(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0004】
有機材料を利用する光電子デバイスは、いくつもの理由から、次第に望ましいものとなりつつある。そのようなデバイスを作製するために使用される材料の多くは比較的安価であるため、有機光電子デバイスは無機デバイスを上回るコスト優位性の可能性を有する。加えて、柔軟性等の有機材料の固有の特性により、該材料は、フレキシブル基板上での製作等の特定用途によく適したものとなり得る。有機光電子デバイスの例は、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池及び有機光検出器を含む。OLEDについて、有機材料は従来の材料を上回る性能の利点を有し得る。例えば、有機放出層が光を放出する波長は、概して、適切なドーパントで容易に調整され得る。
【0005】
OLEDはデバイス全体に電圧が印加されると光を放出する薄い有機膜を利用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明及びバックライティング等の用途において使用するためのますます興味深い技術となりつつある。数種のOLED材料及び構成は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、特許文献1、特許文献2及び特許文献3において記述されている。
【0006】
リン光性放出分子の1つの用途は、フルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイの業界標準は、「飽和」色と称される特定の色を放出するように適合された画素を必要とする。特に、これらの標準は、飽和した赤色、緑色及び青色画素を必要とする。色は、当技術分野において周知のCIE座標を使用して測定することができる。
【0007】
緑色放出分子の一例は、下記の構造:
【化1】
を有する、Ir(ppy)
3と表示されるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウムである。
【0008】
この図面及び本明細書における後出の図面中で、本発明者らは、窒素から金属(ここではIr)への配位結合を直線として描写する。
【0009】
本明細書において使用される場合、用語「有機」は、有機光電子デバイスを製作するために使用され得るポリマー材料及び小分子有機材料を含む。「小分子」は、ポリマーでない任意の有機材料を指し、且つ「小分子」は実際にはかなり大型であってよい。小分子は、いくつかの状況において繰り返し単位を含み得る。例えば、長鎖アルキル基を置換基として使用することは、「小分子」クラスから分子を除去しない。小分子は、例えばポリマー骨格上のペンダント基として、又は該骨格の一部として、ポリマーに組み込まれてもよい。小分子は、コア部分上に構築された一連の化学的シェルからなるデンドリマーのコア部分として役立つこともできる。デンドリマーのコア部分は、蛍光性又はリン光性小分子エミッターであってよい。デンドリマーは「小分子」であってよく、OLEDの分野において現在使用されているデンドリマーはすべて小分子であると考えられている。
【0010】
本明細書において使用される場合、「頂部」は基板から最遠部を意味するのに対し、「底部」は基板の最近部を意味する。第一層が第二層「の上に配置されている」と記述される場合、第一層のほうが基板から遠くに配置されている。第一層が第二層「と接触している」ことが指定されているのでない限り、第一層と第二層との間に他の層があってもよい。例えば、間に種々の有機層があるとしても、カソードはアノード「の上に配置されている」と記述され得る。
【0011】
本明細書において使用される場合、「溶液プロセス可能な」は、溶液又は懸濁液形態のいずれかの液体媒質に溶解、分散若しくは輸送することができ、及び/又は該媒質から堆積することができるという意味である。
【0012】
配位子は、該配位子が放出材料の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合、「光活性」と称され得る。配位子は、該配位子が放出材料の光活性特性に寄与していないと考えられる場合には「補助」と称され得るが、補助配位子は、光活性配位子の特性を変化させることができる。
【0013】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるであろう通り、第一の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第一のエネルギー準位が真空エネルギー準位に近ければ、第二のHOMO又はLUMOエネルギー準位「よりも大きい」又は「よりも高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位と比べて負のエネルギーとして測定されるため、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有するIP(あまり負でないIP)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有する電子親和力(EA)(あまり負でないEA)に相当する。頂部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、材料のLUMOエネルギー準位は、同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりもそのような図の頂部に近いように思われる。
【0014】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるであろう通り、第一の仕事関数がより高い絶対値を有するならば、第一の仕事関数は第二の仕事関数「よりも大きい」又は「よりも高い」。仕事関数は概して真空準位と比べて負数として測定されるため、これは「より高い」仕事関数が更に負であることを意味する。頂部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、「より高い」仕事関数は、真空準位から下向きの方向に遠く離れているものとして例証される。故に、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に準ずる。
【0015】
OLEDについての更なる詳細及び上述した定義は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献4において見ることができる。
【発明の概要】
【0016】
新たな種類の発光材料が提供される。この新たなクラスの材料は、以下の式(I)によって表される、置換イミダゾールカルベン基を含有する配位子L
3と錯体を形成している金属M
1を有する化合物:
【化2】
(I)
