(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部は、板厚方向を車両幅方向とされて車両前後方向に延びる側壁部と、当該側壁部の車両上方側の周縁部から車両幅方向外側に延出された上壁部と、当該側壁部の車両下方側の周縁部から車両幅方向外側に延出された下壁部と、を含んで構成され、
前記インフレータは、端部が閉塞された筒状とされて前記支持部に車両幅方向外側を除いて囲まれた状態で配置されている、
請求項1に記載の車両側部構造。
前記補強部材は、前記支持部の車両幅方向外側に配置されて当該支持部の車両上方側の周縁部から車両上方側に延出された上側延出壁部及び当該支持部の車両幅方向外側に配置されて当該支持部の車両下方側の周縁部から車両下方側に延出された下側延出壁部の少なくとも一方を含んで構成されている、
請求項2又は請求項3に記載の車両側部構造。
前記補強部材には、前記上側延出壁部及び前記下側延出壁部が設けられ、当該上側延出壁部の車両上方側には当該上側延出壁部と連続して第1補強部が、当該下側延出壁部の車両下方側には当該下側延出壁部と連続して第2補強部が、それぞれ設けられており、
前記第1補強部は、前記上側延出壁部の車両上方側の周縁部から車両幅方向内側に延出された第1上側補強壁部と、当該第1上側補強壁部の車両幅方向内側の周縁部から車両上方側に延出された第2上側補強壁部と、を含んで構成され、
前記第2補強部は、前記下側延出壁部の車両下方側の周縁部から車両幅方向内側に延出された第1下側補強壁部と、当該第1下側補強壁部の車両幅方向内側の周縁部から車両下方側に延出された第2下側補強壁部と、を含んで構成されている、
請求項2を引用する請求項4に記載の車両側部構造。
前記エアバッグ膨出部は、膨張展開時の前記エアバッグが通過可能でかつ前記ドアアウタパネルに形成された開口部を覆うと共に当該エアバッグによって押圧されることで当該ドアアウタパネルから離脱可能な覆い部材を含んで構成されている、
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の車両側部構造。
前記覆い部材は、連結部を介して前記補強部材と連結されており、当該連結部は、前記ドアアウタパネルから離脱された状態の当該覆い部材と当該補強部材との連結状態を維持可能とされている、
請求項8に記載の車両側部構造。
前記エアバッグ膨出部は、膨張展開時の前記エアバッグが通過可能でかつ前記ドアアウタパネルに形成された開口部を覆うと共に当該エアバッグによって押圧されることで開裂して当該エアバッグが通過可能な状態に開口する覆い部材を含んで構成されている、
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の車両側部構造。
前記エアバッグ膨出部は、前記ドアアウタパネルに設けられ、膨張展開時の前記エアバッグによって当該ドアアウタパネルが押圧されることで開裂すると共に、開裂することで当該エアバッグが通過可能な開口部が当該ドアアウタパネルに形成されるティア部を含んで構成されている、
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の車両側部構造。
前記補強部材は、車両幅方向から見て当該補強部材の一部が、車体の一部を構成すると共に車両幅方向から見て一部が前記ドアインナパネルの車両前方側の周縁部と重なるように配置されたフロントピラー及び当該車体の一部を構成すると共に車両幅方向から見て一部が当該ドアインナパネルの車両後方側の周縁部と重なるように配置されたセンタピラーの少なくとも一方と重なるように配置されている、
請求項1〜請求項13の何れか1項に記載の車両側部構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術では、エアバッグの展開反力を支持する部材が設けられていないため、サイドドアから車両幅方向外側に膨張展開するエアバッグの展開挙動を安定させるという点においては改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、サイドドアから車両幅方向外側に膨張展開するエアバッグの展開挙動を安定させることができる車両側部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車両側部構造は、サイドドアの車両幅方向外側の部分を構成するドアアウタパネルと、前記サイドドアの車両幅方向内側の部分を構成するドアインナパネルと、前記ドアアウタパネルと前記ドアインナパネルとの間に配置されたインフレータが作動することにより噴出されたガスで前記サイドドアの車両幅方向外側に膨張展開可能なエアバッグと、車両に接近する物体が前記サイドドアに衝突するか否かを予測する予測部を備えると共に当該予測部から出力された信号に基づき当該物体と当該サイドドアとが衝突すると判定されたときに前記インフレータを作動させる制御部と、通常時には閉塞されていると共に前記エアバッグの膨張展開時には当該エアバッグが前記ドアアウタパネルの車両幅方向外側へ膨張展開可能に当該ドアアウタパネルに設けられたエアバッグ膨出部と、前記インフレータの車両幅方向内側に配置されて当該インフレータを支持する支持部を備えると共に前記ドアインナパネルに取り付けられた補強部材と、を有している。
【0007】
請求項1に記載の本発明によれば、サイドドアの車両幅方向外側の部分を構成するドアアウタパネルと当該サイドドアの車両幅方向内側の部分を構成するドアインナパネルとの間にインフレータが配置されている。このインフレータは、車両に接近する物体が当該車両のサイドドアに衝突するか否かを予測する予測部を備えた制御部によって制御されている。そして、予測部から出力された信号に基づき、制御部で物体とサイドドアとが衝突すると判定されたときに当該制御部はインフレータを作動させるようになっている。
【0008】
また、ドアアウタパネルにはエアバッグ膨出部が設けられており、当該エアバッグ膨出部は、通常時には閉塞されていると共に、エアバッグの膨張展開時には当該エアバッグがドアアウタパネルの車両幅方向外側へ膨張展開可能とされている。このため、物体と車両のサイドドアとの衝突が予測されたときには、インフレータが作動することにより噴出されたガスでエアバッグ膨出部からサイドドアの車両幅方向外側にエアバッグが膨張展開する。その結果、物体と車両とが衝突しても、これらが衝突するときの衝突エネルギーをエアバッグで吸収することができる。
【0009】
ところで、エアバッグが膨張展開するときに当該エアバッグの展開反力を支持する部材がないと当該エアバッグの展開挙動が不安定になることが考えられる。
【0010】
ここで、本発明では、ドアインナパネルに補強部材が取り付けられており、当該補強部材は、インフレータの車両幅方向内側に配置されて当該インフレータを支持する支持部を備えている。このため、エアバッグが膨張展開するときに当該エアバッグの展開反力を補強部材の支持部で支持することができる。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係る車両側部構造は、請求項1に記載の発明において、前記支持部は、板厚方向を車両幅方向とされて車両前後方向に延びる側壁部と、当該側壁部の車両上方側の周縁部から車両幅方向外側に延出された上壁部と、当該側壁部の車両下方側の周縁部から車両幅方向外側に延出された下壁部と、を含んで構成され、前記インフレータは、端部が閉塞された筒状とされて前記支持部に車両幅方向外側を除いて囲まれた状態で配置されている。
【0012】
請求項2に記載の本発明によれば、支持部が側壁部、上壁部及び下壁部を含んで構成されている。側壁部は板厚方向を車両幅方向とされて車両前後方向に延びており、上壁部は当該側壁部の車両上方側の周縁部から車両幅方向外側に延出されており、下壁部は当該側壁部の車両下方側の周縁部から車両幅方向外側に延出されている。一方、インフレータは、その端部が閉塞された筒状とされていると共に、支持部に車両幅方向外側を除いて囲まれた状態で配置されている。このため、本発明では、エアバッグが膨張展開するときに当該エアバッグの展開反力を、車両幅方向外側を除く異なる3方向から支持することができる。
【0013】
請求項3に記載の本発明に係る車両側部構造は、請求項1に記載の発明において、前記支持部は、車両前後方向に延びると共に長手方向から見た断面形状が車両幅方向外側に開放された円弧状の板状とされ、前記インフレータは、端部が閉塞された円筒状とされて前記支持部に車両幅方向外側を除いて囲まれた状態で配置されている。
【0014】
請求項3に記載の本発明によれば、支持部は、車両前後方向に延びると共に長手方向から見た断面形状が車両幅方向外側に開放された円弧状の板状とされている。一方、インフレータは、その端部が閉塞された円筒状とされていると共に、支持部に車両幅方向外側を除いて囲まれた状態で配置されている。このため、本発明では、インフレータの形状と支持部の形状とを対応させ、当該インフレータと当該支持部との間に隙間が発生することを抑制することができる。
【0015】
