(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6740410
(24)【登録日】2020年7月28日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】下水処理方法及び下水処理装置
(51)【国際特許分類】
B02C 18/00 20060101AFI20200730BHJP
C02F 1/00 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
B02C18/00 103Z
B02C18/00 102A
C02F1/00 J
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-41518(P2019-41518)
(22)【出願日】2019年3月7日
【審査請求日】2019年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】500433959
【氏名又は名称】月島テクノメンテサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正井 一生
(72)【発明者】
【氏名】日諸 銀之輔
(72)【発明者】
【氏名】原 正和
(72)【発明者】
【氏名】篠木 一真
【審査官】
瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−279859(JP,A)
【文献】
特表2012−521285(JP,A)
【文献】
特表2013−537103(JP,A)
【文献】
特開2003−080096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 9/00−11/08、13/00−13/31、
18/00−18/38、19/00−25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水を2軸破砕装置に流入させ、前記下水に含まれる夾雑物を破砕して第1夾雑物とし、この第1夾雑物を含む第1処理液を得る破砕工程と、
前記第1処理液を切断装置に流入させ、前記第1夾雑物を切断して第2夾雑物とし、この第2夾雑物を含む第2処理液とする切断工程と、を有し、
前記2軸破砕装置は、周部に破砕刃を有する平行に配置された2本の回転軸を備え、これらの回転軸で前記夾雑物を挟みながら破砕して、厚さ10mm以下の前記第1夾雑物とする装置であり、
前記切断装置は、
前記第1処理液の流れの中に、前記第1処理液の流れ方向の回転軸線周りに回転するホルダーに保持された切断刃と、前記第1処理液の流れ方向と交差して設けられた、複数の透過孔を有する対向板と、前記第1処理液を流入させる流入部を有し、
前記対向板と、前記流入部における前記第1処理液の流入方向と、でなす角度が鋭角となるように前記対向板を備えるものであり、
前記切断工程は、前記切断刃を前記対向板に近接又は接触した対向状態で回転させて、前記第1夾雑物を切断して、長さ50mm以下の前記第2夾雑物とし、前記対向板の前記透過孔を透過させて前記第2処理液とする、
ことを特徴とする下水処理方法。
【請求項2】
前記破砕工程で得られた前記第1処理液を前記破砕装置の流出部から前記切断装置の流入部へ、径が実質一定の配管で送水する工程を有する、
請求項1に記載の下水処理方法。
【請求項3】
前記第2処理液を最初沈殿池に流入させ、当該最初沈殿池から下水生汚泥として引き抜く工程を有する、
請求項1に記載の下水処理方法。
【請求項4】
前記2軸破砕装置から流出した前記第1処理液が前記切断装置まで到達する時間が60秒以内である、
請求項1に記載の下水処理方法。
【請求項5】
流入された下水に含まれる夾雑物を破砕して切断する下水処理装置であって、
前記下水処理装置は、
夾雑物を破砕して第1夾雑物とし、この第1夾雑物を含む第1処理液を得る2軸破砕装置と、
前記第1夾雑物を切断して第2夾雑物とし、この第2夾雑物を含む第2処理液を得る切断装置と、からなり、
前記2軸破砕装置は、周部に破砕刃を有する平行に配置された2本の回転軸を備え、これらの回転軸で前記夾雑物を挟みながら破砕して、厚さ10mm以下の前記第1夾雑物とするものであり、
