(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739882
(24)【登録日】2020年7月28日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】大型射出成形機の安全装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/84 20060101AFI20200730BHJP
B29C 45/64 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
B29C45/84
B29C45/64
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-131895(P2018-131895)
(22)【出願日】2018年7月11日
(65)【公開番号】特開2020-6646(P2020-6646A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】車地 克典
【審査官】
▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−086832(JP,U)
【文献】
特開2007−007841(JP,A)
【文献】
特開平10−103589(JP,A)
【文献】
特開2013−071217(JP,A)
【文献】
特開平09−029809(JP,A)
【文献】
実開昭59−157809(JP,U)
【文献】
特開2000−176986(JP,A)
【文献】
特開2014−019144(JP,A)
【文献】
特開2017−205932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 45/00−45/84
B22D 15/00−17/32
B23Q 11/00−13/00
F16P 1/00− 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締装置においてメンテナンスするとき該型締装置に設けられている安全ドアを開いて作業員が前記型締装置内に進入して実施するようになっている大型射出成形機の安全装置であって、
前記安全装置は、2組の光学センサとICカードリーダ・ライタとを備え、
前記2組の光学センサは、光線を発する発光器とこれを受光する受光器とから1組が構成されて光線が遮られると遮断が検出されるようになっており、前記2組が前記安全ドアの近傍において互いに隣接して設けられ、作業員が前記安全ドアを通過するときの遮断のタイミングのずれによって、作業員が前記安全ドアの内側に進入したのか外部に退出したのかが検出されて前記大型射出成形機のコントローラに通知されるようになっており、
前記ICカードリーダ・ライタは、前記安全ドアの内側に設けられて作業員のそれぞれが所持しているICカードに記録されている退出/進入状態が前記ICカードリーダ・ライタによって読み書きされるようになっており、
前記コントローラは、進入チェックモード/退出チェックモード/待機モードの3モードのいずれかに切換えられるようになっており、
待機モードになっているときに、前記2組の光学センサによって前記安全ドアの内側への作業員の進入が検出されたら進入チェックモードに切換えて、前記ICカードリーダ・ライタにおいて所定時間内にICカードの読み取りの有無をチェックし、読み取りがありかつICカードに退出状態が記録されていれば進入状態に書き換えて待機モードに切換えるようにし、
待機モードになっているときに、前記ICカードリーダ・ライタにおいて進入状態のICカードが読み取られたらこれを退出状態に書き換えて退出チェックモードに切換えて、所定時間内に前記2組の光学センサによって作業員の退出があるか否かをチェックするようにし、退出が検出されたら待機モードに切換えるようにし、
前記コントローラは作業員の進入と退出とに基づいて前記安全ドアの内側にとどまっている作業員の人数をカウントし、該人数がゼロになったときに前記大型射出成形機の駆動を許可するようになっていることを特徴とする大型射出成形機の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型交換等の型締装置のメンテナンス時には型締装置内に作業員が入ってメンテナンスする必要がある大型射出成形機の安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は周知のように、金型を型締めする型締装置、射出材料を溶融して金型に射出する射出装置等から構成されている。射出成形機の型締装置においては金型の交換等、色々なメンテナンス作業があり、このようなメンテナンス作業は危険が伴う。従って、型締装置には安全対策が採られており、型締装置全体が筐体で覆われ、メンテナンス作業のために確保されている開口部には安全ドアが設けられている。安全ドアは射出成形機が停止中にのみ開くことができる。あるいは安全ドア開放中に射出成形機が停止するようになっている。