(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739892
(24)【登録日】2020年7月28日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】ガラス用洗浄剤
(51)【国際特許分類】
C11D 10/02 20060101AFI20200730BHJP
C03C 23/00 20060101ALI20200730BHJP
C11D 1/02 20060101ALI20200730BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20200730BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
C11D10/02
C03C23/00 A
C11D1/02
C11D1/72
C11D3/04
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-191188(P2014-191188)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2016-60862(P2016-60862A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年9月15日
【審判番号】不服2019-11391(P2019-11391/J1)
【審判請求日】2019年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】592007612
【氏名又は名称】横浜油脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 照久
【合議体】
【審判長】
天野 斉
【審判官】
川端 修
【審判官】
木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−087683(JP,A)
【文献】
特開平05−339600(JP,A)
【文献】
特開2003−277800(JP,A)
【文献】
特開2012−233058(JP,A)
【文献】
特開2008−205490(JP,A)
【文献】
特開2000−273485(JP,A)
【文献】
特開2004−217814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D1/00-19/00
C03C23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成分として無機アルカリ剤、有機アルカリ剤、及びアルカリ性のキレート剤のうち少なくとも1種のアルカリ成分を5〜20質量%、(b)成分としてHLBが5〜10である非イオン界面活性剤を少なくとも1種を0.1〜2.5質量%、(c)成分として陰イオン界面活性剤、HLBが11〜16である非イオン界面活性剤のうち少なくとも1種を1〜20質量%、および水を含有する、表面改質機能を有するガラス用洗浄剤。
【請求項2】
(c)成分を、陰イオン界面活性剤、及びHLBが11〜16である非イオン界面活性剤のうち、それぞれ少なくとも1種を含有する成分とすることを特徴とする請求項1に記載のガラス用洗浄剤。
【請求項3】
(a)アルカリ成分が、無機アルカリ剤とアルカリ性のキレート剤、又は有機アルカリ剤とアルカリ性のキレート剤からなるアルカリ成分であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガラス用洗浄剤。
【請求項4】
ガラス用洗浄剤が、液晶用ガラス基板、太陽電池用ガラス基板用であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス用洗浄剤。 以 上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基材の表面に付着したゴミ、パーテイクル等を除去するだけでなく、付着性を向上させた表面改質を同時に行うことのできるガラス用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス用洗浄剤は、液晶用、太陽電池用、磁気ディスク用等各種用途に用いられるガラス基板、及びレンズ、プリズム、光ファイバー等の光学ガラス等に付着した切断の際の切粉、研磨粒子、保護膜や油汚れ、粉塵などのゴミ等を洗浄するための洗浄剤であり、アルカリ洗浄剤、酸洗浄剤をはじめとして、各種洗浄剤が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、磁気ディスクや液晶ガラス等に用いられるガラス基板の洗浄に用いるふっ化水素とオゾンを溶解させた酸性洗浄剤であって、ガラス基板表面に付着した研磨粒子の除去性能が優れ、エッチングむらが生じない洗浄剤が提案されている。
【0004】
特許文献2には、洗浄液によるエッチングによって発生したガラス基板面の潜傷による微小な面荒れや、洗浄後にガラス基板表面に吸着した残存アルカリ金属などの金属不純物あるいはパーテイクル等を付着させず、しかも洗浄時にガラス表面に潜傷やヤケ等のダメージを生じさせない有機アルカリからなる洗浄剤として、水酸化第四級アンモニウム塩基を主体とし、非イン界面活性剤、アルカノールアミンとを含有する有機アルカリからなる実質的に金属イオンを含まないガラス用洗浄剤組成物が提案されている。