[式中、環Bは、N、O及びSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する5員の芳香族複素環であり;環Aは、5員又は6員の炭素環又は複素環であり;R
Aは、モノ、ジ、トリ、テトラ置換又は無置換であることを表し;R
1は、モノ、ジ若しくはトリ置換又は無置換であることを表し;各R
A、R
1及びR
2は、水素、重水素、ハロゲン化物、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択され;任意の2個の隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、該環は、更に置換されていてよく;Z
1は窒素又は炭素であり;且つ、配位子L
3は、他の配位子と連結して、三座、四座、五座又は六座配位子を構成してもよい]
を含む。
【0017】
任意の適切な金属M
1が上記錯体において使用され得る。いくつかの実施形態において、配位子L
3は、Ir、Rh、Re、Ru、Os、Pt、Au及びCuからなる群から選択される金属と錯体を形成している。いくつかの更なる実施形態において、錯体中の金属M
1は、Ir又はPtである。
【0018】
いくつかの更なる実施形態において、錯体は、
【化3】
[式中、A
1、A
2及びA
3は、炭素、窒素、酸素及び硫黄からなる群から独立に選択され、且つ、A
1、A
2及びA
3の少なくとも1つは炭素ではない]からなる群から選択される配位子L
3を含む。他の変数は、上記で提供されている定義を有する。
【0019】
いくつかの更なるそのような実施形態において、錯体は、
【化4】
[式中、A
1及びA
3は、酸素、窒素及び硫黄からなる群から独立に選択され;R
3は、モノ、ジ、トリ若しくはテトラ置換又は無置換であることを表し;R
3は、水素、重水素、ハロゲン化物、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択され;且つ、任意の2個の隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、該環は、更に置換されていてよい]からなる群から選択される配位子L
3を含む。他の変数は、上記で提供されている定義を有する。
【0020】
いくつかの更なるそのような実施形態において、錯体は、
【化5】
からなる群から選択される配位子L
3を含む。
【0021】
式(II)の置換イミダゾールカルベン錯体:
【化6】
(II)
[式中、−L
1−L
2−は、
【化7】
からなる群から選択される二座配位子であり、
ここで、R
a、R
b及びR
cは、モノ、ジ、トリ又はテトラ置換を表し;R
a、R
b及びR
cは、水素、重水素、ハロゲン化物、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組合せからなる群からそれぞれ独立に選択され;R
a、R
b及びR
cの任意の2個の隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、該環は、更に置換されていてよく;且つ、nは、1、2又は3である]も提供される。他の変数は、上記で提供されている定義を有する。
【0022】
式(III)の置換イミダゾールカルベン錯体:
【化8】
(III)
[式中、−L
1−L
2−は二座配位子であり、且つ、mは1又は2である]も提供される。他の変数は、上記で提供されている定義を有する。
【0023】
式(IV)の置換イミダゾールカルベン錯体:
【化9】
(IV)
[式中、−L
1−L
2−は二座配位子であり;Xは、O、S、NR、CR’R”、SiR’R”からなる群から選択され;R、R’及びR”は、アルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群から独立に選択され、ここで、R’及びR”は、連結していてもよく;且つ、任意の2個の隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、該環は、更に置換されていてよい]も提供される。他の変数は、上記で提供されている定義を有する。
【0024】
式(V)の置換イミダゾールカルベン錯体:
【化10】
(V)
[式中、変数は、上記で提供されている定義を有する]
も提供される。
【0025】
式(VI)の置換イミダゾールカルベン錯体:
【化11】
(VI)
[式中、X及びYは、O、S、NR、CR’R”及びSiR’R”からなる群から独立に選択され;R、R’及びR”は、アルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群から独立に選択され;且つ、任意の2個の隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、該環は、更に置換されていてよい]も提供される。他の変数は、上記で提供されている定義を有する。
【0026】
式(VII)の置換イミダゾールカルベン錯体:
【化12】
(VII)
[式中、変数は、上記で提供されている定義を有する]
も提供される。
【0027】
置換イミダゾールカルベン錯体が提供され、該錯体は、
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
からなる群から選択される。
【0028】
置換イミダゾールカルベン錯体が提供され、該錯体は、
【化17】
からなる群から選択される。
【0029】
デバイスも提供される。デバイスは、アノードと、カソードと、アノード及びカソードの間に配置された有機層とを含み得、ここで、該有機層は、先の実施形態のいずれかの化合物(例えば、置換イミダゾールカルベン錯体)を含む。
【0030】
本発明は、任意の特定の種類のデバイスに限定されない。いくつかの実施形態において、デバイスは消費者製品である。いくつかの実施形態において、デバイスは有機発光デバイス(OLED)である。他の実施形態において、デバイスはライティングパネルを含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、デバイスの有機層は放出層である。いくつかのそのような実施形態において、置換イミダゾールカルベン錯体は放出ドーパントである。いくつかの他の実施形態において、置換イミダゾールカルベン錯体は非放出ドーパントである。
【0032】
いくつかの実施形態において、デバイスの有機層は、ホストを更に含む。
【0033】
いくつかのそのような実施形態において、ホストは、ベンゾ縮合チオフェン又はベンゾ縮合フランを含有するトリフェニレンを含み、該ホスト中の任意の置換基は、C
nH
2n+1、OC
nH
2n+1、OAr
1、N(C
nH
2n+1)
2、N(Ar
1)(Ar
2)、CH=CH−C
nH
2n+1、C≡C−C
nH
2n+1、Ar
1、Ar
1−Ar
