(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
―実施形態―
図1,2は、本発明の一実施形態による真空バルブ1を示す図である。
図1は真空バルブ1の外観を示す斜視図であり、
図2は
図1のA−A断面図である。
【0011】
真空バルブ1は、バルブ本体2と駆動部10とを備えている。バルブ本体2は、フランジ3と、フランジ面6(
図2参照)と圧縮空気導入口・排出口9とが形成された筐体4と、筐体4内においてスライド駆動されるバルブプレート8(弁板8)と、を備えている。真空処理装置の真空チャンバにフランジ3のシール面3Aが固定され、フランジ面6に真空ポンプが固定される。図示は省略するが、駆動部10には、バルブプレート8を揺動駆動するモータと、モータを駆動制御する制御部と、が設けられている。
【0012】
図1に示すαは、バルブプレート8の開度を示している。図に示す「α=0%」は、フランジ3の開口部31を全閉する開度を示し、「α=100%」は、フランジ3の開口部31を全開する開度を示している。破線8aは、全開(α=100%)時のバルブプレート8を示している。バルブプレート8は、駆動部10のモータによって揺動駆動される。例えば、バルブプレート8の開度が調節されることで、真空処理装置から真空ポンプへ流れる気体の流量を調節する。
【0013】
図1に示すように、真空バルブ1には、バルブプレート8のたわみを抑制するためのたわみ抑制部材S1、S2が設けられている。たわみ抑制部材S1、S2の詳細については、後述する。
【0014】
図2においては、バルブプレート8の構造が簡略化して示されている。バルブプレート8の詳細については、後述する。
【0015】
フランジ3は、シール面3Aと、開口部31とを有している。筐体4は、圧縮空気導入口・排出口9と、圧空導入路42、開口部41と、フランジ面6とを有している。フランジ3と筐体4とは、不図示のボルトにより締結されている。
【0016】
開口部31と開口部41は互いに対向している。バルブプレート8は、開口部31と開口部41の間に挿脱される。
図2に示すように、開口部31側には、真空チャンバが締結され、開口部41側に真空ポンプが締結される。
【0017】
フランジ3と筐体4との間には、封止体7が収容される筒状の収容部5が形成される。
【0018】
封止体7は、ピストン部710とシールリング720とから構成されている。ピストン部710とシールリング720とは、突部71bと凹部72aで互いに係合している。
【0019】
ピストン部710は、圧空導入路42から送り込まれる圧縮空気(圧空)によって、図示上向きの力を受ける。また、ピストン部710は、圧縮ばね50によって、図示下向きの力を受ける。圧縮空気が導入されると、封止体7は図示上方向に移動し、圧縮空気が排出されると封止体7は図示下方向に移動する。
【0020】
バルブプレート8を全閉(α=0%)にして、さらに、封止体7をバルブプレート8に当接させることで、バルブ閉状態となる。その結果、気体Gの流れが遮断される。
【0021】
シールリング720におけるハッチングで示した領域には、後述するたわみ抑制部材S1が形成されている(
図3参照)。また、開口部41におけるハッチングで示した領域には、後述するたわみ抑制部材S2が形成されている(
図3参照)。
【0022】
図3は、シールリング720を詳細に示す図である。
図3(a)は、シールリング720を開口部31側から見た図である。
図3(b)は、
図3(a)のB−B断面図である。
【0023】
図3(a)に示すように、シールリング720は、環状のシールリング基部720Aと、たわみ抑制部材S1と、を有している。シールリング720は、シールリング基部720Aと、たわみ抑制部材S1と、を有している。たわみ抑制部材S1は封止体7のシールリング720の一部であるため、たわみ抑制部材S1は、封止体7の図示上下方向の移動に伴って図示上下方向に移動する。たわみ抑制部材S1は、バルブプレート8がたわむことを抑制するためのものである。たわみ抑制部材S1は、バルブ流路中に延在する接続部S1Bと、接続部S1Bの先端部に設けられてバルブプレート8に当接する当接部S1Aと、備える。本実施形態においては、当接部S1Aは、シールリング720の中央に1つ設けられている。接続部S1Bは、シールリング基部720Aと当接部S1Aとを接続する。本実施形態においては、接続部S1Bが4本設けられている。なお、接続部S1Bは、少なくとも1本設けられていればよい(後述)。以上のように、たわみ抑制部材S1が当接部S1Aと接続部S1Bとを有することで、シールリング720の内周側に気体G(
図2参照)が通過できる開口部分が設けられるため、シールリング720の内周側を気体Gが通過することができる。
【0024】
図3(b)に示すように、当接部S1Aには、当接面S1ALが形成されている。接続部S1Bよりも優先的に当接部S1Aをバルブプレート8に当接させるために、当接面S1ALは、接続部S1Bの下面S1BLよりもバルブプレート8側に位置するように設計されている。なお、本実施形態では上記設計としたが、これに限定されない。例えば、下面S1BLとバルブプレート8との距離を、当接面S1ALとバルブプレート8との距離と等しくして、接続部S1Bと当接部S1Aとをバルブプレート8に同時に当接させるように設計してもよい。
【0025】
図4は、開口部41に設けられたたわみ抑制部材S2について示した図である。
