(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ベース領域の前記中央部と前記第1ベース領域の前記両側部の各々との水平方向における第1離間距離は、前記第1ベース領域の前記中央部と前記第2ベース領域の端部との水平方向における第2離間距離よりも大きく、
前記第1離間距離と前記第2離間距離との差は、0.2μm以上であり、前記第1ベース領域の厚み以下であり、かつ0.6μm以下である、請求項3または請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
SiCトレンチ型MOSFETは、トレンチ側壁に高いセル密度と高いチャンネル移動度があり、低いオン抵抗を有する事が期待されている。しかし同時に、トレンチ底のゲート酸化膜と高いチャンネル移動度を有するチャンネルを形成するpエピタキシャル層において高電界になると予想される。高電界は、ゲート酸化膜の信頼性と、高いチャンネル移動度を有する低濃度不純物が注入されたp-エピタキシャル層のパンチ・スルーとに問題を引き起こす。
【0009】
SiCトレンチ型MOSFETの作製では、高耐圧に作製できても、低オン抵抗の実現が難しかったり(非特許文献1)、低オン抵抗を実現しながら高耐圧破壊の抑制が難しかったり(特許文献1、特許文献2)、両立は困難である。本開示は、高耐圧での破壊を抑制して、低オン抵抗を実現することを目的とする。
【0010】
[本開示の効果]
本開示では、SiCトレンチ型半導体装置のトレンチ底直下に離間してn-ドリフト層にトレンチ底を保護するようにpベース層を埋め込む。またソース領域とチャンネル領域の周辺の諸特性を最適化して高耐圧、かつ、低オン抵抗を実現する。トレンチ底直下に離間して埋め込まれて形成されたpベース層により効率よくゲート酸化膜に集中する高電界を下げる事ができる。またそれぞれp-エピタキシャル層、n-エピタキシャル層から構成されたチャネル層とトレンチ電流拡散層により、低オン抵抗を実現できる。
【0011】
[実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
【0012】
(1)本開示に係る炭化珪素半導体装置は、基板と、ドリフト層と、第1ベース領域と、トレンチ電流拡散層と、第2ベース領域と、ボディー領域と、ソース領域と、コンタクト領域と、トレンチとゲート絶縁酸化膜と、ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極とを備えている。基板は、第1導電型を有しかつ炭化珪素からなる。ドリフト層は、基板の上に設けられ、第1導電型を有しかつ炭化珪素からなる。第1ベース領域は、ドリフト層の上に設けられ、中央と中央の両側とに分離し、第2導電型を有しかつ炭化珪素からなる。電流拡散層は、分離した第1ベース領域の間を埋める。トレンチ電流拡散層は、第1ベース領域と電流拡散層との上に設けられ、第1導電型を有しかつ炭化珪素からなる。第2ベース領域は、トレンチ電流拡散層の両側に設けられ、第2導電型を有しかつ炭化珪素からなる。ボディー領域は、トレンチ電流拡散層と第2ベース領域との上に設けられ、第2導電型を有しかつ炭化珪素からなる。ソース領域は、ボディー領域の上に設けられ、第1導電型を有しかつ炭化珪素からなる。コンタクト領域は、第2導電型を有しかつ炭化珪素からなる。トレンチは、ソース領域の表面から、ソース領域とのボディー領域を貫通しトレンチ電流拡散層に達するように設けられている。ゲート絶縁酸化膜は、トレンチの内壁面とソース領域の一部を覆うように設けられている。ゲート電極は、トレンチ内に設けられている。ソース電極は、ソース領域およびコンタクト領域の一部を覆いボディー領域に電気的に接続されている。ドレイン電極は、基板の裏面側に設けられている。トレンチの底面は、第1ベース領域の中央部と垂直方向に離間して重なり合っている。中央部の水平方向の幅は、トレンチの底面の幅よりも大きい。
【0013】
(2)上記(1)に係る炭化珪素半導体装置において、トレンチの底面と中央部とは、垂直方向に0.05μm以上0.5μm以下離間していてもよい。
【0014】
(3)上記(2)に係る炭化珪素半導体装置において、中央部の水平方向の幅は、トレンチの底面の幅よりも0.1μ以上0.5μm以下大きくてもよい。
【0015】
(4)上記(3)に係る炭化珪素半導体装置において、電流拡散層の不純物濃度は、1.0×10
16cm
-3以上4.0×10
17cm
-3以下であり、かつ、第1ベース領域の中央部と両側部の各々との間にある電流拡散層の水平方向の幅は、0.7μm以上1.5μm以下であってもよい。
【0016】
(5)上記(4)に係る炭化珪素半導体装置において、ボディー領域の垂直方向の厚みは、0.5μm以上1.5μm以下であり、かつ、ボディー領域の不純物濃度は、1.0×10
16cm
-3以上3.0×10
17cm
-3以下であってもよい。ソース領域の垂直方向の厚みは、0.1μm以上0.4μm以下であり、かつ、ソース領域の不純物濃度は、2.0×10
18cm
-3以上1.0×10
20cm
-3以下であってもよい。トレンチ電流拡散層の垂直方向の厚みは、0.3μm以上1.0μm以下であってもよい。トレンチ電流拡散層の不純物濃度は、5.0×10
16cm
-3以上1.0×10
17cm
-3以下であってもよい。
【0017】
(6)上記(2)〜(5)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置において、第1ベース領域の中央部と第1ベース領域の両側部の各々との水平方向における第1離間距離は、第1ベース領域の中央部と第2ベース領域の端部との水平方向における第2離間距離よりも大きくてもよい。第1離間距離と第2離間距離との差は、0.2μm以上であり、第1ベース領域の厚み以下であり、かつ0.6μm以下であってもよい。
【0018】
(7)上記(6)に係る炭化珪素半導体装置において、第1ベース領域の中央部と第1ベース領域の両側部の各々は、第1ベース領域接続部によりに接続されていてもよい。第1ベース領域接続部は、第1ベース領域の長手方向において周期的に設けられていてもよい。
【0019】
(8)上記(7)に係る炭化珪素半導体装置において、長手方向において隣り合う2つの第1ベース領域接続部の間隔は、10μm以上200μm以下であってもよい。
【0020】
[実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態の詳細について説明する。なお以下の図において、同一または相当部分には同一符号を付している。また、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を組み合わせてもよい。
【0021】
<実施形態1>
(実施形態1−1)
図1A、
図1Bおよび
図2Kは、本開示のSiCトレンチ型半導体装置(炭化珪素トレンチ型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor))の構成を示す図である。
【0022】
SiCトレンチ型半導体装置は、基板101と、ドリフト層102と、第1ベース領域103(PBA1)と、電流拡散層104と、トレンチ電流拡散層105と、第2ベース領域106(PBA2)と、ボディー領域107と、ソース領域108と、コンタクト領域109と、トレンチ110と、絶縁酸化膜111(ゲート絶縁膜)と、ゲート電極112と、ソース電極113と、ドレイン電極114とを含む。第1ベース領域103は、第1ベース領域中央部103aと、第1ベース領域左側部103bと、第1ベース領域右側部103cと、第1ベース領域接続部103dとを有する。
【0023】
基板101は、炭化珪素からなる。基板101は、第1導電型を有する。ドリフト層102は、基板の上に形成されている。ドリフト層102は、炭化珪素からなる。ドリフト層102は、低不純物濃度の第1導電型(n型)を有する。第1ベース領域103と電流拡散層104とは、ドリフト層102の上に形成されている。第1ベース領域103は、炭化珪素からなる。第1ベース層103は、高不純物濃度の第2導電型(p型)を有する。第1ベース領域103は、断面視において、中央と、中央の両側とに分離している。第1ベース領域中央部103aの両側に、第1ベース領域左側部103bと第1ベース領域右側部103cとがある。電流拡散層104は、分離した第1ベース領域103の間を埋めている。
【0024】
トレンチ電流拡散層105と第2ベース領域106とは、第1ベース領域103と電流拡散層104の上に形成されている。トレンチ電流拡散層105は、炭化珪素からなる。トレンチ電流拡散層105は、高不純物濃度の第1導電型を有する。第2ベース領域106は、トレンチ電流拡散層105の両側に形成されている。第2ベース領域106は、炭化珪素からなる。第2ベース領域106は、高不純物濃度の第2導電型を有する。