前記切断装置は、
前記第1処理液の流れの中に、前記第1処理液の流れ方向の回転軸線周りに回転するホルダーに保持された切断刃と、前記第1処理液の流れ方向と交差して設けられた、複数の透過孔を有する対向板と前記第1処理液を流入させる流入部を有し、
前記対向板と、前記流入部における前記第1処理液の流入方向と、でなす角度が鋭角となるように前記対向板を備え、前記切断刃を前記対向板に近接又は接触した対向状態で回転させて、前記第1夾雑物を切断して前記第2夾雑物とするものである、
ことを特徴とする下水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理方法及び下水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、家庭排水や事業場排水、工場排水等の下水は、下水管に排水され、中継ポンプ場や下水道幹線を経て、下水処理場に集水されて処理される。処理された水は、河川や海に放流される。
【0003】
この排水される下水には、一例にプラスチック類や下着、雑巾、脱脂綿等の繊維類、ウエス、トイレットペーパー、毛髪等の様々な夾雑物が含まれる。これら夾雑物は、下水処理場で処理された水と共に河川や海に放流することができず、例えば、中継ポンプ場や下水処理場に備わる沈砂池に設置されるスクリーン設備によって捕集され、産業廃棄物として処理される。
【0004】
近年、エネルギーの有効活用化、下水処理場のスケールメリットを生かし、従来の下水以外の汚水も下水処理場で集約して処理を推進する傾向にある。ここで、従来の下水以外の汚水としては、例えば、浄化槽、農業・漁業集落排水設備等の汚水があり、これらの汚水には、生ごみ、産業廃棄物、おむつ片が含まれる場合がある。
【0005】
この下水処理場での集約処理の推進により、下水処理場に流入する夾雑物が増大化する傾向にある。
【0006】
下水処理場において、夾雑物の増大は、下水処理をする各工程に備わる槽(池)や設備機器に様々な不具合をもたらす原因となる。
【0007】
そこで、夾雑物の増大に対しては、夾雑物を好適なサイズに破砕することにより不具合を抑制するという手法を採ることができる。
【0008】
夾雑物を破砕する技術として、特許文献1や特許文献2が開示されている。特許文献1は、第1の破砕手段と受容水槽と第2の破砕手段を備えた装置に関するものであり、し渣等の固形異物をこれら破砕手段で破砕する技術である。しかしながら、これらの破砕手段は一対の直立破砕ユニットで固形異物を破砕するため、破砕物が切れずに帯状に伸びてしまう。そうすると、破砕物が槽(池)や設備機器に付着したり、絡まったりして不具合をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5336266号公報
【特許文献2】特表2012−521285号公報
【特許文献3】特表2013−537103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする主たる課題は、下水に含まれる夾雑物を好適なサイズに破砕し、切断する下水処理方法及び下水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した本発明の代表的態様は以下のとおりである。
【0012】
<第1の態様>
下水を2軸破砕装置に流入させ、前記下水に含まれる夾雑物を破砕して第1夾雑物とし、この第1夾雑物を含む第1処理液を得る破砕工程と、
前記第1処理液を切断装置に流入させ、前記第1夾雑物を切断して第2夾雑物とし、この第2夾雑物を含む第2処理液とする切断工程と、を有し、
前記2軸破砕装置は、
周部に破砕刃を有する平行に配置された2本の回転軸を備え、これらの回転軸で前記夾雑物を挟みながら破砕して前記第1夾雑物とする装置であり、
前記切断装置は、前記第1処理液の流れの中に、前記第1処理液の流れ方向の回転軸線周りに回転するホルダーに保持された切断刃と、前記第1処理液の流れ方向と交差して設けられた、複数の透過孔を有する対向板とを備え、
前記切断工程は、前記切断刃を前記対向板に近接又は接触した対向状態で回転させて、前記第1夾雑物を切断して前記第2夾雑物とし、前記対向板の前記透過孔を透過させて前記第2処理液とする、
