(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮気体を生成する生成器と、前記生成された圧縮気体を内部に保持する保持器と、前記保持された圧縮気体を噴射して軌道分岐部に存在する異物を除去する噴射器と、を有する異物除去装置に配置され、前記保持器内部の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記検出された保持器内部の圧力に基づいて前記異物除去装置の故障の予兆の有無を判定する故障予兆判定手段と、を備える異物除去装置の監視システム。
前記故障予兆判定手段は、前記噴射後に検出された前記保持器内部の圧力と、前記噴射前に検出された前記保持器内部の圧力に対応した前記噴射後の保持器内部の圧力の第1の上限値および第1の下限値との対比に基づいて、前記故障の予兆の有無を判定する請求項1に記載の監視システム。
前記故障予兆判定手段は、前記噴射前に検出された前記保持器内部の圧力と前記噴射後に検出された前記保持器内部の圧力との圧力差に基づいて前記故障の予兆の有無を判定する請求項1に記載の監視システム。
前記故障予兆判定手段は、前記変化量が取得されたときに前記異物除去装置が所定の状態である場合に、前記故障の予兆が有る旨の判定を行わない請求項6に記載の監視システム。
圧縮気体を生成する生成器と、前記生成された圧縮気体を内部に保持する保持器と、前記保持された圧縮気体を噴射して軌道分岐部の異物を除去する噴射器と、を有する異物除去装置と、
前記異物除去装置に配置され、前記保持器内部の圧力を検出する圧力検出手段と、前記検出された保持器内部の圧力に基づいて前記異物除去装置の故障の予兆の有無を判定する故障予兆判定手段と、を有する監視システムと、を備える異物除去システム。
圧縮気体を生成する生成器と、前記生成された圧縮気体を内部に保持する保持器と、前記保持された圧縮気体を噴射して軌道分岐部の異物を除去する噴射器と、を有する異物除去装置において、前記保持器内部の圧力を検出し、
前記検出された保持器内部の圧力に基づいて前記異物除去装置の故障の予兆の有無を判定する、異物除去装置の監視方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る異物除去装置の監視システム、異物除去システムおよび異物除去装置の監視方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上、実際の比率とは異なる場合があり、また、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0022】
図1は、本実施形態による異物除去システム1を示す図である。
図1に示すように、異物除去システム1は、異物除去装置2と、監視システム3とを備える。
【0023】
(異物除去装置2)
異物除去装置2は、鉄道線路の軌道分岐部に配置され、分岐器のポイント6を構成する基本レール7とトングレール8との間に介在する氷雪などの異物を圧縮空気10の噴射によって除去するものである。鉄道線路は、例えば、新幹線の線路である。新幹線の線路は、日本国の新幹線規格(すなわち、フル規格)の線路および既存の在来線を改軌したうえで新幹線線路と直通運転できるようにしたミニ新幹線の線路のいずれであってもよい。また、鉄道線路は、在来線専用の線路であってもよい。また、鉄道線路は、日本国に限らず世界各国の鉄道線路(例えば、高速鉄道や在来線の線路)であってもよい。
【0024】
図1に示すように、異物除去装置2は、生成器の一例であるコンプレッサ21と、保持器の一例であるタンク22と、噴射器の一例であるノズル23とを有する。コンプレッサ21は、圧縮気体の一例である圧縮空気を生成する。タンク22は、コンプレッサ21で生成された圧縮空気を内部に保持する。ノズル23は、タンク22内に保持された圧縮空気を噴射して軌道分岐部の異物を除去する。
【0025】
また、
図1に示すように、異物除去装置2は、コンプレッサ21、タンク22およびノズル23を連通する配管24と、タンク22とノズル23との間の配管24上に配置された電磁弁25とを有する。また、異物除去装置2は、コンプレッサ21および電磁弁25を制御する制御部31を有しており、この制御部31は、後述する監視システム3の故障予兆判定手段および警報出力手段としても動作する。また、
図1に示すように、コンプレッサ21、タンク22、電磁弁25、制御部31および一部の配管24は、機械室20の内部に設置されている。
【0026】
より具体的には、
図1に示すように、コンプレッサ21は、内部にコンプレッサモータ211を有している。コンプレッサ21には、制御部31からコンプレッサモータ211の回転を指令するコンプレッサ制御信号が入力される。コンプレッサ制御信号が入力されることで、コンプレッサモータ211は回転する。なお、コンプレッサモータ211は、後述する圧力センサ32からの圧力検出信号に基づいて回転してもよい。コンプレッサモータ211が回転することで、コンプレッサ21内に圧縮空気が発生する。コンプレッサ21は、コンプレッサモータ211の回転をシリンダ内でのピストンの往復動に変換することで圧縮空気を生成する構成であってもよいが、このような構成に限定されるものではない。コンプレッサ21内に発生した圧縮空気は、配管24を通ってタンク22内に流れ込み、タンク22内で保持される。
【0027】
また、電磁弁25には、制御部31から電磁弁25の開放を指令する電磁弁制御信号が入力される。電磁弁制御信号が入力されることで、電磁弁25は開く。電磁弁25が開いた状態で、タンク22内に保持された圧縮空気は、配管24を通ってノズル23に到達する。ノズル23に到達した圧縮空気は、ノズル23から基本レール7とトングレール8との間に向けて噴射される。圧縮空気が噴射されることで、基本レール7とトングレール8との間に介在する異物を除去できる。
