(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも片面にハードコート層を有するハードコートポリエステルフィルムであって、基材であるポリエステルフィルムとハードコート層との間に水溶性アクリルポリオールと水溶性アミノ樹脂との反応生成物を含む易接着硬化層を有し、前記水溶性アクリルポリオールが、全構成ユニット100モル%中、ヒドロキシ基を有する構成ユニットを40〜80モル%有し、前記水溶性アクリルポリオールと水溶性アミノ樹脂との反応生成物が、水溶性アクリルポリオール100質量部と水溶性アミノ樹脂10〜70質量部の反応生成物であることを特徴とするハードコートポリエステルフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のハードコートポリエステルフィルムの基材フィルムを形成を構成しているポリエステル樹脂は、エチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とするものである。エチレンテレフタレートユニットは、ポリエステルの構成ユニット100モル%中、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、ホモポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。
【0015】
本発明のポリエステル樹脂を構成する他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0016】
ポリエステル樹脂を構成するジオール成分としては、エチレングリコールの他、1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。
【0017】
ポリエステル樹脂の製造方法としては公知の方法が採用でき、上記のジカルボン酸とジオールとを直接エステル化反応させるか、あるいは、エステル交換反応させる第一段階と、この第一段階の反応生成物を重縮合反応させる第二段階とによって製造する方法等により製造することができる。この際、反応触媒として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物等を用いることができる。
【0018】
本発明のハードコートポリエステルフィルムを形成するポリエステル樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0019】
本発明のハードコートポリエステルフィルムを形成するポリエステル樹脂の中には、フィルムの作業性(滑り性)を良好にする滑剤としての微粒子を添加してもよい。微粒子としては、任意のものを選択することができるが、例えば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等、有機系微粒子としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05〜3.0μmの範囲内(コールターカウンタにて測定した場合)で、必要に応じて適宜選択することができる。
【0020】
なお、本発明のハードコートポリエステルフィルムには、ポリエステル樹脂層を少なくとも1層有する積層型のポリエステルフィルムも含まれる。ポリエステル樹脂層が2層以上積層されるときは、そのポリエステル樹脂層は同じ組成のポリエステルであっても、異なる組成のポリエステルであってもよい。また、他の層として積層可能な層は、熱可塑性樹脂層であれば、特に限定されない。
【0021】
次に、本発明のハードコートポリエステルフィルムのハードコート層について説明する。
【0022】
本発明におけるハードコート層は、電離放射線硬化型化合物を含んでなることが好ましい。熱硬化型樹脂のように硬化時に加熱処理することを要せず、熱による基材フィルムの熱収縮を少なくすることができ好適である。本発明で電離放射線硬化型化合物とは、電子線、放射線、紫外線のいずれかを照射することによって重合、および/または反応する化合物のことを指し、かかる化合物が重合、および/または反応することによりハードコート層を構成する。本発明で用いられる電離放射線硬化型化合物としては、メラミン系、アクリル系、シリコーン系の電離放射線硬化型化合物が挙げられるが、なかでも高い表面硬度を得る点でアクリレート系電離放射線硬化型化合物が好ましい。
【0023】
電離放射線硬化型化合物は、ラジカル重合系、カチオン重合系、カチオン重合とラジカル重合の混合系であってもよいが、反応速度が大きく生産性に優れるため、ラジカル重合系が特に好ましい。ラジカル重合系電離放射線硬化型化合物としては、不飽和モノマー、オリゴマー、樹脂又はそれらを含む組成物などが挙げられる。その具体例としては、アクリレート、ウレタンアクリレートやポリエステルアクリレート等の2官能基以上を有する多官能の電離放射線硬化型のアクリル系化合物が挙げられ、エチレングリコージ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリアリル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート等が好ましい。電離放射線硬化型化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0024】