2、C
nH
2n−Ar
1からなる群から独立に選択される非縮合置換基であるか、又は無置換であり、nは1から10までであり、且つ、Ar
1及びAr
2は、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類似体からなる群から独立に選択される。いくつかのそのような実施形態において、ホストは、
【化18】
並びにそれらの組合せからなる群から選択される化合物である。
【0034】
いくつかの他の実施形態において、ホストは金属錯体を含む。いくつかの更なる実施形態において、ホストは、カルバゾール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、アザカルバゾール、アザ−ジベンゾチオフェン、アザ−ジベンゾフラン及びアザ−ジベンゾセレノフェンからなる群から選択される化学基の少なくとも1つを含む。
【発明を実施するための形態】
【0038】
概して、OLEDは、アノード及びカソードの間に配置され、それらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が印加されると、アノードが正孔を注入し、カソードが電子を有機層(複数可)に注入する。注入された正孔及び電子は、逆帯電した電極にそれぞれ移動する。電子及び正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在電子正孔対である「励起子」が形成される。光は、励起子が緩和した際に、光電子放出機構を介して放出される。いくつかの事例において、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在し得る。熱緩和等の非放射機構が発生する場合もあるが、概して望ましくないとみなされている。
【0039】
初期のOLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第4,769,292号において開示されている通り、その一重項状態から光を放出する放出分子(「蛍光」)を使用していた。蛍光発光は、概して、10ナノ秒未満の時間枠で発生する。
【0040】
ごく最近では、三重項状態から光を放出する放出材料(「リン光」)を有するOLEDが実証されている。参照によりその全体が組み込まれる、Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、395巻、151〜154、1998;(「Baldo−I」)及びBaldoら、「Very high−efficiency green organic light emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl.Phys.Lett.、75巻、3号、4〜6(1999)(「Baldo−II」)。リン光については、参照により組み込まれる米国特許第7,279,704号5〜6段において更に詳細に記述されている。
【0041】
図1は、有機発光デバイス100を示す。図は必ずしも一定の縮尺ではない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子ブロッキング層130、放出層135、正孔ブロッキング層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、カソード160、及び障壁層170を含み得る。カソード160は、第一の導電層162及び第二の導電層164を有する化合物カソードである。デバイス100は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。これらの種々の層の特性及び機能並びに材料例は、参照により組み込まれるUS7,279,704、6〜10段において更に詳細に記述されている。
【0042】
これらの層のそれぞれについて、更なる例が利用可能である。例えば、フレキシブル及び透明基板−アノードの組合せは、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5,844,363号において開示されている。p−ドープされた正孔輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、50:1のモル比でm−MTDATAをF4−TCNQにドープしたものである。放出材料及びホスト材料の例は、参照によりその全体が組み込まれるThompsonらの米国特許第6,303,238号において開示されている。n−ドープされた電子輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、1:1のモル比でBPhenにLiをドープしたものである。参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5,703,436号及び同第5,707,745号は、上を覆う透明の、導電性の、スパッタリング蒸着したITO層を持つMg:Ag等の金属の薄層を有する化合物カソードを含むカソードの例を開示している。ブロッキング層の理論及び使用は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,097,147号及び米国特許出願公開第2003/0230980号において更に詳細に記述されている。注入層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において提供されている。保護層についての記述は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において見ることができる。
【0043】
図2は、反転させたOLED200を示す。デバイスは、基板210、カソード215、放出層220、正孔輸送層225、及びアノード230を含む。デバイス200は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。最も一般的なOLED構成はアノードの上に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下に配置されたカソード215を有するため、デバイス200は「反転させた」OLEDと称されることがある。デバイス100に関して記述されたものと同様の材料を、デバイス200の対応する層において使用してよい。
図2は、いくつかの層が如何にしてデバイス100の構造から省略され得るかの一例を提供するものである。
【0044】
