(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
遮水層は、起き上がり部のうち少なくとも股間部に位置する部分に、前後方向に連続する帯状に設けられるとともに、前記遮水層の前記付根部側の縁が付根部内に位置している、
請求項1記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、化学合成による素材や物質に頼らずに、起き上がりギャザーの遮水性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した吸収性物品は以下のとおりである。
<第1の態様>
排泄物の遮断位置に沿って、表面から起き上がる起き上がりギャザーを備えた、吸収性物品において、
前記起き上がりギャザーは、前記吸収性物品における遮断位置の外側に取り付けられた付根部と、前記付根部から突出する本体部と、前記本体部における遮断位置延在方向の両端部が物品表面において倒伏状態で固定されて形成された倒伏部と、前記本体部における倒伏部間の部分が非固定とされて形成された起き上がり部を有するギャザー不織布と、前記起き上がり部の少なくとも先端部に取り付けられたギャザー弾性部材とを有するものであり、
前記ギャザー不織布の起き上がり部に、微小繊維状セルロースの遮水層が設けられている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
微小繊維状セルロースの遮水層は、遮水性を有する微小繊維状セルロースの集合体が層状(膜状)をなしているものであり、微小繊維状セルロースの分散液をギャザー不織布に塗布した後、乾燥させることにより得ることができる。したがって、ギャザー不織布において特に遮水性を向上させたい部位等、任意の部位に、微小繊維状セルロースの遮水層を設けることにより、ギャザー不織布の遮水性を効果的に向上させることができる。しかも微小繊維状セルロースは、天然由来のものであるため、化学合成による素材や物質に頼らずに、起き上がりギャザーの耐水圧を向上させることができる。
また、微小繊維状セルロースの集合体は、臭気吸着性及び吸湿性を有しているため、起き上がりギャザーに消臭効果及び吸湿効果をもたせることができる。
【0010】
<第2の態様>
遮水層は、起き上がり部のうち少なくとも股間部に位置する部分に、前後方向に連続する帯状に設けられるとともに、前記遮水層の前記付根部側の縁が付根部内に位置している、
第1の態様の吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
ギャザー不織布における遮水層の配置は適宜定めることができるが、起き上がり部の付根部側は特に排泄液が滲み出やすい部位であるため、本態様のようにこの範囲に連続するように遮水層を設けることが好ましい。
【0012】
<第3の態様>
前記起き上がり部における最も付根部側のギャザー弾性部材よりも付根部側にのみ、前記遮水層が設けられている、
第1又は2の態様の吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
微小繊維状セルロースの集合体は不織布と比較して硬質である。このため、ギャザー弾性部材を有する部分のように、起き上がり部の中でも特に肌に接触する部分に、微小繊維状セルロースの遮水層を設けると肌触りを悪化させるおそれがある。よって、ギャザー不織布に、微小繊維状セルロースの遮水層を設ける場合、ギャザー弾性部材を有する部分には遮水層を設けずに、それよりも付根部側にのみ設けることが好ましい。これにより、微小繊維状セルロースの遮水層が装着者の肌に接触しにくいものとなる。
【0014】
<第4の態様>
前記起き上がり部は、遮断位置の外側に位置する外面と、遮断位置の内側に位置する内面とを有し、
前記遮水層は、前記起き上がり部の外面上に形成されており、かつ前記起き上がり部の内面上に露出していない、
第1〜3のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
この起き上がりギャザーは、ギャザー不織布の遮水性を基本とし、これを遮水層で補う構造となるため、遮水層を薄くすることができ、遮水層による起き上がりギャザーの硬質化を抑制することができる。また、起き上がり部の内面が肌に接触しやすい構造の起き上がりギャザーの場合、遮水層が肌に接触しにくくなる。なお、「遮水層が起き上がり部の外面上に形成」されているとは、ギャザー不織布の表面上にのみ遮水層が形成されている構造のほか、遮水層がギャザー不織布の表面上だけでなくギャザー不織布の内部まで及んでいる構造も含むものである。
【0016】
<第5の態様>
前記起き上がり部は、遮断位置の外側に位置する外面と、遮断位置の内側に位置する内面とを有し、