請求項4に記載の本発明に係る車両側部構造は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記補強部材は、前記支持部の車両幅方向外側に配置されて当該支持部の車両上方側の周縁部から車両上方側に延出された上側延出壁部及び当該支持部の車両幅方向外側に配置されて当該支持部の車両下方側の周縁部から車両下方側に延出された下側延出壁部の少なくとも一方を含んで構成されている。
【0016】
請求項4に記載の本発明によれば、補強部材は、上側延出壁部及び下側延出壁部の少なくとも一方を含んで構成されている。上側延出壁部は支持部の車両幅方向外側に配置されて当該支持部の車両上方側の周縁部から車両上方側に延出されており、下側延出壁部は支持部の車両幅方向外側に配置されて当該支持部の車両下方側の周縁部から車両下方側に延出されている。このため、本発明では、上側延出壁部及び下側延出壁部の少なくとも一方が、膨張展開後のエアバッグの車両幅方向内側に配置されるようになっている。
【0017】
請求項5に記載の本発明に係る車両側部構造は、請求項1に記載の発明において、前記インフレータは、端部が閉塞された車両前後方向に延びる筒状とされており、前記支持部は、前記インフレータの車両幅方向内側に配置されて当該インフレータに沿って延びると共に板厚方向を車両幅方向とされた状態で前記ドアインナパネルに接合された内側側壁部と、当該内側側壁部の車両上方側又は車両下方側の周縁部から車両幅方向外側に延出された第1延出壁部と、当該第1延出壁部の車両幅方向外側の周縁部から当該インフレータと反対側に延出された外側側壁部と、当該外側側壁部の当該インフレータと反対側の周縁部から車両幅方向内側に延出された第2延出壁部と、を含んで構成されている。
【0018】
請求項5に記載の本発明によれば、インフレータは、その端部が閉塞された車両前後方向に延びる筒状とされている。一方、支持部は、内側側壁部、第1延出壁部、外側側壁部及び第2延出壁部を含んで構成されている。内側側壁部は、インフレータの車両幅方向内側に配置されて当該インフレータに沿って延びると共に板厚方向を車両幅方向とされた状態でドアインナパネルに接合されている。これにより、エアバッグが膨張展開するときに当該エアバッグの展開反力を内側側壁部及びドアインナパネルで支持することができる。
【0019】
また、第1延出壁部は、内側側壁部の車両上方側又は車両下方側の周縁部から車両幅方向外側に延出されており、外側側壁部は、当該第1延出壁部の車両幅方向外側の周縁部から当該インフレータと反対側に延出されている。そして、第2延出壁部は、外側側壁部のインフレータと反対側の周縁部から車両幅方向内側に延出されている。
【0020】
このため、補強部材における第1延出壁部、外側側壁部及び第2延出壁部で構成された部分は、その長手方向から見た断面形状が車両幅方向内側に開放されたU字状に構成される。その結果、車両と衝突する物体からエアバッグを介してサイドドア側に伝達される衝突荷重に対する補強部材の剛性を確保することができる。
【0021】
請求項6に記載の本発明に係る車両側部構造は、請求項2を引用する請求項4に記載の発明において、前記補強部材には、前記上側延出壁部及び前記下側延出壁部が設けられており、前記補強部材は、前記上側延出壁部及び前記下側延出壁部の車両幅方向内側にそれぞれ配置されて前記支持部に沿って延びる一対の筒状のビーム部材を備えている。
【0022】
請求項6に記載の本発明によれば、エアバッグが膨張展開するときに当該エアバッグの展開反力を、支持部によって車両幅方向外側を除く異なる3方向から支持することができる。また、補強部材には、上側延出壁部及び下側延出壁部が設けられており、上側延出壁部及び下側延出壁部の車両幅方向内側には、それぞれ支持部に沿って延びる筒状のビーム部材が配置されている。このため、本発明では、車両と衝突する物体からエアバッグを介してサイドドア側に伝達される衝突荷重を一対のビーム部材で支持することができる。
【0023】
請求項7に記載の本発明に係る車両側部構造は、請求項2を引用する請求項4に記載の発明において、前記補強部材には、前記上側延出壁部及び前記下側延出壁部が設けられ、当該上側延出壁部の車両上方側には当該上側延出壁部と連続して第1補強部が、当該下側延出壁部の車両下方側には当該下側延出壁部と連続して第2補強部が、それぞれ設けられており、前記第1補強部は、前記上側延出壁部の車両上方側の周縁部から車両幅方向内側に延出された第1上側補強壁部と、当該第1上側補強壁部の車両幅方向内側の周縁部から車両上方側に延出された第2上側補強壁部と、を含んで構成され、前記第2補強部は、前記下側延出壁部の車両下方側の周縁部から車両幅方向内側に延出された第1下側補強壁部と、当該第1下側補強壁部の車両幅方向内側の周縁部から車両下方側に延出された第2下側補強壁部と、を含んで構成されている。
【0024】
請求項7に記載の本発明によれば、補強部材の車両上方側の部分には、第1上側補強壁部及び第2上側補強壁部を含んで第1補強部が構成されている。そして、第1補強部、上側延出壁部、支持部の上壁部及び側壁部で補強部材の長手方向から見た断面形状が車両幅方向内側に開放されたハット状となる部分が構成されている。一方、補強部材の車両下方側の部分には、第1下側補強壁部及び第2下側補強壁部を含んで第2補強部が構成されている。そして、第2補強部、下側延出壁部、支持部の下壁部及び側壁部で補強部材の長手方向から見た断面形状が車両幅方向内側に開放されたハット状となる部分が構成されている。
【0025】
このため、補強部材が一様な板状とされているような場合と比し、当該補強部材における車両幅方向の曲げの中立軸に対する断面二次モーメントを大きくすることができる。その結果、車両と衝突する物体からエアバッグを介してサイドドア側に伝達される衝突荷重に対する補強部材の剛性を高くすることができる。
【0026】
請求項8に記載の本発明に係る車両側部構造は、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の発明において、前記エアバッグ膨出部は、膨張展開時の前記エアバッグが通過可能でかつ前記ドアアウタパネルに形成された開口部を覆うと共に当該エアバッグによって押圧されることで当該ドアアウタパネルから離脱可能な覆い部材を含んで構成されている。
【0027】
請求項8に記載の本発明によれば、ドアアウタパネルには、膨張展開時のエアバッグが通過可能な開口部が形成されており、物体と車両のサイドドアとの衝突が予測されたときには、エアバッグは、開口部を通過してサイドドアの車両幅方向外側に膨張展開される。
【0028】
ところで、サイドドアの外観を確保するという観点では、通常時においてアウタパネルの開口部が車両幅方向外側から見えないようになっていることが好ましい。一方で、エアバッグの膨張展開を円滑に行うという観点では、エアバッグの膨張展開時において開口部にエアバッグの抵抗となるものがないことがないことが好ましい。
【0029】
ここで、本発明では、ドアアウタパネルに形成された開口部が覆い部材で覆われており、通常時において、当該開口部及びエアバッグが当該覆い部材で隠されている。また、覆い部材は、膨張展開時のエアバッグによって押圧されることでドアアウタパネルから離脱可能とされており、エアバッグの膨張展開時において覆い部材がドアアウタパネルから車両幅方向外側に離脱して、開口部が開放された状態となる。
【0030】
請求項9に記載の本発明に係る車両側部構造は、請求項8に記載の発明において、前記覆い部材は、連結部を介して前記補強部材と連結されており、当該連結部は、前記ドアアウタパネルから離脱された状態の当該覆い部材と当該補強部材との連結状態を維持可能とされている。
【0031】
請求項9に記載の本発明によれば、覆い部材が、連結部を介して補強部材と連結されており、覆い部材と補強材との連結状態は、覆い部材がドアアウタパネルから離脱された状態においても維持される。
【0032】
請求項10に記載の本発明に係る車両側部構造は、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の発明において、前記エアバッグ膨出部は、膨張展開時の前記エアバッグが通過可能でかつ前記ドアアウタパネルに形成された開口部を覆うと共に当該エアバッグによって押圧されることで開裂して当該エアバッグが通過可能な状態に開口する覆い部材を含んで構成されている。
【0033】
請求項10に記載の本発明によれば、請求項1に記載の発明と基本的に同様の構成とされ、同様の作用を奏する。加えて、本発明では、ドアアウタパネルの開口部を覆う覆い部材が、膨張展開時のエアバッグによって押圧されることで開裂して当該エアバッグが通過可能な状態に開口する。つまり、本発明では、覆い部材がドアアウタパネルに配置されている状態で、サイドドアの車両幅方向外側にエアバッグを膨張展開させることができる。
【0034】
請求項11に記載の本発明に係る車両側部構造は、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の発明において、前記エアバッグ膨出部は、前記ドアアウタパネルに設けられ、膨張展開時の前記エアバッグによって当該ドアアウタパネルが押圧されることで開裂すると共に、開裂することで当該エアバッグが通過可能な開口部が当該ドアアウタパネルに形成されるティア部を含んで構成されている。