ことを特徴とする下水処理方法。
【0013】
下水に含まれる夾雑物は、例えば、中継ポンプ場や沈砂池に備わるスクリーン設備で捕集することが可能であるが、同スクリーン設備を通過した夾雑物は、その下流に備わる処理施設や処理機器に付着したり、絡まったりして、処理施設の操業に重大な影響を及ぼす。この夾雑物を含む下水を2軸破砕装置に流入させると、回転軸相互に挟まれる夾雑物は破砕され、結果、破砕された第1夾雑物と、破砕されずに2軸破砕装置を通過した小サイズの夾雑物とを含む第1処理液を得る。この第1夾雑物の厚さはおよそ回転軸相互の幅と同程度となる。しかしながら、この第1夾雑物のうちには、厚さはないものの長い糸状物や帯状物となったものが存在する。そこで、第1夾雑物を含む第1処理液を切断装置に送り、この切断装置に備わる切断刃を対向板に近接又は接触した対向状態で回転させて第1夾雑物を切断する。そうすると、第2処理液に含まれる夾雑物は、2軸破砕装置を通過し、かつ、切断装置を通過した好適なサイズのもので構成されるので、下流に備わる処理施設や処理機器、及びこれらのバリ部分に付着したり、絡まったりすることを抑制することができる。
【0014】
切断装置に送られた夾雑物のうちの、対向板の透過孔を透過できないサイズの夾雑物は、対向板に留まる(引っ掛かる)。この対向板に留まった(引っ掛かった)夾雑物は、切断刃の回転で切断される。対向板に留まっていた夾雑物は切断され、下水の水流に沿って、透過孔を透過する。
【0015】
夾雑物が対向板に付着したままだと、処理する下水によっては第1処理液の継続的または断続的な流入で次第に対向板に夾雑物が堆積し、固化したり、肥大化したりして、対向板の閉塞をもたらすおそれがある。切断刃を対向板に接近又は接触した対向状態で回転させると、対向板に付着した夾雑物を切断刃が掻き剥がすように落とす。これにより、対向板に夾雑物が堆積するのを防止できる。
【0016】
<第2の態様>
前記2軸破砕装置は、前記夾雑物を破砕して厚さ10mm以下の第1夾雑物とするものであり、
前記切断装置は、前記第1夾雑物を切断して長さ50mm以下の第2夾雑物とするものである、態様を挙げることができる。
【0017】
これらの装置により、厚さ10mm以下、長さ50mm以下のサイズの夾雑物が得られるので、下流に備わる処理施設や処理機器、これらのバリ部分に、この得られた夾雑物が付着し、絡まるのをさらに抑制できる、という効果を有する。
【0018】
<第3の態様>
前記切断装置は前記第1処理液を流入させる流入部を有し、
前記対向板と、前記切断装置の流入部における前記第1処理液の流入方向と、でなす角度が鋭角となるように前記対向板を備える、態様を挙げることができる。
【0019】
対向板が、切断装置の流入部における第1処理液の流れ方向に対して鋭角であるので、透過孔も鋭角となる。このように対向板を備えると、夾雑物が、透過孔を透過し難くなり対向板に引っ掛かり留まり易くなる。相対的に長い夾雑物のみならず、相対的に大きくない夾雑物であっても対向板に留まり易くなるので、夾雑物をより微細に切断できる、との効果を有する。
【0020】
<第4の態様>
前記2軸破砕装置から流出した第1処理液が前記切断装置まで到達する時間が60秒以内である、態様を挙げることができる。
【0021】
第1処理液には破砕装置で破砕された第1夾雑物が含まれる。第1夾雑物をしばらくの間切断しない状態にしておくと、第1夾雑物が変形したり、再度凝集して大きな塊となったりして、切断装置による切断が困難となる。そのため、第1処理液が切断装置まで到達する時間を60秒以内とすることで、夾雑物の変形や再凝集化を防止し、切断装置で容易に切断できるようにする、との効果を有する。
【0022】
<第5の態様>
流入された下水に含まれる夾雑物を破砕して切断する下水処理装置であって、
前記下水処理装置は、
夾雑物を破砕して第1夾雑物とし、この第1夾雑物を含む第1処理液を得る2軸破砕装置と、
前記第1夾雑物を切断して第2夾雑物とし、この第2夾雑物を含む第2処理液を得る切断装置と、からなり、
前記2軸破砕装置は、周部に破砕刃を有する平行に配置された2本の回転軸を備え、これらの回転軸で前記夾雑物を挟みながら破砕して前記第1夾雑物とするものであり、
