(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6740112
(24)【登録日】2020年7月28日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】信号処理装置、および気象レーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/95 20060101AFI20200730BHJP
G01S 7/32 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
G01S13/95
G01S7/32 230
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-245874(P2016-245874)
(22)【出願日】2016年12月19日
(65)【公開番号】特開2018-100857(P2018-100857A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅勝
(72)【発明者】
【氏名】山田 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】水谷 文彦
【審査官】
梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−013182(JP,A)
【文献】
特開2006−184186(JP,A)
【文献】
特開2015−045564(JP,A)
【文献】
特開2000−155165(JP,A)
【文献】
特開2009−128278(JP,A)
【文献】
特開2012−220449(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第108680922(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 − 1/82
G01S 3/80 − 3/86
G01S 5/18 − 7/42
G01S 7/52 − 7/64
G01S 13/00 − 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを用いて、所定のパルス幅の第1の送信波と、前記所定のパルス幅よりも長いパルス幅の第2の送信波とを送信する送信部と、
前記第1の送信波および前記第2の送信波の反射波を受信する受信部と、
前記受信部により受信した前記第1の送信波の反射波に基づいて第1の受信信号を検出する第1の処理部と、
前記受信部により受信した前記第2の送信波の反射波に基づいて第2の受信信号を検出する第2の処理部と、
前記第1の処理部により検出された前記第1の受信信号に基づいて、所定の近距離領域に存在する物体によって反射された前記第2の送信波の反射波に含まれるサイドローブ成分の信号を予測する予測部と、
前記第2の処理部により検出された前記第2の受信信号から、前記予測部により予測された前記サイドローブ成分の信号を除去する除去部と、
前記第1の受信信号と、前記除去部により前記サイドローブ成分の信号が除去された前記第2の受信信号とを合成する合成部と、
を備える、信号処理装置。
【請求項2】
前記予測部は、前記近距離領域に存在する物体の位置が、前記近距離領域のうち、前記近距離領域よりも自装置から遠い遠距離領域に近いほど、前記遠距離領域における前記近距離領域に近い位置に前記サイドローブ成分の信号が発生すると予測する、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記第1の送信波の強度が高いほど、前記サイドローブ成分の信号の強度が高いと予測する、
請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記第2の処理部は、前記受信部により受信した前記第2の送信波の反射波の強度を表す信号における時間軸を圧縮した前記第2の受信信号を検出する、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記予測部は、前記第2の処理部における時間軸の圧縮比が高いほど、前記サイドローブ成分の信号の強度が高いと予測する、
