特許第6740464号(P6740464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6740464
(24)【登録日】2020年7月28日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】アウターロータ型回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
   H02K1/27 502C
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-512703(P2019-512703)
(86)(22)【出願日】2018年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2018023983
(87)【国際公開番号】WO2019087456
(87)【国際公開日】20190509
【審査請求日】2019年3月4日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/039711
(32)【優先日】2017年11月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂上 美佳
(72)【発明者】
【氏名】松井 孝典
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 学
(72)【発明者】
【氏名】萩村 将巳
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/123171(WO,A1)
【文献】 実開昭52−023309(JP,U)
【文献】 特開2002−153095(JP,A)
【文献】 特開2009−213264(JP,A)
【文献】 特開2009−254205(JP,A)
【文献】 特開平07−039094(JP,A)
【文献】 特開2003−023741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに固定されるステータと、
エンジンのクランクシャフトに取付けられ、前記ステータを前記エンジンとは反対側から覆うロータヨークと、
を備え、
前記ロータヨークは、
前記クランクシャフトに外嵌固定されるロータボスと、
前記ロータボスの前記エンジンとは反対側端に設けられ、前記クランクシャフトの回転軸線と同軸に形成された円板状の底部と、
前記底部の外周縁から前記エンジン側に屈曲延出され、前記ステータの外周面を覆うとともに、内周面に複数のマグネットが等間隔に設けられた側部と、
を備え、
前記底部の前記エンジンとは反対側の面には、前記底部の外周部全体に渡って、且つ前記エンジンとは反対側に突出する凸部が設けられており、
前記底部の前記エンジンとは反対側の面には、前記凸部の径方向内側に、冷却用ファンが設けられている
アウターロータ型回転電機。
【請求項2】
前記凸部において、隣接する前記複数のマグネット同士の中間に対応するそれぞれの位置に、連通孔を複数形成した
請求項1記載のアウターロータ型回転電機。
【請求項3】
前記底部の径方向中央に、該底部と前記ロータボスとを連結するための取付孔を有する取付座が設けられており、
前記取付座は、前記底部よりも前記エンジン側にずれて配置されている
請求項1又は請求項に記載のアウターロータ型回転電機。
【請求項4】
前記ロータヨークにおける前記底部の内面に固定されるとともに、前記マグネットを内周面側から覆って前記マグネットを保持するマグネットカバーを備え、
前記マグネットカバーには、前記ロータヨークの径方向内側と前記ロータヨークの前記連通孔とを連通させる孔が形成されている
請求項に記載のアウターロータ型回転電機。
【請求項5】
前記マグネットカバーは、
前記マグネットの内周面を覆うカバー本体と、
前記カバー本体における前記ロータヨークの前記底部側端から径方向内側に向かって張り出す内フランジ部と、
前記カバー本体における前記ロータヨークの開口部側端から径方向外側に向かって張り出す外フランジ部と、
を備え、
前記内フランジ部が前記底部の前記内面に固定されるとともに、前記内フランジ部に前記孔が形成されている
請求項に記載のアウターロータ型回転電機。
【請求項6】
前記孔は、径方向で前記マグネットと重ならない位置に形成されている
請求項又は請求項に記載のアウターロータ型回転電機。
【請求項7】
前記ロータヨークにおける前記底部の内面に固定されるとともに、前記マグネットを内周面側から覆って前記マグネットを保持するマグネットカバーを備え、
前記マグネットカバーには、前記ロータヨークの径方向内側と前記ロータヨークの前記連通孔とを連通させるスリットが形成されている
請求項に記載のアウターロータ型回転電機。
【請求項8】
前記マグネットカバーは、
前記マグネットの内周面を覆うカバー本体と、
前記カバー本体における前記ロータヨークの前記底部側端から径方向内側に向かって張り出す内フランジ部と、
前記カバー本体における前記ロータヨークの開口部側端から径方向外側に向かって張り出す外フランジ部と、
を備え、
前記内フランジ部が前記底部の前記内面に固定されるとともに、前記内フランジ部に前記スリットが形成されている
請求項に記載のアウターロータ型回転電機。
【請求項9】
前記スリットは、径方向で前記マグネットと重ならない位置に形成されている
請求項又は請求項に記載のアウターロータ型回転電機。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のアウターロータ型回転電機と、
前記アウターロータ型回転電機が取り付けられた車体と、
前記車体の車幅方向外側に設けられたサイドスタンドと、
を備え、
前記アウターロータ型回転電機と前記サイドスタンドとが、前記車体の車幅方向の同一側面に配置されている
自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターロータ型回転電機に関するものである。
本願は、2017年11月2日に出願された国際出願PCT/JP2017/039711に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