【0025】
ボディー領域107は、トレンチ電流拡散層105と第2ベース領域106との上に形成されている。ボディー領域107は、炭化珪素からなる。ボディー領域107は、第2導電型を有する。ソース領域108は、ボディー領域107の上に形成されている。ソース領域108は、炭化珪素からなる。ソース領域108は、高不純物濃度の第1導電型を有する。ソース領域108は、ボディー領域107の両側に形成されている。コンタクト領域109は、炭化珪素からなる。コンタクト領域109は、ソース領域108とほぼ同じ高さを有する。コンタクト領域109は、高不純物濃度の第2導電型を有する。
【0026】
トレンチ110は、ソース領域108の表面からソース領域108とのボディー領域107を貫通しトレンチ電流拡散層105に達するように略垂直に形成されている。ゲート絶縁酸化膜111は、トレンチ110の内壁面とソース領域108の一部を覆うように形成されている。ゲート電極112は、トレンチ110内において、絶縁酸化膜の中に形成されている。ゲート電極は、トレンチ内に設けられている。ソース電極113は、ソース領域108およびコンタクト領域109の一部を覆う。ソース電極113は、ボディー領域107に電気的に接続されている。ドレイン電極114は、基板101の裏面側に形成されている。
【0027】
トレンチ110の底面は分離した第1ベース領域103の中央部103aと垂直方向に離間して重なり合っている。中央部103aの水平方向(トレンチの底面と平行な方向)の幅はトレンチ110の底面の幅よりも大きい。
【0028】
トレンチ110の底面と、分離した第1ベース領域103の中央部103aとは、垂直方向に0.05μm以上0.5μm以下離間していてもよい。中央部103aの水平方向の幅は、トレンチ110の底面の幅よりも0.1μm以上0.5μm以下大きくてもよい。電流拡散層104の不純物濃度は1.0×10
16cm
-3以上4.0×10
17cm
-3以下であってもよい。第1ベース領域103の中央部103aと、各両側部の第1ベース領域103(第1ベース領域左側部103bまたは第1ベース領域右側部103c)との間にある電流拡散層104の水辺方向の幅は0.7μm以上1.5μm以下であってもよい。
【0029】
ボディー領域107の垂直方向(トレンチの底面に垂直な方向)の厚みは0.5μm以上1.5μm以下であってもよい。ボディー領域107の不純物濃度は、1.0×10
16cm
-3以上3.0×10
17cm
-3以下であってもよい。ソース領域の垂直方向の厚みは、0.1μm以上0.4μm以下であってもよい。ソース領域の不純物濃度は、2.0×10
18cm
-3以上1.0×10
20cm
-3以下であってもよい。トレンチ電流拡散層105の垂直方向の厚みは0.3μm以上1.0μm以下であってもよい。トレンチ電流拡散層105の不純物濃度は、5.0×10
16cm
-3以上1.0×10
17cm
-3以下であってもよい。
【0030】
第1ベース領域中央部103aと、第1ベース領域の両側部の各々(第1ベース領域左側部103bまたは第1ベース領域右側部103c)との電流拡散層104を挟む離間距離122(第1離間距離)は、第1ベース領域中央部103aと第2ベース領域106の側部との電流拡散層104を挟む水平方向の離間距離123(第2離間距離)よりも大きくてもよい。離間距離122と水平方向離間距離123との差は、0.2μm以上で、第1ベース領域の厚み以下であり、かつ0.6μm以下であってもよい。
【0031】
第1ベース領域中央部103aと第1ベース領域左側部103bとは、その長手方向において各第1ベース領域接続部3dにより周期的に接続されていてもよい(
図1B参照)。第1ベース領域中央部103aと第1ベース領域右側部103cとは、その長手方向において各第1ベース領域接続部3dにより周期的に接続されていてもよい。第1ベース領域の長手方向に隣接する第1ベース領域接続部3dの接続間隔(つまり長手方向において隣り合う2つの第1ベース領域接続部の間隔)は10μm以上200μm以下であってもよい。
【0032】
次に、
図2A−
図2Kに従って、SiCトレンチ型半導体装置の作製方法を説明する。
図2Aは、4H-SiC基板の作製を示した図である。最初に、150mmφの4H-SiC{0001}基板を用意する。この基板は、改良レーリー法により成長させたインゴットをスライスし、鏡面研磨することにより作成したものである。基板の抵抗率は0.017Ωcmで、厚さは400μmである。
【0033】
図2Bは、SiCエピタキシャル成長によるドリフト層の作製を示した図である。CVD(Chemical Vapor Deposition)装置で、基板101の上に窒素ドープ濃度が8×10
15cm
-3で、膜厚が10μmの1200V耐圧の素子用のドリフト層を作製する。基板温度は1550℃、原料ガスは、シラン、プロパン、ドーパントガスは、窒素、キャリアガスは水素であり圧力は100mbar(10kPa)とする。
【0034】
図2Cは、イオン注入のためのマスク形成を示す図を表しており、例えば膜厚が1.6μmのTEOS酸化膜115を形成する。RFエッチング(CHF
3+O
2)で、スルー膜80nmを残して注入部をエッチングする。
【0035】
図2Dは、基板上のドリフト層102にスルー膜を介してAlイオン注入を行い、第1ベース領域103を作製する工程図である。第1ベース領域中央部103aを作製する所定のマスクをして、濃度2×10
18cm
-3以上9×10
18cm
-3以下のAlイオン注入を、深さ0.5以上1.5μm以下で行う。
【0036】
図2Eは、第1ベース領域103を作製したマスク酸化膜を除去してから、再度80nmスルー膜を形成して、スルー膜を通して窒素イオンを注入して電流拡散層104を作成する工程を示す図である。電流拡散層104の濃度は2×10
16cm
-3以上2×10
17cm
-3以下である。濃度が2×10
16cm
-3より小さいと抵抗が高くなり、電流拡がり層の役割を果たさない。濃度が2×10
17cm
-3より大きいと第1ベース領域103との間でアバランシェ絶縁破壊が発生する。電流拡散層104の濃度は、より好ましくは3×10
16cm
-3以上1×10
17cm
-3以下である。電流拡散層104の水平方向の幅は0.7μm以上1.5μm以下が望ましい。電流拡散層104は、ドリフト層102に、窒素イオンを注入して形成される。
【0037】
図2Fは、n型エピタキシャル膜(トレンチ電流拡散層105)を、所定の濃度、厚みを0.3μm以上1.0μm以下で作製し、その後第2ベース領域106を作製する工程図を表している。トレンチ電流拡散層105の濃度は、2×10
16cm
-3以上2×10
17cm
-3以下の間である。濃度が2×10
16cm
-3より小さいと高抵抗になり、トレンチ電流拡散層の機能を果たさない。濃度が2×10
17cm
-3より大きいとpエピタキシャル層に形成されるチャネルの閾値を下げるという悪影響が発生する。濃度はさらに望ましくは5×10
16cm
-3以上1×10
17cm
-3以下である。トレンチ電流拡散層105の厚みは、0.3μm以上、1.0μm以下が望ましい。厚みが0.3μmより小さいと、横方向に広がるための抵抗が高くなりトレンチ電流拡散層の役割を果たさなくなる。厚みが1.0μmより大きいと、ドリフト層から電界がトレンチの酸化膜にまで進入して酸化膜の信頼性が落ちる。トレンチ電流拡散層105は濃度を調整してエピタキシャル成長のみで作成できるが、エピキシャル成長で膜を形成後、濃度をイオン注入で制御することもできる。エピタキシャル成長のみで作製するとイオン注入ダメージがなく、トレンチ電流拡散層105の抵抗が下がり望ましい。エピタキシャル成長後に、イオン注入で濃度を最適化する場合は、トレンチ電流拡散層5とチャネルの出口部に近い、上部の濃度を上げて、チャネルから電流の広がりを促進すると同時に、第1ベース領域に近いトレンチ電流拡散層105の下部の濃度を下げることで、電界が第1ベース領域の間から進入してアバランシェ絶縁破壊が発生することを抑制できる。第2ベース領域106は、所定のマスクをして(図示せず)、濃度が2×10
18cm
-3以上9×10
18cm
-3以下、深さが0.5μm以上1.0μm以下で、Alイオン注入すると第2ベース領域6が両側に作製される。
【0038】
図2Gは、ボディー領域107のためのp型エピタキシャル膜の作製を示す工程図である。p型エピタキシャル膜は、濃度を1×10
16cm
-3以上3×10
17cm
-3以下とし、厚みを0.5μm以上1.5μm以下とし、望ましくは0.7μm以上1.3μm以下とする。厚みが0.7μmより小さいと短チャネル効果が発生する。また厚みが1.3μmより大きいと、チャネル抵抗が大きくなりすぎる。あるいは、nエピタキシャル層を形成して、イオン注入でその一部をp層にしてもよい。
【0039】
