(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受光素子の受光領域の全周縁部と、前記受光素子の周囲に設けられた前記筐体の開口部の全周縁部とを通るすべての仮想線が、前記カバーの端部の側面と交わらないように、かつ、前記発光素子の発光領域の全周縁部と、前記発光素子の周囲に設けられた前記筐体の開口部の全周縁部とを通るすべての仮想線が、前記カバーの端部の側面と交わらないように、前記筐体が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の生体センサ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。なお、ここでは、本発明に係る生体センサを把持型の脈波測定装置に適用した場合を例にして説明する。
【0014】
まず、
図1〜
図5を併せて用いて、実施形態に係る生体センサ2、及び生体センサ2が適用された把持型脈波測定装置1の構成について説明する。ここで、
図1は、生体センサ2が適用された把持型脈波測定装置1の外観、及び当該把持型脈波測定装置1を手で把持した状態を示す正面図並びに左右側面図である。
図2は、把持型脈波測定装置1の本体部表面に形成された窪み17を拡大して示した断面図である。
図3は、
図4のIII−IIIに沿った生体センサ2の縦断面図である。なお、上段は、本体部10に配線基板30を組み付ける前の状態を示した断面図であり、下段は、本体部10に配線基板30を組み付けた後の状態を示した断面図である。また、
図4は、生体センサ2の平面図である。
図5は、生体センサ2が適用された把持型脈波測定装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0015】
把持型脈波測定装置1は、使用者が片手で把持することで、親指の指先から光電脈波を取得し、脈拍数などを測定することができる把持型の脈波測定装置である。
【0016】
把持型脈波測定装置1は、測定時に、使用者が右手又は左手の親指と他の4本の指で握る略回転楕円体状に形成された本体部10(請求の範囲に記載の筐体に相当、以下、筐体ともいう)を有している。本体部10には、使用者が該本体部10を片手で把持する際に、親指の中節・基節の側面に当たることにより、該親指の位置を規制するストッパ部11が、本体部10の軸方向に沿って凸設されている。なお、本体部10は、例えば不透明樹脂などによって形成されることが好ましい。また、「略回転楕円体状」とは、幾何学で定義される厳密な意味での回転楕円体に限定されない意である。
【0017】
本体部10には、ストッパ部11側から見て、背面側の中央よりも先端部寄りの位置に、本体部10を把持する際に、人差し指を適切な把持位置に誘導するための段差部12が形成されている。すなわち、人差し指をこの段差部12に沿わせて握ることにより、各指の位置が略一定に定まり、親指の指先の縦方向位置のばらつき、すなわち、後述する光電脈波センサ2に対する位置のばらつきが抑えられる。
【0018】
また、本体部10には、遮光機能を有し、測定時に、後述する光電脈波センサ2に外乱光が入射しないように遮光する遮光カバー13が取り付けられている。遮光カバー13は、後述する光電脈波センサ2の上方を覆うように、すなわち、測定時には使用者の親指を覆うことができるように、略半円筒状に形成されている。
【0019】
本体部10の、ストッパ部11から本体部10の周方向に沿ってオフセットした位置には、光電脈波センサ2(請求の範囲に記載の生体センサに相当)が配設されている。光電脈波センサ2は、発光素子21及び受光素子22を有し、ストッパ部11によって規制された親指の指先から光電脈波信号を取得する。光電脈波センサ2は、血中ヘモグロビンの吸光特性を利用して、光電脈波信号を光学的に検出する生体センサである。
【0020】
なお、ここで、本体部10では、発光素子21及び受光素子22を有する光電脈波センサ2の配設されている領域が、例えば略楕円状に、周囲の面よりも窪ませてある。すなわち、光電脈波センサ2は、本体部10に形成された窪み17の中心部に配設される。そのため、使用者は、親指の腹部を窪み17に当てることにより、目視することなく、親指の指先を確実に光電脈波センサ2上に合わせることができる。より詳細には、
図2に示されるように、窪み17は、本体部10の表面から2〜5mm程度凹んでいることが好ましい。
【0021】
次に、光電脈波センサ2の構成について詳細に説明する。配線基板30は、例えば、矩形の薄板状に形成されたプリント基板である。より具体的には、配線基板30は、例えば、FR4(Flame Retardant Type 4)の板を基材として、これに銅箔等からなる配線パターンを形成したガラスエポキシ基板である。
【0022】
矩形に形成された配線基板30の主面30aには、発光素子21と受光素子22とが所定の間隔を空けて実装されている。発光素子21と受光素子22との間の距離は、例えば4〜20mm程度に設定される。なお、配線基板30上の発光素子21と受光素子22との間には大型の電子部品は配置しないことが望ましい。