【0005】
特許文献3には、洗浄後、その後水でリンスするのみで油脂類、パーテイクル、イオン性残渣などを除去できる強い洗浄力を有する水系の非イオン系洗浄剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、アルキル安息香酸、トリエタノールアミン0.05〜0.2重量%、及び2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)を含有する洗浄剤組成物が提案されている。
【0006】
特許文献1〜3のいずれも洗浄能力には優れているとされている。例えば、ガラス基板表面に付着した研磨粒子の除去性能に優れ、洗浄液によるエッチングによって発生したガラス基板面の潜傷による微小な面荒れや、洗浄後にガラス基板表面に吸着した残存アルカリ金属などの金属不純物あるいはパーテイクル等の除去性能、洗浄後の水洗に優れるといったものである。しかし、その後、製品として加工や処理する際の密着性、付着性改善については検討されていなかった。
【0007】
液晶用、太陽電池用、磁気ディスク用ガラス基板、及び光学ガラスを製品化するのには、ガラス基材をメーカーから受け入れ、洗浄することは必須の工程である。その際に密着性、付着性等の表面改質を同時に行うことのできるガラス用洗浄剤が提供できるならば、洗浄するだけの工程で、密着性、付着性等を向上させる表面改質が同時に行え、ひいては処理工程の簡素化、製品精度の向上にも寄与できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−276759号公報
【特許文献2】特開平5−271699号公報
【特許文献3】特開平8−269498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ガラス基材の表面に付着したゴミ、パーテイクル等を除去するだけでなく、密着性、付着性を向上させた表面改質を同時に行うことのできるガラス用洗浄剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ガラス用洗浄剤として、(a)無機アルカリ剤、有機アルカリ剤、及びアルカリ性のキレート剤のうち少なくとも1種のアルカリ成分、(b)HLBが5〜10である非イオン界面活性剤を少なくとも1種、(c)陰イオン界面活性剤、HLBが11〜16である非イオン界面活性剤のうち少なくとも1種を含有するガラス用洗浄剤が、ガラス基材の表面に付着したゴミ、パーテイクル等を除去するだけでなく、密着性、付着性を向上させた表面改質を同時に行うことのできるガラス用洗浄剤であることを見出し本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、次のとおりのものである。
[1](a)成分として無機アルカリ剤、有機アルカリ剤、及びアルカリ性のキレート剤のうち少なくとも1種のアルカリ成分、(b)成分としてHLBが5〜10である非イオン界面活性剤を少なくとも1種、(c)成分として陰イオン界面活性剤、HLBが11〜16である非イオン界面活性剤のうち少なくとも1種、を含有するガラス用洗浄剤。
[2](c)成分を、陰イオン界面活性剤、及びHLBが11〜16である非イオン界面活性剤のうち、それぞれ少なくとも1種を含有する成分とすることを特徴とする[1]に記載のガラス用洗浄剤。
[3](a)成分5〜20質量%、(b)成分0.1〜2.5質量%、(c)成分1〜20質量%、残部水であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のガラス用洗浄剤。
[4](a)アルカリ成分が、無機アルカリ剤とアルカリ性のキレート剤、又は有機アルカリ剤とアルカリ性のキレート剤からなるアルカリ成分であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載のガラス用洗浄剤。
[5]ガラス用洗浄剤が、液晶用ガラス基板、太陽電池用ガラス基板用であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載のガラス用洗浄剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガラス用洗浄剤によれば、ガラス基材の表面に付着したゴミ、パーテイクル等を除去するだけでなく、その後の製品化のために行う加工、処理における密着性、付着性を向上させた表面改質を同時に行うことのできるガラス用洗浄剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】平均最少密着(ライン)としての現像時間とマスク開口幅の関係図
【
図2】平均最少密着(ドット)としての現像時間とマスク開口幅の関係図
【
図3】ブラックマトリックスの解像度セルパターン写真