アウターロータ型回転電機としては、例えば、自動二輪車等の車両に用いられる回転電機として、エンジン始動機能とエンジンの回転運動の一部を電気エネルギーに変換する発電機能との2つの機能を備えたものがある。この種の回転電機は、コイルが巻回されたステータと、ステータの周囲を覆うように有底円筒形状に形成され、内周面に複数のマグネットが配置されたロータヨークを含むフライホイールユニット(ロータ)と、を備えている。また、このような回転電機は、エンジンの近傍に配置され、エンジンのクランクシャフトに、フライホイールユニットが取付けられる。そして、フライホイールユニットは、クランクシャフトと一体となって回転する。
ここで、上記のような回転電機は、小型化、高性能化の要望が高い。また、高性能化を図るために、エンジンや回転電機を冷却するための冷却用ファンを、フライホイールユニットの底部に設けることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−111909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の従来技術のように、フライホイールユニットに冷却用ファンを設ける場合、この冷却用ファンを効率よく機能させるためには、回転電機のエンジンとは反対側に冷却用ファンを配置する必要がある。例えば、エンジンと回転電機との間に冷却用ファンを配置すると、この冷却用ファンによって多くの外気を取り込みにくくなり、冷却用ファンの効率が低下してしまう。このため、回転電機のエンジンとは反対側に冷却用ファンを配置することにより、この冷却用ファンによってより多くの外気を取り込むことが可能になり、冷却用ファンの効率を高めることができる。
【0005】
しかしながら、回転電機のエンジンとは反対側に冷却用ファンを配置すると、この分、フライホイールユニットがエンジンから離間した位置に配置することになるので、クランクシャフトが振れ回り易くなってしまう可能性があった。
【0006】
さらに、エンジンの始動性向上や回転電機の高効率化を目的として、フライホイールユニットの慣性力を増大させるために、ロータヨークの重量を増大することが考えられる。しかしながら、ロータヨークの重量を単純に増大しようとすると、ロータヨークが大型化してしまい、フライホイールユニット及び回転電機全体が大型化してしまう可能性があった。
【0007】
本発明は、効果的に小型化、高性能化を図ることができるアウターロータ型回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、アウターロータ型回転電機は、エンジンに固定されるステータと、エンジンのクランクシャフトに取付けられ、前記ステータを前記エンジンとは反対側から覆うロータヨークと、を備え、前記ロータヨークは、前記クランクシャフトに外嵌固定されるロータボスと、前記ロータボスの前記エンジンとは反対側端に設けられ、前記クランクシャフトの回転軸線と同軸に形成された円板状の底部と、前記底部の外周縁から前記エンジン側に屈曲延出され、前記ステータの外周面を覆うとともに、内周面に複数のマグネットが等間隔に設けられた側部と、を備え、前記底部の前記エンジンとは反対側の面には、前記底部の外周部全体に渡って、且つ前記エンジンとは反対側に突出する凸部が設けられており、前記底部の前記エンジンとは反対側の面には、前記凸部の径方向内側に、冷却用ファンが設けられている。
【0009】
このように、ロータヨークの底部の外周面に、エンジンとは反対側に向かって突出する凸部を形成することにより、ロータヨークの径方向中央側と比較してロータヨークの外周部の重量を効果的に増大することができる。この結果、ロータヨークの大型化を抑制しつつロータヨークの慣性力を効率よく高めることができる。
また、クランクシャフトを延ばす必要もなく、クランクシャフトの振れ回りを抑制できる。
また、ロータヨークの底部のエンジンとは反対側の面に、冷却用ファンが設けられるので、エンジンとアウターロータ型回転電機との間に冷却用ファンが配置されることもなく、アウターロータ型回転電機のエンジンとは反対側に冷却用ファンを配置できる。
よって、アウターロータ型回転電機を、小型化、高性能化できる。
また、ロータヨークの径方向中央側と比較してロータヨークの外周部の重量をより確実に増大することができる。このため、ロータヨークの慣性力を確実に高めることができる。
【0012】
本発明の第の態様によれば、本発明の第1の態様係るアウターロータ型回転電機は、前記凸部において、隣接する前記複数のマグネット同士の中間に対応するそれぞれの位置に、連通孔を複数形成した。
【0013】
このように構成することで、例えば、ロータヨークの底部の外側から連通孔にマグネットの位置決め用治具を挿通できるので、この位置決め用治具の使用を容易化できる。このため、ロータヨークへのマグネットの組み付けを容易化できる。
【0014】
本発明の第の態様によれば、本発明の第1の態様又はの態様係るアウターロータ型回転電機において、前記底部の径方向中央に、該底部と前記ロータボスとを連結するための取付孔を有する取付座が設けられており、前記取付座は、前記底部よりも前記エンジン側にずれて配置されている。
【0015】
ここで、ロータヨークは、ステータのエンジンとは反対側からステータを覆うように設けられている。このため、クランクシャフトに外嵌固定されるロータボスと底部とを連結するための取付座をエンジン側にずらすことにより、エンジンから突出しているクランクシャフトを短く設定できる。よって、クランクシャフトの振れ回りを確実に抑制でき、アウターロータ型回転電機を、より確実に小型化、高性能化できる。
【0016】
本発明の第の態様によれば、本発明の第の態様に係るアウターロータ型回転電機において、前記ロータヨークにおける前記底部の内面に固定されるとともに、前記マグネットを内周面側から覆って前記マグネットを保持するマグネットカバーを備え、前記マグネットカバーには、前記ロータヨークの径方向内側と前記ロータヨークの前記連通孔とを連通させる孔が形成されている。
【0017】
このように構成することで、マグネットカバーによって、ロータヨークにマグネットを確実に固定できる。
