特許第6740470号(P6740470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6740470
(24)【登録日】2020年7月28日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20200730BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20200730BHJP
   G01S 17/93 20200101ALI20200730BHJP
【FI】
   G01C21/28
   G08G1/16 C
   G01S17/93
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-518870(P2019-518870)
(86)(22)【出願日】2018年5月17日
(86)【国際出願番号】JP2018019146
(87)【国際公開番号】WO2018212287
(87)【国際公開日】20181122
【審査請求日】2019年11月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-100183(P2017-100183)
(32)【優先日】2017年5月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 多史
(72)【発明者】
【氏名】岩井 智昭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正浩
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−37472(JP,A)
【文献】 特開2017−4176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/28
G01S 17/93
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部に記憶された測定対象の位置情報を取得する第1取得部と、
外界センサにより得た周囲の地物を示す点の点群情報を取得する第2取得部と、
所定範囲に存在する点群情報に基づいて、前記所定範囲内に存在する前記測定対象の所定位置を示す位置情報の信頼度を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記所定範囲内に存在する点の数又は点の集合の数が多いほど、前記信頼度を高くすることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記測定対象は道路にペイントされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記測定対象は路面線であり、
前記出力部は、前記路面線の幅情報に基づいて理想的な路面線における点の数である理想点数を算出し、前記所定範囲に存在する点の数と前記理想点数との比に基づいて前記信頼度を決定することを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記理想点数に対する前記所定範囲に存在する点の数の比が大きいほど前記信頼度を高くすることを特徴とする請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記測定対象の位置情報と前記測定装置の位置とに基づいて前記測定対象の予測位置を算出し、当該予測位置に基づいて前記所定範囲を決定する範囲決定部を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記出力部は、前記測定対象の所定位置を示す位置情報を出力することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
測定装置により実行される測定方法であって、
記憶部に記憶された測定対象の位置情報を取得する第1取得工程と、
外界センサにより得た周囲の地物を示す点の点群情報を取得する第2取得工程と、
所定範囲に存在する点群情報に基づいて、前記所定範囲内に存在する前記測定対象の所定位置を示す位置情報の信頼度を出力する出力工程と、
を備えることを特徴とする測定方法。
【請求項9】
コンピュータを備える測定装置により実行されるプログラムであって、
記憶部に記憶された測定対象の位置情報を取得する第1取得部、
外界センサにより得た周囲の地物を示す点の点群情報を取得する第2取得部、
所定範囲に存在する点群情報に基づいて、前記所定範囲内に存在する前記測定対象の所定位置を示す位置情報の信頼度を出力する出力部、