【0035】
請求項11に記載の本発明によれば、ドアアウタパネルにティア部が設けられており、当該ティア部は、膨張展開時のエアバッグによって当該ドアアウタパネルが押圧されることで開裂する。そして、ティア部が開裂することで、エアバッグが通過可能な開口部がドアアウタパネルに形成され、サイドドアの車両幅方向外側にエアバッグが膨張展開する。このため、ドアアウタパネルにエアバッグが通過可能な開口部を設けると共に当該開口部を覆う覆い部材を配置するような構成と比し、サイドドアの意匠面に意匠上不要な凸部が形成されることを抑制し、当該意匠面の外観が損なわれるのを抑制することができる。
【0036】
請求項12に記載の本発明に係る車両側部構造は、請求項11に記載の発明において、前記ドアアウタパネルは、樹脂製とされている。
【0037】
請求項12に記載の本発明によれば、ドアアウタパネルが樹脂製とされており、当該ドアアウタパネルを軽量化することができる。また、ドアアウタパネルを金属製とする場合と比し、膨張展開時のエアバッグがドアアウタパネルから受ける負荷が低減される。
【0038】
請求項13に記載の本発明に係る車両側部構造は、請求項1〜請求項12の何れか1項に記載の発明において、前記インフレータは、前記サイドドアの車両前後方向中央部よりも車両前方側の部分に配置されている。
【0039】
請求項13に記載の本発明によれば、インフレータは、サイドドアの車両前後方向中央部よりも車両前方側の部分に配置されている。これにより、車両のサイドドアに物体が衝突して当該物体によってインフレータが押圧されて移動しても当該インフレータの軌道上に少なくとも乗員の上半身が位置しないようにすることができる。
【0040】
請求項14に記載の本発明に係る車両側部構造は、請求項1〜請求項13の何れか1項に記載の発明において、前記補強部材は、車両幅方向から見て当該補強部材の一部が、車体の一部を構成すると共に車両幅方向から見て一部が前記ドアインナパネルの車両前方側の周縁部と重なるように配置されたフロントピラー及び当該車体の一部を構成すると共に車両幅方向から見て一部が当該ドアインナパネルの車両後方側の周縁部と重なるように配置されたセンタピラーの少なくとも一方と重なるように配置されている。
【0041】
請求項14に記載の本発明によれば、補強部材は、その一部が車両幅方向から見て、車体の一部を構成するフロントピラー及び同じく車体の一部を構成するセンタピラーの少なくとも一方と重なるように配置されている。そして、フロントピラーは車両幅方向から見て、その一部がドアインナパネルの車両前方側の周縁部と重なるように配置されており、センタピラーは車両幅方向から見て、その一部がドアインナパネルの車両後方側の周縁部と重なるように配置されている。このため、補強部材がサイドドアに衝突した物体で押圧されても当該補強部材は、ドアインナパネルを介した状態で、フロントピラー及びセンタピラーの少なくとも一方に支持される。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る車両側部構造は、サイドドアから車両幅方向外側に膨張展開するエアバッグの展開挙動を安定させることができるという優れた効果を有する。
【0043】
請求項2に記載の本発明に係る車両側部構造は、エアバッグが車両幅方向外側に向かって膨張展開する確度を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0044】
請求項3に記載の本発明に係る車両側部構造は、インフレータ及び補強部材を配置するのに必要なスペースの拡大を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0045】
請求項4に記載の本発明に係る車両側部構造は、車両と衝突する物体からエアバッグを介してサイドドア側に伝達される衝突荷重を補強部材で支持することができるという優れた効果を有する。
【0046】
請求項5に記載の本発明に係る車両側部構造は、補強部材で支持可能なエアバッグの展開反力を大きくすることができると共に、車両と衝突する物体からエアバッグを介してサイドドア側に伝達される衝突荷重を補強部材で安定的に支持することができるという優れた効果を有する。
【0047】
請求項6に記載の本発明に係る車両側部構造は、エアバッグの展開反力の支持とサイドドア側への衝突荷重の支持とをそれぞれ別の部材で担うことができるという優れた効果を有する。
【0048】
請求項7に記載の本発明に係る車両側部構造は、サイドドア側への衝突荷重を安定した状態で支持することができるという優れた効果を有する。
【0049】
請求項8に記載の本発明に係る車両側部構造は、通常時におけるサイドドアの外観の確保とエアバッグの膨張展開時におけるエアバッグへの抵抗の低減との両立を図ることができるという優れた効果を有する。
【0050】
請求項9に記載の本発明に係る車両側部構造は、エアバッグの膨張展開時における覆い部材の紛失を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0051】
請求項10に記載の本発明に係る車両側部構造は、通常時におけるサイドドアの外観の確保することができると共に、覆い部材がサイドドアから離脱される構成と比し、覆い部材が周囲に及ぼす影響を低減することができるという優れた効果を有する。
【0052】
請求項11に記載の本発明に係る車両側部構造は、サイドドアの部品点数の削減と外観品質の確保との両立を図ることができるという優れた効果を有する。
【0053】
請求項12に記載の本発明に係る車両側部構造は、サイドドアの軽量化を図りつつ、エアバッグが車両幅方向外側に向かって膨張展開する確度を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0054】
請求項13に記載の本発明に係る車両側部構造は、車両のサイドドアに衝突した物体による衝突荷重でインフレータが乗員の上半身側に移動することを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0055】
請求項14に記載の本発明に係る車両側部構造は、車両のサイドドアに衝突した物体による衝突荷重を車体の骨格部材で支持することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0057】
<第1実施形態>
以下、
図1〜
図6を用いて、本発明に係る車両側部構造の第1実施形態について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印RHは車両幅方向右側を示している。
【0058】
まず、
図5及び
図6を用いて、本実施形態に係る車両側部構造が適用された「車両10」の概略構成について説明する。なお、本実施形態では、車両10は、基本的に左右対称の構成とされているため、以下では、車両10の車両幅方向右側の部分の構成について主に説明し、車両幅方向左側の部分の構成については、適宜説明を省略することとする。この車両10は、「車体12」、車体12に取り付けられた「サイドドア(フロントサイドドア)14」及び車両10に搭載された後述する側突用エアバッグシステム34を含んで構成されている。
【0059】
車体12は、当該車体12の車両上方側の一部を構成すると共に車両前後方向に延在するルーフサイドレール16と、当該車体12の車両下方側の一部を構成すると共に車両前後方向に延在するロッカ18を含んで構成されている。
【0060】
また、車体12の側部12Aには、ルーフサイドレール16とロッカ18とを連結する「フロントピラー20」及び「センタピラー22」が設けられている。詳しくは、フロントピラー20は、車両上下方向に延在していると共に、ルーフサイドレール16の車両前方側の部分とロッカ18の車両前方側の部分とを車両上下方向に繋いでいる。一方、センタピラー22は、車両上下方向に延在していると共に、ルーフサイドレール16の車両前後方向中央部とロッカ18の車両前後方向中央部とを繋いでいる。そして、車体12の側部12Aには、ルーフサイドレール16、ロッカ18、フロントピラー20及びセンタピラー22で仕切られていると共に、サイドドア14で開閉される車両幅方向から見て略矩形状のドア開口部24が形成されている。
【0061】
サイドドア14は、
図6に示されるように、ドア開口部24を閉塞した状態(サイドドア14が閉じた状態)において、その幅方向(ドア幅方向)が車両前後方向と一致し、その厚さ方向(ドア厚さ方向)が車幅方向と一致する。なお、以下の説明で用いるドア幅方向及びドア厚さ方向は、何れもサイドドア14が閉じた状態での方向を指している。
【0062】