図1及び2において例証されている単純な層構造は、非限定的な例として提供されるものであり、本発明の実施形態は多種多様な他の構造に関連して使用され得ることが理解される。記述されている特定の材料及び構造は、事実上例示的なものであり、他の材料及び構造を使用してよい。機能的なOLEDは、記述されている種々の層を様々な手法で組み合わせることによって実現され得るか、又は層は、設計、性能及びコスト要因に基づき、全面的に省略され得る。具体的には記述されていない他の層も含まれ得る。具体的に記述されているもの以外の材料を使用してよい。本明細書において提供されている例の多くは、単一材料を含むものとして種々の層を記述しているが、ホスト及びドーパントの混合物等の材料の組合せ、又はより一般的には混合物を使用してよいことが理解される。また、層は種々の副層を有してもよい。本明細書における種々の層に与えられている名称は、厳しく限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し、正孔を放出層220に注入し、正孔輸送層又は正孔注入層として記述され得る。一実施形態において、OLEDは、カソード及びアノードの間に配置された「有機層」を有するものとして記述され得る。有機層は単層を含んでいてよく、又は、例えば
図1及び2に関して記述されている通りの異なる有機材料の多層を更に含んでいてよい。
【0045】
参照によりその全体が組み込まれるFriendらの米国特許第5,247,190号において開示されているもののようなポリマー材料で構成されるOLED(PLED)等、具体的には記述されていない構造及び材料を使用してもよい。更なる例として、単一の有機層を有するOLEDが使用され得る。OLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第5,707,745号において記述されている通り、積み重ねられてよい。OLED構造は、
図1及び2において例証されている単純な層構造から逸脱してよい。例えば、基板は、参照によりその全体が組み込まれる、Forrestらの米国特許第6,091,195号において記述されている通りのメサ構造及び/又はBulovicらの米国特許第5,834,893号において記述されている通りのくぼみ構造等、アウトカップリングを改良するための角度のついた反射面を含み得る。
【0046】
別段の規定がない限り、種々の実施形態の層のいずれも、任意の適切な方法によって堆積され得る。有機層について、好ましい方法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,013,982号及び同第6,087,196号において記述されているもの等の熱蒸発、インクジェット、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第6,337,102号において記述されているもの等の有機気相堆積(OVPD)、並びに参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願第10/233,470号において記述されているもの等の有機気相ジェットプリンティング(OVJP)による堆積を含む。他の適切な堆積法は、スピンコーティング及び他の溶液ベースのプロセスを含む。溶液ベースのプロセスは、好ましくは、窒素又は不活性雰囲気中で行われる。他の層について、好ましい方法は熱蒸発を含む。好ましいパターニング法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,294,398号及び同第6,468,819号において記述されているもの等のマスク、冷間圧接を経由する堆積、並びにインクジェット及びOVJD等の堆積法のいくつかに関連するパターニングを含む。他の方法を使用してもよい。堆積する材料は、特定の堆積法と適合するように修正され得る。例えば、分枝鎖状又は非分枝鎖状であり、且つ好ましくは少なくとも3個の炭素を含有するアルキル及びアリール基等の置換基は、溶液プロセシングを受ける能力を増強するために、小分子において使用され得る。20個以上の炭素を有する置換基を使用してよく、3〜20個の炭素が好ましい範囲である。非対称構造を持つ材料は、対称構造を有するものよりも良好な溶液プロセス性を有し得、これは、非対称材料のほうが再結晶する傾向が低くなり得るからである。溶液プロセシングを受ける小分子の能力を増強するために、デンドリマー置換基が使用され得る。
【0047】
本発明の実施形態に従って製作されたデバイスは、障壁層を更に含んでいてよい。障壁層の1つの目的は、電極及び有機層を、水分、蒸気及び/又はガス等を含む環境における有害な種への損傷性暴露から保護することである。障壁層は、基板、電極の上、下若しくは隣に、又はエッジを含むデバイスの任意の他の部分の上に堆積し得る。障壁層は、単層又は多層を含んでいてよい。障壁層は、種々の公知の化学気相堆積技術によって形成され得、単相を有する組成物及び多相を有する組成物を含み得る。任意の適切な材料又は材料の組合せを障壁層に使用してよい。障壁層は、無機若しくは有機化合物又は両方を組み込み得る。好ましい障壁層は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,968,146号、PCT特許出願第PCT/US2007/023098号及び同第PCT/US2009/042829号において記述されている通りの、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物を含む。「混合物」とみなされるためには、障壁層を構成する前記のポリマー及び非ポリマー材料は、同じ反応条件下で及び/又は同時に堆積されるべきである。ポリマー材料対非ポリマー材料の重量比は、95:5から5:95の範囲内となり得る。ポリマー材料及び非ポリマー材料は、同じ前駆体材料から作成され得る。一例において、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物は、ポリマーケイ素及び無機ケイ素から本質的になる。
【0048】
本発明の実施形態に従って製作されたデバイスは、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニター、医療モニター、テレビ、掲示板、屋内若しくは屋外照明及び/又は信号送信用のライト、ヘッドアップディスプレイ、完全透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンター、電話、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダー、ファインダー、マイクロディスプレイ、車、大面積壁、劇場又はスタジアムのスクリーン、或いは看板を含む多種多様な消費者製品に組み込まれ得る。パッシブマトリックス及びアクティブマトリックスを含む種々の制御機構を使用して、本発明に従って製作されたデバイスを制御することができる。デバイスの多くは、摂氏18度から摂氏30度、より好ましくは室温(摂氏20〜25度)等、ヒトに快適な温度範囲内での使用が意図されている。
【0049】