また、マグネットカバーを設けた場合であっても、マグネットカバーに形成された孔とロータヨークに形成された連通孔を利用して、ロータヨーク内の水滴等を確実にロータヨークの外側に排出することができる。つまり、連通孔が、排水用孔として機能する。このため、動作不良を確実に防止でき、信頼性の高いアウターロータ型回転電機を提供できる。
【0018】
本発明の第の態様によれば、本発明の第の態様に係るアウターロータ型回転電機において、前記マグネットカバーは、前記マグネットの内周面を覆うカバー本体と、前記カバー本体における前記ロータヨークの前記底部側端から径方向内側に向かって張り出す内フランジ部と、前記カバー本体における前記ロータヨークの開口部側端から径方向外側に向かって張り出す外フランジ部と、を備え、前記内フランジ部が前記底部の前記内面に固定されるとともに、前記内フランジ部に前記孔が形成されている。
【0019】
このように構成することで、マグネットカバーによって、マグネットを保護しつつ、ロータヨーク内の水滴等を確実にロータヨークの外側に排出することができる。
【0020】
本発明の第の態様によれば、本発明の第の態様又は第の態様に係るアウターロータ型回転電機において、前記孔は、径方向で前記マグネットと重ならない位置に形成されている。
【0021】
このように構成することで、径方向でマグネットと重なる位置に孔が形成されている場合と比較して、マグネットが被水してしまうことを抑制できる。
【0022】
本発明の第の態様によれば、本発明の第の態様に係るアウターロータ型回転電機において、前記ロータヨークにおける前記底部の内面に固定されるとともに、前記マグネットを内周面側から覆って前記マグネットを保持するマグネットカバーを備え、前記マグネットカバーには、前記ロータヨークの径方向内側と前記ロータヨークの前記連通孔とを連通させるスリットが形成されている。
【0023】
このように構成することで、マグネットカバーによって、ロータヨークにマグネットを確実に固定できる。
また、マグネットカバーを設けた場合であっても、マグネットカバーに形成されたスリットとロータヨークに形成された連通孔を利用して、ロータヨーク内の水滴等を確実にロータヨークの外側に排出することができる。つまり、連通孔が、排水用孔として機能する。また、ロータヨークとマグネットカバーの内フランジ部との間の隙間に、水滴等が溜まってしまうことを確実に防止できる。このため、動作不良を確実に防止でき、信頼性の高いアウターロータ型回転電機を提供できる。
【0024】
本発明の第の態様によれば、本発明の第の態様に係るアウターロータ型回転電機において、前記マグネットカバーは、前記マグネットの内周面を覆うカバー本体と、前記カバー本体における前記ロータヨークの前記底部側端から径方向内側に向かって張り出す内フランジ部と、前記カバー本体における前記ロータヨークの開口部側端から径方向外側に向かって張り出す外フランジ部と、を備え、前記内フランジ部が前記底部の前記内面に固定されるとともに、前記内フランジ部に前記スリットが形成されている。
【0025】
このように構成することで、マグネットカバーによって、マグネットを保護しつつ、ロータヨーク内の水滴等を確実にロータヨークの外側に排出することができる。
【0026】
本発明の第の態様によれば、本発明の第の態様又は第の態様に係るアウターロータ型回転電機において、前記スリットは、径方向で前記マグネットと重ならない位置に形成されている。
【0027】
このように構成することで、径方向でマグネットと重なる位置にスリットが形成されている場合と比較して、マグネットが被水してしまうことを抑制できる。
【0028】
本発明の第1の態様によれば、自動二輪車は、上記のいずれか1項に記載のアウターロータ型回転電機と、前記アウターロータ型回転電機が取り付けられた車体と、前記車体の車幅方向外側に設けられたサイドスタンドと、を備え、前記アウターロータ型回転電機と前記サイドスタンドとが、前記車体の車幅方向の同一側面に配置されている。
【0029】
ここで、自動二輪車において、車体の車幅方向外側にアウターロータ型回転電機を取り付けた場合、車体の傾き方向によっては、ロータヨークに水滴等が溜まる可能性がある。とりわけ、サイドスタンドを使用して車体を停車させた場合、車体は、サイドスタンド側に傾いて停車するので、車体のサイドスタンド側と同じ側面にアウターロータ型回転電機を取り付けると、ロータヨークの側部は、開口部側から底部側に向かって下り勾配となる。このため、ロータヨークに水滴等が溜まる可能性がある。しかしながら、ロータヨークの底部に、連通孔が形成されているとともに、マグネットカバーに前記連通孔とを連通する孔が形成されている。この結果、ロータヨーク内の水滴等を確実にロータヨークの外側に排出することができる。よって、自動二輪車の動作不良を確実に防止でき、自動二輪車の信頼性を向上できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ロータヨークの底部の外周面に、エンジンとは反対側に向かって突出する凸部を形成することにより、ロータヨークの径方向中央側と比較してロータヨークの外周部の重量を効果的に増大することができる。この結果、ロータヨークの大型化を抑制しつつロータヨークの慣性力を効率よく高めることができる。
また、クランクシャフトを延ばす必要もなく、クランクシャフトの振れ回りを抑制できる。
また、ロータヨークの底部のエンジンとは反対側の面に、冷却用ファンが設けられるので、エンジンとアウターロータ型回転電機との間に冷却用ファンが配置されることもなく、アウターロータ型回転電機のエンジンとは反対側に冷却用ファンを配置できる。
よって、アウターロータ型回転電機を、小型化、高性能化できる。
また、ロータヨークの径方向中央側と比較してロータヨークの外周部の重量をより確実に増大することができる。このため、ロータヨークの慣性力を確実に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1実施形態におけるアウターロータ型回転電機の断面図である。
