特許第6739789号(P6739789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739789
(24)【登録日】2020年7月28日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】手袋交換用蓋装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 21/02 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
   B25J21/02
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-148158(P2016-148158)
(22)【出願日】2016年7月28日
(65)【公開番号】特開2018-15840(P2018-15840A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】592041306
【氏名又は名称】株式会社美和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】江頭 哲也
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−008795(JP,U)
【文献】 実開昭59−183791(JP,U)
【文献】 特開昭64−031100(JP,A)
【文献】 特開平02−203299(JP,A)
【文献】 特開平08−229880(JP,A)
【文献】 特開2002−181992(JP,A)
【文献】 特開2005−081452(JP,A)
【文献】 特開2007−229820(JP,A)
【文献】 米国特許第05104206(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 21/02
G21F 7/047− 9/28
A61G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ボックスに設けられた手袋取付用の筒状体に装着することにより上記本体ボックスの内部空間を外部から遮断する、手袋交換用の蓋装置であって、
上記本体ボックスに対して相対的に近い位置に配置される内蓋と、
上記本体ボックスに対して相対的に遠い位置に配置される外蓋と、
上記内蓋および上記外蓋のいずれか一方に対して、軸方向回りに相対回転可能に支持され、上記外蓋よりも上記本体ボックスから離れた位置にある操作ハンドルを有する、回転操作体と、
上記回転操作体に設けられたネジ軸が上記内蓋および上記外蓋のうちの他方に設けられたネジ孔に螺合するネジ機構と、
上記内蓋の外周部および上記外蓋の外周部に跨って支持された環状シール部材と、
上記内蓋および上記外蓋が軸方向において近づくにつれて上記環状シール部材を径方向外方に変位させるシール部材変位機構と、
上記内蓋および上記外蓋の互いの相対回転を阻止する相対回転阻止機構と、を備え、
上記内蓋または上記外蓋は、その外周部から径方向外方に延びる延出部を有し、
ガスを通すための通気管が上記内蓋に支持されており、当該通気管には切替弁が付設されている、手袋交換用蓋装置。
【請求項2】
上記筒状体は、径方向内方に突出する縮径部を有し、
上記延出部の外径寸法は、上記縮径部の内径寸法より大きくされている、請求項1に記載の手袋交換用蓋装置。
【請求項3】
上記シール部材変位機構は、上記内蓋に形成され、軸方向において上記外蓋から遠ざかるにつれて径方向外方に変位する第1傾斜面と、上記外蓋に形成され、軸方向において上記内蓋から遠ざかるにつれて径方向外方に変位する第2傾斜面と、を含む、請求項1または2に記載の手袋交換用蓋装置。
【請求項4】
上記筒状体には、手袋を取り付けるための環状溝が形成されており、
上記縮径部は、上記環状溝に対応して径方向内方に突出する部位である、請求項2に記載の手袋交換用蓋装置。
【請求項5】
上記内蓋および上記外蓋は、主として樹脂材料で構成される、請求項1ないし4のいずれかに記載の手袋交換用蓋装置。
【請求項6】