電離放射線重合開始剤は、ラジカル重合系、カチオン重合系、カチオン重合とラジカル重合の混合系であってもよいが、反応速度が大きく生産性に優れるため、ラジカル重合系が特に好ましい。電離放射線ラジカル重合開始剤の例として、アルキルフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類、チタノセン類、オキシ酢酸フェニル類が挙げられ、単独または2種以上混合して使用しても良い。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル-プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル-プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドおよびビスアシルフォスフィンオキサイドが含まれる。オキシ酢酸フェニル類には、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルおよび2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルが含まれる。
【0025】
電離放射線重合開始剤は、電離放射線硬化型化合物100質量部に対して、下限が0.1質量部以上、より好ましく1質量部以上、上限が30質量部以下、より好ましくは20質量部以下の範囲で使用することができる。添加量が少なすぎるとハードコート層の硬度が不十分となる場合がある。また、多すぎると、ハードコート層が黄変したりする、ハードコート層の硬化が不十分となる場合がある。
【0026】
電離放射線重合開始剤に加えて、本発明を損なわない範囲で、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0027】
ハードコート層形成のための塗布液を基材フィルムの易接着硬化層の表面に塗布する際に、レベリング性を向上させるために、電離放射線硬化型化合物等に必要に応じて希釈剤を用いて希釈してもよい。希釈剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン等が挙げられる。希釈剤の配合量は、適切な粘度になるように適宜選択すればよい。
【0028】
ハードコート層に含有させる無機微粒子としては、例えば、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、シリカ、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、アルミナ、などの無機酸化物、シリカーアルミナ複合酸化物粒子、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカが挙げられる。
【0029】
ハードコート層の表面に、高屈折率層/低屈折率層、あるいは高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層から構成される反射防止層を積層する場合、ハードコート層を高屈折率化することにより、反射防止層から高屈折率層を省略することができる。その結果、コストを低減することができる。ハードコート層の屈折率を高くするためには、ハードコート層中に屈折率の高い無機微粒子を含有させることが有効である。屈折率の高い無機微粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタンが挙げられる。
【0030】
ハードコート層中の無機微粒子の含有量は、1質量%以上、80質量%以下であることが重要である。無機微粒子の含有量が1質量%未満では、耐擦傷性が不足する。一方、無機微粒子の含有量が80質量%を超えると、透明性が低下する傾向がある。また、無機微粒子の平均粒径は、透明性の点から、5〜500nmが好ましい。しかしながら、このような平均粒径の小さい無機微粒子は、凝集しやすく不安定である。したがって、無機微粒子の分散安定性を高めるために、無機微粒子の表面に光感応性基を付与し、硬化型樹脂との親和性を高めることが好ましい。
【0031】
ハードコート層の厚さは、0.1〜30μmの範囲で、用途に応じて決めればよい。より好ましくは1〜15μmである。ハードコート層の厚さが、前記の範囲内の場合には、ハードコート層の表面の硬度が高く、傷が付きにくい。さらに、ハードコート層が脆くなりにくく、ハードコートフィルムを折り曲げたときにハードコート層にクラックが入りにくい。
【0032】
次に、本発明のハードコートポリエステルフィルムの、基材とハードコート層との間に設けた易接着硬化層について説明する。
【0033】
本発明における易接着硬化層は、水溶性のアクリルポリオールと水溶性アミノ樹脂との反応生成物を含む。
【0034】
本発明のアクリルポリオールは、分子中にヒドロキシ基を有するアクリル樹脂である。ヒドロキシ基を有する構成ユニットは、全構成ユニット100モル%中、40〜80モル%含まれていることが好ましい。ヒドロキシ基により水溶性アミノ樹脂と架橋反応が起こり、ハードコート層中に3次元架橋構造が形成される。アクリルポリオール中のヒドロキシ基を有する構成ユニットが40モル%以上であると、ハードコート層中の架橋構造の量が十分であり、ハードコート層表面の鉛筆硬度を効率的に高めることができ好ましい。一方、80モル%以下であると、ポリエステルフィルム基材に対する十分な密着性が得られ好ましい。
【0035】
ヒドロキシ基をアクリルポリオール中に導入するには、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有するモノマーや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのγ−ブチロラクトンやε−カプロラクトンの開環付加物等を共重合成分として用いるとよい。中でも、水溶性を阻害しない点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらは2種以上併用してもよい。
【0036】