として前記コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地物の位置に基づいて移動体の位置を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転車両では、LiDAR(Light Detection and Ranging)などのセンサで計測した地物位置と、自動運転用の地図情報の地物位置をマッチングして高精度に自車位置を推定する必要がある。ここで利用する地物としては、白線、標識、看板などが挙げられる。特許文献1は、LiDARを用いて検出した地物位置と、地図情報の地物位置とを用いて自車位置を推定する手法の一例を記載している。また、特許文献2は、道路面に電磁波を送信し、その反射率に基づいて白線を検出する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−72422号公報
【特許文献2】特開2015−222223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
白線を用いて自車位置を推定する場合、白線の種類(連続線、破線など)や塗装の劣化などによって、LiDARにより計測できるデータ数に差が生じる。このため、白線を用いて自車位置推定を行う際、白線の検出に使用するLiDARのデータ数が少ない場合と多い場合とでは白線の検出精度が変わり、その結果自車位置推定の精度が変わってくる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のものが例として挙げられる。本発明は、地物として抽出した白線の信頼度を利用することにより、自車位置推定の精度の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、測定装置であって、記憶部に記憶された測定対象の位置情報を取得する第1取得部と、外界センサにより得た周囲の地物を示す点の点群情報を取得する第2取得部と、所定範囲に存在する点群情報に基づいて、前記所定範囲内に存在する前記測定対象の所定位置を示す位置情報の信頼度を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項8に記載の発明は、測定装置により実行される測定方法であって、記憶部に記憶された測定対象の位置情報を取得する第1取得工程と、外界センサにより得た周囲の地物を示す点の点群情報を取得する第2取得工程と、所定範囲に存在する点群情報に基づいて、前記所定範囲内に存在する前記測定対象の所定位置を示す位置情報の信頼度を出力する出力工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項9に記載の発明は、コンピュータを備える測定装置により実行されるプログラムであって、記憶部に記憶された測定対象の位置情報を取得する第1取得部、外界センサにより得た周囲の地物を示す点の点群情報を取得する第2取得部、所定範囲に存在する点群情報に基づいて、前記所定範囲内に存在する前記測定対象の所定位置を示す位置情報の信頼度を出力する出力部、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】白線抽出方法を説明する図である。
図2】白線予測範囲の決定方法を説明する図である。
図3】白線中心位置の算出方法を説明する図である。
図4】白線スキャンデータの抽出方法を説明する図である。
図5】測定装置の構成を示すブロック図である。
図6】白線を利用した自車位置推定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の1つの好適な実施形態では、測定装置は、記憶部に記憶された測定対象の位置情報を取得する第1取得部と、外界センサにより得た周囲の地物を示す点の点群情報を取得する第2取得部と、所定範囲に存在する点群情報に基づいて、前記所定範囲内に存在する前記測定対象の所定位置を示す位置情報の信頼度を出力する出力部と、を備える。
【0011】
上記の測定装置は、記憶部に記憶された測定対象の位置情報を取得するとともに、外界センサにより得た周囲の地物を示す点の点群情報を取得する。そして、所定範囲に存在する点群情報に基づいて、前記所定範囲内に存在する前記測定対象の所定位置を示す位置情報を求め、その信頼度を出力する。これにより、信頼度を考慮して位置情報の利用方法を変えることができ、信頼度の低い位置情報を用いて精度が低下することを防止できる。好適な例では、前記測定対象は道路にペイントされている白線、黄色線などの区画線や、停止線や横断歩道などの線状の道路標示などとすることができる。
【0012】
上記の測定装置の一態様では、前記出力部は、前記所定範囲内に存在する点の数又は点の集合の数が多いほど、前記信頼度を高くする。この態様では、所定範囲内に存在する点の数に基づいて信頼度を設定することができる。
【0013】
