(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、遠心圧縮機の一実施形態について説明する。なお、本実施形態の遠心圧縮機は燃料電池を電力源として走行する燃料電池車両(FCV)に搭載され、燃料電池に対して空気を供給する。
【0013】
図1に示すように、遠心圧縮機10は、低速側シャフト11及び高速側シャフト12と、低速側シャフト11を回転させる電動モータ13と、低速側シャフト11の回転を増速させて高速側シャフト12に伝達する増速機60と、高速側シャフト12の回転によって流体(本実施形態では空気)を圧縮するインペラ52とを備える。高速側シャフト12は、当該高速側シャフト12の回転軸線方向に離間して対向配置された一対のフランジ部12aを備える。両シャフト11,12は、例えば金属で構成されており、詳細には鉄又は鉄の合金で構成されている。
【0014】
遠心圧縮機10は、当該遠心圧縮機10の外郭を構成するものであって、両シャフト11,12、電動モータ13、及び、増速機60の一部を構成する増速機構61が収容されたハウジング20を備える。ハウジング20は、例えば全体として略筒状(詳細には円筒状)となっている。
【0015】
ハウジング20は、電動モータ13が収容されたモータハウジング21と、増速機構61が収容された増速機ハウジング23と、流体が吸入される吸入口50aが形成されたコンプレッサハウジング50とを備える。吸入口50aは、ハウジング20の軸線方向の一端面20aに設けられている。吸入口50aから見てハウジング20の軸線方向に、コンプレッサハウジング50、増速機ハウジング23及びモータハウジング21の順に配列されている。本実施形態では、増速機構61と、増速機ハウジング23によって増速機60が構成されている。
【0016】
モータハウジング21は、全体として底部22を有する筒状(詳細には円筒状)である。モータハウジング21の底部22の外面が、ハウジング20の軸線方向の両端面20a,20bのうち、吸入口50aがある一端面20aとは反対側の他端面20bを構成している。増速機ハウジング23は、底部24を有する筒状(詳細には円筒状)である本体部25と、本体部25の軸線方向において底部24とは反対側に設けられた閉塞部26と、を備える。
【0017】
モータハウジング21と増速機ハウジング23とは、モータハウジング21の開口端が本体部25の底部24に突き合わさった状態で連結されている。モータハウジング21の内面と、本体部25の底部24におけるモータハウジング21側の底面24aとによって、電動モータ13が収容されたモータ収容室S1が形成されている。当該モータ収容室S1には、低速側シャフト11の回転軸線方向とハウジング20の軸線方向とが一致する状態で、低速側シャフト11が収容されている。
【0018】
低速側シャフト11は、回転可能な状態でハウジング20に支持されている。遠心圧縮機10は、第1軸受31を備える。第1軸受31は、モータハウジング21の底部22に設けられており、低速側シャフト11の第1端部11aは、第1軸受31に支持されている。第1端部11aの一部は、第1軸受31を挿通して、モータハウジング21の底部22に挿入されている。
【0019】
本体部25の底部24は、低速側シャフト11の第1端部11aとは反対側の第2端部11bよりも一回り大きく形成された貫通孔27を備える。遠心圧縮機10は、貫通孔27内に第2軸受32、及び、モータ側シール部材33を備える。低速側シャフト11の第2端部11bは第2軸受32に支持されている。モータ側シール部材33は、増速機ハウジング23内に存在するオイルOがモータ収容室S1に流れるのを規制している。
【0020】
低速側シャフト11の第2端部11bは、本体部25の貫通孔27に挿通されており、低速側シャフト11の一部は、増速機ハウジング23内に配置されている。
電動モータ13は、低速側シャフト11に固定されたロータ41と、ロータ41の外側に配置されるものであってモータハウジング21の内面に固定されたステータ42とを備える。ステータ42は、円筒形状のステータコア43と、ステータコア43に捲回されたコイル44とを備える。コイル44に電流が流れることによって、ロータ41と低速側シャフト11とが一体的に回転する。
【0021】