前記切断装置は、前記第1処理液の流れの中に、前記第1処理液の流れ方向の回転軸線周りに回転するホルダーに保持された切断刃と、前記第1処理液の流れ方向と交差して設けられた、複数の透過孔を有する対向板とを備え、前記切断刃を前記対向板に近接又は接触した対向状態で回転させて、前記第1夾雑物を切断して前記第2夾雑物とするものである、
ことを特徴とする下水処理装置、とする態様を挙げることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、下水に含まれる夾雑物が破砕され、かつ、細かく切断されることにより、下水処理施設や処理機器への付着や、絡まり、閉塞等の不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】別の実施形態の2軸破砕装置の示す図である。
【
図9】対向板と、前記流入部における前記第1処理液の流入方向と、でなす角度の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。
【0026】
(下水処理施設)
家庭や事業場から排水される下水は、汚水ますから、下水管、下水道幹線に流れ込み、また中継ポンプ場を経由して下水処理場に流入される。下水処理場に流入された下水は、一例に沈砂池、最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池、塩素混和地等を経て、系外に放流される。最初沈殿池で池底に沈殿した汚泥(生汚泥)と、最終沈殿池で池底に沈殿した活性汚泥は、汚泥貯留槽に一時貯留されて混合される。そして、この混合された汚泥は汚泥処理施設で濃縮、脱水、焼却等により減容化される。最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池、塩素混和地等の各処理施設には、計測機器や撹拌機、汚泥掻き寄せ機等多種の機械設備が備わる。汚泥処理施設に送泥された汚泥は、一例に、濃縮槽、消化槽、脱水機、焼却炉を経て処理される。
【0027】
(下水)
従来、下水は主に家庭排水や工業排水、事業場排水等で構成されていた。また、枝葉や茎、草等の植物、土壌等も下水に混入することがあった。近年では下水処理場のスケールメリットを生かし、浄化槽排水、農集排水、生ごみ、おむつ等を下水道に集約して処理することで発生する汚泥を焼却して、エネルギー化する傾向にある。しかしながら、これらを下水と共に下水処理場に流入させ集約処理すると、夾雑物の量も増加することになる。
【0028】
(夾雑物)
下水処理施設(例えば、ポンプ場や貯留管、下水処理場等、汚泥処理施設)の下水に含まれる夾雑物には、プラスチック類や下着、雑巾、脱脂綿等の繊維類、ウエス、トイレットペーパー、毛髪、生ごみ、オイルボール、おむつ片を例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0029】
夾雑物は、ポンプ場や沈砂池に備わるスクリーン設備で捕集することが可能であるが、一般に夾雑物の形態(例えば、大きさや長さ)は、様々であるため、同スクリーン設備で捕集されずに透過してしまうものもある。夾雑物を含む下水が下水処理場、特に最初沈殿池以降の各処理施設に流入してしまうと、各処理施設に備わる設備機器に、夾雑物が絡む等して設備機器の動作不良等のトラブルを引き起こし、場合によっては、下水処理場全体の操業に支障をきたすこととなる。また、消化槽で汚泥を減容処理する際に汚泥を加温するための熱交換器を設ける場合があるが、夾雑物が熱交換器内の配管等に絡んでしまい、熱交換器を閉塞させる不具合を発生させることもある。
【0030】
このようなトラブルや不具合を極力減らすために、設備機器や配管への夾雑物による付着や絡みつきをなくする対策を講じるとよい。例えば、夾雑物を破砕したり、切断したりして小サイズにする対策を挙げることができる。夾雑物を破砕したり、切断したりするには、特に限定されず公知の手段をとることができるが、破砕装置や切断装置を下水処理施設に備えることが好ましい。
【0031】
(破砕装置)