図2】本発明の第1実施形態におけるアウターロータ型回転電機の分解斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態におけるロータの分解斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態におけるロータヨークの側部を内周面側からみた平面図である。
図5】本発明の第2実施形態における回転電機を自動二輪車の車体に取り付けた状態を、車体の進行方向後方からみた平面図である。
図6】本発明の第2実施形態におけるマグネットカバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
(第1実施形態)
(アウターロータ型回転電機)
図1は、アウターロータ型回転電機1の断面図である。図2は、アウターロータ型回転電機1の分解斜視図である。
図1図2に示すように、アウターロータ型回転電機(以下、単に回転電機という)1は、例えば、自動二輪車等のエンジン100のクランクケース101に固定されているステータ2と、エンジン100のクランクシャフト102に取付けられるフライホイールユニット3と、フライホイールユニット3に設けられている冷却用ファン4と、を備えている。
なお、以下の説明では、フライホイールユニット3(クランクシャフト102)の回転軸線Cに沿う方向を、単に軸方向、軸方向に直交するフライホイールユニット3の径方向を、単に径方向、軸方向及び径方向に直交するフライホイールユニット3の回転方向を周方向と称する。
【0034】
(ステータ)
ステータ2は、略円環状のステータコア5を有している。このステータコア5が、エンジン100のクランクケース101に、不図示のボルトによって締結固定される。ステータコア5は、例えば、磁性材料の板材を軸方向に積層してなる。しかしながら、これに限られるものではなく、ステータコア5を、例えば、軟磁性粉を加圧成形することにより形成してもよい。
ステータコア5の径方向中央には、軸方向に貫通する貫通孔5aが形成されている。この貫通孔5aには、クランクシャフト102、及び後述のロータボス21が挿通される。クランクシャフト102の先端は、貫通孔5a及びロータボス21を介し、ステータコア5のクランクケース101とは反対側に突出している。
【0035】
また、ステータコア5には、このステータコア5をクランクケース101に締結固定するための不図示のボルトを挿通可能なボルト挿通孔5bが3箇所周方向に等間隔に形成されている。
さらに、ステータコア5の外周面には、径方向外側に向かって放射状に突出形成された複数のティース6が設けられている。各ティース6には、これらティース6に装着されているインシュレータ7の上からコイル8が巻回されている。各コイル8の端末部は、クランクケース101側(図1における左側、図2における上側)に向かって引き出されている。
【0036】
これらコイル8の端末部は、ステータコア5のクランクケース101側の一面5cに設けられたハーネスクリップ9によって束ねて保持されている。ステータコア5の一面5cには、ハーネスクリップ9をボルト10によって締結固定するための雌ネジ部5dが刻設されている。コイル8の端末部は、ハーネスに接続されて上位のコントローラ(いずれも不図示)等に電気的に接続されている。
【0037】
また、ステータコア5の一面5cには、位置検出センサ11が設けられている。位置検出センサ11は、フライホイールユニット3の回転位置を検出するものである。位置検出センサ11は、センサケース12内に、不図示の磁気検出素子が実装されたセンサ基板15が収納されている。磁気検出素子は、フライホイールユニット3の後述するマグネット34の磁束を検出する。フライホイールユニット3の回転に伴い磁束が変化するので、この磁束の変化を検出することにより、位置検出センサ11はフライホイールユニット3の回転位置を検出する。
センサケース12には、ボルト14によってステータコア5にセンサケース12を締結固定するための雌ネジ部12aが刻設されている。
【0038】
一方、ステータコア5には、一面5cとは反対側の他面5eからボルト14を挿通可能なボルト挿通孔13が形成されている。このボルト挿通孔13に挿通されたボルト14を、センサケース12の雌ネジ部12aに螺入することにより、ステータコア5にセンサケース12が締結固定される。また、ボルト挿通孔13には、このボルト挿通孔13に挿通されたボルト14の頭部が、ステータコア5の他面5eから突出しないようにするためのザグリ部13aが形成されている。
【0039】
(フライホイールユニット)
図3は、フライホイールユニット3の分解斜視図である。
図1図3に示すように、フライホイールユニット3は、ステータ2をクランクケース101とは反対側(ステータコア5の他面5e側)から覆うように、クランクケース101側に開口部20aを有するロータヨーク20を備えている。すなわち、ロータヨーク20は、クランクシャフト102の先端側に外嵌固定されるロータボス21と、ロータボス21のクランクケース101とは反対側端に設けられた略円板状の底部22と、底部22の外周縁からクランクケース101側に向かって屈曲延出し、ステータコア5の外周面を覆う略円筒状の側部23と、を有している。そして、側部23の底部22と反対側の周縁が、ロータヨーク20の開口部20aとして構成される。
【0040】
ロータボス21は、クランクシャフト102の先端側に外嵌固定される略円筒状のボス本体24を有している。ボス本体24は、ステータコア5の貫通孔5a内に、この貫通孔5aの内周面と所定の隙間を空けて配置されている。ボス本体24のクランクシャフト102とは反対側端には、ボス本体24よりも段差部24aを介して拡径形成された略円筒状のボス側連結部25が一体成形されている。ボス側連結部25は、ロータボス21と底部22とを連結するものである。ボス側連結部25の外周面には、段差部24aに対応する位置に径方向外側に張り出す小フランジ部25aが成形されている。
【0041】
また、ボス側連結部25の外周面には、ボス本体24とは反対側端に、小フランジ部25aよりも大径の大フランジ部25bが一体成形されている。これら小フランジ部25aと大フランジ部25bとの間に、底部22の後述する取付座27が配置される。そして、小フランジ部25aと大フランジ部25bとに底部22の取付座27が挟持されるように配置される。
【0042】