【0023】
発光素子21としては、LED、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)、又は共振器型LED等を用いることができる。一方、受光素子22としては、フォトダイオード又はフォトトランジスタ等が好適に用いられる。
【0024】
配線基板30の主面30a上には、発光素子21を封止する発光素子封止部23、及び受光素子22を封止する受光素子封止部24が形成されている。発光素子封止部23は、例えば、透光性樹脂によって柱状に形成され、発光素子21を封止している。同様に、受光素子封止部24は、例えば、透光性樹脂によって柱状に形成され、受光素子22を封止している。発光素子封止部23及び受光素子封止部24を形成する透光性樹脂としては、例えば、透明なエポキシ樹脂等が用いられる。なお、発光素子封止部23及び受光素子封止部24は直方体状に形成されていてもよい。
【0025】
発光素子封止部23により封止された発光素子21、及び受光素子封止部24により封止された受光素子22が実装された配線基板30は、例えば、板状の基板押さえ31に形成された矩形の凹部31aに嵌め込まれている。基板押さえ31は、不透明樹脂などからなる筐体10に、例えば内側からネジ止めにより固定される。なお、筺体10の開口部104,105に対して配線基板30上に実装された発光素子21及び受光素子22の実装位置がずれてしまうとセンサ特性に影響するため、位置ずれが小さくなるように固定する必要がある。位置ずれの許容値は、発光素子サイズ、受光素子サイズ、開口径、開口部104,105の筺体厚、発光素子特性、受光素子特性等によって定められる。
【0026】
例えば、発光素子21がLEDの場合には、横方向の位置ずれよりも上下方向の位置ずれの影響が大きく、筺体10と配線基板30との間に後述する遮光部材102が挟まれないように設計する必要がある。横方向の位置ずれを抑制するためには、配線基板30の外形形状を利用することが望ましい。より具体的には、例えば、本実施形態では、基板押さえ31に形成された、配線基板30が嵌め込まれる矩形の凹部31aの内周及び底部に位置決め用の複数の突起31bが設けられ、該複数の突起31bで筐体10に対する配線基板30の位置決めがなされる。なお、例えば、配線基板30に位置決め用の貫通穴を形成し、筺体10もしくは基板押さえ31に形成したピンを配線基板30の位置決め用穴に挿入することで位置決めしてもよい。
【0027】
なお、基板押さえ31は筺体10にネジ止め等で固定することが望ましいが、上記固定方法に代えて、例えばテープや接着剤などで固定してもよい。また、配線基板30に貫通穴をあけるとともに筺体10にネジ穴をあけ、配線基板30を直接ネジ止めしてもよいし、筺体10に配線基板30を嵌合させる形状を形成して配線基板30を嵌合させて固定してもよい。さらに、テープや接着剤などで固定してもよい。ただし、配線基板30を直接ネジ止めする場合は、配線基板30のネジ止め部に応力がかかりやすく配線基板30が歪みやすいので注意が必要である。なお、
図3に示される構成を筺体10から着脱可能とし、配線基板30を基板押さえ31と上記開口部104,105の周辺部とで固定した後に、筺体10に組み付ける構造としてもよい。光電脈波センサ2の測定性能は筺体10の開口部104,105に対する組み込み誤差の影響を受けるが、略回転楕円体状の筺体10に組み込んだ後では性能評価を行い難いため、筺体10の開口部104,105の周辺部のみを着脱できる構造とすることにより性能評価を行い易くできる。また、いずれの方法を採用するとしても、振動等が加えられた場合にも配線基板30が筺体10に対して動かないように固定することが必要である。配線基板30が筺体10に対して動くと、受光光量が変化し、ノイズとなって測定に悪影響が出るためである。また、固定箇所が多い場合や、固定面積が広い場合には、筺体10が歪んでいると、固定した際に配線基板30がねじれてしまい配線基板30上の実装部品の接続不良等の問題が生じるおそれがあるため設計の際に留意する必要がある。
【0028】
筐体10には、上述したように配線基板30が取付けられたときに、発光素子21の軸線と開口部104の軸線とが一致するように開口部104が形成されている。同様に、受光素子22の軸線と開口部105の軸線とが一致するように開口部105が形成されている。すなわち、筐体10には、発光素子21及び受光素子22それぞれに対応付けて一対の開口部104,105が形成されている。そのため、配線基板30は、発光素子21及び受光素子22がある側を筺体10の外側に向けて筺体10に固定される。そして、発光素子21及び受光素子22それぞれに対応した筺体10の開口部104,105を通して、筺体10の外部に発光素子21からの光が出射され、散乱/反射されて戻ってきた光が受光素子22で受光される。
【0029】