閉塞部26は、例えば、増速機ハウジング23と同一径の円板状である。増速機ハウジング23は、本体部25の開口端と閉塞部26の軸線方向の両板面26a,26bのうち第1板面26aとが突き合わさった状態で組み付けられている。これにより、閉塞部26の第1板面26aと増速機ハウジング23の内面とによって、増速機構61が収容された増速機室S2が形成されている。
【0022】
増速機ハウジング23を構成する閉塞部26は、増速機構61の一部を構成する高速側シャフト12を挿通可能な挿通孔28を備える。挿通孔28は、大径部29と、大径部29よりも直径の小さい小径部30とを備える。大径部29は、第1板面26aに開口しており、小径部30は第2板面26bに開口している。高速側シャフト12の一方のフランジ部12aは、大径部29内に配置されている。高速側シャフト12の一部は、挿通孔28を介してコンプレッサハウジング50内に配置されている。
【0023】
遠心圧縮機10は、挿通孔28の内面と高速側シャフト12との間に、挿通孔28の内面と高速側シャフト12との間を封止するシール部材34を備える。シール部材34により、増速機ハウジング23内のオイルOがコンプレッサハウジング50内に流出することが規制されている。シール部材34は、小径部30内に配置されている。本実施形態のシール部材34としては、メカニカルシールが用いられている。
【0024】
コンプレッサハウジング50は、軸線方向に貫通したコンプ貫通孔51を有する略筒状である。コンプレッサハウジング50の軸線方向の一端面50bがハウジング20の軸線方向の一端面20aを構成しており、コンプ貫通孔51における上記一端面50b側にある開口が吸入口50aとして機能する。
【0025】
コンプレッサハウジング50と閉塞部26とは、コンプレッサハウジング50の軸線方向の一端面50bとは反対側の他端面50cと、閉塞部26における第1板面26aとは反対側の第2板面26bとが突き合わさった状態で、組み付けられている。これにより、コンプ貫通孔51の内面と閉塞部26の第2板面26bとによって、インペラ52が収容されたインペラ室S3が形成されている。つまり、コンプ貫通孔51は、吸入口50aとして機能するとともに、インペラ室S3を区画するものとして機能する。吸入口50aとインペラ室S3とは連通している。増速機室S2とインペラ室S3との間に位置する閉塞部26は、両者を仕切る仕切壁となる。
【0026】
ここで、コンプ貫通孔51は、吸入口50aから軸線方向の途中位置までは一定の径であり、上記途中位置から閉塞部26に向かうに従って徐々に拡径した略円錐台形状となっている。このため、コンプ貫通孔51の内面によって区画されるインペラ室S3は、略円錐台形状となっている。
【0027】
インペラ52は、基端面52aから先端面52bに向かうに従って徐々に縮径した筒状である。インペラ52は、インペラ52の回転軸線方向に延び、且つ、高速側シャフト12を挿通可能なシャフト挿通孔52cを備える。インペラ52は、高速側シャフト12におけるコンプ貫通孔51内に突出している部分がシャフト挿通孔52cに挿通された状態で、高速側シャフト12と一体回転するように高速側シャフト12に取り付けられている。インペラ52の基端面52aと、閉塞部26の第2板面26bとの間には、背面領域S4が区画されている。高速側シャフト12が回転することによってインペラ52が回転して、吸入口50aから吸入された流体が圧縮される。
【0028】
また、遠心圧縮機10は、インペラ52によって圧縮された流体が流入するディフューザ流路53と、ディフューザ流路53を通った流体が流入する吐出室54とを備える。ディフューザ流路53は、コンプレッサハウジング50におけるコンプ貫通孔51の第2板面26b側の開口端と連続し且つ当該第2板面26bと対向する面と、閉塞部26の第2板面26bとによって区画された流路である。ディフューザ流路53は、インペラ室S3よりも高速側シャフト12の径方向外側に配置されており、インペラ52(及びインペラ室S3)を囲むように環状(詳細には円環状)に形成されている。吐出室54は、ディフューザ流路53よりも高速側シャフト12の径方向外側に配置された環状である。インペラ室S3と吐出室54とはディフューザ流路53を介して連通している。インペラ52によって圧縮された流体は、ディフューザ流路53を通ることによって、更に圧縮されて吐出室54に流れ、当該吐出室54から吐出される。
【0029】
次に、増速機60について説明する。本実施形態の増速機60は、所謂トラクションドライブ式(摩擦ローラ式)である。