本発明で用いるアクリルポリオールは水溶性である。環境負荷が少ないためである。水溶性を付与するモノマーとして、極性基を含有する(メタ)アクリル系モノマーや、極性基を含有する非アクリル系ビニルモノマーを共重合成分とすることが好ましい。極性基を含有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、前記したヒドロキシ基含有モノマーに加えて、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等のカルボキシ基を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基を含有するモノマーが挙げられる。また、EO変性ノニルフェノールアクリレート、メトキシポリオキシエチレングリコールアクリレート等のエーテル結合を有するモノマー類も、アクリルポリオールの水溶性に寄与するため、用いることができる。極性基を含有する非アクリル系ビニルモノマーとしては、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。なお、水溶性であるかどうかは、後述する実施例に記載の溶解性の評価方法を採用して決めることができる。
【0037】
上記の水溶性を付与するためのモノマーは、アクリルポリオール全構成ユニット100モル%中、8モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。8モル%いじょうであると、アクリルポリオールに水溶性を効率的に付与できて好ましい。水溶性を付与するためのモノマーは、35モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましい。35モル%以下であると、得られる塗膜のTgが後述する好適範囲に対して高くなりすぎず、造膜性や、インラインコーティングにおける延伸適正が良好であり好ましい。
【0038】
良好な水溶性を発現させるためには、アクリル酸やメタクリル酸の共重合によってアクリルポリオール中に導入されたカルボキシ基を中和することが好ましい。塩基性の中和剤としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン化合物や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機系塩基性物質等があり、このうち、水溶性の安定化と良好な水溶性を発現するためには、中和剤として無機系塩基性物質を使用することが好ましい。また中和率としては、30モル%〜90モル%であることが好ましく、より好ましくは40モル%〜80モル%である。中和率が30モル%以上の場合、アクリルポリオールの水溶性が十分であり、塗布液調製の際にアクリルポリオールの溶解が容易であり、乾燥後の塗膜面が白化したりするおそれがなく好ましい。一方、中和率が90モル%以下であると、水溶性が高すぎず、塗布液調製においてアルコール等の混合が容易であり、硬化後の塗膜の耐水性が保たれて好ましい。
【0039】
アクリルポリオールは、Tgが50〜100℃であることが好ましく、より好ましくは55〜90℃である。アクリルポリオールのTgが低いほど、最低造膜温度(MFT、Minimum Film Forming Temperature)が低くなるため、乾
燥温度が低温でも良好な造膜性を有する傾向にある。しかし、アクリルポリオールのTgが50℃以上であると、塗布液乾燥後にタック性がなく、ロール転写や塗膜剥がれが発生するおそれがないので製造工程上好ましい。また、主剤としての剛性が低下するおそれがなく、架橋剤を併用することにより十分な塗膜硬度が得られて好ましい。一方、Tgが100℃以下であると、MFTが高くなりすぎず、乾燥温度を特に高くしなくとも、造膜性が低下するおそれがなく好ましい。造膜性の低下は、塗布液乾燥後の外観不良や、インラインコーティングの延伸時における塗膜の追従性不良を引き起こすおそれから、製造プロセス上好ましくない。
【0040】
Tgを上記範囲にするために共重合されるTg調整用モノマーとしては、ヒドロキシ基を有さない(メタ)アクリル系モノマーや、非アクリル系ビニルモノマーが利用できる。ヒドロキシ基を有さない(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、n−メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等の窒素含有アクリル系モノマー;メタクリル酸ビニル等が挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0041】
また、非アクリル系ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン(m−メチルスチレンとp−メチルスチレンの混合物)、クロロスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、ケイ皮酸ビニル等のビニルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニルモノマー;が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0042】
Tg調整用のモノマーは、ヒドロキシ基含有モノマーと水溶性を付与するためのモノマーの適正量を決めてから、その残部とすることが好ましい。共重合体のTgは、下記のFoxの式で求められる。
【数1】
W
n:各モノマーの質量分率(質量%)
Tg
n:各モノマーのホモポリマーのTg(K)
【0043】