前記ギャザー不織布は少なくとも前記起き上がり部に複数層設けられるとともに、これらギャザー不織布の層間に前記遮水層が形成されており、
前記遮水層は、前記起き上がり部の外面及び内面に露出していない、
第1〜4のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
微小繊維状セルロースの集合体は不織布と比較して硬質である。このため、微小繊維状セルロースの遮水層を設ける場合、その位置によっては肌触りを悪化させるおそれがある。これに対して、本態様のように、ギャザー不織布の層間に微小繊維状セルロースの遮水層を設けると、肌に直接接することがなく、肌触りの悪化を抑制することができる。
【0018】
<第6の態様>
前記ギャザー不織布は、スパンボンド層間にメルトブローン層を有する積層不織布であり、
前記スパンボンド層は、繊度1.5〜10dtex、目付け5〜80g/m
2、厚み0.03〜0.5mmであり、
前記メルトブローン層は、繊度0.1〜1.0dtex、目付け1.5〜20g/m
2、厚み0.02〜0.3mmである、
第1〜5のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
ギャザー不織布は特に限定されるものではなく、また遮水層における微小繊維状セルロースの目付けも特に限定されるものではないが、例えば本態様の範囲内であると好ましいこの場合、微小繊維状セルロースの分散液をギャザー不織布の一方の面に塗布したとき、分散液はスパンボンド層にはある程度浸透するがメルトブローン層で遮断される。そのため、ギャザー不織布の一方の面上に遮水層が形成されるとともに、その遮水層の連続性が高くなる(ピンホールが少なくなる)。また、この遮水層はスパンボンド層内まで入り込んでいる(食いついている)ため、ギャザー不織布から剥がれにくいものとなる。
【0020】
<第7の態様>
前記遮水層における前記微小繊維状セルロースの目付けが5〜10g/m
2である、
第1〜6のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0021】
(作用効果)
遮水層における微小繊維状セルロースの目付けは適宜定めることができるが、遮水性及び柔軟性を考慮すると、遮水層における微小繊維状セルロースの目付けは、この範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、化学合成による素材や物質に頼らずに、起き上がりギャザーの遮水性を向上させることができる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜
図6は吸収性物品の一例である連結式使い捨て着用物品(一般に、テープタイプ使い捨ておむつともいう)を示しており、図中の符号Xは連結テープを除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示している。なお、断面図における点模様部分は、特に示さない限り、その表側及び裏側に位置する各構成部材を接合する接合手段としてのホットメルト接着剤を示している。ホットメルト接着剤は、スロット塗布、連続線状又は点線状のビード塗布、スパイラル状、Z状等のスプレー塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)等、公知の手法により塗布することができる。これに代えて又はこれとともに、弾性部材の固定部分では、ホットメルト接着剤を弾性部材の外周面に塗布し、弾性部材を隣接部材に固定することができる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0025】
この連結式使い捨て着用物品は、前後方向LDの中央を含む股間部Mと、前後方向LDの中央より前側に延びる腹側部分Fと、前後方向LDの中央より後側に延びる背側部分Bとを有している。また、この連結式使い捨て着用物品は、股間部Mを含む範囲に内蔵された吸収体56と、吸収体56の表側を覆う液透過性のトップシート30と、吸収体56の裏側を覆う液不透過性シート11と、液不透過性シート11の裏側を覆い、製品外面を構成する外装不織布12とを有するものである。
【0026】
以下、各部の素材及び特徴部分について順に説明する。なお、以下の説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となった疎水性繊維を含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった撥水性繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
(吸収体)
