【文献】
Atula S. D. Sandanayaka, Toshinori Matsushima, and Chihaya Adachi,Degradation Mechanisms of Organic Light-Emitting Diodes Based on Thermally Activated Delayed Fluorescence Molecules,The Journal of Physical Chemistry C,2015年10月 2日,Vol.119, No.42,pp.23845-23851,DOI:10.1021/acs.jpcc.5b07084
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発光層と陰極の間に少なくとも1層の電子輸送層を有しており、前記電子輸送層の少なくとも1層が、第一族原子、第二族原子または遷移金属原子を含有する化合物を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
発光層と陰極の間に、発光層側から順に、第1電子輸送層と第2電子輸送層を有しており、前記第2電子輸送層が、第一族原子、第二族原子または遷移金属原子を含有する化合物を含有する請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべて
1Hであってもよいし、一部または全部が
2H(デューテリウムD)であってもよい。
【0010】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、発光層、陰極をこの順に積層した構造を有し、発光層が第1ホスト材料と第2ホスト材料とドーパントである発光材料とを含有しており、第1ホスト材料と第2ホスト材料がいずれも発光材料の最低励起三重項エネルギー準位よりも高い最低励起三重項エネルギー準位を有することを特徴とする。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、上記の第1ホスト材料および第2ホスト材料を発光層に含有することにより、駆動時の経時的な性能劣化が抑えられ、その寿命の大幅な延長を実現することができる。
【0011】
上記のように、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも、陽極、発光層、陰極をこの順に積層した構造を有する。さらに、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層と陰極の間に少なくとも1層の電子輸送層を有していてもよい。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子が、少なくとも1層の電子輸送層を有する場合、その電子輸送層の少なくとも1層は、第一族原子、第二族元素または遷移金属原子を含有する化合物を含むことが好ましい。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命をより延長することができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、上記のような順位の積層構造を有するものであれば、その層構造は特に限定されないが、具体例として、
図1に示すように、基板1上に、陽極2、発光層3、陰極4をこの順に積層した構造や、
図2に示すように、基板1上に、陽極2、発光層3、電子輸送層5、陰極4をこの順に積層した構造、
図3に示すように、基板1上に、陽極2、発光層3、第1電子輸送層5a、第2電子輸送層5b、陰極4をこの順に積層した構造を挙げることができる。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、
図1〜3に示す層構造に加えて、発光層3と電子輸送層5または第1電子輸送層5aの界面に電荷トラップ濃度減少層を有していてもよいし、陽極2と発光層3の間に正孔注入層や正孔輸送層を有していてもよいし、さらに、その他の機能を有する有機層を有していてもよい。その他の有機層としては、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。また、
図3に示す層構造に加えて、第1電子輸送層5aと第2電子輸送層5bの間に機能層を有していてもよい。
図1に示す層構造に、正孔注入層および正孔輸送層を併用した有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を
図4に示す。
図4において、1は基板、2は陽極、6は正孔注入層、7は正孔輸送層、3は発光層、5は電子輸送層、4は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。
【0012】
[基板]
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
【0013】
[陽極]
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO
2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In
2O
3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0014】
[陰極]
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0015】
[発光層]
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層である。本発明における発光層は、ドーパントである発光材料と、第1ホスト材料および第2ホスト材料を含有しており、第1ホスト材料と第2ホスト材料がいずれも発光材料の最低励起三重項エネルギー準位よりも高い最低励起三重項エネルギー準位を有する。
発光材料は、蛍光発光材料であってもよいし、りん光発光材料であってもよい。また、発光材料は、通常の蛍光とともに遅延蛍光を放射する遅延蛍光材料であってもよい。このうち、遅延蛍光材料を発光材料として用いることにより、高い発光効率を得ることができる。
【0016】
第1ホスト材料および第2ホスト材料は、発光材料の最低励起三重項エネルギー準位よりも高い最低励起三重項エネルギー準位を有する化合物であれば特に限定されない。第1ホスト材料および第2ホスト材料の少なくとも一方の最低励起三重項エネルギー準位T1
hと発光材料の最低励起三重項エネルギー準位T1
dの差T1
h−T1
d(以下、「エネルギー準位差ΔT1」という)は0eV超であることが好ましく、また、1eV以下であることが好ましく、0.7eV以下であることがより好ましく、0.5eV以下であることがさらに好ましい。
発光材料の最低励起一重項エネルギー準位S1
dと第1ホスト材料および第2ホスト材料の各最低励起一重項エネルギー準位S1
hとの関係は特に制限されないが、第1ホスト材料および第2ホスト材料が、発光材料の最低励起一重項エネルギー準位S1
dよりも高い最低励起一重項エネルギー準位S1
