(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
搬送される記録媒体の形状を、前記記録媒体の搬送方向に一定の長さを有するとともに搬送方向と直交する方向に複数の領域に分割された読込ラインに分けて読み込む形状読込部と、
前記形状読込部で読み込んだ前記記録媒体の形状の情報に基づいて前記読込ラインごとに前記記録媒体の形状を示すラインデータを生成するラインデータ生成部と、
前記搬送方向に所定の長さを有する印刷範囲に搬送された記録媒体にインクを吹き付けるヘッド部と、
前記ラインデータに基づいて、インクを吹き付けない吹き付け禁止部を特定したマスクデータを前記読込ラインにごとに生成するマスクデータ生成部と、
ドット画像データと前記マスクデータとを組み合わせて、前記ドット画像データに対して前記ヘッド部からインク吹き付けない場所を特定した印刷用画像データを生成する印刷用画像データ生成部と、を備え、
前記マスクデータ生成部は、処理対象の読込ラインを含む連続した複数の読込ラインの前記ラインデータに基づいて、前記処理対象の読込ラインの前記マスクデータを生成することを特徴とするインクジェット記録装置。
前記複数の読込ラインは、前記処理対象の読込ラインよりも前に読み込まれた前記読込ラインおよび後に読み込まれた前記読込ラインをそれぞれ少なくとも一つ含む請求項1に記載のインクジェット記録装置。
前記印刷用画像データ生成部は、前記ドット画像データを前記読込ラインと対応する部分ごとに分割した分割画像データを生成し、前記分割画像データと前記マスクデータとを組み合わせた印刷用画像データを生成する請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、インクジェット記録装置として、固定式のヘッド部4を有するプリンター100(インクジェット記録装置に相当)を例に挙げて説明する。本実施形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定せず、単なる説明例にすぎない。
【0012】
(プリンター100の概要)
まず、
図1を用いて、実施形態に係るプリンター100の概要を説明する。
図1はプリンター100の概略構成を示す配置図である。
図2はプリンター100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。なお、以下の説明において、上下左右の記載は、別途記載がない限り、
図1に示す状態を基準とする。
【0013】
図1に示すように、給紙トレイ1がプリンター100の左側部に設けられる。給紙トレイ1は用紙P(記録媒体に相当)を積載して収容する。この給紙トレイ1の用紙搬送方向下流側の端部に給紙ローラー対11が設けられる。給紙ローラー対11は収容された用紙Pを最上位の用紙Pから一枚ずつ順に搬送ユニット2に向けて送り出す。
【0014】
給紙ローラー対11の用紙搬送方向下流側(
図1において右側)に、搬送ユニット2が設けられる。搬送ユニット2は駆動ローラー21と、駆動ローラー21と軸線が平行な従動ローラー22と、駆動ローラー21と従動ローラー22に張架される搬送ベルト23を含む。駆動ローラー21はベルト駆動モーター25(
図2参照)の駆動力を受けて回転する。搬送ベルト23は駆動ローラー21の回転により周回する。これにより、搬送ベルト23上の用紙Pは
図1の矢印Xの方向に搬送される、すなわち、矢印Xで示される方向は、用紙Pの搬送方向である。また、搬送ベルト23の用紙搬送方向下流側に、画像が記録された(印刷された)用紙Pを排出する排出ローラー対31が設けられる。又、排出ローラー対31は排出トレイ3に印刷済みの用紙Pを排出する。
【0015】
そして、搬送される各用紙Pに画像の記録(印刷)を行うヘッド部4が配される。具体的に、給紙ローラー対11と排出ローラー対31の間、かつ、搬送ベルト23の上方で用紙搬送方向上流側からシアンのインクを吐出するヘッド部4C、マゼンタのインクを吐出するヘッド部4M、イエローのインクを吐出するヘッド部4Y、ブラックのインクを吐出するヘッド部4Kが順に並べて設けられる。これらのヘッド部4C〜4Kには、それぞれ異なる4色(シアン、 マゼンタ、イエロー及びブラック)のインクが充填される。そして、各ヘッド部4C〜4Kからそれぞれの色のインクが吐出され、用紙P上にカラー画像が記録される(印刷される)。なお、本実施形態では、4色分のヘッド部4を設ける例を説明するが、更に他の色のヘッド部4を設けてもよい。各ヘッド部4C〜4Kは同様のものであり、共通する説明について、以下では色を示す符号(C、M、Y、K)を省略し、単にヘッド部4と称することがある。
