(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6740945
(24)【登録日】2020年7月29日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20200806BHJP
【FI】
B62D1/06
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-66734(P2017-66734)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-167702(P2018-167702A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石井 力
(72)【発明者】
【氏名】林 幹根
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐司
(72)【発明者】
【氏名】河村 功士
【審査官】
鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−255494(JP,A)
【文献】
特開平07−165085(JP,A)
【文献】
特開2000−120245(JP,A)
【文献】
特開2002−130219(JP,A)
【文献】
実開平01−145664(JP,U)
【文献】
実開平01−125768(JP,U)
【文献】
特開平05−000672(JP,A)
【文献】
特開2005−297038(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0217819(US,A1)
【文献】
米国特許第04662238(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04,1/06
F16B 7/20
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボス部、リング部、スポーク部とからなり、前記リング部の一部が管材からなるリング部材と、前記リング部材の両端の開口を覆う蓋部を有する栓部材と、ダイカスト材から成り前記リング部材の一部と前記栓部材を覆うダイカストリング部材と、前記ダイカストリング部材から延び前記ボス部と前記スポーク部を一体で成形されたダイカスト本体部材とからなるステアリングホイール芯金であって、前記ステアリングホイール芯金は、前記栓部材が前記リング部材から脱落を抑制する脱落抑制手段と、前記栓部材が前記ダイカストリング部材からの抜け落ちを抑制する抜落抑制手段と、を備えており、前記抜落抑制手段は、前記蓋部の前記開口側の反対側の面に略直交する方向を栓軸とし、前記蓋部の前記開口側の反対側の面から前記栓軸に沿って延びる軸部と、前記軸部の前記蓋部の反対側に配置される頭部と、備え、前記頭部は、前記栓軸に直交する方向に少なくとも一部を前記軸部より飛び出させたことを、特徴としたステアリングホイール芯金。
【請求項2】
前記脱落抑制手段は、前記栓部材の前記蓋部から前記リング部材の中に延びる挿入部と、前記リング部材の内周面との間に配置され、前記挿入部と前記内周面とを接着させる接着材である請求項1に記載のステアリングホイール芯金。
【請求項3】
前記脱落抑制手段は、前記リング部材と前記栓部材の一方若しくは両方が弾性変形可能とし、前記栓部材の前記蓋部から前記リング部材の中に延びる挿入部と、前記リング部材の内周面とを圧着させた請求項1に記載のステアリングホイール芯金。
【請求項4】
前記脱落抑制手段は、前記リング部材と前記栓部材の一方若しくは両方が弾性変形可能とし、前記栓部材の前記蓋部から前記リング部材の中に延びる挿入部は、前記リング部材の内周面に向かって延びる一つ若しくは複数のリブを備え、前記リブと前記内周面とを当接させた請求項1に記載のステアリングホイール芯金。
【請求項5】
前記挿入部と前記内周面との間に配置され、前記挿入部と前記内周面とを接着させる接着材を備えた請求項3若しくは4に記載のステアリングホイール芯金。
【請求項6】
前記開口は、非点対称形状の開口形状とした、請求項1〜5のいずれか一項に記載のステアリングホイール芯金。
【請求項7】