hを有することが好ましい。これにより、発光材料に生成した一重項励起子が発光材料の分子中に閉じ込められ、その一重項励起子のエネルギーを光の放射に有効利用することができる。
【0017】
ここで、本明細書中において発光材料、第1ホスト材料および第2ホスト材料の各最低励起一重項エネルギー準位S1
d、S1
h、各最低励起三重項エネルギー準位T1
d、T1
hは、以下の手順により求められる値である。
(1)最低励起一重項エネルギー準位S1(S1
d、S1
h)
測定対象化合物をSi基板上に蒸着して試料を作製し、常温(300K)でこの試料の蛍光スペクトルを測定する。蛍光スペクトルは、縦軸を発光、横軸を波長とする。この発光スペクトルの短波側の立ち下がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値 λedge[nm]を求める。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をS1とする。
換算式:S1[eV]=1239.85/λedge
発光スペクトルの測定には、励起光源に窒素レーザー(Lasertechnik Berlin社製、MNL200)を検出器には、ストリークカメラ(浜松ホトニクス社製、C4334)を用いることができる。
【0018】
(2)最低励起三重項エネルギー準位T1(T1
d、T1
h)
一重項エネルギーS1と同じ試料を77[K]に冷却し、励起光(337nm)を燐光測定用試料に照射し、ストリークカメラを用いて、燐光強度を測定する。この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求める。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をT1とする。
換算式:T1[eV]=1239.85/λedge
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引く。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の10%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
【0019】
第1ホスト材料および第2ホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。また、第1ホスト材料と第2ホスト材料は、エネルギー準位やキャリア輸送能等の特性が互いに異なることが好ましい。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率や寿命等の特性を制御し易くなる。
例えば、第1ホスト材料および第2ホスト材料のうち、少なくとも第2ホスト材料は電子輸送性を有することが好ましい。これにより、電子を発光層中で円滑に移動させることができ、経時的な性能劣化がより抑制され、さらに寿命を延長することができる。こうした第2ホスト材料として、後述する電子輸送層の構成材料と同じ材料を用いることが好ましく、電子輸送層を複数層設けた場合には、そのうち発光層に最も近い位置にある電子輸送層(例えば、第1電子輸送層)の構成材料と同じ材料を用いることが好ましい。
また、第2ホスト材料は、第1ホスト材料とHOMO準位やLUMO準位が有意に異なることが好ましい。これにより、電子と正孔の再結合ゾーンを制御して寿命等の特性を改善することができる。そのような第2ホスト材料として、例えば、そのHOMO準位が発光材料および第1ホスト材料の各HOMO準位よりも低く、そのLUMO準位が発光材料のLUMO準位よりも高く、且つ、第1ホスト材料のLUMO準位よりも低いものを好ましく用いることができる。
【0020】
第1ホストとして、例えば下記の化合物を好ましく用いることができる。
【化3】
【0021】
第2ホストとして、例えば下記一般式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【化4】
【0022】
一般式(1)において、Arは、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。nは1〜3の整数を表す。nは2以上であることが好ましい。nが2以上であるとき、複数のArは互いに同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。Arの説明と好ましい態様については、下記の一般式(2)のAr
1、Ar
2およびAr
3の説明と好ましい態様を参照することができる。また、一般式(1)で表される化合物は、回転対称体であってもよいし、回転対称体でなくてもよい。
【0023】
第2ホストとして、下記の一般式(2)で表される化合物を好ましく用いることができる。一般式(2)で表される化合物は、上記の一般式(1)に包含される化合物である。
【化5】
【0024】
一般式(2)において、Ar
1、Ar
2およびAr
3は、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。Ar
1、Ar
2およびAr
3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。n1、n2およびn3は、各々独立に1〜5の整数を表す。n1、n2およびn3は、1〜3であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。n1、n2およびn3は、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。n1が2以上であるとき、その2以上のAr
1は互いに同一であっても異なっていてもよく、n2が2以上であるとき、その2以上のAr
2は互いに同一であっても異なっていてもよく、n3が2以上であるとき、その2以上のAr
3は互いに同一であっても異なっていてもよい。
Ar
1、Ar
2およびAr
3がとりうる置換もしくは無置換のアリール基を構成する芳香環は、単環であっても、2以上の芳香環が融合した融合環であってもよい。芳香環の環骨格を構成する炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であることがさらにより好ましい。アリール基を構成する芳香環の具体例として、ベンゼン環、ナフタレン環を挙げることができる。Ar
1、Ar
2およびAr
3がとりうる置換もしくは無置換のヘテロアリール基を構成する複素芳香環は、単環であっても、1以上の複素環と1以上の芳香環とが融合した融合環であってもよいし、2以上の複素環が融合した融合環であってもよい。ただし、Ar
1、Ar
2およびAr
