(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の半導体発光素子は、赤色の光を出射する前記半導体発光素子、緑色の光を出射する前記半導体発光素子および青色の光を出射する前記半導体発光素子を含む、請求項1に記載の光モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。本願の光モジュールは、光を形成する光形成部と、光形成部を取り囲むように配置される保護部材と、保護部材から出射した光形成部からの光が入射する光ファイバと、を備える。光形成部は、ベース部材と、ベース部材上に搭載され、出射波長の異なる複数の半導体発光素子と、ベース部材上に搭載され、複数の半導体発光素子からの光を合波するフィルタと、を含む。保護部材から出射した光の、光ファイバへの入射位置における色度の温度依存性が0.004/℃以上0.2/℃以下である。
【0010】
本願の光モジュールにおいては、出射波長の異なる複数の半導体発光素子からの光がフィルタによって合波され、光ファイバに入射する。そして、保護部材から出射した光の、光ファイバへの入射位置における色度の温度依存性が0.004/℃以上0.2/℃以下である。温度依存性が0.004/℃以上という一般的な光モジュールに比べて高い値に設定されることにより、光ファイバに入射する光の色を、個々の半導体発光素子の出力を制御するのではなく、光モジュールの温度によって制御することが可能となる。これにより、光モジュールの制御が容易となる。一方、温度依存性が0.2/℃を超えると、わずかな温度変化により光ファイバに入射する光の色が大幅に変化する。そのため、光ファイバに入射する光の色を光モジュールの温度によって制御することが困難となる。温度依存性を0.2/℃以下に設定することにより、光ファイバに入射する光の色を光モジュールの温度によって制御することが容易となる。
【0011】
このように、本願の光モジュールによれば、簡易な制御により光ファイバに入射する光の色を調整することができる。なお、光ファイバに入射する光の色を光モジュールの温度によって制御することを一層容易にする観点から、上記温度依存性は0.01/℃以上とすることが好ましく、0.1/℃以下とすることが好ましい。本願において、「色度」とは、CIE(Commission Internationale de l’Eclairage)で規定された色度図(CIE1931)上における座標(x座標およびy座標)を意味する。そして、色度の温度依存性は、色度図上における1℃あたりの当該座標の変化量(距離)で定義される。温度依存性を規定する温度範囲は、たとえば10℃〜60℃とする。また、上記フィルタとしては、たとえば波長選択性フィルタ、偏波合成フィルタなどを採用することができる。
【0012】
上記光モジュールにおいて、上記複数の半導体発光素子は、赤色の光を出射する半導体発光素子、緑色の光を出射する半導体発光素子および青色の光を出射する半導体発光素子を含んでいてもよい。このようにすることにより、これらの光を合波し、所望の色の光を形成することができる。
【0013】
上記光モジュールにおいて、上記光ファイバは、シングルモード光ファイバであってもよい。コア径の小さいシングルモード光ファイバを用いることにより、上記温度依存性を大きくすることが容易となる。そのため、上記光ファイバとして、シングルモード光ファイバは好適である。
【0014】
上記光モジュールにおいて、上記半導体発光素子はレーザダイオードであってもよい。このようにすることにより、波長のばらつきの少ない出射光を得ることができる。
【0015】
上記光モジュールにおいて、光形成部は、ベース部材に接触して配置される電子冷却モジュールをさらに含んでいてもよい。このようにすることにより、光モジュールの温度の調整が容易となる。
【0016】
[本願発明の実施形態の詳細]
(実施の形態1)
次に、本発明にかかる光モジュールの一実施の形態である実施の形態1を、
図1〜
図4を参照しつつ説明する。
図2は、
図1のキャップ40を取り外した状態に対応する図である。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0017】
図1および
図2を参照して、本実施の形態における光モジュール1は、平板状の形状を有するステム10と、ステム10の一方の主面10A上に配置され、光を形成する光形成部20と、光形成部20を覆うようにステム10の一方の主面10A上に接触して配置されるキャップ40と、ステム10の他方の主面10B側から一方の主面10A側まで貫通し、一方の主面10A側および他方の主面10B側の両側に突出する複数のリードピン51とを備えている。ステム10とキャップ40とは、たとえば溶接されることにより気密状態とされている。すなわち、光形成部20は、ステム10とキャップ40とによりハーメチックシールされている。ステム10とキャップ40とにより取り囲まれる空間には、たとえば乾燥空気などの水分が低減(除去)された気体が封入されている。キャップ40には、光形成部20からの光を透過する出射窓41が配置されている。出射窓41は、主面が互いに平行な平板状の形状を有している。ステム10およびキャップ40は、保護部材を構成する。ステム10およびキャップ40は、平面的に見て長方形状の形状を有している。