本明細書において記述されている材料及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有し得る。例えば、有機太陽電池及び有機光検出器等の他の光電子デバイスが、該材料及び構造を用い得る。より一般的には、有機トランジスタ等の有機デバイスが、該材料及び構造を用い得る。
【0050】
用語ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリルキル(arylkyl)、複素環式基、アリール、芳香族基及びヘテロアリールは当技術分野において公知であり、参照により本明細書に組み込まれるUS7,279,704、31〜32段において定義されている。
【0051】
金属カルベン錯体は、広い三重項エネルギーギャップを有し、このことが、該錯体をリン光性OLEDにおける青色エミッターとして適切なものにしている。しかしながら、これらの錯体は、ある特定のデバイスにおいて用いられる際に不安定性を呈することがあり、それにより、稼働寿命の低減につながる。理論に縛られることなく、そのような不安定性は、長い励起遅延寿命、エネルギー準位の不一致、及び平衡していない電子/正孔流束(fluexes)を含むがこれらに限定されない多様な要因に起因し得ると考えられている。イミダゾール−カルベン部分上における置換は、錯体のHOMO/LUMOエネルギー準位、その発光スペクトル、及びその発光量子収率に影響を及ぼし得、それにより、エネルギー準位、発光スペクトル、及び電荷輸送特性を微調整することが可能になる。
【0052】
新たな金属錯体が提供され、該金属は、置換イミダゾールカルベン部分を含有する少なくとも1つの配位子と錯体を形成している。そのような錯体は、OLEDにおいて有利に使用され得る。特定の置換イミダゾールカルベン錯体は、式(I)の配位子L
3と錯体を形成している金属M
1を含む化合物:
【化19】
(I)
[式中、環Bは、N、O及びSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する5員の芳香族複素環であり;環Aは、5員又は6員の炭素環又は複素環であり;R
Aは、モノ、ジ、トリ、テトラ置換又は無置換であることを表し;R
1は、モノ、ジ若しくはトリ置換又は無置換であることを表し;各R
A、R
1及びR
2は、水素、重水素、ハロゲン化物、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択され;任意の2個の隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、該環は、更に置換されていてよく;Z
1は窒素又は炭素であり;且つ、配位子L
3は、他の配位子と連結して、三座、四座、五座又は六座配位子を構成してもよい]である。
【0053】
任意の適切な金属M
1が上記錯体において使用され得る。いくつかの実施形態において、配位子L
3は、Ir、Rh、Re、Ru、Os、Pt、Au及びCuからなる群から選択される金属Mと錯体を形成している。いくつかの更なる実施形態において、錯体中の金属M
1は、Ir又はPtである。
【0054】
いくつかの更なる実施形態において、錯体は、
【化20】
[式中、A
1、A
2及びA
3は、炭素、窒素、酸素及び硫黄からなる群から独立に選択され、且つ、A
1、A
2及びA
3の少なくとも1つは炭素ではない]からなる群から選択される配位子L
3を含む。他の変数は、上記で提供されている定義を有する。
【0055】
いくつかの更なるそのような実施形態において、錯体は、
【化21】
[式中、A
1及びA
3は、酸素、窒素及び硫黄からなる群から独立に選択され;R
3は、モノ、ジ、トリ若しくはテトラ置換又は無置換であることを表し;R
3は、水素、重水素、ハロゲン化物、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択され;且つ、任意の2個の隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、該環は、更に置換されていてよい]からなる群から選択される配位子L
3を含む。他の変数は、上記で提供されている定義を有する。
【0056】
いくつかの更なるそのような実施形態において、錯体は、
【化22】
からなる群から選択される配位子L
3を含む。
【0057】
式(II)の置換イミダゾールカルベン錯体:
【化23】
(II)
[式中、−L
1−L
2−は、
【化24】
からなる群から選択される二座配位子であり、
ここで、R
a、R
b及びR
cは、モノ、ジ、トリ又はテトラ置換を表し;R
a、R
b及びR
cは、水素、重水素、ハロゲン化物、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組合せからなる群からそれぞれ独立に選択され;R
a、R
b及びR
cの任意の2個の隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、該環は、更に置換されていてよく;且つ、nは、1、2又は3である]も提供される。他の変数は、上記で提供されている定義を有する。
【0058】
式(III)の置換イミダゾールカルベン錯体:
【化25】
(III)
[式中、−L
1−L
2−は二座配位子であり、且つ、mは1又は2である]も提供される。他の変数は、上記で提供されている定義を有する。
【0059】
式(IV)の置換イミダゾールカルベン錯体:
【化26】
(IV)
[式中、−L
1−L
2−は二座配位子であり;Xは、O、S、NR、CR’R”、SiR’R”からなる群から選択され;R、R’及びR”は、アルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群から独立に選択され、ここで、R’及びR”は、連結していてもよく;且つ、任意の2個の隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、該環は、更に置換されていてよい]も提供される。他の変数は、上記で提供されている定義を有する。
【0060】
式(V)の置換イミダゾールカルベン錯体:
【化27】
(V)
[式中、変数は、上記で提供されている定義を有する]も提供される。
【0061】
式(VI)の置換イミダゾールカルベン錯体:
【化28】
(VI)
[式中、X及びYは、O、S、NR、CR’R”及びSiR’R”からなる群から独立に選択され;R、R’及びR”は、アルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群から独立に選択され;且つ、任意の2個の隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、該環は、更に置換されていてよい]も提供される。他の変数は、上記で提供されている定義を有する。
【0062】
式(VII)の置換イミダゾールカルベン錯体:
【化29】
(VII)
[式中、変数は、上記で提供されている定義を有する]も提供される。
【0063】
置換イミダゾールカルベン錯体が提供され、該錯体は、
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
からなる群から選択される。
【0064】
置換イミダゾールカルベン錯体が提供され、該錯体は、
【化34】
からなる群から選択される。
【0065】
デバイスも提供される。デバイスは、アノードと、カソードと、アノード及びカソードの間に配置された有機層とを含み得、ここで、該有機層は、先の実施形態のいずれかの化合物(例えば、置換イミダゾールカルベン錯体)を含む。
【0066】
本発明は、任意の特定の種類のデバイスに限定されない。いくつかの実施形態において、デバイスは消費者製品である。いくつかの実施形態において、デバイスは有機発光デバイス(OLED)である。他の実施形態において、デバイスはライティングパネルを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、デバイスの有機層は放出層である。いくつかのそのような実施形態において、置換イミダゾールカルベン錯体は放出ドーパントである。いくつかの他の実施形態において、置換イミダゾールカルベン錯体は非放出ドーパントである。
【0068】
いくつかの実施形態において、デバイスの有機層は、ホストを更に含む。
【0069】
いくつかのそのような実施形態において、ホストは、ベンゾ縮合チオフェン又はベンゾ縮合フランを含有するトリフェニレンを含み、該ホスト中の任意の置換基は、C
nH
2n+1、OC
nH
2n+1、OAr
1、N(C
nH
2n+1)
2、N(Ar
1)(Ar
2)、CH=CH−C
nH
2n+1、C≡C−C
nH
2n+1、Ar
1、Ar
1−Ar
2、C
nH
2n−Ar
1からなる群から独立に選択される非縮合置換基であるか、又は無置換であり、nは1から10までであり、且つ、Ar
1及びAr
2は、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類似体からなる群から独立に選択される。いくつかのそのような実施形態において、ホストは、
【化35】
並びにそれらの組合せからなる群から選択される化合物である。
【0070】
いくつかの他の実施形態において、ホストは金属錯体を含む。いくつかの更なる実施形態において、ホストは、カルバゾール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、アザカルバゾール、アザ−ジベンゾチオフェン、アザ−ジベンゾフラン及びアザ−ジベンゾセレノフェンからなる群から選択される化学基の少なくとも1つを含む。
【0071】
他の材料との組合せ
有機発光デバイス中の特定の層に有用として本明細書において記述されている材料は、デバイス中に存在する多種多様な他の材料と組み合わせて使用され得る。例えば、本明細書において開示されている化合物は、多種多様なホスト、輸送層、ブロッキング層、注入層、電極、及び存在し得る他の層と併せて使用され得る。以下で記述又は参照される材料は、本明細書において開示されている化合物と組み合わせて有用となり得る材料の非限定的な例であり、当業者であれば、組み合わせて有用となり得る他の材料を特定するための文献を容易に閲覧することができる。
【0072】
本発明において使用される正孔注入/輸送材料は特に限定されず、その化合物が正孔注入/輸送材料として典型的に使用されるものである限り、任意の化合物を使用してよい。材料の例は、フタロシアニン又はポルフィリン誘導体;芳香族アミン誘導体;インドロカルバゾール誘導体;フッ化炭化水素を含有するポリマー;伝導性ドーパントを持つポリマー;PEDOT/PSS等の導電性ポリマー;ホスホン酸及びシラン誘導体等の化合物に由来する自己集合モノマー;MoO
x等の金属酸化物誘導体;1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル等のp型半導体有機化合物;金属錯体、並びに架橋性化合物を含むがこれらに限定されない。
【0073】
HIL又はHTL中に使用される芳香族アミン誘導体の例は、下記の一般構造:
【化36】
を含むがこれらに限定されない。
【0074】
Ar
1からAr
9のそれぞれは、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレン等の芳香族炭化水素環式化合物からなる群;ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン及びセレノフェノジピリジン等の芳香族複素環式化合物からなる群;並びに芳香族炭化水素環式基及び芳香族複素環式基から選択される同じ種類又は異なる種類の基である2から10個の環式構造単位からなる群から選択され、且つ、直接的に、又は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位及び脂肪族環式基の少なくとも1つを介して、互いに結合している。ここで、各Arは、水素、重水素、ハロゲン化物、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組合せからなる群から選択される置換基によって更に置換されている。
【0075】
一態様において、Ar
1からAr
9は、
【化37】
からなる群から独立に選択される。
【0076】
kは1から20までの整数であり;X
1からX
8はC(CHを含む)又はNであり;Ar
1は、上記で定義したものと同じ基を有する。
【0077】
HIL又はHTL中に使用される金属錯体の例は、下記の一般式:
【化38】
を含むがこれに限定されない。
【0078】
Mは、40より大きい原子量を有する金属であり;(Y
1−Y
2)は二座配位子であり、Y
1及びY
2は、C、N、O、P及びSから独立に選択され;Lは補助配位子であり;mは、1から金属に付着し得る配位子の最大数までの整数値であり;且つ、m+nは、金属に付着し得る配位子の最大数である。
【0079】
一態様において、(Y
1−Y
2)は2−フェニルピリジン誘導体である。
【0080】
別の態様において、(Y
1−Y
2)はカルベン配位子である。
【0081】
別の態様において、Mは、Ir、Pt、Os及びZnから選択される。
【0082】
更なる態様において、金属錯体は、約0.6V未満のFc
+/Fcカップルに対して、溶液中で最小酸化電位を有する。
【0083】
上述したホスト材料に加えて、デバイスは、他のホスト材料を更に含み得る。そのような他のホスト材料の例は特に限定されず、ホストの三重項エネルギーがドーパントのものより大きい限り、任意の金属錯体又は有機化合物を使用してよい。以下の表では、種々の色を放出するデバイスに好ましいものとしてホスト材料を分類しているが、三重項の基準が満たされている限り、任意のホスト材料を任意のドーパントとともに使用してよい。