吸収体56は、排泄液を吸収し、保持する部分であり、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m
2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m
2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いることができる。
【0027】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用できる。高吸収性ポリマー粒子の粒径は特に限定されないが、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)、及びこのふるい分けでふるい下に落下する粒子について180μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)を行ったときに、500μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下で、180μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0028】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0029】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0030】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0031】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、通常の場合、50〜350g/m
2とすることができる。
【0032】
(包装シート)
高吸収性ポリマー粒子の抜け出しを防止するため、あるいは吸収体56の形状維持性を高めるために、吸収体56は包装シート58で包んでなる吸収要素50として内蔵させることができる。包装シート58としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5〜40g/m
2、特に10〜30g/m
2のものが望ましい。
【0033】
この包装シート58は、
図3に示すように、一枚で吸収体56の全体を包む構造とするほか、上下2枚等の複数枚のシートで吸収体56の全体を包むようにしてもよい。包装シート58は省略することもできる。
【0034】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。
【0035】
トップシート30は、前後方向では製品前端から後端まで延び、幅方向WDでは吸収体56よりも側方に延びているが、例えば後述する起き上がりギャザー60の起点が吸収体56の側縁よりも幅方向中央側に位置する場合等、必要に応じて、トップシート30の幅を吸収体56の全幅より短くする等、適宜の変形が可能である。
【0036】
(中間シート)
トップシート30を透過した液の逆戻りを防止するために、トップシート30の裏側に中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。中間シート40は省略することもできる。
【0037】
中間シート40としては、各種の不織布を好適に用いることができ、特に嵩高なエアスルー不織布を好適に用いることができる。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17〜80g/m
2が好ましく、25〜60g/m
2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯かつ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0038】
図示例の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。また、中間シート40は、おむつの全長にわたり設けてもよいが、図示例のように排泄位置を含む中間部分にのみ設けてもよい。
【0039】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11は、特に限定されるものではないが、透湿性を有するもが好ましい。液不透過性シート11としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを好適に用いることができる。また、液不透過性シート11としては、不織布を基材として防水性を高めたものも用いることができる。
【0040】
液不透過性シート11は、前後方向LD及び幅方向WDにおいて吸収体56と同じか又はより広範囲にわたり延びていることが望ましいが、他の遮水手段が存在する場合等、必要に応じて、前後方向LD及び幅方向WDにおいて吸収体56の端部を覆わない構造とすることもできる。
