(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような搬送用ロボットにおいては、一つの赤外線カメラによるビーコン位置の取得では、ビーコンの方向は検出できるが、ビーコンまでの距離を検出することはできない。このため、ビーコンの移動速度に合わせて、搬送用ロボットを走行させることは困難であった。
【0006】
また、搬送用ロボットは、ビーコンの移動に伴ってビーコンに向かって走行するが、追尾すべきビーコンに対して数秒遅れて走行することになる。従って、追尾すべきビーコンが、例えばL字形の通路を走行して、曲がり角を左又は右に曲がった場合、搬送用ロボットは、ビーコンに向かって真っ直ぐに進行しようとすることから、曲がり角の手前から、ビーコンの進行方向に従って左又は右に斜めに進行することになる。このため、場合によっては、搬送用ロボットが曲がり角の角部に引っ掛かってしまったり、あるいは衝突して停止してしまうおそれがある。
【0007】
これに対して、搬送用ロボットに障害物センサを備えることにより、曲がり角の角部に対する引っ掛かりや衝突を回避することは可能であるが、その場合には追尾すべきビーコンに追従することができなくなってしまう。
かくして、このような不具合を回避するためには、通路の幅を十分に大きくとらなければならなくなってしまう。
【0008】
さらに、上述のように追尾すべきビーコンが曲がり角を左又は右に曲がり切ってしまうと、ビーコンが曲がり角を回り込んでしまうため、搬送用ロボットから見ると、ビーコンが曲がり角に隠れて見えなくなる、即ち追尾すべきビーコンを赤外線カメラで撮像することができないため、ビーコンの位置情報を取得することができなくなり、その後の搬送用ロボットの走行が不可能になってしまう。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、追尾すべきビーコンの方向及び距離を検出して、曲がり角等においても確実にビーコンを追尾することができるようにした移動車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、本体部と、地上を走行するための走行部と、前記走行部を駆動制御する駆動制御部と、ビーコン検出部と、を備えた移動車両であって、ビーコン検出部が、追尾すべき
移動物体に取り付けられたビーコンからの第一の識別光を撮像するために体部の互いに横方向に離れてそれぞれ前方に向かって配置された一対の撮像手段と、各撮像手段で撮像された第一の識別光の撮像画面を画像処理して、それぞれ撮像画面上の座標位置から、ビーコンの方向及び距離から成るビーコン位置情報を算出する演算部と、演算部により所定時間毎に算出
されるビーコン位置情報に基づいてビーコンに向かって走行するように第1の走行情報を生成する処理部と、ビーコン位置情報を登録する記憶部と、を含んでおり、処理部が、予め演算部からのビーコン位置情報を走行すべき領域に関して順次にマッピングして記憶部に登録し、
前記ビーコンが左又は右に曲がる場合、処理部が
、既に記憶部に登録されて
いる前記ビーコン位置情報に基づく前記ビーコンの位置を順次に経由する第2の走行情報を生成し、駆動制御部が、処理部からの第1又は第2の走行情報に基づいて走行部を駆動制御することにより、走行部が
ビーコンの移動に追従して走行する。
【0012】
本発明による移動車両は、好ましくは、ビーコンが、赤外光による第一の識別光を出射し、各撮像手段が赤外
線カメラである。
【0013】
本発明による移動車両は、好ましくは、演算部が、各撮像手段で撮像された撮像画面に関してそれぞれ当該撮像手段の光学系の歪み補正した座標系でのビーコンの座標位置を求める。
【0014】
本発明による移動車両は、好ましくは、演算部が、各撮像手段で撮像された撮像画面に関して、それぞれ光軸のずれ角を偏位修正した座標系でのビーコンの座標位置を求める。
【0015】
本発明による移動車両は、好ましくは、演算部が、各撮像手段で撮像された撮像画面に関して、それぞれ光軸のずれ角を修正する演算係数を前もって算出しておき、演算部が、演算係数を利用して、偏位修正した座標系での前記ビーコンの座標位置を求める。
【0016】
本発明による移動車両は、好ましくは、演算部が、各撮像手段で撮像された撮像画面に関して、それぞれ光軸のヨー角に関してのみ演算係数を算出する。
【0018】
本発明による移動車両は、好ましくは、演算部が撮像手段からの