【0016】
(ハードウェア構成)
次に、
図2を用いて、実施形態に係るプリンター100のハードウェア構成の一例を説明する。
図2はプリンター100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
まず、プリンター100には、記録動作(印刷動作)を制御する制御部5が設けられる。なお、制御部5は全体制御や画像処理を行うメイン制御部と、画像記録や各種回転体を回転させるモーター等のON/OFF等を制御するエンジン制御部、画像処理を行う画像処理制御部等、機能や処理内容に応じて分割して複数種の制御部を設けてもよい。
【0018】
制御部5には、例えば、中央演算処理装置としてのCPU51が設けられる。そして、制御部5は記憶部52と通信可能に接続される。例えば、記憶部52はROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュROMの不揮発性と揮発性の記憶装置を含む。記憶部52は制御プログラムや制御データ、画像データ等を記憶する。CPU51は記憶部52に記憶される制御プログラムや制御データに基づき演算等を行い、プリンター100の各部に制御信号を発する。
【0019】
また、制御部5は通信部53と接続される。通信部53は外部のコンピューター200(例えば、パーソナルコンピューターやサーバー)や、用紙Pに記録された画像を読み取り画像データを生成するスキャナ−300とネットワークやケーブル等によって通信可能に接続される。通信部53は各種コネクタ、ソケット、通信制御用のコントローラー、チップ、メモリー等を含む。そして、通信部53は外部のコンピューター200やスキャナ−300からプリンター100に印刷を行わせるための印刷用データ(例えば、画像データや印刷の設定データ等を含むデータ)を受信する。通信部53が印刷用データを受信すると、制御部5は印刷用データに基づき、各ヘッド部4や搬送ユニット2等を動作させ、印刷を行わせる。
【0020】
画像処理部6はコンピューター200から受信した画像データや、記憶部52に記憶される画像データ等の各種画像データに対し、各種画像処理を行う。なお、画像処理部6が行える画像処理は多岐にわたり、画像処理部6は、公知の画像処理を行えるものとして、便宜上、各画像処理の内容の説明は省略する。そして、画像処理部6は用紙Pに印刷する内容を示す画像データに基づき、最終的に、各画素(各ドット)につき、ドットの形成(インクの吐出)の有無や吐出量を表す印刷用画像データに変換する。画像処理部6は各色につきノズル8の用紙搬送方向での位置に応じ印刷用画像データを調整し、制御データ(詳細は後述)を各ヘッド部4のドライバー7に送信する。なお、制御部5のCPU51、記憶部52、プログラムによって、機能的に画像処理部6が実現されても良い。
【0021】
制御部5(画像処理部6)は各ヘッド部4と接続され、各ヘッド部4に動作指示を行う。各ヘッド部4には実際に各ノズル8からのインクの吐出を制御するドライバー7が設けられる。各ドライバー7は一定の周期で各ノズル8から同時にインクを吐出させる。また、各ドライバー7は調整後のドットデータに基づき、各ノズル8からのインクの吐出の有無や吐出されるインク量を調整し、記録媒体上に形成されるドットの階調(ドット面積)を制御する。例えば、各ドライバー7は制御部5の指示に基づき、各ノズル8に印加される駆動電圧値や駆動パルス幅を変化させて、インクの吐出の有無や吐出量を調整する。
【0022】
また、
図2に示すように、制御部5は給紙ローラー対11、搬送ユニット2、排出ローラー対31、操作パネル54等のプリンター100を構成する各部と接続される。そして、制御部5は、各部の動作の制御、指示を行う。例えば、操作パネル54はハードキー(不図示)や、タッチパネルを備えソフトキーを表示する表示部(不図示)を含む。操作パネル54はハードキーやソフトキーが押されることによりなされた入力を受け付ける。操作パネル54は入力内容を認識し、入力内容を示すデータを制御部5に送信する。制御部5は入力内容に沿った動作を各部分に行わせる。
【0023】