このサイドドア14は、当該サイドドア14の車両幅方向外側の部分を構成する金属製の「ドアアウタパネル26」と、当該サイドドア14の車両幅方向内側の部分を構成する金属製の「ドアインナパネル28」とを含んで構成されている。ドアアウタパネル26は、車両上下方向及び車両前後方向に延在すると共に、車両上下方向から見た断面視で車両幅方向中央部が車両幅方向外側に凸となるようにかつ車両前後方向から見た断面視で車両上下方向中央部が車両幅方向外側に凸となるように湾曲している。換言すれば、ドアアウタパネル26は、車両前後方向から見て、その中央部が車両幅方向外側に凸となるように膨らんでいる。
【0063】
一方、ドアインナパネル28は、車両上下方向及び車両前後方向に延在していると共に、複数箇所にメンテナンス作業等に用いられるサービスホール30が形成されている。このドアインナパネル28の周縁部は、ヘミング加工によってドアアウタパネル26の周縁部と接合されている。
【0064】
上記のように構成されたサイドドア14は、
図5に示されるように、ドア開口部24を閉塞した状態において、車両幅方向(ドア厚さ方向)から見て、ドアインナパネル28の車両前方側(ドア幅方向一方側)の周縁部がフロントピラー20と重なるように配置されている。また、この状態において、ドアインナパネル28の車両後方側(ドア幅方向他方側)の周縁部は、車両幅方向から見て、センタピラー22と重なった状態となっている。また、ドアアウタパネル26とドアインナパネル28との間には、車両前後方向及び車両幅方向に奥行きを有する内部空間32が形成されている。そして、内部空間32には、
図1に示されるように、周知の図示しないウインドレギュレータや、後述する補強部材としての「インパクトビーム48」及びエアバッグ装置36等が配置されている。
【0065】
エアバッグ装置36は、後述するようにインパクトビーム48に取り付けられており、
図1にも示されるように、「制御部43」と共に側突用エアバッグシステム34の一部を構成している。このエアバッグ装置36は、「エアバッグ38」と、ガス発生装置である「インフレータ40」と、を含んで構成されている。
【0066】
エアバッグ38は、一例として、ナイロン系又はポリエステル系の材料で構成された複数の基布の外周部を縫製することにより袋状に構成されている。また、エアバッグ38の基端側(車両幅方向内側)には、インフレータ40が内蔵されており、当該エアバッグ38は、蛇腹折りやロール折り等の所定の折り畳み方で柱状に折り畳まれた状態で、インフレータ40と共にエアバッグ38の膨張圧によって容易に破断する図示しないラップ材によって包まれている。なお、エアバッグ38が図示されている図において、エアバッグ38は、その外形が概略的に示されている。
【0067】
一方、インフレータ40は、長手方向の両端部が閉塞された円筒状に構成された所謂シリンダータイプとされており、車両幅方向から見て、その車両前方側の端部に対してその車両後方側の端部が車両後方下側に位置するように配置されている。つまり、インフレータ40は、車両幅方向から見て、その長手方向が車両前後方向に対して所定の角度で傾斜した状態で配置されている。なお、インフレータ40は、その長手方向と折り畳まれた状態のエアバッグ38の長手方向とが一致した状態で、当該エアバッグ38の車両前方側の端部の内側に位置している(
図5参照)。また、インフレータ40の車両幅方向内側に設けられたベース部42には、車両幅方向内側に突出しかつ当該インフレータ40の長手方向に所定の間隔をあけて配置された一対の図示しないスタッドボルトが設けられている。そして、このスタッドボルトによって、インフレータ40を含むエアバッグ装置36が、インパクトビーム48に取り付けられている。
【0068】
上記のように構成されたエアバッグ装置36は、インフレータ40が作動することにより噴出されたガスがエアバッグ38に供給されると、エアバッグ38の膨張圧によってラップ材が開裂されて、サイドドア14の車両幅方向外側(ドア厚さ方向一方側)に膨張展開されるようになっている。また、エアバッグ38は、
図1及び
図4にも示されるように、膨張展開状態での形状が、その長手方向から見て楕円となる柱状となるように構成されている。なお、エアバッグ38の長手方向は、折り畳まれた状態と膨張展開状態とで略同一方向とされている。そして、インフレータ40は、制御部43に電気的に接続されており、当該制御部43によってその作動が制御されている。
【0069】
制御部43は、
図1に示されるように、インフレータ40の作動制御を行うECU44と当該ECU44に電気的に接続された予測部としての「衝突予知センサ46」とを含んで構成されている。そして、衝突予知センサ46から出力された信号に基づいてECU44がインフレータ40を作動させるようになっている。
【0070】
衝突予知センサ46は、車両10の側部に設けられており、ミリ波レーダ、ステレオカメラ及びレーザーレーダ(LiDAR)等によって構成されている。そして、衝突予知センサ46によって、車両10の側部、より具体的にはサイドドア14に接近する物体の検知や車両10から当該物体までの距離及び車両10と当該物体との相対速度の測定が行われると共に、これらが信号となってECU44に出力されるようになっている。
【0071】
一方、ECU44は、衝突予知センサ46から入力された信号に基づき、車両10に接近する物体の有無を判定し、車両10に接近する物体がある場合には、当該物体と車両10とが衝突するか否かを判定する。そして、側突用エアバッグシステム34は、ECU44で車両10に近付く物体と車両10との側面衝突が不可避であると判定(予測)された場合には、ECU44からの作動信号によってインフレータ40が作動されるように設定されている。
【0072】
ここで、本実施形態では、サイドドア14の内部空間32内に配置されていると共にエアバッグ装置36を支持しているインパクトビーム48の構成に第1の特徴がある。また、ドアアウタパネル26に形成されたエアバッグ38の膨出用の「開口部52」と、当該開口部52に取り付けられた覆い部材としての「ドアアウタモール54」とを含んで「エアバッグ膨出部50」が構成されている点に第2の特徴がある。以下、本実施形態の要部を構成するインパクトビーム48及びエアバッグ膨出部50の構成について詳細に説明する。
【0073】
まず、主に
図1及び
図5を用いてインパクトビーム48の構成について説明する。インパクトビーム48は、一例として、鋼材がプレス加工されて構成されており、全体では、車両幅方向から見て、その車両前方側の端部48Aに対してその車両後方側の端部48Bが車両後方下側に位置するように車両前後方向に延びている。このインパクトビーム48は、インフレータ40を支持する「支持部48C」、上側延出壁部としての「延出壁部48D」、下側延出壁部としての「延出壁部48E」、第1補強部としての「補強部48F」及び第2補強部としての「補強部48G」を含んで構成されている。
【0074】
支持部48Cは、インフレータ40の車両幅方向内側に配置された「側壁部48C1」と、側壁部48C1の車両上方側の周縁部から車両幅方向外側に延出された「上壁部48C2」と、側壁部48C1の車両下方側の周縁部から車両幅方向外側に延出された「下壁部48C3」と、を含んで構成されている。
【0075】
より詳しくは、側壁部48C1は、板厚方向を車両幅方向とされて、車両幅方向から見て車両前後方向に延びる矩形の板状に構成されており、上壁部48C2及び下壁部48C3は、車両上下方向から見て車両前後方向に延びる矩形の板状に構成されている。なお、上壁部48C2と下壁部48C3とは、側壁部48C1に沿う方向においてエアバッグ装置36が納まる所定の間隔をあけて互いに対向した状態で配置されている。また、上壁部48C2と下壁部48C3との間隔は、車両幅方向内側から車両幅方向外側に向かうに従って徐々に拡がっている。
【0076】
延出壁部48Dは、上壁部48C2の車両幅方向外側の周縁部から車両上方側に延出されており、当該延出壁部48Dは、支持部48Cの車両幅方向外側に配置されていると共に当該支持部48Cの車両上方側の周縁部から車両上方側に延出されていると捉えることもできる。詳しくは、延出壁部48Dは、車両幅方向から見て、支持部48Cに沿って延びる矩形の板状とされていると共に、ドアアウタパネル26と所定の間隔をあけた状態でかつ当該ドアアウタパネル26と対向した状態で配置されている。
【0077】
一方、延出壁部48Eは、下壁部48C3の車両幅方向外側の周縁部から車両下方側に延出されており、当該延出壁部48Eは、支持部48Cの車両幅方向外側に配置されていると共に当該支持部48Cの車両下方側の周縁部から車両下方側に延出されていると捉えることもできる。詳しくは、延出壁部48Eは、車両幅方向から見て、支持部48Cに沿って延びる矩形の板状とされていると共に、ドアアウタパネル26と所定の間隔をあけた状態でかつ当該ドアアウタパネル26と対向した状態で配置されている。
【0078】
補強部48Fは、第1上側補強壁部としての「補強壁部48F1」と、第2上側補強壁部としての「フランジ部48F2」と、を含んで構成されている。詳しくは、補強壁部48F1は、延出壁部48Dの車両上方側の周縁部から車両幅方向内側に延出されていると共に、車両上下方向から見て、車両前後方向に延在する矩形の板状に構成されている。そして、フランジ部48F2は、補強壁部48F1の車両幅方向内側の周縁部から車両上方側に延出されていると共に、車両幅方向から見て、延出壁部48Dに沿って延びる矩形の板状とされている。