図2Hは、ソース領域8とコンタクト領域109の作製を示す工程図である。ソース領域108は、ボディー領域107のためのp型エピタキシャル膜に燐イオンを注入して作製する。濃度は2×10
18cm
-3以上1×10
20cm
-3以下とし、深さは0.1μm以上0.4μm以下として高濃度n型ソース領域108を形成する。この濃度より小さいとソース電極の接触抵抗が上昇する。この濃度より大きいと結晶性を劣化させてリーク電流が増えるだけでなく、イオン注入による不純物の広がりで実質のチャネル長が短くなり閾値を下げてしまう。
【0040】
続いて、コンタクト領域109形成のための酸化膜マスクを形成後、Alを部分的にイオン注入してコンタクト領域109を作製する。濃度は2×10
18cm
-3以上10×10
18cm
-3以下とし、深さは0.1μm以上1.5μm以下として、高濃度p型コンタクト領域を形成する。イオン注入の深さはp-層に、より望ましくはp+層まで深く注入するのが良い。この後、表面酸化膜を除去し、保護膜を形成してAr雰囲気中、活性化アニールを行う。温度は1600℃以上1750℃以下とし、時間は5分以上30分以下で行う。
【0041】
図2Iは、トレンチ110を形成する工程図である。まず膜厚が1.6μmのTEOS酸化膜をエッチングマスクとして形成し、RFエッチング(CHF
3+O
2)を用いてトレンチエッチング用開口を形成する。その後、該酸化膜をマスクとしてSF
6とO
2ガスを用いてエッチングによりトレンチ110を形成する。
【0042】
トレンチ底部はn型エピタキシャル膜(トレンチ電流拡散層105)に露出し、トレンチ直下の第1ベース領域中央部103aに接しないように、かつ、トレンチ上から見て第1ベース領域中央部と重複しその両翼で均等に覆われるようにする。トレンチ深さは0.5μm以上2.3μm以下とする。トレンチ幅は0.5μm以上3μm以下とする。トレンチ底部と第1ベース領域中央部103aの離間距離は0.05μm以上0.5μm以下とする。
【0043】
図2Jは、ゲート絶縁酸化膜11を作製する工程を示す図である。絶縁酸化膜111は、温度1100℃以上1370℃以下で、O
2ドライ酸化により、厚みが50nm以上150nm以下になるように作製する。その後、温度1100℃以上1370℃以下、N
2O(N
2 10%希釈)にて、30分以上360分以下の間アニールする。あるいは、堆積酸化膜で厚み50nm以上150nm以下とした後、同条件でアニールしてもよい。
【0044】
図2Kは、本開示のSiCトレンチ型半導体装置を表す完成図である。ポリシリコン製ゲート電極112を作製し、ソース電極113をNi/Tiスパッタ形成後、1000℃で2分のRTA(Rapid Thermal Anneal)を行う。
【0045】
さらに、TEOS/PSGを材料とする層間絶縁膜118を作製する。次に、AlSiをスパッタ法で形成してソース配線119とする。次に、窒化膜/ポリイミドからなる保護膜120を作製する。最後にドレイン電極114を作製して本開示のSiC半導体装置が完成する。
【0046】
以上のように構成される炭化珪素トレンチ型MOSFETでは、ゲート電極112に正の電圧を印加した場合には、トレンチ110側壁のゲート絶縁膜111と接するp型炭化珪素チャネル層(ボディー領域107)の界面近傍付近に反転層が形成され、MOSFETがオンする。チャネルから流れ出た電子はトレンチ電流拡散層105に拡がり、第1ベース領域103の間を経てドリフト層102に流れ出る。トレンチ電流拡散層105と電流拡散層104の導電性が高いことで低いオン抵抗を実現できる。
【0047】
一方、ゲート電極112に電圧を印加しない場合には、埋込領域(pベース領域)とドリフト層102の間に広がる空乏層に電界がかかる。アバランシェ発生時にはトレンチ電流拡散層105でゲート酸化膜111が離間しているため高い電界がかからない。また、埋込領域とボディー領域107でソース領域108が離間されていることでソース領域108の電界が緩和され、ソース領域108の濃度を下げてもパンチ・スルーによるアバランシェの発生を抑制できる。
【0048】
本開示では、SiCトレンチ型半導体装置のトレンチ底直下に、トレンチ底から離間して、トレンチ底を保護するようにpベース層からなる第1ベース領域中央部103aをn-ドリフト層102に埋め込んでいる。従って、本開示では低濃度でかつエピタキシャル層であるトレンチ電流拡散層105の上に酸化膜が形成されている。
【0049】
この利点は、離間しないでイオン注入層である第1ベース領域中央部103aがトレンチ底に露出した状態で酸化膜形成のための高温熱処理をすると、イオン注入層がバンチングし粗面になり、局所的な電界集中が発生し、耐圧低下、リーク電流が増す等の問題が発生することを避けられることである。
【0050】
また、離間すると、絶縁酸化膜111と、高濃度のp層である第2ベース領域106と第1ベース領域中央部103aとの間に低濃度のn層であるトレンチ電流拡散層105が挟まれることにより、絶縁酸化膜111への電界集中が低下されることになる。従って、離間距離は、第1ベース領域中央部103aのイオン注入層の表面がバンチングしない程度に離れていればよい(イオン注入層の表面がトレンチ底に直に露出しない程度)。ただし、離間しすぎて電流パスが長くなりオン抵抗特性が高くならない程度がよい。
(実施形態1−2)
図3は、実施形態1−1で作製したSiC半導体装置のトレンチ底に設置した第1ベース領域中央部103aの幅に対する耐圧(ブレークダウン電圧)と特性オン抵抗との関係を示す図である。トレンチ110の底幅を1μmに固定して、第1ベース領域中央部103aの幅を0(無し)、1μm(トレンチ10の底と同じ幅)、1.4μm(片側0.2μm、全体で0.4μm)、1.8μm(片側0.4μm、全体で0.8μm)の4条件のMOSFETを製作した。
【0051】
第1ベース領域中央部103aの幅が1.8μmと1.4μmで製作したMOSFETについては、それぞれ、1185Vと1216Vであり設計耐圧1200Vはほぼ維持されていた。しかし、トレンチ底幅と同幅にした第1ベース領域中央部103aの幅が1.0μmおよび無い(0μm)場合については、耐圧はそれぞれ570V、330Vと半分以下に極端に低下(悪化)することが分かった。
【0052】
一方の特性オン抵抗は、第1ベース領域中央部103aが無い(0μm)場合やトレンチ幅と同幅である第1ベース領域中央部103aの幅(PBA1幅)が1.0μmの場合は、特性オン抵抗が3.2mΩ・cm
2から2.6mΩ・cm
2に低下(良化)した。
【0053】
図4は、
図1Aで示す第1ベース領域右側部103cまたは第1ベース領域左側部103bと、中央部との間の距離122(PBA1間距離)が1.3μm、トレンチ幅が1μmの場合に、第1ベース領域中央部103aの幅121(PBA1幅)を変えた場合の、トレンチ部酸化膜最大電界強度(Eox)のドレイン電圧依存性を示している。第1ベース領域中央部103aの幅を1μmより大きくすると、Eoxを下げることができる。酸化膜の信頼性を考えると、Eoxは4MV/cm以下が必要であり、望ましくは2MV/cm以下である。
【0054】
図5は、特性オン抵抗(単位面積あたりのオン抵抗で、以下、オン抵抗と略す)と耐圧の第1ベース領域中央部103aの幅121の依存性を示している。第1ベース領域中央部103aの幅121がトレンチ幅と同じ場合、トレンチ下部に電界が集中して耐圧が落ちるため、トレンチ幅以上が必要である。
【0055】
別途、第1ベース領域中央部103aと第2ベース領域の水平方向の離間距離123を0.9μmまで狭くすると、電界がトレンチ部まで進入しないため第1ベース領域中央部103a幅をトレンチ幅の1μmまで狭めても耐圧は維持できた。
【0056】
しかし第1ベース領域中央部103aと第2ベース領域の水平方向の離間距離123を狭めるとオン抵抗が上がるという問題が発生するため低いオン抵抗と耐圧を両立するには、第1ベース領域中央部103a幅はトレンチ幅以上が必要である。望ましくは、バラツキも考え耐圧維持にはトレンチ110からの張り出しは0.1μm以上必要である。
【0057】
一方、第1ベース領域中央部103aの幅121は2μm程度までは、オン抵抗が上がらないが、それ以上になると、トレンチ電流拡散層105での電流の横方向流れの抵抗成分が無視できなくなる。すなわち、トレンチからの張り出しは0.5μm以下が望ましい。
【0058】
よって以上のことから、第1ベース領域中央部103aの幅はトレンチ底幅より、0.2μm以上2μm以下、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下程度広いことが望ましい。
【0059】
図5は、オン抵抗特性と耐圧特性のセルピッチ依存性を示している。セルピッチを縮めても耐圧を維持できて、オン抵抗を下げることができることから、
図4、
図5に示された各依存性はセルピッチを縮小しても維持できることがわかった。