【0028】
なお、
図1の例において、ノズル23は、並走する2つの線路のそれぞれが有する2本の基本レール7の内側壁に、線路の長手方向に間隔を空けて複数個ずつ配置されている。また、電磁弁25は、2つの線路の基本レール7の総数と同数である4つ配置されている。また、共通の基本レール7に配置された複数のノズル23は、配管24を介して共通の電磁弁25に連通されている。
【0029】
また、
図1の例において、制御部31には、上位装置4から圧縮空気の噴射を指令する噴射信号が入力される。上位装置4は、例えば、駅に設置された情報機器または情報端末であってもよい。噴射信号の入力に応じて、制御部31は、コンプレッサモータ211の回転を指令するコンプレッサ制御信号をコンプレッサモータ211に出力し、電磁弁25の開放を指令する電磁弁制御信号を電磁弁25に出力する。
【0030】
図1の例において、噴射信号は、列車通過信号、定位状態信号、反位状態信号およびリトライ信号の4種類の信号である。
【0031】
列車通過信号は、軌道を列車が通過するときに、ATC(Automatic Train Control)12から上位装置4に出力される信号である。列車通過時には、ポイント6において列車が振動することで、列車の車輪回りや床下などに付着していた氷雪などの異物が基本レール7とトングレール8との間に落下する可能性がある。制御部31は、列車通過信号をトリガとして圧縮空気を噴射する制御を行うことで、列車通過時に基本レール7とトングレール8との間に落下した異物を簡易な手法によって迅速に除去することができる。
【0032】
定位状態信号は、ポイント6を転換させる転轍器13によってポイント6が反位から定位に転換されたときに、転轍器13から上位装置4に出力される信号である。なお、定位とは、通常の方向すなわち本線に列車を進入させるポイント6の状態である。反位とは、通常と異なる方向すなわち副本線に列車を進入させるポイント6の状態である。定位状態信号は、例えば、転轍器13の動力源であるモータに供給される電流を検出するセンサから出力される信号であってもよい。
【0033】
反位状態信号は、転轍器13によってポイント6が定位から反位に転換されたときに、転轍器13から上位装置4に出力される信号である。
【0034】
リトライ信号は、ポイント6の転換不良が発生した場合に、転轍器13によって再転換すなわちリトライのためのポイント6の反転が開始されたときに、転轍器13から上位装置4に出力される信号である。
【0035】
なお、上記の4種類の噴射信号以外にも、制御部31は、後述する監視端末33から遠隔操作による噴射指令信号を受信し、噴射指令信号の受信に応じて圧縮空気を噴射する制御を行ってもよい。また、制御部31は、圧縮空気を噴射する制御を行った場合に、圧縮空気が噴射中であることを示す噴射中信号を監視端末33に送信してもよい。
【0036】
(監視システム3)
監視システム3は、異物除去装置2の動作状態を監視して、異物除去装置2の故障の予兆の有無を判定できるシステムである。
図1に示すように、監視システム3は、圧力検出手段の一例である圧力センサ32と、故障予兆判定手段の一例である既述した制御部31と、監視端末33とを有する。
【0037】
圧力センサ32は、異物除去装置2のタンク22に配置されている。圧力センサ32は、タンク22の内部の圧力(以下、タンク圧力とも呼ぶ)を検出し、検出されたタンク圧力を示す圧力検出信号を制御部31に出力する。
【0038】
制御部31は、例えば、PLC(programmable logic controller)等の制御装置である。制御部31は、圧力センサ32から入力された圧力検出信号すなわち検出されたタンク圧力に基づいて、異物除去装置2の故障の予兆の有無を判定する。
【0039】
具体的には、制御部31は、圧縮空気の噴射前のタンク圧力(以下、噴射前タンク圧力とも呼ぶ)と、圧縮空気の噴射後のタンク圧力(以下、噴射後タンク圧力とも呼ぶ)とをそれぞれ検出する。そして、制御部31は、検出された噴射後タンク圧力と、検出された噴射前タンク圧力に対応して予め設定された噴射後タンク圧力の上限値および下限値との対比に基づいて、異物除去装置2の故障の予兆の有無の判定(以下、故障予兆判定とも呼ぶ)を行う。このような構成は、検出された噴射後タンク圧力と予め設定された噴射後タンク圧力の閾値(上限値、下限値)との対比に基づいて故障予兆判定を行う例でもある。なお、故障予兆判定の更なる詳細については、後述の動作例において説明する。
【0040】
制御部31は、故障予兆判定において故障の予兆が有ると判定された場合に、異物除去装置2がこれから故障し得ることを示す警報を出力する。警報は、例えば、画像信号、警報灯の点灯信号および音声信号の少なくとも1つであってもよい。
【0041】
監視端末33は、ネットワーク34を介して制御部31と通信接続可能とされている。ネットワーク34の具体的な態様は特に限定されず、例えば、第4世代移動通信システム(4G)などであってもよい。監視端末33は、制御部31から出力された警報をネットワーク34経由で受信することで、異物除去装置2の故障の予兆を遠隔地(例えば、鉄道事業者の事務所)から把握できる。なお、監視端末33は、遠隔地だけでなく、遠隔地よりも異物除去装置2から近距離の位置(例えば、駅)にも配置されていてよい。異物除去装置2から近距離の位置に配置される監視端末33は、制御部31に対して有線(例えば、光ケーブル等)および無線のいずれで通信接続可能とされていてもよい。
【0042】
