(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
画像情報を形成し、当該画像情報を含む映像光を射出する画像形成ユニットから射出された前記映像光を反射することで虚像を表示させる接眼光学系を含む投影光学系であって、
前記接眼光学系は、前記映像光の射出方向に沿って前記画像形成ユニット側から順に配置された凹レンズ、自由曲面レンズ、及び自由曲面凹面ミラーを含んで構成され、
前記凹レンズにおける前記画像形成ユニットに対向する対向面は平面状に形成され、
前記凹レンズは、当該凹レンズの光軸が前記画像形成ユニットにおける前記映像光の射出面の光軸と平行に配置される、
ことを特徴とする投影光学系。
画像情報を形成し、当該画像情報を含む映像光を射出する画像形成ユニットから射出された前記映像光を反射することで虚像を表示させる接眼光学系を含む投影光学系であって、
前記接眼光学系は、前記映像光の射出方向に沿って前記画像形成ユニット側から順に配置された凹レンズ、自由曲面レンズ、及び自由曲面凹面ミラーを含んで構成され、
前記画像形成ユニットにおける前記映像光の射出面から前記凹レンズにおける前記画像形成ユニットに対向する対向面までの第1面間距離は、前記対向面から前記凹レンズに入射した前記映像光が前記凹レンズから射出する射出面までの第2面間距離よりも短い
ことを特徴とする投影光学系。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】第1実施形態の接眼光学系の全体光線図(YZ平面)
【
図1B】第1実施形態の接眼光学系の全体光線図(XZ平面)
【
図3】第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置のレンズデータを示す図
【
図4】第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の自由曲面係数の図
【
図5A】第1実施形態におけるアイボックスの中央から見た歪性能を表す図
【
図5B】第1実施形態におけるアイボックスの右上から見た歪性能を表す図
【
図5C】第1実施形態におけるアイボックスの左上から見た歪性能を表す図
【
図5D】第1実施形態におけるアイボックスの左下から見た歪性能を表す図
【
図5E】第1実施形態におけるアイボックスの右下から見た歪性能を表す図
【
図6】虚像面に物点を配置した場合の液晶表示パネル上でのスポット図
【
図7A】各画角位置での主光線Ray1と仮想光線Ray0の角度ずれ図
【
図7B】主光線Ray1と仮想光線Ray0の角度θを示す図
【
図8A】第2実施形態の接眼光学系の全体光線図(YZ平面)
【
図8B】第2実施形態の接眼光学系の全体光線図(XZ平面)
【
図10】第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置のレンズデータを示す図
【
図11】第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の自由曲面係数の図
【
図12A】第2実施形態におけるアイボックスの中央から見た歪性能を表す図
【
図12B】第2実施形態におけるアイボックスの右上から見た歪性能を表す図
【
図12C】第2実施形態におけるアイボックスの左上から見た歪性能を表す図
【
図12D】第2実施形態におけるアイボックスの左下から見た歪性能を表す図
【
図12E】第2実施形態におけるアイボックスの右下から見た歪性能を表す図
【
図13】第2実施形態のヘッドアップディスプレイ装置のスポット図
【
図14A】各画角位置での主光線と液晶表示パネルの法線との角度ずれ図
【
図14B】主光線と液晶表示パネルの法線との角度θを示す図
【
図15A】ウインドシールドから光束の集光位置(射出瞳位置)までの光線をYZ断面に投影した光線図
【
図15B】自由曲面凹面ミラーから光束の集光位置(射出瞳位置)までの光線をXZ断面に投影した光線図
【
図16A】絞りを凸レンズ(自由曲面凹面ミラーに相当)の焦点距離以上に凸レンズから離して配置した場合の光線追跡図
【
図16B】集光位置を表示するために、像面の先まで表示した光線追跡図
【
図16C】テレセントリック性と歪を補正するための基本構成を用いた場合の光線追跡図
【
図17】ヘッドアップディスプレイ装置の概略構成図
【