【0084】
ホストとして使用される金属錯体の例は、下記の一般式:
【化39】
を有することが好ましい。
【0085】
Mは金属であり;(Y
3−Y
4)は二座配位子であり、Y
3及びY
4は、C、N、O、P及びSから独立に選択され;Lは補助配位子であり;mは、1から金属に付着し得る配位子の最大数までの整数値であり;且つ、m+nは、金属に付着し得る配位子の最大数である。
【0086】
一態様において、金属錯体は、
【化40】
である。
【0087】
(O−N)は、原子O及びNに配位された金属を有する二座配位子である。
【0088】
別の態様において、Mは、Ir及びPtから選択される。
【0089】
更なる態様において、(Y
3−Y
4)はカルベン配位子である。
【0090】
ホストとして使用される有機化合物の例は、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレン等の芳香族炭化水素環式化合物からなる群;ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン及びセレノフェノジピリジン等の芳香族複素環式化合物からなる群;並びに芳香族炭化水素環式基及び芳香族複素環式基から選択される同じ種類又は異なる種類の基である2から10個の環式構造単位からなる群から選択され、且つ、直接的に、又は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位及び脂肪族環式基の少なくとも1つを介して、互いに結合している。ここで、各基は、水素、重水素、ハロゲン化物、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組合せからなる群から選択される置換基によって更に置換されている。
【0091】
一態様において、ホスト化合物は、分子中に下記の群:
【化41】
の少なくとも1つを含有する。
【0092】
R
1からR
7は、水素、重水素、ハロゲン化物、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択され、それがアリール又はヘテロアリールである場合、上記で言及したArのものと同様の定義を有し;kは0から20までの整数であり;X
1からX
8はC(CHを含む)又はNから選択され;且つZ
1及びZ
2はNR
1、O又はSから選択される。
【0093】
正孔ブロッキング層(HBL)を使用して、放出層から出る正孔及び/又は励起子の数を低減させることができる。デバイスにおけるそのようなブロッキング層の存在は、ブロッキング層を欠く同様のデバイスと比較して大幅に高い効率をもたらし得る。また、ブロッキング層を使用して、放出をOLEDの所望の領域に制限することもできる。
【0094】
一態様において、HBL中に使用される化合物は、上述したホストとして使用されるものと同じ分子又は同じ官能基を含有する。
【0095】
別の態様において、HBL中に使用される化合物は、分子中に下記の群:
【化42】
の少なくとも1つを含有する。
【0096】
kは0から20までの整数であり;Lは補助配位子であり、mは1から3までの整数である。
【0097】
電子輸送層(ETL)は、電子を輸送することができる材料を含み得る。電子輸送層は、真性である(ドープされていない)か、又はドープされていてよい。ドーピングを使用して、伝導性を増強することができる。ETL材料の例は特に限定されず、電子を輸送するために典型的に使用されるものである限り、任意の金属錯体又は有機化合物を使用してよい。
【0098】
一態様において、ETL中に使用される化合物は、分子中に下記の群:
【化43】
の少なくとも1つを含有する。
【0099】
R
1は、水素、重水素、ハロゲン化物、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組合せからなる群から選択され、それがアリール又はヘテロアリールである場合、上記で言及したArのものと同様の定義を有し;Ar
1からAr
3は、上記で言及したArのものと同様の定義を有し;kは0から20までの整数であり;X
1からX
8はC(CHを含む)又はNから選択される。
【0100】
別の態様において、ETL中に使用される金属錯体は、下記の一般式:
【化44】
を含有するがこれらに限定されない。
【0101】
(O−N)又は(N−N)は、原子O、N又はN、Nに配位された金属を有する二座配位子であり;Lは補助配位子であり;mは、1から金属に付着し得る配位子の最大数までの整数値である。
【0102】
OLEDデバイスの各層中に使用される任意の上記で言及した化合物において、水素原子は、部分的に又は完全に重水素化されていてよい。故に、メチル、フェニル、ピリジル等であるがこれらに限定されない任意の具体的に挙げられている置換基は、それらの重水素化されていない、部分的に重水素化された、及び完全に重水素化されたバージョンを包含する。同様に、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール等であるがこれらに限定されない置換基のクラスは、それらの重水素化されていない、部分的に重水素化された、及び完全に重水素化されたバージョンも包含する。
【0103】
本明細書において開示されている材料に加えて及び/又はそれらと組み合わせて、多くの正孔注入材料、正孔輸送材料、ホスト材料、ドーパント材料、励起子/正孔ブロッキング層材料、電子輸送及び電子注入材料がOLEDにおいて使用され得る。OLED中で本明細書において開示されている材料と組み合わせて使用され得る材料の非限定的な例を、以下の表1に収載する。表1は、材料の非限定的なクラス、各クラスについての化合物の非限定的な例、及び該材料を開示している参考文献を収載する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【表1-19】
【表1-20】
【表1-21】
【表1-22】
【0105】
置換イミダゾールカルベン錯体のいくつかは、次の通りに合成した。
【0107】
イリジウムヘテロレプティック化合物
【化46】
【0108】
氷酢酸(140ml)中の3−ブロモベンゾ[b]チオフェン(40g、190mmol)の溶液に、氷酢酸(40mL)中の硝酸(74ml、1760mmol)の溶液を45分間かけて添加した。反応混合物を室温で5時間撹拌した後、水でクエンチした。沈殿物を濾過によって単離し、水で洗浄し、酢酸エチル/ヘキサン(1/1、v/v)から再結晶させて、3−ブロモ−2−ニトロベンゾ[b]チオフェン(35g、72%)を黄色結晶として産出した。
【化47】
【0109】
