特許第6740981号(P6740981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6740981
(24)【登録日】2020年7月29日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】端末装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G10L 19/018 20130101AFI20200806BHJP
   G06F 13/00 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   G10L19/018
   G06F13/00 540B
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-157246(P2017-157246)
(22)【出願日】2017年8月16日
(62)【分割の表示】特願2017-533358(P2017-533358)の分割
【原出願日】2017年1月17日
(65)【公開番号】特開2018-22158(P2018-22158A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-12592(P2016-12592)
(32)【優先日】2016年1月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 裕之
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 優樹
(72)【発明者】
【氏名】越智 友美子
(72)【発明者】
【氏名】石田 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】岩田 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】森口 翔太
【審査官】 岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−073264(JP,A)
【文献】 特開2015−111771(JP,A)
【文献】 特開2015−228122(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/001609(WO,A1)
【文献】 特開2009−180893(JP,A)
【文献】 八木 玲子,ヤマハ、スマホで街中音声を多言語化 インバウンドに「おもてなしガイド」,日経コンピュータ,日経BP社,2016年 1月 7日,No.903,p.10
【文献】 米田 信之, 外4名,アクティブRFIDによる観光情報のUD化を目指した情報システムの開発,情報処理学会研究報告,社団法人情報処理学会,2007年 3月14日,pp.75-82
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 13/00−13/10
G06F 3/16
G06F 13/00
G06F 16/00−16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相異なる識別情報に対応する複数の関連情報を記憶する記憶部を具備する端末装置であって
案内音声を放音する放音装置が放音した音響を表す音響信号から当該案内音声の識別情報を抽出する情報抽出部と、
前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する関連情報を前記記憶部から選択する情報選択部と、
前記情報選択部が選択した関連情報を出力装置に出力させる出力制御部と、
前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する関連情報が前記記憶部に記憶されていない場合に、相異なる言語で各々が表現された複数の関連情報を複数の識別情報の各々について記憶する配信装置から、前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する複数の関連情報のうち、当該端末装置に設定された使用言語に対応する関連情報を取得して前記記憶部に格納する関連情報取得部と
を具備する端末装置。
【請求項2】
前記記憶部は、当該端末装置に設定された使用言語で表現された関連情報を識別情報毎に記憶する
請求項1の端末装置。
【請求項3】
相異なる識別情報に対応する複数の関連情報を記憶する記憶部を具備する端末装置のコンピュータに、
案内音声を放音する放音装置が放音した音響を表す音響信号から当該案内音声の識別情報を抽出する情報抽出処理と、
前記情報抽出処理で抽出した識別情報に対応する関連情報を前記記憶部から選択する情報選択処理と、
前記情報選択処理で選択した関連情報を出力装置に出力させる出力制御処理と、
前記情報抽出処理で抽出した識別情報に対応する関連情報が前記記憶部に記憶されていない場合に、相異なる言語で各々が表現された複数の関連情報を複数の識別情報の各々について記憶する配信装置から、前記情報抽出処理で抽出した識別情報に対応する複数の関連情報のうち、当該端末装置に設定された使用言語に対応する関連情報を取得して前記記憶部に格納する関連情報取得処理と
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置の利用者に情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像または音声等の情報を端末装置に提供するための各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、配信対象として事前に登録された端末装置に対して、当該端末装置の位置に応じたコンテンツを配信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−351905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、端末装置が通信網を介して配信装置からコンテンツを受信する構成では、例えば端末装置が無線通信サービスの圏外に位置する状況において端末装置がコンテンツを受信できないという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、端末装置が通信できない状況にある場合でも、案内音声に対応する関連情報を利用者に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る端末装置は、相異なる識別情報に対応する複数の関連情報を記憶する記憶部と、案内音声を放音する放音装置が放音した音響を表す音響信号から当該案内音声の識別情報を抽出する情報抽出部と、前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する関連情報を前記記憶部から選択する情報選択部と、前記情報選択部が選択した関連情報を出力装置に出力させる出力制御部と、前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する関連情報が前記記憶部に記憶されていない場合に、相異なる言語で各々が表現された複数の関連情報を複数の識別情報の各々について記憶する配信装置から、情報抽出部が抽出した識別情報に対応する複数の関連情報のうち、当該端末装置に設定された使用言語に対応する関連情報を取得して前記記憶部に格納する関連情報取得部とを具備する。