安全ドアが開いているときは、例えば特許文献1に記載されているように、サーボモータの動力が遮断される等してサーボモータは駆動されない。つまり各装置が作動できない。従って、安全ドアを開いている限り、作業員は安全に型締装置においてメンテナンスすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−19144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように射出成形機は型締装置に安全ドアが設けられていて型締装置におけるメンテナンスは安全ドアを開けて実施しなければならないようになっている。安全ドアが開いているときにはインターロックによりサーボモータが駆動されないようになっているので作業者の安全は十分に確保されていると言える。しかしながら問題も見受けられる。具体的には、メンテナンス中にも拘わらず安全ドアが閉められる状況があり得る点である。タイバー同士の間隔が広い射出成形機の場合、例えばタイバー間隔が1200mmを越える場合には、型締装置のメンテナンスは作業員が型締装置内に入り込んで実施しなければならない。そうすると作業員は完全に安全ドアの内側に入ることになり、作業員が型締装置のメンテナンス中であっても安全ドアが閉められてしまう可能性がある。特に大型の射出成形機の場合には型締装置内に複数人の作業者が入り込むこともあり、作業員が取り残される可能性も高い。安全ドアの開閉状態によるインターロックのみで安全を確保しようとすると安全が確保できない。そこで、大型の射出成形機に対しては安全ドアの開閉によるインターロックで安全を確保するだけでなく追加の安全対策が規格上要求されている。追加の安全対策を備えた射出成形機として、例えば重量の検出センサを備えた安全マットを安全ドアの内側に設けた射出成形機が周知である。作業員が安全マットの上に立っていれば、作業員が安全ドアの内側にいることがコントローラに通知されるので、射出成形機は作動できない。しかしながら安全マットは樹脂材料からなるので、射出装置や金型から溶融した樹脂が落下したりすると安全マットを損傷してしまう。従って型締装置の直下に設けることはできない。つまり安全マットは型締装置の近傍のような準危険エリアには設けることができても、型締装置の内側のような危険エリアに設けることはできず安全は完全に確保できない。この代替措置として安全踏板が準備されることもある。しかしながら安全マットも安全踏板も作業者がタイバー上に立つ等して危険があり、100%安全を確保することはできない。型締装置内においてレーザを放射してこれを検出する等して作業員の有無を検出するセンサを設ける方法もある。しかしながら、型締装置内に死角があるとセンサによって作業員を検出できないこともあり、これも完全に安全であるとは言えない。一方、運用により安全を確保する方法もある。例えば、メインブレーカや非常停止押ボタンにおいて南京錠を設け、メインブレーカを入りにできないようにしたり、非常停止押ボタンを解除できないようにする。型締装置内に作業員が残っていないことを確認したら、手動で南京錠を解除する。そうするとメインブレーカが入りになって射出成形機を駆動できるようになる。しかしながら、安全ドア内に作業員が残っているか否かの確認において確認漏れが発生したり確認し忘れが発生する場合もある。運用により安全を確保する方法によっては、必ずしも安全が確保できない。
【0005】
したがって本発明は、大型の射出成形機において、作業員が型締装置内に立ち入っているときに仮に安全ドアが閉められたとしても、作業員が取り残されていることを機械的に検知して確実に安全を確保し、安全が確保できないときには射出成形機の駆動を防止する、大型射出成形機の安全装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、大型射出成形機において2組の光学センサを備えた安全装置として構成する。それぞれ1組の光学センサは光線を発する発光器とこれを受光する受光器とからなり光線が遮られると遮断が検出される。2組の光学センサは、型締装置に設けられている安全ドアの近傍において互いに隣接して設け、作業員が安全ドアを通過するときの遮断のタイミングのずれによって、作業員が安全ドアの内側に進入したのか外部に退出したのかを検出する。大型射出成形機のコントローラは、2組の光学センサからの信号に基づいて安全ドアの内側にとどまっている作業員の人数をカウントし、大型射出成形機の駆動の許可を決定するように構成する。さらに安全装置には、安全ドアの内側にICカードリーダ・ライタを設け、作業員のそれぞれが所持しているICカードに記録されている退出/進入状態を読み書きするように構成する。
【0007】
すなわち請求項1に記載の発明は、型締装置においてメンテナンスするとき該型締装置に設けられている安全ドアを開いて作業員が前記型締装置内に進入して実施するようになっている大型射出成形機の安全装置であって、前記安全装置は、2組の光学センサ
とICカードリーダ・ライタとを備え、前記2組の光学センサは、
