物を使用することが望ましい。化学肥料及び農薬を使用していない物としては、例えば、有機JAS規格を満たす農産物が挙げられる。
【0017】
原料の野菜から野菜エキスを抽出する方法としては、特に制限されず、公知の各種の方法を使用することができる。中でも、浸透圧抽出、特に黒糖を使用した浸透圧抽出により野菜エキスを抽出することが好ましい。この抽出工程において、野菜に付着している乳酸菌による乳酸発酵が生じることで、pHの低下が起こる。その結果、雑菌の増殖を抑制することができる。
【0018】
原料の野菜から野菜エキスが得られたら、野菜エキスを酵母による発酵に供する。発酵に使用する酵母としては、前述するpH1の環境下で生存可能であり且つ完全培地で胞子形成能を示す酵母が好ましく、そのような酵母の中でもサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属する酵母が特に好ましい。このような酵母を発酵に使用することで、最終的な製品中に当該酵母が含まれることになる。当該酵母が含まれることで、製品を摂取した場合、酵母が胃の中で死滅することなく生きたまま腸に届き、また、酵母が製品中で胞子を形成することで製品が高い安定性を有することになる。当該酵母は耐酸性が強いため、前述するように野菜エキスが低いpHを有していても生存可能で発酵を行うことが可能である。また、発酵に使用する酵母としては、食経験のある酵母であることが望ましい。
【0019】
発酵は、常法により行うことが可能であり、発酵における操作としては、例えば、温度、pH、湿度などの条件を発酵が好適に行われる範囲となるように管理すること、適宜攪拌を行うことなどが挙げられる。発酵の期間は、特に制限されず、好ましくは3ヶ月以上、より好ましくは6ヶ月以上、更に好ましくは9ヶ月以上、更により好ましくは1年以上、特に好ましくは2年以上、最も好ましくは3年以上である。
【0020】
本発明の植物発酵エキスとしては、例えば、株式会社リスペクトにより販売されている市販品を使用することができる。
【0021】
本発明のがんの治療、予防、改善、抑制又は転移抑制用組成物に含まれる植物発酵エキスの割合は、例えば、0.01〜99質量%、1〜80質量%、10〜70質量%などが挙げられる。
【0022】
本発明の組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、植物発酵エキス以外の公知の成分を適宜配合することができる。
【0023】
本発明の組成物は、飲食品(特に、保健、健康維持、増進等を目的とする飲食品(例えば、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品、栄養機能食品、又は機能性表示食品))、医薬品(医薬部外品も含む)などとして使用することができる。また、本発明の組成物は、がんの治療、予防、改善、抑制又は転移抑制作用を付与する添加剤についての意味も包含するものである。
【0024】
上記の飲食品には、植物発酵エキスをそのまま使用することもできるが、必要に応じて、ビタミン類、フラボノイド類、ミネラル類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、崩壊剤、滑沢剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することができる。
【0025】
飲食品には、動物(ヒトを含む)が摂取できるあらゆる飲食品が含まれる。飲食品の種類は、特に限定されず、例えば、乳製品;発酵食品(ヨーグルト、チーズ等);飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料のような清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、乳酸菌入り飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実酒のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、キャンデー、ゼリー、クッキー、ケーキ、プリン等);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素等)などが挙げられる。
【0026】
飲食品の製法も特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。
【0027】
飲食品をサプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択でき、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤等が挙げられる。
