(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6740287
(24)【登録日】2020年7月28日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】異種金属接合用ツール
(51)【国際特許分類】
B23K 9/23 20060101AFI20200730BHJP
B25J 9/06 20060101ALI20200730BHJP
B23K 9/007 20060101ALI20200730BHJP
B23K 9/235 20060101ALI20200730BHJP
B23K 9/12 20060101ALI20200730BHJP
B23K 103/18 20060101ALN20200730BHJP
【FI】
B23K9/23 H
B25J9/06 B
B23K9/007
B23K9/235 Z
B23K9/12 331J
B23K103:18
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-128375(P2018-128375)
(22)【出願日】2018年7月5日
(65)【公開番号】特開2020-6390(P2020-6390A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年12月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 俊一
【審査官】
竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−226698(JP,A)
【文献】
米国特許第3095951(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 − 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄製の第1金属板の上に非鉄金属製の第2金属板を積層状態に配置したワークの表面に、前記第2金属板を板厚方向に貫通して設けられた貫通孔と同軸にリング状の鉄製の接合補助部材を配置して、該接合補助部材の内孔に向かってアーク溶接を行う異種金属接合用ツールであって、
ロボットの先端に取り付けられるベースと、
該ベースに取り付けられたアーク溶接トーチと、
前記ベースに設けられ、前記アーク溶接トーチの前方における接合位置に、前記内孔を配置して前記接合補助部材を該接合補助部材の径方向に位置決め状態に保持する位置決め機構と、
該位置決め機構により保持された前記接合補助部材を該接合補助部材の外周縁近傍において厚さ方向に押圧する押圧機構とを備える異種金属接合用ツール。
【請求項2】
前記接合補助部材を、前記接合位置に供給する補助部材供給部を備え、
前記位置決め機構が、前記補助部材供給部により供給されて来た前記接合補助部材を、押圧する方向に移動可能に収容するガイド孔を有し、
該ガイド孔が、前記アーク溶接トーチの前方に向かって漸次先細になるテーパ内面を有する請求項1に記載の異種金属接合用ツール。
【請求項3】
前記押圧機構が、前記アーク溶接トーチにより供給される溶接ワイヤを挿入可能な中央孔を有し、前記接合位置に供給された前記接合補助部材の外周縁近傍に軸方向の端面が対向配置させられる筒状の押圧片と、該押圧片を前記軸方向に移動させるアクチュエータとを備える請求項1または請求項2に記載の異種金属接合用ツール。
【請求項4】
前記アーク溶接トーチによりアーク溶接が行われるときに、前記押圧片が前記接合補助部材を厚さ方向に押圧した状態に維持する請求項3に記載の異種金属接合用ツール。
【請求項5】
前記第2金属板に形成された前記貫通孔を検出するカメラを備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の異種金属接合用ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種金属接合用ツールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄製の第1金属板の上に非鉄金属製の第2金属板を積層状態に配置して溶接により接合する接合方法が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
