(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6740195
(24)【登録日】2020年7月28日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】燃料吸入口部材
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20200730BHJP
B60K 15/03 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
F02M37/00 301Z
F02M37/00 301J
B60K15/03 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-184555(P2017-184555)
(22)【出願日】2017年9月26日
(65)【公開番号】特開2019-60267(P2019-60267A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 健弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 耕史
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 崇
【審査官】
菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭43−967(JP,Y1)
【文献】
実開昭48−59911(JP,U)
【文献】
実開昭59−133324(JP,U)
【文献】
特開2016−22861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
B60K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの底壁部に弾性部材によって押し付けられる吸入口部材本体を備える燃料吸入口部材であって、
前記吸入口部材本体は、下面に開口する中空筒状の吸口部を有しており、
前記吸口部の下端部には、該吸口部内外を連通する凹部と、多角形形状の下面を有する凸部と、が周方向に交互に形成されており、
前記吸入口部材本体には、前記凸部の下面よりも下方位置において前記燃料タンクの底壁部に面接触状に当接する支持部が設けられている、燃料吸入口部材。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料吸入口部材であって、
前記支持部は、前記吸口部を取り囲む環状に形成されている、燃料吸入口部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料吸入口部材に関する。詳しくは、例えば車両用の燃料供給装置に用いられる燃料吸入口部材に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料吸入口部材の従来例を述べる。
図9は燃料吸入口部材を示す図である。
図9に示すように、燃料タンク110の底壁部112上にブラケット134が固定されている。ブラケット134には、上下方向に延在する上ステー146が設けられている。上ステー146に下ステー148が上下方向に移動可能に設けられている。下ステー148の先端(下端)には燃料吸入口部材136が取り付けられている。上ステー146と燃料吸入口部材136との間には、両者を相反方向へ付勢するコイルスプリング152が介在されている。なお、燃料タンク110は、樹脂製で、燃料がそれぞれ溜まる第1貯留部と第2貯留部とを横並びに有する鞍型のタンクである。第1貯留部には、燃料をエンジン等に供給する燃料ポンプを備えるポンプモジュールが配置されている。ポンプモジュールには、第2貯留部の燃料を第1貯留部に移送するジェットポンプ等が設けられている。燃料吸入口部材136は、第2貯留部に配置されている。
【0003】
燃料吸入口部材136の吸入口部材本体176は、下面に開口する中空筒状の吸口部174、及び、吸口部174の上端部内に連通する接続口178を有する。吸口部174の下端部には、吸口部174内外を連通する凹部172と、燃料タンク110の底壁部112に面接触状に当接する下面を有する凸部173と、が周方向に交互に形成されている。接続口178は、燃料配管138を介して、ポンプモジュールにおけるジェットポンプの燃料導入口(図示略)に接続されている。
【0004】