撮像画面に基づいてビーコン位置情報を算出できないとき、処理部が、既に記憶部に登録されて
いるビーコン位置情報に基づいて第2の走行情報を生成する。
【0019】
本発明による移動車両は、好ましくは、平坦な載置台を備えた搬送台車の本体部として構成されている。
【0020】
本発明による移動車両は、好ましくは、本体部の後部に、第二の識別光を出射するビーコンを備えている。
この構成によれば、追尾すべきビーコンを追尾して走行する本搬送台車が備えている第二の識別光を特定して、同様の移動車両を追尾させることが可能となる。これにより、ビーコンを装着した作業者又は移動車両に対して、複数の同様の移動車両が、それぞれ追尾すべきビーコンを特定して追尾することによって、複数の移動台車が連なって追尾、移動することが可能である。
【発明の効果】
【0021】
このようにして、本発明によれば、追尾すべきビーコンの方向及び距離を検出して、曲がり角等においても確実にビーコンを追尾することができるようにした移動車両を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1から
図3は、本発明による移動車両としての搬送台車10の一実施形態を示している。
図1から
図3において、搬送台車10は、偏平な直方体状の本体部11と、本体部11の下部に設けられた走行部12と、駆動制御部13と、ビーコン検出部20と、を含んでいる。
【0024】
本体部11は、その外形が偏平な直方体状に、そしてその上面が平坦な載置台11aとして形成されている。
【0025】
走行部12は、
図1(B)及び(C)そして
図2に示すように、本体部11の下面にて、その前方(
図1(B)にて矢印で示す方向)の両側に配置された一対の車輪15と、各車輪15をそれぞれ駆動する減速機構16aを備えたモータ16と、その後方の両側に配置された一対のキャスター17と、から構成されている。これにより、各駆動モータ16が後述する駆動制御部13で駆動制御されることにより、各車輪15が回転駆動され、搬送台車10が前進,後退又は左右に転回して所定の方向に走行する。なお、走行部12は、車輪15に限らず、例えば無限軌道等の他の駆動手段により構成されていてもよい。
【0026】
駆動制御部13は、本体部11内に配置されている。ここで、駆動制御部13及び各モータ16への給電は、本体部11の下面中央付近に配置された電源13aから行なわれる。なお、電源13aは、電池や充電可能な二次電池、例えばリチウム二次電池を使用することができる。以下の説明では、電源13aとして、リチウム二次電池を使用した場合について説明する。
【0027】
駆動制御部13は、本体部11に設けられたビーコン検出部20からの後述する走行情報に基づいて、走行部12の各駆動モータ16をそれぞれ駆動制御することにより、車輪15をそれぞれ独立的に駆動して、前進,後退,左右転回等の走行を行なわせる。その際、駆動制御部13は、図示しない障害物センサからの情報に基づいて、障害物を検出した場合には、走行部12を停止させる。
なお、センサとしては、搬送台車10の加速度や角加速度を測定するための二軸又は三軸加速度センサを利用した慣性センサ18が備えられている。この慣性センサ18は、IMU(Internal Measurement Unit)とも呼ばれている。
【0028】
以上の構成は、従来使用されている搬送台車とほぼ同様の構成であるが、本発明の実施形態における搬送台車10は、追尾すべき移動物体を検知するためにビーコン検出部20を備えている。
ビーコン検出部20は、
図2及び
図3に示すように、本体部11の前部に設けられており、一対の撮像手段21,22としての赤外線カメラと、距離センサ23と、演算部24と、処理部25と、から構成されている。
【0029】
撮像手段としての各赤外線カメラ21及び22は、それぞれ本体部11の前方の追尾すべきビーコンからの第一の識別光を撮像するために本体部11の互いに横方向に離れてそれぞれ前方に向かって、例えば前端の左右両側にて前方に向かって配置されている。即ち、各赤外線カメラ21及び22は、各光軸が互いにほぼ平行に、そして、例えば上向きに傾斜して前方に延びるように配置されている。ここで、各光軸の傾斜角度は、例えば光軸が前方1メートルで高さ50cm程度の位置を通るように、傾斜角度10度から30度程度に設定される。
各赤外線カメラ21,22は、公知の赤外線ステレオカメラの構成であって、撮像素子及びレンズ等の光学系から構成されている。