(実施形態1−3)
実施形態1−1と同じ工程で、第1ベース領域左側部103bまたは右側部103cと第2ベース領域106の端部の重なりとオン抵抗の関係を検討した。
【0060】
図7は第1ベース領域103と第2ベース領域106が段差構造(階段構造)である場合のシミュレーションにおけるチャンネル電流の広がりと、ドレイン電流とドレイン電圧との関係を表す図である。
【0061】
第1ベース領域中央部103aと第2ベース領域の端部との距離より第1ベース領域中央部103aと第1ベース領域左側部103bまたは右側部103cとの距離より大きくして横たわる空間を広げ、電流通路を広げることで、オン抵抗を3mΩ・cm
2と低減した。
【0062】
第1ベース領域103と第2ベース領域106の段差は0.2μm以上、第1ベース領域103の厚み以下が望ましい。0.2μmより小さいと電流が拡がる効果がなく第1ベース領域103の厚みより大きくても、低オン抵抗化における段差の効果が現れない。具体的には0.6μmより大きくても効果がない。
(実施形態1−4)
図6は、第1ベース領域中央部と第2ベース領域の水平方向の離間距離123がc=0.9μmの場合の、オン抵抗特性のボディー領域7を形成するp型エピタキシャル膜の濃度依存性を示している。
【0063】
第1ベース領域中央部103aと第2ベース領域106の水平方向の離間距離123の寸法とMOS界面条件を変えることで、高濃度p層でも低いオン抵抗を実現できることがわかる。p型エピタキシャル膜の濃度は、1×10
16cm
-3以上3×10
17cm
-3以下である。
(実施形態1−5)
図1Bは
図2Kの半導体装置において、第1ベース領域103を、IB-IB線で、基板101と平行に切断した平面を表している。また、
図2Kの半導体装置を
図1BにおけるIA-IA線で基板101と垂直に切断した断面が
図1Aである。
【0064】
図1Bにおいてトレンチ110は第1ベース領域中央部103aと重なるように配置され、トレンチ110は第1ベース領域中央部103aの長手方向に延在している。また、第1ベース領域中央部103aと第1ベース領域左側部103b、および、第1ベース領域中央部103aと第1ベース領域右側部103cは、第1ベース領域接続部103dで接続されている。第1ベース領域接続部103dは、
図2Dにおける第1ベース領域103の作成時に電流拡散層104に所定のマスク(図示せず)をして、同時に作製される。
【0065】
第1ベース領域103の接続は、第1ベース領域の第1ベース領域中央部103aと、第1ベース領域左側部103bと、第1ベース領域右側部103cとの電位を同じに保つために行われる。第1ベース領域103の接続は、同じチップ内の面内で電位のばらつきを抑えるため、同一接地ピッチで周期的に行う。
【0066】
図8に、第1ベース領域接続部103dの接地ピッチと特性オン抵抗および帰還容量(Crss)の関係を表した。第1ベース領域103の接地ピッチ124を短縮すると、第1ベース領域接続部103dにより電流拡散層104が少なくなるため、その分オン抵抗は上昇する。逆に、第1ベース領域103の接地ピッチ124を長くすると接続部103dが少なくなり、半導体装置の高速動作では、トレンチ直下の第1ベース領域中央部103aの接地が不十分なため帰還容量が大きくなり発振等で高速動作ができない。よって、接地ピッチは、
図8より、10μm以上200μm以下がよいことがわかる。
【0067】
<実施形態2>
本開示では、半導体の外周かつ最表面となるp-層に不純物濃度の高いp+領域を埋め込み、終端構造を作製する。従って、当該半導体装置作製工程で最表面となるp-層が作製されていれば半導体の種類によらず適用が可能である。
【0068】
特に、発明者が出願中の発明、特願2014−134898に開示された、
図6に示す縦型SiC半導体装置の外周終端構造に好適である。
図6において、ドリフト層の上にn-エピタキシャル膜で形成されるトレンチ電流拡散層105の上層に、第2ベース領域106がp-エピタキシャル膜で形成され、その外周構造がそのまま本開示の外周終端構造形成に利用できるからである。
(実施形態2−1)
本開示の最も簡単な構成、半導体の外周かつ最表面となるp-層に不純物濃度の高いp+領域を埋め込んだ外周終端構造を説明する。
図9Aに比較のために従来構造の外周終端構造の概略図を、
図9Bおよび
図9Cに本開示の外周終端構造の概略図を示す。
【0069】
図9Aに示す従来の外周終端構造の作製の概略を説明する。炭化珪素単結晶基板は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素単結晶からなる。炭化珪素基板の最大径は、たとえば75mmφであり、好ましくは100mmφ以上である。炭化珪素基板、たとえば{0001}面または{0001}面から8°以下オフした面である。炭化珪素単結晶基板の厚みは、たとえば400μmで、抵抗率はたとえば0.017Ωcmである。
【0070】
次に炭化珪素単結晶基板の上に、シラン、プロパンを原料、ドーパントガスを窒素、キャリアガスを水素とするCVD装置で、炭化珪素単結晶基板にドナー濃度を8×10
15cm
-3、厚み10μmのエピタキシャル層を形成すると、1200V耐圧の素子用のドリフト層となる。
【0071】
そのエピタキシャル層上にイオン注入により終端耐圧構造を形成する。トランジスタ動作を行う活性部を囲むように、レジストマスク(図示せず)を利用して、高濃度層201および高濃度層202の活性部境界領域をアルミニウムのイオン注入により形成する。濃度は8×10
19cm
-3である。
【0072】
さらに、レジストマスク(図示せず)により、第1電界緩和層204、第2電界緩和層205の領域を3×10
7cm
-3のアルミニウムのイオン注入で同時に形成し、イオン注入マスクにより(図示せず)第1電界緩和層204の領域だけ、3×10
17cm
-3のアルミニウムを追加して注入して濃度差を形成する。
【0073】
この第1電界緩和層204、第2電界緩和層205のイオン注入の際には、高濃度層201の部分と重なるようにイオン注入を行うことで、お互いの領域の間に薄い濃度領域が発生することを避けるようにする。第1電界緩和層204、第2電界緩和層205の幅はいずれも40μm、深さはいずれも0.7μmである。
【0074】
最後に最外周端部にドナー濃度5×10
19cm
-3でリンの注入を行い、チャネルストップ層206を作製する。そして1700℃、20分の活性化アニールを行うと、従来の外周終端構造が形成される。チャネルストップ層206は、1×10
18cm
-3以上1×10
21cm
-3以下のドナー濃度層の範囲で適宜選択すればよい。
【0075】
次に、
図9Bに示す本開示の外周終端構造の作製の概略を、従来例を参照しながら、主に相異点を説明する。本開示では、第1電界緩和層204、第2電界緩和層205に加えてp-電界拡がり層207が追加構成される。p-電界拡がり層207とドリフト層203の間に構成されるpnダイオードで終端部の電界を緩和することができる。
【0076】
まず、従来例に示した基板101の上に作製されたドリフト層203上に、シラン、プロパンを原料、ドーパントガスをガス化したトリメチルアルミニウム、キャリアガスを水素とするCVD装置で、後に高濃度層201、第1電界緩和層204、第2電界緩和層205およびp-電界拡がり層207となる領域に、アクセプター濃度が5×10
15cm
-3、厚みが0.5μmのp-エピタキシャル層(図示せず)を形成する。p-電界拡がり層207はそのままの濃度で残るため、3×10
15cm
-3以上3×10
17cm
-3以下のアクセプター濃度の範囲で適宜選択する。
【0077】
その上に、イオン注入により本開示の終端耐圧構造を形成する。まず、トランジスタ動作を行う活性部を囲むように、レジストマスク(図示せず)を利用して高濃度層201、高濃度層202の活性部境界領域をアルミニウムのイオン注入により形成する。濃度は8×10
19cm
-3である。
【0078】
以下、従来例の
図9Aの作製方法と同じ作製方法で新構造の
図9Bの、第1電界緩和層204、第2電界緩和層205を作製する。p-エピタキシャル層のうち、第1電界緩和層204、第2電界緩和層205を作製して残った領域がp-電界拡がり層207となる。
【0079】
第1電界緩和層204、第2電界緩和層205の領域にイオン注入の際には、高濃度層201の部分と重なるようにイオン注入を行うことで、お互いの領域の間に薄い濃度領域が発生することを避けるようにするのは従来例と同じである。第1電界緩和層204、第2電界緩和層205、およびp-電界拡がり層207の幅はいずれも40μm、深さはいずれも0.7μmとした。
【0080】
最後に最外周端部にドナー濃度5×10
19cm
-3でリンの注入を行い、チャネルストップ層206を作製する。そして1700℃、20分の活性化アニールを行うと、本開示の外周終端構造が形成される。以上のようにして、半導体装置の外周終端構造が製造される。