筐体10は、配線基板30に垂直な方向から見た場合に、一対の開口部104,105ぞれぞれの周囲及び一対の開口部104,105の間に設けられた遮光部101を有している。すなわち、配線基板30が組み込まれた状態では、発光素子21及び受光素子22それぞれの周囲及び発光素子21及び受光素子22の間に遮光部101が配置される。なお、遮光部は、一対の開口部104,105の間のみ、すなわち、発光素子21と受光素子22との間のみに設ける構成としてもよい。遮光部101には、例えば、カーボンブラック等の遮光性のある粉末を含有するエポキシ樹脂等が好適に用いられる。
【0030】
遮光部101には、配線基板30と対向する面の、少なくとも発光素子21と受光素子22との間に凹部103が形成されている。特に、遮光部101に形成された凹部103は、その開口部から底部にかけて、2段の段付き形状に形成されている。すなわち、まず、遮光部101に、浅く広い1段目の凹部103aが形成され、その内部により深く狭い2段目の凹部103bが形成されている。
【0031】
そして、2段目の凹部103bに、可撓性又は弾性を有する遮光部材102が設けられている。なお、例えば、2段目の凹部103bは階段状ではなく、テーパ状としてもよい。2段目の凹部103bは、遮光部材102の設置位置のずれを考慮して遮光部材102のサイズよりも大きくされ、遮光部材102が確実に2段目の凹部103bの内部に配置されるように形成される。
【0032】
また、遮光部101の周縁部、すなわち1段目の凹部103aの外縁部は、筐体10に配線基板30が取り付けられたときに、配線基板30と接しないように構成されている。例えば、遮光部101の周縁部が配線基板30に接触すると、配線基板30に応力がかかり、配線基板30上に実装されている電子部品の接続不良等の不具合が生じるおそれがあるので、このような不具合を防止するためである。
【0033】
遮光部101、すなわち2段目の凹部103bの底部には、遮光性及び可撓性を有し、配線基板30が筐体に取り付けられたときに、配線基板30と当接して変形する(すなわち配線基板30と遮光部101との隙間をふさいで遮光する)遮光部材102の端部が取り付けられている。なお、遮光部101と遮光部材102とは、一体として形成されていても、別体から構成されていてもよい。また、凹部103及び遮光部材102は、発光素子21と受光素子22との間に加えて、発光素子21及び/又は受光素子22の周囲にも設ける構成としてもよい。
【0034】
遮光部材102の素材としては、例えば、発泡プラスチック、ゴム、樹脂、バネ性を有する金属等を用いることができる。また、遮光部材102の形状としては、例えば、四角柱が望ましいが、発光素子21からの直接光が受光素子22に届かないように遮光できれば他の形状でもよく、例えば中空チューブや袋状等の形状であってもよい。遮光部材102は、外力が加えられないときに、凹部103の深さ方向の寸法が、凹部103の深さよりも若干大きく設定されている。そして、上述したように、遮光部材102は、発光素子21と受光素子22とが実装されている配線基板30が筺体10に固定された時に、配線基板30の表面に接触して変形するように構成(設計)される。ただし、可撓性が低い素材を使用したり、配線基板30を固定した際の変形量が大きい構成にした場合には、遮光部材102によって配線基板30にかかる応力が大きくなり、配線基板30上の実装部品の接続不良等の問題が生じるおそれがある。そのため、そのような場合には、可撓性の比較的大きな素材を使用するか、変形量が小さい構成にすることが好ましい。2段目の凹部103bへの遮光部材102の取り付けは、例えば、両面テープで貼り付けてもよいし、接着剤で固定してもよい。また、筺体10に嵌合させてもよい。
【0035】
上述したように、1段目の凹部103aの内側のサイズは、配線基板30を固定する際に遮光部材102が変形して横方向に、すなわち基板面に沿って拡がる可能性のある領域よりも大きくしておくことが好ましい。すなわち、例えば、遮光部材102としてスポンジを用いる場合には、押圧方向によってはスポンジが斜めに潰れる可能性があるため、遮光部101の周縁部、すなわち1段目の凹部103aの外縁部と配線基板30との間に潰れたスポンジの端部が挟まれないように1段目の凹部103aの内側のサイズが設定される。
【0036】
筐体10の外表面、すなわち遮光部101の上面には、開口部104,105を覆うように透光性を有するカバー40が取り付けられている。すなわち、遮光部101を介して配線基板30と平行にカバー40が設けられている。カバー40は、例えば、透光性を有するアクリルやポリカーボネート、PET(ポリエチレンテレフタラート)等で形成された、厚みが0.1〜2mm程度の平板状の部材である。なお、カバー40は筐体10と一体的に形成されていてもよい。また、発光素子21の開口部104と受光素子22の開口部105をそれぞれ別の透光性カバーで覆う構成としてもよい。ただし、発光素子21の開口部104と受光素子22の開口部105との間の距離は短い場合が多いので、それぞれ別の透光性カバーで覆うことは設計上もしくは製造上困難な場合がある。
【0037】