【0028】
飲食品の摂取量は、摂取者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜設定することができる。
【0029】
医薬品として調製する場合、植物発酵エキスをそのまま使用するか、又は医薬品において許容される無毒性の担体、希釈剤若しくは賦形剤とともに、タブレット(素錠、糖衣錠、フィルムコート錠、発泡錠、チュアブル錠、トローチ剤などを含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペーストなどの形態に調製して、医薬用の製剤にすることが可能である。
【0030】
医薬品の投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜決定することができる。
【0031】
以上説明した本発明の組成物は、ヒトを含む哺乳動物に対して適用されるものである。
【0032】
後述する実施例で示すように、本発明者らは、本発明の植物発酵エキスが優れた抗がん作用及び抗転移作用を示すことを見出した。
【0033】
そのため、本発明の植物発酵エキスは、優れた抗がん作用及び抗転移作用を有するので、がんの治療、予防、改善、抑制又は転移抑制用組成物の有効成分として好適に使用することができる。
【0034】
本発明の組成物が適用できるがんの種類としては、胃癌、大腸癌(直腸癌、結腸癌)、小腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、咽頭癌、食道癌、腎癌、胆のう及び胆管癌、頭頸部癌、膀胱癌、前立腺癌、乳癌、子宮癌(子宮頸癌、子宮体癌)、卵巣癌、脳腫瘍、胸腺腫、白血病、悪性リンパ腫等が挙げられる。
【0035】
また、本発明の植物発酵エキスは、植物エキスを発酵して製造する物であるので天然の物であり安全性が高い。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0037】
以下の実験で使用するITO Probioエキス(株式会社リスペクト)は、本発明の植物発酵エキスに対応する物である。
【0038】
<実験方法>
Balb/c雌性マウスの第2乳房皮内に4T1-luc細胞(マウスBalb/cfC3H種由来乳がん細胞)(105 cells)を移植することによって4T1転移モデルを作製した。4T1-luc細胞は、2つの主な理由からインビボモデルとして選択した。1) 4T1由来の腫瘍が悪性であるので、増殖、転移、及び浸潤が高レベルとなる。2)ルシフェラーゼ活性が安定であるので、腫瘍の増殖と転移を観察することが可能となる。
【0039】
4T1-lucの移植後、22日間待ち、腫瘍のサイズに基づいて3群に分け、各々の処置を開始した。1群は、ポジティブコントロールとしてドキソルビシン(DOX) 1 mg/kgを尾静脈に静脈注射した。ITO Probioエキスは水に2.5%溶解した物を自由引水させた。
【0040】
20日間処置後、マウスを屠殺し、肺を含めた臓器を摘出し保存した。組織の一部は約10 mg単位で分離し、溶解液をONE-Glo Luciferase Assay Sysem (Promega, Madison, WI Madison)を用いて評価した。ルシフェラーゼ活性はmodel TD20/20n luminometer (Turner BioSystems, Sunnyvale, CA)を用いて評価した。
【0041】
<結果>
結果を図1〜5に示す。
【0042】
図1及び2から、水投与群と比べて、ITO Probioエキス投与群の方が移植腫瘍の縮小傾向が高いことが分かる。ITO Probioエキス投与群の腫瘍縮小傾向は、水投与群とドキソルビシン投与群の間であった。また、図3及び4から、ITO Probioエキス投与群の肺転移抑制効果は水投与群より高く、ドキソルビシン投与群と同程度であったことが分かる(図3の白い部分が肺転移を示す)。図5から、ITO Probioエキス投与群は、水投与群と比べて、脾腫を軽減したことが分かる。
【0043】
この結果は、ITO Probioエキスは腫瘍の増殖を抑制し、肺転移を阻害することを示す。
【0044】
脾臓が肥大化すると、当然痛みを伴うようになる。このような状態を、脾腫と呼ぶ。脾腫になると、脾臓が血液中の血小板や赤血球などを通常よりも多く取り込む。そのため、血液中に含まれている血小板と赤血球の数値が低下してしまう。そして、脾臓は血小板・赤血球を取り込めば取り込むほど大きくなってしまう。本来取り込まれる必要のない血小板と赤血球まで脾臓に取り込まれ、破壊されてしまう上に脾臓内の血小板・赤血球の数が多すぎて脾臓の機能が低下する。その結果、脾臓の機能は低下し、免疫力などが弱くなってしまう。
図1
図2
図3
図4
図5