【0081】
半導体装置の外周終端構造は、半導体装置の表面外周部に耐圧維持のための電界緩和層を有する。ドリフト層203は、第1導電型薄膜により形成されている。第2導電型薄膜は、第1導電型薄膜の上に形成されている。第2導電型薄膜は、半導体装置の外周に向かって濃度が低下するように異なる濃度を有して連続する高濃度層201と、第1電界緩和層204と、第2電界緩和層205と、電界拡がり層207とを有する。つまり、第2導電型薄膜は、第1不純物濃度を有する高濃度層と、高濃度層の外周において高濃度層と連なりかつ第1不純物濃度よりも低い第2不純物濃度を有する第1電界緩和層と、第1電界緩和層の外周において第1電界緩和層と連なりかつ第2不純物濃度よりも低い第3不純物濃度を有する第2電界緩和層と、第2電界緩和層の外周において第2電界緩和層と連なり第3不純物濃度よりも低い第4不純物濃度を有する第1電界拡がり層と含む。チャネルストップ層206は、表面外周部の最終端に位置し、電界拡がり層207と連結され、ドリフト層203より高い不純物濃度を有し、第1導電型を有する。電界緩和層は3個以上でもよい。
【0082】
以上のように作製した新構造を従来構造と比較すると、新構造では、第1電界緩和層204と第2電界緩和層205は、相対的にp-層の中にp+層が形成されていることにより、その境界はpn接合ではなく、高濃度p層、低濃度p層の接合、いわゆるHigh-Low接合となる。
【0083】
このため、高濃度層201からチャネルストップ層206までの間は、ビルトインポテンシャルが発生しないため、なだらかな電界分布になり電界集中が発生しない。1200V耐圧の素子用のドリフト層の上に作製した従来の外周終端構造の最大耐圧が1350Vに対して、新外周終端構造では最大耐圧は1440Vである。
【0084】
また、実施形態2−1の変形例として、
図9Cに示すように、ドリフト層203とp-エピタキシャル層(図示せず)の間に、n電界拡がり層210を挿入してもよい。つまり、ドリフト層203と第2導電型薄膜の間に、ドリフト層203よりも高不純物濃度の第1導電型薄膜により形成される第1導電型電界拡がり層210(第2電界付拡がり層)があってもよい。第2導電型薄膜および第1導電型電界拡がり層210は、エピタキシャル成長法、イオン注入法いずれの方法で作製してもよい。以上の構造により、さらに電界集中を緩和させて素子の耐圧向上が図れる。
(実施形態2−2)
次に、実施形態2−1で作製した基本的な本開示の外周終端構造に、さらに電界集中緩和のための空間変調を加えた本開示の実施形態2−2について、
図10Bを用いて、適宜、実施形態2−1を示す
図9Bを参照しながら、説明する。
【0085】
本開示では、シラン、プロパンを原料、ドーパントガスを窒素、キャリアガスを水素とするCVD装置で、炭化珪素基板にドナー濃度を3×10
15cm
-3、実施形態1−1の厚み10μmを30μmに増やしたエピタキシャル層を形成する。エピタキシャル層としては、3300V耐圧の素子用のドリフト層を利用する。
【0086】
従来の、
図10Aに示された開示では、外周終端部での電界集中をさらに抑制するため、第1電界緩和層204と第2電界緩和層205の境界の両側付近に空間変調された第1電界緩和層204a、204b、204c、204dを設け、および、第2電界緩和層205の外側に空間変調された第2電界緩和層205a、205b、205c、205dを形成していた。
【0087】
第1電界緩和層204a、204b、204c、204dのそれぞれの幅は、例えば、12μm、9μm、6μm、3μmで、それぞれの間隔は、順に3μm、6μm、9μm、12μmである。このように間隔を連続的に変化させることで、
図10Bに示す第1電界緩和層204の領域と第2電界緩和層205の領域の境界、および、第2電界緩和層205とp-電界拡がり層207の境界に電界が集中することを避けられた。
【0088】
この従来の空間変調された第1電界緩和層204a〜204d、および、第2電界緩和層205a〜205dは、実施形態2−1と比較される従来例において第1電界緩和層204、第2電界緩和層205を作製する際のレジストマスク(図示せず)を空間変調することで作製することができる。
【0089】
実施形態2−2に係る外周終端構造を作製するには、まず、基板101の上に形成した3300V耐圧の素子用のドリフト層203上に、シラン、プロパンを原料、ドーパントガスをガス化したトリメチルアルミニウム、キャリアガスを水素とするCVD装置で、アクセプター濃度を5×10
15cm
-3、0.5μmのp-エピタキシャル層を形成する。
【0090】
その上に、イオン注入により終端耐圧構造を形成する。まず、トランジスタ動作を行う活性部を囲むように、レジストマスクを利用して(図示せず)、高濃度層201、高濃度層202の活性部境界領域を濃度8×10
19cm
-3でアルミニウムのイオン注入により形成する。
【0091】
以下、従来の
図10Aの作製方法と同じ作製方法で新構造
図10Bを作製すればよい。
第1電界緩和層204および第2電界緩和層205は、少なくともその外周側に隣接する電界緩和層または電界拡がり層207の中で、外周に向かって段段と消滅するように空間変調されて埋め込まれた構造をさらに有していてもよい。つまり、半導体装置は、第1電界拡がり層207の中に位置する複数の埋込領域205a〜205dをさらに有していてもよい。複数の埋込領域の各々の幅は、半導体装置の外周に向かうにつれて小さくなっている。複数の埋込領域の各々は、第2導電型である。複数の埋込領域のうち、隣り合う2つの埋込領域同士の間隔は、半導体装置の外周に向かうにつれて大きくなっていてもよい。
【0092】
図12Aおよび
図12Bに、それぞれ新構造(
図10B)と従来構造(
図10A)の濃度分布を示す。従来構造ではドリフト層のn-に、p+層が形成されて境界部分211が構成されている。一方、新構造では、相対的にp-層の中でp+層が形成されて境界部分212が構成されている。これにより、その境界はpn接合ではなく、高濃度p層、低濃度p層の接合、いわゆるHigh-Low接合であることがわかる。
【0093】
このため、ビルトインポテンシャルが発生しないため、なだらかな電界分布になり電界集中が発生しない。そのことを次に示す。
【0095】
図13Aおよび
図13Bをみると、従来構造(
図10A)の電界が集中した境界部分213に比べて、新構造(
図10B)では境界部分214においては電界集中が抑制されており、耐圧がp層底部全体で維持され、端部での絶縁破壊を抑制できていることがわかる。
【0096】
3300V耐圧の素子用のドリフト層上に作製した従来構造の最大耐圧が3600Vに対して、新構造では最大耐圧は4050Vであった。
(実施形態2−3)
実施形態2−1の変形例(
図9C)に示したように、ドリフト層203とp-エピタキシャル層(図示せず)の間に、n電界拡がり層210を挿入するとさらに電界集中を緩和させて素子の耐圧向上が図れる。
【0097】
図11Bを参照して、実施形態2−1の変形に実施形態2−2を適用した実施形態2−3について、主に相違点を中心に説明する。
【0098】
実施形態2−2と同様、基板として、シラン、プロパンを原料、ドーパントガスを窒素、キャリアガスを水素とするCVD装置で、炭化珪素基板にドナー濃度が3×10
15cm
-3、厚みが30μmのエピタキシャル層を形成する。エピタキシャル層は、3300V耐圧の素子用のドリフト層である。
【0099】
必要に応じてトランジスタ部を作製するイオン注入工程のあと、同じCVD装置でドナー濃度を5×10
16cm
-3、厚み0.5μmのエピタキシャル層を形成し、n電界拡がり層210を作製する。
【0100】
その上に、シラン、プロパンを原料、ドーパントガスをガス化したトリメチルアルミニウム、キャリアガスを水素とするCVD装置で、アクセプター濃度が1×10
17cm
-3、厚みが1.6μmのp-エピタキシャル層(図示せず)を形成する。
【0101】
さらに、レジストマスク(図示せず)により、第1電界緩和層204、第2電界緩和層205(第2電界緩和層205a、205b、205c、205dを含む)の領域を4×10
17cm
-3のアルミニウムのイオン注入で形成し、イオン注入マスク(図示せず)により第1電界緩和層204(第1電界緩和層204a、204b、204c、204dを含む)の領域だけ、4×10
17cm
-3のアルミニウムを追加して注入して濃度差を形成する。高濃度層201の部分と重なるようにイオン注入を行うことで、お互いの領域の間に薄い濃度領域が発生することを避けるようにする。第1電界緩和層204、第2電界緩和層205の幅はいずれも40μm、深さはいずれも0.7μmである。
【0102】
最後に最外周端部にドナー濃度5×10
19cm