上記の測定装置の他の一態様では、前記測定対象は路面線であり、前記出力部は、前記路面線の幅情報に基づいて理想的な路面線における点の数である理想点数を算出し、前記所定範囲に存在する点の数と前記理想点数との比に基づいて前記信頼度を決定する。この態様では、所定範囲内で実際に計測された点の数と、理想点数とに基づいて、信頼度が設定される。この場合の好適な例では、前記出力部は、前記理想点数に対する前記所定範囲に存在する点の数の比が大きいほど前記信頼度を高くする。なお、本明細書においての「路面線」とは、測定対象である白線や黄色線などの区画線、および停止線や横断歩道などの線状の道路標示等である。
【0014】
上記の測定装置の他の一態様では、前記測定対象の位置情報と前記測定装置の位置とに基づいて前記測定対象の予測位置を算出し、当該予測位置に基づいて前記所定範囲を決定する範囲決定部を備える。この態様では、測定対象の予測位置に基づいて、所定範囲が決定される。
【0015】
上記の測定装置の他の一態様では、前記出力部は、前記測定対象の所定位置を示す位置情報を出力する。この態様では、測定対象の位置情報と、その信頼度とが出力される。
【0016】
本発明の他の好適な実施形態では、測定装置により実行される測定方法は、記憶部に記憶された測定対象の位置情報を取得する第1取得工程と、外界センサにより得た周囲の地物を示す点の点群情報を取得する第2取得工程と、所定範囲に存在する点群情報に基づいて、前記所定範囲内に存在する前記測定対象の所定位置を示す位置情報の信頼度を出力する出力工程と、を備える。これにより、信頼度を考慮して位置情報の利用方法を変えることができ、信頼度の低い位置情報を用いて精度が低下することを防止できる。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態では、コンピュータを備える測定装置により実行されるプログラムは、記憶部に記憶された測定対象の位置情報を取得する第1取得部、外界センサにより得た周囲の地物を示す点の点群情報を取得する第2取得部、所定範囲に存在する点群情報に基づいて、前記所定範囲内に存在する前記測定対象の所定位置を示す位置情報の信頼度を出力する出力部、として前記コンピュータを機能させる。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記の測定装置を実現することができる。このプログラムは、記憶媒体に記憶して取り扱うことができる。
【実施例】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
[白線抽出方法]
図1は、白線抽出方法を説明する図である。白線抽出とは、道路面にペイントされた白線を検出し、その所定位置、例えば中心位置を算出することをいう。
【0019】
(白線予測位置の算出)
図示のように、地図座標系(X,Y)に車両5が存在し、車両5の位置を基準として車両座標系(X,Y)が規定される。具体的に、車両5の進行方向を車両座標系のX軸とし、それに垂直な方向を車両座標系のY軸とする。
【0020】
車両5の左右の側方には車線境界線である白線が存在する。白線の地図座標系における位置、即ち、白線地図位置は、サーバなどにより管理される高度化地図に含まれており、サーバなどから取得される。本実施例では、白線のデータは座標点列として高度化地図内に記憶されているものとする。また、車両5に搭載されたLiDARはスキャンライン2に沿ってスキャンデータを計測する。なお、スキャンライン2は、LiDARによるスキャンの軌跡を示す。
【0021】
図1では、車両5の左側の白線WL1を構成する点の座標、即ち白線地図位置WLMP1は(mxm1,mym1)であり、車両5の右側の白線WL2を構成する点の座標、即ち白線地図位置WLMP2は(mxm2,mym2)であるとする。また、地図座標系における予測自車位置PVPは(x’,y’)で与えられ、地図座標系における予測自車方位角はΨ’で与えられる。
【0022】
ここで、白線の予測位置を示す白線予測位置WLPP(l’x,l’y)は、白線地図位置WLMP(mx,my)と、予測自車位置PVP(x’,y’)と、予測自車方位角Ψ’とを用いて、以下の式(1)により与えられる。
【0023】
【数1】
よって、式(1)により、白線WL1について白線予測位置WLPP1(l’xv1,l’yv1)が得られ、白線WL2について白線予測位置WLPP2(l’xv2,l’yv2)が得られる。こうして、白線WL1、WL2のそれぞれについて、白線WL1、WL2に対応する複数の白線予測位置WLPP1、WLPP2が得られる。
【0024】
(白線予測範囲の決定)
次に、白線予測位置WLPPに基づいて、白線予測範囲WLPRが決定される。白線予測範囲WLPRは、予測自車位置PVPを基準として、白線が存在すると考えられる範囲を示す。白線予測範囲WLPRは、最大で車両5の右前方、右後方、左前方及び左後方の4か所に設定される。
【0025】
図2は、白線予測範囲WLPRの決定方法を示す。図2(A)において、車両5の前方の任意の位置(距離α前方の位置)に前方基準点(α,0)を設定する。そして、前方基準点(α,0)と、白線予測位置WLPPとに基づいて、前方基準点(α,0)から最も近い白線予測位置WLPPを探索する。具体的には、白線WL1については、前方基準点(α,0)と、白線WL1を構成する複数の白線予測位置WLPP1(l’xv1,l’yv1)とに基づいて、以下の式(2)により距離D1を算出し、距離D1が最小値となる白線予測位置WLPP1を予測範囲基準点Pref1とする。