制御部31は、タンク圧力に基づいて圧縮空気の噴射を制御してもよい。例えば、制御部31は、タンク圧力が圧縮空気の噴射に十分な閾値以上の圧力である場合に、電磁弁25を開放する制御を行ってもよい。また、コンプレッサモータ211は、タンク圧力が高過ぎる場合には、減速または停止してもよい。
【0043】
また、制御部31は、上位装置4から所定期間内(例えば、24時間内)に一度も列車通過信号、定位状態信号または反位状態信号が入力されなかった場合に、監視端末33への警報出力を行ってもよい。このような警報出力を行うことで、ATC12、転轍器13または上位装置4の異常を検知できる。
【0044】
また、非常時に異物除去装置2を強制停止または復帰させるために、制御部31は、監視端末33や図示しないタブレット端末からの指令に応じて制御部31の電源を切断または再投入してもよい。
【0045】
(動作例)
次に、異物除去システム1の動作例について説明する。
図2は、本実施形態による異物除去システム1の動作例を示すフローチャートである。
図2のフローチャートは必要に応じて繰り返し実行されるものである。
【0046】
図2に示すように、先ず、圧力センサ32および制御部31は、圧縮空気の噴射前後のタンク圧力すなわち噴射前タンク圧力および噴射後タンク圧力を検出する(ステップS1)。例えば、制御部31は、圧力センサ32から所定の周期で入力される圧力検出信号の入力の時刻と、圧縮空気を噴射する制御の時刻とを比較し、圧縮空気を噴射する制御の直前の圧力検出信号を噴射前タンク圧力として検出し、圧縮空気を噴射する制御の直後の圧力検出信号を噴射後タンク圧力として検出してもよい。
【0047】
図3は、本実施形態による異物除去システム1の動作例において、異物除去装置2の故障予兆判定を説明するための説明図である。
図3は、予め制御部31に設定された噴射後タンク圧力の上限値および下限値の例を示している。
図3に示すように、噴射後タンク圧力(縦軸)の上限値および下限値は、噴射前タンク圧力(横軸)に応じて異なる。
図3の例において、噴射後タンク圧力の上限値および下限値は、それぞれ、噴射前タンク圧力に対する一次関数で表現されている。
【0048】
上限値より大きい噴射後タンク圧力の領域は、圧縮空気の噴射量が不足であることを示す噴射量不足領域である。下限値より小さい噴射後タンク圧力の領域は、圧縮空気の噴射量が過剰であることを示す噴射量過剰領域である。下限値以上、上限値以下の噴射後タンク圧力の領域は、圧縮空気の噴射量が正常な領域である。ただし、噴射前タンク圧力には下限値と上限値があるので、噴射量が正常な領域は、噴射前タンク圧力の下限値以上、上限値以下の範囲において、噴射後タンク圧力の下限値以上、上限値以下の領域である。
【0049】
噴射前後のタンク圧力を検出した後、制御部31は、検出された噴射後タンク圧力と、検出された噴射前タンク圧力に対応して予め設定された
図3の噴射後タンク圧力の上限値および下限値とを対比する。そして、制御部31は、噴射後タンク圧力が上限値より大きいか否かに基づいた故障予兆判定を行う(ステップS2)。このような判定基準に基づく故障予兆判定によれば、異物除去装置2の故障の予兆として、電磁弁25や電磁弁25を制御する制御部31の動作不良に起因する異常噴射を検知することができる。
【0050】
なお、噴射後タンク圧力の上限値および下限値は、
図1の例に示される2つのポイント6において共通の値であってもよく、または、2つのポイント6のそれぞれに応じて個別の値であってもよい。ポイント6に応じて個別に上限値および下限値を設定する場合、上限値および下限値を表す一次関数(
図3参照)の傾きおよび切片の少なくとも一方は、ポイント6毎に異なっていてもよい。また、上限値および下限値は、一次関数以外の関数で表現される値であってもよい。故障予兆判定に用いる噴射後タンク圧力の上限値および下限値として、異物除去装置2に対応する複数のポイント6毎に個別の上限値および下限値を設定することで、故障予兆判定の判定精度を向上することができる。このように、異物除去装置2に対応する複数のポイント6毎に個別に故障予兆判定の閾値を設定する構成は、後述の各変形例においても採用することができる。
【0051】
噴射後タンク圧力が上限値より大きい場合(ステップS2:Yes)、制御部31は、異物除去装置2の故障の予兆が有ると判定し、判定結果として、噴射量が不足である旨を報知する噴射量不足警報を監視端末33に出力する(ステップS3)。
【0052】
一方、噴射後タンク圧力が上限値以下である場合(ステップS2:No)、制御部31は、噴射後タンク圧力が下限値より小さいか否かに基づいた故障予兆判定を行う(ステップS4)。
【0053】
噴射後タンク圧力が下限値より小さい場合(ステップS4:Yes)、制御部31は、異物除去装置2の故障の予兆が有ると判定し、判定結果として、噴射量が過大である旨を報知する噴射量過大警報を監視端末33に出力する(ステップS5)。
【0054】
一方、噴射後タンク圧力が下限値以上である場合(ステップS4:No)、制御部31は、異物除去装置2の故障の予兆が無いと判定し、監視端末33への警報出力を行わずに処理を終了する。この場合、制御部31は、異物除去装置2が正常である旨を報知する情報を監視端末33に出力してもよい。
【0055】
なお、制御部31は、故障予兆判定手段として動作することに加えて、故障判定手段としても動作し、検出されたタンク圧力に基づいて、異物除去装置2の故障の有無を判定してもよい。例えば、制御部31は、噴射後タンク圧力と、噴射前タンク圧力に対応した
図3とは異なる噴射後タンク圧力の上限値(すなわち、第2の上限値)および下限値(すなわち、第2の下限値)との対比に基づいて、異物除去装置2の故障の有無の判定(以下、故障判定とも呼ぶ)を行ってもよい。言い換えれば、制御部31は、故障予兆判定を行う場合と故障判定を行う場合とで、判定に用いる圧力の閾値を変更してもよい。