3の結合手を持つ環は複素環である。複素環の環骨格を構成する原子数は、5〜22であることが好ましく、5〜18であることがより好ましく、5〜14であることがさらに好ましく、5〜10であることがさらにより好ましい。複素環の環骨格を構成する炭素数は4〜21であることが好ましく、4〜17であることがより好ましく、4〜13であることがさらに好ましく、4〜9であることがさらにより好ましい。複素環の環骨格を構成する複素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子であることが好ましく、窒素原子であることがより好ましい。ヘテロアリール基を構成する芳香環の具体例として、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環を挙げることができる。
Ar
1、Ar
2およびAr
3がとりうるアリール基に置換しうる置換基と、Ar
1、Ar
2およびAr
3がとりうるヘテロアリール基に置換しうる置換基は、特に制限されない。置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数3〜40のヘテロアリールチオ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜20のジアルキル置換アミノ基である。さらに好ましい置換基は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。置換基の数は0〜5個であることが好ましく、0〜4個であることがより好ましい。
【0025】
一般式(2)のR
1、R
2およびR
3は、各々独立に置換基を表す。ただし、該置換基は置換もしくは無置換のアリール基、および置換もしくは無置換のヘテロアリール基ではない。n11、n12およびn13は、各々独立に0〜4の整数を表し、0〜2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。また、n11、n12およびn13は、少なくとも1つが0であることが好ましく、全てが0であることがより好ましい。n11が2以上であるとき、その2以上のR
1は互いに同一であっても異なっていてもよく、n12が2以上であるとき、その2以上のR
2は互いに同一であっても異なっていてもよく、n13が2以上であるとき、その2以上のR
3は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、(R
1)
n11、(R
2)
n12、(R
3)
n13は、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
R
1、R
2およびR
3が表す置換基の説明と好ましい範囲については、上記のAr
1、Ar
2およびAr
3がとりうるアリール基に置換しうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
【0026】
一般式(2)で表される化合物は、トリアジン環の2位、4位、6位の構造が全て同じである回転対称構造をとっていてもよいし、2位、4位、6位のうち2つの部位のみが同じ構造であってもよいし、3つの部位の全てが異なる構造であってもよいが、回転対称構造をとっていることが好ましい。
【0027】
一般式(1)で表される化合物の具体例として、T2Tやその誘導体を例示することができる。
また、一般式(1)で表される化合物に限らず、第2ホストとして好ましく使用できる化合物として、例えば下記の化合物を例示することができる。ただし、本発明において用いることができる第2ホストはこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0029】
第1ホスト材料と第2ホスト材料の組み合わせの具体例として、例えば、mCBP/T2T,mCP/T2T,CBP/T2T,mCBP/TmPyPB,mCP/TmPyPB,CBP/TmPyPB,TCTA/TPBi,TCTA/B3PYMPM,mCBP/TPBi,mCP/TPBi,CBP/TPBi,mCBP/TCTA,mCP/TCTA,CBP/TCTAの組み合わせ等を挙げることができる。
【0030】
発光層は、発光材料と第1ホスト材料および第2ホスト材料のみから構成されていてもよいし、この他の成分を含有していてもよい。例えば、第1ホスト材料および第2ホスト材料以外のホスト材料を発光層がさらに含んでいてもよい。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる本発明の発光材料から生じる。この発光は蛍光発光、遅延蛍光発光、燐光発光のいずれであってもよく、これらの発光が混在していてもよい。また、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
【0031】
発光層における発光材料の含有量は、発光層の全量に対して0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましい。また、発光層における発光材料の含有量は、発光層の全量に対して50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、15重量%以下であることがさらに好ましい。ただし、後述する電荷トラップ濃度減少層を設ける場合には、発光層における発光材料の含有量は、発光層の全量に対して0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましく、10重量%以上であることがさらにより好ましく、12重量%以上であることが特に好ましい。また、この場合の発光層における発光材料の含有量は、発光層の全量に対して50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく好ましく、25重量%以下であることがさらに好ましく、20重量%以下であることがさらにより好ましい。
発光層における第1ホスト材料の含有量は、発光層が含有するホスト材料の全量に対して10重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。また、発光層における第1ホスト材料の含有量は、発光層が含有するホスト材料の全量に対して95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。
発光層における第2ホスト材料の含有量は、発光層が含有するホスト材料の全量に対して5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましい。また、発光層における第2ホスト材料の含有量は、発光層が含有するホスト材料の全量に対して90重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましく、50重量%以下であることがさらに好ましく、30重量%以下であることがさらにより好ましく、20重量%以下であることが特に好ましい。
【0032】
上記のように、発光層の発光材料は、高い発光効率が得られることから、遅延蛍光材料であることが好ましい。遅延蛍光材料により高い発光効率が得られるのは、以下の原理による。
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。
【0033】
[電子輸送層]