本発明の好適な態様に係るプログラムは、相異なる識別情報に対応する複数の関連情報を記憶する記憶部を具備する端末装置のコンピュータに、案内音声を放音する放音装置が放音した音響を表す音響信号から当該案内音声の識別情報を抽出する情報抽出処理と、前記情報抽出処理で抽出した識別情報に対応する関連情報を前記記憶部から選択する情報選択処理と、前記情報選択処理で選択した関連情報を出力装置に出力させる出力制御処理と、前記情報抽出処理で抽出した識別情報に対応する関連情報が前記記憶部に記憶されていない場合に、相異なる言語で各々が表現された複数の関連情報を複数の識別情報の各々について記憶する配信装置から、情報抽出処理で抽出した識別情報に対応する複数の関連情報のうち、当該端末装置に設定された使用言語に対応する関連情報を取得して前記記憶部に格納する関連情報取得処理とを実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の第1実施形態に係る案内システムの構成図である。
図2】端末装置の動作のフローチャートである。
図3】本発明の第2実施形態に係る案内システムの構成図である。
図4】第2実施形態における端末装置の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態における案内システム100の構成図である。図1に例示される通り、第1実施形態の案内システム100は、電車またはバスを含む交通機関等の各種の施設(以下「案内対象施設」という)に関する情報を利用者に提供するためのコンピュータシステムであり、配信装置10と放音システム12と端末装置14とを具備する。配信装置10は、例えば移動体通信網またはインターネット等を含む通信網200に接続されたサーバ(典型的にはウェブサーバ)である。放音システム12は案内対象施設(例えば交通機関の車内)に設置される。利用者は、端末装置14を携帯した状態で案内対象施設に所在する。端末装置14は、例えば携帯電話機またはスマートフォン等の可搬型の情報処理端末である。また、例えば鉄道事業者の施設内に設置される電光掲示板または商業施設に設置される電子看板(例えばデジタルサイネージ)等の案内掲示板も端末装置14として好適に利用される。なお、実際には案内対象施設内の複数の利用者が案内システム100のサービスを利用し得るが、以下の説明では便宜的に1個の端末装置14に着目する。
【0008】
放音システム12は、案内対象施設に関する案内を利用者に報知するための音声(以下「案内音声」という)Vを放音する音響システムである。案内音声Vは、例えば直後の停車地点(駅もしくはバス停)の名称もしくは他路線への乗換を案内する音声、直後の停車地点の周辺に位置する各種の施設を案内する音声(例えば観光案内)、交通機関の運行状況(例えば停止信号の発生もしくは遅延状況等)を通知する音声、乗車中もしくは降車時の注意事項を通知する音声、または、災害もしくは事故等の緊急事態の発生を通知する音声など、交通機関の運行に関する各種の音声である。
【0009】
図1に例示される通り、第1実施形態の放音システム12は、制御装置22と記憶装置24と放音装置26とを具備する。記憶装置24は、例えば半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の記録媒体で構成され、相異なる発話内容の案内音声Vに対応する複数の音響信号Xを記憶する。任意の1個の案内音声Vに対応する音響信号Xは、当該案内音声Vの音響成分と、当該案内音声Vを一意に識別するための識別情報Dを示す音響成分とを含有する。なお、端末装置14に対して着脱可能な記録媒体を記憶装置24として利用することも可能である。
【0010】
識別情報Dは、所定の周波数帯域の音響成分として音響信号Xに含有される。具体的には、識別情報Dの音響成分の周波数帯域は、利用者が通常の環境で聴取する音声(例えば案内音声V)または楽音等の音響の周波数帯域を上回る範囲(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)に包含される。音響信号Xの生成には公知の技術が任意に採用され得るが、例えば、識別情報Dを適用した変調処理で生成された信号と案内音声Vを収録した信号とを混合することで音響信号Xが生成される。変調処理は、例えば、所定の周波数の正弦波等の搬送波を識別情報Dにより変調する周波数変調、または、拡散符号を利用した識別情報Dの拡散変調である。
【0011】
制御装置22は、記憶装置24に記憶された複数の音響信号Xの何れかを放音装置26に供給する。例えば、案内対象施設の従業員等の案内者から指示された案内音声Vに対応する音響信号Xを制御装置22は記憶装置24から選択して放音装置26に供給する。放音装置26は、制御装置22から供給される音響信号Xに応じた音響を放音する音響機器(スピーカ)である。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の放音装置26は、案内音声Vを放音する音響機器として機能するほか、空気振動としての音響を伝送媒体とする音響通信で当該案内音声Vの識別情報Dを周囲に送信する送信機としても機能する。以上の構成によれば、放音装置26の音量の調整または遮音壁の設置により識別情報Dの受信可能範囲を容易かつ詳細に制御できるという利点がある。なお、音響信号Xをデジタルからアナログに変換するD/A変換器の図示は便宜的に省略した。
【0012】