図18】第3実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が備える画像形成ユニットの概略構成図
【
図19】第4実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が備える画像形成ユニットの概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面等を用いて、本発明の一実施形態及び各種実施例について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。以下、全実施形態に共通する事項について説明し、続いて各実施形態の特徴について説明する。
【0016】
図17を用いて、ヘッドアップディスプレイ装置30の基本構成について説明する。
図17はヘッドアップディスプレイ装置30の概略構成図である。
【0017】
図17に示すヘッドアップディスプレイ装置30は、画像形成ユニット10及び接眼光学系5を含む投影光学系20から出射された映像光を、自動車のウインドシールド6で反射させて観察者の眼9に入射させる構成を備える。この構成により、観察者の眼9から見ると、虚像面7において画像情報を見ているかのような状態になる。画像形成ユニット10で射出された映像光が接眼光学系5を通りウインドシールド6で反射される方向が、映像光の射出方向に相当する。
【0018】
まず、
図20を参照して画像形成ユニット10について説明する。
図20は、画像形成ユニットの機能ブロック図である。
図20に示すように、画像形成ユニット10は、液晶表示パネル2と、バックライト1と、これらの動作を制御するコントローラー200と、を備えている。画像形成ユニット10は、バックライト1から液晶表示パネル2に光を照射し、液晶表示パネル2に表示された画像情報(映像情報)を接眼光学系5に向けて出射する。
【0019】
コントローラー200は、制御装置201を備えている。この制御装置201には、種々の情報が外部装置から入力される。例えば、外部装置として、ヘッドアップディスプレイ装置30を搭載した移動体の動作に関する情報を生成して出力するナビゲーション装置であるナビ208や、移動体の動作を制御するECU(Electronic Control Unit)209が制御装置201に接続されている。ECU209には移動体が備える各種のセンサ210が接続されていて、検知した情報をECU209に通知するように構成されている。
【0020】
コントローラー200は、上記にて説明をした外部装置からの各種データを処理する制御装置201と、バックライト1を駆動するためのバックライト駆動回路207と、を備えている。
【0021】
制御装置201は、マイコン202及びこれに接続された記憶装置206を含む。
【0022】
マイコン202は、外部装置からの各種データを記憶するためのRAM(Random Access Memory)203と、観察者が視認する虚像の元になる画像データを生成する演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)205と、CPU205における演算処理を実行可能なプログラムやパラメータを記憶するROM(Read Only Memory)204と、を備えている。
【0023】
以上の構成を備えるコントローラー200によって画像形成ユニット10が備える液晶表示パネル2に画像情報が表示される。画像形成ユニット10は、液晶表示パネル2に表示された画像情報をバックライト1が照射した光束によって映像光束として出射する。
【0024】
図17に戻る。画像形成ユニット10において形成され出射された映像光束は、接眼光学系5によって、ウインドシールド6に投影される。ウインドシールド6に投影された映像光束は、ウインドシールド6で反射されて、観察者の眼9の位置に到達する。これによって、観察者の眼9から見ると、あたかも、虚像面7の画像情報を見ているような関係性が成立する。
【0025】
図17のように、液晶表示パネル2における映像光束の出射面において、点Q1・点Q2・点Q3という仮想点を考える。これら仮想点から出射された映像光束が対応する虚像面7における仮想点を考えると、
図17に示すように点V1・点V2・点V3が、それに当たる。観察者が眼9の位置を動かしても虚像面7における点V1・点V2・点V3を視認できる範囲が、アイボックス8である。
【0026】