搬送ユニット2のエンコーダ24は搬送ベルト23を張架する駆動ローラー21又は従動ローラー22に接続される。エンコーダ24は駆動ローラー21又は従動ローラー22の回転軸の回転変位量(回転角度)に応じてパルスを出力する(例えば、数分の1周や半周に1パルス。任意に設定可能)。制御部5はエンコーダ24から送信されるパルスの数をカウントし、回転量から用紙Pの送り量を把握する。また、制御部5はエンコーダ24からの信号の周期に基づいて、ベルト駆動モーター25の回転速度を把握し、用紙搬送速度が一定となるようにベルト駆動モーター25の回転速度を制御する。そして、制御部5は1回のノズル8からのインクの吐出に対し、1ドット分用紙Pが進むように搬送ユニット2に用紙Pを搬送させる。
【0024】
(形状読込部の構造)
次に、
図3を用いて、実施形態に係るプリンター100での用紙Pの形状を検出する形状読込部26の一例を説明する。
図3は用紙Pの形状を検出する形状読込部26の概略図である。
【0025】
図1に示すように、形状読込部26は、ヘッド部4に対し用紙Pの搬送方向の上流側に配されている。これにより、形状読込部26は、ヘッド部4に搬送される前の用紙Pの形状を読み込む。
【0026】
図3に示すように、形状読込部26は、用紙Pの搬送方向と直交する方向(以下、主走査方向とする)に配列された光源261と、光源261と用紙Pが搬送される空間を挟んで対向して配置された光センサーOsとを有する。すなわち、用紙Pの搬送方向と直交する方向に配列された光源261と光センサーOsとを有している。そして、形状読込部26において、光源261と光センサーOsとの間の隙間が用紙Pを検出する検出範囲Scである。検出範囲Scは用紙Pの搬送方向に一定の長さ(ここで長さLとする)を有している。そして、形状読込部26は、検出範囲Scに搬送される用紙Pの形状を順次検出する構成を有している。すなわち、形状読込部26は、用紙Pを搬送方向に長さLずつ分割して検出する。なお、形状読込部26の1回の動作で検出可能な用紙Pの大きさを1ラインと称する。
【0027】
形状読込部26において、光センサーOsは主走査方向(ここでは、12個、Os1〜Os12とする)に複数個配列されている。各光センサーOsは対向する用紙Pの形状を検出することができる。すなわち、形状読込部26は、1ラインを複数の領域(領域Ar1〜Ar12とする)に分割して、用紙Pの各領域Arの形状をそれぞれ一つの光センサーOpで検出している。なお、1ラインの長さL及び領域Arの主走査方向の長さは特に限定されるものではないが、ドット幅の逓倍であることが好ましい。なお、以下の説明において、光センサーOs1〜Os12が検出した領域をそれぞれ領域Ar1〜Ar12とする。
【0028】
例えば、用紙Pが存在しない領域Arと対向する光センサーOsは光源から出射される光を検出する。用紙Pが存在する領域Arと対向する光センサーOsは、光源から出射された光が用紙Pによって遮られるため、光源からの光を検出しないか又は検出する光の量が少ない。光センサーOsは、入射する光の量によって異なる信号を出力する。
【0029】
そして、形状読込部26は制御部5に接続される。形状読込部26の各光センサーOsからの信号に基づき、検出範囲Scに搬送された用紙Pの1ラインの形状が制御部5に送信される。制御部5は、形状読込部26からの信号に基づいて、用紙Pの1ラインの形状を示すラインデータを生成する。なお、ラインデータの詳細については、後述する。
【0030】
また、制御部5は、形状読込部26と各ヘッド部4のノズル8の位置までの距離と用紙Pの搬送速度に基づき、ヘッド部4ごとに時間を計時する。ヘッド部4ごとに定められた時間を計時した際、制御部5は各ヘッド部4にインクの吐出を開始させる。言い換えると、制御部5は用紙Pの先端検知時点から、形状読込部26から各ノズル8までの距離を搬送するのに要する時間が経過すると各ヘッド部4にインクの吐出を開始させる(1ページの印刷開始)。
【0031】
吸着部27は制御部5からの信号に基づき、給紙側の従動ローラー22に電圧を印加して、搬送ベルト23に用紙Pを静電吸着させる(吸気による吸着でもよい)。静電吸着の解除は制御部5の指示に基づき、吸着部27が接地を行うことにより行われる。
【0032】
(インクの吐出制御の機構)
次に、
図4を用いて、実施形態に係るプリンター100でのインクの吐出に関する機構の一例を説明する。
図4はインクの吐出に関する機構の一例を示すブロック図である。
【0033】