【0018】
図2および
図3を参照して、光モジュール1は、保護部材であるキャップ40に接続され、出射窓41を透過する光形成部20からの光が通過する通光路112を有するアダプタ110と、アダプタ110に接続され、通光路112を通過する光が入射する光結合部品としてのピグテール120とをさらに備えている。
【0019】
図3および
図4を参照して、アダプタ110は、環状の本体部111を含む。本体部111の内周面111Aは、キャップ40の外周面(ステム10の一方の主面10Aに交差する方向に延びる面)に対応する形状を有している。本体部111の内周面111Aにより取り囲まれる領域は、平面的に見て長方形状の形状を有している。本体部111の外周面により取り囲まれる領域は、平面的に見て長方形状の形状を有している。長方形状の平面形状を有する本体部111の一の辺に対応する領域には、ステム10の一方の主面10Aに交差する方向(垂直な方向)に突出する突出領域111Bが形成されている。突出領域111Bに対応する本体部111の領域には、外周面から内周面111Aまで貫通する貫通孔である通光路112が形成されている。突出領域111Bに対応する本体部111の外周面は、光結合部品としてのピグテール120を取り付けるための取付面として機能する。本体部111の内周面111Aがキャップ40の外周面を取り囲むように、アダプタ110は配置される。通光路112が出射窓41に対応する領域に位置するように、アダプタ110は配置される。本実施の形態において、アダプタ110の本体部111の内周面111Aとキャップ40の外周面とは、溶接により接合されている。溶接は、たとえばYAG(Yittrium Aluminium Garnet)レーザ溶接により実施することができる。本実施の形態において、アダプタ110の本体部111はステンレス鋼からなっている。
【0020】
ピグテール120は、光ファイバ(光ファイバ導波路)125と、光ファイバ125を保持する保持部材123と、を含んでいる。保持部材123は、円盤状の形状を有するベース部121と、ベース部121の一方の端面上に接続され、円錐台状の形状を有する本体部122とを含んでいる。ベース部121の中心軸と本体部122の中心軸とが一致するように、ベース部121に対して本体部122が配置される。ベース部121および本体部122の中心軸を含む領域にはベース部121および本体部122を軸方向に貫通する貫通孔が形成されており、当該貫通孔に光ファイバ125が挿入されている。つまり、光ファイバ125は、ベース部121および本体部122の中心軸を含む領域に沿って保持部材123に挿入されることにより、保持部材123によって保持されている。光ファイバ125の端面が通光路112に対応する領域に位置するように、ピグテール120は配置される。本実施の形態において、保持部材123のベース部121の他方の端面121Bとアダプタ110の本体部111の外周面とは、溶接により接合されている。溶接は、たとえばスポット溶接により実施することができる。
【0021】
アダプタ110の通光路112内には、集光レンズ131が配置されている。出射窓41を透過した光は、集光レンズ131において集光され、光ファイバ125に入射する。
【0022】
図2〜
図4を参照して、光形成部20は、板状の形状を有するベース部材であるベース板60を含む。ベース板60は、平面的に見て長方形形状を有する一方の主面60Aを有している。ベース板60は、ベース領域61と、チップ搭載領域62とを含んでいる。チップ搭載領域62は、一方の主面60Aの一の短辺と、当該短辺に接続された一の長辺を含む領域に形成されている。チップ搭載領域62の厚みは、ベース領域61に比べて大きくなっている。その結果、ベース領域61に比べて、チップ搭載領域62の高さが高くなっている。チップ搭載領域62において上記一の短辺の上記一の長辺に接続される側とは反対側の領域に、隣接する領域に比べて厚みの大きい(高さが高い)領域である第1チップ搭載領域63が形成されている。チップ搭載領域62において上記一の長辺の上記一の短辺に接続される側とは反対側の領域に、隣接する領域に比べて厚みの大きい(高さが高い)領域である第2チップ搭載領域64が形成されている。
【0023】
第1チップ搭載領域63上には、平板状の第1サブマウント71が配置されている。そして、第1サブマウント71上に、第1半導体発光素子としての赤色レーザダイオード81が配置されている。一方、第2チップ搭載領域64上には、平板状の第2サブマウント72および第3サブマウント73が配置されている。第2サブマウント72から見て、上記一の長辺と上記一の短辺との接続部とは反対側に、第3サブマウント73が配置される。そして、第2サブマウント72上には、第2半導体発光素子としての緑色レーザダイオード82が配置されている。また、第3サブマウント73上には、第3半導体発光素子としての青色レーザダイオード83が配置されている。赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の光軸の高さ(ベース板60の一方の主面60Aを基準面とした場合の基準面と光軸との距離;Z軸方向における基準面との距離)は、第1サブマウント71、第2サブマウント72および第3サブマウント73により調整されて一致している。