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を具体的に説明する。本発明のガラス用洗浄剤は、(a)成分として無機アルカリ、有機アルカリ、又はキレート剤のうち少なくとも1種からなるアルカリ成分に、(b)成分としてHLBが5〜10である非イオン界面活性剤、及び(c)成分として陰イオン界面活性剤、HLBが11〜16である非イオン界面活性剤のうち少なくとも1種を含有するガラス用洗浄剤であって、液晶表示に用いられる液晶セル基板用ガラス、太陽電池モジュール用の保護ガラス、各種光学ガラスの製造工程での洗浄工程で用いることができる。
【0015】
ガラス基板上に所望の機能性部材を設けた種々の機能性基板の製造には、洗浄処理が必ず用いられている。例えば、ガラス基板上にブラックマトリックス、次いで、複数の色として、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色からなる着色層、共通透明電極などを設けた液晶表示に用いられるカラーフィルターを製造するには、ガラス基板の受け入れ洗浄後、ブラックマトリックス、複数の色の形成工程が行われている。太陽電池モジュール用の保護ガラスでは、ガラス基板の受け入れ洗浄後、太陽電池セルを透明樹脂により充填させる。本発明は、これらのガラス基板の洗浄に用いることができる。
【0016】
ガラス基材としては、用途、組成は限定されるものではなく、液晶セル用ガラス基板、太陽電池用ガラス基板、保護用ガラス基板、各種光学ガラスが例示できる。なかでも、液晶セル用ガラス基板、太陽電池用ガラス基板の洗浄に用いると後加工、例えばブラックマトリックス用レジスト、封止樹脂等との密着性、付着性を向上させることができ有用である。液晶セル用ガラス基板、太陽電池用ガラス基板、モジュール用の保護ガラス基板としては、ソーダガラス、ホウ珪酸ガラス、シリカガラス、熱強化白板ガラス等が用いられている。
【0017】
本発明のガラス用洗浄剤は、(a)成分として、無機アルカリ剤、有機アルカリ剤、アルカリ性のキレート剤のうち少なくとも1種を用いることができる。アルカリ性のキレート剤は、洗浄性だけでなく、ガラスの腐食防止効果の向上や、他の成分を配合する際の相溶性および洗浄剤の安定性を向上させることができる。また、洗浄水に含まれるマグネシウムやカルシウム・鉄分などの金属を沈殿させ、界面活性剤の能力を低下させないので、他のアルカリ剤と併用することが好ましい。(a)成分のアルカリ剤は、洗浄剤中に5〜20質量%配合することが好適であり、より好ましくは5〜15質量%洗浄剤に含有させることができる。
【0018】
無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ砂、ケイ酸ナトリウム(SiO
2/Na
2O=1/1〜4/1、好ましくは2/1〜2.5/1)等を挙げることができる。これらの中でも、洗浄効果の点、入手の容易性及び経済性から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウムが好ましい。
【0019】
有機系アルカリ剤としては、一級、二級および/または三級アミン性の窒素原子を1分子中に1〜5個有し、かつ分子量50〜10000を有するアミン系化合物ならびに水酸化第四級アンモニウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種などがあげられる。例えば、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノアミルアミン、モノヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの直鎖アルキルアミン、sec−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、1−メチルブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの分岐鎖アルキル基を有する分岐鎖アルキルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミンなどの環式アミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルキルアルカノールアミン、モルホリン類、複素環式アミン、ジアミノプロパン、ジアミノヘキサン、ジアミノオクタン、ジアミノドデカンなどのジアミン、ポリアミン、またはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)などの水酸化第四級アンモニウム化合物があげられる。
【0020】