【0056】
具体的には、制御部31は、噴射後タンク圧力が、
図3に示される上限値(すなわち、第1の上限値)より大きい第2の上限値より大きい場合、または、
図3に示される下限値(すなわち、第1の下限値)より小さい第2の下限値より小さい場合に、異物除去装置2が故障していると判定してもよい。なお、第2の上限値は、
図3に示される上限値(すなわち、第1の上限値)の一次関数に対して傾きが同一かつ縦軸の切片が大きい一次関数として表現されてもよい。また、第2の下限値は、
図3に示される下限値(すなわち、第1の下限値)の一次関数に対して傾きが同一かつ縦軸の切片が小さい一次関数として表現されてもよい。
【0057】
より具体的には、制御部31は、
図2における噴射前後のタンク圧力の検出(ステップS1)の後に、噴射後タンク圧力が第2の上限値より大きいか否かに基づく故障判定を行ってもよい。そして、制御部31は、第2の上限値より大きいか否かに基づく故障判定において故障有り(すなわち、第2の上限値より大きい)と判定された場合には、故障予兆判定の場合と同様の警報出力(
図2のステップS3)を行ってもよい。
【0058】
一方、制御部31は、第2の上限値より大きいか否かに基づく故障判定において故障無し(すなわち、第2の上限値以下である)と判定された場合には、噴射後タンク圧力が第2の下限値より小さいか否かに基づく故障判定を行ってもよい。そして、制御部31は、第2の下限値より小さいか否かに基づく故障判定において故障有り(すなわち、第2の下限値より小さい)と判定された場合には、故障予兆判定の場合と同様の警報出力(
図2のステップS5)を行ってもよい。
【0059】
一方、制御部31は、第2の下限値より小さいか否かに基づく故障判定において故障無し(すなわち、第2の下限値以上である)と判定された場合には、噴射後タンク圧力が上限値(すなわち、第1の上限値)より大きいか否かに基づく故障予兆判定(
図2のステップS2)を行ってもよい。
【0060】
なお、制御部31は、故障判定における警報の出力態様を、故障予兆判定における警報の出力態様と異ならせてもよい。例えば、制御部31は、故障判定における警報を、故障予兆判定における警報よりも緊急性が高い出力態様(例えば、目立つ表示色、緊急対応を促すメッセージ内容、大きい音等)で出力してもよい。
【0061】
本実施形態によれば、軌道分岐部の不転換の発生を検知することではじめて異物除去装置2の故障を検知するのではなく、異物除去装置2の故障の予兆として、電磁弁25や制御部31の動作不良に起因する異常噴射を検知できる。これにより、実際に故障が発生する前に、電磁弁25や制御部31の修理および交換等を行うことができるので、異物除去装置2の故障を早期(すなわち、未然)に検知することができる。故障を早期に検知することができるので、故障が発生してから異物除去装置2の修理や部品交換等を行う場合と比較して、計画的に異物除去装置2の修理や部品交換等を行うことができ、故障の発生を未然に防ぐこともできる。
【0062】
また、噴射後タンク圧力は、噴射前タンク圧力から圧縮空気の噴射によって失われた圧力を減じた圧力にほぼ比例すると考えることができるので、1回の噴射によって失われる圧力をほぼ一定と仮定する場合、噴射後タンク圧力の正常値は、噴射前タンク圧力が大きいほど大きいという相関関係が成立する。このような相関関係に基づいて、本実施形態では、噴射前タンク圧力に対して一次関数の関係を有する
図3の上限値と下限値とを用いて故障予兆判定を行う。これにより、噴射前タンク圧力に適合したより精緻な故障予兆判定を行うことができるので、更に確実に、異物除去装置2の故障を早期に検知することができる。
【0063】
また、故障予兆判定に加えて故障判定を行う場合には、異物除去装置2の実際の故障を検知することができる。この場合、異物除去装置2の故障に伴って直ちに分岐部の不転換が発生するわけではないが、その故障に伴う不転換の発生を防ぐために、緊急的に対応することができる。
【0064】
(第1の変形例)
次に、異物除去装置2をセルフチェックする第1の変形例について説明する。
図1〜
図3では、制御部31が故障予兆判定手段および警報出力手段として動作する例について説明した。これに対して、第1の変形例では、制御部31が点検手段としても動作する。
【0065】
具体的には、制御部31は、ネットワーク34を通じた監視端末33からのセルフチェックの指令に応じて圧縮空気を噴射する制御を実行し、噴射後タンク圧力の上昇に基づいて異物除去装置2の故障の有無を検査(すなわち、セルフチェック)する。制御部31は、検査結果を監視端末33に出力する。
【0066】
以下、
図4および
図5を参照して第1の変形例の異物除去システム1の動作例を説明する。
図4は、本実施形態の第1の変形例による異物除去システム1の動作例を示すフローチャートである。
図4のフローチャートは必要に応じて繰り返し実行されるものである。なお、
図4の初期状態において、異物除去装置2の複数(
図1において4つ)の電磁弁25は、いずれも閉じられているものとする。
図5は、本実施形態の第1の変形例による異物除去システム1の動作例を示すタイムチャートである。
【0067】
図4に示すように、先ず、制御部31は、監視端末33からセルフチェックの指令が入力されたか否かを判定する(ステップS11)。
【0068】
セルフチェックの指令が入力された場合(ステップS11:Yes)、制御部31は、開放を指示する電磁弁25を、総数n個の電磁弁25のうちの1番目(i=1)の電磁弁25に設定する(ステップS12)。なお、
図5の例では、
図1の異物除去装置2の電磁弁25の個数に合わせて電磁弁25の総数nを4個としている。制御部31は、1番目の電磁弁25の開放を指令する電磁弁制御信号を出力することで、
