(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739784
(24)【登録日】2020年7月28日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】コンクリート用後添加混和剤及びコンクリートの流動性保持方法
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20200730BHJP
B28C 7/04 20060101ALI20200730BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20200730BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20200730BHJP
C08F 222/02 20060101ALI20200730BHJP
C04B 103/30 20060101ALN20200730BHJP
【FI】
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 H
B28C7/04
C08F220/28
C08F220/06
C08F222/02
C04B103:30
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-89988(P2016-89988)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-197409(P2017-197409A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】梶原 教裕
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和寿
(72)【発明者】
【氏名】古田 章宏
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 順司
(72)【発明者】
【氏名】有賀 静佳
【審査官】
今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−001479(JP,A)
【文献】
特開平11−322391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 24/26
B28C 7/04
C08F 220/06
C08F 220/28
C08F 222/02
C04B 103/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合材、水、及び分散剤が混錬され、調製された後、固まる前のコンクリート
に適用されるコンクリート用後添加混和剤であって、構成単位として下記の構成単位Aを70〜100質量%、不飽和カルボン酸
及びその塩から
選ばれる少なくとも1種から形成された構成単位Bを0〜
4.9質量%
、並びにその他の不飽和単量体から形成された構成単位Cを0〜30質量%(合計100質量%)からなる(共)重合体であり、且つ酢酸換算含有割合が0.1質量%未満である(共)重合体から成ることを特徴とするコンクリート用後添加混和剤。
構成単位A:下記の化1で示される単量体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
【化1】
(化1において、
R
1:炭素数2〜5のアルケニル基又は炭素数3又は4の不飽和アシル基
R
2:水素原子、炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数1〜22の脂肪族アシル基
A:炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基で構成された平均付加モル数1〜300個の(ポリ)オキシアルキレン基)
【請求項2】
構成単位Bが、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸及びそれらの塩から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位である請求項1記載のコンクリート用後添加混和剤。
【請求項3】
結合材、水、及び分散剤を混錬し、コンクリートを調製する工程、
次に、前記コンクリートが固まる前に請求項1又は2に記載のコンクリート用後添加混和剤を前記コンクリートに添加する工程を含むコンクリートの流動性保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート用後添加混和剤
及びコンクリートの流動性保持方法に関する。各種材料を練り混ぜてコンクリートを調製し、調製したコンクリートを実際の使用場所まで運搬して、運搬したコンクリートを使用する場合、例えば運搬に長時間を要し、調製したコンクリートの流動性が低下して、使用し難くなることがある。このような場合、調製したまだ固まっていないコンクリートに混和剤を後添加して、コンクリートの流動性を保持することが行なわれる。本発明は、調製したまだ固まっていないコンクリートに後添加することによって、コンクリートの流動性を、後添加直前の状態に長時間にわたって保持することができる後添加混和剤
及びコンクリートの流動性保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの流動性や流動保持性を向上するため、その調製時に、ナフタレン系、メラミン系、アミノスルホン酸系又はポリカルボン酸系等の各種の混和剤が使用されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、これら従来の混和剤には、これらを前記したような後添加混和剤として使用すると、コンクリートの流動性が高くなり過ぎたり、その割には流動保持性が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−119337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、調製したまだ固まっていないコンクリートに後添加することによって、コンクリートの流動性を、後添加直前の状態に長時間にわたって保持することができるコンクリート用後添加混和剤