ポンプモジュールにおけるジェットポンプの駆動により、燃料タンク110の第2貯留部の燃料が、吸口部174の凹部172内を通じて吸入口部材本体176内に吸入される。その燃料は、燃料配管138を介して第1貯留部に移送される。また、コイルスプリング152の付勢(弾性)により、燃料吸入口部材136が燃料タンク110の底壁部112に押し付けられている。このため、燃料タンク110が温度変化等により高さ方向(上下方向)に伸縮変形しても、底壁部112と吸口部174の凸部173との当接状態が維持される。このような燃料吸入口部材136は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−22861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料タンク110の収縮変形時において底壁部112が波状に撓む場合がある。この場合、底壁部112に対して吸口部174の凸部173の下面の角部(特に外側の角部)が点接触状に当接する。また、燃料タンク110の収縮変形時には、コイルスプリング152による燃料吸入口部材136の押し付け力が増大する。したがって、底壁部112に点接触状に当接する凸部173の下面の角部の集中応力が増大し、底壁部112が傷付くおそれがあった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、吸口部の凸部の下面の角部による燃料タンクの底壁部の傷付きを抑制することのできる燃料吸入口部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題は、本発明の燃料吸入口部材により解決することができる。
【0009】
第1の発明は、燃料タンクの底壁部に弾性部材によって押し付けられる吸入口部材本体を備える燃料吸入口部材であって、前記吸入口部材本体は、下面に開口する中空筒状の吸口部を有しており、前記吸口部の下端部には、該吸口部内外を連通する凹部と、多角形形状の下面を有する凸部と、が周方向に交互に形成されており、前記吸入口部材本体には、前記凸部の下面よりも下方位置において前記燃料タンクの底壁部に面接触状に当接する支持部が設けられている、燃料吸入口部材である。
【0010】
第1の発明によると、吸入口部材本体に設けた支持部によって、燃料タンクの底壁部に対する凸部の当接を回避することができる。これにより、吸口部の凸部の下面の角部による燃料タンクの底壁部の傷付きを抑制することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記支持部は、前記吸口部を取り囲む環状に形成されている、燃料吸入口部材である。
【0012】
第2の発明によると、吸口部に支持部をコンパクトに形成することができる。また、燃料タンクの底壁部の変形状態にかかわらず、底壁部に対する支持部の点当接を回避することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の燃料吸入口部材によると、燃料タンクの底壁部に対する凸部の当接を回避することによって、吸口部の凸部の下面の角部による燃料タンクの底壁部の傷付きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態にかかる吸入モジュールを示す斜視図である。
【
図2】吸入モジュールを一部破断して示す右側面図である。
【
図9】従来例にかかる燃料吸入口部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための一実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態では、燃料吸入口部材として、車両用の燃料タンクの吸入モジュールのセンダゲージアダプタを例示する。なお、燃料タンクは、燃料がそれぞれ溜まる第1貯留部と第2貯留部とを横並びに有する鞍型のタンクである。第1貯留部には、燃料をエンジン等に供給する燃料ポンプを備えるポンプモジュールが配置されている。ポンプモジュールには、第2貯留部の燃料を第1貯留部に移送するジェットポンプ等が設けられている。吸入モジュールは、第2貯留部に配置されている。
【0016】
図1は吸入モジュールを示す斜視図、
図2は同じく一部破断して示す右側面図である。なお、図中の矢印は、燃料供給装置の前後左右上下方向を示している。上下方向は、車両の燃料タンクに搭載された状態での重力方向いわゆる天地方向に対応する。また、前後左右方向は、特定するものではない。
【0017】
<吸入モジュールの構成>
吸入モジュールの構成を説明する。
図2に示すように、吸入モジュール10は、燃料タンク12の上壁部13に装着されるいわゆる上付けタイプのものである。燃料タンク12は、上壁部13及び底壁部14を有する中空状の樹脂製の容器である。上壁部13には、丸孔状の開口孔13aが形成されている。
【0018】
吸入モジュール10は、蓋部材16、センダゲージアダプタ18及びセンダゲージ20を備えている(