光線を発する発光器とこれを受光する受光器とから1組が構成されて光線が遮られると遮断が検出されるようになっており、前記2組が前記安全ドアの近傍において互いに隣接して設けられ、作業員が前記安全ドアを通過するときの遮断のタイミングのずれによって、作業員が前記安全ドアの内側に進入したのか外部に退出したのかが検出さ
れて前記大型射出成形機のコントローラ
に通知されるようになっており、前記ICカードリーダ・ライタは、前記安全ドアの内側に設けられて作業員のそれぞれが所持しているICカードに記録されている退出/進入状態が前記ICカードリーダ・ライタによって読み書きされるようになっており、前記コントローラは、進入チェックモード/退出チェックモード/待機モードの3モードのいずれかに切換えられるようになっており、待機モードになっているときに、前記2組の光学センサによって前記安全ドアの内側への作業員の進入が検出されたら進入チェックモードに切換えて、前記ICカードリーダ・ライタにおいて所定時間内にICカードの読み取りの有無をチェックし、読み取りがありかつICカードに退出状態が記録されていれば進入状態に書き換えて待機モードに切換えるようにし、待機モードになっているときに、前記ICカードリーダ・ライタにおいて進入状態のICカードが読み取られたらこれを退出状態に書き換えて退出チェックモードに切換えて、所定時間内に前記2組の光学センサによって作業員の退出があるか否かをチェックするようにし、退出が検出されたら待機モードに切換えるようにし、前記コントローラは作業員の進入と退出とに基づいて前記安全ドアの内側にとどまっている作業員の人数をカウントし、該人数がゼロになったときに前記大型射出成形機の駆動を許可するようになっていることを特徴とする大型射出成形機の安全装置として構成される。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明は、型締装置においてメンテナンスするとき該型締装置に設けられている安全ドアを開いて作業員が前記型締装置内に進入して実施するようになっている大型射出成形機の安全装置を対象としている。本発明によると、安全装置は、2組の光学センサ
とICカードリーダ・ライタとを備え
ている。そして、2組の光学センサは、
光線を発する発光器とこれを受光する受光器とから1組が構成されて光線が遮られると遮断が検出されるようになっており、2組が安全ドアの近傍において互いに隣接して設けられ、作業員が安全ドアを通過するときの遮断のタイミングのずれによって、作業員が安全ドアの内側に進入したのか外部に退出したのかが検出さ
れて大型射出成形機のコントローラ
に通知されるようになっている。2個の光学センサによって検出するので、精度良くかつ確実に作業者の進入・退出を確認できることになる。
ICカードリーダ・ライタは、安全ドアの内側に設けられて作業員のそれぞれが所持しているICカードに記録されている退出/進入状態がICカードリーダ・ライタによって読み書きされるようになっており、コントローラは、進入チェックモード/退出チェックモード/待機モードの3モードのいずれかに切換えられるようになっており、待機モードになっているときに、2組の光学センサによって安全ドアの内側への作業員の進入が検出されたら進入チェックモードに切換えて、ICカードリーダ・ライタにおいて所定時間内にICカードの読み取りの有無をチェックし、読み取りがありかつICカードに退出状態が記録されていれば進入状態に書き換えて待機モードに切換えるようにし、待機モードになっているときに、ICカードリーダ・ライタにおいて進入状態のICカードが読み取られたらこれを退出状態に書き換えて退出チェックモードに切換えて、所定時間内に前記2組の光学センサによって作業員の退出があるか否かをチェックするようにし、退出が検出されたら待機モードに切換えるように構成されている。このような正常な動作から逸脱するケースが発生したら、すべて異常であると判断することがで
きる。本発明によると、コントローラは作業員の進入と退出とに基づいて安全ドアの内側にとどまっている作業員の人数をカウントし、該人数がゼロになったときに大型射出成形機の駆動を許可するようになっているので、確実かつ正確に型締装置内にとどまっている作業員の人数を把握することができ、安全に大型射出成形機の駆動を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る金型を含む本発明の実施の形態に係る大型射出成形機の型締装置の一部と、安全ドアと、本実施の形態に係る安全装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る大型射出成形機の安全装置を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る安全装置のコントローラにおいて、発生するイベントに応じてモードが遷移する関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る大型射出成形機1は、