破砕装置の構造に限定はないが、回転軸を複数本有する破砕装置(例えば、2軸せん断破砕機や多軸せん断破砕機)を用いることができる。2軸破砕装置20を例にとって以下説明する。2軸破砕装置として、周部に破砕刃を有する平行に配置された2本の回転軸を備え、これらの回転軸で夾雑物を挟みながら破砕して第1夾雑物とする装置を、例示できる。2軸破砕装置20は、軸芯回りに回転する実質的に平行な2本の第1回転軸24A及び第2回転軸24Bを有する。第1回転軸24A及び第2回転軸24Bは、ギアモータ等で回転させるとよい。第1回転軸24Aには、径方向外側に突出する破砕刃23aが複数設けられた破砕円盤23Aが軸芯方向に複数設けられている形態を用いるとよい。破砕刃23aは少なくとも破砕円盤23Aの外周部に1つ有していると好ましい。軸芯方向に沿う破砕円盤23A群の破砕刃23aの位置は、破砕円盤23A毎に軸芯周り方向に相違していてもよいし、一列に並んでいてもよい。第2回転軸24Bにも同様に、径方向外側に突出する破砕刃23bが複数設けられた破砕円盤23Bが軸芯方向に複数設けられている。破砕刃23bは少なくとも外周部に1つ有し、かつ、軸芯方向に沿う破砕円盤23Bの破砕刃23bの位置は、破砕円盤23B毎に軸芯周り方向に相違していてもよいし、一列に並んでいてもよい。破砕円盤23A群及び破砕円盤23B群各々は、軸芯に沿って間隔を空けて配されてもよいし、隣接する破砕円盤相互が隙間なく接して配されていてもよい。破砕円盤23A及び破砕円盤23B各々の面方向は回転軸方向に対して実質的に垂直である。これら破砕刃23aを有する第1回転軸24Aと破砕刃23bを有する第2回転軸24Bがケーシング25内に配置されている構造とすることができる。この構造にする場合、ケーシング25に備わる流入部22から下水10を破砕装置20に流入させ、第1処理液38を流出部21から流出させるように、下水10を流すとよい。第1回転軸24Aに設けられた破砕円盤23A群と第2回転軸24Bに設けられた破砕円盤23B群とは、7〜10mm離間しているとよい。また、両回転軸24A、24Bは、下水10の流入方向に対して交差する方向に配置するとよい。
【0032】
ケーシング25は必ずしも設けなくてもよく、下水が流れる水路内や配管内に、ケーシング25を備えない2軸破砕装置20を備えてもよい。また、下水10は、その全てを同2軸破砕装置20に送ってもよいし、その一部を送ってもよいが、全てを送るのが好ましい。
【0033】
下水10を破砕装置に流入させると、下水10に含まれる夾雑物が破砕刃により破砕される。そして、破砕された夾雑物を含む処理液38(以下、「第1処理液38」ともいう。)が破砕装置から流出される。夾雑物のうちの相対的に小さいものは、同破砕装置で適宜破砕されるか、又は破砕されずに通過する。また、相対的に大型の夾雑物は、回転軸相互の間隔の厚さに破砕されたり、圧縮されたりして、糸状や帯状の形態になる場合がある。第1処理液38に含まれる糸状や帯状の形態物は、例えば、厚さがおよそ10mm以下となるが、長さが例えば、50cm超のものも存在し、これら糸状や帯状の形態物は、処理工程の下流に備わる設備に付着したり、絡まったり等して不具合をもたらすおそれがある。なお、この破砕装置を通過した第1処理液38に含まれる夾雑物には、破砕された第1夾雑物と破砕されずに回転軸相互の間を通過した夾雑物とが含まれる。
【0034】
(切断装置)
切断装置としては、切断刃で破砕するものであればその切断装置の構成は特に制限されるものではないが、夾雑物を切断するには、本実施形態に示す切断装置30を好適に利用できる。また、特許文献2や特許文献3に開示される切断装置や月島テクノメンテサービス株式会社が販売する製品「ロタカット」であってもよい。本実施形態に示す切断装置30は第1処理液38の流れ方向38bの回転軸線周りに回転するホルダー32に保持された切断刃35と、前記第1処理液38の流れ方向38bと交差して設けられた、複数の透過孔34aを有する対向板34とを備える。切断刃35は、切断刃本体が刃となっている形態であってもよいし、回転羽根35bに刃先35aを備えた形態であってもよい。夾雑物は、切断刃35と、対向板34とで挟まれ、せん断力を受け切断される。