本発明のアクリルポリオールは、公知のラジカル重合によって得ることができる。乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等、いずれも採用可能である。取り扱い性の点からは、溶液重合が好ましい。溶液重合に用いることのできる水溶性有機溶媒としては、エチレングリコールn−ブチルエーテル、イソプロパノール、エタノール、n−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−オキソラン、メチルソロソルブ、エチルソロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは水と混合して用いてもよい。
【0044】
重合開始剤としてはラジカルを発生する公知の化合物であればよいが、例えば、2,2−アゾビス−2−メチル−N−2−ヒドロキシエチルプロピオンアミド等の水溶性アゾ系重合開始剤が好ましい。重合の温度や時間等は適宜選択される。
【0045】
アクリルポリオールの質量平均分子量(Mw)は、10,000〜80,000程度が好ましい。より好ましい範囲は、20,000〜60,000である。Mwが10,000以上の場合、テンター内での熱分解のおそれがなく好ましい。Mwが80,000以下であると、塗布液の粘度の著しい上昇がなく、塗工性が良好であり好ましい。
【0046】
また、アクリルポリオールの水酸基価は、100〜380mgKOH/gが好ましい。100mgKOH/g以上であると、架橋密度が低下するおそれがなく好ましい。一方、380mgKOH/g以下であると、架橋密度が高くなりすぎず塗膜が脆くなるおそれがないので好ましい。また、水酸基価を高くするために、ヒドロキシ基含有モノマーを多用しすぎないので、水溶性を付与するモノマー量が足りなくなることがなく、アクリルポリオールの水溶性を維持されて好ましい。
【0047】
アクリルポリオールの酸価は、100mgKOH/g以下が好ましい。酸価が100mgKOH/g以下であると、加水分解を受けづらく、湿熱環境下での耐水性が低下するおそれなく好ましい。酸価は、70mgKOH/g以下がより好ましく、60mgKOH/g以下がさらに好ましい。酸価の下限としては、30mgKOH/g程度が好ましい。水溶性を維持するためである。
【0048】
本発明のアクリルポリオールは、水溶性アミノ樹脂と反応させる。従って、本発明のハードコートフィルムのハードコート層には、アクリルポリオールとアミノ樹脂との反応生成物が含まれることになる。本発明の水溶性アミノ樹脂とは、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミンに、メタノールまたはエタノール等の低級アルコールを反応させて部分的にアルキルエーテル化した化合物である。水溶性アルキル化メラミン樹脂ということもできる。このような水溶性アミノ樹脂は、例えば、三和ケミカル社製の「ニカラック(日本カーバイド工業社の登録商標)MX−035」として入手可能である。
【0049】
次に、本発明で用いる易接着硬化層形成用塗布液について説明する。この易接着硬化層形成用塗布液には、アクリルポリオールと、水溶性アミノ樹脂と、水と、前記した水溶性有機溶媒が含まれる。アクリルポリオール100質量部に対し、水溶性アミノ樹脂を固形分で10〜80質量部の範囲で用いることが好ましく、30〜70質量部がより好ましく、40〜70質量部がさらに好ましい。塗布液中の水溶性アミノ樹脂が10質量部以上の場合、ハードコート層とポリエステル系基材フィルムとの密着性が向上して好ましい。また、高い硬度が得られ好ましい。一方、80質量部以下添加するとタックフリー性が保たれて好ましい。塗布液の固形分濃度は特に限定されないが、10〜30質量%程度が好ましい。なお、塗布液中には、滑剤としてコロイダルシリカを添加配合してもよい。コロイダルシリカは、アクリルポリオール100質量部に対し、10〜30質量部程度が好ましい。また、コロイダルシリカは、一次粒子径が10〜20nm、二次粒子径が30〜50nm程度の微細なものが好ましく、例えば、扶桑化学工業社製のPL−1等が挙げられる。
【0050】
次に本発明のハードコートポリエステルフィルムの製造方法を説明する。ハードコートポリエステルフィルムは、上記したポリエステル原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、(1)未延伸フィルムの片面または両面に易接着硬化層を形成するための塗布液を塗布し、プレ乾燥を行い、次いで少なくとも一方向に延伸する方法(インライン法)、(2)未延伸フィルムを縦延伸し、縦延伸後のフィルムの片面または両面に塗布液を塗布してプレ乾燥し、次いで、横延伸する方法(インライン法、縦と横は逆でもよい)、(3)二軸延伸フィルムを製造しておいて、オフラインでフィルムの片面または両面に塗布液を塗布して、加熱硬化させる方法が挙げられる。その後、後述のように易接着硬化層上にハードコート層を積層する。
【0051】
本発明のハードコートポリエステルフィルムの易接着硬化層は、水性の塗布液で塗工でき、塗布層の乾燥や熱硬化が容易であるので、上記(1)や(2)のインライン法を容易かつ好適に採用することができる。
【0052】
基材ポリエステルフィルムについての原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0053】
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金から回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
【0054】