図1の配信装置10は、案内データGAを記憶する。案内データGAは、複数の情報(以下「関連情報」という)Rを包含する。関連情報Rは、案内音声Vに関連する情報(コンテンツ)であり、例えば音声または画像(例えば静止画,動画,文字列)で表現される。第1実施形態の配信装置10は、図1に例示される通り、放音システム12が放音し得る複数の案内音声Vの各々の識別情報D(D1,D2,……)について、当該案内音声Vの発話内容を相異なる言語で表現した複数の関連情報Rを記憶する。すなわち、相異なる言語(図1の例示では日本語,英語,中国語)で表現された複数の関連情報Rが識別情報D毎に配信装置10に記憶される。任意の1種類の言語に対応する関連情報Rは、例えば、案内音声Vの発話内容を当該言語で表現した翻訳文の文字列と、翻訳文の文字列を発音した音声とを表す。
【0013】
図1に例示される通り、第1実施形態の端末装置14は、制御装置32と記憶装置34と通信装置36と収音装置42と入力装置44と出力装置46とを具備する。制御装置32は、記憶装置34に記憶されたプログラムを実行することで各種の演算処理および制御処理を実行する。通信装置36は、通信網200を介して配信装置10または他の端末装置14と通信する通信機器である。
【0014】
記憶装置34(記憶部の例示)は、制御装置32が実行するプログラムと制御装置32が使用する各種のデータとを記憶する。具体的には、第1実施形態の記憶装置34は、放音システム12が放音する案内音声Vに対応する関連情報Rを端末装置14の利用者に提供するためのアプリケーションプログラム(以下「案内プログラム」という)を記憶する。半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の記録媒体または複数種の記録媒体の組合せが記憶装置34として任意に採用される。
【0015】
第1実施形態の記憶装置34は、配信装置10が記憶する案内データGAと同様の案内データGBを記憶する。図1に例示される通り、案内データGBは、相異なる言語に対応する複数の関連情報Rを案内音声Vの識別情報D毎に包含する。すなわち、識別情報Dと言語との相異なる組合せに対応する複数の関連情報Rが記憶装置34に記憶される。案内データGBは、例えば案内プログラムとともに配信装置10から端末装置14に配信されて記憶装置34に格納される。
【0016】
収音装置42は、周囲の音響を収音して音響信号Yを生成する音響機器(マイクロホン)である。具体的には、収音装置42は、放音システム12の放音装置26が放音した音響(すなわち、案内音声Vと識別情報Dの音響成分との混合音)を表す音響信号Yを生成する。第1実施形態の収音装置42は、端末装置14の相互間の音声通話または動画撮影時の音声収録に利用されるほか、音響通信による識別情報Dの受信に利用される。なお、収音装置42が生成した音響信号Yをアナログからデジタルに変換するA/D変換器の図示は便宜的に省略した。
【0017】
入力装置44は、端末装置14に対する各種の指示のために利用者が操作する入力機器である。例えば利用者が操作する複数の操作子または利用者による接触を検知するタッチパネルが入力装置44として好適に利用される。出力装置46は、案内音声Vの関連情報Rを出力する。第1実施形態の出力装置46は、関連情報Rが表す文字列を表示する表示装置462(例えば液晶表示パネル)と、関連情報Rが表す音声を放音する放音装置464(例えばスピーカまたはイヤホン)とを具備する。
【0018】
図1に例示される通り、記憶装置34に記憶された案内プログラムを制御装置32が実行することで、案内音声Vに対応する関連情報Rを提供するための複数の機能(情報抽出部52,情報選択部54,出力制御部56,関連情報取得部58)が実現される。なお、制御装置32の各機能を複数の装置に分散した構成、または、制御装置32の機能の一部を専用の電子回路が実現する構成も採用され得る。
【0019】
情報抽出部52は、収音装置42が生成した音響信号Yから識別情報Dを抽出する。具体的には、情報抽出部52は、音響信号Yのうち識別情報Dを含む周波数帯域の音響成分を例えば帯域通過フィルタで選択し、識別情報Dの変調処理に対応する復調処理を当該音響成分に対して実行することで識別情報Dを抽出する。以上の例示の通り、放音装置26から放音された案内音声Vの識別情報Dが情報抽出部52により抽出される。
【0020】
情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dと端末装置14にて指定された言語(以下「指定言語」という)Lとに対応する関連情報Rを記憶装置34から選択する。具体的には、情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dについて言語毎に記憶された複数の関連情報Rのうち指定言語Lに対応する関連情報Rを選択する。例えば、図1の例示において、情報抽出部52が識別情報D2を抽出するとともに指定言語Lが「英語」である場合、情報選択部54は、英語の「Thank you.」を示す関連情報Rを選択する。情報選択部54が指定言語Lを特定する方法は任意であるが、例えば端末装置14のOS(Operating System)の言語設定を参照することで情報選択部54は指定言語Lを特定し得る。また、端末装置14の利用者が入力装置44に対する操作で任意に指定した指定言語Lを情報選択部54が取得することも可能である。
【0021】
出力制御部56は、情報選択部54が選択した関連情報Rを出力装置46に出力させる。具体的には、出力制御部56は、情報選択部54が選択した関連情報Rが表す文字列を表示装置462に表示させ、当該関連情報Rが表す音声を放音装置464に放音させる。以上の説明から理解される通り、放音システム12による案内音声Vの放音毎に、当該案内音声Vの発話内容を指定言語Lで表現した文字列が表示装置462に表示されるとともに、指定言語Lの文字列を発音した音声が放音装置464から出力される。
【0022】
ところで、放音システム12が放音し得る案内音声Vは随時に追加され得る。具体的には、既存の案内音声Vとは発話内容が相違する新たな案内音声(以下「新規音声」という)Vの音響成分と新規音声Vの識別情報Dの音響成分とを含有する音響信号Xが放音システム12の記憶装置34に格納される。新規音声Vが追加されると、当該新規音声Vを相異なる言語で表現した複数の関連情報Rが配信装置10の案内データGAに追加される。
【0023】
新規音声Vが追加された段階では、放音システム12から放音された新規音声Vを端末装置14の収音装置42が収音して情報抽出部52が識別情報Dを抽出する一方、新規音声Vに対応する関連情報Rは端末装置14の記憶装置34に記憶されていない状況が発生し得る。図1の関連情報取得部58は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する関連情報Rが記憶装置34に記憶されていない場合に、新規音声Vの発話内容を相異なる言語で表現した複数の関連情報Rを配信装置10から取得して記憶装置34に格納する。
【0024】