図1に型締装置2の近傍が示されているが、型締装置2と、図に示されていない射出装置とから構成されている。本実施の形態に係る型締装置2は、固定盤4と、この固定盤4に対して型開閉される可動盤5と、図示されていない型締ハウジングと、固定盤4と型締ハウジングを連結している4本のタイバー7、7、…と、トグル機構とから構成されている。本発明が対象としているのはメンテナンス時に作業員が型締装置2内に進入するような大型の型締装置2であり、本実施の形態に係る型締装置2も大型に形成されている。
【0011】
型締装置2は図示されない筐体によって全体が覆われており安全が確保されているが、筐体には安全ドア9が設けられている。安全ドア9はスライド式に開閉するようになっており、作業員は安全ドア9を開いて型締装置2内に進入するようになっている。大型射出成形機1は図に示されていないコントローラを備えており、コントローラは安全ドア9が開いているときにはモータへの電力供給を停止して大型射出成形機1が駆動されないようにしている。安全ドア9の内側には、安全マット11が所定範囲で敷かれている。安全マット11は感圧センサを備え、作業員がいるときにはその体重を検知して作業員が安全ドア9の内側にいることをコントローラに通知する。従って、作業員が安全ドア9の内側に取り残された状態で安全ドア9が閉められても、安全マット11によって作業員が検出されてコントローラはモータへの電力供給を停止する。これによって安全性を高めている。しかしながら安全マット11は樹脂製からなり、溶融樹脂が落下する等すると破損してしまう。従って型締装置2の直下には安全マット11は敷くことができず、作業員が型締装置2の中央部に進入しているときにはこれを検出できない。その代替措置として安全踏板が準備されているが、安全踏板も100%の安全を確保できないのは既に説明した通りである。そこで、本実施の形態に係る大型射出成形機1は、次に説明する本実施の形態に係る安全装置13によって、実質的に完全な安全を確保している。
【0012】
本実施の形態に係る安全装置13は、2組の光学センサつまり第1、2組の光学センサ14、15と、ICカードリーダ・ライタ17と、大型射出成形機1のコントローラとから構成されている。第1、2組の光学センサ14、15は、他の波長の光線を対象としていてもよいが本実施の形態においてはいずれも赤外線を発する発光器とこの赤外線を受光する受光器とから構成され、赤外線が遮られたら、検出されるようになっている。なお、
図1、2には受光器のみが示されている。第1、2組の光学センサ14、15は、
図1、2に示されているように、安全ドア9の近傍であって、互いに水平方向にわずかにずらして隣接して設けられている。このようにわずかにずらして配置されているので、安全ドア9から作業員が内側に進入するとき、作業員の通過によって最初に第1組の光学センサ14によって検出され、その直後に第2組の光学センサ15によって検出される。反対に、作業員が安全ドア9から外側に退出するとき、最初に第2組の光学センサ15によって検出され、その直後に第1組の光学センサ14によって検出されることになる。つまり、第1、2組の光学センサ14、15は、作業員が安全ドア9を通過するとき、安全ドア9内に進入しているのか、安全ドア9から退出しているのかを検出することができる。
【0013】
ICカードリーダ・ライタ17は、作業員の各々が所持しているICカードについて、その情報の読み取りと書込みを行う装置である。ICカードリーダ・ライタ17は、第1、2組の光学センサ14、15から水平方向に離間して設けられている。具体的には型締装置2の近くに設けられている。従って、作業員が安全ドア9を通って安全ドア9内に進入するとき、第1、2組の光学センサ14、15によって進入が検出された後に、ICカードリーダ・ライタ17によってICカードが読み取られることになる。第1、2組の光学センサ14、15も、ICカードリーダ・ライタ17も大型射出成形機1のコントローラに接続されている。
【0014】
本実施の形態に係る安全装置13は、安全ドア9を進入退出する作業員の人数をカウントすることによって、大型射出成形機1を駆動する前に安全ドア9内に作業員が取り残されていないことを確実に検出できるようになっている。コントローラは作業員の進入と退出とをチェックするために、3個のモードに切換えられるようになっている。通常は待機モードM0になっており、作業者が安全ドア9内に進入するときには進入チェックモードM1に切換えられ、第1、2組の光学センサ14、15と、ICカードリーダ・ライタ17とからの信号を確認して作業者が正常に進入しているか否かをチェックする。そして作業者が安全ドア9から退出するときには退出チェックモードM2に切換えられ、第1、2組の光学センサ14、15と、ICカードリーダ・ライタ17とからの信号を確認して作業者が正常に退出しているか否かをチェックするようになっている。
【0015】