【0030】
撮像素子が入射する赤外線を検知することにより、太陽光等の外乱光の影響を排除することができると共に、夜間等の暗い場所においても、確実にビーコンBからの第1の識別光を検出することが可能である。なお、赤外光を検出する撮像素子としては、通常の撮像素子の入射側に赤外線のみを透過する光学フィルターを配置することによって、構成することも可能である。
そして、各赤外線カメラ21,22は、追尾すべきビーコンBを所定時間ごとに撮像して、撮像した撮像信号を演算部24に送出する。
【0031】
ビーコンBからの第1の識別光は赤外光であり、CPU等により制御されて所定の発光パターンを有している赤外光を発生する。この際、赤外光は、例えばビーコンBの識別番号(ID)が識別されるように変調されていてもよい。後述するように、ビーコンBは、追従すべき移動物体として、先行する搬送台車30に搭載されるか又は搬送台車30の運転をする作業者Pの腰付近に吊り下げて使用される。これにより、ビーコン検出部20では、第1の識別光により先行する搬送台車30や作業者Pの特定をすることができる。
【0032】
上記構成によれば、撮像手段が赤外線によるビーコンBの検出を行なうことにより、可視光に影響されることなく、また夜間等の暗い場所においても、ビーコンBの特定と追尾を行なうことができる。
さらに、追尾すべきビーコンB又は移動物体が角部を回り込んで、各撮像手段の視野から外れた場合であっても、それまでのマッピングされた後述するビーコン位置情報24aに沿って本搬送台車10が走行することにより、再び各撮像手段の視野内にビーコンBを取り込んで、追尾を継続することができる。
【0033】
距離センサ23は、本体部11の前端のほぼ中央にて前方に向かって配置されており、追尾すべきビーコンBに対して超音波を出射してその反射波を検出することにより、当該ビーコンBまでの距離d0を補助的に測定する。
【0034】
演算部24は、各赤外線カメラ21,22からのビーコンBの撮像画面を画像処理することにより、所謂ステレオ視によるビーコン位置情報24a、即ち方向及び距離dを算出して、処理部25に送出する。
その際、演算部24は、ビーコンBの撮像画面に関して、後述するように各赤外線カメラ21,22の光学系による歪み補正を行なうと共に、各赤外線カメラ21,22の本体部11への取付姿勢、即ちそれぞれの光軸の間の平行からのずれを修正して、撮像画面上における中心位置の修正を行なう。
【0035】
演算部24は、各撮像手段として赤外線カメラ21,22で撮像された撮像画面に関して、それぞれ光軸のずれ角を偏位修正した座標系でのビーコンBの座標位置を求める。これにより、各撮像手段の光軸が互いにずれていても、それぞれの撮像画面における座標系を偏位修正することによって、各撮像手段の本体部11への取付修正を行なうことなく、演算部24による演算によって光軸のずれ角を修正して、より正確なビーコン位置を検出することができる。
【0036】
さらに、演算部24は、各撮像手段で撮像された撮像画面に関して、それぞれ光軸のずれ角を修正する演算係数を前もって算出しておき、演算部24が、演算係数を利用して、偏位修正した座標系でのビーコンBの座標位置を求める。これにより、前もって光軸のずれ角修正のための演算係数を算出しておくことにより、より迅速に且つ正確にビーコンBの位置の座標位置を検出することができる。
【0037】
ここで、演算部24は、距離センサ23で測定されたビーコンBまでの距離d0を参照することにより、ビーコンBまでの距離dをより正確に算出することができる。
また、演算部24は、赤外線カメラ21,22からの撮像画面の画像処理によりビーコンの位置情報を算出できないときには、ビーコンBの位置情報24aを作成せず、処理部25に送出しない。
【0038】
処理部25は、演算部24で算出されたビーコンBの位置情報24aを、本搬送台車10が走行すべき領域に関してマッピングして記憶部25aに登録すると共に、このビーコンの位置情報24aに基づいて、そのときの追尾すべきビーコンBに対する方向及び距離dから、搬送台車10をビーコンBに追従させるための速度及び方向(操舵角)から成る走行情報25bを生成する。その際、処理部25は、当該ビーコンの位置情報24aと直前のビーコンの位置情報24aとを比較することにより、ビーコンBと搬送台車10との相対速度及び距離の変化を算出して、ビーコンBに対する距離が所定範囲内に収まるように、走行情報25b