また、ボス側連結部25の外周面には、小フランジ部25aと大フランジ部25bとの間に、ボス側セレーション26が形成されている。このボス側セレーション26は、底部22に形成されている底部側セレーション29と協働し、ロータボス21に対して底部22が相対回転しないようにするためのものである。
【0043】
底部22の径方向中央には、略円環の板状に形成された取付座27が一体成形されている。取付座27は、底部22にプレス加工を施すことにより、底部22から僅かにクランクケース101側にずれて形成されている。底部22と取付座27とのずれ量△tは、任意に設定することができる。
【0044】
取付座27は、内周縁を屈曲させて僅かにクランクケース101側に向かって立ち上がる略円筒状の底部側連結部28を有している。そして、底部側連結部28の内周面に、ボス側連結部25の外周面が圧入された状態になる。また、ロータボス21の小フランジ部25aと大フランジ部25bとの間隔は、底部側連結部28の軸方向の高さと同等に設定されている。これにより、取付座27は、ロータボス21に外嵌され、且つ小フランジ部25aと大フランジ部25bとに挟持される。
【0045】
また、底部側連結部28の内周面には、底部側セレーション29が形成されている。この底部側セレーション29とロータボス21に形成されたボス側セレーション26とにより、ロータボス21に対して取付座27(底部22)が相対回転不能に連結される。
ここで、底部側連結部28の屈曲部における外側の曲率半径R1は、できる限り小さく設定することが望ましい。このように曲率半径R1を設定することにより、底部側連結部28の内周面の面積をできる限り大きく確保することができる。これにより、底部側連結部28の内周面とロータボス21の外周面との接触面積をできる限り大きく確保できる。大きく確保できる分、ロータボス21と取付座27とを確実に固定できる。
【0046】
また、底部22には、取付座27の周囲に複数(例えば、本第1実施形態では3個)の貫通孔32が周方向に等間隔で形成されている。この貫通孔32は、ロータヨーク20を軽量化する役割を有している。また、冷却用ファン4を、貫通孔32を閉塞しない構造とすることにより、貫通孔32を介して空気をステータ2側に取り込み、このステータ2の冷却効果を高めるようにすることも可能である。
さらに、底部22には、貫通孔32よりも若干外周寄りに、複数の取付ボス40が周方向に等間隔で形成されている。取付ボス40は、底部22にプレス加工を施すことにより、クランクケース101側に向かって突出形成されている。取付ボス40は、後述のマグネットカバー35を固定するためのものである。
【0047】
さらに、底部22の外周部には、クランクケース101とは反対側に向かって突出する凸部31が全周に渡って形成されている。つまり、凸部31は、軸方向からみて略円環状に形成されている。また、凸部31は、底部22にプレス加工を施すことにより、底部22の外周部を一旦クランクケース101とは反対側に屈曲させた後、クランクケース101側に向かって折り返すようにすることで形成されている。
すなわち、凸部31は、クランクケース101側が開口された断面略C字状に形成されており、底部22から軸方向に沿って、且つクランクケース101とは反対側に向かって立ち上がる内側壁31aと、内側壁31aの先端から径方向外側に向かって屈曲延出する平坦な横壁31bと、横壁31bと、横壁31bの径方向外側端から軸方向に沿って、且つクランクケース101側に向かって屈曲延出する外側壁31cと、により構成されている。
【0048】
横壁31bには、複数の治具用孔(連通孔)33が周方向に等間隔で形成されている。治具用孔33は、軸方向からみて円弧状となるように、周方向に長い長円形状に形成されている。治具用孔33は、側部23の内周面に設けられるマグネット34の位置決めを行うために用いられる(詳細は後述する)。
ここで、凸部31は、底部22にプレス加工を施して屈曲形成してなるので、底部22と内側壁31aとの屈曲部の外側の曲率半径R2は、できる限り大きく設定することが望ましい。このように曲率半径R2を設定することにより、底部22、及び内側壁31aの肉厚をできる限り厚く設定することが可能になる。
【0049】
底部22の外周部に凸部31を形成することにより、この凸部31の径方向内側に凹部41が形成された形になる。この凹部41は、冷却用ファン4を収納する冷却用ファン収納凹部42として機能する。つまり、冷却用ファン4は、冷却用ファン収納凹部42に収納された状態で、ロータヨーク20の底部22に締結固定される。
底部22には、冷却用ファン4を締結固定するための雌ネジ部43が、周方向に等間隔で複数(例えば、本第1実施形態では3個)形成されている。
【0050】
ロータヨーク20の側部23は、凸部31の外側壁31cの先端から軸方向に沿って延出された形になる。側部23の内周面には、径方向でステータコア5と対向する位置に、複数のマグネット34が設けられている。各マグネット34は、磁極が順番になるように、等間隔に配置されている。
ここで、各マグネット34の間の隙間の数と、ロータヨーク20に形成されている治具用孔33の数は一致している。また、各マグネット34の間の隙間は、治具用孔33の周方向中央に位置している。
【0051】
また、各マグネット34は、ロータヨーク20に固定されるマグネットカバー35によって保持されている。
マグネットカバー35は、各マグネット34の内周面を覆うカバー本体36と、カバー本体36におけるロータヨーク20の底部22側端から径方向内側に向かって張り出す内フランジ部37と、カバー本体36におけるロータヨーク20の開口部20a側端から径方向外側に向かって張り出す外フランジ部38と、により構成されている。
【0052】
カバー本体36は、外周面がロータヨーク20の側部23に設けられたマグネット34の内周面に当接するように形成されている。また、カバー本体36には、各マグネット34の間の隙間に対応する位置に、軸方向に沿って、且つ径方向内側に向かって突出する凸条部36aが形成されている。これら凸条部36aによって、各マグネット34が所定間隔を空けた状態で保持される。すなわち、凸条部46aには、マグネット34が存在しておらず、各凸条部36aによって、各マグネット34の周方向の位置決めが行われる。