上記環状シール部材は、Oリングである、請求項1ないしのいずれかに記載の手袋交換用蓋装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グローブボックスに取り付けられた手袋を交換するための蓋装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グローブボックスは、大気中では不安定な固体、粉体、放射性物質、きわめて毒性の強い物質、あるいは空気中の酸素と反応して爆発する物質などを乾燥雰囲気あるいは不活性雰囲気中で取り扱う作業に用いられる。グローブボックスにおいて、作業空間をその外部と気密状に区画する本体ボックス内の空気をドライエアーあるいは窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスで置換して乾燥雰囲気あるいは不活性雰囲気を本体ボックス内に形成するようにしている。本体ボックスの前面、あるいは前後両面には人が手を本体ボックス内に入れて作業を行うための作業用開口が形成され、この作業用開口を囲うようにして手袋取付用の筒状体が設けられている。この筒状体の外端で手袋の口縁部を折り返し、筒状体の外側にOリングで折り返された手袋の口縁部を押さえ付けることにより、手袋が筒状体の開口端を密封するようにしている。
【0003】
グローブボックスに取り付けられた手袋が作業中に破れたり、ピンホールが開いたりすると、当該手袋の破損部を通じて外部の空気が本体ボックス内に流入する。この場合、手袋を交換する必要が生じるが、手袋の交換は、本体ボックスへのドライエアーあるいは不活性ガスの供給を停止して行い、交換後に本体ボックス内の雰囲気形成をやり直すという手順で行う。この方法では、手袋交換後の本体ボックス内の雰囲気形成には長時間が必要になり、グローブボックスの稼動率の低下を招く。
【0004】
このような事態を回避するために、例えば手袋が破損する前に適宜交換することが行われる。手袋交換に際して開口を塞ぐ蓋装置を用いることで、本体ボックスの内部空間を蓋装置によって遮断し、本体ボックスの内部空間のガス環境を維持したまま手袋交換を可能とする手法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示された蓋装置は、支持枠および蓋を備えている。支持枠は、本体ボックに設けられた筒状体に装着される。具体的には、筒状体の内周面には支持枠を係合するための溝が形成されており、支持枠は、当該溝に嵌め込むことで筒状体に装着される。蓋は、本体ボックスに形成された開口よりも大径とされており、当該開口を本体ボックスの内側から塞ぐことが可能となっている。蓋において、本体ボックの内壁面に対向する前面部分の外周縁付近には、Oリングが嵌め込まれている。また、蓋の中央にはネジ軸を有するハンドルが固定されており、当該ハンドルは、ネジ軸が支持枠に形成されたネジ孔に螺合するとともに、支持枠よりも本体ボックスから離れた位置まで延びる。上記支持枠および蓋は、例えば金属製とされる。
【0005】
手袋を交換する際には、支持枠を筒状体の溝に嵌合させることで当該筒状体に装着し、ハンドルを回転させることで、ネジの作用によって蓋が支持枠側に引き寄せられる。そして、蓋の前面が本体ボックスの内壁面に密着させられると本体ボックスの開口が閉塞され、本体ボックスの内部空間が外部に対して密閉される。この状態で古い手袋を取り外し、新しい手袋を筒状体に取り付ける。ここで、本体ボックスは密閉されており、手袋交換作業を通じて本体ボックス内のガス環境は変化しない。これにより、手袋交換を終えて蓋を取り外した後、手袋、筒状体および本体ボックスで囲まれたグローブボックスの密閉空間を、比較的短時間で元のガス環境に戻すことができる。
【0006】
また、特許文献1に開示されたグローブボックスにおいては、本体ボックスにおける上記開口の近傍には、通気路(32)が接続されている。当該通気路は、手袋交換の際、蓋、筒状体、および交換後の新しい手袋で囲まれた密閉空間に通じており、この通気路には、真空ポンプおよびガス供給路に切替え接続される。このような構成によれば、手袋交換後において、蓋、筒状体、および交換後の新しい手袋で囲まれた空間のガス環境を、本体ボックの内部空間と同様のガス環境により短時間で戻すことができ、グローブボックスの稼働率を高めるのに適する。
【0007】
しかしながら、上記従来のグローブボックスにおける手袋交換用の蓋装置では、筒状体において支持枠を装着するための専用の溝を形成する必要があり、構造が比較的複雑となっていた。また、筒状体の内側については、手袋および筒状体で覆われることで視認できないが、手袋交換時にはそのような状況で支持枠を上記溝に嵌める必要があるので、作業性が悪かった。支持枠および蓋が金属製であれば、これらの重量が嵩み、手袋交換時の作業性低下の要因となる。さらに、本体ボックスに上記通気路を設ける場合においても、構造が複雑になってグローブボックスの製造コストが上昇する要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−229880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、グローブボックスに取り付けられた手袋を交換するための蓋装置において、手袋交換時の作業性を改善するのに適した手袋交換用蓋装置を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0011】