【0024】
ベース板60のベース領域61上には、第4サブマウント74、第5サブマウント75および第6サブマウント76が配置されている。そして、第4サブマウント74、第5サブマウント75および第6サブマウント76上には、それぞれ第1受光素子としての第1フォトダイオード94、第2受光素子としての第2フォトダイオード95および第3受光素子としての第3フォトダイオード96が配置されている。第4サブマウント74、第5サブマウント75および第6サブマウント76により、それぞれ第1フォトダイオード94、第2フォトダイオード95および第3フォトダイオード96の高さ(赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の光軸までの距離;Z軸方向における距離)が調整される。第1フォトダイオード94、第2フォトダイオード95および第3フォトダイオード96の高さの調整の詳細については後述する。第1フォトダイオード94、第2フォトダイオード95および第3フォトダイオード96は、それぞれ赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83からの光を直接受光する位置に設置される。本実施の形態においては、全ての半導体発光素子のそれぞれに対応して受光素子が配置される。第1フォトダイオード94、第2フォトダイオード95および第3フォトダイオード96は、それぞれ赤色、緑色および青色の光を受光可能なフォトダイオードである。第1フォトダイオード94は、赤色レーザダイオード81の出射方向において、赤色レーザダイオード81と第1レンズ91との間に配置される。第2フォトダイオード95は、緑色レーザダイオード82の出射方向において、緑色レーザダイオード82と第2レンズ92との間に配置される。第3フォトダイオード96は、青色レーザダイオード83の出射方向において、青色レーザダイオード83と第3レンズ93との間に配置される。
【0025】
ベース板60のベース領域61上には、凸部である第1レンズ保持部77、第2レンズ保持部78および第3レンズ保持部79が形成されている。そして、第1レンズ保持部77、第2レンズ保持部78および第3レンズ保持部79上には、それぞれ第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93が配置されている。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、それぞれ第1レンズ保持部77、第2レンズ保持部78および第3レンズ保持部79に対して、接着剤99により接着されている。本実施の形態において、接着剤99はエポキシ系紫外線硬化樹脂である。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、表面がレンズ面となっているレンズ部91A,92A,93Aを有している。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、レンズ部91A,92A,93Aとレンズ部91A,92A,93A以外の領域とが一体成型されている。第1レンズ保持部77、第2レンズ保持部78および第3レンズ保持部79により、第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93のレンズ部91A,92A,93Aの中心軸、すなわちレンズ部91A,92A,93Aの光軸は、それぞれ赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の光軸に一致するように調整されている。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、それぞれ赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83から出射される光のスポットサイズを変換する。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93により、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83から出射される光のスポットサイズが一致するようにスポットサイズが変換される。
【0026】