【0079】
一方、補強部48Gは、第1下側補強壁部としての「補強壁部48G1」と、第2下側補強壁部としての「フランジ部48G2」と、を含んで構成されている。詳しくは、補強壁部48G1は、延出壁部48Eの車両下方側の周縁部から車両幅方向内側に延出されていると共に、車両上下方向から見て、車両前後方向に延在する矩形の板状に構成されている。そして、フランジ部48G2は、補強壁部48G1の車両幅方向内側の周縁部から車両下方側に延出されていると共に、車両幅方向から見て、延出壁部48Eに沿って延びる矩形の板状とされている。
【0080】
上記のように構成されたインパクトビーム48には、エアバッグ装置36が、その長手方向をインパクトビーム48の長手方向と同じ方向とされた状態でかつ支持部48Cの側壁部48C1、上壁部48C2及び下壁部48C3で車両幅方向外側を除いて囲まれた状態で配置されている。また、側壁部48C1には、インフレータ40のスタッドボルトに対応する一対の図示しない被挿通部が形成されている。そして、インフレータ40のスタッドボルトが側壁部48C1の被挿通部に挿通されると共に当該スタッドボルトに側壁部48C1の車両幅方向内側から図示しないナット等の被締結部材が締結されることでエアバッグ装置36がインパクトビーム48に固定されている。なお、エアバッグ装置36は、インパクトビーム48に固定された状態において、車両上下方向から見て一部がインパクトビーム48よりも車両幅方向外側に突出された状態とされているが、車両上下方向から見て全部がインパクトビーム48で隠された状態とされていてもよい。
【0081】
また、インパクトビーム48は、フランジ部48F2、48G2が図示しない溶接等による接合部でドアインナパネル28に接合されることで固定されている。また、
図5に示されるように、インパクトビーム48は、ドアインナパネル28に固定された状態において、車両幅方向から見て、その端部48Aがフロントピラー20と、その端部48Bがセンタピラー22と、それぞれ重なるように配置されている。なお、エアバッグ装置36のインフレータ40は、サイドドア14に対して固定された状態において、サイドドア14の車両前後方向中央部よりも車両前方側の部分に配置されている。また、インフレータ40の車両上下方向の位置は、サイドドア14の車両上下方向中央部の近傍となるように設定されている。
【0082】
次に、主に
図1及び
図6を用いてエアバッグ膨出部50の構成について説明する。ドアアウタパネル26に形成された開口部52は、車両幅方向から見て、格納状態のエアバッグ装置36の長手方向に沿いかつ当該エアバッグ装置36よりも一回り大きい矩形状とされており、膨張展開時のエアバッグ38が通過可能とされている。なお、
図6には、開口部52を点線で示してある。
【0083】
ドアアウタモール54は、覆い部54Aと複数の係止部54Bとを含んで、弾性変形可能な樹脂材で構成されている。覆い部54Aは、車両幅方向から見て開口部52よりも一回り大きい矩形の板状に構成されている。
【0084】
一方、係止部54Bは、覆い部54Aの短手方向に対向する2つで組とされたものが、覆い部54Aの長手方向に複数組配置されている。この係止部54Bは、覆い部54Aの長手方向から見て、覆い部54Aの当該長手方向に延びる周縁部側に凸となる略三角形状に形成されている。より詳しくは、係止部54Bの覆い部54A側には、係止部54Bにおける覆い部54Aの短手方向の幅が覆い部54A側と反対側に向かうに従って大きくなる方向に傾斜する傾斜面部54B1が形成されている。また、係止部54Bの覆い部54Aと反対側には、覆い部54A側に向かうに従って係止部54Bの上記幅が大きくなる方向に傾斜する傾斜面部54B2が形成されている。
【0085】
上記のように構成されたドアアウタモール54は、係止部54Bが開口部52の周縁部に係止されることでドアアウタパネル26に取り付けられている。つまり、開口部52は、通常時においてドアアウタモール54で塞がれており、換言すれば、エアバッグ膨出部50は、通常時には閉塞されている。また、係止部54Bを上記構成とすることで、ドアアウタモール54を開口部52に取り付けるときに、係止部54Bを開口部52に差し込むと傾斜面部54B2が開口部52の周縁部に押圧されつつ係止部54Bが弾性変形するようになっている。
【0086】
さらに、ドアアウタモール54が膨張展開するエアバッグ38に押圧されたときには、係止部54Bの傾斜面部54B1が開口部52の周縁部に押圧されつつ係止部54Bが弾性変形するようになっている。これにより、係止部54Bにおける開口部52の周縁部への係止状態が解除されて、ドアアウタモール54がドアアウタパネル26から離脱されるようになっている。
【0087】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0088】
最初に、
図2を用いて、側突用エアバッグシステム34の制御フローについて概説する。
図2には、制御部43による制御フローの一例が示されている。この制御フローが開始されると、ステップS1では、衝突予知センサ46から出力された信号に基づき、ECU44で車両10に接近する物体の有無が判定される。そして、車両10に接近する物体がないと判定された場合は、ステップS1が繰り返される。一方、車両10に接近する物体があると判定された場合には、ステップS2に進む。
【0089】
ステップS2では、衝突予知センサ46から出力された信号に基づき、ECU44で車両に接近する物体が車両10のサイドドア14に衝突するか否かが判定される。そして、車両10に接近する物体が車両10に衝突しないと判定された場合は、ステップS1に戻る。一方、車両10に接近する物体が車両10に衝突すると判定された場合には、ステップS3に進む。
【0090】
ステップS3では、ECU44からの作動信号によってインフレータ40が作動し、エアバッグ38が膨張展開する。そして、インフレータ40が作動した後には、上記制御フローは終了する。
【0091】
次いで、本実施形態に係る車両側部構造が適用された車両10におけるエアバッグ装置36及びその周辺に配置された構成要素の挙動について説明する。
【0092】
本実施形態では、
図1に示されるように、サイドドア14の車両幅方向外側の部分を構成するドアアウタパネル26とサイドドア14の車両幅方向内側の部分を構成するドアインナパネル28との間にインフレータ40が配置されている。このインフレータ40は、上述したように車両10に接近する物体とサイドドア14との衝突が予測されたときに制御部43によって作動されるようになっている。
【0093】
また、ドアアウタパネル26にはエアバッグ膨出部50が設けられており、当該エアバッグ膨出部50は、通常時には閉塞されていると共に、エアバッグ38の膨張展開時にはエアバッグ38がドアアウタパネル26の車両幅方向外側へ膨張展開可能とされている。このため、制御部43で物体と車両10のサイドドア14との衝突が予測されたときには、インフレータ40が作動することにより噴出されたガスでエアバッグ膨出部50からサイドドア14の車両幅方向外側にエアバッグ38が膨張展開する。その結果、物体と車両10(サイドドア14)とが衝突しても、これらが衝突するときの衝突エネルギーをエアバッグ38で吸収することができる。
【0094】
ところで、エアバッグ38が膨張展開するときに当該エアバッグ38の展開反力を支持する部材がないとエアバッグ38の展開挙動が不安定になることが考えられる。
【0095】
ここで、本実施形態では、ドアインナパネル28にインパクトビーム48が取り付けられており、当該インパクトビーム48は、インフレータ40の車両幅方向内側に配置された側壁部48C1を含み、インフレータ40を支持する支持部48Cを備えている。このため、エアバッグ38が膨張展開するときに当該エアバッグ38の展開反力をインパクトビーム48の支持部48Cで支持することができる。したがって、本実施形態では、サイドドア14から車両幅方向外側に膨張展開するエアバッグ38の展開挙動を安定させることができる。
【0096】
また、本実施形態では、支持部48Cが側壁部48C1、上壁部48C2及び下壁部48C3を含んで構成されている。側壁部48C1は板厚方向を車両幅方向とされて車両前後方向に延びており、上壁部48C2は側壁部48C1の車両上方側の周縁部から車両幅方向外側に延出されており、下壁部48C3は側壁部48C1の車両下方側の周縁部から車両幅方向外側に延出されている。一方、インフレータ40は、その端部が閉塞された筒状とされていると共に、支持部48Cに車両幅方向外側を除いて囲まれた状態で配置されている。このため、本実施形態では、エアバッグ38が膨張展開するときに当該エアバッグ38の展開反力を、車両幅方向外側を除く異なる3方向から支持することができ、その結果、エアバッグ38が車両幅方向外側に向かって膨張展開する確度を向上させることができる。