【0026】
【数2】
【0027】
同様に、白線WL2については、前方基準点(α,0)と、白線WL2を構成する複数の白線予測位置WLPP2(l’xv2,l’yv2)とに基づいて、以下の式(3)により距離D2を算出し、距離D2が最小値となる白線予測位置WLPP2を予測範囲基準点Pref2とする。
【0028】
【数3】
【0029】
そして、図2(B)に示すように、予測範囲基準点Prefを基準とした任意の範囲、例えば予測範囲基準点PrefからX軸方向に±ΔX、Y軸方向に±ΔYの範囲を白線予測範囲WLPRと設定する。こうして、図1に示すように、車両5の前方の左右位置に白線予測範囲WLPR1とWLPR2が設定される。同様に、車両5の後方に後方基準点を設定して予測範囲基準点Prefを設定することにより、車両5の後方の左右位置に白線予測範囲WLPR3とWLPR4が設定される。こうして、車両5に対して4つの白線予測範囲WLPR1〜4が設定される。
【0030】
(白線中心位置の算出)
次に、白線予測位置WLPPを用いて白線中心位置WLCPを算出する。図3は白線中心位置WLCPの算出方法を示す。図3(A)は、白線WL1が実線である場合を示す。白線中心位置WLCP1は、白線を構成するスキャンデータの位置座標の平均値により算出される。いま、図3(A)に示すように、白線予測範囲WLPR1が設定されると、LiDARから出力されるスキャンデータのうち、白線予測範囲WLPR1内に存在する白線スキャンデータWLSD1(wx’,wy’)が抽出される。白線上は通常の道路上と比較して反射率が高いので、白線上で得られたスキャンデータは、反射強度の高いデータとなる。LiDARから出力されたスキャンデータのうち、白線予測範囲WLPR1内に存在し、路面上、かつ、反射強度が所定以上値であるスキャンデータが白線スキャンデータWLSDとして抽出される。そして、抽出された白線スキャンデータWLSDの数を「n」とすると、以下の式(4)により、白線中心位置WLCP1(sxv1,syv1)の座標が得られる。
【0031】
【数4】
また、図3(B)に示すように、白線が破線である場合も同様に白線中心位置WLCP2が算出される。
【0032】
(信頼度の算出)
上記のように、白線WLが実線である場合でも破線である場合でも、白線中心位置WLCPは同じ方法で算出される。しかし、白線WLが破線である場合、白線WLと白線予測範囲WLPRとの位置関係によっては、白線予測範囲WLPR内に存在する白線スキャンデータWLSDの数が少なくなってしまう。図4は、白線WLが実線である場合と破線である場合の、白線WLと白線予測範囲WLPRとの位置関係の例を示す。図示のように、白線WLが実線である場合には、基本的にどのタイミングにおいても白線予測範囲WLPR内ではX方向の全体にわたって白線が含まれているので、得られる白線スキャンデータWLSDの数は多い。これに対して、白線WLが破線である場合、白線予測範囲WLPRが白線WLの途切れた部分に位置するときには、白線予測範囲WLPR内で得られる白線スキャンデータWLSDの数は少なくなってしまう。そして、白線中心位置WLCPの算出に使用する白線スキャンデータWLSDの数が少なくなると、算出される白線中心位置WLCPの精度が低下してしまう。
【0033】
また、白線WLが実線である場合でも、路面上の白線のペイントが劣化したり、摩耗により薄くなったりしていると、LiDARにより反射強度の高いスキャンデータが得られなくなる。この場合にも、白線予測範囲WLPR内の白線スキャンデータWLSDの数が減少し、白線中心位置WLCPの精度が低下してしまう。
【0034】
そこで、本実施例では、白線スキャンデータWLSDの数が多い場合も少ない場合も同じ方法で白線中心位置WLCPを算出するが、それに加えて、白線スキャンデータWLSDの数に基づいて白線中心位置WLCPの算出精度を示す信頼度Rを算出する。基本的に、白線予測範囲WLPR内にある白線スキャンデータWLSDの数が多いほど信頼度Rは高く、白線スキャンデータWLSDの数が少ないほど信頼度Rは低くなる。また、白線スキャンデータの数の代わりに、LiDARによるスキャンライン又はレイヤの数に基づいて信頼度Rを算出しても良い。この場合、スキャンライン又はレイヤの数が多いほど信頼度Rは高く、少ないほど信頼度Rは低くなる。なお、スキャンデータは本発明の「地物を示す点」又は「点群」に相当し、スキャンライン又はレイヤは「点の集合」に相当する。
【0035】
1つの好適な例では、信頼度Rを以下の式により算出する。
【0036】
【数5】