前記栓部材は、前記ダイカスト材と同じ材質とした、請求項1〜6のいずれか一項に記載のステアリングホイール芯金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリングホイール芯金に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の軽量化の一環としてステアリングホイール芯金のリング部に、管材からなるリング部材を適用し、ダイカスト成形によりリング部材にスポーク部及びボス部を鋳造一体化し、ステアリングホイール芯金を構成する。
【0003】
ところで、ダイカスト成形によりリング部材にスポーク部及びボス部を鋳造一体化するとき、ダイカスト材が、リング部材の内部にダイカスト材が流れ込み、狙いの形状に成形できない懸念がある。
【0004】
そこで、特許文献1では、リング部材の開口に栓材を配置することにより、リング部材の内部にダイカスト材が流れ込むことを抑制する技術が開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−165085公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ステアリングホイールは、車両の操舵に使用するものであるため、剛性が要求される。ステアリングホイールの剛性はステアリングホイール芯金の影響が大きく、ステアリングホイールの剛性を高めるためには、ステアリングホイール芯金の剛性を高める必要がある。一方、特許文献1のステアリングホイール芯金は、リング部材の開口に栓材を被せその周囲をダイカスト材が覆う構成となっている。ステアリングホイールの操舵時、特許文献1のステアリングホイール芯材では、リング部材とその周囲を覆ったダイカスト材の界面でのみ力を受けるため、界面が剥がれ、リング部材がスポーク部から抜けてしまう懸念がある。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、ステアリングホイールの操舵時、リング部材がスポーク部から抜けてしまうことを抑制可能なステアリングホイール芯金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<請求項1の説明> 本発明に関わるステアリングホイール芯金では、ボス部、リング部、スポーク部とからなり、
リング部の一部が管材からなるリング部材と、リング部材の両端の開口を覆う蓋部を有する栓部材と、ダイカスト材から成り前記リング部材の一部と前記栓部材を覆うダイカストリング部材と、ダイカストリング部材から延びボス部とスポーク部を一体で成形されたダイカスト本体部材とからなるステアリングホイール芯金であって、
ステアリングホイール芯金は、
栓部材が前記リング部材から脱落を抑制する脱落抑制手段と、
栓部材が前記ダイカストリング部材からの抜け落ちを抑制する抜落抑制手段と、
を備え
ており、抜落抑制手段は、蓋部の開口側の反対側の面に略直交する方向を栓軸とし、蓋部の開口側の反対側の面から栓軸に沿って延びる軸部と、軸部の蓋部の反対側に配置される頭部と、備え、頭部は、栓軸に直交する方向に少なくとも一部を軸部より飛び出させたことを、特徴としたステアリングホイール芯金。
【0009】
栓部材は、リング部材の両開口を覆う蓋部により、リング部材の内部にダイカスト材が流れ込みを抑制可能と
する。栓部材がリング部材から脱落を抑制する脱落抑制手段と、栓部材がダイカストリング部材からの抜け落ちを抑制する抜落抑制手段と
して、蓋部の開口側の反対側の面に略直交する方向を栓軸とし、蓋部の開口側の反対側の面から栓軸に沿って延びる軸部の先端に頭部を備えさせ、頭部が、栓軸に直交する方向に少なくとも一部を軸部より飛び出させることにより、頭部の軸部よりも飛び出した箇所と蓋部との間には空間ができ、この空間にダイカスト材が入り込むことで、栓部材がダイカストリング部材からの抜け落ちを抑制可能となり、栓部材が、リング部材とダイカストリング部材の双方に固定されることとなる。
【0010】
従って、ステアリング操舵の際、リングにステアリング回転方向の力が加わると、その力は、脱落抑制手段により栓部材に伝播し、次に抜落抑制手段によりダイカストリング部材へと伝播させることが可能となり、リング部材がダイカストリング部材から抜けてしまうことを抑制可能となる。
【0011】
<請求項2の説明>
本発明に関わるステアリングホイール芯金では、脱落抑制手段は、栓部材の蓋部からリング部材の中に延びる挿入部と、リング部材の内周面との間に配置され、挿入部と内周面とを接着させる接着材である請求項1に記載のステアリングホイール芯金。