図2は、端末装置14の制御装置32が案内プログラムにより実行する動作(以下「案内処理」という)のフローチャートである。例えば入力装置44に対する利用者からの指示を契機として図2の案内処理が開始される。放音システム12の放音装置26から放音された案内音声Vが到達する範囲内に端末装置14の利用者が移動すると、情報抽出部52は、収音装置42が生成する音響信号Yから当該案内音声Vの識別情報Dを抽出する(SA1)。
【0025】
情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する関連情報Rが記憶装置34に記憶されているか否かを判定する(SA2)。具体的には、情報抽出部52が抽出した識別情報Dが記憶装置34に記憶されているか否かに応じて、情報選択部54は関連情報Rの有無を判定する。識別情報Dに対応する関連情報Rが記憶装置34に記憶されていない場合(新規音声Vが事後的に追加された場合)、関連情報取得部58は、新規音声Vを相異なる言語で表現した複数の関連情報Rを配信装置10から取得して記憶装置34に格納する(SA3)。具体的には、関連情報取得部58は、関連情報Rの要求を通信装置36から配信装置10に送信し、配信装置10から当該要求に応じて配信された複数の関連情報Rを通信装置36から取得する。例えば、端末装置14の案内データGBと配信装置10の案内データGAとの差分に相当する関連情報Rを配信装置10から端末装置14に配信することが可能である。以上の処理により、端末装置14の記憶装置34が記憶する案内データGBは、配信装置10が記憶する案内データGAと同等の内容に更新される。他方、識別情報Dに対応する関連情報Rが記憶装置34に記憶されている場合(SA2:YES)には、配信装置10に対する関連情報Rの要求(SA3)は実行されない。
【0026】
以上の処理を実行すると、情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dと当該端末装置14の指定言語Lとに対応する関連情報Rを記憶装置34から選択する(SA4)。出力制御部56は、情報選択部54が選択した関連情報Rを出力装置46に出力させる(SA5)。すなわち、放音システム12の放音装置26による案内音声Vの放音に並行または後続して、当該案内音声Vの発話内容を指定言語Lで表現した文字列の表示と当該文字列を発音した音声の放音とが実行される。
【0027】
例えば電車またはバス等の交通機関では、乗降または乗換等に関する情報を利用者に案内する案内音声が随時に再生される。案内音声の発音内容の翻訳文等の情報を案内音声の放音ととともに利用者に提供できれば、例えば案内音声の言語の理解が困難な外国人等の利用者も案内音声の内容を把握できて便利である。第1実施形態では、案内音声Vを放音する放音装置26が放音した音響を表す音響信号Yから当該案内音声Vの識別情報Dが抽出され、当該識別情報Dと端末装置14の指定言語Lとに対応する関連情報Rが記憶装置34から選択されたうえで出力装置46から出力される。したがって、案内音声Vに関連する関連情報Rを端末装置14の利用者の言語(指定言語L)で提供することが可能である。
【0028】
ところで、案内音声Vの識別情報Dと端末装置14の指定言語Lとに対応した関連情報Rを利用者に提供する構成としては、例えば、情報抽出部52による識別情報Dの抽出毎に当該識別情報Dと指定言語Lとに対応する関連情報Rを端末装置14から配信装置10に要求して当該関連情報Rを取得する構成(以下「対比例」という)も想定される。対比例では、案内データGBが記憶装置34に記憶されない。
【0029】
対比例では、識別情報Dの抽出毎に、端末装置14が通信網200を介して配信装置10と通信する必要があるから、例えば端末装置14が無線通信サービスの圏外に位置するために配信装置10と通信できない状況では、案内音声Vに対応する関連情報Rを端末装置14の利用者に提供できないという問題がある。また、例えば外国人の旅行者は、来訪国の通信事業者と利用契約を締結していないため、通信網200を介した関連情報Rの配信を利用できない状況も想定される。以上に例示した対比例とは対照的に、第1実施形態では、相異なる言語に対応する複数の関連情報Rが案内音声Vの識別情報D毎に端末装置14の記憶装置34に記憶され、情報抽出部52が抽出した識別情報Dと端末装置14の指定言語Lとに対応した関連情報Rが記憶装置34から選択される。したがって、端末装置14が通信できない状況にある場合(例えば無線通信サービスの圏外に位置する場合)でも、案内音声Vに対応する関連情報Rを利用者に提供できるという利点がある。
【0030】
また、第1実施形態では、記憶装置34に記憶されていない関連情報Rを関連情報取得部58が配信装置10から取得して記憶装置34に格納する。したがって、配信装置10の案内データGAに事後的に追加された関連情報Rを端末装置14の利用者に提供できるという利点がある。第1実施形態では特に、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する関連情報Rが記憶装置34に記憶されていない場合(SA2:NO)に、関連情報取得部58が配信装置10から関連情報Rを取得する。したがって、例えば所定の時間毎に端末装置14から配信装置10に関連情報Rを要求する構成と比較して、端末装置14と配信装置10との通信回数を削減できるという利点がある。
【0031】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について以下に説明する。以下に例示する各形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0032】
図3は、第2実施形態における案内システム100の構成図である。第1実施形態と同様に、第2実施形態の配信装置10は、相異なる言語で表現された複数の関連情報Rを案内音声Vの識別情報D毎に含む案内データGAを記憶する。第1実施形態における端末装置14の記憶装置34は、前述の通り、配信装置10が記憶する案内データGAと同様の内容の案内データGBを記憶する。
【0033】
他方、第2実施形態における端末装置14の記憶装置34は、配信装置10が記憶する案内データGAのうち端末装置14にて指定された指定言語Lに対応する一部の関連情報Rを案内データGBとして記憶する。すなわち、指定言語Lについて相異なる識別情報Dに対応する複数の関連情報Rが配信装置10から端末装置14に配信されたうえで記憶装置34に記憶される。例えば指定言語Lが「英語」である場合、図3の例示の通り、相異なる識別情報D(D1,D2,……)に対応する複数の英語の関連情報Rが案内データGBとして記憶装置34に記憶される。指定言語Lに対応する複数の関連情報R(案内データGB)は、例えば案内プログラムとともに配信装置10から端末装置14に配信されて記憶装置34に格納される。