ここで、「n」は白線予測範囲WLPR内に存在する白線スキャンデータ数であり、「N」は白線予測範囲WLPR内に存在する理想的な白線スキャンデータ数である。理想的な白線スキャンデータ数Nは、白線予測範囲WLPRのサイズと、白線WLの幅とに基づいて算出される。具体的には、まず白線予測範囲WLPRのサイズと白線の幅とに基づいて、白線予測範囲WLPRのX軸方向全体にわたって白線が存在する場合の白線の占める面積Sを算出する。例えば、白線予測範囲WLPRが図2(B)に示すようにX軸方向に長さ「2ΔX」を有し、白線の幅が「W」であるとすると、白線の面積「S」は、
S=2ΔX・W
で与えられる。次に、LiDARによるスキャン密度に基づいて、面積Sの領域で得られるスキャンデータ数を算出し、これを理想的な白線スキャンデータ数Nとする。
【0037】
即ち、理想的な白線スキャンデータ数Nは、白線予測範囲WLPRのX軸方向全体にわたって白線が存在し、かつ、その白線の全体において反射強度の高いスキャンデータが得られる場合の白線スキャンデータ数となる。そして、式(5)に示すように、実際に白線予測範囲WLPR内で得られたス白線スキャンデータ数nと、理想的な白線スキャンデータ数Nとの比により、信頼度Rが与えられる。
【0038】
他の例では、信頼度Rを以下の式により算出する。
【0039】
【数6】
ここで、「m」は白線予測範囲WLPR内に存在する白線スキャンライン数である。なお、「白線スキャンライン」とは、白線スキャンデータにより構成されるスキャンラインを言う。また、「M」は白線予測範囲WLPR内に存在する理想的な白線スキャンライン数である。
【0040】
理想的な白線スキャンライン数Mは、白線予測範囲WLPRのXv軸方向全体にわたって白線が存在し、かつ、その白線の全体において反射強度の高いスキャンデータが得られる場合の白線スキャンライン数となる。そして、式(6)に示すように、実際に白線予測範囲WLPR内で得られたス白線スキャンライン数mと、理想的な白線スキャンライン数Mとの比により、信頼度Rが与えられる。
【0041】
こうして得られた信頼度Rは、白線中心位置WLCPの計算結果と対応付けて出力され、自車位置推定に利用される。例えば、自車位置推定においては、白線中心位置WLCPに基づいて自車位置を推定する際に、信頼度Rに基づいて重み付けを行う。これにより、信頼度の低い白線中心位置WLCPは、自車位置推定に使用されないか、低い重み付けで使用されるようになる。こうして、信頼度の低い白線中心位置WLCPに基づいて精度の低い自車位置推定が行われることが防止される。
【0042】
[装置構成]
図5は、本発明の測定装置を適用した自車位置推定装置の概略構成を示す。自車位置推定装置10は、車両に搭載され、無線通信によりクラウドサーバなどのサーバ7と通信可能に構成されている。サーバ7はデータベース8に接続されており、データベース8は高度化地図を記憶している。データベース8に記憶された高度化地図は、ランドマーク毎にランドマーク地図情報を記憶している。また、白線については、白線を構成する点列の座標を示す白線地図位置WLMPと、白線の幅情報とを記憶している。自車位置推定装置10は、サーバ7と通信し、車両の自車位置周辺の白線に関する白線地図情報をダウンロードする。
【0043】
自車位置推定装置10は、内界センサ11と、外界センサ12と、自車位置予測部13と、通信部14と、白線地図情報取得部15と、白線位置予測部16と、スキャンデータ抽出部17と、白線中心位置・信頼度算出部18と、自車位置推定部19とを備える。なお、自車位置予測部13、白線地図情報取得部15、白線位置予測部16、スキャンデータ抽出部17、白線中心位置・信頼度算出部18及び自車位置推定部19は、実際には、CPUなどのコンピュータが予め用意されたプログラムを実行することにより実現される。
【0044】
内界センサ11は、GNSS(Global Navigation Satellite System)/IMU(Inertia Measurement Unit)複合航法システムとして車両の自車位置を測位するものであり、衛星測位センサ(GPS)、ジャイロセンサ、車速センサなどを含む。自車位置予測部13は、内界センサ11の出力に基づいて、GNSS/IMU複合航法により車両の自車位置を予測し、予測自車位置PVPを白線位置予測部16に供給する。
【0045】
外界センサ12は、車両の周辺の物体を検出するセンサであり、ステレオカメラ、LiDARなどを含む。外界センサ12は、計測により得られたスキャンデータSDをスキャンデータ抽出部17へ供給する。
【0046】
通信部14は、サーバ7と無線通信するための通信ユニットである。白線地図情報取得部15は、車両の周辺に存在する白線に関する白線地図情報を通信部14を介してサーバ7から受信し、白線地図情報に含まれる白線地図位置WLMPを白線位置予測部16へ供給する。
【0047】
白線位置予測部16は、白線地図位置WLMPと自車位置予測部13から取得した予測自車位置PVPとに基づいて、前述の式(1)により白線予測位置WLPPを算出する。また、白線位置予測部16は、白線予測位置WLPPに基づいて、前述の式(2)、(3)により白線予測範囲WLPRを決定し、スキャンデータ抽出部17へ供給する。さらに、白線位置予測部16は、白線地図情報に含まれる白線の幅Wを白線中心位置・信頼度算出部18へ供給する。