図3の表を参照しながら、作業者が安全ドア9内に進入するときと退出するときの処理を説明する。この表は、コントローラが所定のモードM0〜M2になっているときに、発生するイベントE1〜E5によってコントローラが処理する内容と、モードの切換えについてまとめたものであり、モード遷移表ということもできる。最初に大型射出成形機1を運転後に停止したとき、安全ドア9は閉じており安全ドア9内に作業員はいない。このときコントローラは待機モードM0になっている。作業員は各自自分のICカードを所持しており、ICカード内には「退出状態」が記録されている。安全ドア9を開いて作業員が安全ドア9内に進入すると、第1、2組の光学センサ14、15によって作業員の進入が検出される(イベントE1)。そうするとコントローラはモードを進入チェックモードM1に切換える。作業員は、安全ドア9内に進入後所定時間内にICカードをICカードリーダ・ライタ17に読み取らせる。つまりコントローラはイベントE1から所定時間内にICカードの情報を得る。ICカードに「退出状態」が記録されていることをコントローラが確認すると(イベントE3)、正常であると判断してICカードリーダ・ライタ17によってICカードの情報を書き換えて「進入状態」とする。そしてモードを待機モードM0に切換える。コントローラは安全ドア9内にいる作業員の人数をカウントアップする。複数の作業員が同様の手順により安全ドア9内に進入することができ、コントローラは進入した作業員の正確な人数をカウントできる。
【0016】
作業員が退出しようとするとき、コントローラは待機モードM0になっている。まず作業員は所持しているICカードをICカードリーダ・ライタ17に読み込ませる。進入していた作業員のICカードには「進入状態」が書き込まれているはずであり、これが読み取られる(イベントE4)。コントローラはICカード・ライタ17によってICカードに「退出状態」を書込み、退出チェックモードM2に切換える。作業員は所定時間内に安全ドア9を退出する。そうすると所定時間内に第1、2組の光学センサ14、15によって作業員の退出が検出される(イベントE5)。コントローラは作業員が正常に退出したとして、モードを待機モードM0に切換え、安全ドア9内に残っている作業員の人数を減じる。全員の作業員が同様にして安全ドア9から退出すると、安全ドア9内に残っている作業員の人数はゼロになるので、コントローラは大型射出成形機1の駆動を許可する。
【0017】
図3の表には、作業員の進入退出に異常が発生したと判断するケースも記載されている。待機モードM0になっているときにエラーとなるイベントは2個である。具体的にはICカードリーダ・ライタ17によってICカードの読み取りが発生し、「退出状態」が読み取られた(イベントE3)とき、そして第1、2組の光学センサ14、15によって退出が検出(イベントE5)されたときにエラーになる。前者のイベントは、安全ドア9内にいる作業者であるにも拘わらず、ICカードに「進入状態」ではなく「退出状態」が記録されているときに発生する。後者のイベントは、作業者がICカードをICカードリーダ・ライタ17に読み込ませることなく退出しようとしたときに発生する。進入チェックモードM1になっているときに、エラーとなるイベントは4個である。まず、第1、2組の光学センサ14、15によって作業員の進入が検出(イベントE1)されたときにエラーとなる。他の作業員の進入チェックが完了していないのに次の作業員が進入しようとしているからである。次に第1、2組の光学センサ14、15による進入検出から所定時間内にICカードの読み取りが無い場合(イベントE2)にエラーになる。作業員が正しい手順で進入の手続をしていないからである。そしてICカードにおいて「進入状態」が読み取られたとき(イベントE4)にエラーになる。進入しようとする作業員が所持しているICカードには「退出状態」が記録されているはずだからである。第1、2組の光学センサ14、15による作業員の退出(イベントE5)が検出されるときもエラーになる。退出モードM2になっているときにエラーとなるイベントは4個である。まず、第1、2組の光学センサ14、15による作業員の進入が検出(イベントE1)されるときに、エラーとなる。作業員が退出中に他の作業員が進入しようとしているからである。次にICカードの読み取りがあり「退出状態」になっているときエラーとなる(イベントE3)。作業員の退出のチェック中に、別の作業員が進入しようとしているからである。ICカードにおいて「進入状態」が読み取られる(イベントE4)場合には、退出チェック中に新たに別の作業員が退出しようとしているのでエラーとする。また作業員が退出時にICカードの読み書きをさせた後に所定時間内に第1、2組の光学センサ14、15において退出の検出がないとき(イベントE5)、これもエラーと判断する。大型射出成形機1において、これらのようなエラーが検出されたら、コントローラは大型射出成形機1の駆動を禁止する。禁止はエラー状態が解除されるまで継続するようにする。管理者は型盤内に人がいないことを確認し、安全状態であることを判断した上で、エラーの解除処理を行う。
【符号の説明】
【0018】
1 大型射出成形機 2 型締装置
4 固定盤 5 可動盤
7 タイバー 9 安全ドア
13 安全装置
14、15 第1、2組の光学センサ
17 ICカードリーダ・ライタ