【0034】
以上の例示の通り、指定言語Lに対応する複数の関連情報Rが記憶装置34に記憶されるから、第2実施形態の情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する関連情報Rを記憶装置34の案内データGBから選択する。情報抽出部52が音響信号Yから識別情報Dを抽出する構成、または、情報選択部54が選択した関連情報Rを出力制御部56が出力装置46に出力させる構成は、第1実施形態と同様である。
【0035】
図4は、第2実施形態における端末装置14の制御装置32が案内プログラムにより実行する案内処理のフローチャートである。例えば入力装置44に対する利用者からの指示を契機として図4の案内処理が開始される。放音装置26から放音された案内音声Vが到達する範囲内に端末装置14の利用者が移動すると、情報抽出部52は、第1実施形態と同様に、収音装置42が生成する音響信号Yから当該案内音声Vの識別情報Dを抽出する(SB1)。
【0036】
情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する関連情報Rが記憶装置34に記憶されているか否かを判定する(SB2)。識別情報Dに対応する関連情報Rが記憶装置34に記憶されていない場合(SB2:NO)、関連情報取得部58は、新規音声Vに対応する指定言語Lの関連情報Rを配信装置10から取得して記憶装置34に格納する(SB3)。具体的には、関連情報取得部58は、指定言語Lの通知を含む関連情報Rの要求を通信装置36から配信装置10に送信し、当該要求に応じて配信装置10から指定言語Lについて配信された複数の関連情報Rを通信装置36から取得する。例えば、案内データGAのうち指定言語Lに対応する複数の関連情報Rの集合と端末装置14の案内データGBとの差分に相当する関連情報Rを配信装置10から端末装置14に配信することが可能である。他方、識別情報Dに対応する関連情報Rが記憶装置34に記憶されている場合(SB2:YES)には、配信装置10に対する関連情報Rの要求(SB3)は実行されない。
【0037】
以上の処理を実行すると、情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する関連情報Rを記憶装置34から選択する(SB4)。出力制御部56は、情報選択部54が選択した関連情報Rを出力装置46に出力させる(SB5)。したがって、第1実施形態と同様に、放音システム12の放音装置26による案内音声Vの放音に並行または後続して、当該案内音声Vの発話内容を指定言語Lで表現した文字列の表示と当該文字列を発音した音声の放音とが実行される。
【0038】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態では、端末装置14の指定言語Lに対応する複数の関連情報Rが端末装置14の記憶装置34に記憶される(指定言語L以外の言語の関連情報Rは記憶装置34に記憶されない)から、識別情報Dと言語との組合せが相違する全部の関連情報Rを記憶装置34に記憶させる第1実施形態と比較して、記憶装置34に必要な記憶容量が削減されるという利点がある。他方、相異なる言語に対応する複数の関連情報Rが記憶装置34に記憶される第1実施形態によれば、第2実施形態と比較して、複数種の指定言語Lに対応する関連情報Rを端末装置14の利用者に提供できるという利点がある。
【0039】
<変形例>
以上に例示した各態様は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2個以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0040】
(1)前述の各形態では、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する関連情報Rが記憶装置34に格納されていないという判定(SA2:NO,SB2:NO)を契機として関連情報取得部58が配信装置10から関連情報Rを取得したが、関連情報取得部58が配信装置10から関連情報Rを取得する契機(すなわち案内データGBの更新の契機)は以上の例示に限定されない。例えば、案内プログラムの起動毎に、関連情報Rの追加の有無(案内データGAの更新の有無)を関連情報取得部58が配信装置10に照会し、関連情報Rに追加がある場合に関連情報取得部58が配信装置10から当該関連情報Rを取得することも可能である。案内プログラムの実行中の所定の時間毎に端末装置14から配信装置10に関連情報Rを要求してもよい。すなわち、関連情報取得部58は、案内プログラムの実行中の所定の時間毎に配信装置10から関連情報Rを取得する。
【0041】
また、端末装置14が配信装置10と通信できない状態から通信可能な状態に遷移したことを契機として、新規音声Vに対応する関連情報Rを関連情報取得部58が配信装置10から取得することも可能である。例えば、端末装置14が無線通信サービスの圏外から圏内に移動して通信可能な状態に遷移したときに、関連情報取得部58は、関連情報Rの追加の有無を配信装置10に照会し、関連情報Rが追加された場合には配信装置10から当該関連情報Rを取得する。以上の例示のように、端末装置14が配信装置10と通信可能な状態に遷移したことを契機として関連情報取得部58が配信装置10から関連情報Rを取得する構成によれば、例えば端末装置14と配信装置10との通信の可否に関わらず所定の時間毎に関連情報Rの取得を試行する構成と比較して、端末装置14の処理負荷を削減できるという利点がある。
【0042】
(2)前述の各形態では、複数の関連情報Rが案内プログラムとともに端末装置14に提供される構成を例示したが、記憶装置34に記憶される案内データGBを初期的に取得する時期は任意である。例えば、案内プログラムの最初の起動時に、関連情報取得部58が配信装置10から複数の関連情報Rを取得して記憶装置34に案内データGBとして格納することも可能である。また、案内プログラムを起動してから最初に端末装置14が通信可能な状態に遷移したときに、関連情報取得部58が配信装置10から複数の関連情報Rを取得して記憶装置34に案内データGBとして格納することも可能である。
【0043】
