【実施例1】
【0081】
以下に本発明に係るインクジェット記録用圧着用紙の実施例について具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例中の部及び%は、断らない限り乾燥質量部及び質量%を示す。また、各実施例及び比較例中のシリカの吸油量は、ISO 787−5に基づいて測定した吸油量を表し、各実施例及び比較例中の無機顔料及び澱粉粒子の平均粒子径は、レーザー回折法による体積平均粒子径の測定値を表す。
【0082】
[糊化澱粉の調製]
各実施例及び比較例における糊化澱粉は次の手順で作成されたものである。原料となる粉末粒子状の澱粉30質量部と水70質量部とを混合し、得られたスラリーを撹拌しながらスラリーに水蒸気を入れることにより加熱し、90℃以上で60分保持した後、加水により冷却と濃度調整を行うことで原料となる澱粉の糊化澱粉が得られる。得られた糊化澱粉の固形分濃度は17質量%であった。
【0083】
<実施例1>
感圧接着剤組成物の調整:無機顔料として、平均粒子径7.0μmで吸油量が300〜330ml/100gであるゲル法シリカ(商品名:サイロイドC−807/ダブリュー・アール・グレースジャパン社製)100質量部と、消泡剤2.8質量部とを水中に添加して十分に分散した後、バインダーとしてケン化度95.5〜97.5mol%の中間ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JM−17/日本酢ビ・ポバール社製)39質量部と尿素リン酸エステル化澱粉(商品名:MS#4000/日本食品化工社製)を原料とした糊化澱粉10質量部、非剥離性感圧接着剤基剤として天然ゴムにメタクリル酸メチルを重合した天然ゴム系ラテックス122質量部を混合し、高級脂肪酸系潤滑剤0.9質量部を添加した後、インク定着剤として硫酸マグネシウム5.6質量部、澱粉粒子として平均粒子径18μmの小麦粉澱粉16.7質量部を加えて感圧接着剤組成物となる塗料を作成した。
インクジェット記録用圧着用紙の製造方法:作成した塗料をエアーナイフコータにて米坪113g/m
2のフォーム用紙の両面に各々の面の塗工量が固形分で6.0g/m
2となるように塗工し、インクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0084】
<実施例2>
実施例1において、中間ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JM−17/日本酢ビ・ポバール社製)を、ケン化度92.5〜94.5mol%の中間ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JT−13Y/日本酢ビ・ポバール社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0085】
<実施例3>
実施例1において、中間ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JM−17/日本酢ビ・ポバール社製)を、ケン化度93.5〜95.5mol%の中間ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JM−33/日本酢ビ・ポバール社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0086】
<実施例4>
実施例1において、中間ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JM−17/日本酢ビ・ポバール社製)を、ケン化度96.0〜98.0mol%の中間ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JM−23/日本酢ビ・ポバール社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0087】
<実施例5>
実施例1において、中間ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JM−17/日本酢ビ・ポバール社製)の配合量を39質量部から28質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0088】
<実施例6>
実施例1において、中間ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JM−17/日本酢ビ・ポバール社製)の配合量を39質量部から33質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着紙を得た。
【0089】
<実施例7>
実施例1において、中間ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JM−17/日本酢ビ・ポバール社製)の配合量を39質量部から45質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0090】
<実施例8>
実施例1において、尿素リン酸エステル化澱粉(商品名:MS#4000/日本食品化工社製)を原料とした糊化澱粉の配合量を10質量部から3.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0091】
<実施例9>
実施例1において、尿素リン酸エステル化澱粉(商品名:MS#4000/日本食品化工社製)を原料とした糊化澱粉の配合量を10質量部から7.7質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0092】
<実施例10>
【0093】
実施例1において、尿素リン酸エステル化澱粉(商品名:MS#4000/日本食品化工社製)を原料とした糊化澱粉の配合量を10質量部から13.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0094】
<実施例11>
実施例1において、尿素リン酸エステル化澱粉(商品名:MS#4000/日本食品化工社製)を原料とした糊化澱粉の配合量を10質量部から16.7質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0095】
<実施例12>