請求項4に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記合成部は、前記第1の受信信号と、前記第2の受信信号のうち前記近距離領域よりも自装置から遠い遠距離領域に存在する物体の位置を表す信号とを合成する、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記請求項1から6のうちいずれか1項に記載の信号処理装置と、
前記合成部により合成された信号に基づいて、気象状況を解析する解析部と
を備える、気象レーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、信号処理装置、および気象レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数種類の送信波を送信し、送信した送信波の反射波を解析することで気象状況を観測する気象レーダ装置が知られている。気象レーダ装置は、近距離の気象状況を観測する場合には、短パルスの送信波を送信し、反射物の距離等を測定する。気象レーダ装置は、遠距離の気象状況を観測する場合、長パルスの送信波を送信する。気象レーダ装置は、長パルスの送信波の反射波を受信したことに基づく信号の時間軸を圧縮して、反射物の距離等を測定する。気象レーダ装置は、近距離領域の気象状況と、遠距離の気象状況とを合成した観測結果を作成する。
【0003】
長パルスの送信波の反射波を受信したことに基づく信号の時間軸を圧縮した場合、反射物の位置を表す信号(メインローブ)の前後に虚像(サイドローブ)が発生する。これにより、近距離領域に存在する物体で反射した長パルスの反射波を圧縮した場合において、圧縮後の虚像が遠距離領域に出現する場合がある。この場合、近距離領域と遠距離領域との境界において気象状況が不連続になる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−191134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、気象状況の不連続を抑制することができる信号処理装置、および気象レーダ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の信号処理装置は、送信部と、受信部と、第1の処理部と、第2の処理部と、予測部と、除去部と、合成部と、を持つ。前記送信部は、アンテナを用いて、所定のパルス幅の第1の送信波と、前記所定のパルス幅よりも長いパルス幅の第2の送信波とを送信する。前記受信部は、前記第1の送信波および前記第2の送信波の反射波を受信する。前記第1の処理部は、前記受信部により受信した前記第1の送信波の反射波に基づいて第1の受信信号を検出する。前記第2の処理部は、前記受信部により受信した前記第2の送信波の反射波に基づいて第2の受信信号を検出する。前記予測部は、前記第1の処理部により検出された前記第1の受信信号に基づいて、所定の近距離領域に存在する物体によって反射された前記第2の送信波の反射波に含まれるサイドローブ成分の信号を予測する。前記除去部は、前記第2の処理部により検出された前記第2の受信信号から、前記予測部により予測された前記サイドローブ成分の信号を除去する。前記合成部は、前記第1の受信信号と、前記除去部により前記サイドローブ成分の信号が除去された前記第2の受信信号とを合成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の気象レーダ装置1の一例を示すブロック図。
【
図2】実施形態の気象レーダ装置1の位置と、気象状況を観測する範囲との関係を示す図。
【
図3】実施形態の気象レーダ装置1により短パルス幅の送信波を送信したことに対して反射波を受信する時間的な関係を示す図。
【
図4】実施形態の気象レーダ装置1により長パルス幅の送信波を送信したことに対して反射波を受信する時間的な関係を示す図。
【
図5】実施形態の気象レーダ装置1によりサイドローブSL1を抑制することを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の信号処理装置、および気象レーダ装置を、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、実施形態の気象レーダ装置1の一例を示すブロック図である。気象レーダ装置1は、例えば、アンテナ部10と、送受信切替部20と、送信信号生成部30と、レーダ信号処理部40と、解析部50とを備える。
【0010】