図17は、ヘッドアップディスプレイ装置30を側面視で図示しているが、実際のヘッドアップディスプレイ装置30の構成は立体的であるから、アイボックス8は二次元的な広がりを有している。このように、接眼光学系5は、カメラのファインダーの接眼レンズや、顕微鏡での接眼レンズと同様に、物(空間像)の像(虚像)を観察者の眼の前に表示する光学系である。
【0027】
ここで、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30を移動体に搭載した場合の例について
図21を用いて説明する。
図21は、移動体である自動車500を前方から見た平面図である。
図21に示すような自動車500には、風防としてフロントガラスであるウインドシールド6が、運転席の前方に配置されている。
【0028】
ヘッドアップディスプレイ装置30は、ウインドシールド6に映像光束を投影することで、自動車500の動作に係る各種情報を運転席にいる観察者が虚像として視認できる状態にする。映像光束が投影される位置は、運転席の前方やその周囲である。例えば破線矩形領域R1に示すような位置に映像光束が投影される。
【0029】
図15と
図16を用いて、ヘッドアップディスプレイ装置30の接眼光学系5に求められる瞳位置の条件について説明する。
【0030】
図15では接眼光学系5を、必要最小限な構成であるウインドシールド6と自由曲面凹面ミラー54(自由曲面凹面ミラーは凸レンズに相当する)で構成した場合の縮小光学系で表示した光線図である。実際には
図20に示すようにヘッドアップディスプレイ装置30内に液晶表示パネル2を配置するが、
図15A、
図15Bの各図は、虚像面側を物体とした縮小光学系での射出瞳位置101の説明の便宜のため液晶表示パネルの図示を省略し、瞳径を0.001mmとし、ウインドシールド6及び自由曲面凹面ミラー54のみの構成とした状態での主光線のみの光線の状態を図示している。
【0031】
図15A、
図15Bの座標系は、アイボックス8の水平方向をX軸、垂直方向をY軸、XY平面に垂直な方向をZ軸で定義している。
【0032】
図15Aはウインドシールド6から光束の集光位置101(射出瞳位置)までの光線をYZ断面に投影した光線図であり、
図15Bは自由曲面凹面ミラー54から光束の集光位置101(射出瞳位置)までの光線をXZ断面に投影した光線図である。
【0033】
ヘッドアップディスプレイ装置30の小型化のためには、ウインドシールド6から自由曲面凹面ミラー54への光路を避けた場所で、なるべく自由曲面凹面ミラー54に近い場所に、液晶表示パネルを配置することが望ましい。従って、
図15A、
図15Bの虚像面を物体とした縮小光学系では、液晶表示パネルを通り過ぎた先に、接眼光学系5の射出瞳が位置することになる。
【0034】
ところで、通常の液晶表示パネル2とバックライト1の組合せでは、液晶表示パネルの入出射側でテレセントリックとしている。
【0035】
ここで
図15A、
図15Bの液晶表示パネル側でのこのテレセントリック(射出瞳距離が無限大)を満足するためには、液晶表示パネルの直前にフィールドレンズとして、負の屈折力(=パワー)である凹レンズを配置する必要がある。
【0036】
このフィールドレンズの作用と自由曲面レンズの作用について、
図16A〜
図16Cを用いて説明する。
図16Aは、絞りを凸レンズ(自由曲面凹面ミラーに相当)の焦点距離以上に凸レンズから離して配置した場合の光線追跡図である。絞り102を凸レンズ103(自由曲面凹面ミラー54に相当)の焦点距離以上に凸レンズ103から離して配置しており、絞り102の中心を通過する主光線は、凸レンズ103で大きな屈折力を受け、像面104へは主光線が収束して入射する。同時に、凸レンズ103で発生する収差により、像面104での近軸光線の高さH
0より、実光線の光線高さHの方が小さくなるので、像面104では樽型の歪が生じる。
【0037】
図16Bは、集光位置101を表示するために、像面104の先まで表示した光線追跡図であり、テレセントリック性が劣化していることが確認できる。
【0038】
図16Cは、テレセントリック性と歪を補正するための基本構成を用いた場合の光線追跡図である。
図16Bの像面104と集光位置101の距離に相当する焦点距離を有する凹レンズ51を像面104の直前に配置することで主にテレセントリック性の改善を実現し、且つ、その手間に配置した自由曲面レンズ52で、像面104での実光線の光線高さHを近軸光線の光線高さH