各ヘッド部4(4C〜4K)は複数のノズル8と、各ノズル8に対して1つの圧電素子81(ピエゾ素子、PZN等)と、各圧電素子81に対し電圧を印加し、インクの吐出を実際に制御する複数のドライバー7を含む。仕様上の印刷可能な用紙サイズによるが、例えば、各ヘッド部4にノズル8が2500個(2500ドット)程度設けられる。なお、各ヘッド部4に設けられるノズル8は2500個未満でもよいし、2500個以上でもよい。なお、
図4では、便宜上、各ヘッド部4のうち、1つのヘッド部4Kのみ内部構成の一部を図示しているが、各ヘッド部4の構成は基本的に同様であり、図示を省略している。
【0034】
各ノズル8はエッチング等によって金属板に穴を開けることにより形成される。そして、各ノズル8に対し、圧電素子81が設けられる。ドライバー7は管轄する各圧電素子81のうち、制御データにあわせ、インクを吐出させる圧電素子81に対し、電圧を印加する。例えば、制御部5(画像処理部6)は各ドライバー7に対し、1回の吐出駆動単位で各ノズル8の動作を示す情報(吐出の有無や、濃度を示す情報、制御データ)を送信する。各ドライバー7は各ノズル8の動作を示す情報に基づき、インクを吐出すべきノズル8に対応する圧電素子81に電圧を印加する。この結果、圧電素子81は電圧印加により、形状が変形し、ノズル8にインクを供給する流路(不図示)に圧力が加えられる。そして、流路に対する圧力が伝搬し、ノズル8からインクが吐出する。
【0035】
また、各ドライバー7は圧電素子81に印加する電圧を変えることができる。例えば、圧電素子81に印加する基準の電圧に対し、圧電素子81に印加する電圧を小さくすることができる。これにより、ドライバー7は基準のインク吐出速度や吐出量に対し、インク吐出速度や吐出量を調整し、1ドットの濃度に差を持たせることができる。
【0036】
(画像処理部6の構成)
次に、画像処理部6の構成の一例を図面を参照して説明する。
図5は画像処理部6の一例を示すブロック図である。
【0037】
上述のように、通信部53はコンピューター200等からプリンター100で印刷させる内容や設定情報を含む印刷用データを受信する。そして、画像処理部6には、ドット画像データ生成部61と、ラインデータ生成部62と、マスクデータ生成部63と、画像メモリー64と、印刷用画像データ生成部65とを備えている。
【0038】
ドット画像データ生成部61は、印刷用データに含まれるページ記述言語による記述内容に基づき、ビットマップ形式の画像データを生成する。言い換えると、ドット画像データ生成部61は各画素が濃度を示す画素値を含むドット画像データを生成する。
【0039】
ドット画像データ生成部61が生成したドット画像データは画像メモリー64に記憶される。なお、コンピューター200等からドット画像形式の画像データを受信したとき、ドット画像データ生成部61を介さずに、画像データを画像メモリー64に記憶させてもよい。なお、画像メモリー64は、記憶部としての機能だけでなく、メモリーコントローラーの機能も有しているものとする。また、メモリーコントローラーは、別途備えていてもよい。
【0040】
ラインデータ生成部62は、形状読込部26の各光センサーOsからの信号に基づいて、用紙Pの形状を示すラインデータを1ラインずつ生成する。ラインデータは1ラインごとのデータであり、1ラインに含まれる領域Arごとの領域値を有する二値化されたデータである。なお、ラインデータは、用紙Pにおける搬送方向の位置の情報と共に、画像メモリー64に蓄積される。
【0041】
マスクデータ生成部63は、ラインデータに基づいて、印刷時にインクを塗布しない領域が特定されたマスクデータを生成する。なお、マスクデータは、ラインデータと同じく1ラインごとのデータであり、ラインデータと同じ構成(ライン幅、領域数)である。マスクデータ生成部63で生成されたマスクデータは、画像メモリー64に用紙P内の位置の情報と共に、画像メモリー64に蓄積される。
【0042】
画像メモリー64は、記録されているドット画像データのマスクデータと対応する1ラインのドットデータとマスクデータとを、印刷用データ生成部65に入力させる。印刷用データ生成部65は、1ラインのドットデータに対して、インクを吹き付けない吹き付け禁止部を特定した印刷用画像データを生成する。
【0043】
印刷用データ生成部65で生成された印刷用画像データは、1ラインずつ出力処理部66に入力する。なお、印刷用データ生成部65で生成された印刷用画像データを画像メモリー64に一定量(例えば、1ページ分)蓄積して、出力処理部66に送信してもよい。
【0044】