アンテナ部10は、例えば、フェーズドアレイアンテナである。フェーズドアレイアンテナは、平面状に配列された多数のアンテナ素子と、アンテナ素子のそれぞれに接続された多数の移相器とを備える。さらに、アンテナ部10は、送信信号を増幅する送信アンプを備える。さらに、アンテナ部10は、受信信号を増幅する受信アンプ、および受信フィルタなどを備える。
【0011】
アンテナ部10は、仰角方向および方位角方向において所定のビーム幅に調整された送信ビームを送信する。アンテナ部10は、送信ビームを放射して電子走査し、フェーズドアレイアンテナを機械的に回転させることによって、周囲の気象状況を観測する。
【0012】
送受信切替部20は、送信信号をアンテナ部10に供給するタイミングと、受信信号をレーダ信号処理部40に供給するタイミングとを切り替える。
【0013】
送信信号生成部30は、例えば、所定の周波数の送信信号を生成する励振器である。送信信号生成部30は、アンテナ部10を用いて、送信波を送信する送信部として機能する。送信信号生成部30は、例えば、短パルス信号生成部32と、長パルス信号生成部34とを備える。短パルス信号生成部32は、所定のパルス幅(以下、短パルス幅)の送信波を送信するための短パルス信号を生成する。長パルス信号生成部34は、所定のパルス幅よりも長いパルス幅(以下、長パルス幅)の送信波を送信するための長パルス信号を生成する。送信信号生成部30は、例えば、短パルス幅の送信波と、長パルス幅の送信波とを所定間隔で繰り返してアンテナ部10から送信させる。
【0014】
図2は、実施形態の気象レーダ装置1の位置と、気象状況を観測する範囲との関係を示す図である。短パルス信号は、気象レーダ装置1から所定の近距離D1における気象状況を測定する送信波を生成するための信号である。所定の近距離D1は、例えば、気象レーダ装置1から4〜10[Km]の範囲内の距離を含む領域(以下、近距離領域(第1の領域))である。短パルス幅は、例えば、1.33μsecである。長パルス信号は、近距離領域よりも気象レーダ装置1から遠い距離D2の範囲(以下、遠距離領域(第2の領域))における気象状況を測定する送信波を生成するための信号である。遠距離領域は、例えば、近距離領域から遠い、長パルス信号が物体に反射した反射波が気象レーダ装置1で検出することができる領域である。長パルス幅は、例えば、20〜80μsecである。
【0015】
図1に戻る。レーダ信号処理部40は、例えば、短パルス信号処理部41と、エコー発生予測部42と、長パルス信号処理部43と、エコー除去部44と、信号合成部45とを備える。これらの機能部は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアが協働することで実現されてもよい。
【0016】
短パルス信号処理部41は、短パルス幅の送信波の反射波をアンテナ部10により受信したことにより生成された受信信号(以下、短パルス受信信号)を取得する。短パルス受信信号は、近距離領域に存在する物体の位置を表す信号である。短パルス信号処理部41は、短パルス受信信号に対してA/D変換処理などを行って、信号合成部45に供給する。
【0017】
エコー発生予測部42は、短パルス信号処理部41から供給された短パルス受信信号に基づいて、近距離領域に存在する物体によって反射された短パルス幅の送信波の反射波に含まれるサイドローブ成分の信号の位置および強度を予測する(予測部)。エコー発生予測部42は、近距離領域に存在する物体の位置が、近距離領域のうち、遠距離領域に近いほど、遠距離領域における近距離領域との境界付近の位置に、サイドローブ成分が発生すると予測する。また、さらに、エコー発生予測部42は、短パルス幅の送信波の強度が高いほど、サイドローブ成分の信号の強度が高いと予測する。さらに、エコー発生予測部42は、長パルス信号処理部43における時間軸の圧縮比が高いほど、サイドローブ成分の信号の強度が高いと予測する。さらに、エコー発生予測部42は、送信信号生成部30における送信信号の変調方式に基づいて、サイドローブ成分の位置および強度を予測してもよい。
【0018】
なお、エコー発生予測部42は、サイドローブSL1の位置および強度を、関数により演算してもよい。エコー発生予測部42は、例えば下記の式で示すように、サイドローブの幅を、送信信号の変調方式(MD)、送信波のパルス幅(T)、変調幅(B)の関数として演算してもよい。
[SL]=function(MD,B,T)
【0019】
また、一般にパルス圧縮後の波形(レンジサイドローブ)は、下記の式1で表現される。式1において、*は共役複素数を示す。式1において、r(t)は受信信号(受信信号は、送信信号x(t)が反射してきたものであり、送信信号の強度と遅延が変更されたものと考えられる。)、△tはサンプリング間隔(≦1/△f)、NはT/Δt(Tは送信パルス幅)、x