(3)前述の各形態では、識別情報Dに対応する関連情報Rが記憶装置34に記憶されていない場合(SA2:NO)に関連情報取得部58が配信装置10から関連情報Rを取得したが、関連情報Rが記憶装置34に記憶されていないと判定した段階で、端末装置14が配信装置10と通信できない状態にある可能性もある。関連情報Rが記憶装置34に記憶されておらず、かつ、端末装置14が通信できない状態にある場合には、出力装置46による関連情報Rの出力は省略される。以上の状況を想定すると、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する関連情報Rを出力できなかったことを意味する履歴情報を記憶装置34に記憶する構成も好適である。そして、端末装置14が通信可能な状態に遷移した段階で、履歴情報が示す識別情報Dに対応した関連情報Rを、関連情報取得部58が配信装置10から取得するとともに出力制御部56が出力装置46に出力させる。
【0044】
(4)前述の形態では、案内音声Vを収録した音響信号Xを放音システム12の記憶装置24に事前に格納した構成を例示したが、案内者による案内音声Vの発音毎に音響信号Xを逐次的に生成することも可能である。例えば、放音システム12の記憶装置24(または他の記録媒体)には、案内音声Vとして発音されることが予定される複数の発話内容(以下「想定案内句」という)の各々について相異なる識別情報Dが記憶される。配信装置10は、各案内音声Vの想定案内句について相異なる言語の関連情報Rを記憶する。他方、案内者は、複数の想定案内句の何れかを案内音声Vとして発音する。制御装置22(または音声認識を実行可能な他装置)は、案内者が発音した案内音声Vに対する音声認識を実行し、認識結果の文字列に合致または類似する想定案内句の識別情報Dを特定する。そして、放音装置26は、制御装置32が特定した識別情報Dの音響成分と案内音声Vの音響成分との混合音を放音する。以上の構成によれば、案内者による案内音声Vの発音に並行または後続して、前述の各形態と同様に、当該案内音声Vに対応する関連情報Rを端末装置14にて出力することが可能である。
【0045】
(5)前述の各形態では、相異なる言語で表現された複数の関連情報Rの何れかを端末装置14から出力した。しかし、案内音声Vの関連情報Rを端末装置14から出力しても、例えば視覚障碍者または聴覚障碍者等の障碍者は、関連情報Rを知覚できない可能性がある。以上の事情を考慮すると、案内音声Vに対応する複数の関連情報Rを選択的に出力する構成を、種々の障碍者の案内に利用することも想定される。
【0046】
例えば、視覚障碍または聴覚障碍等の障碍の種類に応じた複数の関連情報Rが案内音声Vの識別情報D毎に端末装置14の記憶装置34に案内データGB(さらには配信装置10の案内データGA)として格納される。障碍の種類毎の関連情報Rは、その障碍のある利用者が知覚し得る形式で作成される。例えば、視覚障碍に関する関連情報Rは、視覚障碍者が知覚可能な音声で表現され、聴覚障碍に関する関連情報Rは、聴覚障碍者が知覚可能な画像または文字列で表現される。
【0047】
端末装置14の利用者は、入力装置44を適宜に操作することで自身の障碍の種類を指定することが可能である。情報選択部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する複数の関連情報(相異なる障碍の種類に対応する複数の関連情報R)から利用者の障碍の種類に対応した関連情報Rを選択する。出力制御部56は、情報選択部54が選択した関連情報Rを出力装置46に出力させる。例えば、端末装置14の利用者が視覚障碍者であれば、関連情報Rが音声として放音装置464から放音され、端末装置14の利用者が聴覚障碍者であれば、関連情報Rが画像または文字列として表示装置462に表示される。以上の構成によれば、案内音声Vに関連する関連情報Rを、障碍のある利用者が知覚可能な方法で出力できるという利点がある。
【0048】
なお、案内データGBの更新等の他の動作は前述の各形態と同様である。また、障碍者を案内する構成では、情報抽出部52が抽出した識別情報Dと端末装置14の利用者の障碍の種類とを指定した情報要求を端末装置14から配信装置10に送信し、識別情報Dと障碍の種類とに対応する関連情報Rを案内データGAから選択して配信装置10から端末装置14に配信することも可能である。以上の説明から理解される通り、関連情報Rは、案内音声Gとは別言語で表現された情報のほか、案内音声Gと同じ言語で表現された情報も包含する。
【0049】
以上に説明した変形例に係る端末装置14は、相異なる障碍に対応する複数の関連情報Rを識別情報D毎に記憶する記憶装置34と、案内音声Vの識別情報Dを抽出する情報抽出部52と、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する複数の関連情報Rのうち、当該端末装置14の利用者の障碍に応じた関連情報Rを記憶装置34から選択する情報選択部54と、情報選択部54が選択した関連情報Rを出力装置46に出力させる出力制御部56とを具備する。
【0050】
(6)端末装置14の出力装置46から出力される関連情報Rの種類を、端末装置14による通信の可否に応じて相違させることも可能である。例えば、端末装置14の記憶装置34には、データ量が小さいテキストデータ等の関連情報Rが記憶される一方、配信装置10には、データ量が大きい静止画または動画等の関連情報Rが記憶される。端末装置14が通信できない状態では、情報選択部54は、識別情報Dと指定言語Lとに対応する関連情報R(データ量:小)を記憶装置34から選択する一方、端末装置14が通信網200を介して配信装置10と通信可能な状態では、関連情報取得部58は、識別情報Dと指定言語Lとに対応する関連情報R(データ量:大)を配信装置10から取得する。すなわち、端末装置14の記憶装置34に記憶された関連情報Rと配信装置10に記憶された関連情報Rとが選択的に出力装置46から出力される。具体的には、端末装置14が通信できない状態では、データ量が小さいテキストデータ等の関連情報Rが出力装置46から出力され、端末装置14が通信可能な状態では、データ量が大きい静止画または動画等の関連情報Rが出力装置46から出力される。
【0051】
(7)前述の各形態では、端末装置14の記憶装置34が記憶する案内データGBと配信装置10が記憶する案内データGAとの差分に相当する関連情報Rを配信装置10から端末装置14に配信した。しかし、端末装置14の関連情報取得部58が配信装置10から取得する関連情報Rの範囲は以上の例示に限定されない。例えば、端末装置14の記憶装置34に記憶された案内データGBが配信装置10の案内データGAと相違する場合に、関連情報取得部58が案内データGAの全部を配信装置10から取得して記憶装置34に格納(例えば上書き)することも可能である。案内データGAと案内データGBとが相違する場合とは、例えば、案内データGAの更新が案内データGBにはまだ反映されていない場合である。また、案内データGAのうち端末装置14の指定言語Lに対応する部分(指定言語Lで表現された複数の関連情報Rの集合)を関連情報取得部58が配信装置10から取得して記憶装置34に格納(例えば上書き)することも可能である。