-3でリンの注入を行い、チャネルストップ層206を作製し1700℃、20分の活性化アニールを行うと
図11Bに示す新構造が完成する。従来の
図11A(
図10Aと同じ)は最大耐圧が3600Vに対して、新構造では最大耐圧は4150Vであった。複数の埋込領域205a〜205dの各々は、第1電界拡がり層207の内部に配置されている。複数の埋込領域205a〜205dの各々は、n電界拡がり層210から離間していてもよい。
(実施形態2−4)
以上説明した外周終端構造の端部に電界集中が発生しない本開示に固有の効果は、通常の平面型または縦型トランジスタあるいはダイオードにも適用できるが、特にトレンチ構造のトランジスタに好適である。トレンチ構造のトランジスタに必要なドリフト層上に作製されるp層、あるいは、n層とp層を流用することができて、新たな付加工程が必要としないからである。
【0103】
図1Aおよび
図2Kは本開示の縦型SiC半導体装置の断面図を表している。
図1Aおよび
図2Kの縦型SiC半導体装置においては、n-のドリフト層102の上に、さらに低濃度のn-のトレンチ電流拡散層105がエピタキシャル薄膜で形成され、次にボディー領域107がp-エピタキシャル薄膜で形成される。
【0104】
従って、
図1Aのドリフト層102は本開示のドリフト層203として、
図1Aのトレンチ電流拡散層105は本開示のn電界拡がり層210として、
図1Aのボディー領域107は本開示のp-エピタキシャル層(図示せず)として構成すれば、本開示のn電界拡がり層210の作製、p-エピタキシャル層の作製の追加の2工程が不要となり、実施形態2−3(
図11B)が作製される。
【0105】
また、トレンチ電流拡散層105が存在しないトレンチ構造のトランジスタであれば、
図1Aのボディー領域107を本開示のp-エピタキシャル層とし、n電界拡がり層210のない本開示の実施形態2−1(
図9B)または実施形態2−2(
図10B)に示す構造が作製される。
【0106】
半導体装置はトレンチを有するSiC半導体素子であってもよい。ドリフト層を形成する第1導電型薄膜は、SiC半導体素子のドリフト層を形成する第1導電型薄膜であってもよい。言い換えれば、第1導電型薄膜は、炭化珪素半導体素子のドリフト領域を含む。第2導電型薄膜は、SiC半導体素子のボディー領域を形成する第2導電型薄膜であってもよい。第2導電型薄膜は、炭化珪素半導体素子のボディー領域を含んでいてもよい。第1導電型電界拡がり層を形成する高濃度薄膜は、SiC半導体素子のトレンチ電流拡散層を形成する第1導電型低濃度薄膜であってもよい。言い換えれば、第1導電型電界拡がり層(第2電界拡がり層)は、炭化珪素半導体素子のトレンチ電流拡散層を含んでいてもよい。
【0107】
本開示は、半導体素子の外周終端構造の端部に電界集中が発生しない構造であり、通常の平面型または縦型トランジスタあるいはダイオードに適用でき、特にトレンチ構造のトランジスタに好適であり、製造工程の短縮化に利用できる。
【0108】
<実施形態3>
本開示による半導体装置の製造方法では、SiCからなるウエハにおいてサブトレンチを抑制しながらトレンチ部を形成加工し、トレンチ部の側壁にできたダメージ部を除去するために準熱平衡状態で水素アニールすることが特徴となる。
【0109】
固体SiCソースが存在する準熱平衡状態でトレンチ部を水素アニールすることにより、SiCからなるウエハのトレンチ側壁およびその底部を平滑化しながら粗面を抑制し、同時にトレンチ肩部を丸化することができる。
【0110】
こうしてトレンチ側壁およびその底部が平滑化することにより、素子にTDDB(経時的絶縁破壊)の劣化を発生させず、信頼性の向上が図ることができる。
【0111】
また、トレンチ肩部を丸化することにより、ゲート酸化膜やゲート電極のカバレッジが良くなり、電界集中を抑制し、リーク電流低減に効果がある。
(実施形態3−1)
図1Aに、トレンチを有する縦型炭化珪素半導体装置の一例を示す。
【0112】
トレンチを有する縦型炭化珪素半導体装置100は、トレンチの幅が、0.2μm以上0.6μm以下である。トレンチの上部角の曲率半径が0.1μm以上である。トレンチの幅は、0.5μm以上であってもよい。トレンチの上部角の曲率半径は、0.1μm以上であってもよい。トレンチの幅は、0.2μm以上0.6μm以下であってもよい。好ましくは、トレンチの壁面にダメージがない。
【0113】
図2A〜
図2Kに当該トレンチを有する縦型炭化珪素半導体装置の製造方法(工程)を示す(実施形態1−1参照)。
【0114】
図15に本開示に係るアニール処理装置311の概略図を示し、このアニール処理装置において行うアニール処理について説明する。
【0115】
縦型炭化珪素半導体装置からなるSiCウエハのトレンチ形成工程(
図2I)において、トレンチ加工後、トレンチ加工されたSiCウエハを本開示に係る
図15のアニール処理装置311に入れ、本開示に係るアニール処理をする。
【0116】
アニールにはSiC固体ソースが用いられ、試料の表面のダメージ層を除去し、表面改質を行う。固体ソースは、立方晶型のほうが、六方晶型より、表面からSiの供給が増えるので望ましい。
【0117】
まず、
図15のアニール処理装置311が準備される(
図20:S10)。アニール処理装置311は、ガス注入と排出が可能な部屋を有する。部屋の内部には、SiCウエハ載置台306と、SiC塗布材でコーティングされたカーボン製部材305が配置されている。SiCウエハ載置台306は、SiC塗布材でコーティングされたカーボン製部材で構成されている。部材305は、SiCウエハ304が置かれる載置台306の上部および下部を覆うように、SiCウエハ304の表面積より大きい面積を持つSiC塗布材でコーティングされている。水素ガスがその間を流入・流出できるように構成されている。なお、SiC塗布材とは、SiCが塗布された部材である。
【0118】
トレンチが加工された縦型炭化珪素半導体装置からなるSiCウエハ304は、このSiCウエハ載置台306に載せられる(
図20:S20)。その後、部屋が真空引きにされる。真空引き後、水素ガスをアニール処理装置311に導入し、水素ガスを流しながら、ポンプとアングル弁を調整しながら、部屋の圧力を12kPaに固定する。
【0119】
部屋の温度を昇温し、1500℃になったら、18分間保持する(アニール処理条件:1500℃、18分、12kPa)。SiCウエハ304に、準熱平衡状態での水素熱処理を施すことにより、トレンチ部側壁やその底を平滑化し、その肩を丸くすることが可能である。
【0120】
つまり、部屋に水素ガスを充填して真空引きをした準熱平衡状態で、炭化珪素塗布材を誘導加熱して炭化珪素塗布材をエッチングし、炭化珪素塗布材から供給された珪素により縦型炭化珪素半導体装置のトレンチがアニールされる(
図20:S30)。アニール処理は、たとえば1400℃以上1600℃以下の温度で行われる。
【0121】
その後、降温し水素ガスをパージ後、ウエハを取り出す。
本開示が適用される炭化珪素半導体装置トレンチ構造体は、例えば、本開示者の出願中の発明、特願2014−134898の実施例1およびその
図1に描かれる炭化珪素半導体装置とすることができる。
【0122】
また、本開示が適用される炭化珪素半導体装置トレンチ構造体の製造方法は、例えば、特願2014−134898の実施例1のステップS90のトレンチ形成工程の一部または全部として、適用する事ができる。
(実施形態3−2)
図15に本開示のアニール処理装置311の具体例を示す。
【0123】
本開示のアニール処理装置311には、熱処理をする空間を要する容器(部屋)と、高周波発生器321と高周波発生器によって発生される高周波を放射するコイル322と、その高周波によって誘導加熱される被発熱体または被加熱体(炭化珪素(SiC)が塗布されたカーボン材)と、熱処理用のガスを供給するガス供給部(図示せず)と、容器内の圧力を制御するポンプおよびアングル弁(図示せず)とが備わっている。
【0124】
当該アニール処理装置311は、ガス供給部からガス(水素)を供給し、高周波により被加熱体を誘導加熱させ、炭化珪素塗布材305から、エッチングすることで、Siが供給され、SiCウエハ304のトレンチ側壁303(
図14C参照)がアニール処理される。
【0125】
つまり、縦型炭化珪素半導体装置のトレンチのアニール処理装置は、水素ガスを注入および排出でき、かつ、真空引きし得る部屋を有している。部屋には炭化珪素塗布材で構成されたウエハ載置台が配置されている。ウエハ載置台を上方と下方から覆うように炭化珪素塗布材が配置されている。炭化珪素塗布材は、ウエハ載置台に面している。炭化珪素塗布材は、ウエハ載置台を取り囲むように配置されている。高周波発生器とコイルとは、炭化珪素塗布材を誘導加熱する。アニール処理装置311は、部屋に水素ガスを充填して真空引きをした準熱平衡状態で、炭化珪素塗布材を誘導加熱して、炭化珪素塗布材をエッチングし、供給された珪素(Si)によりトレンチをアニール処理するように構成されている。