0に近づけることで主に歪を補正している。
【0039】
ここで、自由曲面レンズ52自体に負の屈折力を持たせることで、凹レンズ51を省略することは可能であるが、自由曲面レンズ52のレンズ面の面勾配が大きくなる。従って、自由曲面レンズ52と凹レンズ51に分けることで、自由曲面レンズ52の生産性が向上し、且つ、自由曲面レンズ52の位置と凹レンズ51の位置との違い、即ち、光線高さの違いが、即ち自由度がテレセントリック性と歪の補正に有効である。
【0040】
詳細な定義式は後で説明するが、自由曲面レンズ52はXY多項式を含むため、左右非対称・上下非対称なレンズ作用を持たせることが可能であり、ウインドシールド6で発生する左右非対称、且つ、上下非対称な歪性能の補正にも有効である。
【0041】
また、凹レンズ51は液晶表示パネル2(
図20参照)の光照射面に対向させて、光照射面との間隔をできるだけ小さくして(間隔が0の場合は光照射面に接する)配置することが望ましい。そこで凹レンズ51において、液晶表示パネルの光照射面に対向する面(以下「対向面」という)を平面状に形成する。これにより、凹レンズ51の対向面が凹面に形成させる場合と比較して、対向面全面を液晶表示パネルにより近づけて配置しやすくなる。その際、凹レンズ51は液晶表示パネル2に保持部材25(
図9参照)を介して取り付けることにより、更に凹レンズ51を液晶表示パネル2に近づけて配置させやすくなる。
【0042】
なお、凹レンズ51の対向面が凹面に形成された場合、凹面の端部は凹面の中央部と比較して液晶表示パネル2により近づくので、凹レンズ51自体を液晶表示パネル2から離して配置する必要が生じる。さらに、液晶表示パネル2での映像光の有効サイズよりも、液晶表示パネル2での画素の表示可能範囲が大きく、その外側にも構造物が存在するので、それらを含めて、凹レンズ51との構造干渉を回避するために、凹レンズ51を益々、液晶表示パネル2から離して配置する必要が生じてしまう。このことから、凹レンズ51における液晶表示パネル2との対向面は、凹面よりも平面で形成することが望ましいと考えられる。
【0043】
また、凹レンズ51は、凹レンズ51の焦点距離を、自由曲面凹面ミラー54の焦点距離で割った値が、−0.6以上で−0.3以下を満たす光学特性を有することが望ましい。
【0044】
縮小光学系で光線追跡を表示した
図15を用いて、条件の意味について説明する。自由曲面凹面ミラー54の屈折力(=焦点距離の逆数)が強いと、自由曲面凹面ミラー54で反射した光束の集光位置が自由曲面凹面ミラー54に近づく。逆に、自由曲面凹面ミラー54の屈折力が弱いと、自由曲面凹面ミラー54で反射した光束の集光位置が自由曲面凹面ミラー54から離れる。そして、光束をテレセントリックな状態にするための凹レンズ51は、自由曲面凹面ミラー54の屈折力が強い場合には、凹レンズ51の屈折力(負の値)も強くする必要がある。逆に、自由曲面凹面ミラー54の屈折力が弱い場合には、凹レンズ51の屈折力も弱くする必要がある。従って、焦点距離の比が−0.6よりも小さいと液晶表示パネル2での主光線が収束状態となり、焦点距離の比が−0.3より大きい液晶表示パネル2での主光線が発散状態になってしまう。
【0045】
尚、焦点距離の逆数が屈折力であり、屈折力が強いとはその絶対値が大きいことを意味し、逆に、屈折力が弱いとはその絶対値が小さいことを意味する。
【0046】
次に、小型なヘッドアップディスプレイ装置30を実現できる自由曲面凹面ミラー54と自由曲面レンズ52と凹レンズ51を用いた投影光学系の第1実施形態について説明する。
【0047】
<第1実施形態>
第1実施形態は、
図17のヘッドアップディスプレイ装置30のうち、接眼光学系5の構成に特徴がある。
図1を参照して、投影光学系を構成するウインドシールド6と接眼光学系5について説明する。
図1Aは第1実施形態の接眼光学系5の全体光線図であり、アイボックス8の水平方向X軸と垂直方向Y軸とXY軸に直交するZ軸で定義するYZ平面において虚像面7の映像情報を観察者の眼で見ている様子を表す。また
図1Bは第1実施形態の接眼光学系5の全体光線図であり、XZ平面において虚像面7の映像情報を観察者の眼で見ている様子を表している。
【0048】
YZ平面では右眼と左眼が重なっており(
図1Aの符号9参照)、XZ平面では右眼と左眼が別々に見えている(
図1Bの符号9参照)。