【0053】
内フランジ部37は、カバー本体36におけるロータヨーク20の底部22側端から径方向内側に向かって、かつ底部22側に向かって斜めに延出する傾斜部51と、傾斜部51から径方向内側に向かって屈曲延出されロータヨーク20の底部22に当接される当接部52と、により構成されている。
また、内フランジ部37の当接部52には、ロータヨーク20の底部22に形成された取付ボス40に対応する位置に、この取付ボス40に嵌合可能な嵌合孔39が形成されている。嵌合孔39に取付ボス40を取付けた後、取付ボス40をカシメることによりロータヨーク20にマグネットカバー35が固定される。
【0054】
外フランジ部38は、マグネット34におけるロータヨーク20の開口部20a側端を覆うように形成されている。これにより、ロータヨーク20からのマグネット34の抜けが防止できる。
【0055】
ここで、底部22と内側壁31aとの屈曲部の内側の曲率半径R3は、できる限り小さく設定することが望ましい。曲率半径R3を小さくすることにより、底部22に形成されている取付ボス40を、できる限りロータヨーク20の凸部31に寄せる(径方向外側に寄せる)ことができる。この凸部31に取付ボス40を寄せることにより、内フランジ部37の大きさをできる限り小さくできる。このため、フライホイールユニット3全体の軽量化、低コスト化を図ることが可能になる。
【0056】
(ロータの組立方法)
次に、フライホイールユニット3の組立方法について説明する。
図4は、フライホイールユニット3の組立方法の途中工程を示す説明図であって、ロータヨーク20の側部23を内周面側からみた平面図である。
同図に示すように、まず、ロータヨーク20の凸部31に形成された各治具用孔33に、治具Zの位置決め突起Ztを、ロータヨーク20の開口部20aとは反対側の一面22a側(図3参照、図4における下側)から挿入する。
【0057】
位置決め突起Ztは、断面がロータヨーク20の治具用孔33に対応するように形成された軸方向位置決め部103と、軸方向位置決め部103からロータヨーク20の開口部20a側(図4における上側)に向かって突出する周方向位置決め部104と、を有している。
ロータヨーク20の治具用孔33に位置決め突起Ztが挿入されることにより、位置決め突起Ztに対するロータヨーク20の周方向の位置決めが行われる。また、ロータヨーク20は、凸部31の横壁31bが治具Zの不図示の台、又は作業台上に載置されることにより、治具Zに対するロータヨーク20の軸方向の位置決めが行われる。このため、横壁31bの平面度をできる限り高くすることが望ましい。横壁31bの平面度を高めることにより、治具Zに対してロータヨーク20が傾いてしまうことをできる限り抑制できる。
【0058】
次に、ロータヨーク20に治具Zを組付けた状態で、周方向に隣接する位置決め突起Ztの間に、マグネット34をセットする。このとき、位置決め突起Ztの軸方向位置決め部103に、マグネット34の軸方向一端を当接させる。また、周方向に隣接するマグネット34の間に、位置決め突起Ztの周方向位置決め部104が介在される。これにより、位置決め治具Zに対するマグネット34の位置決めが行われる。そして、位置決め治具Zに対してロータヨーク20が位置決めされているので、ロータヨーク20に対するマグネット34の位置決めが行われる。
この後、ロータヨーク20にマグネットカバー35を取り付ける。これにより、フライホイールユニット3の組立てが完了する。
【0059】
(回転電機の動作)
次に、回転電機1の動作について説明する。
まず、エンジンの回転運動の一部を電気エネルギーに変換する発電機能について説明する。
クランクシャフト102が回転すると、クランクシャフト102と一体となってフライホイールユニット3が回転する。すると、ステータ2のティース6を通過するフライホイールユニット3のマグネット34の磁束が変化する。この磁束の変化が起電力となって、ステータ2のコイル8に電流が発生する。コイル8に発生する電流は、不図示のバッテリに蓄電されたり、不図示の付属電機機器に電力供給を行ったりする用途に用いられる。
【0060】
ここで、フライホイールユニット3のロータヨーク20には、外周部に凸部31が形成されている。このため、ロータヨーク20の径方向中央側と比較してロータヨーク20の外周部の重量を効果的に増大することができる。この結果、ロータヨーク20の慣性力を効率よく高めることができ、この慣性力を利用してロータヨーク20を惰性で回転させることができる。そして、この分、効率よくコイル8に電流を発生させることができる。
【0061】
次に、エンジン始動機能について説明する。
回転電機1によってエンジン100を始動する際、バッテリに蓄電された電流を選択的にコイル8に供給する。いずれのコイル8に電流を供給するかは、位置検出センサ11によるフライホイールユニット3の回転位置の検出結果に基づいて制御される。
コイル8に電流を供給すると、所定のティース6に磁束が形成され、この磁束とフライホイールユニット3のマグネット34との間に、磁気的な吸引力や反発力が生じる。この結果、フライホイールユニット3が回転し、さらにクランクシャフト102が回転する。これにより、エンジン100が始動される。
ここで、ロータヨーク20に凸部31が形成されているので、ロータヨーク20が回転し始めると大きな慣性力を得ることができる。この慣性力を利用してクランクシャフト102を効率よく回転させることができる。
【0062】
このように、上述の第1実施形態では、ロータヨーク20を構成する底部22の外周部には、クランクケース101とは反対側に向かって凸部31が突出形成されている。このため、ロータヨーク20の径方向中央側と比較してロータヨーク20の外周部の重量を効果的に増大することができる。この結果、ロータヨーク20の慣性力を効率よく高めることができる。
また、ロータヨーク20の慣性力を高めるために、ロータヨーク20全体の重量を増大する必要がない。このため、ロータヨーク20の大型化を抑制できる。よって、このロータヨーク20を取り付けるためにクランクシャフト102を延ばす必要もなく、クランクシャフト102の振れ回りを抑制できる。
【0063】