*(iΔt)はトランスバーサルフィルタの乗算器の係数である。
【数1】
【0020】
送信信号の変調方式(MD)とは、直線的に送信信号の周波数を変化させる周波数変調方式(LFM(Liner Frequency Modulation))、パルス圧縮時の参照波に時間軸で窓関数を掛けた周波数変調方式(LFM+時間軸窓関数)、COS関数を利用した窓関数を掛けた周波数変調方式などが挙げられる。送信幅のパルス幅(T)とは、送信信号のパルス幅である。変調幅(B)とは、1つの長パルス幅の送信波を送信する間における送信信号の周波数の変化幅である。変調幅(B)は、例えば、72μsecの送信波を送信する間に2.5MHzの幅で送信信号の周波数を変更させる場合、「2.5MHz」である。
【0021】
長パルス信号処理部43は、長パルス幅の送信波の反射波をアンテナ部10により受信したことにより生成された受信信号(以下、長パルス受信信号)を取得する。長パルス受信信号は、近距離領域および遠距離領域に存在する物体の位置を表す信号である。長パルス信号処理部43は、長パルス受信信号のうち、近距離領域の物体を検出する信号を除外する。すなわち、長パルス受信信号は、遠距離領域に存在する物体を検出する信号を含む。長パルス信号処理部43は、長パルス受信信号に対してA/D変換処理、およびパルス圧縮処理を行う。パルス圧縮処理は、長パルス受信信号における時間軸を圧縮する。これにより、長パルス信号処理部43は、信号強度を高くして、位置の測定精度を高くする。
【0022】
エコー除去部44は、長パルス信号処理部43により検出された長パルス受信信号から、エコー発生予測部42により予測されたサイドローブ成分の信号を除去する(除去部)。
【0023】
信号合成部45は、短パルス信号処理部41により取得した短パルス受信信号と、エコー除去部44によりサイドローブ成分の信号が除去された長パルス受信信号とを合成する。
【0024】
解析部50は、信号合成部45により合成された受信信号に基づいて、気象状況を解析する。解析部50は、例えば、受信信号に基づいて、気象状況を表示する。表示装置50は、例えば、信号強度に基づいて表示色を変化させた表示データを生成して、気象状況を表す画像を生成する。これにより、解析部50は、気象レーダ装置1から近距離領域および遠距離領域の気象状況をユーザに提示することができる。
【0025】
図3は、実施形態の気象レーダ装置1により短パルス幅の送信波を送信したことに対して反射波を受信する時間的な関係を示す図である。
図3の上図に示すように、気象レーダ装置1は、時刻t0から送信期間(Ts−1)において短パルス幅の送信波を送信する。その後、気象レーダ装置1は、時刻t1からt2における受信期間Tr−1で、短パルス幅の送信波の反射波を受信する。例えば、気象レーダ装置1から距離D1の位置に物体OBがある場合、気象レーダ装置1は、時刻t2において短パルス幅の送信波の反射波を受信する。これにより、気象レーダ装置1は、
図3の下図に示すように、距離D1において検出電圧が高い短パルス受信信号を取得することができる。
【0026】
図4は、実施形態の気象レーダ装置1により長パルス幅の送信波を送信したことに対して反射波を受信する時間的な関係を示す図である。
図4の上図に示すように、気象レーダ装置1は、時刻t0から送信期間(Ts−2)において長パルス幅の送信波を送信する。その後、気象レーダ装置1は、時刻t11からt13における受信期間Tr−2で、長パルス幅の送信波の反射波を受信する。例えば、気象レーダ装置1から距離D2の位置に物体OB12がある場合、気象レーダ装置1は、時刻t13において長パルス幅の送信波の反射波を受信する。これにより、気象レーダ装置1は、
図4の下図に示すように、距離D2において検出電圧が高い長パルス受信信号を取得することができる。
【0027】
図4の上図に示すように、気象レーダ装置1から距離D1の位置の物体OBが存在し、且つ気象レーダ装置1から距離D11の位置に物体OB11が存在するものとする。短パルス幅の送信波および長パルス幅の送信波は、物体OBにより反射され、反射波(SP,LP)として気象レーダ装置1に到来する。長パルス幅の送信波は、物体OB11により反射され、反射波(LP)として気象レーダ装置1に到来する。なお、短パルス幅の送信波は、物体OB11に届かずに消失する。