図1Aに示すように、虚像面7は視野方向に対して傾けて配置している。具体的には、視野の上方(Y座標の正側)で虚像距離を大きくし、視野の下方(Y座標の負側)で虚像距離を小さくした。ウインドシールド6は自動車の左右方向に対して対称な形状であるので、ヘッドアップディスプレイ装置30での有効光束が通過するウインドシールド6の範囲を左右対称に表示した。
【0049】
図2は第1実施形態の接眼光学系の要部拡大図である。
図2に示すように、接眼光学系5は偏光板21(液晶表示パネル2の構成部品)側から、凹レンズ51と、自由曲面レンズ52と、折返しミラー53と、正の屈折力の自由曲面凹面ミラー54と、ウインドシールド6とを並べて配置することにより構成されている。凹レンズ51は、液晶表示パネル2の映像光の射出面22に対向して配置される。接眼光学系5の屈折力は、主に自由曲面凹面ミラー54が負担している。凹レンズ51で主にテレセントリック性を実現し、且つ、自由曲面レンズ52で主に歪を補正している。ウインドシールド6で反射した光束が自由曲面凹面ミラー54に向かう光路の下に、折返しミラー53が位置することで、さらに、その光路の下に自由曲面レンズ52が位置することで、ヘッドアップディスプレイ装置30の小型化を実現していることが分かる。
【0050】
図3は第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30のレンズデータを示す図である。
図3に示すレンズデータでは、曲率半径は曲率半径の中心位置が進行方向にある場合を正の符合で表し、面間距離は、各面の頂点位置から次の面の頂点位置までの光軸上の距離を表している。
【0051】
図3に示すように、液晶表示パネル2における映像光の射出面22(
図3の12面に相当する)から凹レンズ51における液晶表示パネル2に対向する対向面51a(
図9参照、
図3の11面に相当)までの第1面間距離d1(
図9参照)は0.122であり、対向面から凹レンズ51に入射した映像光が凹レンズ51から射出する射出面51b(
図9参照、
図3の10面に相当する)までの第2面間距離d2(
図9参照)は4.700であるので、第1面間距離d1は第2面間距離d2よりも短い。即ち、凹レンズ51は凹レンズ51の厚みよりも液晶表示パネル2に近づけて配置される。第1面間距離d1が小さいほど、即ち凹レンズ51が液晶表示パネル2に近いほど好ましく、d1=0の場合は凹レンズ51が液晶表示パネル2に接して配置されることとなる。
【0052】
偏心はX軸方向・Y軸方向・Z軸方向それぞれの値であり、倒れはX軸回りの回転・Y軸回りの回転・Z軸回りの回転であり、偏心・倒れは、該当の面で偏心と倒れの順に作用し、「普通偏心」では、偏心・倒れが作用した新しい座標系上での面間距離の位置に次の面が配置される。デセンタ・アンド・リターンの偏心及び倒れは、その面でのみ作用し、次の面に影響しない。尚、X軸回りの回転はX軸の正方向から見て時計回りが正、Y軸回りの回転はY軸の正方向から見て時計回りが正、Z軸回りの回転はZ軸の正方向から見て反時計回りが正である。
【0053】
硝材名50.30は屈折率1.50でアッベ数が30の材料を、硝材名52.60は屈折率1.52でアッベ数が60の材料を表す。
【0054】
第2面(ウインドシールド6)は、アナモフィック非球面であり、Y方向の曲率半径9686mm(=1/cuy)とX方向の曲率半径5531mm(=1/cux)を用いて、下式(1)により求められる。
【数1】
・・・(1)
【0055】
図4は、第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30の自由曲面係数の図である。
図4の自由曲面係数は、下式(2)により求められる。
【数2】
・・・(2)
【0056】
自由曲面係数C
jは、それぞれの光軸(Z軸)に対して回転非対称な形状であり、円錐項の成分とXYの多項式の項の成分で定義される形状である。例えば、Xが2次(m=2)でYが3次(n=3)の場合は、j={(2+3)
2+2+3×3}/2+1=19であるC
19の係数が対応する。
【0057】
また、自由曲面のそれぞれの光軸の位置は、
図3のレンズデータでの偏心・倒れの量によって定まる。
【0058】
以下に、第1実施形態の接眼光学系のアイボックスサイズや、視野角などの値を、水平方向、垂直方向の順に示す。
アイボックスサイズ 130×40mm
液晶表示パネルでの映像光の有効サイズ 67.4×29.0mm