(これを第1の走行情報25bという)に含まれる速度を決定する。
【0039】
ここで、走行情報25bは、左右の車輪15を駆動する駆動モータ16の回転速度を制御するための制御情報であって、左右の駆動モータ16を互いに異なる回転速度で制御することにより、その速度差により操舵角を実現することができる。
そして、処理部25は、所定時間毎に、演算部24から送られてくるビーコン位置情報24aを順次にマッピングして記憶部25aに登録すると共に、記憶部25aから順次にビーコン位置情報24aを読み出して、そのときのビーコンBに対する方向及び距離に基づいて、走行情報25bを生成して駆動制御部13に送出する。
【0040】
また、処理部25は、演算部24からビーコンBの位置情報24
aが送られてこないときには、既に記憶部25aに登録されているマッピングによるビーコンBの位置情報24bに基づいて走行情報25
c(これを第2の走行情報25cという)を生成して、駆動制御部13に送出する。
【0041】
上記構成によれば、追尾すべきビーコンB又は移動物体が屈曲した経路を進行したり左右に曲がる場合であっても、マッピングされたビーコン位置情報24
bを経由するように追尾を行なうことにより、確実に追尾を行なうことができる。
【0042】
ここで、ビーコン検出部20における各赤外線カメラ21,22で撮像された撮像画面に関して、二段階の補正、即ち撮像手段である赤外線カメラ21,22の光学系による歪みの補正及び赤外線カメラ21,22の相互の光軸のずれ角の補正がある。ここで、光学系による歪みは、広角レンズを用いたときに生じ易いものである。
【0043】
まず、赤外線カメラ21,22の光学系による歪みの補正について説明する。
赤外線カメラ21及び22は、同じ構成であり、その光学系も同一のものが使用されている。従って、一つの赤外線カメラについて、その光学系の歪みを測定すれば、双方の赤外線カメラ21,22の光学系の歪み補正をすることが可能である。
まず、光学系の歪みの測定は、赤外線カメラ21,22の前方に格子状のパターンを備えたスクリーン等を配置して、このスクリーンのパターンを撮像素子で撮像することにより、撮像された撮像画面のパターン画像が得られる。このパターン画像と、撮像画面上の位置とを対応させて、撮像画面上の座標位置(x
0,y
0)に対して、式(1)により、歪み補正した座標位置座標位置(x
1,y
1)及び歪み中心との距離rが得られる。
【0045】
このとき、歪み中心を表すパラメータ(x
c,y
c)及び他のパラメータは、いくつかの赤外線カメラで実際に上述したスクリーン等の撮像を行なって、実測値に基づいて決定される。
【0046】
次に、赤外線カメラ21,22の光軸のずれ角の補正について説明する。
光軸のずれについては、基本的に三軸方向、即ちロール,ピッチ及びヨーの各方向のずれがあるが、追尾すべきビーコンBへの本搬送台車10の追従という観点からは、実質的にヨー方向(即ち左右方向)のずれを補正すれば、実用上十分である。
【0047】
まず、
図4の平面図にて、搬送台車10の中心線前方にて距離D1の位置に、ビーコンBを配置する。このとき、左右の赤外線カメラ21,22は、ビーコンBに対して左右対称に配置され、その中心線に対する光軸は、理論上は、それぞれ同じ角度だけ逆にずれている。
【0048】
以下、ヨー方向についての修正について、一方の赤外線カメラ21に関して説明する。
赤外線カメラ21,22の間隔をD2,光軸のずれ角をθ,撮像画面上のビーコンBの位置x
c,光学系の焦点距離をf,uを撮像手段の画素の大きさとすると、撮像画面上でのビーコンBの画像位置xの画面中心x
cからのずれ量(x−x
c)に関しては、式(2)で表される。
【0050】
従って、実際の撮像画面上でのビーコンBの画像位置から得られる方向に対して、ずれ角θを減算することにより、偏位修正した座標系におけるビーコンBの正しい方向が算出され得る。
他方の赤外線カメラ22についても同様の偏位修正を行なう。なお、この偏位修正における画面中心x
cは、歪み修正における画面中心x
cと同じとは限らない。
【0051】
このようにして得られたヨー角のずれθに基づいて、変換行列として、公知のレクティファイ行列を利用することにより、撮像画面上の座標位置から、ビーコンBの修正された座標位置が求められる。
【0052】