図5に示すように、1番目の電磁弁25による所定時間の圧縮空気の噴射を行う(ステップS13)。
【0069】
1番目の電磁弁25による所定時間の噴射の後、制御部31は、
図5に示すように、1番目の電磁弁25を閉じたうえで、予め設定された所定のインターバル分、次工程の処理を待機する(ステップS14)。
図5に示すように、所定のインターバルの間、すべての電磁弁25が閉じられた状態でコンプレッサ21で生成された新たな圧縮空気がタンク22に流れ込むことで、タンク圧力が上昇する。なお、インターバルは、例えば、10秒であってもよい。
【0070】
インターバル分の待機の後、制御部31は、全ての電磁弁25による噴射が完了したか否か、すなわち、iが電磁弁総数nか否かを判定する(ステップS15)。
【0071】
全ての電磁弁25による噴射が完了した場合(ステップS15:Yes)、制御部31は、
図5に示すように、圧力センサ32からの圧力検出信号に基づいて、インターバルの完了から予め設定されたセルフチェック完了時刻までの一定期間内におけるタンク圧力上昇量を測定する(ステップS16)。なお、タンク圧力上昇量を測定する一定期間は、例えば、20秒であってもよい。
【0072】
一方、全ての電磁弁25による噴射が完了していない場合(ステップS15:No)、制御部31は、開放を指示する電磁弁25を、次の電磁弁25に設定する。すなわち、iをインクリメントする(ステップS17)。そして、次の電磁弁25による所定時間の噴射に移行する(ステップS13)。
【0073】
タンク圧力上昇量の測定後、制御部31は、測定されたタンク圧力上昇量が閾値より大きいか否かを判定する(ステップS18)。
【0074】
タンク圧力上昇量が閾値より大きい場合(ステップS18:Yes)、コンプレッサ21による圧縮空気の生成が正常に行われ、空気漏れが生じていないと判断できる。この場合、制御部31は、コンプレッサ21が正常であることを示す正常結果を監視端末33に出力する(ステップS19)。一方、タンク圧力上昇量が閾値以下である場合(ステップS18:No)、制御部31は、コンプレッサ21が異常であることを示す異常結果を監視端末33に出力する(ステップS20)。
【0075】
なお、第1の変形例において、異物除去装置2の故障予兆判定は、セルフチェックの前後のいずれに行ってもよい。
【0076】
第1の変形例によれば、セルフチェックの結果を監視端末33で遠隔監視できるので、現地に赴かずとも異物除去装置2の故障を検知することができる。
【0077】
(第2の変形例)
次に、セルフチェックの期間中に故障予兆判定を行う第2の変形例について説明する。
図6は、本実施形態の第2の変形例による異物除去システム1の動作例を示すフローチャートである。
図6のフローチャートは必要に応じて繰り返し実行されるものである。第1の変形例では、セルフチェックの実施時期に対して故障予兆判定の実施時期が独立している。これに対して、第2の変形例では、セルフチェックの期間中に故障予兆判定を実施する。
【0078】
具体的には、
図6に示すように、圧力センサ32および制御部31は、セルフチェックのための所定時間の噴射(ステップS13)が行われた後に、噴射後タンク圧力を検出する(ステップS102)。その後は、
図2と同様に、噴射後タンク圧力と上限値または下限値との対比による故障予兆判定(ステップS2、ステップS4)を行い、判定結果に応じた警報出力を行う(ステップS3、ステップS5)。
【0079】
なお、制御部31は、噴射後タンク圧力と上限値または下限値との対比による故障予兆判定(ステップS2、ステップS4)に替えて、噴射前タンク圧力と噴射後タンク圧力との圧力差と、予め設定された圧力差の閾値との対比に基づく故障予兆判定を行ってもよい。例えば、制御部31は、1番目〜n番目の電磁弁25のそれぞれによる噴射の前後において、噴射前タンク圧力と噴射後タンク圧力との圧力差を算出し、算出された圧力差を、予め設定された圧力差の閾値と対比してもよい。そして、制御部31は、算出された圧力差が閾値より大きい場合には、異物除去装置2の故障の予兆が有ると判定し、判定結果として監視端末33への警報出力を行ってもよい。また、圧力差の閾値には、上限側の閾値と、下限側の閾値とがあってもよい。この場合、制御部31は、算出された圧力差が上限側の閾値より大きくなる場合には、噴射量過大警報(
図6のステップS5参照)を出力し、算出された圧力差が下限側の閾値より小さくなる場合には、噴射量不足警報(
図6のステップS3参照)を出力してもよい。
【0080】
また、第2の変形例においても、制御部31は、故障予兆判定に加えて、既述した噴射後タンク圧力が第2の上限値より大きいか否かまたは第2の下限値より小さいか否かに基づく故障判定を行ってもよい。
【0081】
第2の変形例によれば、セルフチェック時の噴射を故障予兆判定に活用できるので、故障予兆判定を効率的に行うことができる。また、セルフチェックで検知できない故障の予兆を故障予兆判定で検知することができる。
【0082】
(第3の変形例)
次に、軌道分岐部の映像を取得する第3の変形例について説明する。
図7は、第3の変形例による異物除去システム1を示す図である。
【0083】
図7に示すように、第3の変形例の異物除去システム1は、軌道分岐部に設置されたウェブカメラ35を備える。ウェブカメラ35は、軌道分岐部を撮影した分岐部映像信号を監視端末33に送信する。
【0084】
第3の変形例によれば、軌道分岐部の映像に基づいて起動分岐部に作業者がいないことが確認されたうえでセルフチェックの指令を行うことができる。これにより、軌道分岐部での作業中に噴射が行われることで作業が妨害されることを未然に防ぐことができる。
【0085】