ベース板60のベース領域61上には、第1フィルタ97と第2フィルタ98とが配置される。第1フィルタ97および第2フィルタ98は、それぞれ互いに平行な主面を有する平板状の形状を有している。第1フィルタ97および第2フィルタ98は、たとえば波長選択性フィルタである。第1フィルタ97および第2フィルタ98は、誘電体多層膜フィルタである。より具体的には、第1フィルタ97は、赤色の光を透過し、緑色の光を反射する。第2フィルタ98は、赤色の光および緑色の光を透過し、青色の光を反射する。このように、第1フィルタ97および第2フィルタ98は、特定の波長の光を選択的に透過および反射する。その結果、第1フィルタ97および第2フィルタ98は、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83から出射された光を合波する。第1フィルタ97および第2フィルタ98は、それぞれベース領域61上に形成された凸部である第1突出領域88および第2突出領域89上に配置される。第1フィルタ97および第2フィルタ98は、それぞれ第1突出領域88および第2突出領域89に対して、接着剤99により接着されている。本実施の形態において、接着剤99はエポキシ系紫外線硬化樹脂である。
【0027】
図4を参照して、赤色レーザダイオード81、第1フォトダイオード94の受光部94A、第1レンズ91のレンズ部91A、第1フィルタ97および第2フィルタ98は、赤色レーザダイオード81の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(X軸方向に並んで)配置されている。緑色レーザダイオード82、第2フォトダイオード95の受光部95A、第2レンズ92のレンズ部92Aおよび第1フィルタ97は、緑色レーザダイオード82の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(Y軸方向に並んで)配置されている。青色レーザダイオード83、第3フォトダイオード96の受光部96A、第3レンズ93のレンズ部93Aおよび第2フィルタ98は、青色レーザダイオード83の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(Y軸方向に並んで)配置されている。すなわち、赤色レーザダイオード81の出射方向と、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の出射方向とは交差する。より具体的には、赤色レーザダイオード81の出射方向と、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の出射方向とは直交する。緑色レーザダイオード82の出射方向は、青色レーザダイオード83の出射方向に沿った方向である。より具体的には、緑色レーザダイオード82の出射方向と青色レーザダイオード83の出射方向とは平行である。第1フィルタ97および第2フィルタ98の主面は、赤色レーザダイオード81の光の出射方向に対して傾斜している。より具体的には、第1フィルタ97および第2フィルタ98の主面は、赤色レーザダイオード81の光の出射方向(X軸方向)に対して45°傾斜している。
【0028】
次に、本実施の形態における光モジュール1の動作について説明する。
図4を参照して、赤色レーザダイオード81から出射された赤色の光は、光路L
1に沿って進行する。このとき、第1フォトダイオード94の受光部94Aに赤色の光の一部が直接入射する。これにより赤色レーザダイオード81から出射された赤色の光の強度が把握され、把握された光の強度と出射されるべき目標の光の強度との差に基づいて赤色の光の強度が調整される。第1フォトダイオード94上を通過した赤色の光は、第1レンズ91のレンズ部91Aに入射し、光のスポットサイズが変換される。具体的には、たとえば赤色レーザダイオード81から出射された赤色の光がコリメート光に変換される。第1レンズ91においてスポットサイズが変換された赤色の光は、光路L
1に沿って進行し、第1フィルタ97に入射する。第1フィルタ97は赤色の光を透過するため、赤色レーザダイオード81から出射された光は光路L
2に沿ってさらに進行し、第2フィルタ98に入射する。そして、第2フィルタ98は赤色の光を透過するため、赤色レーザダイオード81から出射された光は光路L
3に沿ってさらに進行し、キャップ40の出射窓41を通って保護部材の外部へと出射する。
【0029】
緑色レーザダイオード82から出射された緑色の光は、光路L
4に沿って進行する。このとき、第2フォトダイオード95の受光部95Aに緑色の光の一部が直接入射する。これにより緑色レーザダイオード82から出射された緑色の光の強度が把握され、把握された光の強度と出射されるべき目標の光の強度との差に基づいて緑色の光の強度が調整される。第2フォトダイオード95上を通過した緑色の光は、第2レンズ92のレンズ部92Aに入射し、光のスポットサイズが変換される。具体的には、たとえば緑色レーザダイオード82から出射された緑色の光がコリメート光に変換される。第2レンズ92においてスポットサイズが変換された緑色の光は、光路L
4に沿って進行し、第1フィルタ97に入射する。第1フィルタ97は緑色の光を反射するため、緑色レーザダイオード82から出射された光は光路L
2に合流する。その結果、緑色の光は赤色の光と合波され、光路L
2に沿って進行し、第2フィルタ98に入射する。そして、第2フィルタ98は緑色の光を透過するため、緑色レーザダイオード82から出射された光は光路L
3に沿ってさらに進行し、キャップ40の出射窓41を通って保護部材の外部へと出射する。
【0030】
青色レーザダイオード83から出射された青色の光は、光路L