図4を参照しつつ説明すると、切断装置30には、切断刃35(回転羽根35bと回転羽根に備わる刃先35a)が、対向板34面と対向して備わっている。対向板34面には同対向板34を貫通する透過孔34aが複数設けられている。対向板34は、刃を備えてもよいし、備えなくてもよい。刃を備える場合は、刃は、例えば、対向板34における第1処理液38の上流側面34A上に設けてもよいし、透過孔の縁を刃状に形成して設けてもよい。対向板34の形態として、網状のものでもよく、この網自体が刃先となっている、いわゆる網刃でもよい。また、穴あき板や篩板、格子板でもよく、穴あき板や篩板、格子板における透過孔の縁が刃先で形成されている形態を提示できる。さらに、
図6に示すように、中心から外方へ渦状に次第に広がりながら、ほぼ四角形状やほぼ三角形状の透過孔34aを並べた対向板の形態であってもよい。
【0035】
切断刃35は、対向板34に対して上流側に設置するとよい。夾雑物は、対向板34の透過孔34aを通過する際に、対向板34と切断刃35との間で生じる剪断力によって切断されるが、このように配置すると、切断装置30を流れる第1処理液に含まれる夾雑物のうちの対向板34に留まった(又は、引っ掛かった)夾雑物が、回転する切断刃35により切断され好ましい。
【0036】
切断刃35は回転自在なホルダー32に備わり、ホルダー32が回転すると切断刃35は、同上流側平面34Aに沿って回転する。切断刃35aと、対向板34の上流側平面34Aとは、近接又は接触した対向状態で回転する。
【0037】
切断刃35と、対向板34の上流側平面34Aとが接触していると、切断刃35の回転により切断刃35が同上流側平面34Aに付着した夾雑物を掻き剥がすとともに、夾雑物が確実に切断され好適である。切断刃35の刃先35aを上流側平面34Aに接触させた状態が維持される手段の一例として、切断刃35に備わるホルダー32を、切断刃35から対向板34へ向かう方向(付勢方向)42に付勢する手段33aを挙げることができる。これにより切断刃35は、付勢方向42に引っ張られた(付勢された)状態で、対向板34の上流側平面34Aに接触したまま回転することが可能となる。付勢手段33aとしては、バネや油圧シリンダ等、公知の手段を利用できる。なお、ホルダー32はギアモータ等で回転させるとよい。
【0038】
切断刃35は回転羽根状に形成できる。この場合、羽根の枚数を適宜、設定することができる。例えば、1枚としてもよいし、2枚、3枚、4枚、5枚、8枚等、2〜8枚のいずれかの枚数としてもよい。
【0039】
対向板34の透過孔34aの形状は、特に限定されないが、例えば、ほぼ円形、ほぼ三角形〜ほぼ六角形からなる多角形、格子状、網状等にすることができる。透過孔34aの幅(又は径)は適宜設定することができ、例えば10〜40mmとすると、夾雑物が適度に切断されて透過孔34aを透過するので好ましい。
【0040】
本実施形態の切断装置30には、第1処理水38が流入する流入部36と対向板34を透過した水、すなわち第2処理水39が流出する流出部37とが備わる。対向板34は流入部36における第1処理水38の流入方向38aに対して交差するように備わっている。対向板34(すなわち、対向板34面の傾き34r)と、切断装置30の流入部36における第1処理液38の流入方向38aと、でなす角度θは直角でもよいが、
図9に示すように鋭角にすると好ましい。特に、鋭角にしたときの角度θを15°以上にすると好適である。鋭角にすると、夾雑物が対向板34に引っ掛かって留まりやすくなるので、切断される夾雑物が多くなり、結果、短く切断された夾雑物を多く含む第2処理液が切断装置30から流出される。角度θが15°より小さいと第1処理液の流入方向38aと対向板34の平面が平行に近くなり、水理学的に第1処理液が対向板34面を透過する速度が小さくなる。対向板34を透過する第1処理液の流量が低減し、結果として、単位時間当たりの下水の処理量が減少する。
【0041】
対向板34と切断刃35はケーシング内に備えることができる。ケーシングは2室で構成でき、第1室40と第2室41とを仕切るように対向板34を設けるとよい。第1室には前述の切断刃35と流入部36が備わり、第2室には流出部37が備わる。この場合、切断刃35に備わるホルダー32を、第2室側に延ばし、同第2室の上部に備わる付勢手段33aまで延在するように配するとよい。第1室に流入した第1処理液38は、対向板34を透過して第2室に導かれ、第2処理液39として流出部37から流出される。
【0042】