【0052】
(8)案内データGAのうち特定の部分を選択的に配信装置10から端末装置14に配信する構成も好適である。具体的には、以下に例示される通り、案内データGAのうち端末装置14の位置に応じた部分(複数の関連情報Rの集合)を、関連情報取得部58が配信装置10から取得することが可能である。
【0053】
例えば、相異なる位置に対応する複数の関連情報Rを識別情報D毎に含む案内データGAが配信装置10に記憶される。関連情報取得部58は、端末装置14の位置を示す位置情報を含む情報要求を通信装置36から配信装置10に送信する。位置情報は、例えばGPS(Global Positioning System)等の公知の測位技術を利用して生成される。配信装置10は、端末装置14からの情報要求に含まれる位置情報に対応する複数の関連情報を案内データGAから抽出して要求元の端末装置14に配信する。関連情報取得部58は、通信装置36が配信装置10から受信した複数の関連情報Rを記憶装置34に格納する。
【0054】
また、案内データGAのうち現在時刻に応じた部分(複数の関連情報Rの集合)を、関連情報取得部58が配信装置10から取得することも可能である。例えば、相異なる時間帯に対応する複数の関連情報Rを識別情報D毎に含む案内データGAが配信装置10に記憶される。配信装置10は、端末装置14からの情報要求を契機として、現在時刻を含む時間帯に対応する複数の関連情報を案内データGAから抽出して要求元の端末装置14に配信する。関連情報取得部58は、通信装置36が配信装置10から受信した複数の関連情報Rを記憶装置34に格納する。
【0055】
(9)前述の各形態では、音響を伝送媒体とする音響通信で識別情報Dを端末装置14に送信したが、端末装置14に識別情報Dを送信するための通信方式は音響通信に限定されない。例えば、放音システム12による案内音声Vの放音に並行または後続して、電波または赤外線等の電磁波を伝送媒体とした無線通信で端末装置14に識別情報Dを送信することも可能である。以上の例示から理解される通り、識別情報Dの送信には、通信網200が介在しない近距離無線通信が好適であり、音響を伝送媒体とする音響通信または電磁波を伝送媒体とする無線通信は近距離無線通信の例示である。ただし、識別情報Dの送信方式は近距離無線通信に限定されない。例えば、情報提供先として事前に登録された端末装置14に対して通信網200を介して識別情報Dを送信(すなわちプッシュ配信)することも可能である。
【0056】
(10)前述の各形態では、交通機関を案内対象施設として例示したが、案内システム100が使用される場面は以上の例示に限定されない。例えば、空港等の施設、ショッピングモール等の商業施設、美術館もしくは博物館等の展示施設、競技場もしくは体育館等の運動施設、または、ホテルもしくは旅館等の宿泊施設を含む各種の案内対象施設に関する案内に、前述の各形態で例示した案内システム100が利用され得る。
【0057】
(11)前述の各形態で例示した端末装置14は、前述の通り、制御装置32と案内プログラムとの協働で実現される。第1実施形態の案内プログラムは、相異なる言語で表現された複数の関連情報Rを案内音声Vの識別情報D毎に記憶する記憶装置34を具備するコンピュータ(例えば制御装置32)を、案内音声Vを放音する放音装置26が放音した音響を表す音響信号Yから当該案内音声Vの識別情報Dを抽出する情報抽出部52、情報抽出部52が抽出した識別情報Dと指定言語Lとに対応する関連情報Rを記憶装置34から選択する情報選択部54、および、情報選択部54が選択した関連情報Rを出力装置46に出力させる出力制御部56として機能させる。
【0058】
また、第2実施形態の案内プログラムは、相異なる言語で表現された複数の関連情報Rを案内音声Vの識別情報D毎に記憶する配信装置10から配信され、指定言語Lに対応する複数の関連情報Rを記憶する記憶装置34を具備するコンピュータ(例えば制御装置32)を、案内音声Vを放音する放音装置26が放音した音響を表す音響信号Yから当該案内音声Vの識別情報Dを抽出する情報抽出部52、情報抽出部52が抽出した識別情報Dに対応する関連情報Rを記憶装置34から選択する情報選択部54、および、情報選択部54が選択した関連情報Rを出力装置46に出力させる出力制御部56として機能させる。
【0059】
なお、第1実施形態および第2実施形態の案内プログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。また、通信網を介した配信の形態でプログラムをコンピュータに提供することも可能である。
【0060】
(12)本発明は、前述の各形態に係る端末装置14の動作方法(情報提供方法)としても特定され得る。例えば、第1実施形態に対応する情報提供方法では、相異なる言語で表現された複数の関連情報Rを案内音声Vの識別情報D毎に記憶する記憶装置34を利用可能なコンピュータ(単体のコンピュータまたは複数のコンピュータで構成されるシステム)が、案内音声Vを放音する放音装置26が放音した音響を表す音響信号Yから当該案内音声Vの識別情報Dを抽出し、当該識別情報Dと指定言語Lとに対応する関連情報Rを記憶装置34から選択し、当該関連情報Rを出力装置46に出力させる。また、第2実施形態に対応する情報提供方法では、相異なる言語で表現された複数の関連情報Rを案内音声Vの識別情報D毎に記憶する配信装置10から配信され、指定言語Lに対応する複数の関連情報Rを記憶する記憶装置34を利用可能なコンピュータ(単体のコンピュータまたは複数のコンピュータで構成されるシステム)が、案内音声Vを放音する放音装置26が放音した音響を表す音響信号Yから当該案内音声Vの識別情報Dを抽出し、当該識別情報Dに対応する関連情報Rを記憶装置34から選択し、当該関連情報Rを出力装置46に出力させる。
【0061】
(13)以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
<態様1>
本発明の好適な態様(態様1)に係る端末装置は、相異なる識別情報に対応する複数の関連情報を記憶する記憶部と、案内音声を放音する放音装置が放音した音響を表す音響信号から当該案内音声の識別情報を抽出する情報抽出部と、前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する関連情報を前記記憶部から選択する情報選択部と、前記情報選択部が選択した関連情報を出力装置に出力させる出力制御部とを具備する。以上の態様では、案内音声を放音する放音装置が放音した音響を表す音響信号から当該案内音声の識別情報が抽出され、当該識別情報に対応する関連情報が記憶部から選択されたうえで出力装置から出力される。したがって、例えば移動体通信網等の通信網を介した通信を端末装置ができない状況でも、案内音声に対応する関連情報を利用者に提供することが可能である。