及びコンクリートの流動性保持方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、コンクリート用後添加混和剤としては、分子中に特定の構成単位を有する(共)重合体の一つ又は二つ以上からなる特定のものが正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、
結合材、水、及び分散剤が混錬され、調製された後、固まる前のコンクリート
に適用されるコンクリート用後添加混和剤であって、構成単位として下記の構成単位Aを70〜100質量%、不飽和カルボン酸
及びその塩から
選ばれる少なくとも1種から形成された構成単位Bを0〜
4.9質量%
、並びにその他の不飽和単量体から形成された構成単位Cを0〜30質量%(合計100質量%)からなる(共)重合体であり、且つ酢酸換算含有割合が0.1質量%未満である(共)重合体から成ることを特徴とするコンクリート用後添加混和剤に係る。
【0007】
構成単位A:下記の化1で示される単量体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
【0008】
【化1】
【0009】
化1において、
R
1:炭素数2〜5のアルケニル基又は炭素数3又は4の不飽和アシル基
R
2:水素原子、炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数1〜22の脂肪族アシル基
A:炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基で構成された平均付加モル数1〜300個の(ポリ)オキシアルキレン基
また、本発明の別の態様のコンクリートの流動性保持方法は、結合材、水、及び分散剤を混錬し、コンクリートを調製する工程、次に、前記コンクリートが固まる前に請求項1又は2に記載のコンクリート用後添加混和剤を前記コンクリートに添加する工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るコンクリート用後添加混和剤(以下、単に本発明の後添加混和剤という)は、
結合材、水、及び分散剤が混錬され、調製された後、固まる前のコンクリート
に適用されるもので、構成単位として前記の構成単位Aを70〜100質量%、不飽和カルボン酸
及びその塩から
選ばれる少なくとも1種から形成された構成単位Bを0〜
4.9質量%
、並びにその他の不飽和単量体から形成された構成単位Cを0〜30質量%(合計100質量%)から成るものである。
【0011】
構成単位Aを形成することとなる化1で示される単量体において、化1中のR
1としては、1)ビニル基、アリル基、メタリル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−ブテニル基、3−メチル−1−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基等の炭素数2〜5のアルケニル基、2)アクリロイル基、メタクリロイル基等の炭素数3又は4の不飽和アシル基が挙げられる。なかでも化1中のR
1としては、アリル基、メタリル基、3−メチル−1−ブテニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0012】
化1中のR
2としては、1)水素原子、2)メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、2−メチル−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、2−プロピル−ヘプチル基、2−ブチル−オクチル基、2−ペンチル−ノニル基、2−ヘキシル−デシル基、2−ヘプチル−ウンデシル基、2−オクチル−ドデシル基、2−ノニル−トリデシル基、2−デシル−テトラデシル基、2−ウンデシル−ペンタデシル基、2−ドデシル−ヘキサデシル基等の炭素数1〜22のアルキル基、3)ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、ヘキサデセノイル基、エイコセノイル基、オクタデセノイル基等の炭素数1〜22の脂肪族アシル基が挙げられる。なかでも化1中のR
2としては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4の脂肪族アシル基が好ましい。
【0013】
化1中のAとしては、1)炭素数2〜4のオキシアルキレン基、2)合計2〜300個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基が挙げられる。なかでも化1中のAとしては、合計1〜160個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基が好ましい。
【0014】
以上説明した化1で示される単量体の具体例としては、α−アリル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン、α−アリル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−アリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタリル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、−メタリル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、α−アクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アクリロイル−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタクリロイル−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタクリロイル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン等が挙げられる。