この接合方法は、第1金属板および第2金属板にそれぞれ板厚方向に貫通する貫通孔を設け、貫通孔を一致させて積層状態に配置した第2金属板の上にリング状の接合補助部材を貫通孔に同軸に配置した状態で、アーク溶接によってフィラー材および接合補助部材を溶融させて貫通孔を埋めることにより、異種金属からなる第1金属板と第2金属板とを積層状態に接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−34166号公報
【特許文献2】特開2018−51570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際の溶接現場においては、種々の位置および姿勢に配置される接合箇所において上記接合方法による接合作業を自動化により実施することが望まれている。
本発明は、異種金属からなる積層状態の2枚の金属板を種々の位置および姿勢において自動的に接合することができる異種金属接合用ツールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、鉄製の第1金属板の上に非鉄金属製の第2金属板を積層状態に配置したワークの表面に、前記第2金属板を板厚方向に貫通して設けられた貫通孔と同軸にリング状の鉄製の接合補助部材を配置して、該接合補助部材の内孔に向かってアーク溶接を行う異種金属接合用ツールであって、ロボットの先端に取り付けられるベースと、該ベースに取り付けられたアーク溶接トーチと、前記ベースに設けられ、前記アーク溶接トーチの前方における接合位置に、前記内孔を配置して前記接合補助部材を
該接合補助部材の径方向に位置決め状態に保持する位置決め機構と、該位置決め機構により保持された前記接合補助部材を
該接合補助部材の外周縁近傍において厚さ方向に押圧する押圧機構とを備える異種金属接合用ツールである。
【0006】
本態様によれば、鉄製の第1金属板の上に非鉄金属製の第2金属板を積層状態に重ね合わせたワークに対し、ロボットを作動させてベースを移動し、ベースに設けられたアーク溶接トーチを第2金属板の貫通孔に対向する位置に配置すると、位置決め機構の作動により、リング状の接合補助部材がアーク溶接トーチの前方における接合位置に内孔を配置して、貫通孔に対して径方向に位置決め状態に保持される。この後に、押圧機構を作動させ、接合補助部材を厚さ方向に押圧することにより、接合補助部材が、第2金属板の表面に押し付けられる。
【0007】
この状態で、アーク溶接トーチを作動させ、溶接ワイヤを接合補助部材の内孔に挿入してアークを発生させることにより、溶接ワイヤおよび接合補助部材の溶融金属が接合補助部材の内孔および第2金属板の貫通孔を埋めるまで充填され、鉄製の接合補助部材と鉄製の金属板とが溶接により接合される。すなわち、鉄製の第1金属板に積層されている非鉄金属製の第2金属板が、第1金属板の表面に積層状態を維持する形態で接合される。
【0008】
この場合に、押圧機構は、溶接ワイヤおよび接合補助部材の溶融金属が接触しない接合補助部材の外周縁近傍を押圧するので、押圧機構が接合補助部材と溶着することが防止され、異なる接合補助部材を用いた複数箇所の接合作業を繰り返し行うことができる。これにより、接合補助部材を用いた鉄製の第1金属板と非鉄金属製の第2金属板との接合作業を自動化することができる。
【0009】
上記態様においては、前記接合補助部材を、前記接合位置に供給する補助部材供給部を備え、前記位置決め機構が、前記補助部材供給部により供給されて来た前記接合補助部材を、押圧する方向に移動可能に収容するガイド孔を有し、該ガイド孔が、前記アーク溶接トーチの前方に向かって漸次先細になるテーパ内面を有していてもよい。
【0010】
この構成により、補助部材供給部により接合補助部材が接合位置に供給されると、位置決め機構のガイド孔内に接合補助部材が収容される。この状態で、押圧機構を作動させることにより、接合補助部材が押圧されて、アーク溶接トーチの前方に向かって移動させられる。
【0011】
ガイド孔がテーパ内面を有しているので、接合補助部材が移動とともに径方向に位置決めされていく。すなわち、補助部材供給部からガイド孔への収容時には、ガイド孔内面と接合補助部材との隙間を大きく確保して、ガイド孔への収容を容易にし、接合補助部材がワークの表面に押し付けられるときには、ガイド孔内面と接合補助部材との隙間を小さくして、径方向に精度よく位置決めすることができる。これにより、異なる接合補助部材を用いた複数箇所の接合作業を容易に自動化することができる。
【0012】