アルカリ性のキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、テトラエチレンテトラミン六酢酸、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、これらのアルカリ金属または低級アミン塩など、ホスホン酸基を有するキレート剤としては、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン1−1,1−ジホスホン酸、4−ジメチルアミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸、ピロリドン−5,5−ジホスホン酸、1−アミノエタン−1,1−ジホスホン酸、ジメチルアミノメタンジホスホン酸、N−カルボキシメチルアミノ−アルカンジホスンホン酸などが挙げられる。これらの中でも、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、4−ジメチルアミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸、アザシクロアルカン−2,2−ジホスホン酸が好ましい。アルカリ性のキレート剤は、単独でまたは2種以上を混合しても用いることができる。
【0021】
(a)成分は、無機アルカリ剤、有機アルカリ剤、アルカリ性のキレート剤のうち少なくとも1種、または複数種組合わせて用いることができる。なかでも無機アルカリ剤とアルカリ性のキレート剤、又は有機アルカリ剤とアルカリ性のキレート剤を組合わせて用いるとよい。
【0022】
本発明のガラス用洗浄剤は、(b)成分としては、HLB5〜10の非イオン界面活性剤のうち少なくとも1種を含有する。HLB5〜10の非イオン界面活性剤は、2種類以上含有させてもよい。HLB5〜10の非イオン界面活性剤は、基板界面の自由エネルギーを低下させ、汚れなどの洗浄対象物への浸透・湿潤力を増し除去性能を向上させる作用をする。又浸透・湿潤力だけでなく、他の成分を配合する際の相溶性および洗浄剤の安定性を向上させることができる。(b)成分は、洗浄剤中に0.1〜2.5質量%配合することが好適であり、より好ましくは0.1〜1.0質量%配合することができる。
【0023】
HLBは界面活性剤の水と油、即ち水に不溶性の有機化合物への親和性の程度を表す値であるが、HLBが5〜10である非イオン界面活性剤を、密着性、付着性の点から用いる。HLBが5〜10である非イオン界面活性剤は、(c)成分としての陰イオン界面活性剤、HLBが11〜16である非イオン界面活性剤の可溶化剤の作用もなしている。
【0024】
(b)成分としてのHLB5〜10の非イオン界面活性剤には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル 、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ノノキシノール 、ノノキシノール-9 、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどのエーテル型の非イオン界面活性剤、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコールなどのエステルエーテル型非イオン界面活性剤、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド 、コカミドDEAなどのアルカノールアミド型非イオン界面活性剤が例示できる。これらのうちHLB5〜10の非イオン界面活性剤であるならばいずれでも使用でき、またこれらは市販されている中から選ぶことができる。
【0025】
本発明のガラス用洗浄剤は、(c)成分として、陰イオン界面活性剤、HLB11〜16の非イオン界面活性剤のうち少なくとも1種を用いることができる。陰イオン界面活性剤、HLB11〜16の非イオン界面活性剤は、少なくとも1種類用いることができるが、2種類以上用いてもよい。好ましくは、組合わせて用いるのが良い。組合せとしては、陰イオン界面活性剤とHLB11〜16の非イオン界面活性剤のうち複数種類を組合わせてもよく、なかでも陰イオン界面活性剤のうち1種とHLB11〜16の非イオン界面活性剤のうちそれぞれ1種の組合せで用いるのが良い。
【0026】
陰イオン界面活性剤、HLB11〜16の非イオン界面活性剤は、基板界面の自由エネルギーを低下させ汚れなどの洗浄対象物への浸透・湿潤力を増し除去性能を向上させる作用をするものである。又浸透・湿潤力だけでなく、他の成分を配合する際の相溶性および洗浄剤の安定性を向上させることができる。(c)成分は、洗浄剤中に1.0〜20.0質量%配合することが好適であり、より好ましくは2.0〜10.0質量%配合することができる。
【0027】
陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸またはその塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸又はその塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸又はその塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル類を使用することが出来、特に炭素数が10〜20、好ましくは10〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニル(炭素数炭素数が10〜20、好ましくは10〜15)エーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル(炭素数炭素数が10〜20、好ましくは10〜15)硫酸塩、飽和脂肪酸又はその塩が好ましい。ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニル硫酸塩を使用する場合は、エチレンオキシド平均付加モル数は1〜6、特に1.5〜4が好ましい。また、これらは市販されている中から選ぶことができる。