得られた未延伸フィルムは、必要により50〜120℃、好ましくは60〜110℃で予熱した後、ロール方式の縦延伸機に導き、80〜125℃に加熱した後、ロールの周速差により縦方向に2.5〜5.0倍程度延伸して、一軸延伸フィルムを得る。その後、易接着硬化層を形成するための塗布液を、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレーコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式等で、塗布する。塗布量は、硬化後の易接着硬化層の厚みが1μm以下となるように調整することが好ましい。厚みが1μmを超える場合、ハードコート層の硬度増加の寄与は小さくなり、経済的に悪影響が出てくるので好ましくない。また、プレ乾燥後のタックフリー性が悪化し、金属ロールなどに易接着層が転写するなど、工程上の問題が発生するため好ましくない。厚みの下限は0.05μm程度が好ましい。あまり薄すぎると、基材との密着性が低下したり、上層に塗工するハードコートの硬度が十分に発現しないおそれがある。より好ましい厚みの範囲は、0.1〜0.3μmである。
【0055】
塗布後、80〜120℃で数十秒程度乾燥(プレ乾燥)させ、テンター等で2.5〜5.0倍に横延伸する。延伸温度は、80℃以上150℃以下である。横延伸後は、180℃〜250℃で、フィルムの幅の長さを固定した状態で0.3〜数秒程度、熱処理し、続いて、180℃〜250℃で、フィルムの幅方向に1〜5%程度の緩和熱処理をすることが好ましい。緩和熱処理は、5〜15秒とすることが好ましい。この横延伸後の熱処理で、アクリルポリオールと水溶性アミノ樹脂が反応し、これらの反応生成物を含んだ易接着硬化層が得られる。本発明のハードコートポリエステルフィルムにおける基材とハードコート層との間に形成される上記易接着硬化層は、マルテンス硬さが280〜600N/mm
2であることが好ましい。マルテンス硬さが280N/mm
2以上であると、易接着硬化層上に積層するハードコート層の鉛筆硬度を効果的に2H以上とすることができ好ましい。マルテンス硬さは、ダイヤモンド製正三角錐圧子と、電子制御された負荷装置、および高精度な変位測定器を用いるため、μmオーダーでの深さ制御が可能であり、基材フィルムの影響を考慮することなく、ハードコート層自体の硬度を評価することができる。また、鉛筆硬度評価の場合、時として鉛筆の先端形状が変化することがあるが、マルテンス硬さ評価ではダイヤモンド製正三角錐圧子を用いるため、先端形状がほとんど変化せず、硬度評価のばらつきを小さくできる。
【0056】
本発明において、ハードコート層は、有機溶剤中に、電離放射線硬化型化合物、必要に応じて光重合開始剤、粒子、界面活性剤などを含む塗布液を、易接着硬化層を有したポリエステルフィルムに塗布乾燥後、紫外線あるいは電子線を照射することにより硬化させて形成させることが好ましい。
【0057】
ハードコート層を積層する方法としては、公知の方法が挙げられるが、前記塗布液を基材フィルム上に塗布乾燥後、硬化させる方法が好適である。塗布法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式、リップコート方式などの公知の塗布方法が挙げられる。これらのなかで、ロール・トゥ・ロール方式で塗工可能で、均一に塗布することのできるグラビアコート方式、特にリバースグラビア方式が好ましい。
【0058】
前記塗布液に含まれる電離放射線硬化型化合物、粒子、光重合開始剤等を有機溶剤中に溶解あるいは分散する方法としては、加温下で、これらを攪拌、分散する方法が好適である。塗布液を加温することにより、電離放射線硬化型化合物、粒子および光重合開始剤の溶解性を向上させることができる。そのため、未溶解物等による塗工外観の悪化を抑えることができる。
【0059】
分散機は、公知のものを用いることができる。具体的には、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
【0060】
前記塗布液に含まれる電離放射線硬化型化合物、粒子、光重合開始剤等の固形分の濃度は、5質量%以上70質量%が好ましい。塗布液の固形分の濃度を5質量%以上に調整することにより、塗布後の乾燥時間が長くなることによる生産性の低下を抑えることができる。一方、塗布液の固形分の濃度を70質量%以下に調整することにより、塗布液の粘度の上昇によるレベリング性の悪化、及びそれにともなう塗布外観の悪化を防ぐことができる。また、塗布外観の点から、塗布液の粘度を0.5cps以上300cps以下の範囲になるように、塗布液の固形分濃度、あるいは有機溶剤の種類、界面活性剤の種類は配合量を調整することが好ましい。
【0061】
塗布、硬化後のハードコート層の厚みは、0.1μm以上30μm以下になるようにすることが好ましい。具体的にはハードコート層の厚みの下限は0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がさらに好ましい。またハードコート層の厚みの上限は15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましく、3μm以下がさらにより好ましい。ハードコート層の厚みが0.1μm以上であれば、硬度が十分に得られ易く好ましい。一方、ハードコート層の厚みが30μm以下であると、ハードコート層の硬化不良や硬化収縮によるカールの問題を起こさず良好なハードコートフィルムが得られて好ましい。
【0062】
塗布液に有機溶剤を配合した場合等、予備乾燥が必要な場合、基材フィルム上に塗布し、乾燥する方法としては、公知の熱風乾燥、赤外線ヒーター等が挙げられるが、乾燥速度が早い熱風乾燥が好ましい。
【0063】
塗布後の乾燥温度は40℃以上120℃以下の条件下で行うことが好ましく、特には下限が45℃以上、上限が80℃以下が好ましい。40℃以上であると、塗布液に含まれる有機溶剤が十分に除去でき、ブラッシング等の問題が発生するおそれがない。逆に120℃以下の温度であれば、泡由来の微小なコートヌケ、微小なハジキ、クラック等の塗膜の微小な欠点などを抑制でき、外観が不良になるおそれがなく好ましい。さらには、熱によりフィルムが強く収縮することがなく、熱シワによるフィルムの平面性の低下のおそれなく好ましい。