【0097】
また、本実施形態では、インパクトビーム48は、延出壁部48D及び延出壁部48Eを含んで構成されている。延出壁部48Dは支持部48Cの車両幅方向外側に配置されて支持部48Cの車両上方側の周縁部から車両上方側に延出されており、延出壁部48Eは支持部48Cの車両幅方向外側に配置されて支持部48Cの車両下方側の周縁部から車両下方側に延出されている。このため、本実施形態では、延出壁部48D及び延出壁部48Eが、膨張展開後のエアバッグ38の車両幅方向内側に配置されるようになっている。したがって、本実施形態では、車両10と衝突する物体からエアバッグ38を介してサイドドア14側に伝達される衝突荷重をインパクトビーム48で支持することができる。
【0098】
また、本実施形態では、インパクトビーム48の車両上方側の部分には、補強壁部48F1及びフランジ部48F2を含んで補強部48Fが構成されている。そして、補強部48F、延出壁部48D部、支持部48Cの上壁部48C2及び側壁部48C1でインパクトビーム48の長手方向から見た断面形状が車両幅方向内側に開放されたハット状となる部分が構成されている。一方、インパクトビーム48の車両下方側の部分には、補強壁部48G1及びフランジ部48G2を含んで補強部48Gが構成されている。そして、補強部48G、延出壁部48E、支持部48Cの下壁部48C3及び側壁部48C1でインパクトビーム48の長手方向から見た断面形状が車両幅方向内側に開放されたハット状となる部分が構成されている。
【0099】
このため、本実施形態では、インパクトビーム48が一様な板状とされているような場合と比し、インパクトビーム48における車両幅方向の曲げの中立軸に対する断面二次モーメントを大きくすることができる。その結果、車両10と衝突する物体からエアバッグ38を介してサイドドア14側に伝達される衝突荷重に対するインパクトビーム48の剛性(特に車両幅方向の曲げに対する剛性)を高くすることができる。したがって、本実施形態では、サイドドア14側への衝突荷重を安定した状態で支持することができる。
【0100】
また、本実施形態では、ドアアウタパネル26に膨張展開時のエアバッグ38が通過可能な開口部52が形成されている。そして、物体と車両10のサイドドア14との衝突が予測されたときには、エアバッグ38は、開口部52を通過してサイドドア14の車両幅方向外側に膨張展開される。
【0101】
ところで、サイドドア14の外観を確保するという観点では、通常時においてドアアウタパネル26の開口部52が車両幅方向外側から見えないようになっていることが好ましい。一方で、エアバッグ38の膨張展開を円滑に行うという観点では、エアバッグ38の膨張展開時において開口部52にエアバッグ38の抵抗となるものがないことがないことが好ましい。
【0102】
ここで、本実施形態では、ドアアウタパネル26に形成された開口部52がドアアウタモール54で覆われており、通常時において、
図3(A)に示されるように、開口部52及びエアバッグ38がドアアウタモール54で隠されている。また、ドアアウタモール54は、膨張展開時のエアバッグ38によって押圧されることでドアアウタパネル26から離脱可能とされている。これにより、
図3(B)に示されるように、エアバッグ38の膨張展開時においてドアアウタモール54がドアアウタパネル26から車両幅方向外側に離脱して、開口部52が開放された状態となる。そして、この状態において、
図3(C)に示されるように、エアバッグ38が膨張展開される。したがって、本実施形態では、通常時におけるサイドドア14の外観の確保とエアバッグ38の膨張展開時におけるエアバッグ38への抵抗の低減との両立を図ることができる。
【0103】
また、本実施形態では、
図5に示されるように、インフレータ40は、サイドドア14の車両前後方向中央部よりも車両前方側の部分に配置されている。これにより、車両10のサイドドア14に物体が衝突して当該物体によってインフレータ40が押圧されて移動してもインフレータ40の軌道上に少なくとも乗員56の上半身が位置しないようにすることができる。したがって、本実施形態では、車両10のサイドドア14に衝突した物体による衝突荷重でインフレータ40が乗員56の上半身側に移動することを抑制することができる。
【0104】
加えて、本実施形態では、インパクトビーム48は、車両幅方向から見て、その端部48Aが車体12の一部を構成するフロントピラー20と、その端部48Bが同じく車体12の一部を構成するセンタピラー22と、それぞれ重なるように配置されている。そして、フロントピラー20は車両幅方向から見て、その一部がドアインナパネルの車両前方側の周縁部と重なるように配置されており、センタピラー22は車両幅方向から見て、その一部がドアインナパネル28の車両後方側の周縁部と重なるように配置されている。このため、インパクトビーム48がサイドドア14に衝突した物体で押圧されてもインパクトビーム48は、ドアインナパネル28を介した状態で、フロントピラー20及びセンタピラー22の少なくとも一方に支持される。したがって、本実施形態では、車両10のサイドドア14に衝突した物体による衝突荷重を車体12の骨格部材で支持することができる。
【0105】
<第2実施形態>
以下、
図7を用いて、本発明に係る車両側部構造の第2実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0106】
本実施形態に係る車両側部構造では、補強部材としての「インパクトビーム60」に補強部48F、48Gに対応する部分が設けられていない点及び覆い部材としての「ドアアウタモール62」にティア部64が形成されている点に特徴がある。なお、本実施形態では、後述するように、ドアアウタモール62がエアバッグ膨出部として機能している。
【0107】
具体的に説明すると、インパクトビーム60は、「支持部60A」、上側延出壁部としての「延出壁部60B」及び下側延出壁部としての「延出壁部60C」を含んで構成されている。なお、支持部60Aは支持部48Cと、延出壁部60Bは延出壁部48Dと、延出壁部60Cは延出壁部48Eと、それぞれ同様の形状に構成されている。
【0108】
また、インパクトビーム60は、一例として、インパクトビーム48を構成する鋼材よりも引張り強度が大きい高張力鋼で構成されており、インパクトビーム48と同等の剛性(車両幅方向の曲げに対する剛性)を有している。そして、本実施形態では、支持部60Aが図示しない溶接等による接合部でドアインナパネル28に接合されることで、インパクトビーム60が固定されている。
【0109】
一方、ドアアウタモール62は、車両幅方向外側から見た形状がドアアウタモール54の覆い部54Aと同形状とされた覆い部62Aと、係止部62Bとを含んで構成されている。係止部62Bは、ドアアウタモール54の係止部54Bと同様に配設されているものの、その形状が係止部54Bと異なっている。
【0110】
詳しくは、係止部62Bは、覆い部62Aの長手方向から見て、覆い部62A側に向かうに従って拡幅された台形状に形成されている。このため、係止部62Bは、係止部54Bと同様に開口部52に差し込めるものの、ドアアウタモール62がドアアウタパネル26に取り付けられた後には、係止部62Bが返しとして機能する。したがって、本実施形態では、ドアアウタモール62が車両幅方向内側から押圧されてもドアアウタパネル26から離脱されないようになっている。
【0111】
また、本実施形態では、覆い部62Aの車両幅方向内側の面に、当該覆い部62Aの長手方向に延びる中心線に沿うように溝状のティア部64が形成されている。これにより、覆い部62Aは、膨張展開するエアバッグ38に押圧されることでティア部64から車両上下方向に開裂(展開)して、エアバッグ38が通過可能な状態に開口されるようになっている。なお、
図7には、展開後の覆い部62Aが二点鎖線で示されている。
【0112】
このような構成によれば、補強部48F、48Gによる作用並びに効果を除き、基本的に上述した第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏することができる。
【0113】
加えて、本実施形態では、ドアアウタパネル26の開口部52を覆うドアアウタモール62が、膨張展開時のエアバッグ38によって押圧されることで開裂してエアバッグ38が通過可能な状態に開口する。つまり、本実施形態では、ドアアウタモール62がドアアウタパネル26に配置されている状態で、サイドドア14の車両幅方向外側にエアバッグ38を膨張展開させることができる。したがって、本実施形態では、通常時におけるサイドドア14の外観の確保することができると共に、ドアアウタモール54のようにサイドドア14から離脱される構成と比し、ドアアウタモール62が周囲に及ぼす影響を低減することができる。
【0114】
<第3実施形態>
以下、
図8を用いて、本発明に係る車両側部構造の第3実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0115】
本実施形態に係る車両側部構造では、補強部材としての「インパクトビーム70」が略半円筒状に構成されている点に特徴がある。