【0028】
HLB11〜16の非イオン界面活性剤は、上記(b)成分としてのHLB5〜10の非イオン界面活性剤に例示するもののうち、HLBが11〜16の非イオン界面活性剤を用いることができる。また、これらは市販されている中から選ぶことができる。
【0029】
本発明のガラス用洗浄剤は、(b)成分としてのHLB5〜10の非イオン界面活性剤を少量含有させることにより、ガラス基材の表面に付着したゴミ、パーテイクル等を除去するだけでなく、付着性を向上させた表面改質を同時に行うことのできるガラス用洗浄剤を提供できる。その理由は、HLB5〜10の非イオン界面活性剤を少量含有させることにより、ガラス洗浄剤は水洗されてもガラス基材の表面がより疎水化された表面状態になり、その上に処理される有機物の付着性、密着性が向上するものと考えられる。
【0030】
本発明の洗浄剤は、成分(a)、成分(b)、成分(c)以外に水を含有させることができる。水は、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水等いずれでもかまわない。本発明の洗浄剤を構成する水は、上記界面活性剤成分を溶解するためのものであり、成分(a)、成分(b)、成分(c)などを加えた残りの残部量配合することができる。
【0031】
本発明の洗浄剤は、必要に応じて適宜、従来の洗浄剤に配合されている各種添加剤、例えばpH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、増粘剤、顔料などの着色剤、消泡剤などを添加してもよい。添加剤の添加量は、本発明の洗浄剤の洗浄作用、密着性、付着性に影響しない範囲の量ならばかまわない。より好ましくは、0.1〜10質量%である。
【0032】
本発明の好ましい洗浄剤としては、(a)アルカリ成分として無機アルカリ、無機アルカリとアルカリ性のキレート剤の組合わせ、又は有機アルカリ剤とアルカリ性のキレート剤の組合わせを5〜20質量%、(b)成分のHLB5〜10の非イオン界面活性剤0.1〜2.5質量%、(c)成分として、陰イオン性界面活性剤とHLB11〜16の非イオン界面活性剤、又はHLB11〜16の非イオン界面活性剤を1〜20質量%、残り水を含有する洗浄剤組成物である。
【0033】
本発明の洗浄剤としては、有効アルカリの値は従来の洗浄剤より高い方がより好ましい。このアルカリ強化により、パーテクル、異物の除去性が向上する。洗浄剤自体の有効アルカリ(KOH換算%)は、5%以上であることがより好ましい。更により好ましくは7.5以上である。従来の洗浄剤では、3.0%〜3.5%程度である。
【0034】
本発明の洗浄剤の表面張力は従来のガラス用洗浄剤に比べて、低い表面張力を有している。この低表面張力化によりガラス表面の汚れとガラス界面との浸透力が増し、汚れの除去効果が向上する。洗浄剤1%溶液の20℃での表面張力は、40mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、38mN/m以下である。従来のガラス用洗浄剤では、一般的に44mN/m〜41mN/m程度である。なお、表面張力はキブロン社製ポータブル表面張力計を使用し、洗浄剤1%溶液で20℃で測定した値である。
【0035】
本発明の洗浄剤を用いる洗浄方法は、特に限定されるものではなく、通常ガラスの洗浄法に用いる方法を使用することができる。例えば、浸漬法、浸漬揺動法、超音波洗浄法、液中噴流法、スプレー法、手拭き法、枚葉式、バッチ式などの各種の洗浄方法を使用できる。洗浄したのち、溶剤、温水、常温の水などでリンスするなどの方法を連続的に行う方法などが、効率の良い洗浄方法として挙げられる。また、リンスするすすぎ水としては、表面の汚染物を除去しうるものであれば特に限定されないが、例えば、超純水、純水、イオン交換水、蒸留水、通常の水道水などがリンス性の面から好ましい。
【0036】
本発明の洗浄剤を用いる洗浄時間は、好ましくは1秒〜12時間、より好ましくは2秒〜2時間の処理時間である。洗浄する際の洗浄剤は、常温、加温状態での温度で行うことができる。なかでも40℃以上70℃に加温して洗浄するのが、洗浄効率からして好ましい。
【0037】
本発明のガラス用洗浄剤を、ガラス基板上にブラックマトリックスを設けた液晶表示用液晶セル用フィルターを製造する際に用いるのが、特に好ましい。液晶用カラーフィルターには、RGB画素間を遮光することによりカラーフィルターのコントラストの向上、光漏れを防止するためにブラックマトリックスが使用されている。ガラス基板の受け入れ洗浄後、ブラックマトリックスの形成工程が行うが、本発明のガラス用洗浄剤を用いて洗浄したガラス基板にブラックマトリックスを形成すると、従来用いられていた洗浄剤に比べてブラックマトリックスの現像密着性がより向上する。
【0038】