<態様2>
態様1の好適例(態様2)において、前記記憶部は、相異なる言語で表現された複数の関連情報を識別情報毎に記憶し、前記情報選択部は、前記情報抽出部が抽出した識別情報と指定された言語とに対応する関連情報を前記記憶部から選択する。以上の態様では、音響信号から抽出された識別情報と指定された言語とに対応する関連情報が記憶部から選択されたうえで出力装置から出力される。したがって、案内音声に関連する関連情報を端末装置の利用者の言語で提供することが可能である。
<態様3>
態様1の好適例(態様3)において、前記記憶部は、指定された言語に対応する関連情報を識別情報毎に記憶する。以上の態様では、指定された言語に対応する関連情報が識別情報毎に記憶部に記憶される。したがって、案内音声に関連する関連情報を端末装置の利用者の言語で提供することが可能である。
<態様4>
態様1から態様3の何れかの好適例(態様4)に係る端末装置は、複数の関連情報を記憶する配信装置から関連情報を取得して前記記憶部に格納する関連情報取得部を具備する。以上の態様では、関連情報取得部が配信装置から関連情報を取得して記憶部に格納するから、例えば配信装置に事後的に追加された関連情報を端末装置に利用者に提供できるという利点がある。
<態様5>
態様4の好適例(態様5)において、前記情報抽出部と前記情報選択部と前記出力制御部と前記関連情報取得部とは、制御装置が案内プログラムを実行することで実現され、前記関連情報取得部は、前記案内プログラムの起動を契機として前記配信装置から前記関連情報を取得する。以上の態様では、案内プログラムの起動を契機として関連情報取得部が配信装置から関連情報を取得するから、例えば端末装置の利用者による指示を必要とせずに端末装置が関連情報を取得できるという利点がある。
<態様6>
態様4の好適例(態様6)において、前記情報抽出部と前記情報選択部と前記出力制御部と前記関連情報取得部とは、制御装置が案内プログラムを実行することで実現され、前記関連情報取得部は、前記案内プログラムの実行中の所定の時間毎に前記配信装置から前記関連情報を取得する。以上の態様では、関連情報取得部が所定の時間毎に配信装置から関連情報を取得するから、配信装置における関連情報の更新が端末装置の関連情報に迅速に反映されるという利点がある。
<態様7>
態様4の好適例(態様7)において、前記関連情報取得部は、当該端末装置が前記配信装置と通信可能な状態に遷移したことを契機として前記配信装置から前記関連情報を取得する。以上の態様では、端末装置が配信装置と通信可能な状態に遷移したことを契機として関連情報取得部が配信装置から関連情報を取得する。したがって、例えば端末装置と配信装置との通信の可否に関わらず所定の時間毎に関連情報の取得を試行する構成と比較して、端末装置の処理負荷を削減できるという利点がある。
<態様8>
態様4の好適例(態様8)において、前記情報抽出部と前記情報選択部と前記出力制御部と前記関連情報取得部とは、制御装置が案内プログラムを実行することで実現され、前記関連情報取得部は、前記案内プログラムが起動されてから、当該端末装置が前記配信装置と通信可能な状態に最初に遷移した場合に、前記配信装置から前記関連情報を取得する。以上の態様によれば、例えば端末装置と配信装置との通信の可否に関わらず所定の時間毎に関連情報の取得を試行する構成と比較して、端末装置の処理負荷を削減できるという利点がある。
<態様9>
態様1から態様3の何れかの好適例(態様9)に係る端末装置は、相異なる言語で表現された複数の関連情報を案内音声の識別情報毎に記憶する配信装置から、前記記憶部に記憶されていない関連情報を取得して前記記憶部に格納する関連情報取得部を具備する。以上の態様では、記憶部に記憶されていない関連情報を関連情報取得部が配信装置から取得して記憶部に格納する。したがって、配信装置に事後的に追加された関連情報を端末装置に利用者に提供できるという利点がある。
<態様10>
態様9の好適例(態様10)において、前記関連情報取得部は、前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応する関連情報が前記記憶部に記憶されていない場合に、当該関連情報を前記配信装置から取得する。以上の態様では、情報抽出部が抽出した識別情報に対応する関連情報が記憶部に格納されていない場合に関連情報取得部が配信装置から関連情報を取得する。したがって、例えば所定の時間毎に端末装置から配信装置に関連情報を要求する構成と比較して、端末装置と配信装置との通信回数を削減できるという利点がある。
<態様11>
本発明の好適な態様(態様11)に係る情報提供方法は、案内音声を放音する放音装置が放音した音響を表す音響信号から当該案内音声の識別情報を抽出し、相異なる識別情報に対応する複数の関連情報を記憶する記憶部から、前記抽出した識別情報に対応する関連情報を選択し、前記選択した関連情報を出力装置に出力させる。以上の態様によれば、例えば移動体通信網等の通信網を介した通信を端末装置ができない状況でも、案内音声に対応する関連情報を利用者に提供することが可能である。
<態様12>
本発明の好適な態様(態様12)に係るプログラムは、相異なる識別情報に対応する複数の関連情報を記憶する記憶部を具備する端末装置のコンピュータに、案内音声を放音する放音装置が放音した音響を表す音響信号から当該案内音声の識別情報を抽出する情報抽出処理と、前記情報抽出処理で抽出した識別情報に対応する関連情報を前記記憶部から選択する情報選択処理と、前記情報選択処理で選択した関連情報を出力装置に出力させる出力制御処理とを実行させる。以上の態様によれば、例えば移動体通信網等の通信網を介した通信を端末装置ができない状況でも、案内音声に対応する関連情報を利用者に提供することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
100……案内システム、200……通信網、10……配信装置、12……放音システム、14……端末装置、22……制御装置、24……記憶装置、26……放音装置、32……制御装置、34……記憶装置、36……通信装置、42……収音装置、44……入力装置、46……出力装置、462……表示装置、464……放音装置、52……情報抽出部、54……情報選択部、56……出力制御部、58……関連情報取得部。
図1
図2
図3
図4