DMF(150ml)中の、3−ブロモ−2−ニトロベンゾ[b]チオフェン(14g、54mmol)、アニリン(14ml、154mmol)及びトリエチルアミン(11ml、79mmol)の混合物溶液を、120℃で30分間加熱した後、水でクエンチした。固体を濾過によって単離し、水で洗浄し、DCM/ヘキサンから再結晶させて、2−ニトロ−N−フェニルベンゾ[b]チオフェン−3−アミン(14g、96%)を黄色固体として産出した。
【化48】
【0110】
酢酸(200ml)及び水(20ml)中の2−ニトロ−N−フェニルベンゾ[b]チオフェン−3−アミン(13g、48mmol)の溶液に、鉄粉(14g、250mmol)を小分けにして添加した。室温で2時間撹拌した後、それをセライトのショートプラグに通して濾過し、DCMで洗浄した。合わせた濾液を水及び炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。溶媒を蒸発除去したら、ヘキサン/DCM(4/1、v/v)を溶離液として用いるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって残留物を精製して、N
3−フェニルベンゾ[b]チオフェン−2,3−ジアミン(7.5g、65%)を白色固体として産出した。
【化49】
【0111】
トリメトキシメタン(200ml)中のN
3−フェニルベンゾ[b]チオフェン−2,3−ジアミン(16g、66.7mmol)の溶液に、ギ酸(1.5ml、42.3mmol)を室温で添加した。その後、反応混合物を120℃で6時間加熱した。室温に冷却した後、それをNaHCO
3水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。溶媒を蒸発除去したら、ヘキサン/EtOAc(95/5、v/v)を溶離液として用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーによって残留物を精製して、1−フェニル−1H−ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]イミダゾール(9.0g、54%)を固体として産出した。
【化50】
【0112】
EtOAc(100ml)中の1−フェニル−1H−ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]イミダゾール(4g、16mmol)及びヨウ化メチル(11.36g、80mmol)の溶液を、室温で48時間撹拌した。沈殿物を濾過によって単離し、EtOAcで徹底的に洗浄して、3−メチル−1−フェニル−1H−ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]イミダゾール−3−イウムヨージド(5.52g、88%)を白色固体として産出した。
【化51】
【0113】
アセトニトリル(150ml)中の3−メチル−1−フェニル−1H−ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]イミダゾール−3−イウムヨージド(2.5g、6.37mmol)及びAg
2O(0.738g、3.19mmol)の混合物を、窒素下、室温で終夜撹拌した。溶媒を蒸発除去したら、二量体(3.16g、1.89mmol)及びTHF(150ml)を導入し、反応混合物を窒素下で終夜還流させた。室温に冷却した後、それをセライトのショートプラグに通して濾過し、固体をDCMで洗浄した。合わせた濾液を蒸発させ、ヘキサン/DCM(9/1、v/v)を溶離液として用いるTEA処理したシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、mer形態のIrヘテロレプティック化合物(3.0g、75%)を黄色固体として産出した。
【化52】
【0114】
mer形態の生成物(2.0g、1.88mmol)をDMSO(150ml)に溶解し、窒素下で2時間、UV光(360nm)を照射した。減圧下で溶媒を蒸発除去したら、ヘキサンを溶離液として用いるTEA処理したシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー、続いてヘキサン及びメタノールを連続的に用いる抽出によって残留物を精製して、fac形態の生成物(1.4g、70%)を、化合物1として同定される黄色固体として産出した。
【0116】
化合物1及び比較化合物(CC−1)を、B3LYP/cep−31g関数及び基底系でGaussianソフトウェアパッケージを使用するDFT計算による調査に供した。化合物1は青色を放出する2.67eV(464nm)の三重項エネルギー(T1)を有するのに対し、CC−1は黄色を放出する2.24eV(552nm)のT1を有することが分かった。化合物1のT1増強は、イミダゾール環と縮合した5員の複素環チエノ環に起因する。その一方で、CC−1は、イミダゾール環と縮合したフェニル環を有し、三重項エネルギーの低下につながる。高い三重項エネルギーは短波長領域における放出に有益であるため、式Iの配位子を含有する金属錯体は、5員の複素環を有さないものよりも有利であると結論付けられる。
【0119】
デバイス例は、高真空(<10
−7トール)熱蒸発によって製作した。アノード電極は800Åのインジウムスズ酸化物(ITO)である。カソードは、10ÅのLiF、続いて1,000ÅのAlからなるものであった。デバイスは、製作直後に、窒素グローブボックス(<1ppmのH
2O及びO
2)中、エポキシ樹脂で密閉したガラスの蓋でカプセル化されており、水分ゲッターをパッケージの内側に組み込んだ。
【0120】
使用されるOLEDデバイスの有機積層は、下記の構造を有する:ITO表面から、正孔注入層としての100ÅのLG101(LG Chem)、正孔輸送層(HTL)としての、2重量パーセントのAlqをドープした300ÅのNPD、放出層(EML)としての、15重量パーセントの化合物1をドープした300Åの化合物H、ブロッキング層(BL)としての50Åの化合物H、及び電子輸送層(ETL)としての400ÅのAlq。
【化54】
【0121】
7.4Vの駆動電圧下で、デバイスは、10mA/cm
2の電流密度及び1931CIE座標(0.195,0.322)を持つ空色発光及び0.8cd/Aの電流効率を実現する。
【0122】
本明細書において記述されている種々の実施形態は、単なる一例としてのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。例えば、本明細書において記述されている材料及び構造の多くは、本発明の趣旨から逸脱することなく、他の材料及び構造に置き換えることができる。したがって、特許請求されている通りの本発明は、当業者には明らかとなるように、本明細書において記述されている特定の例及び好ましい実施形態からの変形形態を含み得る。なぜ本発明が作用するのかについての種々の理論は限定を意図するものではないことが理解される。