増速機60の増速機構61は、低速側シャフト11の第2端部11bに連結されたリング部材62を備える。リング部材62は、低速側シャフト11の第2端部11bに連結された円板状のベース63と、当該ベース63の縁部から起立した円環状の環状部64とを備える。環状部64の内径は、低速側シャフト11の第2端部11bの直径よりも長く設定されている。
【0030】
本実施形態において、リング部材62は、ベース63の回転軸線方向(リング部材62の回転軸線方向)と低速側シャフト11の回転軸線方向とが一致するように低速側シャフト11に連結されている。なお、環状部64の回転軸線方向も低速側シャフト11の回転軸線方向と一致している。リング部材62は、低速側シャフト11の回転に伴って回転する。
【0031】
高速側シャフト12の一部は、リング部材62の径方向において、環状部64の内側に配置されている。増速機構61は、高速側シャフト12と環状部64との間に設けられ、環状部64及び高速側シャフト12の双方に当接した3つのローラ71を備える。
【0032】
図2及び
図3に示すように、3つのローラ71は同一形状である。各ローラ71は、円柱状のローラ部72と、ローラ部72の回転軸線方向の第1端面72aから突出する円柱状の第1突起73と、ローラ部72の回転軸線方向の第2端面72bから突出する円柱状の第2突起74と、を備える。ローラ部72の回転軸線方向、第1突起73の回転軸線方向、及び、第2突起74の回転軸線方向は一致している。以下、ローラ部72の回転軸線方向をローラ71の回転軸線方向Zとする。
【0033】
ローラ部72の直径(回転軸線方向Zと直交する方向の長さ)は高速側シャフト12の直径よりも長く設定されている。回転軸線方向Zと高速側シャフト12の回転軸線方向とは一致している。複数のローラ71は、高速側シャフト12の周方向に間隔を隔てて並んで配置されている。なお、各ローラ71は例えば金属で構成されており、詳細には高速側シャフト12と同一金属、例えば鉄又は鉄の合金で構成されている。
【0034】
図2及び
図4に示すように、増速機構61は、閉塞部26と協働して各ローラ71を回転可能に支持する支持部材80を備える。支持部材80は環状部64内に配置されている。支持部材80は、環状部64よりも一回り小さく形成された円板状の支持ベース81と、支持ベース81から起立した柱状の3つの柱状部材82とを備える。支持ベース81は、閉塞部26に対して回転軸線方向Zに対向配置されている。3つの柱状部材82は、支持ベース81における閉塞部26の第1板面26aと対向する対向板面81aから閉塞部26に向けて起立しており、環状部64の内周面と、隣り合う2つのローラ部72の外周面とによって区画された3つの空間を埋めるように形成されている。
【0035】
図1及び
図2に示すように、支持部材80は、ボルト83が螺合可能なネジ孔84を各柱状部材82に備える。閉塞部26は、ネジ孔84に対応させて、ネジ孔84と連通するネジ穴85を備える。各柱状部材82は、ネジ孔84とネジ穴85とが連通し、且つ、当該各柱状部材82の先端面が第1板面26aに突き合わさった位置に配置されており、その状態でネジ孔84とネジ穴85とに跨るようにボルト83が螺合されることによって閉塞部26に固定されている。
【0036】
増速機60は、ローラ71を回転可能な状態で支持するローラ軸受としての第1ローラ軸受76及び第2ローラ軸受77を備える。第1ローラ軸受76及び第2ローラ軸受77はベアリングである。第1ローラ軸受76は、閉塞部26に配置されている。第2ローラ軸受77は、支持ベース81に配置されている。ローラ71は、第1ローラ軸受76と第2ローラ軸受77に支持されることで、閉塞部26と支持ベース81との間に配置されている。
【0037】
詳細に説明すると、
図3及び
図4に示すように、閉塞部26は、第1板面26aから板厚方向に凹んだ3つの軸受収容部90を備える。軸受収容部90には、第1ローラ軸受76が収容される。各軸受収容部90は、挿通孔28を中心として閉塞部26の周方向(高速側シャフト12の周方向)に並んで配置されている。閉塞部26の周方向に隣り合う各軸受収容部90同士の間隔は、ローラ71同士の間隔に合わせて設定されている。
【0038】
