【実施例】
【0043】
実施例1:クチナシからのクロシン成分の抽出分離
クチナシの乾燥・成熟した果実40.0kgを採取し、適切な粉砕の後、4倍量の60%エタノールで加熱還流して3回抽出した。毎回2時間かけて行った。抽出液を合わせて減圧下で溶媒を除去して、クチナシ全部抽出物として6.2kg(収率15.5%)を得た。抽出物を適量の水に溶解して遠心分離し、上清をマクロポーラス樹脂オープンカラムのクロマトグラフィー(20.0×90cm)を行った。4倍のベッド容量の水、30%、50%、70%、95%のエタノールで勾配溶出し、各溶出液を回収し、それぞれ減圧下で溶媒を回収して、約4.5kgの水の溶出と30%エタノールの溶出を組合わせたものを得、710.0gの50%エタノールで溶出されたものを得、150.0gの70%エタノールで溶出されたものを得、112.0gの95%エタノールで溶出されたものを得た。70%エタノールで溶出されたものがクチナシクロシン活性成分であった。
70%エタノール溶出成分150gがシリカゲルカラムクロマトグラフィー(φ7×60cm)、クロロホルム−メタノール−水99:1〜6:4:0.8による勾配溶出により、化合物GJ−11(49.1mg)、GJ−12(136.5mg)、GJ−13(7.0g)をそれぞれ析出させた。
シリカゲルサブフラクションFr.9をODSカラムクロマトグラフィー、メタノール−水30%−70%による勾配溶出により、化合物GJ−19(545.1mg)を析出させ、HPLC、60%メタノール−水による溶出により化合物GJ−20(265.7mg)を得、HPLC、68%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、化合物GJ−1(120.0mg)、およびGJ−3とGJ−4との混合物104.8mg(1:2で混合)を得た。さらに、水(0.3%TEAA):アセトニトリル=55:45により化合物GJ−3とGJ−4を分離した。
シリカゲルサブフラクションFr.7をODSカラムクロマトグラフィー、メタノール−水40%−80%による勾配溶出により、化合物GJ−11(16.0mg)を析出させ、HPLC、55%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、化合物GJ−2(6.3mg)を得た。HPLC、42%アセトニトリル−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、GJ−13(8.0mg)、化合物GJ−5(16.0mg)を得た。
シリカゲルサブフラクションFr.8をODSカラムクロマトグラフィー、メタノール−水55%−65%による勾配溶出により、化合物GJ−16(143.7mg)を析出させ、HPLC、55%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、化合物GJ−6(59.1mg)、GJ−2(21.9mg)を得た。HPLC、68%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、化合物GJ−1(400.9mg)を得た。HPLC、32%アセトニトリル−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、GJ−17(1.8mg)、GJ−18(3.5mg)を得た。
シリカゲルサブフラクションFr.6をODSカラムクロマトグラフィー、メタノール−水50%−90%による勾配溶出により、化合物GJ−15(315.7mg)を析出させ、HPLC、60%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、化合物GJ−10(10.0mg)を得た。HPLC、65%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、GJ−9(2.0mg)、GJ−7(66.2mg)を得た。HPLC、70%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、GJ−8(10.0mg)を得た。
【0044】
得られた化合物の構造は表2−1および表2−2に示すとおりである。
【表2-1】
【表2-2】
【0045】
得られた化合物の物性データは以下の通りである。
化合物GJ−1:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 1011[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 989.3642[M+H]
+(calcd for C
48H
61O
22,989.3654),化合物GJ−1の分子式がC
48H
60O
22であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):433(5.32),458(5.28),331(4.68),253(4.52)nm;IR(KBr)ν
max968,1061,1224,1268,1576,1610,1694,2920,3401cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0046】
化合物GJ−2:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 1011[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 989.3646[M+H]
+(calcd for C
48H
61O
22,989.3654),化合物GJ−2の分子式がC
48H
60O
22であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):431(4.63),457(4.56),331(4.12),249(3.85);IR(KBr)ν
max1064,1230,1279,1602,1698,2921,3417cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6150MHz)は表3に示した。
【0047】
化合物GJ−3:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 1011[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 1011.3471[M+Na]
+(calcd for C
48H
60O
22Na,1011.3474),化合物GJ−3の分子式がC
48H
60O
22であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):429(5.04),453(4.99),324(4.68),251(4.04)nm;IR(KBr)ν
max969,1062,1229,1277,1607,1693,2920,3368cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0048】
化合物GJ−4:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 1011[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 1011.3471[M+Na]
+(calcd for C
48H
60O
22Na,1011.3474),化合物GJ−4の分子式がC
48H
60O
22であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):429(5.04),453(4.99),324(4.68),251(4.04)nm;IR(KBr)ν
max969,1062,1229,1277,1607,1693,2920,3368cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0049】