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよいが、金属原子を含まないものであることが好ましい。
使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0034】
また、電子輸送層の少なくとも1層は、第一族原子、第二族原子または遷移金属原子を含有する化合物を含むことが好ましい。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の経時的な性能劣化をより抑制して、寿命をさらに延長することができる。
第一族原子、第二族原子または遷移金属原子を含有する化合物としては、第一族原子または第二族原子を含有する化合物であることが好ましく、リチウム原子を含有する化合物であることがより好ましい。また、遷移金属原子を含有する化合物の中では、ユーロピウム、ルテニウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、レニウム、オスミウム、白金、金を含有する化合物を好ましく用いることができる。また、これらの原子を含む化合物は、これらの原子と有機リガンドを組み合わせた化合物や有機金属化合物であることが好ましく、これらの原子と有機リガンドを組み合わせた化合物であることがより好ましく、8-ヒドロキシキノリノラト誘導体であることが好ましく、なかでも8-ヒドロキシキノリノラト−リチウム(Liq)であることが特に好ましい。
【0035】
電子輸送層を複数層設けて、第一族原子、第二族原子または遷移金属原子を含有する化合物を含ませる場合、その化合物を含有するのは、全ての電子輸送層であってもよいし、一部の電子輸送層であってもよい。電子輸送層を複数層設ける場合の好ましい構成として、
図3に示すように、発光層3側から順に第1電子輸送層5a、第2電子輸送層5bが積層され、これら電子輸送層のうち第2電子輸送層5bに、第一族原子、第二族原子または遷移金属原子を含有する化合物を含む構成を例示することができる。
電子輸送層が第一族原子、第二族原子または遷移金属原子を含有する化合物を含む場合、これらの原子を含む化合物の含有量は、電子輸送層の全量に対して10重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましい。また、その含有量は、電子輸送層の全量に対して90重量%以下であることが好ましく、75重量%以下であることがより好ましい。
【0036】
[電荷トラップ濃度減少層]
本発明では、発光層と電子輸送層の界面に電荷トラップ濃度減少層を設けてもよい。
本明細書中において「電荷トラップ濃度減少層」とは、その層を形成することによって熱刺激電流(TSC)測定における250〜320Kの間のピーク面積が減少する層のことを意味する。換言すれば、電荷トラップ濃度減少層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子と、電荷トラップ濃度減少層を有しないこと以外は該有機エレクトロルミネッセンス素子と同じ構成の有機エレクトロルミネッセンス素子について熱刺激電流測定を行ったとき、そのプロファイルの250〜320Kの間に出現するピークのピーク面積が、前者の有機エレクトロルミネッセンス素子の方が後者の有機エレクトロルミネッセンス素子よりも小さくなるような層のことをいう。以下の説明では、電荷トラップ濃度減少層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を「対象素子」といい、電荷トラップ濃度減少層を有しないこと以外は対象素子と同じ構成の有機エレクトロルミネッセンス素子を「参照素子」ということがある。
TSCプロファイルにおける250〜320Kの間のピーク面積を測定するには、まず、有機エレクトロルミネッセンス素子について熱刺激電流測定を行う。
熱刺激電流測定とは、有機半導体薄膜の局在準位にトラップされている電荷を熱により放出させ、電流値として検出することによりTSCプロファイル(電流値の温度プロファイル)を得る測定である。TSCプロファイルのピークの温度から局在準位の深さを判定することができ、ピークのピーク面積から局在準位における電荷の濃度を見積もることができる。ここで、電荷とは、電子による負電荷および正孔による正電荷の両方を含む。
この熱刺激電流測定は、具体的には次のようにして行う。測定対象である有機エレクトロルミネッセンス素子を、真空チャンバー内で液体窒素温度(77K)まで冷却する。次に、77Kに保持した状態で、有機エレクトロルミネッセンス素子に2mA/cm
2のバイアス電流を2分間供給し、素子内部のトラップ準位に電荷を蓄積させる。続いて、有機エレクトロルミネッセンス素子に−0.01Vのコレクティング電圧を印加しつつ5℃/分の速度で昇温を行い その際に検出される電流を観測してTSCプロファイルを得る。こうした熱刺激電流測定は、理学電機株式会社製の熱刺激電流測定機(商品名TSC−FETT EL2000)を用いて行うことができる。
そして、得られたTSCプロファイルにおいて、250〜320Kの間に出現するピークのピーク面積を測定する。ここで、250〜320Kの間に出現するピークの数は1つであってもよいし、複数であってもよい。250〜320Kの間に出現するピークの数が複数である場合、各ピークのピーク面積を合計した和が上記の「250〜320Kの間のピーク面積」に対応する。
【0037】
有機エレクトロルミネッセンス素子で測定されるTSCプロファイルの典型例を
図5に示す。
図5において、「対象素子」はLiq層を電荷トラップ濃度減少層として形成した有機エレクトロルミネッセンス素子を表し、「参照素子」は電荷トラップ濃度減少層を形成しないこと以外は対象素子と同様にして作製した有機エレクトロルミネッセンス素子を表す。
図5に示すように、この対象素子および参照素子のTSCプロファイルは、105K付近の低温領域と250〜320Kの高温領域に、それぞれ1つのピークを有している。このうち低温領域のピークは、浅いトラップ準位(Shallow trap)に蓄積した電荷の放出に対応し、高温領域のピークは、深いトラップ準位に蓄積した電荷の放出に対応する。また、各ピークのピーク面積は、各トラップ準位に蓄積した電荷の濃度を反映する。ここで、各素子の高温領域でのピークを比較すると、対象素子の高温領域でのピーク強度は、参照素子のそれに比べて顕著に減少しており、そのピーク面積は参照素子のピーク面積の1/1.41になっている。このことは、電荷トラップ濃度減少層により、深いトラップ準位における電荷濃度が減少したことを意味している。
本明細書中における「電荷トラップ濃度減少層」とは、発光層と電子輸送層の界面に設けられた材料層であって、こうして求められるTSCプロファイルの高温領域(250〜320K)でのピーク面積が参照素子よりも対象素子で小さくなるものである。このような電荷トラップ濃度減少層は、有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動の際、素子内部に深いトラップ準位が形成されることや、深いトラップ準位に電荷が蓄積することを効果的に抑えるものと考えられる。これにより、経時的なEL性能の劣化がより抑えられ、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命をさらに改善することができる。