また、上記態様においては、前記押圧機構が、前記アーク溶接トーチにより供給される溶接ワイヤを挿入可能な中央孔を有し、前記接合位置に供給された前記接合補助部材の外周縁近傍に軸方向の端面が対向配置させられる筒状の押圧片と、該押圧片を前記軸方向に移動させるアクチュエータとを備えていてもよい。
この構成により、アクチュエータの作動により押圧片を移動させて、押圧片の軸方向の端面によって接合補助部材を押圧した状態でも、接合補助部材の内孔周辺には押圧片の中央孔が配置されるので、アーク溶接トーチにより供給される溶接ワイヤを、中央孔を経由して接合補助部材の内孔に到達させることができる。
【0013】
また、上記態様においては、前記アーク溶接トーチによりアーク溶接が行われるときに、前記押圧片が前記接合補助部材を厚さ方向に押圧した状態に維持してもよい。
この構成により、押圧機構によって接合補助部材と第2金属板とを所定の押圧力で密着させた状態でアーク溶接作業を行うことができ、鉄製の第1金属板と非鉄金属製の第2金属板との良好な接合状態を得ることができる。
【0014】
また、上記態様においては、前記第2金属板に形成された前記貫通孔を検出するカメラを備えていてもよい。
この構成により、接合補助部材の位置決めに先立って、カメラにより貫通孔を検出することにより、検出された貫通孔の位置に基づいてロボットを作動させ、接合補助部材を貫通孔に対して、より精度よく位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、異種金属からなる積層状態の2枚の金属板を種々の位置および姿勢において自動的に接合することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る異種金属接合用ツールを備えるロボットシステムを示す斜視図である。
【
図2】
図1のロボットシステムを示す平面図である。
【
図3】本実施形態に係る異種金属接合用ツールにより接合されるワークの一例を示す斜視図である。
【
図4】
図3のワークに組み合わせられる接合補助部材の一例を示す側面図である。
【
図5】
図1の異種金属接合用ツールの先端部を部分的に示す正面図である。
【
図6】
図5の異種金属接合用ツールにおいてシリンダにより接合補助部材を押圧した状態を示す部分的な正面図である。
【
図7】
図1の異種金属接合用ツールに備えられる補助部材供給部のホースおよびホース内の接合補助部材を示す横断面図である。
【
図8】
図1の異種金属接合用ツールのベースに設けられたガイドレール部に沿って接合補助部材が供給される状態を示す部分的な縦断面図である。
【
図9】
図8により供給された接合補助部材が位置決め機構のガイド孔に導入された状態を示す部分的な縦断面図である。
【
図10】
図9により導入された接合補助部材をプッシャによりガイド孔の先端に移動させ径方向に位置決めした状態を示す部分的な縦断面図である。
【
図11】
図10の状態から溶接ワイヤを溶接補助部材の内孔内に挿入した状態を示す部分的な縦断面図である。
【
図12】
図11の状態で溶接ワイヤに電圧を供給しアーク溶接を実施した状態を示す部分的な縦断面図である。
【
図13】
図12のアーク溶接により接合されたワークを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る異種金属接合用ツール1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る異種金属接合用ツール1は、
図1および
図2に示されるロボットシステム100に用いられる。
【0018】
このロボットシステム100は、
図1に示されるように、ワークWを取り付けるワーク台110と、例えば、6軸多関節型のロボット120と、異種金属接合用ツール1と、ロボット120を制御する図示しない制御部と、異種金属接合用ツール1のアーク溶接トーチ6に供給する溶接ワイヤ140を収容するワイヤタンク130と、溶接ワイヤ140に電源を印加する溶接電源150とを備えている。図中、符号4は後述する補助部材供給部である。
【0019】
ワークWは、
図3に示されるように、鉄製の第1金属板W1の上に、非鉄金属製の第2金属板W2を配置して、板厚方向に積層したものであり、図示しないクランプによってワーク台110に固定されている。第2金属板W2には板厚方向に貫通する1以上の貫通孔Hが設けられている。
【0020】
本実施形態に係る異種金属接合用ツール1は、