本発明によって提供される手袋交換用蓋装置は、本体ボックスに設けられた手袋取付用の筒状体に装着することにより上記本体ボックスの内部空間を外部から遮断する、手袋交換用の蓋装置であって、上記本体ボックスに対して相対的に近い位置に配置される内蓋と、上記本体ボックスに対して相対的に遠い位置に配置される外蓋と、上記内蓋および上記外蓋のいずれか一方に対して、軸方向回りに相対回転可能に支持され、上記外蓋よりも上記本体ボックスから離れた位置にある操作ハンドルを有する、回転操作体と、上記回転操作体に設けられたネジ軸が上記内蓋および上記外蓋のうちの他方に設けられたネジ孔に螺合するネジ機構と、上記内蓋の外周部および上記外蓋の外周部に跨って支持された環状シール部材と、上記内蓋および上記外蓋が軸方向において近づくにつれて上記環状シール部材を径方向外方に変位させるシール部材変位機構と、上記内蓋および上記外蓋の互いの相対回転を阻止する相対回転阻止機構と、を備え、上記内蓋または上記外蓋は、その外周部から径方向外方に延びる延出部を有することを特徴としている。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記筒状体は、径方向内方に突出する縮径部を有し、上記延出部の外径寸法は、上記縮径部の内径寸法より大きくされている。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記シール部材変位機構は、上記内蓋に形成され、軸方向において上記外蓋から遠ざかるにつれて径方向外方に変位する第1傾斜面と、上記外蓋に形成され、軸方向において上記内蓋から遠ざかるにつれて径方向外方に変位する第2傾斜面と、を含む。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記筒状体には、手袋を取り付けるための環状溝が形成されており、上記縮径部は、上記環状溝に対応して径方向内方に突出する部位である。
【0015】
好ましい実施の形態においては、上記内蓋および上記外蓋は、主として樹脂材料で構成される。
【0016】
好ましい実施の形態においては、ガスを通すための通気管が上記内蓋に支持されており、当該通気管には切替弁が付設されている。
【0017】
好ましい実施の形態においては、上記環状シール部材は、Oリングである。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る手袋交換用蓋装置が装着されるグローブボックスの一例を示す正面図である。
図2】本発明に係る手袋交換用蓋装置の一例を示す要部縦断面図である。
図3図2に示した手袋交換用蓋装置の使用方法を説明するための要部縦断面図である。
図4図3の部分拡大図である。
図5図2に示した手袋交換用蓋装置の使用方法を説明するための要部縦断面図である。
図6図5の部分拡大図である。
図7図2に示した手袋交換用蓋装置の使用方法を説明するための要部縦断面図である。
図8図7の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る手袋交換用蓋装置が装着されるグローブボックスの一例を示している。同図に示したグローブボックスA1は、本体ボックス1、サイドボックス2、内側ハッチ30、および外側ハッチ31を備える。本体ボックス1は、作業空間を外部から気密状に区画するものである。サイドボックス2は、その一端である内側開口部20が本体ボックス1に連通しており、他端である外側開口部21が大気中に開放可能である。内側ハッチ30は、内側開口部20を開閉するものである。外側ハッチ31は、外側開口部21を開閉するものである。
【0022】
本体ボックス1の前面の上部は斜め上向きに傾斜させた窓ガラス10で覆われ、下部には作業者の手を本体ボックス1内に入れるための1対の作業用開口11が形成されている。各作業用開口11は、図2を参照して後述する手袋取付用の筒状体12を介して手袋4で気密状に覆われ、さらに、取り外し可能な蓋13で閉じられる。なお、この蓋13を具備しない構成とする場合もあり、この場合、手袋4が常に本体ボックス1の外部に露出する。