【0126】
図17Aは、アニール処理をする前のトレンチ作成時に生じたダメージを有するトレンチ側壁SEM画像である。
図17Bは、固形SiCと温度1500℃で本開示によるアニール処理をした後のダメージが除去され滑らかなトレンチ側壁のSEM画像である。トレンチ側壁をみるとアニール処理前にあった筋状のダメージが除去されているのがわかる。この半導体製造装置の製造方法において、準熱平衡状態で、かつ水素雰囲気でアニール処理することにより、トレンチ側壁およびその底部を平滑化しながら粗面を抑制し、同時にトレンチ肩部を丸化することができる。
(実施形態3−3)
実施形態3−1に係るトレンチ形成工程(
図2I)におけるエッチング技法について説明する。まず、トレンチエッチングする前に、トレンチエッチングのマスクパターン材として、例えばAPCVD(Atmospheric Pressure Chemical Vapor Deposition:常圧化学的気相成長法)により、エピタキシャル層上に、酸化シリコン(SiO
2)を堆積させる。酸化シリコン膜は、例えば1μmの厚さになるように制御している。
【0127】
次に、酸化シリコン膜上にフォトレジストを塗布し、パターンを露光し、現像することにより、トレンチ部のフォトレジストが開口される。そして、酸化シリコンを、例えばCF
4(四フッ化炭素)、CHF
3(トリフルオロメタン)、C
2F
6(六フッ化エタン)、CCl
4(四塩化炭素)あるいはH
2(水素)などを含む混合ガスにより、酸化シリコン膜をエッチングしてトレンチ開口部パターニングする。酸化シリコン膜がパターンニングできた後、フォトレジストを、例えば酸素アッシャーなどで除去する。以上により、炭化珪素ウエハ上にパターンマスクが設けられる。
【0128】
酸化シリコンをパターンマスクとして、炭化珪素基板をドライエッチング装置でトレンチエッチングする。
【0129】
ドライエッチング装置は、ICP-RIE(Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Etching:誘導結合型プラズマ反応性エッチング)を使用する。ICPは、高密度なプラズマを発生させることができる。ウエハ上部にあるコイルで誘導結合型プラズマを発生させ、炭化珪素ウエハを静電チャックされたホルダーにはバイアス電力を供給する。バイアス電力は、炭化珪素ウエハと上部コイル間に電位差を生じさせ、プラズマによる炭化珪素基板をエッチングさせるためである。
【0130】
トレンチエッチング装置内には、例えばSF
6(六フッ化硫黄)、SiCl
4(四塩化ケイ素)、(SiHCl
3(トリクロロシラン)、SiH
2Cl
2(ジクロロシラン)、SiH
3Cl(モノクロロシラン)を代表とする塩素系ガス、あるいはフッ素系ガス、または、O
2(酸素)などを含む混合ガスにより、酸化シリコンマスクパターンの開口部から炭化珪素をエッチングしてトレンチ加工をする。
【0131】
当実施形態ではフッ素系ガスを用いたところ、上述のガス中でサブトレンチ抑制薄膜302が形成され、トレンチ底のサブトレンチが抑制されるのが観察された。ゲートトレンチ形成後、酸化シリコンマスクパターンを、例えばフッ酸等酸で除去する。
【0132】
つまり、炭化珪素ウエハをウエハ載置台に載置する前において、炭化珪素ウエハ上に、開口部を有する酸化シリコン薄膜のパターンマスクが設けられる(
図21:S1)。次に、準熱平衡状態であって所定のガス中で、開口部において炭化珪素ウエハをドライエッチングしてトレンチが形成される(
図21:S2)。トレンチを形成する際に、酸化シリコン薄膜の開口部の側壁と酸化シリコン薄膜の平坦部とを覆うサブトレンチ抑制薄膜が形成される。サブトレンチ抑制薄膜により、トレンチ底のサブトレンチの発生が抑制される。
【0133】
図14Aに本開示によるトレンチエッチング後、マスク除去前の走査型電子顕微鏡によるトレンチ断面写真を示した。
【0134】
図14Aに初期のマスク313を重ね合わせた
図14Bをみると、酸化シリコン(SiO
2)薄膜が開口された当該開口部の側壁と平坦部を覆うようにサブトレンチ抑制薄膜302が形成されているのがわかる。
【0135】
図14Cに本開示によるトレンチエッチングにおけるサブトレンチ抑制薄膜の形成を模式的に説明する概念図を示した。
【0136】
表1に、トレンチエッチング加工後のアニール処理において、水素ガス雰囲気中の炭化珪素塗布材305、炭化珪素(SiC)ウエハ載置台306の反応式を示す。
【0138】
SiCが水素と反応し、SiとC
2H
2などの炭化水素化合物を生成され、SiC表面から、Siが抜けてゆく。従来技術では、例えばSiH
4(シランガス)等を供給して、その反応によりSiを生成させている例があるが、本実施形態では、SiC個体ソースを用いて、その反応によりSiを生成し、準熱平衡状態でトレンチ面を処理している。
【0139】
本実施形態では、トレンチマスク幅0.6μmで加工し、トランジスタ動作確認を得た。
図18に、トレンチ加工後の走査型電子顕微鏡による断面写真を示す。トレンチマスク幅は0.6μmで、トレンチ加工し、マスク除去後のトレンチ幅は0.7μmであった。
【0140】
図19A〜
図19Dに、次の表2の各条件でトレンチ加工後のアニール処理した走査型電子顕微鏡による断面写真を示す。
【0142】
トレンチマスク幅1umで加工し、サンプル3(
図19C)時に、トレンチアニール処理後のトレンチの上部角の曲率半径は0.15μmであった。表2のサンプル3およびサンプル4でトレンチ上部角がはっきりと丸化することが分かる。サンプル4の1605℃で処理した場合は、トレンチの上部角の曲率半径が大きくなり、トレンチの上部の角の領域であるソース部まで除去されるため、好ましくない。また、サンプル1の1350℃で処理した場合は、トレンチ側壁およびその底部が平滑化されないため、好ましくない。従って、1400℃以上1600℃以下で処理し、好ましくは1500℃で処理することが好ましい。
【0143】
1μm程度のトレンチ開口幅の従来例がある(富士電機時報Vol.81No.6(2008)p454(74))。従来技術では、一般的にトレンチ幅がより狭くなると、例えばSiH
4(シランガス)等を供給しても、狭トレンチ幅のため、狭トレンチ内部に十分なガス供給が困難になると推察される。
【0144】
一方で、本実施形態のように炭化珪素個体原料を使用すると、被加工物も炭化珪素材のため、つまり、熱力学的に準熱平衡状態であるため、狭トレンチ幅であっても、トレンチ側壁は平滑できる。例えば0.2μmのトレンチ幅のトレンチであってもトレンチ側壁は平滑できると推察できる。
<実施形態1の付記>
(付記1)
炭化珪素からなる第1導電型の基板(1)と、
前記基板の上に形成され、低不純物濃度の第1導電型の炭化珪素からなるドリフト層(2)と、
前記ドリフト層(2)の上に形成される、両端と中央で分離した高不純物濃度の第2導電型の炭化珪素からなる第1ベース領域(3)と前記分離した第1ベース領域(3)の間を埋める電流拡散層(4)と、
前記第1ベース領域(3)と前記電流拡散層(4)の上に形成される、高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素からなるトレンチ電流拡散層(5)と前記トレンチ電流拡散層(5)の両端に形成された高不純物濃度の第2導電型の炭化珪素からなる第2ベース領域(6)と、
前記トレンチ電流拡散層(5)と第2ベース領域(6)との上に形成される、第2導電型の炭化珪素からなるボディー領域(7)と、
前記ボディー領域(7)の上に形成される高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素からなるソース領域(8)と、前記ボディー領域(7)の両端に形成された前記ソース領域(8)と同じ高さを有する高不純物濃度の第2導電型の炭化珪素からなるコンタクト領域(9)と、
前記ソース領域(8)の表面から前記ソース領域(8)と前記のボディー領域(7)を貫通し前記トレンチ電流拡散層(5)に達するように略垂直に形成されたトレンチ(10)と、
前記トレンチ(10)の内壁面と前記ソース領域(8)の一部を覆うように形成されたゲート絶縁酸化膜(11)と、
前記トレンチ(10)内において、前記ゲート絶縁酸化膜(11)の中に形成されたゲート電極(12)と、
前記ソース領域(8)および前記コンタクト領域(9)の一部を覆い前記ボディー領域(7)に電気的に接続されたソース電極(13)と、
前記基板(1)の裏面側に形成されたドレイン電極(14)を備え、
前記トレンチ(10)の底面は前記分離した第1ベース領域(3)の中央部(3a)と垂直方向に離間して重なり合って、かつ、前記中央部(3a)の水平方向幅は前記トレンチ(10)の底面の幅よりも大きいことを特徴とする炭化珪素トレンチ型MOSFET。
【0145】
(付記2)