電荷トラップ濃度減少層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の高温領域のピーク面積は、電荷トラップ濃度減少層を有しない参照素子の高温領域のピーク面積をS
0としたとき、S
0未満であることが好ましく、0.71・S
0以下であることがより好ましく、0.30・S
0以下であることがさらに好ましく、0.10・S
0以下であることがさらにより好ましく、理想的に好ましいのはゼロである。こうした電荷トラップ濃度減少層は、深いトラップ準位における電荷の濃度を効果的に減少させるものであり、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命を顕著に延長することができる。
【0038】
電荷トラップ濃度減少層の材料としては、その材料からなる層を形成することによってTSC測定における250〜320Kの間のピーク面積が減少するものであれば特に限定されないが、第一族原子、第二族原子または遷移金属原子を含有するものであることが好ましく、第一族原子または第二族原子を含有するものであることがより好ましく、リチウム原子を含有するものであることがさらに好ましい。また、遷移金属原子を含有する材料の中では、ユーロピウム、ルテニウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、レニウム、オスミウム、白金、金を含有するものを好ましく用いることができる。
これらの原子は、それ単体で電荷トラップ濃度減少層に含有されていてもよいし、これらの原子を含む化合物として電荷トラップ濃度減少層に含有されていてもよいが、これらの原子を含む化合物として電荷トラップ濃度減少層に含有されていることが好ましい。また、これらの原子を含む化合物は、これらの原子と有機リガンドを組み合わせた化合物や有機金属化合物であることが好ましく、これらの原子と有機リガンドを組み合わせた化合物であることがより好ましく、8-ヒドロキシキノリノラト誘導体であることが好ましく、なかでも8-ヒドロキシキノリノラト−リチウム(Liq)であることが特に好ましい。素子内部の深いトラップ準位の形成には、励起子−ポーラロン消滅が起因していることが知られているが、Liqは励起三重項エネルギー準位が低いために、励起子の励起三重項エネルギーがLiqに移動し易く、励起子−ポーラロン消滅を抑制しうると推測される。これにより、Liqからなる電荷トラップ濃度減少層は、深いトラップ準位における電荷の量を効果的に減少させることができる。また、上記の電子輸送層の少なくとも1層が第一族原子、第二族原子および遷移金属原子を含有する化合物を含む場合、その化合物は、第1電荷トラップ濃度減少層を構成する、第一族原子、第二族原子および遷移金属原子を含有する化合物と同じであっても異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
また、電荷トラップ濃度減少層は、その層を形成することによってTSC測定における250〜320Kの間のピーク面積が減少する材料であれば、第一族原子、第二族原子および遷移金属原子を含まない化合物が併存していてもよい。ただし、電荷トラップ濃度減少層における第一族原子、第二族原子または遷移金属原子を含む化合物の含有量は、電荷トラップ濃度減少層の全質量の80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。特に、これらの原子と有機リガンドを組み合わせた化合物を上記の含有量で電荷トラップ濃度減少層に含有させることにより、駆動時の経時的な性能劣化を顕著に抑制することができる。
【0039】
電荷トラップ濃度減少層の平均膜厚は、特に限定されないが、0.1〜100nmであることが好ましく、0.5〜10nmであることがより好ましく、1〜3nmであるがさらに好ましい。
【0040】
[機能層]
本発明では、第一族原子、第二族原子または遷移金属原子を含有する材料からなる機能層を、第1電子輸送層と第2電子輸送層の間に設けてもよい。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の経時的な性能劣化をより抑制して、寿命をさらに延長することができる。
機能層で用いる第一族原子、第二族原子または遷移金属原子を含有する材料の説明と好ましい範囲、材料の含有比率および機能層の平均膜厚の好ましい範囲については、上記の電荷トラップ濃度減少層における対応する説明を参照することができる。
【0041】
[注入層]
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0042】
[阻止層]
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。本発明では、発光層と電子輸送層の間に配置される電荷トラップ濃度減少層に、この正孔阻止層の機能を兼ねさせることができる。例えば、Liqからなる電荷トラップ濃度減少層は正孔阻止層としての機能を有することが実験により確認されている。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0043】
[正孔阻止層]
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。上記のように、本発明では、この正孔阻止層の機能を電荷トラップ濃度減少層に兼ねさせることができる。
【0044】
[電子阻止層]
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0045】
[励起子阻止層]
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。本発明では、この励起子阻止層の機能も電荷トラップ濃度減少層に兼ねさせることができる。
【0046】
[正孔輸送層]
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0047】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば、上記の各層を積層位置に合わせて順に製膜することにより作製することができる。各層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
【0048】
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R’、R
1〜R
10は、各々独立に水素原子または置換基を表す。Xは環骨格を形成する炭素原子または複素原子を表し、nは3〜5の整数を表し、Yは置換基を表し、mは0以上の整数を表す。
【0049】
発光層に用いる発光材料は、蛍光を放射する発光材料であってもリン光を放射する発光材料であってもよい。蛍光発光材料は、遅延蛍光を放射する発光材料であっても、遅延蛍光を放射しない発光材料であってもよい。発光層の発光材料として用いることができる好ましい化合物として、下記の化合物を挙げることができる。