【0028】
物体OBにより反射したことに基づく長パルス受信信号を圧縮した場合、
図4の下図に示すように、距離D1に対応する位置に出現するメインローブML1の距離的な前後に、サイドローブSL1およびSL2が出現する。このため、距離D1から距離D11までの遠距離領域に物体が存在しないにも拘わらず、サイドローブSL1が存在することによって、高い検出電圧となっていることが分かる。以上より、近距離領域と遠距離領域との境界付近において、物体の検出結果が連続的になっていることが分かる。
【0029】
さらに、サイドローブSL1と物体OB11により反射したことにより出現するメインローブML2とが、互いに重畳していることが分かる。以上より、物体OB11が距離D11の位置に存在するにも拘わらず、サイドローブSL1により、あたかも、物体がD1からD11に亘って存在するような結果になっていることが分かる。これにより、物体の観測する位置精度が低下する恐れがある。なお、メインローブML2の距離的な前後に位置するサイドローブの図示を省略している。
【0030】
図5は、実施形態の気象レーダ装置1によりサイドローブSL1を抑制することを説明する図である。エコー発生予測部42は、近距離領域に存在する物体OBにより出現するサイドローブSL1の位置および強度を予測する。エコー除去部44は、予測されたサイドローブSL1の位置における信号強度を、遠距離領域において対応する位置の信号強度から除去する。これにより、エコー除去部44は、サイドローブSL1#のように、サイドローブSL1よりも信号強度を低くすることができる。
【0031】
以上説明した気象レーダ装置1によれば、短パルス幅の送信波および長パルス幅の送信波の反射波を受信し、短パルス受信信号に基づいて、近距離領域に存在する物体によって反射された長パルス受信信号に含まれるサイドローブ成分の信号を予測する。気象レーダ装置1は、長パルス受信信号から、予測されたサイドローブ成分の信号を除去するので、短パルス受信信号に含まれるサイドローブが遠距離領域に出現した場合であっても、長パルス受信信号からサイドローブ成分を除去することができる。この結果、気象レーダ装置1によれば、近距離領域と遠距離領域との境界付近において気象状況の連続性が損なわれることを抑制することができる。
【0032】
また、気象レーダ装置1によれば、近距離領域に存在する物体の位置が、遠距離領域に近いほど、遠距離領域における近距離領域に近い位置にサイドローブ成分の信号が発生すると予測するので、遠距離領域における近距離領域に近い位置におけるサイドローブの影響を抑制することができる。
【0033】
さらに、気象レーダ装置1によれば、短パルス幅の送信波の強度が高いほどサイドローブ成分の信号の強度が高いと予測するので、遠距離領域におけるサイドローブの影響を更に抑制することができる。
【0034】
さらに、気象レーダ装置1によれば、長パルス信号処理部43における時間軸の圧縮比が高いほどサイドローブ成分の信号の強度が高いと予測するので、遠距離領域における位置精度を高くするためにパルス圧縮の比率を高くしても、遠距離領域におけるサイドローブの影響を効果的に抑制することができる。
【0035】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、アンテナ部10を用いて、短パルス幅の送信波と、長パルス幅の送信波とを送信する送信信号生成部30短パルス幅の送信波および長パルス幅の送信波の反射波を受信するアンテナ部10と、短パルス幅の送信波の反射波に基づいて短パルス受信信号を検出する短パルス信号処理部41と、長パルス幅の送信波の反射波に基づいて長パルス受信信号を検出する長パルス信号処理部43と、短パルス受信信号に基づいて、近距離領域に存在する物体によって反射された長パルス幅の送信波の反射波に含まれるサイドローブ成分の信号を予測するエコー発生予測部42と、長パルス受信信号から、予測されたサイドローブ成分の信号を除去するエコー除去部44とを持つので、サイドローブの影響により気象状況の不連続を抑制することができる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0037】
1…気象レーダ装置、10…アンテナ部、20…送受信切替部、30…送信信号生成部、32…短パルス信号生成部、34…長パルス信号生成部、40…レーダ信号処理部、41…短パルス信号処理部、42…エコー発生予測部、43…長パルス信号処理部、44…エコー除去部、45…信号合成部、50…解析部