【0041】
(外装不織布)
外装不織布12は液不透過性シート11の裏側全体を覆い、製品外面を布のような外観とするものである。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その構成繊維の繊度が1.0〜6.0dtex、目付けが15〜45g/m
2、かつ厚みが0.5〜3.0mmの不織布であると好ましい。
【0042】
外装不織布12に代えて不織布以外のシートを用いることもでき、また外装不織布12を省略することもできる。
【0043】
(エンドフラップ部、サイドフラップ部)
図示例の連結式使い捨て着用物品は、吸収体56の前側及び後側にそれぞれ延出する、吸収体56を有しない一対のエンドフラップ部EFと、吸収体56の両方の側縁よりも側方にそれぞれ延出する、吸収体56を有しない一対のサイドフラップ部SFとを有している。サイドフラップ部SFは、図示例のように、吸収体56を有する部分から連続する素材(外装不織布12等)からなるものであっても、他の素材を取り付けて形成してもよい。
【0044】
(平面ギャザー)
各サイドフラップ部SFには、糸ゴム等の細長状弾性部材からなるサイド弾性部材64が前後方向LDに沿って伸長された状態で固定されており、これにより各サイドフラップ部SFの脚周り部分が平面ギャザーとして構成されている。サイド弾性部材64は、図示例のように、ギャザー不織布62の接合部分のうち接合始端近傍の幅方向外側において、ギャザー不織布62と液不透過性シート11との間に設けるほか、サイドフラップ部SFにおける液不透過性シート11と外装不織布12との間に設けることもできる。サイド弾性部材64は、図示例のように各側で複数本設ける他、各側に1本のみ設けることもできる。
【0045】
平面ギャザーは、サイド弾性部材64の収縮力が作用する部分(図中ではサイド弾性部材64が図示された部分)である。よって、平面ギャザーの部位にのみサイド弾性部材64が存在する形態の他、平面ギャザーよりも前側、後側又はその両側にわたりサイド弾性部材64が存在しているが、平面ギャザーの部位以外ではサイド弾性部材が一か所又は多数個所で細かく切断されていたり、サイド弾性部材64を挟むシートに固定されていなかったり、あるいはその両方であったりすることにより、平面ギャザー以外の部位に収縮力が作用せず(実質的には、弾性部材を設けないことに等しい)に、平面ギャザーの部位にのみサイド弾性部材64の収縮力が作用する構造も含まれる。
【0046】
(起き上がりギャザー)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する排泄物を阻止し、いわゆる横漏れを防止するために、表面の幅方向WDの両側には、装着者の肌側に立ち上がる起き上がりギャザー60が設けられている。
【0047】
起き上がりギャザー60を採用する場合、その構造は特に限定されず、公知のあらゆる構造を採用できる。図示例の起き上がりギャザー60は、サイドフラップを含む領域に固定された付根部分65、この付根部分から延び出た本体部66、この本体部66の前後方向の両端部が倒伏状態に固定された倒伏部67、及び本体部66のうち前後の倒伏部67間に位置する非固定の起き上がり部68を有するギャザー不織布62と、起き上がり部68の少なくとも先端部に固定されたギャザー弾性部材63とを有するものとなっている。
【0048】
図3、
図8、
図9及び
図10に示す例のギャザー不織布62は、本体部66の先端(付根部65側と反対側の端)で二つ折りされることにより内側層62n及び外側層62fの2層構造となっており、その内側層62n及び外側層62fの間に、ギャザー弾性部材63が設けられているものである。内側層62nは
図3、
図8、
図9、
図10(b)に示すように付根部65まで延びていても、また
図10(a)に示すように起き上がり部68におけるギャザー弾性部材を有する中間位置までしか延びていなくてもよい。つまり、起き上がり部68の付根部65側に一層の部分を有していてもよい。また、ギャザー不織布62は3層以上の層構造を有していてもよい。ギャザー不織布62を複数層構造とする場合、一枚の不織布を折り返すことなく、又は一枚の不織布の折り返しによる層数の増加とともに、別の不織布を貼り付けることにより層数を増加させてもよい。
【0049】
ギャザー不織布62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向WDの接合始端を有し、この接合始端から幅方向外側の部分は各サイドフラップ部SFの内面、つまり図示例では液不透過性シート11の側部及びその幅方向外側に位置する外装不織布12の側部にホットメルト接着剤などにより接合されている。