図1に示されるように、ロボット120の先端に取り付けられるツール本体2と、ツール本体2に接合補助部材3を供給する補助部材供給部4とを備えている。
ツール本体2は、ロボット120の先端に取り付けられるベース5と、ベース5に取り付けられたアーク溶接トーチ6と、アーク溶接トーチ6の前方に、補助部材供給部4により供給されてきた接合補助部材3を位置決めする位置決め機構7と、位置決めされた接合補助部材3をワークWに押し付ける押圧機構8とを備えている。図中、符号9は、アーク溶接トーチ6の前方に視野範囲を有するカメラである。
【0021】
接合補助部材3は、鉄材により構成され、
図4に示されるように、内孔3aを有する円形のリング板状の部材である。接合補助部材3は、ワークWの第2金属板W2の貫通孔Hよりも大きな外径寸法を有するとともに、板厚方向の一側に板厚方向に突出し、ワークWの第2金属板W2の貫通孔Hに嵌合可能な外径寸法を有する凸部10が設けられている。凸部10の高さは第2金属板W2の板厚よりも若干小さく設定されており、凸部10を貫通孔Hに嵌合させた状態で、接合補助部材3の凸部10側の端面を第2金属板W2の表面に密着させることができる。
【0022】
補助部材供給部4は、多数の接合補助部材3を収容し、空気圧により圧送する圧送装置11と、該圧送装置11とツール本体2とを接続し、圧送装置11から送り出されてくる接合補助部材3を、空気圧によって1つずつ、ツール本体2に供給するホース12とを備えている。ホース12の横断面は、
図7に示されるように、接合補助部材3の姿勢を一定に保ったままホース12の長手方向に接合補助部材3を移動させることができる形状を有している。
【0023】
位置決め機構7は、アーク溶接トーチ6の前方に間隔をあけて配置され、前方に向かって内径寸法が漸次小さくなるテーパ内面13aを有するガイド孔13を備えている。補助部材供給部4のホース12の先端とガイド孔13との間には、ホース12により供給されてきた接合補助部材3を一定の姿勢に維持したままガイド孔13に案内するガイドレール部14が設けられている。
【0024】
ガイドレール部14を経由して一定の姿勢でガイド孔13内に投入される接合補助部材3は、まず、ガイド孔13内の比較的大きな内径寸法の位置に投入され、ガイド孔13内を前方に向かって移動するに連れて、内径寸法が小さくなっていくテーパ内面13aによってガイド孔13の中心に内孔3aの中心を一致させる状態に位置決めされる。
【0025】
押圧機構8は、ガイド孔13と同軸に配置されガイド孔13の軸線に沿う方向に移動可能に配置された筒状のプッシャ(押圧片)15と、該プッシャ15をガイド孔13の軸線に沿う方向に往復移動させるシリンダ(アクチュエータ)16とを備えている。
図5に示されるように、シリンダ16の作動によりプッシャ15をガイド孔13内から引き抜いた位置と、
図6に示されるように、シリンダ16の作動によりプッシャ15をガイド孔13内に前方に向かって押し出した位置との間でプッシャ15を往復移動させることができる。
【0026】
プッシャ15は、位置決め機構7のガイド孔13内において位置決めされた接合補助部材3の外周縁近傍を全周にわたってガイド孔13の軸方向に押圧するために、先端に、ガイド孔13のテーパ内面13aに近接可能な形状のテーパ面部分17を備えている。また、プッシャ15は、溶接ワイヤ140を貫通させる内孔(中央孔)15aを有している。
【0027】
このように構成された本実施形態に係る異種金属接合用ツール1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るロボットシステム100を用いて鉄製の第1金属板W1と非鉄金属製の第2金属板W2とを積層状態に接合するには、
図3に示されるように、第1金属板W1の上に第2金属板W2を重ねて配置したワークWをワーク台110に載置してクランプより固定しておく。
【0028】
次いでロボット120を動作させて、カメラ9の視野版内にワークWを配置してカメラ9によりワークWの画像を取得することにより、ワークWの第2金属板W2に形成されている貫通孔Hの位置を算出する。制御部は、ロボット120を制御して、算出された貫通孔Hの中心位置にアーク溶接トーチ6の中心位置が一致する位置にツール本体2を配置する。
【0029】
この状態で、補助部材供給部4の圧送装置11を作動させて、収容している接合補助部材3を、ホース12経由でツール本体2に供給する。ホース12内を圧送されてきた接合補助部材3が、
図8に示されるように、ツール本体2のガイドレール部14を経由してガイド孔13内に導かれ、