【0012】
このような構成では、栓部材は、蓋部からリング部材の内部に延びる挿入部を備え、挿入部とリング部材の内周面との間に、挿入部と内周面とを接着させる接着材を配置することで、栓部材がリング部材からの脱落を抑制可能となる。
【0013】
<請求項3の説明>
本発明に関わるステアリングホイール芯金では、脱落抑制手段は、リング部材と栓部材の一方若しくは両方が弾性変形可能とし、栓部材の蓋部からリング部材の中に延びる挿入部と、リング部材の内周面とを圧着させた請求項1に記載のステアリングホイール芯金。
【0014】
このような構成では、リング部材と栓部材は、一方若しくは両方が弾性変形可能とし、栓部材の蓋部から延びリング部材の内部に挿入部が圧入され、内周面と挿入部が圧着することで、栓部材がリング部材からの脱落を抑制可能となる。
【0015】
<請求項4の説明>
本発明に関わるステアリングホイール芯金では、脱落抑制手段は、リング部材と栓部材の一方若しくは両方が弾性変形可能とし、栓部材の蓋部からリング部材の中に延びる挿入部は、リング部材の内周面に向かって延びる一つ若しくは複数のリブを備え、リブと内周面とを当接させた請求項1に記載のステアリングホイール芯金。
【0016】
このような構成では、リング部材と栓部材は、一方若しくは両方が弾性変形可能とし、栓部材は、蓋部からリング部材の内部に延びる挿入部を備え、脱落抑制手段は、挿入部から内周面に向かって延びる一つ若しくは複数のリブにより、リブと内周面が当接し、栓部材がリング部材からの脱落を抑制可能となる。
【0017】
<請求項5の説明>
本発明に関わるステアリングホイール芯金では、挿入部と内周面との間に配置され、挿入部と内周面とを接着させる接着材を備えた請求項3若しくは4に記載のステアリングホイール芯金。
【0018】
このような構成では、挿入部と内周面との間に配置され、挿入部と内周面とを接着させる接着材により栓部材がリング部材からの脱落を抑制可能となる。
【0021】
<請求項7の説明>
本発明に関わるステアリングホイール芯金では、開口は、非点対称形状の開口とした、請求項1〜6のいずれか一項に記載のステアリングホイール芯金。
【0022】
このような構成では、リング部材の開口は、非点対称形状の開口形状とすることで、栓部材をリング部材に組付ける際、誤組付けが抑制可能となる。
【0023】
<請求項8の説明>
本発明に関わるステアリングホイール芯金では、栓部材は、ダイカスト材と同じ材質とした、請求項1〜7のいずれか一項に記載のステアリングホイール芯金。
【0024】
このような構成では、栓部材とダイカスト材を同じ材質とすることで、互いの物性が近くなる。ステアリング操舵により、ステアリング回転方向にリング部に力が加わり、その力が伝播し、栓部材とダイカストリング部材間に力が伝わった際、物性が近いことで、栓部材とダイカストリング部材が一体物に近い変形挙動とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態のステアリングホイール芯金の全体平面図である。
【
図2】第1実施形態のステアリングホイール芯金における栓部材の斜視図である。
【
図3】
図1のIII−IIIに沿う拡大断面図である。
【
図4】リング部材の開口の開口形状を示す図である。
【
図5】第3実施形態のステアリングホイール芯金における栓部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を説明する。
図1は、ステアリングホイール芯金1を示す。ステアリングホイール芯金1は、ステアリングシャフト(図示略)に締結されるボス部2と、ボス部2の外周側に位置するリング部3と、ボス部2とリング部3を連結するスポーク部4で構成される。リング部3は、少なくとも一部が管材からなるリング部材31からなり、リング部材31の両端には、リング部材31の開口33を覆う蓋部51を有する栓部材5が組付けられる(
図2、
図3、
図4参照)。リング部材31と栓部材5を組付けた後に、ボス部2とリング部材31の端部とを連結するように、ダイカスト成形にてボス部2とスポーク部4とを一体で形成する。ここで、リング部3の一部であって、リング部材31の一部と栓部材5をダイカスト材により包み込ませた箇所をダイカストリング部6とし、ボス部2とスポーク部4をダイカスト本体部材7とする。
【0027】
第1実施形態の脱落抑制手段について