出力処理部66は、印刷用画像データに基づいて、ヘッド部4の動作のタイミングを制御するための制御データを生成する。制御データには、例えば、ヘッド部4に備えられた各ノズル8からインクを吹き付けるタイミング、吹き付ける量、吹き付けない領域の情報等が含まれる。制御データは、用紙Pの搬送と同期して1ラインごとにヘッド部4に送られる。そして、ヘッド部4は、制御データに含まれる情報に基づいて、ノズル8を動作させ、用紙P上に1ラインごとにインクを吹き付ける。制御データは、用紙Pの搬送と同期したタイミングで、ヘッド部4に送信される。これにより、ヘッド部4によって、用紙Pに画像が形成される。
【0045】
(印刷用画像データの生成)
次に、図面を参照して、本実施形態に係るプリンター100での印刷用画像データの生成方法の一例を説明する。
図6は、形状読込部26が用紙Pの形状を読み込んでいる状態を示す側断面図である。
図7は、
図6に示す用紙Pのラインデータを示す図である。なお、
図6は、用紙Pの主走査方向の長さの半分の検出を示しているものとする。
【0046】
図6は用紙の左右方向が主走査方向である。そして、
図6に示す形状読込部26は、主走査方向に12個の光センサーOsを備えており、光センサーOsには、便宜上1〜12の通し番号がつけられているものとする。また、
図6に示すように、用紙Pには、パンチ孔Hpが設けられているものとする。
【0047】
図6は、形状読込部26のパンチ孔Hpが設けられている部分の形状を読み込む動作を示している。
図6に示すように、光センサーOs1〜Os3、Os10〜Os12と光源261との間には、用紙Pが介在している。そのため、光源261の光は、用紙Pにさえぎられて光センサーOs1〜Os3、Os10〜Os12に入射しない又は入射しにくい。一方、光センサーOs4〜Os9と光源261との間には、パンチ孔Hpが位置しており、用紙Pが介在していない。そのため、光源261の光の多くは、用紙Pにさえぎらず光センサーOs4〜Os9に入射する。光センサーは通常光量に比例した大きさ(電圧)の信号を出力する。そのため、光センサーOs1〜Os3、Os10〜Os12からの信号は、光センサーOs4〜Os9からの信号に比べて小さい。
【0048】
そして、光センサーOs1〜Os12からの信号は、ラインデータ生成部62に送られる。ラインデータ生成部62は、光センサーOs1〜Os12からの信号を閾値と比較して、光センサーOsからの信号を二値化することで、ラインデータを生成する。ラインデータ生成部62は、信号が閾値よりも高いとき、光源からの光が用紙Pにさえぎられていない、すなわち、信号を送信した光センサーOpが検出した領域Arに用紙Pが存在していないと判定し、領域Arの値を「0」とする。信号が閾値よりも低いとき、光源からの光が用紙Pにさえぎられている、すなわち、信号を送信した光センサーOpが検出した領域Arに用紙Pが存在していると判定し、領域Arの値を「1」とする。
図6に示す用紙Pを検出した結果のラインデータは
図7に示すとおりである。
【0049】
図7に示すように、
図6に示す状態で検出された用紙Pの1ラインのラインデータは、領域Ar1〜Ar3、Ar10〜Ar12の領域値が「1」、領域Ar4〜Ar9の領域値「0」になる。そして、領域値「0」は、用紙Pが無い部分、すなわち、インクを吹き付けない部分であることを示している。ラインデータ生成部62は、用紙Pの搬送に従って、1ラインずつラインデータを作成している。そして、形状読込部26は、用紙Pの搬送に従って順次光センサーOs1〜Os12からの信号を送信している。そして、その送信と共に、1枚の用紙Pにおける検出したラインの位置の情報も、ラインデータ生成部62に送る。なお、用紙Pにおける検出したラインの位置の情報としては、データの送信回数、送信時刻、1枚の用紙Pの検出開始からの時間等を用いることができるが、ここでは、データの送信回数を用いるものとする。
【0050】
例えば、用紙Pの検出開始時は、1回目のデータの送信であるため、送信回数を1とする。そして、検出範囲Scの搬送方向の長さLは、予め決められた長さであるため、画像処理部5は、送信回数に基づいて、送られてきた信号が用紙Pにおいてどの部分のデータであるか判別することができる。そして、画像メモリー64には、ラインデータと送信回数とを組み合わせて記憶されたデータベースが備えられている。
【0051】
次に、マスクデータの生成方法について図面を参照して説明する。
図8は、形状読込部26で読み込まれるパンチ孔Hpが形成された用紙Pを示す図であり、