【0050】
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【化7-4】
【化7-5】
【0051】
遅延蛍光を放射する発光材料(遅延蛍光体)として、WO2013/154064号公報の段落0008〜0048および0095〜0133、WO2013/011954号公報の段落0007〜0047および0073〜0085、WO2013/011955号公報の段落0007〜0033および0059〜0066、WO2013/081088号公報の段落0008〜0071および0118〜0133、特開2013−256490号公報の段落0009〜0046および0093〜0134、特開2013−116975号公報の段落0008〜0020および0038〜0040、WO2013/133359号公報の段落0007〜0032および0079〜0084、WO2013/161437号公報の段落0008〜0054および0101〜0121、特開2014−9352号公報の段落0007〜0041および0060〜0069、特開2014−9224号公報の段落0008〜0048および0067〜0076に記載される一般式に包含される化合物、特に例示化合物を好ましく挙げることができる。これらの公報は、本明細書の一部としてここに引用している。
また、遅延蛍光を放射する発光材料(遅延蛍光体)として、特開2013−253121号公報、WO2013/133359号公報、WO2014/034535号公報、WO2014/115743号公報、WO2014/122895号公報、WO2014/126200号公報、WO2014/136758号公報、WO2014/133121号公報、WO2014/136860号公報、WO2014/196585号公報、WO2014/189122号公報、WO2014/168101号公報、WO2015/008580号公報、WO2014/203840号公報、WO2015/002213号公報、WO2015/016200号公報、WO2015/019725号公報、WO2015/072470号公報、WO2015/108049号公報、WO2015/080182号公報、WO2015/072537号公報、WO2015/080183号公報、特開2015−129240号公報、WO2015/129714号公報、WO2015/129715号公報、WO2015/133501号公報、WO2015/136880号公報、WO2015/137244号公報、WO2015/137202号公報、WO2015/137136号公報、WO2015/146541号公報、WO2015/159541号公報に記載される一般式に包含される化合物、特に例示化合物を好ましく挙げることができる。これらの公報も、本明細書の一部としてここに引用している。
【0052】
次に、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
【0058】
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0060】
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0067】
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0069】
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0073】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0075】
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
【0077】
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
一方、りん光については、通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
【0078】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光層と電子輸送層の界面に電荷トラップ濃度減少層が設けられていることにより、駆動時の経時的な性能劣化が抑えられ、長期間に亘って高い輝度で発光し、且つ低電圧駆動が可能な有機エレクトロルミネッセンス素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、発光特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR−3)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。
エネルギーダイアグラムの各エネルギー準位の測定は、HOMOは、大気中光電子分光装置(理研計器:AC3)、LUMOは、UV可視近赤外分光装置(パーキンエルマー:LAMBDA950)を用いて行った。
熱刺激電流(TSC)測定は、理学電機株式会社製の熱刺激電流測定機(商品名TSC−FETT EL2000)を用い、上記の「電荷トラップ濃度減少層」の定義のところで説明した条件に準じて行った。
【0080】
(実施例1) 発光層が5重量%の4CzIPN(発光材料)とmCBP(第1ホスト材料)とT2T(第2ホスト材料)を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度10
-5Paで積層した。まず、ITO上にHAT−CNを10nmの厚さに形成し、その上に、Tris−PCzを30nmの厚さに形成した。次に、4CzIPN、mCBPおよびT2Tを異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、4CzIPNの濃度(4CzIPNとmCBPとT2Tの合計量に対する含有率)は5重量%とした。また、mCBPの含有量は、mCBPとT2Tの合計量(ホスト材料全量)に対して95重量%、90重量%または85重量%とし、T2Tの含有量は、ホスト材料全量に対して5重量%、10重量%または15重量%とした。次に、T2Tを10nmの厚さに蒸着して第1電子輸送層を形成し、その上に、BPy−TP2を40nmの厚さに蒸着して第2電子輸送層を形成した。さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、ホスト材料の組成比が異なる3種類の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。
本実施例で使用した発光層材料の最低励起三重項エネルギー準位は、4CzIPNが2.40eVであり、mCBPが2.90eVであり、T2Tが2.70eVであった。
実施例1で作製した有機EL素子のエネルギーダイアグラムを
図6に示す。