軸受収容部90は、挿通孔28の大径部29に連通している。本実施形態では、軸受収容部90と挿通孔28の大径部29とは連続的に繋がっている。即ち、軸受収容部90と挿通孔28とは、高速側シャフト12の径方向において、他の空間を介することなく直接的に繋がっている。シール部材34は、小径部30に配置されるため、大径部29に連通している軸受収容部90は、挿通孔28におけるシール部材34よりも増速機室S2側の部分と連通しているといえる。
【0039】
軸受収容部90は、円弧状の内面91によって囲まれることで区画されている。軸受収容部90と挿通孔28の大径部29とは連続的に繋がっているため、内面91は途中で途切れていることになる。ここで、
図4に二点鎖線で示すように、内面91の円弧を含む円Cは、第1ローラ軸受76の外径よりも若干直径の大きい円形状となる。即ち、内面91は、円形状の内面の一部を切り欠いた形状ともいえる。
【0040】
軸受収容部90と挿通孔28との境目93において、内面91が途切れた部分同士を最短距離で繋ぐ寸法L1は、第1ローラ軸受76の外径よりも小さい。これにより、軸受収容部90と挿通孔28とが連通することによる第1ローラ軸受76の挿通孔28への抜け出しを規制している。なお、軸受収容部90と挿通孔28との境目93は、軸受収容部90と挿通孔28とを連通している連通路となる。
【0041】
軸受収容部90に第1ローラ軸受76を収容すると、第1ローラ軸受76の径方向に沿う一部は境目93から大径部29に突出して、大径部29内に位置する。
閉塞部26は、軸受収容部90の底から板厚方向に凹む凹部92を備える、凹部92は、回転軸線方向Zから見て円形状であり、その直径は第1ローラ軸受76の外径よりも小さい。軸受収容部90の軸線方向と凹部92の軸線方向とは一致している。
【0042】
前述したように、大径部29には高速側シャフト12のフランジ部12aが配置されるため、軸受収容部90及び軸受収容部90に収容された第1ローラ軸受76と、フランジ部12aとは高速側シャフト12の径方向に向かい合う。また、軸受収容部90及び軸受収容部90に収容された第1ローラ軸受76と、小径部30に配置されたシール部材34とは高速側シャフト12の径方向に向かい合わない。
【0043】
図1及び
図2に示すように、支持ベース81は、対向板面81aから板厚方向に凹んだ3つの支持収容部86を備える。支持収容部86は、回転軸線方向Zに軸受収容部90と対向している。支持収容部86は、回転軸線方向Zから見て円形状であり、その直径は第2ローラ軸受77の外径よりも若干大きい。支持収容部86には、第2ローラ軸受77が収容されている。
【0044】
各ローラ71の第1突起73は、第1ローラ軸受76に挿入されている。各ローラ71の第2突起74は、第2ローラ軸受77に挿入されている。これにより、各ローラ71は、回転可能に支持されている。
【0045】
ローラ71とリング部材62と高速側シャフト12とは、ローラ部72と高速側シャフト12及び環状部64とが互いに押し付けあっている状態でユニット化されており、高速側シャフト12は、3つのローラ部72によって回転可能に支持されている。ローラ部72の外周面と環状部64の内周面との当接箇所、及び、ローラ部72の外周面と高速側シャフト12の外周面との当接箇所には、押し付け荷重が付与されている。
【0046】
なお、
図1に示すように、ローラ部72は一対のフランジ部12aによって挟持されている。これにより、高速側シャフト12の回転軸線方向Zにおける高速側シャフト12とローラ部72との位置ずれが抑制されている。
【0047】
遠心圧縮機10は、増速機構61にオイルOを供給するためのオイル供給機構100を備える。オイル供給機構100は、ポンプ101と、オイル流路102とを備え、ポンプ101の駆動によりオイル流路102を通じて増速機室S2にオイルOを循環させるものである。
【0048】
ポンプ101は、モータハウジング21の底部22に設けられている。本実施形態のポンプ101は、容積型である。ポンプ101は、底部22に設けられた収容部103と、回転体104とを備える。回転体104には、低速側シャフト11の第1端部11aが連結されている。
【0049】
ハウジング20は、オイル流路102の一部となる供給路105と、オイル流路102の一部となる循環路106とを備える。供給路105及び循環路106は、ハウジング20の内壁内に区画されている。供給路105は、収容部103に一端が連通する油路109と、油路109の他端から分岐した第1分岐路107及び第2分岐路108とを備える。第1分岐路107の一端は挿通孔28に開口しており、第1分岐路107の他端は第2分岐路108との分岐点に開口している。