図4(a)は、たわみ抑制部材S2をバルブプレート8側から見た図である。
図4(b)は、
図4(a)のC−C断面図である。
【0026】
図4(a)に示すように、たわみ抑制部材S2は、バルブ流路中に延在する接続部S2Bと、接続部S2Bの先端部に設けられてバルブプレート8に当接する当接部S2Aと、備える。本実施形態においては、当接部S2Aは、開口部41の中央に1つ設けられている。接続部S2Bは、開口部41と当接部S2Aとを接続する。本実施形態においては、接続部S2Bが4本設けられている。なお、接続部S2Bは、少なくとも1本設けられていればよい(後述)。以上のように、たわみ抑制部材S2が当接部S2Aと接続部S2Bとを有することで、開口部41の内周側に気体G(
図2参照)が通過できる開口部分が設けられるため、開口部41の内周側を気体Gが通過することができる。
【0027】
図4(b)に示すように、当接部S2Aの上面S2AUは、接続部S2Bの上面S2BUよりも図示上側に位置している。接続部S2Bよりも優先的に、当接部S2Aをバルブプレート8に当接させるために、上記設計としている。なお、開口部41の上端面41Sは、バルブプレート8の縁部と当接する(後述)。
【0028】
なお、本実施形態では上面S2AUと上面S2BUとの位置関係を上記設計としたが、これに限定されない。例えば、上面S2BUとバルブプレート8との距離を、上面S2AUとバルブプレート8との距離と等しくして、接続部S2Bと当接部S2Aとをバルブプレート8に同時に当接させるように設計してもよい。
【0029】
図5は、バルブプレート8を示した図である。
図5(a)は、真空排気下流側からバルブプレート8を見た図である。
図5(b)は、
図5(a)のD−D断面図である。
【0030】
図5(a)に示すように、バルブプレート8は、弁部81と、把柄部82と、を有する。
【0031】
図5(a)に示すように、把柄部82には、貫通孔82aが設けられている。バルブプレート8の把柄部82は、モータにより駆動される回転軸(不図示)に固定される。バルブプレート8は、上述の回転軸の軸芯Jを揺動軸として揺動する。
【0032】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、弁部81の強度を維持しつつ軽量化するために、弁部81には、凹部81dが形成されている。凹部81dが形成されたことで、環状当接部81cが同時に形成される。環状当接部81cは、開口部41の上端面(
図6の上端面41S)と当接する。凹部81dは、中央に突起81bを有する。バルブプレートの凹部に形成された突起81bは、たわみ抑制部材S2の当接部S2Aと当接するために形成されている。
【0033】
図5(b)に示すように、弁部81において、凹部81dの裏側は、平面81aとなっている。平面81aの中央部は、たわみ抑制部材S1の当接部S1Aの当接面S1ALと当接する。また、環状当接部81cの裏面である、平面81aの縁部は、シールリング基部720Aと当接する。
【0034】
図6は、シールリング720をバルブプレート8側に駆動して全閉状態となるまでの動作を示す図である。
図6(a)がバルブプレート8側に駆動される前の状態(
図2に示す状態)を示している。バルブプレート8は、開口部31,41に対向する位置に駆動され、全閉(α=0%)とされている。この場合には、シールリング720、バルブプレート8、及び、筐体4の相互間にはギャップが形成されている。
【0035】
次いで、
図6(b)に示すように、封止体7のシールリング720が図示下方に移動し、バルブプレート8の平面81aと、シールリング基部720A及びたわみ抑制部材S1の当接部S1Aとが当接する。この時点では、バルブプレート8と上端面41S、筐体4は当接していない。
【0036】
さらに、シールリング720が図示下方に移動すると、バルブプレート8はシールリング720と共に筐体4の方向に移動し、
図6(c)に示すように、バルブプレート8が筐体4と当接する。具体的には、バルブプレート8の環状当接部81cと上端面41Sとが当接し、バルブプレート8の突起81bとたわみ抑制部材S2の当接部S2Aとが当接する。
【0037】
図6(c)に示すように、シールリング720が、バルブプレート8を筐体4に押し付けることにより、バルブプレート8の縁部の表裏面がシールリング基部720Aと上端面41Sとに密着する。その結果、バルブ閉状態となる。
【0038】
さらに、
図6(c)に示すように、バルブプレート8とたわみ抑制部材S1の当接部S1Aとが当接し、バルブプレート8とたわみ抑制部材S2の当接部S2Aとが当接する。これによって、バルブプレート8の表裏面に作用する圧力の差が生じた場合のバルブプレート8のたわみが抑制される。
【0039】
なお、
図6に示す例では、バルブプレート8とたわみ抑制部材S1とが当接し、バルブプレート8とたわみ抑制部材S2とが当接するとしたが、これに限定されない。例えば、バルブプレート8とたわみ抑制部材S1との間にわずかな隙間が形成されるようにしてもよいが、その隙間量は、バルブプレート8がたわんで破損しない量に設定される。同様に、バルブプレート8とたわみ抑制部材S2との間にわずかな隙間が形成されるようにしてもよいが、その隙間量は、バルブプレート8がたわんで破損しない量に設定される。
【0040】
本実施形態の真空バルブは、以下の構成を有し、以下の作用効果を奏する。