化合物GJ−5:赤色アモルファス粉末,ESI−MS(positive):m/z 675[M+Na]
+,m/z 1327[2M+Na]
+,化合物GJ−14の分子量が652であると推定する。HR−ESI−MS:675.2617[M+Na
+](算出値:675.2629),化合物GJ−14の分子式がC
32H
44O
14であることを確認した。
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0050】
化合物GJ−6:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 1205[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 1183.4479[M+H]
+(calcd for C
55H
75O
28,1183.4445),化合物GJ−6の分子式がC
55H
74O
28であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):434(5.22),459(5.17),330(4.78),242(4.65);IR(KBr)ν
max1059,1119,1225,1273,1610,1701,2920,3385cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0051】
化合物GJ−7:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 881[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 881.3188[M+Na]
+(calcd for C
43H
54O
18Na,881.3208),化合物GJ−7の分子式がC
43H
54O
18であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):430(5.33),454(5.28),326(4.80),242(4.78);IR(KBr)ν
max 972,1069,1179,1227,1284,1610,1697,2922,3391cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0052】
化合物GJ−8:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 703[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 703.2904[M+Na]
+(calcd for C
34H
48O
14Na,703.2942),化合物GJ−8の分子式がC
34H
48O
14であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):430(4.64),456(4.59),322(3.84),257(3.95);IR(KBr)ν
max1074,1229,1697,2925,3400cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0053】
化合物GJ−9:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 659[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 659.2657[M+Na]
+(calcd for C
32H
44O
13Na,659.2680),化合物GJ−9の分子式がC
32H
44O
13であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):438(4.63),462(4.60),328(3.90),261(3.94);IR(KBr)ν
max1071,1515,1694,2921,3277cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0054】
化合物GJ−10:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 645[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 645.2519[M+Na]
+(calcd for C
31H
42O
13Na,645.2523),化合物GJ−10の分子式がC
31H
42O
13であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):428(4.56),453(4.50),320(4.11),257(4.10);IR(KBr)ν
max1072,1230,1700,2924,3416cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【表3】
【0055】
実施例2:クチナシにおけるクロシン単体のH
2O
2及びL−グルタミン酸誘発SH−SY5Y細胞傷害モデルにおける神経保護効果
【0056】
2.1 SH−SY5Y神経細胞培養法
SH−SY5Y神経細胞をDMEM培地(5体積%ウシ胎児血清を含む)で培養し、5%CO
2を含むインキュベーター内で37℃で培養し、3〜4日ごとに継代した。実験は、対数増殖期細胞を取って行った。
【0057】
2.2 過酸化水素損傷モデルスクリーニング法
SH−SY5Y細胞を96ウェルプレートに5×10
3の濃度で接種し、24時間続いて培養し、H
2O
2を含む医薬品液体培地100μLを96ウェルプレートに加えて、H
2O
2の最終濃度を400μMにし、医薬品の最終濃度を10μM、1μMおよび0.1μMにして各濃度について平行の3つのウェルを設定し、培養を24時間続けた。24時間後、上清を吸引し、100μLのMTT(0.5mg/mL)を各ウェルに添加し、インキュベーションを4時間続け、上清を吸引した。各ウェルに150μLのDMSOを添加し、10分間振とうし、570nmの波長を選択して、マイクロプレートリーダーで吸光度値
[12]を測定する。(有効率%=(OD
医薬品−OD
モデル)/(OD
コントラスト−OD
モデル)*100)、スクリーニング結果を表4に示す。
【表4】
【0058】
2.3 L−グルタミン酸損傷モデルスクリーニング法
SH−SY5Y細胞を96ウェルプレートに5×10
3の濃度で接種し、24時間続いて培養し、L−グルタミン酸を含む医薬品液体培地100μLを96ウェルプレートに加えて、L−グルタミン酸の最終濃度を160mMにし、医薬品の最終濃度を10μM、1μMおよび0.1μMにして各濃度について平行の3つのウェルを設定し、培養を24時間続けた。24時間後、上清を吸引し、100μLのMTT(0.5mg/mL)を各ウェルに添加し、インキュベーションを4時間続け、上清を吸引した。各ウェルに150μLのDMSOを添加し、10分間振とうし、570nmの波長を選択して、マイクロプレートリーダーで吸光度値[非特許文献13を参照]を測定する。(有効率%=(OD
医薬品−OD
モデル)/(OD
コントラスト−OD
モデル)*100)、スクリーニング結果を表5に示した。
【表5】
【0059】
実験結果によれば、化合物GJ−1〜GJ−10のいずれがH
2O
2誘発SY5Y細胞損傷モデルにおいて良好な保護を示し、化合物GJ−6、GJ−10、GJ−8がさらに優れた保護作用を示した。化合物GJ−1〜GJ−10のいずれがL−グルタミン酸誘発SY5Y細胞損傷モデルにおいても良好な保護を示し、化合物GJ−1、GJ−6、GJ−7、GJ−10、GJ−9、GJ−8がさらに優れた保護作用を示した。上記の実験結果から、異なる損傷モデルにおける各化合物の有効性は異なり、これはH
2O
2誘発損傷のメカニズムが酸化ストレスであるが、L−グルタミン酸誘発損傷のメカニズムが興奮性アミノ酸によって興奮毒性損傷が引き起こされ、化合物が異なるメカニズムによって損傷保護を発揮することが知られる。