【0050】
柱状部材82は、オイル流路102の一部となる増速機側供給路110を備える。増速機側供給路110の一端は、第2分岐路108に開口しており、第2分岐路108に連通している。増速機側供給路110の他端は、柱状部材82の外周面のうちローラ部72に向かい合う位置に開口している。
【0051】
循環路106は、収容部103と増速機室S2とを繋いでいる。遠心圧縮機10は、増速機ハウジング23における循環路106の連通する箇所が鉛直方向下方に位置する態様で使用される。したがって、増速機ハウジング23内においては、循環路106が連通する箇所に重力によってオイルOが貯留されることになる。
【0052】
そして、ポンプ101が駆動されると、循環路106→収容部103→供給路105の順にオイルOが流れ、第1分岐路107からシール部材34にオイルOが供給される。また、第2分岐路108から増速機側供給路110に供給されたオイルOが増速機構61(ローラ71)に供給される。第1分岐路107は、シール部材34にオイルOを供給するオイル供給路となる。
【0053】
かかる構成によれば、ローラ71が回転すると、ローラ部72の外周面と環状部64の内周面とはオイルOの薄膜を介して接する。同様に、高速側シャフト12の外周面とローラ部72の外周面とは固化されたオイルOの薄膜を介して接する。そして、ローラ71の回転力が、高速側シャフト12の外周面とローラ部72の外周面との間に形成された固化されたオイルOの薄膜を介して高速側シャフト12に伝達され、その結果、高速側シャフト12が回転することとなる。環状部64は、低速側シャフト11と同一速度で回転し、各ローラ71は低速側シャフト11よりも高速で回転する。更に、ローラ部72よりも径が短い高速側シャフト12は、ローラ部72よりも高速で回転する。以上のことから、増速機60によって、高速側シャフト12が低速側シャフト11よりも高速で回転する。
【0054】
次に、本実施形態の遠心圧縮機10の作用について説明する。
電動モータ13が駆動されると、低速側シャフト11の回転によりポンプ101が駆動されて、第2分岐路108から増速機構61にオイルOが供給され、第1分岐路107からシール部材34にオイルOが供給される。第1ローラ軸受76の軸線方向の端面は、ローラ71によって覆われており、増速機側供給路110から供給されたオイルOは、第1ローラ軸受76に至りにくい。
【0055】
一方、第1分岐路107からシール部材34に供給されたオイルOは、挿通孔28のうち、シール部材34よりも増速機室S2側、即ち、大径部29に向けて流れる。高速側シャフト12は回転しているため、高速側シャフト12の遠心力によってオイルOは大径部29の径方向外側に付勢される。大径部29と軸受収容部90とは連通しているため、大径部29に流れたオイルOは、軸受収容部90に供給されることになり、これにより、第1ローラ軸受76にオイルOが供給される。
【0056】
ここで、遠心圧縮機10においては、インペラ52の基端面52aと閉塞部26との接触を防ぐ必要がある関係上、インペラ52の基端面52aと閉塞部26との間に背面領域S4が区画される。この背面領域S4にはインペラ52によって圧縮された流体が入り込む。すると、圧縮された流体によってインペラ52が吸入口50a側に向けて押され、高速側シャフト12には、増速機室S2からインペラ52室に向かう方向へのスラスト力が作用する。このスラスト力は、高速側シャフト12の一対のフランジ部12aのうち、ローラ部72の第2端面72bに向かい合うフランジ部12aを介してローラ71に伝わり、第1ローラ軸受76にはローラ71からスラスト力が加わる。よって、第1ローラ軸受76は、第2ローラ軸受77よりも発熱しやすいが、第1ローラ軸受76にはオイルOが供給されやすく、第1ローラ軸受76の発熱や、摩耗などを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、第1ローラ軸受76の一部を挿通孔28に突出させることで、遠心圧縮機10の大型化を抑制している。
図5に示すように、軸受収容部200と挿通孔201とが分離されている場合、軸受収容部200と挿通孔201との間には、閉塞部26の壁部が設けられることになる。なお、