図1〜4を用いて説明する。栓部材5は、蓋部51からリング部材31の内部に延びる挿入部52を備える。栓部材5は、挿入部52をリング部材31の開口33より細く設定し、挿入部52とリング部材31の内周面32の間に接着材8を配置する。接着材8により、挿入部52とリング部材31の内周面32が接着し、栓部材5がリング部材31から脱落することを抑制可能とする。接着材8は、耐火パテ等のダイカスト成形による高熱でも接着強度を落とし難いものが有効である。
【0028】
抜落抑制手段について
図1〜4を用いて説明する。栓部材5の蓋部51は、リング部材31の開口33より面積を大きくし、開口33側に配置される開口側面511と、開口側面511と対向するように配置され開口側面511と面積を略同じとした反開口側面512と、開口側面511と反開口側面512の端部を連結する蓋側面513で構成される。栓部材5は、蓋部51から延びる座部55を備える。座部55は、反開口側面512と略直交する方向を栓軸Xとし、反開口側面512から栓軸Xの方向へ先端を細めながら延び、先端側を反開口側面512と略平行となる平面とした。栓部材5は、座部55から延びる軸部53を備える。軸部53は、座部55の先端から栓軸Xの方向へ柱状に延びる。また軸部53の栓軸Xに直交する面は、座部55の先端の面よりも面積を狭めている。栓部材5は、軸部53から延びる頭部54を備える。頭部54は、軸部53の先端から栓軸Xの方向へ先端を細めながら延びる。また頭部54の軸部53側の面は、少なくとも一部を栓軸Xに直交する方向に軸部53から飛び出させる形状とした。こうすることで、座部55と頭部54の少なくとも一部を栓軸Xに直交する方向に軸部53から飛び出させた箇所との間に空間を持たせることが可能となり、ダイカスト成形時に、座部55と頭部54との間の空間にダイカスト材を入り込ませることが可能となり、ステアリング操舵時、リング部材31がダイカストリング部材6から抜けてしまうことを抑制可能となる。
【0029】
リング部材31の開口33は、直線34とその両端を円弧35で連結させた非点対称の開口形状とした(
図4参照)。また栓部材5の挿入部52は、リング部材31の開口33に挿入する方向に対し直交する断面を、リング部材31の開口形状と相似の関係とした。こうすることで、栓部材5をリング部材31に組付けに対し、向きを間違えて組付けることを抑制可能となる。
【0030】
また、栓部材5とダイカストリング部材6は、同じ材質であることが望ましい。栓部材5とダイカスト材を同じ材質とすることで、互いの物性が近くなる。ステアリング操舵により、ステアリング回転方向にリング部3に力が加わり、その力が伝播し、栓部材5とダイカストリング部材6間に力が伝わった際、物性が近いことで、栓部材5とダイカストリング部材6が一体物に近い変形挙動とすることが可能となる。物性が大きく異なる材質の場合、一方が大変形し、他方が小変形といった変形モードが発生し、境界付近で割れ等が発生し易くなる。
【0031】
第2実施形態の脱落抑制手段について説明する。栓部材5は、挿入部52をリング部材31の開口33より太く設定させている。リング部材31と栓部材5の両方若しくは一方をアルミニウム合金やマグネシウム合金等の弾性変形可能な材料とすることで、挿入部52をリング部材31の開口33から内部へ圧入を可能とし、内周面32と挿入部52とを圧着させることで、栓部材5がリング部材31から脱落することを抑制可能とする。また、挿入部52の蓋部51の反対側の端部をリング部材31の開口33より細くすることで、組付性が向上させることができる。
【0032】
第3実施形態の脱落抑制手段について説明する。
図5の栓部材5は、挿入部52からリング部材31の内周面32に向かって延び、内周面32と当接する一つ若しくは複数のリブ56を備える。リブ56と内周面32を当接させることで、栓部材5がリング部材31から脱落することを抑制可能とする。更に、挿入部52と内周面32とを接着させる接着材8を用いることで、脱落抑制効果が向上する。
【符号の説明】
【0033】
1…ステアリングホイール芯金
2…ボス部
3…リング部
31…リング部材
32…内周面
33…開口
34…直線
35…円弧
4…スポーク部
5…栓部材
51…蓋部
511…開口側面
512…反開口側面
513…蓋側面
52…挿入部
53…軸部
54…頭部
55…座部
56…リブ
6…ダイカストリング部材
7…ダイカスト本体部材
8…接着材
X…栓軸