視野角(全画角) 10×4度
伏角 0.7度
虚像距離 16.5m(伏角方向)
【0059】
凹レンズの焦点距離(−143mm)を自由曲面凹面ミラーの焦点距離(355mm)で割った値が、−0.40である。
【0061】
図5A〜
図5Eの各図は、第1実施形態のヘッドアップディスプレイ装置30の歪性能を表す図である。より詳しくは、
図5Aは、矩形状の虚像面7の範囲に対して、アイボックス8の中央を通過する光線による液晶表示パネル2側での歪図である。
図5B、
図5C、
図5D、
図5Eはアイボックス8の右上隅、左上隅、左下隅、右下隅の各点を通過する光線による液晶表示パネル2側での歪図である。
【0062】
仮に、液晶表示パネル2側に矩形状の画像を表示した状態で、アイボックス8内のそれぞれの位置に眼を位置した場合には、
図5A〜
図5Eと逆の歪(例:樽型⇔糸巻型)が観察される。
図5A〜
図5Eの歪図はほぼ同じ形状になっているので、例えば
図5A〜
図5Eの歪図に合わせた映像を液晶表示パネル2に表示すれば、観察者は歪の無い矩形状の虚像を観察できる。
【0063】
図6は、第1実施形態のヘッドアップディスプレイ装置30のスポット図である。
図6は、虚像面に物点を配置した場合の液晶表示パネル2上でのスポット図であり、アイボックス8全体を通過する光束によるスポット図を、赤色(650nm)・緑色(550nm)・青色(450nm)で別々に表示した図である。このスポット図では、アイボックス8の大きさが水平130mm×垂直40mmの全光束でのスポット図であり、実際の観察者が見る虚像の場合は、人の眼の虹彩の大きさ(最大でφ7mmといわれている)でのスポット図は、大幅に良くなっている。ここで、スポット図は、虚像を物面とした縮小光学系での、液晶表示パネル2の各位置でのスポット図を5倍に拡大強調した図である。
【0064】
図7Aは、各画角位置での主光線Ray1と仮想光線Ray0の角度ずれ図である。また
図7Bは主光線Ray1と仮想光線Ray0の角度θを示す図である。
図7Bに示すように、仮想光線Ray0は、液晶表示パネル2の長辺に平行な回転軸を中心に、液晶表示パネル2の法線を13度回転した直線である。即ち、液晶表示パネル2に対して、照明光学系を13度傾けて配置することを意味する。
図7Aより、角度ずれの最大値が1.9度と小さいことが分かる。
【0065】
従って、本実施形態によれば、自由曲面凹面ミラーと自由曲面レンズと凹レンズを用いた投影光学系により、小型化なヘッドアップディスプレイ装置30を提供できる。
【0066】
<第2実施形態>
第2実施形態は、接眼光学系5の構成が第1実施形態とは異なる点に特徴がある。第2実施形態では小型の液晶表示パネル2と組合せ、折返しミラー53を削除し、ヘッドアップディスプレイ装置30の小型化を優先した実施形態である。
【0067】
図8Aは第2実施形態の接眼光学系5の全体光線図であり、アイボックス8の水平方向X軸と垂直方向Y軸とXY軸に直交するZ軸で定義するYZ平面において虚像面7の映像情報を観察者の眼で見ている様子を表す。
図8Bは、XZ平面において虚像面7の映像情報を観察者の眼で見ている様子を表す。
図9は第2実施形態の接眼光学系の要部拡大図である。
【0068】
図8A、
図8B、
図9に示すように、接眼光学系5は偏光板21(液晶表示パネル2の構成部品)側から、凹レンズ51と、自由曲面レンズ52と、正の屈折力の自由曲面凹面ミラー54とが配置され、それに次いでウインドシールドが並べて配置される。
【0069】
図10は第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30のレンズデータを示す図である。
図11は、第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30の自由曲面係数の図である。
【0070】
以下に、第2実施形態の接眼光学系のアイボックスサイズや、視野角などの値を、水平方向、垂直方向の順に示す。
アイボックスサイズ 130×40mm
液晶表示パネルでの映像光の有効サイズ 39.5×20.4mm
虚像サイズ 240×90mm
視野角(全画角) 6.9×2.6度
伏角 5.1度
虚像距離 2.1m
【0071】
凹レンズの焦点距離(−90mm)を自由曲面凹面ミラーの焦点距離(188mm)で割った値が、−0.48である。
【0072】
次に、第2実施形態の光学性能について