なお、ウェブカメラ35は、監視端末33からの指令に応じて起動または停止してもよい。この場合、セルフチェック前の必要時にウェブカメラ35を起動することができるので、ウェブカメラ35による消費電力を削減できる。
【0086】
(第4の変形例)
次に、所定時間におけるタンク圧力の変化量に基づいて故障予兆判定を行う第4の変形例について説明する。
図8は、本実施形態の第4の変形例による異物除去システム1の動作例を示すフローチャートである。
図8のフローチャートは必要に応じて繰り返し実行されるものである。
【0087】
第4の変形例において、制御部31は、タンク圧力の所定時間における変化量に基づいて故障予兆判定を行う。
【0088】
具体的には、
図8に示すように、先ず、圧力センサ32は、タンク圧力の検出を開始する(ステップS21)。
【0089】
タンク圧力の検出を開始した後、制御部31は、タンク圧力の検出開始から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS22)。所定時間は、例えば、1分間であってもよい。
【0090】
所定時間が経過した場合(ステップS22:Yes)、圧力センサ32は、タンク圧力の検出を終了する(ステップS23)。
【0091】
一方、所定時間が経過していない場合(ステップS22:No)、制御部31は、所定時間が経過したか否かの判定を繰り返す(ステップS22)。
【0092】
タンク圧力の検出を終了した後、制御部31は、所定時間における圧力降下量を算出する(ステップS24)。
【0093】
圧力降下量を算出した後、制御部31は、圧力降下量が閾値より大きいか否かに基づく故障予兆判定を行う(ステップS25)。このような判定基準に基づく故障予兆判定によれば、異物除去装置2の故障の予兆として、使用圧力付近のタンク圧力下における空気漏れを検知することができる。
【0094】
圧力降下量が閾値より大きい場合(ステップS25:Yes)、制御部31は、異物除去装置2の故障の予兆が有ると判定し、判定結果として、監視端末33への警報を出力する(ステップS26)。
【0095】
一方、圧力降下量が閾値以下である場合(ステップS25:No)、制御部31は、異物除去装置2の故障の予兆が無いと判定し、監視端末33への警報出力を行わずに処理を終了する。
【0096】
第4の変形例によれば、空気漏れによるタンク圧力の不足によって圧縮空気を噴射できないといった故障が発生する前に、タンク圧力の変化量すなわち圧力降下量に基づいて、故障の予兆を検知できる。
【0097】
なお、第4の変形例においても、制御部31は、故障予兆判定に加えて故障判定を行ってもよい。この場合、故障判定の判定基準は、例えば、タンク圧力が所定圧力(例えば、0.3MPa)未満となったことであってもよい。
【0098】
(第5の変形例)
次に、タンク圧力および機械室内温度の双方に基づいて故障予兆判定を行う第5の変形例について説明する。これまでは、タンク圧力に基づいて故障予兆判定を行う例について説明した。これに対して、第5の変形例では、タンク圧力と、機械室20内の温度(以下、機械室内温度とも呼ぶ)との双方に基づいて故障予兆判定を行う。
【0099】
図9は、本実施形態の第5の変形例による異物除去システム1を示す図である。
図9に示すように、第5の変形例の異物除去システム1は、
図1の構成に加えて、更に、機械室20内に設置された温度センサ37を有する。
【0100】
温度センサ37は、機械室内温度を検出し、検出された機械室内温度を示す温度検出信号を制御部31に出力する。
【0101】
制御部31は、所定時間におけるタンク圧力および機械室内温度の変化量に基づいて故障予兆判定を行う。具体的には、制御部31は、タンク圧力の変化量が取得されたとき、所定の状態の一例である閾値以上の機械室内温度(すなわち、コンプレッサ21の周囲温度)の低下が示された場合に、異物除去装置2の故障の予兆が有る旨の判定を行わない。なお、制御部31は、タンク圧力の変化量が取得されたときが、噴射時およびコンプレッサ21の稼働(始動)後の一定時間内の時刻の場合においても、異物除去装置2の故障の予兆が有る旨の判定を行わなくてもよい。
【0102】
このように構成された第5の変形例の異物除去システム1の動作例について、
図10を参照して説明する。
図10は、本実施形態の第5の変形例による異物除去システム1の動作例を示すフローチャートである。
図10のフローチャートは必要に応じて繰り返し実行されるものである。
【0103】
図10に示すように、先ず、圧力センサ32および温度センサ37は、タンク圧力および機械室内温度の検出を開始する(ステップS31)。
【0104】
タンク圧力および機械室内温度の検出が開始された後、制御部31は、タンク圧力および機械室内温度の検出開始から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS32)。
【0105】
所定時間が経過した場合(ステップS32:Yes)、圧力センサ32および温度センサ37は、タンク圧力および機械室内温度の検出を終了する(ステップS33)。
【0106】
一方、所定時間が経過していない場合(ステップS32:No)、制御部31は、所定時間が経過したか否かの判定を繰り返す(ステップS32)。
【0107】
タンク圧力および機械室内温度の検出を終了した後、制御部31は、所定時間における圧力降下量と温度降下量とを算出する(ステップS34)。
【0108】
圧力降下量および温度降下量を算出した後、制御部31は、圧力降下量が閾値より大きいか否かに基づく故障予兆判定を行う(ステップS35)。
【0109】
圧力降下量が閾値より大きい場合(ステップS35:Yes)、制御部31は、温度降下量が閾値より小さいか否かに基づいて、ステップS35に続く故障予兆判定を行う(ステップS36)。