また、ロータヨーク20の底部22のクランクケース101とは反対側の一面22aに、冷却用ファン4が設けられる。このため、クランクケース101と回転電機1との間に、冷却用ファン4が配置されることもない。つまり、回転電機1のクランクケース101とは反対側に冷却用ファン4を配置できるので、回転電機1を、小型化、高性能化できる。
しかも、ロータヨーク20の凸部31の径方向内側に形成される凹部41を、冷却用ファン4を収納する冷却用ファン収納凹部42として機能させている。このため、ロータヨーク20に冷却用ファン4を設けた場合であっても、回転電機1の全体の軸長をできる限り抑えることができる。
【0064】
また、ロータヨーク20の凸部31は、底部22の外周部の全周に渡って形成されている。このため、ロータヨーク20の径方向中央側と比較してロータヨーク20の外周部の重量をより効果的に増大することができる。このため、ロータヨーク20の慣性力を確実に高めることができる。
また、凸部31の横壁31bには、複数の治具用孔33が周方向に等間隔で形成されている。そして、これら治具用孔33に、ロータヨーク20の一面22a側から治具Zの位置決め突起Ztを挿入し、ロータヨーク20に対するマグネット34の位置決めを行っている。このように、ロータヨーク20の底部22の外側(一面22a側)からマグネット34の治具Zを挿通できるので、この治具Zの使用を容易化できる。このため、ロータヨーク20へのマグネット34の組み付けを容易化できる。
【0065】
また、ロータヨーク20を構成する底部22の径方向中央に、ロータボス21と連結される取付座27を一体成形している。取付座27は、底部22にプレス加工を施すことにより、底部22から僅かにクランクケース101側にずれて形成されている。
ここで、ロータヨーク20は、ステータ2のクランクケース101とは反対側からステータ2を覆うように設けられている。このため、クランクシャフト102に外嵌固定されるロータボス21と連結される取付座27をクランクケース101側にずらすことにより、クランクケース101から突出しているクランクシャフト102をできるだけ短く設定できる。よって、クランクシャフト102の振れ回りを確実に抑制でき、回転電機1を、より確実に小型化、高性能化できる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、図1図3図4を援用し、図5図6に基づいて、本発明の第2実施形態について説明する。なお、前述の第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する。
図5は、第2実施形態における回転電機201を自動二輪車200の車体202に取り付けた状態を、車体202の進行方向後方からみた平面図である。なお、図5では、サイドスタンド203を使用して車体202を停止させた状態を示している。
【0067】
図1図5に示すように、第2実施形態では、回転電機201は、エンジン100のクランクケース101に固定されているステータ2と、エンジン100のクランクシャフト102に取付けられるフライホイールユニット3と、フライホイールユニット3に設けられている冷却用ファン4と、を備えている点は、前述の第1実施形態と同様である。また、回転電機201のフライホイールユニット3は、ステータ2をクランクケース101とは反対側(ステータコア5の他面5e側)から覆うように、クランクケース101側に開口部220aを有するロータヨーク220を備えている点は、前述の第1実施形態と同様である。また、ロータヨーク220に設けられたマグネット34は、グネットカバー235によって保持されている点は、前述の第1実施形態と同様である。この他、第2実施形態の回転電機201において、基本的構成は、前述の第1実施形態の回転電機1と同様である。
【0068】
図5に示すように、回転電機201は、車体202の車幅方向外側に取り付けられている。回転電機201のロータヨーク220は、開口部220aを車体202(エンジン100、図5では不図示、図1参照)側に向けた状態で取り付けられている。
【0069】
車体202には、車幅方向両外側のうち、回転電機201が取り付けられている側と同じ側面に、サイドスタンド203が設けられている。サイドスタンド203は、自動二輪車200の停車時に、車体202の姿勢を保つために用いられる。車体202は、サイドスタンド203を用いて停車させている状態では、サイドスタンド203が設けられている側に若干傾く。このため、サイドスタンド203を用いて自動二輪車200を停車させている状態では、回転電機201のロータヨーク220の側部223は、開口部220a側から底部222側に向かって下り勾配となる。
【0070】
ここで、第2実施形態のマグネットカバー235には、内フランジ部237に、水抜き孔204と、スリット205と、が複数形成されている。この点、前述の第1実施形態と相違する点である。
【0071】
図6は、第2実施形態におけるマグネットカバー235の斜視図である。
水抜き孔204は、内フランジ部237の傾斜部51に形成されている。水抜き孔204は、平面視で略円形状に形成されている。スリット205は、内フランジ部237の当接部52における内周縁から径方向外側に延出形成されている。スリット205は、内フランジ部237の当接部52における内周縁から傾斜部51の当接部52側に至る間に形成されている。また、スリット205は、傾斜部51に向かうに従って徐々に先細りとなるように形成されている。
【0072】
また、水抜き孔204及びスリット205は、それぞれマグネットカバー235の凸条部36aに対応する位置に形成されている。つまり、水抜き孔204及びスリット205は、それぞれ軸方向でマグネットカバー235の凸条部36aと並ぶように配置されている。さらに、水抜き孔204及びスリット205は、周方向で互い違いに配置されている。
【0073】
ここで、ロータヨーク220の側部223の内周面、及び底部223の内側面側の外周部は、マグネットカバー235によって覆われている形になっている。このマグネットカバー235によって覆われている箇所のうち、ロータヨーク220の横壁31b(図3参照)には、複数の治具用孔33が形成されている。このため、マグネットカバー235に形成されている水抜き孔204及びスリット205は、ロータヨーク220のマグネットカバー235よりも径方向内側と治具用孔33とを連通している。