図12A〜
図12E、
図13、
図14A、
図14Bを用いて説明する。
図12A〜
図12Eは、第2実施形態のヘッドアップディスプレイ装置30の歪性能を表す図である。より詳しくは、
図12Aは、矩形状の虚像面7の範囲に対して、アイボックス8の中央を通過する光線による液晶表示パネル2側での歪図である。
図12B、
図12C、
図12D、
図12Eはアイボックス8の右上隅、左上隅、左下隅、右下隅の各点を通過する光線による液晶表示パネル2側での歪図である。
図13は、第2実施形態のヘッドアップディスプレイ装置30のスポット図である。
図14Aは、各画角位置での主光線と液晶表示パネル2の法線との角度ずれ図である。
図14Bは主光線と液晶表示パネル2の法線との角度θを示す図である。
図14Aより、主光線と液晶表示パネル2の法線との角度ずれの最大値が2.8度と小さいことが分かる。
【0073】
従って、本実施形態によれば、自由曲面凹面ミラーと自由曲面レンズと凹レンズを用いた投影光学系により、小型化なヘッドアップディスプレイ装置30を提供できる。
【0074】
<第3実施形態>
第3実施形態は、画像形成ユニット10の構成が第1実施形態や第2実施形態とは異なる点に特徴がある。
図18を参照して、第3実施形態について説明する。
図18は、第3実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が備える画像形成ユニットの概略構成図である。
【0075】
第1実施形態では液晶表示パネル2の映像情報を、直接、接眼光学系5で拡大し、虚像として表示しているが、この画像形成ユニット10の構成に代えて、より小型の液晶表示パネル2を用いて、その映像情報をライトバルブの像を形成するリレー光学系3でスクリーン板(拡散板)上に拡大写像し、その映像情報を接眼光学系で拡大し、虚像として表示している。
【0076】
より詳しくは、バックライト1から液晶表示パネル2に照射された光束は、液晶表示パネル2に表示された映像情報を含んだ映像光束として、リレー光学系3に入射する。像光はスクリーン板4の射出面401から接眼光学系5に向かって射出される。リレー光学系3での結像作用により、液晶表示パネル2上の映像情報は拡大されスクリーン板(拡散板)4上に拡大投写される。液晶表示パネル2上の点P1・P2・P3が、それぞれスクリーン板(拡散板)4の点Q1・Q2・Q3に対応する。リレー光学系3を用いることで、表示サイズの小さい液晶表示パネルを使用することができる。バックライト1、液晶表示パネル2、リレー光学系3、及びスクリーン板(拡散板)4は、スクリーン板(拡散板)4上に画像情報(映像情報)を形成するので、これらを総称して画像形成ユニット10という。
【0077】
また、スクリーン板(拡散板)4は、マイクロレンズを2次元状に配置したマイクロレンズアレイにより構成される。これにより拡散作用が生じ、スクリーン板4を出射する光束の広がり角を大きくしており、アイボックス8の大きさを、所定の大きさにしている。尚、スクリーン板(拡散板)4の拡散作用は、拡散粒子を内蔵することでも実現できる。
【0078】
<第4実施形態>
第4実施形態は、画像形成ユニット10の構成が第1実施形態や第2実施形態とは異なる点に特徴がある。
図19を参照して、第4実施形態について説明する。
図19は、第4実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が備える画像形成ユニットの概略構成図である。
【0079】
第1実施形態では液晶表示パネル2の映像情報を、拡散機能を有するスクリーン板4に写像しているが、この画像形成ユニット10の構成に代えて、レーザー光源301と、レーザー光源301から射出されるレーザー光を操作する光走査部302とを含む微小電気機械システム(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)を用いて構成してもよい。光走査部302は反射面302a及び反射面回転駆動部302bを含む。MEMSは、レーザーを光走査することで、拡散機能を有するスクリーン板4に光走査像を形成する。映像光はスクリーン板4の射出面401から接眼光学系5に向かって射出される。第4実施形態の画像形成ユニットは、このMEMSで光線角度を振ることで光走査する位置を、射出瞳位置に合わせて配置する。MEMSの回転中心位置は、接眼光学系5側で想定した位置に合わせて構成される。