【0110】
一方、圧力降下量が閾値以下である場合(ステップS35:No)、制御部31は、異物除去装置2の故障の予兆が無いと判定し、監視端末33への警報出力を行わずに処理を終了する。
【0111】
温度降下量が閾値より小さい場合(ステップS36:Yes)、制御部31は、異物除去装置2の故障の予兆が有ると判定し、判定結果として、監視端末33への警報を出力する(ステップS37)。
【0112】
一方、温度降下量が閾値以上である場合(ステップS36:No)、制御部31は、圧力降下量が閾値より大きい場合であっても、監視端末33への警報出力を行わずに処理を終了する。
【0113】
機械室内温度が急激に低下する場合、機械室内温度の低下に応じて、タンク圧力も低下する。このような機械室内温度の低下にともなうタンク圧力の低下は、ボイル=シャルルの法則による現象であり、空気漏れによって生じた現象ではない。第5の変形例によれば、空気漏れと異なる原因で生じたタンク圧力の低下を故障の予兆と判定しないことで、誤判定を防止することができる。
【0114】
なお、第5の変形例においても、制御部31は、故障予兆判定に加えて故障判定を行ってもよい。この場合、故障判定の判定基準は、例えば、タンク圧力が所定圧力(例えば、0.3MPa)未満となったことであってもよい。
【0115】
(第6の変形例)
次に、
図11を参照して、機械室内温度に基づいて故障予兆判定を行う第6の変形例について説明する。
図11は、本実施形態の第6の変形例による異物除去システム1の動作例を示すフローチャートである。
図11のフローチャートは必要に応じて繰り返し実行されるものである。また、
図11のフローチャートは、第5の変形例の異物除去システム1で実施することができる。
【0116】
図11に示すように、先ず、温度センサ37は、機械室内温度を検出する(ステップS41)。
【0117】
機械室内温度を検出した後、制御部31は、検出された機械室内温度が閾値より大きいか否かに基づいた故障予兆判定を行う(ステップS42)。このような判定基準による故障予兆判定によれば、異物除去装置2の故障の予兆として、機械室20内に設置されている排気用ファン(図示せず)の動作不良やコンプレッサ21の過頻度運転を検知できる。
【0118】
機械室内温度に基づく故障予兆判定(ステップS42)は、タンク圧力に基づく故障予兆判定(
図2、
図6のステップS2、S4、
図8のステップS25、または
図10のステップS35、S36)と同じタイミングで行ってもよく、または、異なるタイミングで行ってもよい。
【0119】
機械室内温度が閾値より大きい場合(ステップS42:Yes)、制御部31は、異物除去装置2の故障の予兆が有ると判定し、判定結果として、監視端末33への警報を出力する(ステップS43)。機械室内温度の閾値は、例えば、50℃であってもよい。
【0120】
一方、機械室内温度が閾値以下である場合(ステップS42:No)、制御部31は、異物除去装置2の故障の予兆が無いと判定し、監視端末33への警報出力を行わずに処理を終了する。
【0121】
異物除去装置2には、ポイント6の除雪が必要な冬季だけでなく、夏場の高温環境下でも氷雪以外の異物を除去できるように故障することなく正常動作することが求められる。第6の変形例によれば、高温による異物除去装置2の故障の予兆を検知することで、夏場などの高温時における異物除去装置2の故障の発生を未然に防ぐことができる。
【0122】
なお、第6の変形例においても、制御部31は、故障予兆判定に加えて故障判定を行ってもよい。この場合、故障判定の判定基準は、例えば、機械室内温度が故障予兆判定の閾値(
図11のステップS42)より大きい故障判定の閾値より大きいことであってもよい。故障判定の閾値は、例えば、60℃であってもよい。
【0123】
(第7の変形例)
次に、コンプレッサモータ211の電流値に基づいて故障予兆判定を行う第7の変形例について説明する。
図12は、本実施形態の第7の変形例による異物除去システム1を示す図である。
【0124】
図12に示すように、第7の変形例の異物除去システム1は、
図9の構成に加えて、更に、コンプレッサ21に配置された電流センサ38を備える。電流センサ38は、図示しない電源装置からコンプレッサモータ211に供給される電流の電流値(以下、コンプレッサモータ電流値とも呼ぶ)を検出し、検出されたコンプレッサモータ電流値を示す電流検出信号を制御部31に出力する。制御部31は、コンプレッサモータ電流値が閾値より大きいか否かに基づいた故障予兆判定を行い、判定結果に応じた警報出力を行う。
【0125】
次に、
図13を参照して、第7の変形例の異物除去システム1の動作例について説明する。
図13は、本実施形態の第7の変形例による異物除去システム1の動作例を示すフローチャートである。
図13のフローチャートは必要に応じて繰り返し実行されるものである。
【0126】
図13に示すように、先ず、電流センサ38は、コンプレッサモータ電流値を検出する(ステップS51)。
【0127】
コンプレッサモータ電流値が検出された後、制御部31は、コンプレッサモータ電流値が閾値より大きいか否かに基づいた故障予兆判定を行う(ステップS52)。コンプレッサモータ電流値の閾値は、例えば、通常の運転時のコンプレッサモータ電流値である。このような判定基準に基づく故障予兆判定によれば、異物除去装置2の故障の予兆として、コンプレッサモータ電流値の異常を検知できる。
【0128】
コンプレッサモータ電流値に基づく故障予兆判定(ステップS52)は、タンク圧力に基づく故障予兆判定(
図2、
図6のステップS2、S4、
図8のステップS25、または
図10のステップS35、S36)および機械室内温度に基づく故障予兆判定(