図9は、
図8に示す用紙Pのラインデータのデータベースを示す図である。
図8に示すように、用紙Pには、n番目からn+2番目にパンチ孔Hpが含まれるとする。また、
図9には、n−4番目のラインデータからn+3番目のラインデータを表示しているが、実際には、さらにその前後のラインデータが含まれる場合もある。なお、「−」は、n番目よりも前に検出したことを示し、「+」はn番目よりも後に検出したことを示す。また、
図9には、n−4番目からn+3番目のラインデータが記載されているものとする。
【0052】
図8に示すように、用紙Pには、n番目からn+2番目のラインにかけてパンチ孔Hpが含まれている。そして、n−4番目〜n−1番目及びn+3番目以降のラインには、孔等のインクが通過する部分が形成されていない。そのため、
図9に示すように、n−4番目〜n−1番目及びn+3番目以降のラインの領域Ar1〜Ar12の各領域値は「1」である。一方、n+1番目のラインについては、Ar6の全部及びAr5、Ar7の大半がパンチ孔Hpである。そのため、光センサーOs5〜Os7からの信号は、閾値よりも大きくなり、n+1番目のラインのラインデータの領域Ar5〜Ar7の領域値は「0」である。同様に、n+2番目のラインには、領域Ar4〜Ar8にパンチ孔Hpが形成されるため、n+2番目のラインのラインデータは、領域Ar1〜Ar3及び領域値Ar9〜Ar12の領域値は「1」であり、領域Ar4〜Ar9の領域値は「0」である。
【0053】
ここで、n番目のラインについて説明する。n番目のラインでは、領域Ar5〜Ar7の一部にパンチ孔Hpが形成されている。上述のとおり、形状読込部26は、光源261から出射された光のうち、光センサーOs1〜Os12で検出された光量によって、信号の強さが変動する。
図8に示すn番目のラインの領域Ar5〜Ar7のように、その大半が用紙Pに隠されている場合、パンチ孔Hpの一部が形成されていても、用紙があるときに近い信号がラインデータ生成部62に送られる。そのため、パンチ孔Hpが形成される部分が狭い領域の場合、その領域の領域値は「1」となる。
【0054】
このようなラインデータを用いて、領域値が「1」の領域ではノズルからインクを吹き出し、領域値が「0」の領域ではインクを吹き出さないようにする制御を行うことも可能である。しかしながら、上述のように、領域中に含まれるパンチ孔Hpの割合が小さい領域では、領域値が「1」となり、その領域ではパンチ孔Hpがあるにもかかわらず、インクの吹き出しが行われてしまう。そこで、本実施形態では、ラインデータを用いて、インクを吹き出さない吹出し禁止領域を設定しなおした、ラインデータであるマスクデータを生成している。
【0055】
以下にマスクデータの生成方法について説明する。
図10は、
図9に示すラインデータに基づいてn番目のマスクデータを生成する手順を示す図である。
【0056】
例えば、n番目のライン用のマスクデータを生成する場合、マスクデータ生成部63は、画像メモリー64から、n番目の直前の2個のラインデータであるn−2番目及びn−1番目のラインデータと、直後の2個のラインデータであるn+1番目及びn+2番目のラインデータをそれぞれ読み出す。そして、n−2番目〜n+2番目の全てのラインデータの各領域Ar1〜Ar12の領域値の論理積を計算する。
【0057】
図10に示すように、全てのラインデータにおいて領域Ar1の領域値は「1」であるため、論理積は、「1」となる。同様に、領域Ar4の場合、n+2番目のラインの領域値が「0」であるため、論理積は「0」となる。このように、各領域Ar1〜Ar12の論理積として求められた値を、n番目のライン用のマスクデータとして生成する。
図10に示すように、n番目のライン用のマスクデータは、領域Ar1〜Ar3、Ar9〜Ar12の領域値が「1」であり、領域Ar4〜Ar8の領域値が「0」である。なお、マスクデータにおいて、領域値が「0」の領域が、インクを吹き付けないインク吹き付け禁止部である。
【0058】
すなわち、マスクデータ生成部63は、n番目のマスクデータを生成するために、n番目のラインデータと、その前後に検出された2個ずつのラインデータの領域ごとの領域値の論理積を求めている。
【0059】
そして、マスクデータ生成部63は、生成されたマスクデータを印刷用データ生成部65に送信する。このとき、画像メモリー64は、送信されたマスクデータと対応するラインの1ラインごとのドット画像データも印刷用データ生成部65に送信する。ドット画像データはドットごとに吹き付けるインクの種類、量、タイミング等の情報を含んでおり、これらの情報は、全て数字で与えられている。