【0050】
脚周りにおいては、起き上がりギャザー60の接合始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性部材63の収縮力により立ち上がり、身体表面に密着するようになる。
【0051】
起き上がりギャザー60の本体部66を、幅方向外側の部分から幅方向内側に延在する基端側部分66Bとこの基端側部分66Bの幅方向中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向外側に延在する先端側部分66Aとを有する二つ折りした状態で、本体部66の前後方向両端部を固定して倒伏部67を形成すると、起き上がり部68が
図10(b)に示すように屈曲し、先端側部分66Aが装着者の肌に沿って接触するようになる。
【0052】
ギャザー不織布62の種類は特に限定されないが、通常の場合、液遮断性を確保するために撥水性のものが用いられる。特に、肌触り及び液遮断性を両立できる点で、スパンボンド層間にメルトブローン層を有する不織布(SMS不織布、SMMS不織布、SSMS不織布、SSMMS不織布)が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。
【0053】
ギャザー弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。ギャザー弾性部材63は、
図1及び
図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。展開状態におけるギャザー弾性部材63の伸長率は適宜定めることができるが、例えば200〜260%程度とすることができる。
【0054】
(ウイング部分)
本連結式使い捨て着用物品では、背側部分Bは股間部Mよりも幅方向WD外側に延び出たウイング部分WPを有している。同様に、腹側部分Fも股間部Mよりも幅方向WD外側に延び出たウイング部分WPを有している。これらウイング部分WPは、それ以外の部分と別の部材により形成することもできる。しかし、図示例のようにサイドフラップ部SFを有する構造において、サイドフラップ部SFの側部における前後方向LD中間を切断することにより、股間部Mの側縁からウイング部分の下縁71までの凹状縁70が形成され、その結果としてウイング部分WPが形成されていると、製造が容易であるため好ましい。
【0055】
(連結テープ)
図1、
図2及び
図6に示すように、背側部分Bにおけるウイング部分WPには、腹側部分Fの外面に対して着脱可能に連結される連結テープ13がそれぞれ設けられている。おむつ10の装着に際しては、連結テープ13を腰の両側から腹側部分Fの外面に回して、連結テープ13の連結部13Aを腹側部分F外面の適所に連結する。
【0056】
連結テープ13は、
図6及び
図7に示すように、ウイング部分WPに固定された基端部13C、及びこの基端部13Cから延び出た本体部13Bをなすシート基材と、このシート基材における本体部13Bの幅方向WDの中間部に設けられた、腹側部分Fに対する連結部13Aとを有している。本体部13Bにおける、連結部13Aより基端部13C側が腹側部分Fと連結されない非連結部となり、反対側が摘み部となっている。これら非連結部及び摘み部は、本体部13Bをなすシート基材のみからなっている。基端部13Cの側縁はウイング部分WPの側縁に一致していてもよいし、
図6に示すように、ウイング部分WPの側縁から幅方向WDの内方にわずかに離間していてもよい。連結部13Aの幅方向内方の縁は、ウイング部分WPの側縁に一致していてもよいが、
図6に示すように、ウイング部分WPの側縁から幅方向WDの外方に十分に離間していることが好ましい。
【0057】
連結部13Aとしては、メカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(雄材)を設ける他、粘着剤層を設けてもよい。フック材は、その連結面に多数の係合突起を有するものであり、係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。
【0058】
また、基端部13Cから本体部13Bまでを形成するシート基材としては、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材を用いることができるが、繊度1.0〜3.5dtex、目付け60〜100g/m
2、厚み1mm以下のスパンボンド不織布、エアスルー不織布、又はスパンレース不織布が好ましい。
【0059】
連結テープ13は、少なくとも非連結部の一部が幅方向WDに伸縮するものであっても、全体が伸縮しないものであってもよい。
【0060】
(ターゲット部)