液晶パネルの大画面化、高コントラスト化、高解像度化に伴いガラス基板に付着した異物、キズなどの除去による清浄度、平滑性が求められ、かつディスプレイ解像度の高精度化によりブラックマトリックスの線幅の細線化が求められ、細線化によるブラックマトリックスの現像密着性も厳しい要求がなされている。本発明のガラス洗浄剤は、従来の洗浄剤と同様の清浄度、平滑性が達成できるだけでなく、ブラックマトリックスの現像密着性が向上していることがわかった。そこで、以下のブラックマトリックスの現像密着性の評価を行った。
【0039】
[ブラックマトリックスの現像密着性の評価]
液晶用ガラス基板を本発明のガラス用洗浄剤を用いて、50℃の洗浄剤浸漬層中に10分間浸漬洗浄し、次いで純水で1分間、すすぎ処理を繰り返し、十分乾燥させてから、常法によりブラックレジストインキ(新日鉄住金化学株式会社製)を用い、ポストベーク後の膜厚を1.2μmになるように、塗布し、70℃、1分間プレベークした。その後、露光を50mJ/cm
2、現像を0.04%KOH現像液を用い、23℃、現像圧0.1MPa、水洗圧0.5MPa、現像時間を80秒、90秒、95秒、100秒と変えた時のブラックマトリックスの現像密着性の評価を、最少密着パターン(ライン、ドット)としてマスク開口(μm)と現像時間との関係でパターンテストを行った。
【0040】
更に、解像度セルパターンの写真による評価を行った。350ppi線幅8μmの解像度として、横方向BM:線幅8μm、縦方向BM:線幅16μmとしたブラックマトリックスの現像密着性として現像時間80秒、90秒、100秒と変えた時の解像度セルパターンを、写真撮影して評価した。
【実施例】
【0041】
以下には、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0042】
[実施例1]
(a)アルカリ成分として、水酸化カリウム5質量%、水酸化ナトリウム4質量%、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩2.9質量%、(b)成分として、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールPOE/POP(HLB9.4)0.3質量%、(c)成分として、陰イオン界面活性剤(トルエンスルホン酸ナトリウム)8.8質量%、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(HLB13.3)2.0質量%、pH調整剤としてホスホン酸2.1質量%、残部として水を混合し洗浄剤組成物1を調製した。洗浄剤組成物の1%溶液の20℃で測定した表面張力は、34.6mN/mである。以下同様である。
【0043】
[参考例]
(a)アルカリ成分として、モノエタノールアミン19.5質量%、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩2.9質量%、(b)成分として、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールPOE/POP(HLB9.4)0.3質量%、(c)成分として、陰イオン界面活性剤(トルエンスルホン酸ナトリウム)8.8質量%、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(HLB13.3)2.0質量%、pH調整剤としてホスホン酸2.1質量%、残部として水を混合し洗浄剤組成物2を調製した。洗浄剤組成物の表面張力は、26.5mN/mである。
【0044】
[実施例3]
実施例1において、(c)成分として、陰イオン界面活性剤(トルエンスルホン酸ナトリウム)8.8質量%、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(HLB13.3)2.0質量%に変え、陰イオン界面活性剤(トルエンスルホン酸ナトリウム)8.8質量%を用いる以外は、実施例1と同様にして洗浄剤組成物3を調製した。洗浄剤組成物の表面張力は、30.5mN/mである。
【0045】
[実施例4]
実施例1において、(b)成分として、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールPOE/POP(HLB9.4)に変え、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールPOE/POP(株式会社ADEKA製、プルロニックL−61:HLB9.1)を用いる以外は、実施例1と同様にして洗浄剤組成物4を調製した。洗浄剤組成物の表面張力は、38.0mN/mである。
【0046】
[実施例5]
実施例1において、(b)成分として、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールPOE/POP(HLB9.4)に変え、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(株式会社ADEKA製、アデカノールPA−756:HLB8.0)を用いる以外は、実施例1と同様にして洗浄剤組成物5を調製した。洗浄剤組成物の表面張力は、29.0mN/mである。
【0047】
[実施例6]