即ち、左右の各赤外線カメラ21,22による撮像画面の偏位修正は、それぞれ3×3の行列により表される。即ち、修正前の座標位置を(x,y)、修正後の座標位置を(x’,y’)とすると、変換行列は、式(3)で表される。
【0054】
従って、sは、式(4)で表されるから、x’,y’は、それぞれ式(5)で与えられる。
【0057】
上記構成によれば、各撮像手段の光軸のずれ角がヨー角に介してのみ修正されることにより、演算部24の演算処理が軽減されるので、演算係数がより迅速に算出されると共に、光軸のずれ角修正のための演算も簡略化される。
【0058】
このようにして得られた歪み補正及び偏位修正の演算係数に基づいて、演算部24は、
図5のフローチャートに示すように、正しいビーコンの位置情報24aを算出する。
図5において、ステップST1にて、搬送台車10の最初の起動時に、上述した歪み補正及び偏位修正の演算係数を求めておく。
そして、通常の使用時には、ステップST2及びステップST3に示すように、演算部24は、赤外線カメラ21,22の撮像画面よりそれぞれビーコン位置の座標x0,y0を検出する。
続いて、ステップST4及びステップST5にて、演算部24は、前もって得られた演算係数に基づいて歪み補正の演算を行ない、歪み補正したビーコン位置の座標x
1,y
1を算出する。
次に、ステップST6及びステップST7にて、演算部24は、歪み補正したビーコン位置の座標x
1,y
1に基づいて、赤外線カメラ21,22の撮像画面を画像処理して、ステップST8及びステップST9にて、偏位修正のための変換行列を求める。
そして、ステップST10及びステップST11にて、歪み補正したビーコン位置の座標x
1,y
1から、偏位修正を行なって、ビーコン位置の修正座標x,yを処理部25に送出する。
このようにして、演算部24は、上述したステップST2からステップST11までの動作を所定時間毎に繰り返して行なう。
【0059】
上記構成によれば、撮像手段の光学系に固有の歪みを補正することによって、より正確なビーコンBの座標位置を検出することができる。
【0060】
本発明の実施形態の搬送台車10は以上のように構成されており、以下のように動作する。
図6に示すように、追従すべき移動物体として、先行する搬送台車30を用意する。
この先行する搬送台車30は、偏平な載置台31aを有する本体部31と、本体部31の下部に設けられた車輪32及びキャスター33と、から構成されると共に、本体部31の後端から上方に延びるハンドル34が備えられている。
以上の先行する搬送台車30の構成は、従来の所謂手押し式の搬送台車10と同様の構成であるが、本搬送台車30は、その本体部31の後端に、ビーコン35を備えている。先行する搬送台車30は、単に搬送台車30とも呼ぶ。
【0061】
ビーコン35は、前述した追尾すべきビーコンBであって、所定の発光パターンの赤外光による第一の識別光を後方に向かって照射する。
【0062】
図6に示すように、このような構成の搬送台車30は、作業者Pがハンドル34を手で掴んだ状態で、押動する。これに伴って、本搬送台車10は、搬送台車30に取り付けられたビーコン35からの第一の識別光を検出して、ビーコン35そして搬送台車30を追尾する。
なお、
図6においては、搬送台車10及び30は、それぞれその平坦な載置台11a,31a上に搬送すべき荷物Lが積載されている。このとき、搬送台車10は、
図7に示すフローチャートに従って動作する。
【0063】
図7のフローチャートにおいて、まずステップST21にて、初期化が行なわれる。即ち、ビーコン位置情報24aのマッピング及び走行情報25bがクリアされる。
続いて、演算部24は、ステップST22にて、距離センサ23からの検出信号によりビーコンBまでの距離d0を読み込み、ステップST23にて、赤外線カメラ21,22からの撮像画面を画像処理して、ビーコンの座標位置を算出する。
【0064】
その後、演算部24は、ステップST24にて、歪み補正及び偏位修正を行なって、修正されたビーコン位置情報24aを算出して、処理部25に送出する。これを受けて、処理部25は、演算部24から送られてくるビーコン位置情報24aをマッピングして記憶部25aに登録する。
そして、処理部25は、マッピングされたビーコン位置情報24aを記憶部25aから順次に読み出して、このビーコン位置情報24aに含まれるビーコンBまでの距離及び方向から、ステップST25にて、ビーコンBを追尾すべき走行速度を計算し、さらにステップST26にて、操舵角を計算する。