腹側部分Fにおける連結テープ13の連結箇所には、ターゲット部12Tが設けられている。ターゲット部12Tは、図示例のように、連結を容易にするためのシート材を腹側部分Fの外面に貼り付けることにより設けることができる。
【0061】
ターゲット部12Tを形成するためのシート材は特に限定されるものではないが、連結部13Aがフック材の場合、例えば間欠的なパターンの超音波溶着により部分的に繊維相互が溶着された長繊維不織布を用いることができる。
【0062】
また、連結部13Aがフック材の場合、ターゲット部12Tを形成するためのシート材として、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなる基材の表面に多数縫い出された複合的なシート材を用いることができる。
【0063】
さらに、連結部13Aがフック材であり、腹側部分Fにおける連結テープ13の連結箇所が不織布からなる場合(例えば図示例のように外装不織布12を有する場合)には、ターゲット部12Tを形成するためにシート材を付加せずに、外装不織布12の適所をターゲット部12Tとし、フック材を外装不織布12の繊維に絡ませて連結することもできる。
【0064】
一方、連結部13Aが粘着材層の場合には、ターゲット部12Tを形成するためのシート材として、粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなるシート材の表面に剥離処理を施したものを用いることができる。
【0065】
(遮水層)
特徴的には、
図1、
図3及び
図8(a)に示すように、ギャザー不織布62の起き上がり部68に、微小繊維状セルロースの遮水層80が設けられている。微小繊維状セルロースとは、パルプ等の植物から取り出される微細なセルロース繊維又はその束をいい、一般的に平均繊維幅がナノサイズ(1〜1000nm以下)の微小繊維状セルロースいい、平均繊維幅(メジアン径)が100nm以下のもの(一般にセルロースナノフィブリル(CNF)と呼ばれる)が好ましく、特に10〜60nmのものが好ましい。なお、微小繊維状セルロースの平均繊維幅は以下の方法で測定することができる。すなわち、まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%の微小繊維状セルロースの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて5000倍、10000倍又は30000倍のいずれかの倍率(本実施例では、30000倍の倍率)で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の棒を目視で計測する。そして、計測値の中位径(メジアン径)を平均繊維幅とする。
【0066】
微小繊維状セルロースの遮水層80は、遮水性を有する微小繊維状セルロースの集合体が層状(膜状)をなしているものであり、おむつの製造工程で又はギャザー不織布の製造工程で、微小繊維状セルロースの分散液をギャザー不織布62に塗布した後、乾燥させることにより形成する等、公知の方法により製造することができる。したがって、ギャザー不織布62において特に遮水性を向上させたい部位等、任意の部位に、微小繊維状セルロースの遮水層80を設けることにより、ギャザー不織布62の遮水性を効果的に向上させることができる。しかも微小繊維状セルロースは、天然由来のものであるため、化学合成による素材や物質に頼らずに、起き上がりギャザー60の遮水性を向上させることができる。また、微小繊維状セルロースの集合体は、臭気吸着性及び吸湿性を有しているため、起き上がりギャザー60に消臭効果及び吸湿効果をもたせることができる。
【0067】
微小繊維状セルロース分散液の塗布により微小繊維状セルロースの遮水層80を形成する場合、微小繊維状セルロース分散液の濃度(質量/容量)は、0.1〜10%であることが好ましく、1.0〜5.0%であるとより好ましく、1.5〜3.0%であると特に好ましい。
【0068】
微小繊維状セルロース分散液のB型粘度(60rpm、20℃)は、例えば、700cps以下、好ましくは200cps以下、より好ましくは50cps以下である。このように微小繊維状セルロース分散液のB型粘度を低く抑えることで、ギャザー不織布62に対して微小繊維状セルロースが均一に付与されるようになる。
【0069】
微小繊維状セルロース分散液の付与は、対象面に対する噴霧のほか、凸版方式等による転写方式を用いることもできる。
【0070】
微小繊維状セルロースの製造に使用可能なパルプ繊維としては、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒盲紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、目的とする効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。さらに、上記パルプ繊維に対してカルボキシメチル化等の化学的処理を施したものを用いても良い。