【0023】
本体ボックス1の下部には本体ボックス1の内部を真空ポンプの吸込口に連通させる真空パイプ141が接続されており、本体ボックス1の上部には、本体ボックス1内にドライエアー、不活性ガスなどの雰囲気ガスを供給するためのガス供給パイプ142が接続されている。
【0024】
さらに、本体ボックス1の上部および下部にはガス置換用のパイプ151が接続されており、このパイプ151に分岐管152を介して酸素計を分岐接続して本体ボックス1内の雰囲気を確認できるようにしている。サイドボックス2には、上記ガス供給パイプ142と真空ポンプとに切替え接続されるとともにサイドボックス2の内部空間に連通させた給排気回路153が接続され、また、当該内部空間の雰囲気を確認するための酸素計も設けられる。なお、本体ボックス1は、支柱17を介してキャスタ181付きの載置台18に支持されている。
【0025】
図2は、本発明に係る手袋交換用蓋装置の一例を示す要部縦断面図である。図3図5図7は、図2に示した手袋交換用蓋装置の使用方法を説明するための要部縦断面図である。
【0026】
手袋交換用蓋装置B1は、筒状体12に装着して使用するものである。手袋交換用蓋装置B1の説明に先立ち、図2を参照して、筒状体12について具体的に説明する。
【0027】
筒状体12は、本体ボックス1の作業用開口11に臨むようにして当該本体ボックス1の前壁16に対して気密状に取り付けられている。筒状体12の外周面には、2つの環状溝121,122が形成されている。これら環状溝121,122は、筒状体12の軸方向において所定の距離を隔てて設けられている。筒状体12の開口端は、手袋4の損傷を防止するために、例えばゴムなどの弾性体からなるパッキン123により覆われている。
【0028】
手袋4は、その開口端部41が折り返されて筒状体12の外周面を覆うようにして取り付けられる。手袋4は、開口端部41の外側から上記環状溝121,122に嵌められる2本のOリング19によって、筒状体12に固定される。なお、図2における図中右側のOリング19は、脱落防止用の環状バンド191により覆われている。
【0029】
筒状体12の内周面には、2つの突出部124,125が形成されている。これら突出部124,125は、上記環状溝121,122に対応して、筒状体12の径方向内方に環状に突出する部分である。上記構成の筒状体12は、例えば樹脂材料によって一体形成される。
【0030】
本実施形態の手袋交換用蓋装置B1は、内蓋5、外蓋6、回転操作体7、および環状シール部材8を備えている。
【0031】
内蓋5および外蓋6は、それぞれ、概略円板状とされており、厚さ方向(軸方向)において所定の間隔を隔てている。後述する図3等を参照すると理解されるように、手袋交換用蓋装置B1を筒状体12に装着するに際、内蓋5は、本体ボックス1に対して相対的に近い位置に配置され、外蓋6は、本体ボックス1に対して相対的に遠い位置に配置される。
【0032】
内蓋5は、例えばアクリル樹脂などの透明樹脂材料により構成される。内蓋5の径方向中央には、厚さ方向(軸方向)に貫通する貫通孔51が形成されている。この貫通孔51には、後述する回転操作体7が嵌挿される。内蓋5の外周部には、第1傾斜面52が形成されている。第1傾斜面52は、内蓋5の軸方向において外蓋6から遠ざかるにつれて径方向外方に変位する。第1傾斜面52は、後述の環状シール部材8が当接する部分である。
【0033】
本実施形態において、内蓋5の外周部にはまた、径方向外方に延びる延出部53が形成されている。本実施形態において、延出部53は環状であり、延出部53の外径寸法d1は、突出部124,125の内径寸法d2よりも大きい。なお、延出部53としては、本実施形態と異なり、環状の構成ではなく周方向において適宜間隔を隔てて分離した複数の延出部分によって構成してもよい。内蓋5における外蓋6を向く面には、ネジ穴54が形成されており、当該ネジ穴54には、スプリングピン55が埋め込み固定されている。
【0034】
外蓋6は、板状部材61および軸部材62を有する。板状部材61は、例えばアクリル樹脂などの透明樹脂材料により構成されており、円板状である。板状部材61の径方向中央には、厚さ方向(軸方向)に貫通する、断面円形の貫通孔611が形成されている。板状部材61の外周部には、第2傾斜面612が形成されている。第2傾斜面612は、板状部材61(外蓋6)の軸方向において内蓋5から遠ざかるにつれて径方向外方に変位する。第2傾斜面612は、環状シール部材8が当接する部分である。板状部材61において、内蓋5の上記ネジ穴54に対向する位置にはピン挿入用孔613が形成されている。当該ピン挿入用孔613には、内蓋5に固定されたスプリングピン55が挿入されている。