【0116】
具体的に説明すると、インパクトビーム70は、インパクトビーム48と同様に延在しており、「支持部70A」、上側延出壁部としての「延出壁部70B」を含んで構成されている。詳しくは、支持部70Aは、車両前後方向に延びると共に長手方向から見た断面形状が車両幅方向外側に開放された円弧状の板状とされている。一方、延出壁部70Bは、支持部70Aの車両上方側の周縁部から車両上方側に延出されていると共に、車両幅方向から見て矩形の板状に形成されている。なお、サイドドア14等の構成に応じて、延出壁部70Bを、支持部70Aの車両下方側の周縁部から車両下方側に延出された構成として、下側延出壁部として機能させるようにしてもよい。
【0117】
また、本実施形態では、エアバッグ装置36は、エアバッグ38が支持部70Aの内周面に沿う円柱状となるように折り畳まれた状態でかつ当該支持部70Aに車両幅方向外側を除いて囲まれた状態で配置されている。なお、本実施形態では、ドアアウタパネル26の開口部52にドアアウタモール54又はドアアウタモール62が取り付けられている。
【0118】
このような構成によれば、延出壁部48E及び補強部48F、48Gによる作用並びに効果を除き、基本的に上述した第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏することができる。加えて、本実施形態では、インフレータ40ひいてはエアバッグ装置36の形状と支持部70Aの形状とを対応させ、インフレータ40と支持部70Aとの間に隙間が発生することを抑制することができる。その結果、本実施形態では、インフレータ40及びインパクトビーム70を配置するのに必要なスペースの拡大を抑制することができる。
【0119】
<第4実施形態>
以下、
図9を用いて、本発明に係る車両側部構造の第4実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0120】
本実施形態に係る車両側部構造では、インパクトビーム48と同様に延在する補強部材としての「インパクトビーム80」が、「支持部80A」とフランジ部80Bとを含んで、その長手方向から見た断面形状をハット状とされて構成されている点に特徴がある。
【0121】
具体的に説明すると、支持部80Aは、「内側側壁部80A1」、第1延出壁部としての「延出壁部80A2」、「外側側壁部80A3」及び第2延出壁部としての「延出壁部80A4」を含んで構成されている。内側側壁部80A1は、インフレータ40の車両幅方向内側に当該インフレータ40に沿って延びると共に板厚方向を車両幅方向とされた状態で配置されている。延出壁部80A2は、内側側壁部80A1の車両下方側の周縁部から車両幅方向外側に延出されており、当該延出壁部80A2の車両幅方向外側の周縁部からは、インフレータ40と反対側に外側側壁部80A3が延出されている。そして、外側側壁部80A3のインフレータ40と反対側の周縁部からは、車両幅方向内側に延出壁部80A4が延出されている。
【0122】
なお、サイドドア14等の構成に応じて、支持部80Aは、延出壁部80A2、内側側壁部80A1及び延出壁部80A4が、内側側壁部80A1の車両上方側にこの順に配置されるような構成としてもよい。
【0123】
また、本実施形態では、延出壁部80A4の車両幅方向内側の周縁部からインフレータ40と反対側に延出されたフランジ部80B及び内側側壁部80A1が、ドアインナパネル28に図示しない溶接等による接合部で接合されることでインパクトビーム80が固定されている。なお、本実施形態では、ドアアウタパネル26の開口部52にドアアウタモール54又はドアアウタモール62が取り付けられている。
【0124】
このような構成によれば、内側側壁部80A1がインフレータ40の車両幅方向内側に配置されてインフレータ40に沿って延びると共に板厚方向を車両幅方向とされた状態でドアインナパネル28に接合されている。これにより、エアバッグ38が膨張展開するときに当該エアバッグ38の展開反力を内側側壁部80A1及びドアインナパネル28で支持することができる。
【0125】
また、車両10と衝突する物体からエアバッグ38を介してサイドドア14側に伝達される衝突荷重が外側側壁部80A3で支持される。そして、本実施形態では、インパクトビーム80における延出壁部80A2、外側側壁部80A3及び延出壁部80A4で構成された部分が、その長手方向から見た断面形状が車両幅方向内側に開放されたU字状に構成されている。このため、車両10と衝突する物体からエアバッグ38を介してサイドドア14側に伝達される衝突荷重に対するインパクトビーム80の剛性を確保することができる。したがって、本実施形態では、インパクトビーム80で支持可能なエアバッグ38の展開反力を大きくすることができると共に、車両10と衝突する物体からエアバッグ38を介してサイドドア14側に伝達される衝突荷重をインパクトビーム80で安定的に支持することができる。
【0126】
<第5実施形態>
以下、
図10を用いて、本発明に係る車両側部構造の第5実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0127】
本実施形態に係る車両側部構造では、補強部材としての「インパクトビーム90」が、基本的にインパクトビーム48と同形状に構成されたパネル部材92と一対の「ビーム部材94」とを含んで構成されている点に特徴がある。
【0128】
具体的に説明すると、パネル部材92は、「支持部92A」、上側延出壁部としての「延出壁部92B」、下側延出壁部としての「延出壁部92C」、第1補強部としての「補強部92D」及び第2補強部としての「補強部92E」を含んで構成されている。また、パネル部材92は、インパクトビーム48を構成する鋼材よりも板厚が小さい鋼材や引張り強度が小さい鋼材で構成されている。そして、パネル部材92は、図示しない溶接等による接合部でドアインナパネル28に接合されている。
【0129】
一方、ビーム部材94は、支持部92Aに沿って延びる円筒状に構成されていると共に、延出壁部92B、92Cの車両幅方向内側にそれぞれ配置されて、図示しない溶接等による接合部でパネル部材92に接合されている。なお、ビーム部材94の両端部には、図示しない板状のエクステンション部が設けられており、当該エクステンション部は、図示しない溶接等による接合部でドアインナパネル28に接合されている。また、本実施形態では、ドアアウタパネル26の開口部52にドアアウタモール54又はドアアウタモール62が取り付けられている。
【0130】
このような構成によれば、基本的に上述した第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏することができる。加えて、本実施形態では、エアバッグ38の展開反力を支持部92Aによって車両幅方向外側を除く異なる3方向から支持することができると共に、車両10と衝突する物体からエアバッグ38を介してサイドドア14側に伝達される衝突荷重を一対のビーム部材94で支持することができる。したがって、本実施形態では、エアバッグ38の展開反力の支持とサイドドア14側への衝突荷重の支持とをそれぞれ別の部材で担うことができる。
【0131】
<第6実施形態>
以下、
図11及び
図12を用いて、本発明に係る車両側部構造の第6実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0132】
本実施形態に係る車両側部構造では、インパクトビーム48とドアアウタモール54とが連結部としての「ストラップ100」を介して連結されている点に特徴がある。
【0133】
具体的に説明すると、
図11に示されるように、ストラップ100は、樹脂材で紐状に構成されていると共に、その一端部100Aが、覆い部54Aの車両上方側の周縁部における車両幅方向内側に、図示しない係止部や接合部等で取り付けられている。一方、ストラップ100の他端部100Bは、インパクトビーム48の延出壁部48Dの車両幅方向外側の面に図示しない係止部や接合部等で取り付けられている。
【0134】
また、覆い部54Aの車両上方側の部分においてドアアウタパネル26と重なる部分には、ストラップ100の一端部100Aの周辺部から当該覆い部54Aの短手方向に延びる溝部102が形成されている。この溝部102は、ストラップ100を収納可能な大きさに構成されており、当該溝部102の内側には、ストラップ100の一端部100Aから車両上下方向に延びるストラップ100の一部が配置されている。
【0135】
一方、ドアアウタパネル26における開口部52の車両上方側の周縁部には、車両幅方向から見てドアアウタモール54の溝部102と重なる位置に、車両下方側が開放された矩形状のスリット部104が形成されている。このスリット部104の大きさは、ストラップ100を挿通可能な大きさとされており、ストラップ100は、その一端部100A側を始点として溝部102、スリット部104の順に経由し、車両幅方向内側に延びている。なお、ストラップ100におけるドアアウタパネル26とインパクトビーム48との間に配置された部分は、緩んだ状態となっている。