【0015】
化1で示される単量体としては、以上例示した単量体の一つ又は二つ以上を用いることができるが、なかでもヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び/又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを含むものを用いるのが好ましく、化1で示される単量体中にヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び/又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを3〜30質量%含むものがより好ましい。
【0016】
構成単位Bを形成することとなる単量体は、不飽和カルボン酸
及びその塩から
選ばれる少なくとも1種である。なかでも、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸及びそれらの塩が好ましい。
【0017】
本発明の後添加混和剤として用いる(共)重合体は、その構成単位として、以上説明した構成単位Aと構成単位B以外に他の構成単位Cを有することもできる。かかる他の構成単位Cとしては、(メタ)アリルスルホン酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレンイミンにアルキレンオキシドを付加させた多分岐ポリマーにグリシジル(メタ)アクリレートを付加させた単量体、ポリアルキレンイミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合物のアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリル酸エステル等から形成される構成単位が挙げられる。
【0018】
構成単位Bを形成することとなる単量体の塩としては、特に制限するものではないが、これには例えばナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩やトリエタノールアミン塩等のアミン塩等が挙げられる。
【0019】
本発明の後添加混和剤は以上説明した(共)重合体から成るものであるが、酢酸換算含有割合が0.1質量%未満の(共)重合体から成るものである。本発明において、酢酸換算含有割合は、本発明の後添加混和剤を構成する(共)重合体に含まれるカルボキシル基及びその塩を電位差滴定して酢酸に換算したときの質量%であり、具体的には、(共)重合体の40質量%水溶液をイオン交換水で20倍に希釈した2質量%水溶液に塩酸水溶液を加えてpH2としたものを電位差滴定装置に供し、これを濃度0.1モル/Lの水酸化カリウム水溶液で滴定したときの、第1当量点と第2当量点との間に消費された水酸化カリウムと同モルの酢酸の質量を求め、求めた酢酸の質量の元の共重合体の質量に対する割合を算出した値(質量%)である。
【0020】
本発明の後添加混和剤に用いる(共)重合体それ自体は、公知の方法で製造することができる。これには、溶媒に水を用いたラジカル重合、溶媒に有機溶媒を用いたラジカル重合、無溶媒のラジカル重合がある。ラジカル重合に用いるラジカル重合開始剤は、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ系化合物のように、重合反応温度下において分解し、ラジカル発生するものであればその種類は特に制限されない。また、促進剤として亜硫酸水素ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等の還元剤や、エチレンジアミン、グリシン等のアミン化合物等も併用することもできる。得られる(共)重合体の質量平均分子量を所望の範囲とするため、連鎖移動剤を使用することもできる。
【0021】
本発明の後添加混和剤の使用に際しては、得られた(共)重合体を単独で使用することもできるし、異なる(共)重合体の二つ以上を混合して使用することもできる。また本発明の後添加混和剤の使用に際しては、本発明の効果を損なわない範囲内で、(AE)減水剤、高性能(AE)減水剤、凝結遅延剤、凝結促進剤、防錆剤、AE剤、消泡剤等を併用することもできる。
【0022】
本発明の後添加混和剤は、
結合材、水、及び分散剤が混錬され、調製された後、固まる前のコンクリートに後添加するものである。かかるコンクリートの構成材料に特に制限はなく、例えば結合材としては、1)普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、2)高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種混合セメント、3)アルミナセメント等が挙げられる。またセメント以外に、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム等の潜在水硬性物質やポゾラン反応物質を併用しても良い。また水/結合材比も特に制限はないが、水/結合材比は30〜70%のものが好ましく、35〜65%のものがより好ましい。更にかかるコンクリートの調製に使用する分散剤の種類にも特に制限はないが、分散剤としてはオキシカルボン酸やその塩、ポリカルボン酸系、リグニンスルホン酸系のものから選ばれる一つ又は二つ以上が好ましい。
【0023】
本発明の混和剤の使用量は、調製したまだ固まっていないコンクリート中の結合材100質量部に対し、固形分換算で、通常は0.01〜1.0質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部、より好ましくは0.02〜0.5質量部とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、調製したまだ固まっていないコンクリートに後添加することによって、コンクリートの流動性を、増大させることなく、後添加直前の状態に長時間にわたって保持することができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、別に記載しない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0026】