【0065】
また、処理部25は、ステップST27にて、慣性センサ18からの検出信号を読み込んで、そのときの搬送台車10の加速度又は角加速度を算出し、ステップST28にて、ステップST26で計算した操舵角にフィードバックして、操舵角を修正する。これにより、操舵角の算出に関してエラーが発生した場合も、正しい操舵角を算出することができると共に、直進安定性を確保することができる。
続いて、処理部25は、ステップST29にて、これらの走行速度及び操舵角から成る走行情報25bを生成して、駆動制御部13に送出する。
これにより、駆動制御部13は、走行情報25bに基づいて、左右のモータ16を駆動制御し、左右の車輪15を回転駆動し、搬送台車10を走行させる。
【0066】
上記構成によれば、搬送台車10は、ビーコンBが取り付けられた移動物体に対して、その移動速度に合わせて適正な追尾を行なうことができる。
【0067】
ここで、
図8に示すように、L字形に屈曲した通路36を搬送台車30及び10が通過する場合について説明する。
搬送台車30が、矢印Zで示すように、角部36aを左に曲がると、そのビーコンBも左側に向かって移動することになる。このとき、搬送台車10のビーコン検出部20は、ビーコンBが左方に移動することを検出して、ビーコン位置情報24aを算出する。
このようにビーコンBが左方に移動したビーコン位置情報24aをそのまま利用して、処理部25が走行情報25bを生成すると、
図8にて点線Z1で示すように、搬送台車10は、通路36の角部36aの手前で左寄りに走行してしまうことになり、角部36a付近で通路36の壁に当たってしまうこともある。
【0068】
これに対して、本実施形態の搬送台車10においては、処理部25は、マッピングされたビーコン位置情報24
bに基づいて、
第2の走行情報25
cを生成しているので、上述のように追尾すべき搬送台車30が左に曲がったとしても、角部36aまでの真っ直ぐ進行している状態(経路Z)でのビーコンBの位置(B1,B2,B3)を、それぞれビーコン位置情報24
bとしてマッピングしてあるので、このマッピングされたビーコン位置情報24
bを記憶部25aから読み出すことによって、搬送台車30が角部36aまでの真っ直ぐ進行している状態(経路Z)に沿って追尾することができる。
さらに、追尾すべき搬送台車30が左に曲がって角部36aを越えて、搬送台車10側から見えなくなってしまったとしても、同様にマッピングされたビーコン位置情報24
bに基づいて、処理部25が
第2の走行情報25
cを生成することにより、搬送台車30が角部36aを曲がり切って角部36aに隠れてしまった場合でも、搬送台車30の走行経路に沿って正確に追尾することができる。
【0069】
本発明によれば、所定間隔で離反した一対の撮像手段、即ちステレオ赤外線カメラ21,22により追尾すべきビーコン35を所謂ステレオ視により検出して、当該ビーコン35に対する方向及び距離を算出することにより距離を一定に保持するような
走行情報25bを生成する。このようにして、ビーコン35に対して遅れたり接近しすぎたりすることなく、ビーコン35の移動速度に合わせて適正な追尾を行なうことができる。
以下に、本発明の移動車両10の実施例を示す。
【実施例】
【0070】
実施例の移動車両10は、赤外線カメラ21,22として赤外線ステレオカメラと、この赤外線ステレオカメラ21,22の出力側に接続されるFPGA(Field-Programmable Gate Array)とマイクロコントローラから構成した。各赤外線カメラ21及び22の傾斜角度は20度に設定した。赤外線カメラ21,22(株式会社プライムテックエンジニアリング製)は、752×480画素のイメージセンサ(Aptica社製、MTV024)を内蔵している。マイクロコントローラは、STマイクロ社製のSTM32F407(EEPROM:1MB)を用いた。赤外線ステレオカメラ21,22とマイクロコントローラは、インターフェースとなるLVDS(Low Voltage Differential Signaling)を介して接続した。赤外線ステレオカメラ21,22からのビーコンBの撮像画面は、演算部24に送出される。この画像データは、演算部24内に設けたFPGAにより処理され、ビーコン位置情報24aを算出する。FPGAとしては、ザイリンクス(XILINX)社製のSPARTAN6(SRAM:8Mbits)を用いた。