図11のステップS42)と同じタイミングで行ってもよく、または、異なるタイミングで行ってもよい。
【0129】
コンプレッサモータ電流値が閾値より大きい場合(ステップS52:Yes)、制御部31は、異物除去装置2の故障の予兆が有ると判定し、判定結果として、監視端末33への警報を出力する(ステップS53)。
【0130】
一方、コンプレッサモータ電流値が閾値以下である場合(ステップS52:No)、制御部31は、異物除去装置2の故障の予兆が無いと判定し、監視端末33への警報出力を行わずに処理を終了する。
【0131】
コンプレッサ21の保護装置としてサーマルリレーを異物除去装置2に設ける場合、サーマルリレーは、コンプレッサモータ211の過電流を検知することでサーマルリレーの電磁接触器を遮断してコンプレッサモータ211を停止させる。サーマルリレーによってコンプレッサモータ211が停止すると、現地に赴いてコンプレッサモータ211を復帰させる作業が完了するまで異物除去装置2が動作できない。第7の変形例によれば、コンプレッサモータ電流値が過電流に至る前に、コンプレッサモータ電流値が過電流より低い故障予兆判定の閾値を超えたことを検知することができる。これにより、異物除去装置2にサーマルリレーを設ける場合に、過電流によるコンプレッサモータ211の故障停止を未然に防ぐことができる。
【0132】
なお、第7の変形例において、制御部31は、故障予兆判定に加えて、コンプレッサモータ電流値が過電流に達したか否かに基づく故障判定を行ってもよい。
【0133】
(第8の変形例)
次に、圧力センサ32の故障監視機能を備えた第8の変形例について説明する。
図14は、本実施形態の第8の変形例による異物除去システム1を示す図である。
【0134】
図14に示すように、第8の変形例の異物除去システム1は、
図12の構成に加えて、更に、予備圧力センサ39を備える。予備圧力センサ39は、圧力センサ32(以下、メイン圧力センサとも呼ぶ)と同様に、タンク圧力を検出し、検出されたタンク圧力を示す圧力検出信号を制御部31に出力する。
【0135】
制御部31は、メイン圧力センサ32で検出されたタンク圧力と予備圧力センサ39で検出されたタンク圧力との対比に基づいてメイン圧力センサ32の故障を判定する。制御部31は、メイン圧力センサ32の故障を検知した場合に、監視端末33への警報出力を行う。
【0136】
次に、
図15を参照して、第8の変形例の異物除去システム1の動作例について説明する。
図15は、本実施形態の第8の変形例による異物除去システム1の動作例を示すフローチャートである。
図15のフローチャートは必要に応じて繰り返し実行されるものである。
【0137】
図15に示すように、メイン圧力センサ32は、タンク圧力を検出する(ステップS61)。また、このとき、予備圧力センサ39も、タンク圧力を検出する(ステップS62)。
【0138】
メイン圧力センサ32および予備圧力センサ39によるタンク圧力の検出後、制御部31は、メイン圧力センサ32で検出されたタンク圧力と予備圧力センサ39で検出されたタンク圧力との圧力差を算出する(ステップS63)。
【0139】
圧力差を算出した後、制御部31は、算出された圧力差が予め設定された圧力差の閾値より大きいか否かを判定する(ステップS64)。
【0140】
圧力差が閾値より大きい場合、制御部31は、メイン圧力センサ32が故障していると判定し、監視端末33への警報出力を行う(ステップS65)。
【0141】
一方、圧力差が閾値以下である場合、制御部31は、メイン圧力センサ32が故障していないと判定し、監視端末33への警報出力を行わずに処理を終了する。
【0142】
なお、制御部31は、圧力差に基づいてメイン圧力センサ32の故障が検知された場合以外にも、例えば、圧力センサ32、39の断線が検知された場合にも警報出力を行ってよい。また、制御部31は、メイン圧力センサ32の故障が検知された場合には、メイン圧力センサ32に替えて、予備圧力センサ39で検出されたタンク圧力を故障予兆判定や異物除去装置2の動作制御に利用してもよい。
【0143】
既述したように、タンク圧力は、電磁弁25の開閉や、コンプレッサモータ211の回転や、異物除去装置2の故障予兆判定などの種々の処理に用いられ得る。このため、タンク圧力を検出するメイン圧力センサ32の故障が異物除去システム1の動作に与える影響は大きい。第8の変形例によれば、予備圧力センサ39で検出されたタンク圧力との比較によってメイン圧力センサ32の故障を確実に検知することができるので、メイン圧力センサ32の修理または交換を行って異物除去システム1を健全に動作させることができる。
【0144】
上述した実施形態および各変形例は、これらを適宜組み合わせてもよい。また、上述した変形例以外にも、本発明には種々の変形例を適用できる。例えば、監視端末33は、ネットワーク経由で制御部31から取得したタンク圧力、機械室内温度およびコンプレッサモータ電流値を、経時情報としてディスプレイ上に表示してもよい。また、1つの異物除去装置2に対応する線路の本数は、1本であってもよく、または、3本以上であってもよい。また、制御部31は、上述した各種の故障予兆判定と同じ判定方法で故障判定を行ってもよい。この場合の実施形態は、上述した実施形態において、“故障予兆判定”という用語を“故障判定”という用語に置き換え、また、“故障の予兆”という用語を“故障”という用語に置き換えて説明することができる。この場合、実際に異物除去装置2の故障が生じていない場合でも、故障の予兆がある場合には故障有りと判定されることになるが、故障を未然に検知することができ、故障に対して計画的に対応することができる。
【0145】
本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。