【0064】
乾燥中にかかるフィルムの張力は50N/m以上300N/m以下が好ましく、特には下限が100N/m以上、上限が250N/m以下が好ましい。フィルムの張力は50N/m以上であると、走行するフィルムが蛇行するおそれがなく好ましい。一方、300N/m以下であると、フィルムにシワが発生せず、平面性が保たれ、巻き取ったフィルムの外観が良好であり好ましい。
【0065】
本発明において、ハードコート層を設けていない面に本発明の効果を阻害しない範囲でハードコート層、帯電防止層、易接着層、粘着層、易滑層、電磁波吸収層、染料や顔料等の色素を含有した樹脂層などの他の機能を付与しても構わない。
【0066】
本発明では、電離放射線を照射することにより電離放射線硬化型化合物を硬化させ、ハードコート層を形成させる。紫外線を照射する場合、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプを用い、100〜400nm、好ましくは、200〜400nmの波長領域で、100〜3000mJ/cm
2のエネルギーで紫外線を照射することが好ましい。より好ましくは50mJ/cm
2以上1000mJ/cm
2以下、より好ましくは下限が300mJ/cm
2以上、上限が700mJ/cm
2以下である。なお、照射する際、窒素ガス雰囲気下で行なうことが酸素阻害が低減され、耐擦傷性が向上することから望ましい。積算光量が50mJ/cm
2以上であると、電離放射線硬化型化合物の重合反応が促進され、ハードコート層の表面硬度が高まり好ましい。積算光量が1000mJ/cm
2以下であると、熱の影響により基材フィルムが変形するおそれがなく好ましい。なお、本発明における積算光量は、トプコン製「UVR−T35」により測定することができる。
【0067】
また、電子線により塗布液を硬化させる場合には、照射線量は5kGy以上100kGy以下が好ましく、特には上限が30kGy以上、下限が70kGy以下がより好ましい。5kGy以上である場合、電離放射線硬化型化合物の重合反応が促進され、ハードコート層の表面硬度が向上し好ましい。100kGy以下であると、電子線照射管の寿命が延びて、生産コスト面で好ましい。
【0068】
これにより、本発明のハードコートポリエステルフィルムが得られる。なお、ポリエステルフィルム(塗膜を除く)の厚みは、30〜200μmが好ましい。
【0069】
本発明におけるハードコート層は鉛筆硬度が2H以上であることが好ましい。また、後述する方法で測定されるカールの高さは3mm未満であることが好ましい。さらに、後述する方法で測定される碁盤目密着性試験での剥がれたマス目は、0個であることが好ましい。
【実施例】
【0070】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。なお、評価方法を以下に示す。
【0071】
[NMR測定]
アクリルポリオール中に導入された共重合成分の比率は、核磁気共鳴分光法(
1H−N
MR、
13C−NMR:Varian Unity 400、Agilent社製)を用いて確認した。測定は、合成したアクリルポリオール中の溶媒を真空乾燥機にて除去した後、乾固物を重クロロフォルムに溶解させて行った。得られたNMRスペクトルから、メチルメタクリレート中のメチル基部位、ヒドロキシエチルアクリレート中のヒドロキシ基部位、およびメタクリル酸のカルボキシ基部位に帰属される化学シフトδ(ppm)のピークを同定した。得られた各ピークの積分強度を求め、各基の部位の水素数と積分強度から、アクリルポリオールに導入された共重合成分の組成比率(mol%)を確認した。
【0072】
[Tgの確認]
上記NMR測定で求めた共重合成分の組成比率と、前記したFoxの式から各アクリルポリオールのTgを求めた。
【0073】
[溶解性]
合成したアクリルポリオール(1)〜(10)を、固形分濃度が12質量%となるように、イソプロパノール30質量%と水70質量%の混合溶媒(25℃)中に投入した。次いで、系内の撹拌操作を10分間行い、アクリルポリオール(1)〜(10)が溶解しているかを、下記の基準にてアクリルポリオールの溶解性を目視で判断した。表1に評価結果を示した。
○:無色透明で溶液に変化は見られない。
△:溶液がやや微濁を呈する。
×:溶液が白濁しているかアクリルポリオールのゲル化・沈降等が見られる。
また、易接着硬化層の塗布液(固形分濃度:12質量%)についても、上記基準で溶解性を判断し、表3,表4に評価結果を示した。
○:無色透明で溶液に変化は見られない。
△:溶液がやや微濁を呈する。
×:溶液が白濁しているかアクリルポリオールのゲル化・沈降等が見られる。
【0074】
[造膜性]
アクリルポリオールの造膜性を評価するため、合成したアクリルポリオール(1)〜(10)を、固形分濃度が12質量%となるように、イソプロパノール30質量%と水70質量%の混合溶媒(25℃)中に投入して、アクリルポリオール単体の溶解液を調製した後、ポリエステルフィルム(A4100、東洋紡社製)の非易接着面に溶解液をメイヤーバー#5で塗布した。次いで、塗布層(厚み6.5μm)を形成したフィルムサンプルを、温度60℃に設定した熱風循環オーブン中に30秒間静置して、プレ乾燥を行った。その後、フィルムサンプルをオーブンから取り出してプレ乾燥を行った。取り出したフィルム表面を目視にて観察し、下記の基準でランク分けしてアクリルポリオールの造膜性の評価を行った。結果を表1に示した。
○:塗膜に白化が見られない。
△:塗膜に僅かな白化が見られる。