図9に示されるようにガイド孔13内に入ると、補助部材供給部4による接合補助部材3の供給が一旦停止され、押圧機構8が作動させられる。
【0030】
すなわち、シリンダ16の作動によりプッシャ15を前方に押し出すと、筒状のプッシャ15の先端によって、接合補助部材3の外周縁近傍が前方に押圧され、接合補助部材3がガイド孔13の軸線に沿う方向に移動させられる。ガイド孔13は前方に向かって漸次先細になるテーパ内面13aを有しているので、接合補助部材3は移動させられながら、テーパ内面13aによって調芯され、ガイド孔13の中心位置に内孔3aの中心を一致させるまで位置決めされる。
【0031】
この状態で、
図10に示されるように、接合補助部材3に設けられている凸部10が、第2金属板W2に設けられている貫通孔Hに挿入されるとともに、接合補助部材3の凸部10側の端面が第2金属板W2の表面に押し付けられる。
そして、この後に、
図11に示されるように、ワイヤタンク130からアーク溶接トーチ6の先端に溶接ワイヤ140が供給され、溶接ワイヤ140の先端が、プッシャ15の内孔15aを貫通して接合補助部材3の内孔3a内に配置される。
【0032】
この状態で、溶接電源150によってアーク溶接トーチ6の先端に電圧が供給されることにより、アーク溶接が開始され、
図12に示されるように、溶接ワイヤ140および接合補助部材3の内孔3a内面近傍の溶融金属Mによって第2金属板W2の貫通孔Hが埋められ、第1金属板W1まで溶融させることにより、鉄製の接合補助部材3と鉄製の第1金属板W1とを接合する。これにより、
図13および
図14に示されるように、接合補助部材3と第1金属板W1との間に第2金属板W2が挟まれる形態で、鉄製の第1金属板W1と非鉄金属製の第2金属板W2とを積層状態に接合することができる。
【0033】
このように、本実施形態に係る異種金属接合用ツール1によれば、位置決め機構7によって接合補助部材3をワークWに位置決めして、押圧機構8によりワークWに押し付けた状態でアーク溶接を行うので、接合補助部材3、第1金属板W1および第2金属板W2が板厚方向に隙間なく密着させられた状態で接合される。接合補助部材3をワークWに押し付ける際に、ガイド孔13のテーパ内面13aによって、接合補助部材3が径方向に位置決めされるので、位置決め機構7を簡易に構成することができる。
【0034】
また、接合補助部材3をワークWに押し付ける際に、溶接ワイヤ140および接合補助部材3の溶融金属Mが接触しない接合補助部材3の外周縁近傍を押圧するので、押圧機構8が接合補助部材3と溶着することが防止され、異なる接合補助部材3を用いた複数箇所の接合作業を繰り返し行うことができる。これにより、接合補助部材3を用いた鉄製の第1金属板W1と非鉄金属製の第2金属板W2との接合作業を自動化することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、補助部材供給部4として、接合補助部材3を空気圧により圧送するものを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、多数の接合補助部材3を貼付したテープに送りをかけることにより、接合補助部材3を1つずつアーク溶接トーチ6の前方に供給するものを採用してもよい。
【0036】
また、位置決め機構7として、テーパ内面13aを有するガイド孔13を例示したが、これに代えて、接合補助部材3の外周面を径方向に把持するチャックを採用してもよい。これによっても、プッシャ15により接合補助部材3を板厚方向に押圧することができ、接合補助部材3を第2金属板W2の表面に押し付けながらアーク溶接作業を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態においては、凸部10を有するリング板状の接合補助部材3を使用する例を説明したが、これに代えて、凸部10を有しないリング板状の接合補助部材3を使用することにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 異種金属接合用ツール
3 接合補助部材
3a 内孔
4 補助部材供給部
5 ベース
6 アーク溶接トーチ
7 位置決め機構
8 押圧機構
9 カメラ
13 ガイド孔
13a テーパ内面
15 プッシャ(押圧片)
15a 中央孔
16 シリンダ(アクチュエータ)
120 ロボット
140 溶接ワイヤ
H 貫通孔
W ワーク
W1 第1金属板
W2 第2金属板