【0071】
微小繊維状セルロースの製造方法としては、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、ビーズミル凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的手法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。また、ナノファイバー化は、TEMPO酸化処理、リン酸エステル化処理、酸処理等の併用により促進される。
【0072】
ギャザー不織布62における遮水層80の配置は適宜定めることができる。例えば、起き上がり部68の付根部65側は特に排泄液が滲み出やすい部位である。このため、
図1に示すように、遮水層80は、起き上がり部68のうち股間部Mに位置する部分を含むように、前後方向に連続する帯状に設けられるとともに、遮水層80の付根部65側の縁が付根部65内に位置しているのは一つの好ましい例である。もちろん、遮水層80は、股間部Mに位置する部分にのみ設けるほか、起き上がり部68の前後方向全体を含む範囲にわたり設けたり、ギャザー不織布62の前後方向の全体を含む範囲にわたり設けたり、又は起き上がり部68の前後少なくとも一方の端部にのみ設けたりすることもできる。
【0073】
ただし、微小繊維状セルロースの集合体は不織布と比較して硬質である。このため、ギャザー弾性部材63を有する部分のように、起き上がり部68の中でも特に肌に接触する部分に、微小繊維状セルロースの遮水層80を設けると肌触りを悪化させるおそれがある。よって、ギャザー不織布62に、微小繊維状セルロースの遮水層80を設ける場合、
図8、
図9に示す例のように、ギャザー弾性部材63を有する部分には遮水層80を設けずに、最も付根部65側のギャザー弾性部材63よりも付根部65側にのみ設けることが好ましい。これにより、微小繊維状セルロースの遮水層80が装着者の肌に接触しにくいものとなる。同様の理由で、
図10(b)に示す例のように、起き上がりギャザー60が屈曲タイプの場合は、屈曲位置よりも付根部65側にのみ遮水層80を設けると好ましい。
【0074】
ギャザー不織布62の厚み方向における遮水層80の分布は特に限定されるものではない。例えば
図11(a)に示すように、ギャザー不織布62の一方の面上(又は図示しないが両面でもよい)に遮水層80が形成され、かつ遮水層80がほとんどギャザー不織布62内に入り込んでいない構造(第1分布)や、
図11(b)に示すように、ギャザー不織布62の一方の面上に遮水層80が形成され、かつ遮水層80の一部(又は図示しないが全部でもよい)がギャザー不織布62内に入り込んでいるが、反対面には露出していない構造(第2分布)、並びに
図11(c)に示すように、ギャザー不織布62の両面上にわたり遮水層80が形成されている(遮水層80中にギャザー不織布62が埋没している)構造(第3分布)のいずれとなっていてもよい。
【0075】
このような厚み方向における遮水層80の分布の調節は、ギャザー不織布62のいずれの面から微小繊維状セルロース分散液を塗布するか、及び塗布量や浸透性の程度を選択することにより達成することができる。例えば、
図11(a)に示される第1分布の遮水層80は、メルトブローン不織布のような液浸透性の少ないギャザー不織布62の片面に微小繊維状セルロースの分散液を塗布(両面に設ける場合は両面に塗布)することにより形成することができる。また、
図11(c)に示される第3分布の遮水層80は、十分に液浸透性を有するギャザー不織布62を用い、微小繊維状セルロース分散液を適量塗布(含浸含む)することにより形成することができる。一方、
図11(b)に示される第2分布の遮水層80は、液浸透性の少ない第1不織布層62mとこれを覆うある程度液浸透性を有する第2不織布層62sを有する積層不織布(例えば第1不織布層62mとしてメルトブローン層を有し、第2不織布層62sとしてスパンボンド層を有するSMS不織布等)を用い、一方の第2不織布層62sの表面に微小繊維状セルロース分散液を塗布することにより形成することができる。つまり、この場合、分散液は第2不織布層62sには浸透するが第1不織布層62mにはほとんど浸透しないため、第2分布の構造となる。積層不織布として、スパンボンド層間にメルトブローン層を有する積層不織布を用いる場合、スパンボンド層は、繊度1.5〜10dtex、目付け5.0〜80g/m
2、厚み0.03〜0.5mmであり、メルトブローン層は、繊度0.1〜1.0dtex、目付け1.5〜20g/m