実施例1において、(b)成分として、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールPOE/POP(HLB9.4)に変え、非イオン界面活性剤:オレイン酸エトキシレート(日油株式会社製、ノニオンO−2:HLB8.3)を用いる以外は、実施例1と同様にして洗浄剤組成物6を調製した。洗浄剤組成物の表面張力は、32.2mN/mである。
【0048】
[実施例7]
実施例1において、(b)成分として、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールPOE/POP(HLB9.4)に変え、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO:2 第一工業製薬株式会社製、ノイゲンPA−756:HLB5.7)を用いる以外は、実施例1と同様にして洗浄剤組成物7を調製した。 洗浄剤組成物の表面張力は、29.5mN/mである。
【0049】
[比較例1]
(a)アルカリ成分として、水酸化カリウム10質量%、エチレンジアミン四酢酸3.2質量%、(c)成分として、陰イオン界面活性剤(m−キシレンスルホン酸ナトリウム)10.0質量%、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(HLB13.3)4.8質量%、pH調整剤としてホスホン酸3質量%、残部として水を混合し比較洗浄剤組成物1を調製した。洗浄剤組成物の表面張力は、43.2mN/mである。
【0050】
[比較例2]
(a)アルカリ成分として、水酸化カリウム5質量%、水酸化ナトリウム4質量%、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩2.9質量%、(c)成分として、陰イオン界面活性剤(m−キシレンスルホン酸ナトリウム)8.8質量%、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(HLB13.3)2.0質量%、pH調整剤としてホスホン酸2.1質量%、残部として水を混合し比較洗浄剤組成物2を調製した。洗浄剤組成物の表面張力は、42.2mN/mである。
【0051】
実施例1の洗浄剤組成物1を用い洗浄処理したときのパターンテスト結果(C)と、比較例1の比較洗浄剤組成物1を用い洗浄処理したときのパターンテスト結果(K)を対比する。
図1には、平均最少密度(ライン)として、現像時間80秒、90秒、95秒、100秒と変えた時のブラックマトリックスのマスク開口幅(μm)とを現像密着性として評価した。
図2には、平均最少密度(ドット)として、現像時間80秒、90秒、95秒、100秒と変えた時のブラックマトリックスのマスク開口幅(μm)とを現像密着性として評価した。
【0052】
いずれの現像時間による現像処理においても、実施例1の洗浄剤組成物1を用い洗浄処理した場合は、比較洗浄剤組成物1を用い洗浄処理した際のマスク開口(μm)よりも3μm以上ライン幅を狭くすることができた。また、同じくドットとしても、実施例1の洗浄剤組成物1を用い洗浄処理した場合は、比較洗浄剤組成物1を用い洗浄処理した際のマスク開口(μm)よりも7μm以上ドット径を狭くすることができた。
図1、
図2によれば、本洗浄剤組成物を用い洗浄処理し、その後、ブラックマトリックスを形成した時、従来の洗浄剤組成物を用いた時よりもマスク開口において、ライン、ドット形成の密着度が優れていることがわかった。
【0053】
実施例1の洗浄剤組成物1を用い洗浄処理したときの解像度セルパターンテスト結果(C)と、比較例1の比較洗浄剤組成物1を用い洗浄処理したときの解像度セルパターンテスト結果(K)を対比する。
図3には、350ppi線幅8μmの解像度として、横方向BM:線幅8μm、縦方向BM:線幅16μmとしたブラックマトリックスの現像密着性を現像時間80秒、90秒、100秒と変えた時の解像度セルパターンを光学顕微鏡(倍率200倍)で撮影したときの写真を示す。
【0054】
解像度セルパターンとして、実施例1の洗浄剤組成物1を用い洗浄処理したときの解像度セルパターンの350ppi線幅8μmの解像度を現像時間80秒、90秒、100秒と変えた場合として評価した。現像時間80秒〜100秒において、鮮明であるのに対して、比較洗浄剤組成物1を用い洗浄処理した場合、解像度セルパターンの350ppi線幅8μmの解像度は、現像時間80秒では鮮明であるが、現像時間90秒以上ではパターンが崩れてしまいブラックマトリックスとして用いることができなかった。
【0055】
実施例3〜7の
洗浄剤組成物3〜7を用い洗浄処理したときのパターンテスト結果、解像度セルパターンテスト結果も実施例1と同様で、ブラックマトリックスの密着性は良好であった。一方、本発明の成分を有さない比較洗浄剤組成物2も比較洗浄剤組成物1と同程度であり、ブラックマトリックスの密着性は良好でなかった。
以 上
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、ガラス基材の表面に付着したゴミ、パーテイクル等を除去するだけでなく、密着性、付着性を向上させた表面改質を同時に行うことのできるガラス用洗浄剤を提供が提供でき、液晶用、太陽電池用、磁気ディスク用ガラス基板、及び光学ガラス等を対象としたガラス用洗浄剤として有用である。