【0074】
このような構成のもと、例えば、ロータヨーク220の開口部220aを介し、ロータヨーク220内に水滴が侵入した場合、ロータヨーク220の側部223が開口部220a側から底部222側に向かって下り勾配となっているので、水滴が底部222側に向かって伝っていく。この後、水滴は、マグネットカバー235に形成されている水抜き孔204やスリット205を介し、マグネットカバー235とロータヨーク220の側部223との間に侵入する。この後、水滴は、ロータヨーク220に形成されている治具用孔33を介し、ロータヨーク220の外部に排出される。つまり、治具用孔33は、マグネット34の位置決めを行う治具Zを挿入する孔として機能するとともに、排水用の孔としても機能する。
【0075】
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、ロータヨーク220内に水滴等が侵入した場合であっても、この水滴等を確実に排出することができる。このため、水滴等による回転電機201の動作不良を確実に防止でき、回転電機201の信頼性を向上させることができる。
【0076】
また、水抜き孔204及びスリット205は、それぞれ軸方向でマグネットカバー235の凸条部36aと並ぶように配置されている。つまり、水抜き孔204及びスリット205は、径方向でマグネット34と重ならない位置に形成されている。このため、水抜き孔204及びスリット205が径方向でマグネット34と重なる位置に形成されている場合と比較して、マグネット34が被水してしまうことを抑制できる。
【0077】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、自動二輪車200等のエンジン100に回転電機1,201を取付けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな機器に回転電機1,201を利用することが可能である。
【0078】
また、上述の第1実施形態では、ロータヨーク20の底部22の外周部全体渡って凸部31を形成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、底部22の外周部に断続的に複数の凸部31を形成してもよい。このように構成することで、ロータヨーク20の慣性力を調整できる。また、この場合、凸部31を等間隔に配置することが望ましい。これにより、ロータヨーク20の回転バランスを保つことができる。
【0079】
さらに、上述の第1実施形態では、凸部31は、底部22にプレス加工を施すことにより形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、底部22の外周部に、別途凸部31を設けてもよい。
また、上述の第1実施形態では、底部22の径方向中央に形成された取付座27を、底部22から僅かにクランクケース101側にずらして形成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、必要に応じて底部22と取付座27とを同一平面上に形成してもよい。
【0080】
また、上述の第2実施形態では、マグネットカバー235の内フランジ部237に、水抜き孔204やスリット205を形成した場合について説明した。さらに、マグネットカバー235に、水抜き孔204とスリット205とが周方向に互い違いに配置されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、マグネットカバー235に、少なくともロータヨーク220のマグネットカバー235よりも径方向内側とロータヨーク220の治具用孔33とを連通する孔、及びスリットの少なくともいずれか一方が形成されていればよい。
【0081】
また、上述の実施形態では、ロータヨーク20の横壁31bに、複数の治具用孔33を形成した場合について説明した。これら治具用孔33は、治具Zを挿入することにより、マグネット34の位置決めを行うために用いられる場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、治具Zを挿通できない単なる連通孔としてもよい。このように構成した場合でも、連通孔を排水用の孔として機能させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
上述のアウターロータ型回転電機によれば、ロータヨークの底部の外周面に、エンジンとは反対側に向かって突出する凸部を形成することにより、ロータヨークの径方向中央側と比較してロータヨークの外周部の重量を効果的に増大することができる。この結果、ロータヨークの慣性力を効率よく高めることができる。
また、ロータヨーク全体の重量を増大する必要がないので、ロータヨークの大型化を抑制できる。このため、クランクシャフトを延ばす必要もなく、クランクシャフトの振れ回りを抑制できる。
また、ロータヨークの底部のエンジンとは反対側の面に、冷却用ファンが設けられるので、エンジンとアウターロータ型回転電機との間に冷却用ファンが配置されることもなく、アウターロータ型回転電機のエンジンとは反対側に冷却用ファンを配置できる。
よって、アウターロータ型回転電機を、小型化、高性能化できる。
【符号の説明】
【0083】
1,201…アウターロータ型回転電機、2…ステータ、3…フライホイールユニット、4…冷却用ファン、20,220…ロータヨーク、21…ロータボス、22,222…底部、22a…一面(面)、23,223…側部、27…取付座、28…底部側連結部(取付孔)、31…凸部、33…治具用孔(連通孔)、34…マグネット、35…マグネットカバー、36…カバー本体、37…内フランジ部、38…外フランジ部、51…傾斜部(内フランジ部)、52…当接部(内フランジ部)、100…エンジン、102…クランクシャフト、200…自動二輪車、202…車体、203…サイドスタンド、204…水抜き孔(孔)、205…スリット、235…マグネットカバー、C…回転軸線、Z…治具(位置決め用治具)
図1
図2
図3
図4
図5
図6