5に沿って進行する。このとき、第3フォトダイオード96の受光部96Aに青色の光の一部が直接入射する。これにより青色レーザダイオード83から出射された青色の光の強度が把握され、把握された光の強度と出射されるべき目標の光の強度との差に基づいて青色の光の強度が調整される。第2フォトダイオード95上を通過した青色の光は、第3レンズ93のレンズ部93Aに入射し、光のスポットサイズが変換される。具体的には、たとえば青色レーザダイオード83から出射された青色の光がコリメート光に変換される。第3レンズ93においてスポットサイズが変換された青色の光は、光路L
5に沿って進行し、第2フィルタ98に入射する。第2フィルタ98は青色の光を反射するため、青色レーザダイオード83から出射された光は光路L
3に合流する。その結果、青色の光は赤色の光および緑色の光と合波され、光路L
3に沿って進行し、キャップ40の出射窓41を通って保護部材の外部へと出射する。
【0031】
このようにして、キャップ40の出射窓41から、赤色、緑色および青色の光が合波されて形成された光が出射する。出射窓41から出射した光は、
図3および
図4を参照して、アダプタ110の通光路112に配置された集光レンズ131において集光され、ピグテール120の光ファイバ125に入射する。そして、光ファイバ125に入射した光は、導波路である光ファイバ125を通って所望の場所へと導かれる。
【0032】
ここで、光モジュール1の温度を変化させた場合、光ファイバ125に入射する光の光軸に対する光ファイバ125の相対的な位置関係が変化する。また、第1フィルタ97および第2フィルタ98において合波される赤色、緑色および青色の光の光軸の間には、僅かながらずれが存在する(同軸度が0ではない)。そのため、光モジュール1の温度を変化させた場合、光ファイバ125への入射位置における光の強度の変化割合は色によって異なる。その結果、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83から出射する光の強度に変化がない場合であっても、光ファイバ125への入射位置における色度が光モジュール1の温度に依存して変化する。
【0033】
本実施の形態の光モジュール1においては、保護部材から出射した光の、光ファイバ125への入射位置における色度の温度依存性が0.004/℃以上0.2/℃以下に設定される。温度依存性が0.004/℃以上という一般的な光モジュールに比べて高い値に設定されることにより、光ファイバ125に入射する光の色を、光モジュール1の温度によって制御することが可能となる。一方、温度依存性が0.2/℃以下に設定されることにより、温度変化に対する色度の変化が大きくなりすぎず、光ファイバ125に入射する光の色を光モジュールの温度によって制御することが容易となる。このように、本実施の形態の光モジュール1は、温度制御という簡易な制御により光ファイバに入射する光の色を調整することが可能な光モジュールとなっている。また、光モジュール1は、温度に対して出射する光の色が変化することを利用して、温度センサとしても使用することができる。
【0034】
上記サブマウントは、熱膨張係数が小さい材料からなるものとされ、たとえばAlN、SiC、Si、ダイヤモンドなどからなるものとすることができる。一方、アダプタ110の本体部111は、たとえばステンレス鋼からなっている。このように、サブマウントとアダプタ110の本体部111とを、線膨脹係数が大きく異なる材料から構成することにより、上記温度依存性を達成することが容易となる。また、第1レンズ91、第2レンズ92、第3レンズ93、第1フィルタ97および第2フィルタ98を固定する接着剤99はエポキシ系紫外線硬化樹脂であってもよい。このように線膨脹係数の大きい接着剤99を採用することにより、上記温度依存性を達成することが容易となる。さらに、第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93の焦点距離を集光レンズ131の焦点距離に対してより小さくし、倍率を大きくすることにより、上記温度依存性を達成することが容易となる。
【0035】
光ファイバ125は、シングルモード光ファイバであってもよい。コア径の小さいシングルモード光ファイバを用いることにより、上記温度依存性を大きくすることが容易となる。そのため、光ファイバ125として、シングルモード光ファイバは好適である。
【0036】
(実施の形態2)
次に、本発明にかかる光モジュールの他の実施の形態である実施の形態2を説明する。
図5および
図2を参照して、本実施の形態における光モジュール1は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2における光モジュール1は、電子冷却モジュール30をさらに含んでいる点において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0037】
具体的には、