【0071】
(比較例)
実施例に対して、赤外線カメラ21,22の光学系による歪みの補正及び赤外線カメラ21,22の相互の光軸のずれ角の補正をしない場合を比較例とした。
【0072】
ここで、ビーコンBを作業者Pの腰付近に吊り下げて、屈曲した通路36に沿って作業者Pが歩行し、100kgの荷物を搭載した搬送台車10が作業者Pを追尾する場合の実験例について、以下に説明する。
図8において、通路36の幅を1.5m、搬送台車10の幅を0.6m,長さを0.9mとしたとき、ビーコンBの経路と搬送台車10の経路のずれ(誤差)を測定する。
ここで、経路のずれとは、作業者Pに遅れて搬送台車10が走行するため、ある時点におけるビーコンBの位置と搬送台車10の中心位置の間の距離ではなく、ビーコンBと搬送台車10が通路36を通ったときのビーコンBと搬送台車10の中心の軌跡の間の最も近い距離、即ち搬送台車10の軌跡に対して直交する方向の距離とする。
【0073】
図9は、
図8の屈曲又は湾曲した通路において
図1の搬送台車10がビーコンBを腰に付けた作業者を追尾する実験による搬送台車10の中心軌跡を示すグラフであり、
図10の実験1の測定結果を示す。
図10は、
図9の実験を七回繰り返して得られたビーコンの経路からの搬送台車10の中心軌跡のずれを測定した結果を示す図表である。
図10に示す平均誤差は、ビーコンの経路に対する搬送台車10の軌跡のずれの平均であり、搬送台車10の軌跡がビーコンの内側である場合を正の値として示したものである。
これにより、例えば
図9及び
図10に示すように、搬送台車10の中心の軌跡は、図示しないビーコンBの軌跡に対して、やや内側に延びていることが判る。
【0074】
このような実験を同じ条件で七回繰り返して、ビーコンBの経路からの搬送台車10の中心の軌跡のずれを測定した結果、
図10に示すように、各回における平均ずれ差(m)及び標準偏差が得られた。これら七回の平均ずれを全体として平均すると、ずれは0.21mつまり21cmとなる。
上記結果により、屈曲した通路36に沿って進行するビーコンBに対する搬送台車10のずれは、従来と比較して大幅に小さくなるので、搬送台車10が角部36aに当たってしまうようなことが防止される。
従って、搬送台車10がビーコンBを追尾して角部を回る場合に、例えば、比較例の場合には、通路36の幅が2m程度必要であったが、本発明の実施形態による搬送台車10の場合には、1.5m程の幅の通路36で済むことになる。
【0075】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
例えば、上述した実施形態においては、移動車両として、搬送台車10の場合について説明したが、これに限らず、搬送台車以外のあらゆる移動車両に本発明を適用し得ることは明らかである。これにより、移動車両の載置台11aに、搬送すべき商品等を積載することにより、搬送台車10として使用することができる。
【0076】
上述した実施形態では、ビーコンBは先行する搬送台車30に設けられているが、これに限らず、搬送台車30を押動する作業者の腰付近に吊り下げるようにしてもよく、また単に歩行する作業者の腰付近に吊り下げることも可能である。
【0077】
上述した実施形態では、ビーコンBは、手押し式の搬送台車30に設けられているが、これに限らず、自走式の搬送台車10に設けられていてもよい。
【0078】
上述した実施形態では、搬送台車10は、手押し式の搬送台車30に追従して走行するようになっているが、搬送台車10が、搬送台車30におけるビーコン35と同様に、その後部に第二の識別光を出射するビーコンを備えていてもよい。第二の識別光は、第一の識別光と同様に、搬送台車10を特定する識別番号に関する所定の発光パターンを発生している。
上記構成によれば、追尾すべきビーコンBを追尾して走行する搬送台車10が備えている第二の識別光を特定して、同様の移動車両を搬送台車10に追尾させることが可能となる。つまり、ビーコンBを装着した作業者又は移動車両が異なる識別番号を有するように割り振りをして、複数の同様の移動車両がそれぞれ追尾することによって、複数の移動車両が連なって追尾、移動することが可能である。
これにより、搬送台車30を追尾する搬送台車10に対して、後続の搬送台車10と同じ構成の搬送台車が複数台連なった状態で、相互に追尾することも可能である。