【0035】
軸部材62は、フランジ621を有する。軸部材62は、例えば、板状部材61の貫通孔611に嵌挿されるとともにフランジ621が板状部材61と重なり合う状態にて、取付ネジ63により板状部材61に固定される。詳細な図示説明は省略するが、板状部材61と軸部材62とは、周方向において間隔を隔てた複数箇所において取付ネジ63を用いて固定される。軸部材62の径方向中央部は、貫通するとともにネジ孔622(雌ネジ)が形成されている。
【0036】
本実施形態において、板状部材61(外蓋6)の外径寸法d3は、突出部124,125の内径寸法d2よりも小さい。
【0037】
回転操作体7は、軸本体71および操作ハンドル72を有する。軸本体71は、軸方向に延びており、概略円筒状とされている。軸本体71は、フランジ711、嵌挿軸部712、およびネジ軸713を有する。フランジ711は、軸本体71における軸方向一端(図中右端)に設けられており、軸本体71は、軸方向一端から軸方向他端に向かうにつれて外径寸法が段階的に小さくされている。
【0038】
嵌挿軸部712は、内蓋5の貫通孔51に嵌挿される部分である。嵌挿軸部712の外径寸法は、貫通孔51の内径寸法よりも僅かに小さくされている。また、軸本体71には、軸方向において嵌挿軸部712を挟んでフランジ711とは反対側に、Cリング73が取付けられている。かかる構成により、軸本体71(回転操作体7)は、内蓋5に対して、軸方向回りに相対回転可能に支持されるとともに軸方向への相対移動が阻止される。なお、本実施形態においては、嵌挿軸部712と内蓋5との間にはOリング74が介装されており、これら嵌挿軸部712および内蓋5の間が封止されている。
【0039】
ネジ軸713は、軸部材62(外蓋6)に設けられたネジ孔622に螺合させられる雄ネジ部である。ネジ軸713およびネジ孔622は、本発明で言うネジ機構を構成する。
【0040】
操作ハンドル72は、軸本体71の軸方向他端に外嵌されており、ビス止め等の適宜手段(図示略)により軸本体71に固定されている。後述する図3等を参照すると理解されるように、手袋交換用蓋装置B1を筒状体12に装着するに際、操作ハンドル72は、外蓋6よりも本体ボックス1から離れた位置にある。
【0041】
軸本体71の径方向中央には、軸方向に貫通する通気孔714が形成されている。また、軸本体71の軸方向一端には、ネジ穴715が形成されている。
【0042】
本実施形態において、軸本体71の軸方向一端(ネジ穴715)には、通気管9が接続されている。これにより、通気管9は、軸本体71(回転操作体7)を介して内蓋5に支持されている。通気管9には切替弁91が付設されている。この切替弁91により、通気管9が図示しないガス供給ラインと真空ラインとに切替え接続されるように構成されている。
【0043】
環状シール部材8は、内蓋5の外周部(第1傾斜面52)および外蓋6(板状部材61)の外周部(第2傾斜面612)に跨って支持される。本実施形態において、環状シール部材8は、Oリングにより構成される。
【0044】
上記構成の手袋交換用蓋装置B1については、手袋交換時以外の不使用時において、例えば本体ボックス1内における作業用開口11近傍の所定の保管位置に配置されている。
【0045】
次に、手袋交換用蓋装置B1の使用方法および作用について説明する。
【0046】
手袋を交換する際、まず作業者が古い手袋4に手を入れて作業用開口11から本体ボックス1内に手を延ばし、回転操作体7の操作ハンドル72を掴む。その後、手袋交換用蓋装置B1を、作業用開口11を通じて筒状体12の内側空間まで引き寄せる(図2参照)。さらに手袋交換用蓋装置B1を引き寄せて、図3図4に示すように、内蓋5の延出部53を筒状体12の突出部124に当接させる。図2を参照して上述したように、延出部53の外径寸法d1は突出部124の内径寸法d2よりも大きいため、図3に示した状態で操作ハンドル72を図中左方へ引き寄せると、延出部53が突出部124によって係止される。突出部124は、本発明で言う縮径部に相当する。
【0047】