図5を参照して、実施の形態2における光モジュール1は、ステム10と光形成部20との間に、電子冷却モジュール30をさらに含んでいる。電子冷却モジュール30は、吸熱板31と、放熱板32と、電極を挟んで吸熱板31と放熱板32との間に並べて配置される半導体柱33とを含む。吸熱板31および放熱板32は、たとえばアルミナからなっている。吸熱板31がベース板60の他方の主面60Bに接触して配置される。放熱板32は、ステム10の一方の主面10Aに接触して配置される。本実施の形態において、電子冷却モジュール30はペルチェモジュール(ペルチェ素子)である。そして、電子冷却モジュール30に電流を流すことにより、吸熱板31に接触するベース板60の熱がステム10へと移動し、ベース板60が冷却される。これにより、光モジュールの温度の調整が容易となる。
【実施例】
【0038】
上記実施の形態と同様の構造を有する光モジュールにおいて、コリメータレンズ(第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93)の焦点距離、コリメータレンズおよび合波フィルタ(第1フィルタ97および第2フィルタ98)を固定する接着剤の線膨張係数、アダプタ110の本体部111の材質、合波フィルタにおけるレーザダイオード(赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83)からの光の同軸度を変化させて、色度の温度依存性を適切な範囲に設定できることを確認する実験を行った。
【0039】
(実施例1;サンプルNo.1)
上記実施の形態1と同様に、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83からの光をコリメータレンズである第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93によってコリメート光に変換した後、合波フィルタである第1フィルタ97および第2フィルタ98によって合波する構造を採用した。コリメータレンズの焦点距離を2.0mm、集光レンズ131の焦点距離を4.0mmとすることにより、光学系の倍率を2倍とした。コリメータレンズおよび合波フィルタは、接着剤99として線膨張係数が100ppm/℃であるエポキシ系紫外線硬化樹脂を用いて固定した。光ファイバ125には、コア径3.5μmのシングルモード光ファイバを採用した。ベース板60とアダプタ110の本体部111とは、線膨張係数の異なる異種材からなるものを採用した。合波フィルタにおけるレーザダイオードからの光の同軸度は0.02°とした。
【0040】
(実施例2;サンプルNo.2)
上記実施例1に、上記実施の形態2と同様に電子冷却モジュール30を追加した構成を採用した。また、コリメータレンズの焦点距離を0.5mmに変更し、光学系の倍率を8倍とした。
【0041】
(比較例1;サンプルNo.3)
上記実施例1に、上記実施の形態2と同様に電子冷却モジュール30を追加した構成を採用した。また、コリメータレンズの焦点距離を4.0mmに変更し、光学系の倍率を1倍とした。コリメータレンズおよび合波フィルタは、接着剤99として線膨張係数が10ppm/℃である低膨張樹脂を用いて固定した。ベース板60とアダプタ110の本体部111とは、同種材からなるものを採用した。合波フィルタにおけるレーザダイオードからの光の同軸度は0.001°とした。
【0042】
上記サンプルNo.1〜3の色度の温度依存性を算出した。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
一般に、光モジュールにおいては、温度変化に対する安定性の向上が指向される。そのような観点から構成が選択されたサンプルNo.3(比較例1)においては、色度の温度依存性は0.001/℃であり、光ファイバに入射する光の色を光モジュールの温度によって制御することは困難となっている。一方、レーザダイオードの同軸度および接着剤の線膨張係数をあえて大きくするなどの構成を選択したサンプルNo.1および2(実施例1および2)においては、光ファイバに入射する光の色を光モジュールの温度によって制御することが可能な程度の色度の温度依存性が達成されている。このように、光モジュールの構成を適切に選択することにより、色度の温度依存性を適切な範囲に設定できることが確認される。
【0044】
なお、上記実施の形態においては、3個の出射波長の異なる半導体発光素子からの光が合波される場合について説明したが、半導体発光素子は2個であってもよく、4個以上であってもよい。また、上記実施の形態においては、半導体発光素子としてレーザダイオードが採用される場合について説明したが、半導体発光素子として、たとえば発光ダイオードが採用されてもよい。また、上記実施の形態においては、第1フィルタ97および第2フィルタ98として波長選択性フィルタが採用される場合を例示したが、これらのフィルタは、たとえば偏波合成フィルタであってもよい。さらに、上記実施の形態および実施例においては、合波フィルタにおいて合波された光がキャップ40の外周面(側面)から出射して光ファイバに入射する構造について説明したが、たとえばベース板60上にプリズムを設置し、合波フィルタにおいて合波された光がキャップ40の上面から出射して光ファイバに入射する構造が採用されてもよい。
【0045】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。