また、ケーシングを設けず、第1処理液38が流れる水路内や配管内に、対向板34と切断刃35を有する切断装置を備えてもよい。この場合、言うまでもないが第1処理液38の流れ方向に対して、上流側に切断刃35を、その下流側に対向板34を対向させて配置させる。
【0043】
第1処理液38は、その全てを対向板34に透過させてもよいし、その一部を透過させてもよいが、全てを透過させるのが好ましい。
【0044】
第1処理液38に含まれる夾雑物、特に糸状物や帯状物は、回転自在な切断刃35及び/又は対向板34により切断力(せん断力)を受け、切断される。よって、第2処理液39に含まれる夾雑物の大部分が、厚さが10mm以下、長さが50mm以下となるので、本切断装置よりも下流側に備わる諸設備に付着したり、絡まったりすることを抑制することができる。
【0045】
他の実施形態として下水10を破砕装置20に送らずに、直接に、切断装置30に送る手段とすることもできる。しかしながら、この「他の実施形態」とすると下水に含まれる相対的に大きな夾雑物が、次々と対向板34に留まり、結果、切断装置30の閉塞をもたらす。よって、破砕装置20を設けずに切断装置30のみを設ける場合は、下水処理施設のうちの、相対的に大きな夾雑物が少ない箇所に設置するとよい。例えば、最初沈殿池の引抜汚泥管、濃縮槽や消化槽それぞれの流入配管や流出配管等に切断装置30を設置するのが好ましい。
【0046】
切断装置の別の実施形態を
図7を参照しつつ説明すると、切断装置130には、切断刃135(回転羽根135bに取り付けられた刃135a)が、対向板134と対向する側に備わっている。対向板134には同対向板134を貫通する透過孔が複数設けられている。切断刃135にはギアモータ152等で回転するホルダー132が備わり、切断刃135はホルダー132の回転により対向板134の面に沿って回転する。切断刃135と、対向板134における第1処理液38の上流側面とは、接触している。切断刃135を対向板134に接触させるために切断刃135から対向板134へ向かう方向(付勢方向)に付勢する手段133が備わっている。また、切断しきれず対向板134を透過できない夾雑物は、切断装置130の下部に備わる取り出し部151から取り出すことができる。また、本体の運転停止時には、本体130に備わる支点軸100を中心に切断装置130の上部(対向板134よりも上部)を、紙面に対して反時計回りに動かして開けることができる。そうすると、上方からケーシング136内を視認することができ、本体内部のメンテナンスを容易に行うことができる。なお、切断装置130の上部を閉じた状態において切断装置130の運転を行うと、切断装置130に送られた第1処理液38が対向板134を透過して、結果、第2処理液39が得られる。
【0047】
第2処理液39に含まれる夾雑物には、例えば、第1に破砕装置20で破砕されず、かつ、切断装置30で切断されなかった夾雑物、第2に破砕装置20で破砕され、かつ、切断装置30で切断されなかった夾雑物、第3に破砕装置20で破砕されず、かつ、切断装置30で切断された夾雑物、第4に破砕装置20で破砕され、かつ、切断装置30で切断された夾雑物が含まれる。なお、破砕装置20で破砕された第1夾雑物を含む第1処理液38を切断装置30に流入させ、この第1夾雑物が切断されたものを第2夾雑物という。
【0048】
前述のとおり、糸状又は帯状の夾雑物は、下水処理施設の設備に付着したり、絡まったりするが、特に毛髪は粗大化していくため、適宜切断されることが望ましい。毛髪が下水中に存在すると、毛髪の表面に有するキューティクル部に、有機物や油脂類、別の毛髪が付着する。また、これらが付着すると、細菌が繁殖する。毛髪はエナメル質状の組織で形成されているため硬度があり、生物分解され難く下水処理施設内に残存されたままとなる。そうすると、毛髪由来の夾雑物が粗大化して、諸設備に不具合をもたらす要因となりうる。
【0049】
本実施形態では、下水10が流入手段51によって破砕装置20に流入し、第1処理液38として流出する。次いで、この第1処理液38が送水手段52によって切断装置30に送水され切断装置30に流入し、第2処理液39として流出手段53によって流出する。破砕装置20から流出した第1処理液38が切断装置30に流入するまでに到達する時間は、60秒以内とするとよく、2〜15秒とすると好適である。60秒よりも長いと、破砕装置20で破砕された夾雑物、特に糸状物や帯状物が、切断装置30まで到達する間に、変形したり、再度凝集して大きな塊となったりして、切断装置30による破砕が困難となる。破砕装置20の流出部と切断装置30の流入部36との送水手段50は、特に限定されず配管や水路等を用いることができる。