次に、操作ハンドル72(回転操作体7)を、図3の左方へ引き寄せながら、軸方向回りに回転させる。ここで、内蓋5については、延出部53が筒状体12の突出部124に係止されることにより、当該内蓋5の回転が阻止される。一方、回転操作体7は内蓋5に対し、軸方向回りに相対回転可能に支持されている。このため、内蓋5が回転しなくても回転操作体7は回転させることが可能である。また、外蓋6については、内蓋5に固定されたスプリングピン55が板状部材61のピン挿入用孔613に挿入されることにより、内蓋5に対する板状部材61(外蓋6)の相対回転が阻止されている。したがって、内蓋5が回転しなければ、外蓋6も回転しない。内蓋5に固定されたスプリングピン55が板状部材61のピン挿入用孔613に挿入された構成は、本発明で言う相対回転阻止機構に相当する。
【0048】
操作ハンドル72を、ネジ(ネジ軸713およびネジ孔622)が締まる方向に回すと、軸部材62(外蓋6)が軸方向に沿って移動し、内蓋5に近づく(図5図6を参照)。ここで、環状シール部材8は、上述のように、内蓋5の第1傾斜面52および外蓋6(板状部材61)の第2傾斜面612に跨って支持されている。このため、内蓋5および外蓋6が軸方向において近づくつと、環状シール部材8は径方向外方へ変位する。
【0049】
さらに操作ハンドル72を回すと、図7図8に示すように、内蓋5および外蓋6が最も近づく状態になる。このとき、内蓋5および外蓋6(板状部材61)は、互いの外周部どうしが当接する。環状シール部材8については、さらに径方向外方に変位し、第1傾斜面52、第2傾斜面612、および筒状体12の内面によって囲まれつつ圧縮される。そして、筒状体12と内蓋5との間が封止された状態になる。また、嵌挿軸部712と内蓋5との間にはOリング74が介装されている。これにより、内蓋5を境界として本体ボックス1の内部空間が外部から遮断された気密状態になる。なお、内蓋5の第1傾斜面52および外蓋6の第2傾斜面612は、本発明で言うシール部材変位機構を構成する。
【0050】
次に、手袋4を交換する。ここで、古い手袋4は内蓋5(手袋交換用蓋装置B1)の外側に位置しており、筒状体12のOリング19を取り外して外側に引っ張ることにより、簡単に筒状体12から取り外すことができる。新しい手袋4は、その開口端部41を筒状体12に外側から被せ、Oリング19を取り付けることにより、簡単に筒状体12に固定される。
【0051】
次に、通気管9の切替弁91を切り替えて通気管9を真空ラインに接続し、手袋4、筒状体12および内蓋5によって密封された空間の空気を、通気孔714および通気管9を介して排出する。その後、切替弁91を切り替えて通気管9をガス供給ラインに接続し、上記密封された空間に雰囲気ガスを充填する。なお、切替弁91の操作は、手袋交換作業を行っていない他方の手袋4に入れ、その先にある作業用開口11から手を延ばして行う。
【0052】
次いで、交換後の新しい手袋4に手を入れて、操作ハンドル72を回転させる。ここで、操作ハンドル72(回転操作体7)を、図7における左方へ引き寄せながら、ネジ(ネジ軸713およびネジ孔622)が緩む方向に回す。そうすると、軸部材62(外蓋6)が軸方向に沿って移動し、内蓋5から遠ざかる。そして、図5図6に示す状態を経て、図3図4に示す状態に戻る。
【0053】
次いで、手袋交換用蓋装置B1を、作業用開口11を通じて本体ボックス1内の保管位置に戻す。
【0054】
本実施形態の手袋交換用蓋装置B1によれば、手袋交換用蓋装置B1を引き寄せ、内蓋5の延出部53を筒状体12の突出部124(縮径部)に当接させながら操作ハンドル72を回転させることで、内蓋5を境界として本体ボックス1の内部空間を外部から遮断することができる。すなわち、簡単な操作によって手袋交換用蓋装置B1を筒状体12に装着することができ、作業性に優れている。
【0055】
内蓋5および外蓋6については、これらを引き寄せて延出部53(内蓋5)を筒状体12の内側における突出部124に当接させるだけで、操作ハンドル72の回転操作時においても内蓋5および外蓋6の回転が阻止されている。したがって、内蓋5や外蓋6を係止させるための溝構造などを筒状体12に持たせる必要がなく、手袋交換用蓋装置B1を筒状体12に装着するのに際し、構造の簡素化を図ることができる。
【0056】
また、本実施形態においては、突出部124(縮径部)は、手袋4を取り付けるための環状溝121に対応して筒状体12の径方向内方に突出する部位である。このような構成は、手袋交換用蓋装置B1を筒状体12に装着させるうえで、構造の簡素化を図るのにより適している。
【0057】
本実施形態において、内蓋5および外蓋6は、主として樹脂材料により構成されている。このような構成によれば、手袋交換用蓋装置B1全体として比較的軽量であり、作業性に優れる。また、本実施形態のように内蓋5および板状部材61が透明樹脂材料で形成されていれば、手袋交換用蓋装置B1の各部の状態が視認しやすく、取り扱いが容易となる。