図1参照)。蓋部材16は、樹脂製で、円板状に形成された蓋本体22を有する。蓋本体22の下面には、円環状の嵌合壁部23が同心状に形成されている。嵌合壁部23は、蓋本体22の外径よりも一回り小さい外径を有する。蓋本体22には、電気コネクタ部24が設けられている。蓋本体22の中央部の下面には、下方へ延びる中空円筒状のガイド筒部25が形成されている。ガイド筒部25は、嵌合壁部23よりも下方へ延びている。
【0019】
センダゲージアダプタ18は、樹脂製のアダプタ本体27を主体として構成されている。アダプタ本体27は、基部28とゲージ取付部29とガイド柱部30と燃料吸入部31とを有する。
図3はセンダゲージアダプタを示す下面図、
図4は
図3のIV−IV線矢視断面図、
図5は
図4のV−V線矢視断面図、
図6は
図4のVI−VI線矢視断面図である。なお、センダゲージアダプタ18は本明細書でいう「燃料吸入口部材」に相当する。また、アダプタ本体27は本明細書でいう「吸入口部材本体」に相当する。
【0020】
図4に示すように、基部28は、水平状をなす上面と下面とを有するブロック状に形成されている(
図1及び
図2参照)。基部28の側面(前面を除く)には、多数の肉抜き部33が凹状に形成されている。
【0021】
図2に示すように、ゲージ取付部29は、基部28の前面に縦壁状に形成されている(
図1参照)。ゲージ取付部29の上部は、基部28の上面よりも上方へ延出されている。ゲージ取付部29の前面側にセンダゲージ20が設置されている。センダゲージ20は、燃料タンク12内の燃料の残量すなわち液面位置を検出する液面検出装置である。
【0022】
ガイド柱部30は、基部28の上面に支柱状に形成されている。ガイド柱部30は、蓋部材16のガイド筒部25内に所定の隙間を隔てて軸方向に相対移動可能に挿入されている。
【0023】
図4に示すように、燃料吸入部31は、連結部35と基筒部36と接続管部37と吸口部38と座部39とを有する。連結部35は、基部28の下面に突出する円柱状に形成されている。基筒部36は、連結部35から下方へ同軸状に突出する円筒状に形成されている。基筒部36は、連結部35の外径よりも大きい内径を有する。このため、基筒部36の上端部は、連結部35の下端部に段付き状に接続されている。また、接続管部37は、基筒部36の一側(例えば、前側斜め右側)から径方向外方へ突出する直管状に形成されている(
図1参照)。接続管部37内は、基筒部36内に連通されている。
【0024】
吸口部38は、基筒部36から下方へ同軸状にかつ下方へ向かって拡径する円錐筒状に形成されている。基筒部36及び吸口部38の内部空間は、下面に開口する燃料吸入通路41となっている。吸口部38の下端部38aは、円筒状に形成されている。その下端部38aには、吸口部38内外を連通する複数(例えば、16個)の凹部43と、凹部43と同数の多角形形状(本実施形態では四角形形状、平行四辺形形状、台形形状等)の下面を有する凸部45と、が周方向に交互に形成されている(
図3参照)。
図7は吸口部の凹部を示す断面図、
図8は吸口部の凸部を示す断面図である。
【0025】
図7及び
図8に示すように、座部39は、吸口部38の下端部38aと同軸状をなしかつその下端部38aを取り囲む円環板状に形成されている。座部39の下面39aは、吸口部38の凸部45の下面45aよりも低い位置に設定されている。また、座部39の上面39bは、凹部43の上面(天井面)43bよりも低い位置に設定されている。
【0026】
座部39の内周部には、凹部43に連通しかつ板厚方向(上下方向)に貫通する内周溝47が形成されている。内周溝47の外周側壁面47aは、座部39の軸線を中心とする一円周線上に沿うように形成されている(
図5参照)。また、座部39の下面のうち、内周溝47の外周側壁面47aを含む一円周線内の部分が、吸口部38の凸部45の下面45aと同一面で形成されている。また、座部39の下面(凸部45の下面45aと同一面をなす部分を除く)は、凸部45の下面45aよりも大きい面積を有する。なお、座部39は本明細書でいう「支持部」に相当する。また、内周溝47は、凹部43と共に吸口部38内外を連通するものであるから凹部43の一部とみなす。
【0027】
図1に示すように、燃料吸入部31の側面には、基部28と座部39との間において上下方向に延在する第1リブ49及び第2リブ50が形成されている。
図5に示すように、第1リブ49は、平面視で接続管部37の軸線と同方向に突出されている。第2リブ50は、平面視で接続管部37の軸線と直交しかつ基筒部36の軸線と直交する方向に突出されている。接続管部37側において、第1リブ49は、接続管部37を間にして上下方向に延在している(
図2参照)。
【0028】
図5に示すように、第1リブ49と座部39との間には、平面視で第2リブ50を間にして第2リブ50と平行をなしかつ第1リブ49と直交する第3リブ51が形成されている。接続管部37側の第1リブ49に直交する第3リブ51の上端部は、接続管部37に接続されている(