【0060】
印刷用データ生成部65は、1ラインごとのドット画像データとマスクデータとを重ね合わせ、ドット画像データのマスクデータの各領域と重なるデータと各領域の領域値との論理積を求める。マスクデータの領域値は、「0」又は「1」なので、論理積の結果は、ドット画像データが予め持っていた数値データ又は「0」になる。つまり、印刷用画像データは、ドット画像データに対して、マスクデータでインク吹き付け禁止部(すなわち、領域値が「0」)の領域を反映させたデータである。
【0061】
そして生成された印刷用画像データを出力処理部66に送信する。出力処理部66では、印刷用画像データに基づいて、ヘッド部4の各ノズル8から吹き出すインクの種類、量、吹出す位置、吹出し禁止領域の情報を含む制御データを生成し、ヘッド部4に送信する。ヘッド部4は、制御データに基づいて、決められた位置に決められた種類及び量のインクを吹き付ける。この時、吹き付け禁止部とされている部分には、インクを吹き付けない制御も行われる。
【0062】
以上のようにして、形成される画像について図面を参照して説明する。
図11は、本実施形態に示すプリンター100による用紙Pへの画像の形成状態を示す図である。
図11は、1面に1色(ここでは、第1色C1)の画像を印刷しているものを示している。
【0063】
図11は、各ラインの領域Ar1〜Ar12の印刷状態を示している。例えば、n−2番目のラインでは、n−4番目〜n番目までのラインデータに基づいてマスクデータが形成される。
図9に示すように、n−4番目〜n番目までのラインデータには、領域値が「0」の領域が無いため、領域値「0」を含むマスクデータは生成されない。一方、n−1番目のラインでは、n−3番目〜n+1番目までのラインデータに基づいてマスクデータが形成される。
図9に示すように、n+1番目のラインのラインデータのAr5〜Ar7の領域値は「0」であるため、n−1番目のラインのマスクデータは、領域Ar5〜Ar7の領域値が「0」のマスクデータとなる。そして、n−1番目のラインのマスクデータを用いて印刷用画像データを生成した場合、用紙Pのn−1番目のラインでは、領域Ar5〜Ar7にインクが吹き付けられない。同様に、n番目〜n+4番目のラインのマスクデータは、いずれも、n+2番目のラインデータの各領域の領域値同士で論理積を求めるため、領域Ar4〜Ar9の領域値が「0」になる。そのため、用紙Pのn番目〜n+4番目のラインでは、領域Ar4〜Ar9にインクが吹き付けられない。そして、n+5番目のラインでは、2番前のラインがn+3番目のラインになり、n+2番目のラインのラインデータと論理積行わないため、全ての領域で領域値が「1」となる。
【0064】
以上のように、二値化したラインデータを読み込み順に複数個呼び出し、各ラインデータの領域値の論理積を求めることで、用紙にインクが通過する部分(例えば、パンチ孔が形成されいている部分)等があっても、その部分にインクを吹き付けられるのを抑制することが可能である。
【0065】
本実施例では、インクを吹き付けない吹き付け禁止部として、用紙に設けられた孔(例えば、パンチ孔)を例に説明したが、これに限定されない。例えば、形状読込部において、光源を用紙に対して光センサーと同じ側に配置し、反射する光の光量によって、用紙の表面の形状や状態を検出するようにしてもよい。このような構成とすることで、用紙に他の部分よりも反射率が高くなるような部材(例えば、シール)を貼っておき、その部分の周囲だけ、インクを吹き付けないようにすることも可能である。この場合、検出範囲の用紙と反対側の部分を、光の反射率が高い鏡面状に形成しておくことで、反射率が高い部材が設けられている部分及び孔が形成されている部分でインクの吹き付けを禁止するように制御することが可能である。
【0066】
なお、本実施形態におけるマスクデータ生成部63は、マスクデータの生成後すぐに、マスクデータを印刷用データ生成部65に送信しているが、これに限定されない。例えば、生成されたマスクデータを一旦画像メモリー64に蓄積した後、印刷用データ生成部65に送信するようにしてもよい。蓄積量としては、例えば、1ページ分等を挙げることができる。また、本実施形態では、形状読込部が用紙の形状を読み込む検出範囲の搬出方向の長さLと、ヘッド部4が1回の印刷動作で印刷する範囲とが同じ大きさとして説明しているが、異なる大きさであってもよい。大きさが異なる場合には、少なくとも、印刷用画像データは、一端、画像メモリー64に蓄積し、出力処理部66には、ヘッド部4が1回の印刷動作で印刷する範囲と対応した大きさの印刷用画像データが送信されることが好ましい。また、マスクデータを画像メモリー64に蓄積し、ヘッド部4の1回の印刷動作で印刷する範囲と同じ大きさのマスクデータをドット画像データと共に、印刷用データ生成部65に送信するようにしてもよい。