×:塗膜が全体的に白化している。
[タックフリー性]
易接着硬化層の塗布液(固形分濃度:12質量%)を調製後、ポリエステルフィルム(A4100、東洋紡社製)の非易接着面にメイヤーバー#5で塗布する。次いで、塗布層(厚み6.5μm)を形成したフィルムサンプルを、60℃に設定した熱風循環オーブン中に30秒間静置した後、フィルムサンプルをオーブンから取り出し、塗布層の表面を指で触診した。指触により得られた塗膜のベトツキ感を、下記の基準でランク分けしてタックフリー性の評価を行った。
○:ベトツキ感が全くない。
△:僅かにベトツキ感がある(触診時に指先に塗膜成分が付着しない)。
×:ベトツキ感が多分にある(触診時に指先に塗膜成分が付着する)。
【0075】
[ポットライフ]
易接着硬化層用の塗布液(固形分濃度:12質量%)を調製後、溶媒蒸発を防げるサンプル瓶に保存した。その後、レオメーター(MCR−302、Anton Paar製)とコーンプレート(プレート径:50mm、角度:1°、Anton Paar製)を用いて、せん断速度1000s
-1の条件下で塗布液のせん断粘度を測定した。測定は調液直後から48時間後まで一定時間毎に行い、下記式に基づいてせん断粘度の上昇率を算出した。なお、η
dは経時における剪断粘度で、η
0は調液直後の剪断粘度である。せん断粘度の上昇率が20%以上となった時点を塗布液のポットライフとみなし、調液から48時間を経ても上昇率が20%未満の場合は、ポットライフは48時間とした。
剪断粘度の上昇率(%)=100×η
d/η
0
[延伸適性]
アクリルポリオール自体の延伸適性を評価するため、合成したアクリルポリオール(1)〜(10)を、固形分濃度が12質量%となるように、イソプロパノール30質量%と水70質量%の混合溶媒(25℃)中に投入して、アクリルポリオール単体の溶解液を調製した後、縦延伸のみを行ったポリエステルフィルムの表面に、溶解液をメイヤーバー#5で塗布した。次いで、塗布層(厚み6.5μm)を形成したフィルムサンプルを、温度60℃に設定した熱風循環オーブン中に30秒間静置した後、フィルムサンプルをオーブンから取り出してプレ乾燥を行った。次いで、サンプルを手廻し延伸装置(東洋紡エンジニアリング社製)にセットして、100℃の熱風循環オーブン中に入れ、ゆっくりと延伸操作を行った。延伸前の長さの4倍の長さになるまで延伸操作を行い、延伸装置を熱風循環オーブンから取り出した。その後、延伸後の塗膜を光学顕微鏡(倍率:200倍)にて観察し、下記の基準に従って、延伸によるクラッキングの有無を判断した。
また、易接着硬化層用塗布液(固形分濃度:12質量%)についても、同様の基準で評価し、結果を表3,表4に示した。
○:クラックが全く見られない。
△:クラックがやや見られる(1本〜4本)。
×:5本以上のクラック、もしくは全面にクラックが見られる。
【0076】
[マルテンス硬さ]
試料とするフィルムを10mm×20mmに切断した後、サンプル片をスライドガラス上に瞬間接着剤で貼り付け、このサンプル片の表面について、ダイナミック超微小硬度計(DUH−211S、島津製作所社製)を用いて、押し込み深さ設定負荷−除荷試験を行った。この測定から、下記式を用いてマルテンス硬さ(HM
115)を求めた(n=3の平
均値)。
HM
115=1000×F/(26.43×h
2)
(F:負荷、h
2:押し込み深さ)
測定条件
(1)使用圧子:ダイヤモンド製正三角錐圧子(稜間角度:115゜)
(2)測定モード:押し込み深さ設定 負荷−除荷試験
(3)押し込み深さ:0.05μm
(4)測定雰囲気:25±1℃、65±5%RH
(5)測定n数:3
【0077】
[密着性]
試料とするポリエステルフィルム塗膜表面に、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、塗膜層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をつける。次いで、セロハンテープ(登録商標;ニチバン社製;405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に密着させた。その後、垂直にセロハンテープを塗膜層から引き剥がし、基材フィルムから剥がれた塗膜層のマス目の数を目視で数え、下記の式から密着性を求めた。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数え、下記の基準でランク分けをした。
○:剥がれたマス目が0個
△:剥がれたマス目が1〜5個
×:剥がれたマス目が6個以上
【0078】
[鉛筆硬度]
JIS K 5600−5−4に準拠し、鉛筆引っかき試験機を用いて鉛筆硬度を測定した。試料とするポリエステルフィルム塗膜上に、鉛筆を45°の角度で750gfの荷重を掛けた状態で10mm程度引っかき、傷の付き具合を確認した。測定は5回行い、5回とも傷がなかったときの鉛筆の硬さを、鉛筆硬度とした。
【0079】
[平面性(カールの高さ測定)]
ハードコートポリエステルフィルムを10cm角に切り取って平滑な面に置き、4隅の浮き上がり高さの平均値をカールの高さとして、下記の基準でランク分けをした。
○:4隅のカール平均高さ3mm未満
△:4隅のカール平均高さ3〜5mm
×:4隅のカール平均高さ5mm超
【0080】
合成例1
[アクリルポリオール(1)の合成]
撹拌機、還流式冷却器、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート(MMA)38質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)100質量部、メタクリル酸(MAA)11質量部およびイソプロピルアルコール(IPA)349質量部を仕込み、撹拌を行いながら80℃までフラスコ内を昇温した。フラスコ内を80℃に維持したまま3時間の撹拌を行い、その後、2,2−アゾビス−2―メチル−N−2−ヒドロキシエチルプロピオンアミドを0.5質量部フラスコに添加した。フラスコ内を120℃に昇温しながら窒素置換を行った後、120℃で混合物を2時間撹拌した。