【0048】
スキャンデータ抽出部17は、白線位置予測部16から供給された白線予測範囲WLPRと、外界センサ12から取得したスキャンデータSDとに基づいて白線スキャンデータWLSDを抽出する。具体的には、スキャンデータ抽出部17は、スキャンデータSDのうち、白線予測範囲WLPRに含まれ、路面上、かつ、反射強度が所定値以上であるスキャンデータを、白線スキャンデータWLSDとして抽出し、白線中心位置・信頼度算出部18へ供給する。
【0049】
白線中心位置・信頼度算出部18は、図3を参照して説明したように、式(4)により白線スキャンデータWLSDから白線中心位置WLCPを算出する。加えて、白線中心位置・信頼度算出部18は、式(5)により、白線スキャンデータ数n及び理想的な白線スキャンデータ数Nに基づいて信頼度Rを算出する。そして、白線中心位置・信頼度算出部18は、算出された白線中心位置WLCP及び信頼度Rを自車位置推定部19へ供給する。
【0050】
自車位置推定部19は、高度化地図における白線地図位置WLMPと、外界センサ12による白線の計測データである白線中心位置WLCPとに基づいて、車両の自車位置と自車方位角を推定する。この際、自車位置推定部19は、白線中心位置WLCPを信頼度Rにより重み付けして自車位置及び自車方位角の推定に適用する。これにより、信頼度Rの高い白線中心位置WLCPは大きな割合で自車位置及び自車方位角の推定に適用され、信頼度Rの低い白線中心位置WLCPは自車位置及び自車方位角の推定に反映されにくくなるので、自車位置及び自車方位角の推定精度の低下を防止することができる。なお、高度化地図のランドマーク位置情報と外界センサによるランドマークの計測位置情報をマッチングすることにより自車位置を推定する方法の一例が特開2017−72422に記載されている。
【0051】
上記の構成において、白線地図情報取得部15は本発明の第1取得部の一例であり、スキャンデータ抽出部17は本発明の第2取得部の一例であり、白線中心位置・信頼度算出部18は本発明の出力部の一例であり、白線位置予測部16は本発明の範囲決定部の一例である。
【0052】
[自車位置推定処理]
次に、自車位置推定装置10による自車位置推定処理について説明する。図6は、自車位置推定処理のフローチャートである。この処理は、CPUなどのコンピュータが予め用意されたプログラムを実行し、図5に示す各構成要素として機能することにより実現される。
【0053】
まず、自車位置予測部13は、内界センサ11からの出力に基づいて、予測自車位置PVPを取得する(ステップS11)。次に、白線地図情報取得部15は、通信部14を通じてサーバ7に接続し、データベース8に記憶された高度化地図から白線地図情報を取得する(ステップS12)。なお、ステップS11とS12はいずれが先でもよい。
【0054】
次に、白線位置予測部16は、ステップS12で得られた白線位置情報に含まれる白線地図位置WLMPと、ステップS11で得られた予測自車位置PVPに基づいて、白線予測位置WLPPを算出する(ステップS13)。また、白線位置予測部16は、白線予測位置WLPPに基づいて白線予測範囲WLPRを決定し、スキャンデータ抽出部17へ供給する(ステップS14)。
【0055】
次に、スキャンデータ抽出部17は、外界センサ12としてのLiDARから得たスキャンデータSDのうち、白線予測範囲WLPR内に属し、路面上、かつ、反射強度が所定値以上であるスキャンデータを白線スキャンデータWLSDとして抽出し、白線中心位置・信頼度算出部18へ供給する(ステップS15)。
【0056】
次に、白線中心位置・信頼度算出部18は、白線予測位置WLPPと白線スキャンデータWLSDに基づいて白線中心位置WLCP及び信頼度Rを算出し、自車位置推定部19へ供給する(ステップS16)。そして、自車位置推定部19は、白線中心位置WLCPと信頼度Rを利用して自車位置推定を行い(ステップS17)、自車位置及び自車方位角を出力する(ステップS18)。こうして自車位置推定処理は終了する。
【0057】
[変形例]
上記の実施例では、車線を示す車線境界線である白線を使用しているが、本発明の適用はこれには限られず、横断歩道、停止線などの線状の道路標示を利用してもよい。また、白線の代わりに、黄色線などを利用しても良い。これら、白線、黄色線などの区画線や、道路標示などは本発明の路面線の一例である。
【符号の説明】
【0058】
5 車両
7 サーバ
8 データベース
10 自車位置推定装置
11 内界センサ
12 外界センサ
13 自車位置予測部
14 通信部
15 白線地図情報取得部
16 白線位置予測部
17 スキャンデータ抽出部
18 白線中心位置・信頼度算出部
19 自車位置推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6