試験区分1{(共)重合体の合成}
・実施例1{(共)重合体(S−1)の合成}
イオン交換水78.0g、を温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器(以下、同様のものを使用した)に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴に70℃とした。次に10%過硫酸ナトリウム水溶液28.3gを4時間かけて滴下し、それと同時にイオン交換水140.9gにα−メタクリロイル−ω−メトキシ−ポリ(n=10)オキシエチレン155.9gとヒドロキシエチルアクリレート39.0gとチオグリセロール1.9gを均一に溶解させた水溶液を3時間かけて滴下した。その後1時間70℃を維持し、重合反応を終了した。イオン交換水にて濃度を20%に調整して、(共)重合体(S−1)の20%水溶液を得た。
【0027】
・実施例2{(共)重合体(S−2)の合成}
イオン交換水78.0gを反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴に70℃とした。次に10%過硫酸ナトリウム水溶液37.7gを4時間かけて滴下し、それと同時にイオン交換水224.7gにα−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=113)オキシエチレンポリ(m=2)オキシプロピレンを213.5gとヒドロキシエチルアクリレート37.7gとチオグリセロール4.7gを均一に溶解させた水溶液を3時間かけて滴下した。その後1時間70℃を維持し、重合反応を終了した。イオン交換水にて濃度を20%に調整して、(共)重合体(S−2)の20%水溶液を得た。
【0028】
・実施例3{(共)重合体(S−3)の合成}
イオン交換水56.0g及びα−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=53)オキシエチレン172.7gを反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴に65℃とした。次に4%過酸化水素水9.7gを3時間かけて滴下し、それと同時にイオン交換水130.4gにヒドロキシエチルアクリレート32.4gとアクリル酸メチル10.6gとアクリル酸0.2gを均一に溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、またそれと同時にイオン交換16.4gにL−アスコルビン酸0.9gとチオグリセロール3.2gを溶解させた水溶液を4時間かけて滴下した。その後2時間65℃を維持し、重合反応を終了した。イオン交換水にて濃度を20%に調整して、(共)重合体(S−3)の20%水溶液を得た。
【0029】
合成した各(共)重合体の質量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定すると共に(標準物質はポリエチレングリコール)、酢酸換算含有割合を前記の方法により測定した。結果を表1にまとめて示した。
【0030】
【表1】
【0031】
表1において、
A−1:α−メタクリロイル−ω−メトキシ−ポリ(n=10)オキシエチレンから形成された構成単位
A−2:α−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=113)オキシエチレンポリ(m=2)オキシプロピレンから形成された構成単位
A−3:α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=53)オキシエチレンから形成された構成単位
A−4:ヒドロキシエチルアクリレートから形成された構成単位
B−1:アクリル酸(塩)から形成された構成単位
C−1:アクリル酸メチルから形成された構成単位
【0032】
試験区分2(コンクリートの調製、後添加混和剤の後添加及び評価)
・コンクリートの調製
55Lの強制二軸ミキサーに、表2に記載の内容で、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、比重=3.16)、細骨材(大井川水系砂、比重=2.59)及び粗骨材(岡崎産砕石、比重=2.66)を順次投入して5秒間空練りした後、目標スランプフローが18±2.5cm及び空気量が4.5±0.5%の範囲となるよう、AE減水剤(竹本油脂社製の商品名チューポールEX60)をセメントに対し1%、またAE剤(竹本油脂社製の商品名AE−300)をセメントに対し0.005%を目安とし、更に消泡剤(竹本油脂社製の商品名AFK−2)をセメントに対し0.001%を目安として練混ぜ水と共に投入し、90秒間練混ぜて、コンクリートを調製した。このコンクリートを用い、温度20±3℃、湿度60%の雰囲気下にて、以下のように試験を行なった。結果を表3及び表4にまとめて示した。
【0033】
【表2】
【0034】
練混ぜ直後から20分静置の時点で、コンクリートに後添加混和剤として試験区分1で合成した(共)重合体(S−1)〜(S−3)を添加し(但し、試験例4は未添加のブランク)、30秒間練混ぜ、静置した。練混ぜ直後から30分間隔で、静置したコンクリートのスランプを測定し、また24時間静置後の硬化体のブリーディング率及び圧縮強度を次のように測定した。
【0035】
・スランプ:JIS−A1150に準拠して測定した。
・ブリーディング:JIS−A1123に準拠して測定した。
・圧縮強度:JIS−A1108に準拠し、供試体寸法を直径100mm×長さ200mmとして、材齢24時間で測定した。
【0036】
【表3】
【0037】
表3において、
添加量:セメントに対する後添加混和剤として用いた(共)重合体(S−1)〜(S−3)としての添加量(%)
*1:後添加混和剤の後添加を行わなかった。
【0038】
【表4】
【0039】
表1及び表2に対応する表3及び表4の結果からも明らかなように、本発明の後添加混和剤によると、調製したまだ固まっていないコンクリートに後添加することによって、得られる硬化体のブリーディング率や圧縮強度に悪影響を及ぼすことなく、コンクリートの流動性を、後添加直前の状態に長時間にわたって保持することができる。