(1)真空バルブ1は、遮断状態におけるバルブプレート8の開口部31側(上流側)に対向配置され、バルブプレート8の開口部31側へのたわみを抑制するたわみ抑制部材S1と、遮断状態におけるバルブプレート8の開口部41側(下流側)に対向配置され、バルブプレート8の開口部41側へのたわみを抑制するたわみ抑制部材S2と、を備える。
以上の構成により、たわみ抑制部材S1が、開口部31側(上流側)のバルブプレート8のたわみを抑制し、たわみ抑制部材S2が、開口部41側(下流側)のバルブプレート8のたわみを抑制することができる。その結果、バルブプレート8の開口部31側と開口部41側とで差圧が生じても、バルブプレート8が内部応力の許容範囲を超えてたわまないようにすることができる。
【0041】
(2)真空バルブ1は、遮断状態(バルブ閉状態)においてバルブプレート8の開口部31側の面に当接し、バルブプレート8による遮断を行わせる環状の封止体7を備える。そして、たわみ抑制部材S1は、封止体7のシールリング720に設けられている。
封止体7のシールリング720はバルブプレート8と当接するので、たわみ抑制部材S1はバルブプレート8と当接することができ、その結果、バルブプレート8のたわみをより生じさせないようにすることができる。
【0042】
(3)たわみ抑制部材S2は、筐体4の開口部41に設けられている。
筐体4の開口部41は、バルブプレート8の近傍に位置するので、バルブプレート8のたわみをより生じさせないようにすることができる。
【0043】
(4)たわみ抑制部材S1は、バルブ流路中に延在する接続部S1Bと、接続部S1Bの先端部に設けられてバルブプレート8に当接する当接部S1Aと、備える。また、たわみ抑制部材S2は、バルブ流路中に延在する接続部S2Bと、接続部S2Bの先端部に設けられてバルブプレート8に当接する当接部S2Aと、備える。
これによって、バルブプレート8のたわみを抑制しつつ、バルブコンダクタンスの低下を抑えることができる。
【0044】
(5)バルブプレート8には、凹部81dが形成されている。凹部81dには、たわみ抑制部材S2と当接するための突起81bが設けられている。
凹部81dが設けられていることでバルブプレート8を軽量化しつつ、突起81bが設けられていることで、バルブプレート8のたわみを抑制することができる。
【0045】
次のような変形も本発明の範囲内である。
【0046】
―変形例1―
図7は、変形例1を示す図である。以上の実施形態では、たわみ抑制部材は、1つの当接部と、4本の接続部とを有しているとしたが、本発明は、これに限定されない。たわみ抑制部材は、少なくとも1つの当接部と1本の接続部とを有していればよい。例えば、
図7に示す開口部41に設けられたたわみ抑制部材S21のように、1つの当接部S21Aが1本の接続部S21Bで筐体4に接続される構成であってもよい。
図7は、開口部41に設けられたたわみ抑制部材S21の例だが、シールリング720に設けられたたわみ抑制部材においても同様である。
【0047】
―変形例2―
図8(a)は、変形例2を示す図である。変形例2では、
図8(a)に示すように、たわみ抑制部材S22は、開口部41の中央から外れた位置に当接部S22Aを有する。たわみ抑制部材S22は複数設けられる。なお、当接部S22Aと当接できるように、変形例2のバルブプレート8の突起81bは、
図8(b)に示すように、数及び位置を当接部S22Aに合わせる必要がある。変形例2は、開口部41に設けられたたわみ抑制部材の例だが、シールリング720に設けられたたわみ抑制部材においても同様である。
【0048】
―変形例3―
図9は、変形例3を示す図である。変形例3では、
図9に示すたわみ抑制部材S22の当接部S22A同士を接続部S22Cで接続するようにした。当接部S22A同士を接続部S22Cで接続することで、複数のたわみ抑制部材S22の位置がより安定する。なお、変形例3でも、当接部S22Aと当接できるように、バルブプレート8の突起81bは、数及び位置を当接部S22Aに合わせる必要がある(
図8(b)参照)。
図9は、開口部41に設けられたたわみ抑制部材の例だが、シールリング720に設けられたたわみ抑制部材においても同様である。
【0049】
―変形例4―
図10は、変形例4を示す図である。
図5に示すバルブプレート8は、片面にのみ凹部と突起が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図10に示すバルブプレート800のように、一方の面に凹部811d、環状当接部811c、突起811bを設け、他方の面に凹部812d、環状当接部812c、突起812bを設けるような変形を行ってもよい。このような変形をしても、以上の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0050】
その他、以下のような変形も可能である。
【0051】
バルブプレート8は、
図5に示すバルブプレート8の環状当接部81c及び突起81を取り除いた薄い板であってもよい。
【0052】
以上では、振り子型(スウィング形式)の真空バルブに本発明を適用したが、バルブプレートが直線的にスライドする形式の真空バルブに本発明を適用することも可能である。
【0053】
本発明は、以上に示した内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。