【0067】
以上示した、ヘッド部4は、用紙Pの搬送方向と直交する方向にノズル8を並べた構成を有しているが、これに限定されない。例えば、ヘッド部4がノズル8からインクを吹き付けつつ、用紙Pの搬送方向と直交する方向に移動される(走査される)ものであってもよい。
【0068】
本発明にかかるインクジェット記録装置の一例は、搬送される記録媒体の形状を、前記記録媒体の搬送方向に一定の長さを有するとともに搬送方向と直交する方向に複数の領域に分割された読込ラインに分けて読み込む形状読込部と、前記形状読込部で読み込んだ前記記録媒体の形状の情報に基づいてラインデータを生成するラインデータ生成部と、前記搬送方向に所定の長さを有する印刷範囲に搬送された記録媒体にインクを吹き付けるヘッド部と、連続して生成された複数のラインデータのそれぞれからインクを吹き付けない吹き付け禁止部を特定し、特定した全ての吹き付け禁止部の情報を1つのラインデータに追加したマスクデータを生成するマスクデータ生成部と、ドット画像データと前記マスクデータとを組み合わせて、前記ドット画像データに対して前記ヘッド部からインク吹き付けない場所を特定した印刷用画像データを生成する印刷用画像データ生成部とを備えていてもよい。
【0069】
このように構成することで、インクを吹き付けない吹き付け禁止部を、記録媒体の搬送方向(ヘッド部から見て、副走査方向)に広げることが可能である。これにより、インクが、記録媒体の孔等を通過して、インクジェット記録装置の内部に吹き付けられるのを抑制することが可能である。これにより、インクジェット記録装置の内部の汚れを抑制し、記録媒体の汚れを抑制する。
【0070】
上記構成において、前記マスクデータ生成部は、処理対象の読込ラインのラインデータと、前記処理対象の読込ラインのラインデータよりも前のタイミングの読込ラインのラインデータと、前記処理対象の読込ラインのラインデータよりも後の読込ラインのラインデータとを含む複数のラインデータから、前記処理対象の読込ラインのマスクデータを生成するようにしてもよい。このようにすることで、処理対象の読込ラインの吹き付け禁止部を、前後の読込ラインのラインデータの結果を利用するため、一部に吹き付け禁止部が形成されているにもかかわらず、インクが吹き付けられてしまう部分が形成されるのを抑制できる。
【0071】
上記構成において、前記印刷用画像データ生成部は、前記ドット画像データを前記読込ラインと対応する部分ごとに分割した分割画像データを生成し、前記分割画像データと前記マスクデータとを組み合わせた印刷用画像データを生成してもよい。このように構成することで、必要なマスクデータを小さくすることができ、メモリーを小型化することが可能である。
【0072】
上記構成において、前記マスクデータには、前記領域の全てにそれぞれ「1」又は「0」のいずれかの領域値が設定されており、前記吹き付け禁止部に対応する領域の領域値が「0」且つインクを吹き付ける領域の領域値が「1」であり、前記印刷用画像データ生成部は、前記分割画像データと前記マスクデータとを重ね合わせ、前記分割画像データの前記マスクデータの領域と重なる部分の画素値とその領域の領域値との間で論理積を計算した結果を印刷用画像データとして生成し、前記ヘッド部は、前記印刷用画像データを参照し、画素値が「0」の部分には、インクを吹き付けない。このようにすることで、処理を簡略化することが可能である。
【0073】
上記構成において、前記ヘッド部は、前記インクを吹き付ける複数個のノズルを備えており、前記ノズルは、前記記録媒体の搬送方向と交差する方向に配列されていてもよい。
【0074】
上記構成において、前記ヘッド部は、前記記録媒体の搬送方向と直交する方向に往復移動するものであってもよい。
【0075】
上記構成において、前記吹き付け禁止部は、前記記録媒体に設けられたパンチ孔に基づいて形成されていてもよい。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。