図2参照)。また、燃料吸入部31の複数の凸部45のうちの一つおきの凸部45は、第1リブ49、第2リブ50及び第3リブ51のいずれかのリブと接続されている(
図6参照)。
【0029】
図2に示すように、蓋部材16のガイド筒部25とセンダゲージアダプタ18のガイド柱部30との間には、金属製のコイルスプリングからなるスプリング53が嵌合されている。スプリング53の下端部は、センダゲージアダプタ18の基部28の上面に当接、又は、ガイド柱部30の基端部(下端部)に係止されている。また、スプリング53の上端部は、蓋部材16のガイド筒部25内の天井面に当接されている。これにより、蓋部材16とセンダゲージアダプタ18との間にスプリング53が介装されている。スプリング53の付勢(弾性)により、蓋部材16とセンダゲージアダプタ18とが相反方向へ付勢されている。なお、スプリング53は本明細書でいう「弾性部材」に相当する。また、図示はしないが、蓋本体22の下面側において、センダゲージ20の電気配線とつながるリード線は、電気コネクタ部24に電気的に接続されている。
【0030】
吸入モジュール10のセンダゲージアダプタ18の接続管部37は、燃料配管55を介してポンプモジュールにおけるジェットポンプ(図示略)に接続されている。また、電気コネクタ部24には、制御装置(ECU)につながる外部コネクタが接続される。
【0031】
図2に示すように、吸入モジュール10は、燃料タンク12の上壁部13の開口孔13aから挿入され、蓋部材16をスプリング53の付勢に抗して上壁部13に装着されることにより、燃料タンク12に設置される。このとき、蓋部材16の嵌合壁部23が燃料タンク12の開口孔13a内に嵌合されるとともに、蓋本体22の外周部が開口孔13aの孔縁部上に載置される。これにより、燃料タンク12の上壁部13の開口孔13aが閉鎖される。また、スプリング53の付勢によって、センダゲージアダプタ18が燃料タンク12の底壁部14上に押し付けられることにより、座部39が底壁部14に面接触状に当接される。
【0032】
<吸入モジュール10の動作>
ポンプモジュールにおけるジェットポンプの作動により、燃料タンク12の第2貯留部の燃料が、センダゲージアダプタ18の燃料吸入部31の凹部43と内周溝47とによる開口部を通じて燃料吸入通路41内に吸入される。その燃料は、接続管部37から燃料配管55を介して第1貯留部に移送される。また、スプリング53の弾性により、センダゲージアダプタ18が燃料タンク12の底壁部14に押し付けられている。このため、燃料タンク12が温度変化等により高さ方向(上下方向)に伸縮変形しても、底壁部14と座部39との当接状態が維持される。
【0033】
<センダゲージアダプタ18の作用・効果>
センダゲージアダプタ18によると、アダプタ本体27に設けた座部39によって、燃料タンク12の底壁部14に対する凸部45の当接を回避することができる。これにより、吸口部38の凸部45の下面45aの角部による燃料タンク12の底壁部14の傷付きを抑制することができる。
【0034】
また、座部39により燃料タンク12の底壁部14に対する当接面積(接触面積)が増大されることにより、底壁部14に対する座部39の面圧を低減することができる。これにより、燃料タンク12の底壁部14と座部39との間に加わる荷重を分散し、座部39による燃料タンク12の底壁部14の傷付きを抑制することができる。
【0035】
また、座部39は、吸口部38を取り囲む環状に形成されている。したがって、吸口部38に座部39をコンパクトに形成することができる。また、燃料タンク12の底壁部14の変形状態にかかわらず、底壁部14に対する座部39の点当接を回避することができる。
【0036】
[他の実施形態]
本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明の燃料吸入口部材は、車両に限らず、船舶、産業機械等、種々の燃料供給装置に適用してもよい。また、本発明の燃料吸入口部材は、吸入モジュール10に限らず、ポンプモジュールに用いてもよい。また、センダゲージアダプタ18においてゲージ取付部29は省略してもよい。また、座部39は、周方向に断続的に形成してもよい。また、支持部(座部39)は、吸口部38に限らず、基部28に設けてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 吸入モジュール
12 燃料タンク
14 底壁部
18 センダゲージアダプタ(燃料吸入口部材)
20 センダゲージ
27 アダプタ本体(吸入口部材本体)
38 吸口部
39 座部(支持部)
39a 下面
43 凹部
45 凸部
45a 下面
53 スプリング(弾性部材)