実施例1において、平均粒子径7.0μmで吸油量が300〜330ml/100gであるゲル法シリカ(商品名:サイロイドC−807/ダブリュー・アール・グレースジャパン社製)を、平均粒子径12μmで吸油量が300〜330ml/100gのゲル法シリカ(商品名:サイロイドC−812/ダブリュー・アール・グレースジャパン社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0096】
<実施例13>
実施例1において、平均粒子径7.0μmで吸油量が300〜330ml/100gであるゲル法シリカ(商品名:サイロイドC−807/ダブリュー・アール・グレースジャパン社製)を、平均粒子径10.3μmで吸油量が260ml/100gであるゲル法シリカ(商品名:HP39/PQコーポレーション社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0097】
<実施例14>
実施例1において、平均粒子径7.0μmで吸油量が300〜330ml/100gであるゲル法シリカ(商品名:サイロイドC−807/ダブリュー・アール・グレースジャパン社製)を、平均粒子径4.4μmで吸油量が270ml/100gであるゲル法シリカ(商品名:23D/PQコーポレーション社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0098】
<実施例15>
実施例1において、平均粒子径7.0μmで吸油量が300〜330ml/100gであるゲル法シリカ(商品名:サイロイドC−807/ダブリュー・アール・グレースジャパン社製)を、平均粒子径3.0μmで吸油量が300〜330ml/100gであるゲル法シリカ(商品名:サイロイドC−803/ダブリュー・アール・グレースジャパン社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0099】
<実施例16>
実施例1において、平均粒子径18μmである小麦粉澱粉の配合量を、16.7質量部から11.1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0100】
<実施例17>
実施例1において、平均粒子径18μmである小麦粉澱粉の配合量を、16.7質量部から22.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0101】
<実施例18>
実施例1において、平均粒子径18μmである小麦粉澱粉の配合量を、16.7質量部から27.8質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0102】
<実施例19>
実施例1において、硫酸マグネシウムの配合量を5.6質量部から1.1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0103】
<実施例20>
実施例1において、硫酸マグネシウムの配合量を5.6質量部から3.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0104】
<実施例21>
実施例1において、硫酸マグネシウムの配合量を5.6質量部から11.1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0105】
<実施例22>
実施例1において、硫酸マグネシウムの配合量を5.6質量部から16.7質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0106】
<実施例23>
実施例1において、硫酸マグネシウムを塩化カルシウムに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0107】
<実施例24>
実施例1において、平均粒子径7.0μmで吸油量が300〜330ml/100gであるゲル法シリカ(商品名:サイロイドC−807/ダブリュー・アール・グレースジャパン社製)を、平均粒子径2.3μmで吸油量が255ml/100gの沈降法シリカ(商品名:カープレックスFPS−1/エボニック社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0108】
<実施例25>
実施例1において、平均粒子径7.0μmで吸油量が300〜330ml/100gであるゲル法シリカ(商品名:サイロイドC−807/ダブリュー・アール・グレースジャパン社製)を、平均粒子径15.0μmで吸油量が290ml/100gの沈降法シリカ(商品名:カープレックス#30/エボニック社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0109】
<比較例1>
実施例1において、中間ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JM−17/日本酢ビ・ポバール社製)を、ケン化度87.0〜89.0mol%の部分ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JP−18/日本酢ビ・ポバール社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0110】
<比較例2>
実施例1において、中間ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JM−17/日本酢ビ・ポバール社製)を、ケン化度99.3mol%以上の完全ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:V/日本酢ビ・ポバール社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0111】
<比較例3>
実施例1において、尿素リン酸エステル化澱粉(商品名:MS#4000/日本食品化工社製)を原料とした糊化澱粉の配合量を10質量部から0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0112】
<比較例4>
実施例3において、中間ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:JM−17/日本酢ビ・ポバール社製)の配合量を39質量部から49質量部に変更し、尿素リン酸エステル化澱粉(商品名:MS#4000/日本食品化工社製)を原料とした糊化澱粉の配合量を10質量部から0質量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0113】