【0050】
(第2処理液の処理)
本実施形態で得た第2処理液に含まれる夾雑物は、最終的に下水処理施設から放流される放流水に含まれないように除去されればよい。除去手段としては、一例に、同夾雑物が最初沈殿池から下水生汚泥として引き抜かれ、汚泥貯留槽に導かれ、汚泥処理施設に送られ、燃焼処理される、手段を採ることができる。
【0051】
(設置箇所)
破砕装置20及び切断装置30は下水処理施設、汚泥処理施設に適宜設置することができる。例えば、ポンプ場や汚泥集約設備の貯留槽の流入口及び/または流出口、沈砂池・スクリーン設備の流入口及び流出口、最初沈殿池の流入口、濃縮槽や消化槽、分配槽、スカム貯留槽の流入口及び/または流出口に設置することができる。また、これらの設置箇所の少なくともいずれか一箇所に設置するとよい。
【0052】
前述では、破砕装置20を設置した箇所の下流側に切断装置30を設置する実施形態としているが、次の実施形態としてもよい。下水10の流れ方向に沿って破砕装置20を2台直列に設置し、その下流側に切断装置30を設置する実施形態を例示できる。また、破砕装置20を設置した箇所の下流側に設置する切断装置30を2台直列に設置する実施形態を例示することもできる。この場合、直列に設置された切断装置30のうちの、上流側の第1切断装置30に備わる対向板34の透過孔34aの径を相対的に大きくし、下流側の第2切断装置30に備わる対向板34の透過孔34aの径を相対的に小さくするとよい。このように配置すると、夾雑物が第1切断装置30で粗く切断され、続く第2切断装置30で細かく切断されるので、夾雑物を確実に微細化できる。
【0053】
(流量)
破砕装置20に流入させる下水10や切断装置30に流入させる第1処理液38は、流量を10〜100m
3/h、全固形物量(TS)を0〜4%とするとよい。流量が10m
3/h未満だと処理効率が悪く、100m
3/hを超えるとこれらの装置に夾雑物が多量に流れ込み詰まりの原因となる。また、全固形物量(TS)が4%を超えると、固形物の濃度が高すぎるためこれらの装置の詰まりの原因となる。
【0054】
本実施形態の下水とは特に限定されないが、一例に、浄化槽排水、農業・漁業集落排水、雨水、工場排水、事業場排水、不明水、伏流水、湧水、地下水、工業用水、下水管水、下水道幹線水、生汚泥、活性汚泥、下水処理場及び/又は汚泥処理施設の各処理工程を流れる工程水等を挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明で開示される下水処理方法及び下水処理装置は、特に限定されないが、例えば、公共下水道、流域下水道、都市下水路の下水処理施設で利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 下水
20 2軸破砕装置
23a 破砕刃
23b 破砕刃
24A 回転軸
24B 回転軸
30 切断装置
32 ホルダー
34 対向板
34A 対向板における第1処理液の上流側平面
34a 透過孔
35 切断刃
38 第1処理液
39 第2処理液
【要約】 (修正有)
【課題】下水に含まれる夾雑物を好適なサイズに破砕し、切断する下水処理方法及び下水処理装置の提供。
【解決手段】下水を2軸破砕装置に流入させ夾雑物を破砕して第1夾雑物とし、第1処理液38を得る破砕工程と、第1処理液38を切断装置30に流入させ切断して第2夾雑物とし第2処理液39とする切断工程とを有し、前記2軸破砕装置は前記夾雑物を挟みながら破砕して前記第1夾雑物とする装置であり、前記切断装置30は前記第1処理液38の流れ方向の回転軸線周りに回転するホルダーに保持された切断刃35と、前記第1処理液38の流れ方向と交差して設けられた複数の透過孔を有する対向板34とを備え、前記切断工程は前記切断刃35を前記対向板34に近接又は接触した対向状態で回転させて第1夾雑物を切断して第2夾雑物とし、透過孔を透過させて前記第2処理液39とする、下水処理方法と下水処理装置。
【選択図】
図8