前記トレンチ(10)の底面と前記分離した第1ベース領域(3)の中央部(3a)とは前記垂直方向に0.05μm乃至0.5μm離間していることを特徴とする付記1に記載する炭化珪素トレンチ型MOSFET。
【0146】
(付記3)
前記中央部(3a)の水平方向幅は前記トレンチ(10)の底面の幅よりも0.1μm乃至0.5μm大きいことを特徴とする付記2に記載する炭化珪素トレンチ型MOSFET。
【0147】
(付記4)
前記電流拡散層(4)の不純物濃度は1.0×10
16cm
-3乃至4.0×10
17cm
-3、かつ、第1ベース領域(3)の中央部(3a)と各両端部の第1ベース領域(3)と前記電流拡散層(4)の水辺方向幅は0.7μm乃至1.5μmであることを特徴とする付記3に記載する炭化珪素トレンチ型MOSFET。
【0148】
(付記5)
前記ボディー領域(7)の垂直方向厚みは0.5μm乃至1.5μm、かつ、その濃度は1.0×10
16cm
-3乃至3.0×10
17cm
-3であって、
前記ソース領域の垂直方向厚みは0.1μm乃至0.4μm、かつ、その濃度は2.0×10
18cm
-3乃至1.0×10
20cm
-3であって、
前記トレンチ電流拡散層(5)の垂直方向厚みは0.3μm乃至1.0μm、かつ、その濃度は5.0×10
16cm
-3乃至1.0×10
17cm
-3であることを特徴とする付記4に記載する炭化珪素トレンチ型MOSFET。
【0149】
(付記6)
前記第1ベース領域中央部(3a)と前記第1ベース領域左端部(3b)および右端部(3c)との前記電流拡散層(4)を挟む離間距離(22)が、前記第1ベース領域中央部(3a)と前記第2ベース領域(6)の端部との前記電流拡散層(4)を挟む水平方向離間距離(23)よりも大きく、その差が0.2μm以上で、前記第1ベース領域の厚み以下かつ0.6μm以下であることを特徴とする付記2乃至付記5のいずれか1項に記載する炭化珪素トレンチ型MOSFET。
【0150】
(付記7)
さらに前記第1ベース領域中央部(3a)と前記第1ベース領域左端部(3b)および右端部(3c)は、その長手方向において各前記第1ベース領域接続部(3d)により周期的に接続されていることを特徴とする付記6に記載する炭化珪素トレンチ型MOSFET。
【0151】
(付記8)
前記長手方向に隣接する前記第1ベース領域接続部(3d)の接続間隔は10μm以上、200μm以下であることを特徴とする付記7に記載する炭化珪素トレンチ型MOSFET。
<実施形態2の付記>
(付記1)
その表面外周部に耐圧維持のための電界緩和層を有する半導体装置の外周終端構造であって、
第1導電型薄膜により形成されたドリフト層(3)と、
その上に形成され第2導電型薄膜から形成され該半導体装置の外周に向かって濃度が低下するように異なる濃度を有して連続する高濃度層(1)、第1電界緩和層(4)、第2電界緩和層(5)、および、電界拡がり層(7)と、
前記表面外周部の最終端に位置し前記電界拡がり層(7)と連結され前記ドリフト層(3)より高濃度の第1導電型のチャネルストップ層(6)と、
から構成されることを特徴とする外周終端構造。
【0152】
(付記2)
その表面外周部に耐圧維持のための電界緩和層を有する半導体装置の外周終端構造であって、
第1導電型薄膜により形成されたドリフト層(3)と、
その上に形成され第2導電型薄膜から形成され該半導体装置の外周に向かって濃度が低下するように異なる濃度を有して連続する高濃度層(1)、第1電界緩和層(4)、第2電界緩和層(5)、第3電界緩和層および、電界拡がり層(7)と、
前記表面外周部の最終端に位置し前記電界拡がり層(7)と連結され前記ドリフト層(3)より高濃度の第1導電型のチャネルストップ層(6)と、
から構成されることを特徴とする外周終端構造。
【0153】
(付記3)
前記ドリフト層(3)と前記第2導電型薄膜の間に、さらに、前記ドリフト層(3)よりも高濃度の第1導電型薄膜により形成される第1導電型電界拡がり層(10)を有する、
ことを特徴とする付記1または付記2のいずれか1項に記載の外周終端構造。
【0154】
(付記4)
前記第1電界緩和層(4),第2電界緩和層(5),第3電界緩和層は少なくともその外周側に隣接する前記電界緩和層または前記電界拡がり層(7)の中で外周に向かって段段と消滅するように空間変調されて埋め込まれた構造をさらに有する、
ことを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1項に記載の外周終端構造。
【0155】
(付記5)
前記半導体装置はトレンチを有するSiC半導体素子であって、
前記ドリフト層(3)を形成する第1導電型薄膜は該SiC半導体素子のドリフト層(52)を形成する第1導電型薄膜であり、
前記第2導電型薄膜は該SiC半導体素子のボディー領域(57)を形成する第2導電型薄膜である、
ことを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1項に記載の外周終端構造。
【0156】
(付記6)
さらに、前記第1導電型電界拡がり層(10)を形成する高濃度薄膜は該SiC半導体素子のトレンチ電流拡散層(55)を形成する第1導電型低濃度薄膜である、ことを特徴とする付記5に記載の外周終端構造。
<実施形態3の付記>
(付記1)
縦型炭化珪素半導体装置のトレンチのアニール処理装置であって、
水素ガスを注入・排出でき、かつ、真空引きし得る部屋を備え、
当該部屋には炭化珪素(SiC)塗布材で構成されたウエハ載置台が配置され、
当該ウエハ載置台を上方と下方から覆うように炭化珪素(SiC)塗布材が配置され、
当該炭化珪素(SiC)塗布材を誘導加熱する高周波発生器とコイルを備え、
当該部屋に水素ガスを充填して真空引きをした準熱平衡状態で当該炭化珪素(SiC)塗布材を当該誘導加熱して当該炭化珪素(SiC)塗布材をエッチングし、当該供給された珪素(Si)により前記トレンチをアニール処理する、
ことを特徴とする縦型炭化珪素半導体装置のトレンチのアニール処理装置。
【0157】
(付記2)
縦型炭化珪素半導体装置のトレンチのアニール処理方法であって、
水素ガスを注入・排出でき、かつ、真空引きし得る部屋を備え、
当該部屋には炭化珪素(SiC)塗布材で構成されたウエハ載置台が配置され、
当該ウエハ載置台を上方と下方から覆うように炭化珪素(SiC)塗布材が配置され、
当該炭化珪素(SiC)塗布材を誘導加熱する高周波発生器とコイルを備え、
トレンチを有する縦型炭化珪素半導体装置からなる炭化珪素ウエハを、前記ウエハ載置台に載置して、
当該部屋に水素ガスを充填して真空引きをした準熱平衡状態で当該炭化珪素(SiC)塗布材を当該誘導加熱して当該炭化珪素(SiC)塗布材をエッチングし、当該供給された珪素(Si)により前記炭化珪素ウエハの縦型炭化珪素半導体装置のトレンチをアニールする、
ことを特徴とする縦型炭化珪素半導体装置のトレンチのアニール処理方法。
【0158】
(付記3)
前記アニール処理は、1400℃〜1600℃の温度で行うことを特徴とする付記2に記載の縦型炭化珪素半導体装置のトレンチのアニール処理方法。
【0159】
(付記4)
前記トレンチを有する縦型炭化珪素半導体装置からなる炭化珪素ウエハは、
前記トレンチの開口部となるべきトレンチ部に酸化シリコン(SiO2)薄膜のパターンマスクを設け、
準熱平衡状態であって所定のガス中で、当該開口部をドライエッチングして前記トレンチを作製される場合において、
前記所定のガス中で前記酸化シリコン(SiO
2)薄膜が開口された当該開口部の側壁と平坦部を覆うように形成されるサブトレンチ抑制薄膜により、トレンチ底のサブトレンチの発生が抑制されて前記トレンチが作製されたことを特徴とする付記3に記載する縦型炭化珪素半導体装置のトレンチのアニール処理方法。
【0160】
(付記5)
付記2または付記3のいずれか1項の縦型炭化珪素半導体装置のトレンチのアニール処理方法により作製されたトレンチ幅0.5μm以上のトレンチを有することを特徴とする縦型炭化珪素半導体装置。
【0161】
(付記6)
前記トレンチ上部角が曲率半径0.1μm以上であることを特徴とする付記5に記載の縦型炭化珪素半導体装置。
【0162】
(付記7)
前記トレンチ幅が、0.2μm以上、かつ、0.6μm以下であることを特徴とするトレンチを有することを特徴とする付記4に記載の縦型炭化珪素半導体装置。
【0163】
(付記8)
前記トレンチ壁面にダメージがないことを特徴とする付記7に記載の縦型炭化珪素半導体装置。
【0164】
(付記9)
トレンチを有する縦型炭化珪素半導体装置であって、
前記トレンチ幅が、0.2μm以上、かつ、0.6μm以下、
前記トレンチ上部角が曲率半径0.1μm以上、
前記トレンチ壁面にダメージがないことを特徴とするトレンチを有する縦型炭化珪素半導体装置。
【0165】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。