次いで、120℃で1.5kPaの減圧操作を行い、未反応の原材料と溶媒を除去し、アクリルポリオールを得た。フラスコ内を大気圧に戻して室温まで冷却し、IPA水溶液(水含量50質量%)598質量部を添加混合した。その後、撹拌しながら滴下ロートを用いて、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を加え、溶液のpHが5.5〜7.5の範囲になるまでアクリルポリオールの中和処理を行い、固形分濃度が20質量%のアクリルポリオール(1)を得た。アクリルポリオール(1)のNMR測定による組成比率、溶解性、造膜性、タックフリー性、延伸適性を表1に併記した。
【0081】
合成例2〜7
[アクリルポリオール(2)〜(7)の合成]
表1に示したように、MMA、HEMA、MAA、仕込み時IPA、希釈時IPA水溶液の量を変更した以外は合成例1と同様にして、固形分濃度が20質量%のアクリルポリオール(2)〜(7)を得た。アクリルポリオール(2)〜(7)のNMR測定による組成比率、溶解性、造膜性、タックフリー性、延伸適正を表1に併記した。なお、組成比率は、MMAをl(単位)、HEMAをm(単位)、MAAをn(単位)として表した。
【0082】
【表1】
【0083】
[易接着硬化層用の塗布液の調製]
IPA水溶液(水含量70質量%)に、固形分濃度が12質量%となるように表2に示した材料を添加し、撹拌して、易接着硬化層用の塗布液(1)〜(23)を調製した。なお、「エポクロス」、「ケミタイト」は日本触媒社の登録商標であり、「バーノック」はDIC社の登録商標である。
【0084】
【表2】
【0085】
[ハードコート層用の塗布液の調製]
有機溶剤で構成された希釈液(トルエン:メチルエチルケトン:酢酸ブチル=10質量%:45質量%:45質量%)中に、固形分濃度が20質量%となるように、ウレタンアクリレート(BS-577、荒川化学工業製)を100質量部、光開始剤(イルガキュア
184、BASF製)を5質量部溶解させて、ハードコート層用の塗布液(1)を調製した。また、同様の材料と質量部数を用いて、固形分濃度が10質量%および30質量%となるように、ハードコート層用の塗布液(2)と(3)を調製した。
【0086】
実施例1
[フィルムの製膜と易接着硬化層用の塗布液の塗工]
フィルム原料ポリマーとして、固有粘度が0.62dl/gで、かつ粒子を実質上含有していないポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂ペレットを、133Paの減圧下、135℃で6時間乾燥した。その後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、表面温度20℃に保った回転冷却金属ロール上で急冷密着固化させ、未延伸PETシートを得た。
この未延伸PETシートを加熱されたロール群および赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。
【0087】
次いで、易接着硬化層用の塗布液(1)をメタリングバーコート法で、乾燥後の塗布量が表3に示すようになるように、一軸延伸PETフィルムの片面に塗布した後、80℃で20秒間乾燥させた(プレ乾燥)。引続いてテンターで、120℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、230℃で0.5秒間加熱し、さらに230℃で10秒間3%の幅方向の弛緩処理を行い、易接着硬化層の厚みが0.05μmで基材フィルムの厚さが50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの物性は、表3に示すとおり良好であった。なお、易接着硬化層用の塗布液の特性も表3に併せて示した。
[ハードコート層用の塗布液の塗工]
得られたポリエステルフィルムの易接着硬化層上に、ハードコート層用の塗布液(1)をメイヤーバー#5で塗布した。次いで、塗布層(厚み6.5μm)を形成したフィルムサンプルを、温度60℃に設定した熱風循環オーブン中に30秒間静置した後、フィルムサンプルをオーブンから取り出して乾燥を行った。
次いで、ハードコート層を塗工したポリエステルフィルムを、コンベア型紫外線照射装置(CS30、GSユアサライテック製)内に搬送し、400 mJ/cm
2の紫外線照
射を行って、ハードコート層の厚みが1μmで基材フィルムの厚さが50μmであるハードコートポリエステルフィルムを得た。得られたハードコートポリエステルフィルムの物性は、表3に示すとおり良好であった。
【0088】
実施例2〜21
表3に示したように、易接着硬化層の塗膜厚みや塗布液の種類を変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートポリエステルフィルムを得た。各塗布液の特性およびフィルムの特性を表3に示した。
【0089】
比較例1〜16
表4に示したように、易接着硬化層やハードコート層の塗膜厚みや塗布液の種類を変えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートポリエステルフィルムを得た。各塗布液の特性およびフィルムの特性を表4に示した。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
表3から、本発明の実施例1〜21はいずれも良好な塗膜物性および塗工液特性を示していた。