【0136】
つまり、本実施形態では、
図12に示されるように、ドアアウタモール54がドアアウタパネル26から離脱しても当該ドアアウタモール54とインパクトビーム48との締結状態がストラップ100によって維持されるようになっている。また、ドアアウタモール54がドアアウタパネル26に取り付けられている状態において、ストラップ100は緩んだ状態となっている。このため、離脱した状態のドアアウタモール54は、膨張展開時のエアバッグ38に対して相対変位可能であり、エアバッグ38の膨張展開を阻害しないようになっている。
【0137】
このような構成によれば、基本的に上述した第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏することができる。加えて、本実施形態では、ドアアウタモール54が、ストラップ100を介してインパクトビーム48と連結されており、ドアアウタモール54とインパクトビーム48との連結状態は、ドアアウタモール54がドアアウタパネル26から離脱された状態においても維持される。したがって、本実施形態では、エアバッグ38の膨張展開時におけるドアアウタモール54の紛失を抑制することができる。
【0138】
<第7実施形態>
以下、
図13及び
図14を用いて、本発明に係る車両側部構造の第7実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0139】
本実施形態に係る車両側部構造では、「ドアアウタパネル110」が所定の強度を有する樹脂製とされている点及び「エアバッグ膨出部112」がドアアウタパネル110に設けられた「ティア部114」を含んで構成されている点に特徴がある。
【0140】
具体的に説明すると、
図14に示されるように、ドアアウタパネル110の形状は、基本的にドアアウタパネル26の形状と同様の形状とされているが、ドアアウタパネル110は、ドアアウタパネル26と異なり、ドアインナパネル28に図示しない係止部や接合部で取り付けられている。
【0141】
一方、ティア部114は、
図13にも示されるように、ドアアウタパネル110の車両幅方向内側の面に設けられており、一例として、車両幅方向から見て略H字状とされていると共に、所定値以上のエアバッグ38の膨張圧が作用すると開裂(破断)するように構成されている。より詳しくは、ティア部114は、第1ティア部114A、第2ティア部114B及び第3ティア部114Cを含んで構成されている。第1ティア部114Aは、車両幅方向から見てエアバッグ38に沿って延びる溝状とされている。一方、第2ティア部114Bは、第1ティア部114Aの両端部にそれぞれ設けられており、当該第1ティア部114Aと直交する方向に延びる溝状とされている。そして、第3ティア部114Cは、第2ティア部114Bの両端部から当該第2ティア部114Bに対して斜めにかつ第1ティア部114Aの反対側に延びる溝状とされている。
【0142】
また、ドアアウタパネル110には、上述したようにティア部114が設けられることで、上下一対の上側ドア116A及び下側ドア116Bから成るエアバッグドア116が形成されている。このエアバッグドア116は、エアバッグ38の膨張圧によってティア部114が開裂すると、上側ドア116Aが車両上方側に展開し、下側ドア116Bが車両下方側に展開するように構成されている。そして、エアバッグドア116が展開されると、ドアアウタパネル110には、エアバッグ38が通過可能な「開口部118」が形成される。
【0143】
このような構成によれば、ドアアウタパネル110に第1ティア部114Aと第2ティア部114Bとを備えたティア部114が設けられており、当該ティア部114は、膨張展開時のエアバッグ38によって当該ドアアウタパネル110が押圧されることで開裂する。そして、ティア部114が開裂することで、エアバッグドア116が車両上下方向(第2ティア部114Bの延在方向)に展開し、エアバッグ38が通過可能な開口部118がドアアウタパネル110に形成されて、サイドドア14の車両幅方向外側にエアバッグ38が膨張展開する。このため、本実施形態では、ドアアウタパネル110にエアバッグ38が通過可能な開口部を設けると共に当該開口部を覆う覆い部材を配置するような構成と比し、サイドドア14の意匠面に意匠上不要な凸部が形成されることを抑制し、当該意匠面の外観が損なわれるのを抑制することができる。したがって、本実施形態では、サイドドア14の部品点数の削減と外観品質の確保との両立を図ることができる。
【0144】
また、本実施形態では、ドアアウタパネル110が樹脂製とされており、当該ドアアウタパネル110を軽量化することができる。また、ドアアウタパネル110を金属製とする場合と比し、膨張展開時のエアバッグ38がドアアウタパネル110から受ける負荷が低減される。その結果、本実施形態では、サイドドア14の軽量化を図りつつ、エアバッグ38が車両幅方向外側に向かって膨張展開する確度を向上させることができる。
【0145】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、車両10における車両幅方向両側の側部に上述した実施形態に係る車両側部構造が適用されているが、車両幅方向一方側の側部に当該車両側部構造を適用してもよい。
【0146】
(2) また、上述した実施形態では、フロントサイドドアにエアバッグ装置36やインパクトビームを取り付ける構成としたが、車両10の構成に応じて、リヤサイドドアにこれらを設ける構成としてもよい。
【0147】
(3) さらに、上述した実施形態では、インパクトビームがエアバッグ装置36の車両幅方向外側が開放されるように構成されているが、これに限らない。すなわち、インパクトビームは、製造工程等に応じて、エアバッグ38の膨張展開を阻害しない範囲において、エアバッグ装置36の車両幅方向外側が覆われているような構成としてもよい。
【0148】
(4) 加えて、上述した実施形態では、サイドドア14に布製のエアバッグ38を備えたエアバッグ装置36を配置しているが、これに限らない。一例として、サイドドア14の内側にインパクトビームで支持されたメタルエアバッグを配置すると共に、当該メタルエアバッグで押圧されることで開裂するエアバッグ膨出部としてのティア部をドアアウタパネル26に設ける構成としてもよい。このような構成によれば、上述した第7実施形態と同様に、ドアアウタパネル26へのドアアウタモールの取付が不要となる。
【0149】
(5) 上述した第1実施形態では、ドアアウタパネル26の開口部52にドアアウタモール54が取り付けられているが、当該開口部52にドアアウタモール62が取り付けられていてもよい。
【0150】
(6) 上述した第2実施形態では、インパクトビーム70に延出壁部70Bが設けられているが、サイドドア14等の構成に応じて、インパクトビーム70に延出壁部70Bを設けない構成としてもよい。
【0151】
(7) 上述した実施形態では、インフレータ40が長手方向の両端部が閉塞された円筒状に構成されていたが、第1実施形態〜第5実施形態のうち第3実施形態を除く実施形態では、インフレータ40が異なる形状であってもよい。一例として、第1実施形態〜第5実施形態のうち第3実施形態を除く実施形態では、インフレータ40を長手方向の両端部が閉塞された角筒状に構成してもよい。このような構成によれば、インフレータ40のインパクトビームに対する位置決めを容易に行うことができる。
【0152】
(8) 上述した第6実施形態では、ストラップ100によって、ドアアウタモール54とインパクトビーム48とが連結されていたが、これに限らない。例えば、インパクトビーム48の代わりにインパクトビーム60、70、80、90のうち何れかのインパクトビームを配置して、当該インパクトビームとドアアウタモール54とがストラップ100を介して連結される構成としてもよい。また、ストラップ100の構成も上述したものに限らず、例えば、インパクトビームの構成等に応じて、ストラップ100をナイロン繊維等の合成繊維で帯状に構成してもよい。さらに、インパクトビームとドアアウタモール54とのストラップ100による連結箇所も上述したものに限らない。例えば、サイドドア14の構成等に応じて、ストラップ100を介してインパクトビームの車両下方側の部分とドアアウタモール54の車両下方側の部分とが連結されている構成としてもよい。なお、インパクトビームとドアアウタモール54とのストラップ100による連結箇所に応じて、溝部102及びスリット部104の形状や配置箇所は、適宜変更される。
【0153】
(9) 上述した第7実施形態では、ティア部114が基本的にエアバッグドア116の周縁部に沿って配置されていたが、これに限らず、エアバッグドア116の回転中心に沿うティア部を配置してもよい。このような構成によれば、エアバッグドア116をより円滑に展開させることができる。また、ドアアウタパネル110は、エアバッグドア116の部分を軟質樹脂で形成し、それ以外の部分を硬質樹脂で形成する2色成形で構成されていてもよい。