<比較例5>
実施例1において、尿素リン酸エステル化澱粉(商品名:MS#4000/日本食品化工社製)を原料とした糊化澱粉10質量部を、変性スチレン−ブタジエン共重合樹脂(商品名:Nipol LX430/日本ゼオン社製)10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0114】
<比較例6>
実施例1において、平均粒子径18μmの小麦粉澱粉の配合量を16.7質量部から0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0115】
<比較例7>
実施例1において、平均粒子径18μmの小麦粉澱粉の配合量を16.7質量部から0質量部に、尿素リン酸エステル化澱粉(商品名:MS#4000/日本食品化工社製)を原料とした糊化澱粉の配合量を10質量部から0質量部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着用紙を得た。
【0116】
[物性評価用試料の調製]
各実施例及び比較例で得られたインクジェット用圧着用紙に、インクジェットプリンター(TruepressJet520、SCREEN社製)を用いて水性顔料インクによるCMYKの各色ベタ印刷を行った。その後、印刷後のインクジェット用圧着用紙を、水分5.5〜7.0%となるように調整し、10cm×10cmの試験片をカットして3枚重ねた後、ドライシーラーMS−9200II(株式会社デュプロ社製)にて感圧接着剤塗工層を設けた親展面同士を加圧接着した。なお、加圧接着する際は、接着直後の剥離強度が約150g/25mm巾となるようにシーラーギャップを設定した。こうして得られた圧着用紙試験片の圧着面同士を剥離し、以下の要領で各種評価を行った。
【0117】
[発色性についての評価]
剥離後の圧着面の記録画像の発色濃度を目視にて評価した。発色濃度の最も高いものを5、発色濃度の最も低いものを1として5段階で評価し、3以上を合格とした。
【0118】
[対向面への転移についての評価]
剥離後に、一方の圧着面に印刷された記録画像が対向面(もう一方の圧着面)に転移していないかを目視にて評価した。対向面への転移が最も少ないものを6、対向面への転移が最も多いものを1として6段階で評価し、3以上を合格とした。
【0119】
[加圧ロールの汚れについての評価]
インクジェット記録用圧着用紙を、ドライシーラーMS−9200IIを用いて葉書10,000枚相当分を圧着した後、前記ドライシーラーの加圧ロールの汚れ具合を目視にて評価した。加圧ロールの汚れが最も少ないものを4、加圧ロールの汚れが最も多いものを1として4段階で評価し、3以上を合格とした。
【0120】
[表面強度]
JIS K 5701に記載の展色装置(石川島産業:RI−II型)を用い、感圧接着剤塗工層の白抜けの有無を目視にて判定した。塗工層の白抜けが最も少ないものを6、塗工層の白抜けが最も多いものを1として6段階で評価し、3以上を合格とした。
【0121】
[インクの乾燥性についての評価]
インクジェットプリンター(TruepressJet520、SCREEN社製)を用い、水性顔料インクによるCMYKの各色ベタ印刷を、印刷速度128m/minにてインクジェット記録用圧着用紙6000mに連続印刷した。印刷後のインクジェット記録用圧着用紙に付着したインク汚れを目視にて観察し、用紙の汚れが最も少ないものを6、用紙への汚れが最も多いものを1として6段階で評価し、3以上を合格とした。インク乾燥性が悪い場合、ベタ印刷部のインクがインクジェットプリンターのフィードロール等に転移し、そのインクが更に用紙に転移することでインクジェット記録用圧着用紙にインク汚れが生じる。
【0122】
[巻取ロールのブロッキング]
フォーム印刷機で墨、藍、紅、黄の4色10%の網点印刷を、印刷速度200m/minにてインクジェット記録用圧着用紙6000mに連続印刷した。印刷時のロールの繰出し部のブロッキング状態を目視で観察し、ロールの繰出しがスムーズなものを5、ロールの繰出しが不安定なものを1として5段階で評価し、3以上を合格とした。ロールの繰出しが不安定な場合には、印刷機上で用紙の蛇行、及び断紙が発生する。
【0123】
実施例及び比較例における感圧接着剤組成物塗料の配合が
図1,2に、実施例及び比較例におけるインクジェット記録用圧着用紙の物性の評価結果が
図3にそれぞれ示されている。
【0124】
図3の結果からも明らかなように、実施例1〜25で得られたインクジェット記録用圧着用紙は、発色性、対向面への印字転移、加圧ロールの汚れ、表面強度、インク乾燥性、、ブロッキングのいずれについても合格である3段階以上であり、実運用上問題のないものであった。
【0125】
これに対して比較例1により得られたインクジェット記録用圧着用紙は、インク乾燥性、表面強度の点で実用に供し得ないものであった。これはバインダーとして用いたポリビニルアルコールのケン化度が90mol%未満だったことが原因だと考えられる。
【0126】
比較例2により得られたインクジェット記録用圧着用紙は、対向面への印字転移、インク乾燥性の点で実用に供し得ないものであった。これはバインダーとして用いたポリビニルアルコールのケン化度が98mol%を上回ったことが原因だと考えられる。
【0127】
比較例3により得られたインクジェット記録用圧着用紙は、対向面への印字転移と表面強度の点で実用に供し得ないものであった。これは糊化澱粉を配合しなかったことが原因だと考えられる。
【0128】
比較例4により得られたインクジェット記録用圧着用紙は、対向面への印字転移、加圧ロールの汚れ、インク乾燥性の点で実用に供し得ないものであった。これはバインダーをポリビニルアルコールのみとして糊化澱粉を配合しなかったことからインクの吸収性が阻害されたことが原因だと考えられる。
【0129】
比較例5により得られたインクジェット記録用圧着用紙は、発色性、対向面への印字転移、加圧ロールの汚れ、インク乾燥性の点で実用に供し得ないものであった。これは糊化澱粉を用いずにスチレン−ブタジエン共重合樹脂を用いたことからインクの吸収性が阻害されたことが原因だと考えられる。
【0130】
比較例6により得られたインクジェット記録用圧着用紙は、フォーム印刷機での印刷時、用紙の繰出しが不安定となり用紙の断紙が発生し、巻取りロールのブロッキング評価の点で実用に供し得ないものであった。これは澱粉粒子が配合されなかったことが原因だと考えられる。