図6中の数値は、下が各有機層のHOMO準位の絶対値を表し、上が各有機層のLUMO準位の絶対値を表す。ITO側から3番目の有機層(発光層)において、上下の実線はmCBPのエネルギー準位を示し、外側点線はT2Tのエネルギー準位を示し、内側点線は4CzIPNのエネルギー準位を示す。
【0081】
(比較例1) 発光層が5重量%の4CzIPN(発光材料)とmCBP(第1ホスト材料)を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
厚さ30nmの発光層を4CzIPNとmCBPを異なる蒸着源から共蒸着して形成したこと以外は、実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。
【0082】
実施例1、比較例1で作製した有機EL素子の電流密度−外部量子効率特性を
図7に示し、輝度比の経時的変化を
図8に示す。これらの図中、「Ref.」は発光層がT2Tを含有していない有機EL素子(比較例1)を表し、「5%」、「10%」、「15%」は、それぞれ、その含有量(ホスト材料全量に対する含有率)で発光層がT2Tを含有する有機EL素子(実施例1)を表す。また、
図8において、「L
0/L」は、初期輝度L
0(1000cd/m
2)に対する測定輝度Lの輝度比を表す。下記の
図10、20の「L
0/L」も、これと同じ意味である。
【0083】
(実施例2) 発光層が10重量%の4CzIPN(発光材料)とmCBP(第1ホスト材料)とT2T(第2ホスト材料)を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
発光層における4CzIPNの濃度を10重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてホスト材料の組成比が異なる3種類の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。
【0084】
(比較例2) 発光層が10重量%の4CzIPN(発光材料)とmCBP(第1ホスト材料)を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
厚さ30nmの発光層を4CzIPNとmCBPを異なる蒸着源から共蒸着して形成したこと以外は、実施例2と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。
実施例2、比較例2で作製した有機EL素子の電流密度−外部量子効率特性を
図9に示し、輝度比の経時的変化を
図10に示す。これらの図中、「Ref.」は発光層がT2Tを含有していない有機EL素子(比較例2)を表し、「5%」、「10%」、「15%」は、それぞれ、その含有量(ホスト材料全量に対する含有率)で発光層がT2Tを含有する有機EL素子(実施例2)を表す。
【0085】
(実施例3) 発光層が15重量%の4CzIPN(発光材料)とmCBP(第1ホスト材料)とT2T(第2ホスト材料)を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
発光層における4CzIPNの濃度を15重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてホスト材料の組成比が異なる3種類の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。
【0086】
(比較例3) 発光層が15重量%の4CzIPN(発光材料)とmCBP(第1ホスト材料)を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
厚さ30nmの発光層を4CzIPNとmCBPを異なる蒸着源から共蒸着して形成したこと以外は、実施例3と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。
【0087】
実施例3、比較例3で作製した有機EL素子の発光スペクトルを
図11に示し、電圧−電流密度−輝度特性を
図12に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図13に示し、輝度比と電圧変化量の経時的変化を
図14に示す。
図14において、「L
0/L」は、初期輝度L
0(1000cd/m
2)に対する測定輝度Lの輝度比を表し、「ΔV」は初期電圧からの電圧変化量を表す。下記の
図25、3
0、35の「L
0/L」、「ΔV」も、これと同じ意味である。これらの図中、「Ref.」は発光
層がT2Tを含有していない有機EL素子(比較例3)を表し、「5%」、「10%」、「15%」は、それぞれ、その含有量(ホスト材料全量に対する含有率)で発光層がT2Tを含有する有機EL素子(実施例3)を表す。
また、実施例1〜3、比較例1〜3で作製した有機EL素子の発光層の組成比およびデバイス特性を表1にまとめて示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1、
図8、10、14から、発光層がT2Tを含有する有機EL素子(実施例1〜3)は、発光層がT2Tを含有していない有機EL素子(比較例1〜3)に比べて、経時的な輝度比の低下が抑えられていることがわかる。また、表1、
図7、9、13を見ると、発光層がT2Tを含有する有機EL素子(実施例1〜3)は、発光層がT2Tを含有していない有機EL素子(比較例1〜3)と同等以上の外部量子効率が得られている。このことから、発光層にT2T(第2ホスト材料)を添加することにより、外部量子効率を損なうことなく、有機EL素子の寿命が改善されることを確認することができた。
【0090】
(実施例4) 発光層が10重量%の4CzIPN(発光材料)とmCBP(第1ホスト材料)とT2T(第2ホスト材料)を含有し、第2電子輸送層がBPy−TP2とLiqを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
発光層における4CzIPNの濃度を10重量%に変更し、mCBPのホスト材料全量に対する含有率を90重量%、T2Tのホスト材料全量に対する含有率を10重量%とし、第2電子輸送層をBPy−TP2とLiqを異なる蒸着源から共蒸着して形成したこと以外は、実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。この時、第2電子輸送層におけるLiqの濃度は25重量%、50重量%または75重量%としてLiq濃度が異なる3種類の有機EL素子を作製した。
実施例4で作製した有機EL素子のエネルギーダイアグラムを
図15に示し、発光スペクトルを
図16に示し、電圧−電流密度−輝度特性を
図17に示し、電流密度−輝度特性を
図18に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図19に示し、輝度比の経時的変化を
図20に示す。また、各図には、第2電子輸送層をBPy−TP2単独で蒸着して形成したこと以外は、上記と同様にして作製した有機EL素子の測定結果も併せて示す。
図15中の数値の意義は