【0058】
本実施形態において、内蓋5には、切替弁91が付設されたガスを通すための通気管9が支持されている。このような構成によれば、手袋交換後において、手袋4、筒状体12および内蓋5によって密封された空間について、ガスの排出や雰囲気ガスの供給を適宜行うことができる。したがって、グローブボックスA1(本体ボックス1)の雰囲気を壊すことなく手袋4の交換を行うことができる。さらに、本実施形態では、上記手袋4、筒状体12および内蓋5によって密封された空間に対するガスの出し入れを行う通気管9が、内蓋5(手袋交換用蓋装置B1)に備わっている。このため、グローブボックスA1ついては既存の構造のままでよく、グローブボックスA1全体の構造が複雑になるのを回避することができる。
【0059】
上記の手袋交換作業については、手袋4が破損する前に行うのが好ましい。しかし、手袋4を装着した状態で本体ボックス1に対して作業を行っている最中に手袋4が破れたり、ピンホールが開いたりする場合もある。このような手袋4の破損は、例えば本体ボックス1に接続されたガス濃度計により検知することができる。本実施形態の手袋交換用蓋装置B1は、上記のように作業性に優れているため、破損した手袋4の交換についても迅速に行うことができる。したがって、手袋4が突然破損しても、当該破損部を通じた本体ボックス1内への外部空気の流入量を減らすことができ、その結果、手袋交換後において本体ボックス1内のガス雰囲気の形成に要する時間を短縮することが可能である。
【0060】
また、手袋4が破損したとき、本体ボックス1が手袋取付用の筒状体12を閉じるための蓋13を具備しない構成であって、且つ、交換用の新しい手袋4の予備がない場合、手袋4の交換をすぐに行うことができず、そのままでは手袋4の破損部から本体ボックス1内へ外部空気が流入し続ける。このような場合であっても、本実施形態の手袋交換用蓋装置B1によれば、当該手袋交換用蓋装置B1を筒状体12に迅速に装着することができ、筒状体12を閉塞するための蓋として機能させることができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0062】
上記実施形態においては、筒状体12の突出部に当接させられる延出部(53)が内蓋5に設けられる場合を例に挙げて説明したが、そのような延出部が外蓋6に設けられた構成を採用してもよい。
【0063】
また、上記実施形態において、内蓋5に対して回転操作体7が相対回転可能に支持され、外蓋6において回転操作体7のネジ軸713が螺合されるネジ孔622を設けた構成について説明したが、これに限定されない。例えば、外蓋6に対して回転操作体7が相対回転可能に支持され、内蓋5においてネジ軸713が螺合されるネジ孔を設けた構成としてもよい。
【0064】
環状シール部材8については、Oリングに限定されない。例えば、第1傾斜面52および第2傾斜面612に対して面的に接触可能とされた、断面が台形状の環状シール部材を用いてもよい。
【0065】
上記実施形態では、筒状体12において手袋4を固定するためのOリング19を2本取り付けた場合について説明したが、これに限定されない。例えば1本のOリングによって手袋を固定してもよく、この場合、筒状体の外周にはOリング装着用として1つの環状溝が形成される。
【符号の説明】
【0066】
A1 グローブボックス
B1 手袋交換用蓋装置
1 本体ボックス
10 窓ガラス
11 作業用開口
12 筒状体
121,122 環状溝
122 環状溝
123 パッキン
124 突出部(縮径部)
125 突出部
13 蓋
141 真空パイプ
142 ガス供給パイプ
151 パイプ
152 分岐管
153 給排気回路
16 前壁
17 支柱
18 載置台
181 キャスタ
19 Oリング
191 環状バンド
2 サイドボックス
20 内側開口部
21 外側開口部
30 内側ハッチ
31 外側ハッチ
4 手袋
41 開口端部
5 内蓋
51 貫通孔
52 第1傾斜面
53 延出部
54 ネジ穴
55 スプリングピン
6 外蓋
61 板状部材
611 貫通孔
612 第2傾斜面
613 ピン挿入用孔
62 軸部材
621 フランジ
622 ネジ孔
63 取付ネジ
7 回転操作体
71 軸本体
711 フランジ
712 嵌挿軸部
713 ネジ軸
714 通気孔
715 ネジ穴
72 操作ハンドル
73 Cリング
74 Oリング
8 環状シール部材
9 通気管
91 切替弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8