図5に示す挿通孔201の直径は、実施形態の挿通孔28よりも小さい。ここで、シール部材34の大きさ(直径)は、シール部材の種類によって異なる。例えば、増速機室S2とインペラ52室との間のシール性を確保できるシール部材34としてメカニカルシールを選定する場合、リップシールよりも大きくなりやすく、挿通孔201の直径も大きくなる。
【0058】
図5に二点鎖線で示すように、この際、軸受収容部200と挿通孔201との間隔を維持しようとすると、軸受収容部200が挿通孔201の中心軸からローラ71の径方向に遠ざかり、第1ローラ軸受76も挿通孔201の中心軸から遠ざかることになる。すると、高速側シャフト12とローラ71とを接触させるためにローラ部72の直径を大きくしなければならず、更には、リング部材62も大型化する。リング部材62を大型化すると、変速比の低下を招くとともに、リング部材62を収容する増速機ハウジング23の大型化も招き、遠心圧縮機10全体の大型化の原因となる。
【0059】
本実施形態のように、軸受収容部90と挿通孔28とを隔てる壁部の一部をなくすことで、第1ローラ軸受76の一部を挿通孔28内に突出させることができる。シール部材34を大きくするために挿通孔28の直径を大きくしたとしても、挿通孔28の中心軸から第1ローラ軸受76が遠ざかることを抑制できる。
【0060】
したがって、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)挿通孔28から軸受収容部90にオイルOが流れ込むようにしているため、シール部材34に供給されたオイルOを第1ローラ軸受76に供給することができる。したがって、第1ローラ軸受76へのオイルOの供給不足が抑制される。
【0061】
(2)挿通孔28と軸受収容部90とは連続的に繋がっており、第1ローラ軸受76の一部は挿通孔28に突出している。このため、挿通孔28と軸受収容部90とを隔てて、第1ローラ軸受76の一部を挿通孔28に突出させない場合に比べて、第1ローラ軸受76を挿通孔28の中心軸に近づけることができる。結果として、高速側シャフト12とローラ71とを接触させるためにローラ71の直径(ローラ部72の直径)を大きくする必要がなく、ローラ71を収容している増速機ハウジング23の大型化を招かない。また、リング部材62が大きくなることによる変速比の低下も抑制できる。
【0062】
(3)シール部材34として、メカニカルシールを用いている。メカニカルシールは、リップシールに比べて必要とするオイルOの量が多い。結果として、第1ローラ軸受76にも多くのオイルOが供給されることになり、第1ローラ軸受76へのオイルOの供給不足が更に抑制される。
【0063】
(4)閉塞部26は、軸受収容部90から板厚方向に凹む凹部92を備える。凹部92を設けることで、凹部92にもオイルOが入り込むため、第1ローラ軸受76へのオイルOの供給不足を更に抑制することができる。
【0064】
なお、実施形態は以下のように変更してもよい。
○シール部材34として、メカニカルシールとは異なる種類のシール部材(例えば、リップシール)を用いてもよい。
【0065】
○第1ローラ軸受76の一部は、挿通孔28内に突出しなくてもよい。即ち、軸受収容部90と、挿通孔28とは連続的に繋がっていなくてもよい。この場合、軸受収容部90と挿通孔28とを連通させる連通路を閉塞部26に設ける。これにより、連通路を介して、挿通孔28と軸受収容部90とが繋がり、連通路を介して軸受収容部90にオイルOが供給されることになる。
【0066】
○ポンプは、遠心圧縮機10に内蔵されていなくてもよく、外部ポンプを用いてもよい。
○ローラ71の数は複数であればよく、適宜変更してもよい。例えば、4つや5つにしてもよい。この場合、ローラ71の数に合わせて軸受収容部90、第1ローラ軸受76、及び、第2ローラ軸受77の数も変更される。
【0067】
○挿通孔28の直径は、一定であってもよい。
○増速機60として、くさび作用を利用したものを用いてもよい。この場合、ローラ71のうち少なくとも1つは、リング部材62の回転により移動する可動ローラが用いられる。
【0068】
○遠心圧縮機10の適用対象及び圧縮対象の流体は任意である。例えば、遠心圧縮機10は空調装置に用いられていてもよく、圧縮対象の流体は冷媒であってもよい。また、遠心圧縮機10の搭載対象は、車両に限られず任意である。