図6中の数値の意義と同じである。ただし、LiF/Al側から1番目の有機層(第2電子輸送層)において、上下の実線はBPy−TP2のエネルギー準位を示し、点線はLiqのエネルギー準位を示す。
図16〜20中、「Ref.」は第2電子輸送層がLiqを含有していない有機EL素子を表し、「25%」、「50%」、「75%」は、それぞれ、その含有量で第2電子輸送層がLiqを含有する有機EL素子を表す。
図20から、第2電子輸送層がLiqを含有する有機EL素子は、第2電子輸送層がLiqを含有していない有機EL素子に比べて、経時的な輝度比の低下がより抑えられていることがわかる。このことから、発光層にT2T(第2ホスト材料)を添加した上で、さらに第2電子輸送層にLiqを添加することにより、有機EL素子の寿命が一段と改善されることがわかった。
【0091】
(実施例5) 発光層が4CzIPN(発光材料)とmCBP(第1ホスト材料)とT2T(第2ホスト材料)を含有し、発光層と第1電子輸送層の界面にLiqからなる電荷トラップ濃度減少層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
発光層の上に、Liqを1nmの厚さに蒸着して電荷トラップ濃度減少層を形成してから、第1電子輸送層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。ただし、発光層におけるT2Tの含有量はホスト材料全量に対して10重量%に固定し、4CzIPNの濃度は5重量%、10重量%、15重量%または20重量%として4CzIPN濃度が異なる4種類の有機EL素子を作製した。
作製した有機EL素子のエネルギーダイアグラムを
図21に示し、発光スペクトルを
図22に示し、電圧−電流密度−輝度特性を
図23に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図24に示し、輝度比と電圧変化量の経時的変化を
図25に示す。
図21中の数値の意義は
図6中の数値の意義と同じである。
図22〜25中、「5%」、「10%」、「15%」、「20%」は、それぞれ、その濃度で4CzIPNを発光層が含有する有機EL素子を表す。
図25の特性図のうち、最も寿命が長い4CzIPN濃度を15重量%とした有機EL素子と、
図14の特性図(実施例3)のうちT2Tが10%であるものを比較すると、本実施例の有機EL素子(電荷トラップ濃度減少層を有する有機EL素子)の方が、実施例3の有機EL素子(電荷トラップ濃度減少層を有しない有機EL素子)よりも経時的な輝度比の低下がより抑えられていることがわかる。このことから、発光層にT2T(第2ホスト材料)を添加した上で、さらに発光層と第1電子輸送層の界面に電荷トラップ濃度減少層を形成すると、有機EL素子の寿命が一段と改善されることがわかった。
【0092】
(実施例6) 発光層が15重量%の4CzIPN(発光材料)とmCBP(第1ホスト材料)とT2T(第2ホスト材料)を含有し、第2電子輸送層がBPy−TP2とLiqを含有し、発光層と第1電子輸送層の界面にLiqからなる電荷トラップ濃度減少層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
発光層における4CzIPNの濃度を15重量%に変更し、mCBPのホスト材料全量に対する含有率を90重量%、T2Tのホスト材料全量に対する含有率を10重量%とし、この発光層の上に、Liqを3nmの厚さに蒸着して電荷トラップ濃度減少層を形成してから、第1電子輸送層を形成するようにし、さらに、第2電子輸送層をBPy−TP2とLiqを異なる蒸着源から共蒸着し、LiFの代わりにLiqを形成したこと以外は、実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。この時、第2電子輸送層におけるLiqの濃度は50重量%または75重量%としてLiq濃度が異なる2種類の有機EL素子を作製した。
作製した有機EL素子のエネルギーダイアグラムを
図26に示し、発光スペクトルを
図27に示し、電圧−電流密度−輝度特性を
図28に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図29に示し、輝度比と電圧変化量の経時的変化を
図30に示す。
図26中の数値の意義は
図15中の数値の意義と同じである。
図27〜30中、「Ref.」は第2電子輸送層がLiqを含有していない有機EL素子を表し、「50%」、「75%」は、それぞれ、その濃度でLiqを第2電子輸送層が含有する有機EL素子を表す。
図30の特性図と、
図20の特性図(実施例4)を比較すると、本実施例の有機EL素子(電荷トラップ濃度減少層を有する有機EL素子)の方が、実施例4の有機EL素子(電荷トラップ濃度減少層を有しない有機EL素子)よりも輝度比の低下速度が顕著に小さいことがわかる、このことから、発光層にT2T(第2ホスト材料)を添加し、第2電子輸送層にLiqを添加した上で、さらに発光層と第1電子輸送層の界面に電荷トラップ濃度減少層を形成すると、有機EL素子の寿命が格段に改善されることがわかった。
【0093】
(実施例7) 発光層が15重量%の4CzIPN(発光材料)とmCBP(第1ホスト材料)とT2T(第2ホスト材料)を含有し、第2電子輸送層がBPy−TP2と50重量%のLiqを含有し、発光層と第1電子輸送層の界面にLiqからなる電荷トラップ濃度減少層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
発光層におけるmCBPの含有量を、ホスト材料全量に対して90重量%、70重量%、50重量%または30重量%とし、T2Tの含有量を、ホスト材料全量に対して10重量%、30重量%、50重量%または70重量%に変更し、第2電子輸送層におけるLiqの濃度を50重量%に固定したこと以外は、実施例6と同様にして、ホスト材料の組成比が異なる4種類の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。
作製した有機EL素子のエネルギーダイアグラムを
図31に示し、発光スペクトルを
図32に示し、電圧−電流密度−輝度特性を
図33に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図34に示し、輝度比と電圧変化量の経時的変化を
図35に示す。
図31中の数値の意義は
図15中の数値の意義と同じである。
図32〜35中、「10%」、「30%」、「50%」、「70%」は、それぞれ、その含有量(ホスト材料全量に対する含有率)で発光層がT2Tを含有する有機EL素子を表す。
図35の特性図から、T2T(第2ホスト材料)のホスト全量に対する含有率が大きくなり過ぎると、含有率が小さい場合に比べて、経時的な輝度比の低下が大きくなる傾向が認められた。このことから、発光層における第2ホスト材料の含有量には上限があり、90重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましく、50重量%以下であることがさらに好ましく、30重量%以下であることがさらにより好ましいことがわかった。
【0094】
【化26】