2、厚み0.02〜0.3mmであると好ましい。この場合、微小繊維状セルロースの分散液をギャザー不織布62の一方の面に塗布したとき、分散液はスパンボンド層にはある程度浸透するがメルトブローン層で遮断される。そのため、ギャザー不織布62の一方の面上に遮水層80が形成されるとともに、その遮水層80の連続性が高くなる(ピンホールが少なくなる)。また、この遮水層80はスパンボンド層内まで入り込んでいる(食いついている)ため、ギャザー不織布62から剥がれにくいものとなる。
【0076】
これら遮水層80の厚み方向の分布と、ギャザー不織布62の構造とを適宜組み合わせることにより、いくつかの好ましい構造を構築することができる。例えば、起き上がり部68は、遮断位置の外側に位置する外面60xと、遮断位置の内側に位置する内面60iとを有する。そこで、
図8(a)、
図9及び
図10に示すように、遮水層80は、起き上がり部68の外面60x上に形成されるとともに、起き上がり部68の内面60i上に露出しないのは一つの好ましい構造である。この起き上がりギャザー60は、ギャザー不織布62の遮水性を基本とし、これを遮水層80で補う構造となるため、遮水層80を薄くすることができ、遮水層80による起き上がりギャザー60の硬質化を抑制することができる。また、起き上がり部68の内面が肌に接触しやすい構造の起き上がりギャザー60の場合、遮水層80が肌に接触しにくくなる。
図8(a)、
図9(a)及び
図10(a)に示すように、遮水層80の形成部位のギャザー不織布62の層数が複数層となっている場合は、外側層62fにのみ外面に微小繊維状セルロースの分散液を塗布すれば、遮水層80が前述の第1〜第3分布のいずれとなっても、起き上がり部68の外面上に形成されるとともに、起き上がり部68の内面上に露出しない構造となる。また、
図9(b)に示すように内側層62nにおける外側層62fとの対向面にのみ微小繊維状セルロースの分散液を塗布し、前述の第1分布又は第2分布の遮水層80を形成することにより、起き上がり部68の外面上に形成されるとともに、起き上がり部68の内面上に露出しない構造とすることができる。
【0077】
一方、
図10(a)に示すように、遮水層80の形成部位のギャザー不織布62の層数が一層の場合には、外面60xにのみ微小繊維状セルロースの分散液を塗布し、前述の第1分布又は第2分布の遮水層80を形成することにより、遮水層80が起き上がり部68の外面上に形成されるとともに、起き上がり部68の内面上に露出しない構造とすることができる。
【0078】
図9に示すように、遮水層80の形成部位のギャザー不織布62の層数が複数層となっている場合は、ギャザー不織布62の層62f,62n間に遮水層80が形成されているとともに、起き上がり部68の遮断位置の外側に位置する外面60xと、遮断位置の内側に位置する内面60iとには、遮水層80が露出していないのも好ましい。このように、ギャザー不織布62の層62f,62n間に微小繊維状セルロースの遮水層80を設けると、肌に直接接することがなく、肌触りの悪化を抑制することができる。このような構造は、隣接するギャザー不織布62の対向面のいずれか一方(又は両方でもよい)に、微小繊維状セルロースの分散液を塗布し、前述の第1分布又は第2分布の遮水層80を形成することにより構築することができる。
【0079】
遮水層80における微小繊維状セルロースの目付けは適宜定めることができるが、遮水性及び柔軟性を考慮すると、遮水層80における微小繊維状セルロースの目付けは、5〜10g/m
2程度であると好ましく、特に6〜8g/m
2程度であるとより好ましい。
【0080】
<遮水層の効果確認試験>
表1に示すように、各種の不織布に微小繊維状セルロースの分散液を塗布し遮水層を形成した後、JIS L 1092:2009「繊維製品の防水性試験方法」に規定された「耐水度試験(静水圧法)」の「A法(低水圧法)」を行い、それぞれ耐水度を測定した。使用した各不織布は同規格に規定された前処理(洗濯処理等)は行わなかった。各不織布の片面の全面に微小繊維状セルロースの遮水層を形成し、試験片(150mm×150mm)とした。また、遮水層を形成していないブランクサンプルについても同様に耐水度を測定した。この結果から、ギャザー不織布に微小繊維状セルロースの遮水層を形成することにより遮水性を向上できることが判明した。
【表1】
【0081】
<その他>
上記例は、吸収性物品の側部に設けられる起き上がりギャザー60に遮水層80を設けたものであるが、起き上がりギャザーである限り、他の部位に設けられるもの、例えば、特許文献4,5に記載されるような、背側や腹側に、ウエストからの漏れを防止するために幅方向に沿って設けられ、排泄物の遮断位置(幅方向に沿って延在する)に沿って表面から起き上がる起き上がりギャザーにも適用可能である。