カバー40は、開口部104,105の外側から設置することが望ましい。カバー40は、例えば、筺体10の外側に形成した凹部10aに嵌合、貼付、接着などによって固定される。このように固定されることにより、外部からの押圧に対して強い構造とすることができる。すなわち、外側から押圧がかかってもカバー40が開口部104,105から外れたり、内部に押し込まれたりすることを防止することができる。
【0038】
カバー40は、筐体10に形成された2つの開口部104,105を覆っている。これは、例えば水分や汗、ほこり等が開口部104,105から内部に入り、センサの不具合を引き起こすことを防止するためである。
【0039】
カバー40の発光素子21側の端部は、開口部104より外側に位置している。すなわち、カバー40の端部は、配線基板30の主面30aの法線方向から見た場合に、開口部104と重ならないように配置されている。特に、カバー40は、その端部の側面が、発光素子21の発光領域の全周縁部と筺体10の開口部104の全周縁部とを通る全仮想線L15と交わらないように、開口部104より広い領域を覆うように配置されている。換言すると、発光素子21の発光部の発光領域と、発光素子21の周囲に設けられた筐体10の開口部104の開口端の全内周縁部とを通るすべての仮想線L15が、カバー40の端部の側面と交わらないよう開口部104が形成されている。
【0040】
同様に、カバー40の受光素子22側の端部は、開口部105より外側に位置している。すなわち、カバー40の端部は、配線基板30の主面30aの法線方向から見た場合に、開口部105と重ならないように配置されている。特に、カバー40は、その端部の側面が、受光素子22の受光領域の全周縁部と筺体10の開口部105の全周縁部とを通る全仮想線L16と交わらないように、開口部105より広い領域を覆うように配置されている。換言すると、受光素子22の受光部の受光領域と、受光素子22の周囲に設けられた筐体10の開口部105の開口端の全内周縁部とを通るすべての仮想線L16が、カバー40の端部の側面と交わらないように開口部105が形成されている。
【0041】
上述した構成を有する光電脈波センサ2による光電脈波の検出は、生体の部位、例えば、被検者の右手の親指の指先を光電脈波センサ2に接触させることにより行われる。
【0042】
光電脈波を検出する際には、発光素子21から出射された光が、発光素子封止部23を透過して、開口部104からカバー40に入射され、該カバー40を通って指先へ入射する。
【0043】
指先に入射され、該指先を透過した光は、カバー40を通って開口部105に入射される。そして、受光素子封止部24を透過し、受光素子22によって受光される。これにより、指先を透過した光の強度変化が光電脈波信号として取得される。
【0044】
より詳細には、
図5に示されるように、発光素子21は、後述する信号処理部310の駆動部350から出力されるパルス状の駆動信号に応じて発光する。なお、駆動部350は、発光素子21を駆動するパルス状の駆動信号を生成して出力する。
【0045】
受光素子22は、発光素子21から照射され、親指を透過して、又は親指に反射して入射される光の強さに応じた検出信号を出力する。
【0046】
受光素子22は、信号処理部310に接続されており、受光素子22で得られた光電脈波信号は信号処理部310に出力される。信号処理部310は、入力された光電脈波信号を処理して、脈拍数や脈拍間隔などを計測する。
【0047】
ここで、本体部10の内部には、信号処理部310、及び計測した光電脈波信号や脈拍数などの生体情報を外部の機器に送信する無線通信モジュール60が収納されている。また、本体部10の内部には、光電脈波センサ2や、信号処理部310、無線通信モジュール60などに電力を供給するバッテリが収納されている。
【0048】
信号処理部310は、増幅部321、信号処理部320、ピーク検出部326、ピーク補正部328、及び脈拍数等計測部330を有している。また、上記信号処理部320は、アナログフィルタ322、A/Dコンバータ323、ディジタルフィルタ324、2階微分処理部325を有している。
【0049】
ここで、上述した各部の内、ディジタルフィルタ324、2階微分処理部325、ピーク検出部326、ピーク補正部328、脈拍数等計測部330は、演算処理を行うCPU、該CPUに各処理を実行させるためのプログラムやデータを記憶するROM、及び演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM等により構成されている。すなわち、ROMに記憶されているプログラムがCPUによって実行されることにより、上記各部の機能が実現される。
【0050】
増幅部321は、例えばオペアンプ等を用いた増幅器により構成され、光電脈波センサ2により検出された光電脈波信号を増幅する。増幅部321で増幅された光電脈波信号は、信号処理部320に出力される。
【0051】
信号処理部320は、上述したように、アナログフィルタ322、A/Dコンバータ323、ディジタルフィルタ324、2階微分処理部325を有しており、増幅部321で増幅された光電脈波信号に対して、フィルタリング処理及び2階微分処理を施すことにより拍動成分を抽出する。
【0052】
アナログフィルタ322、及び、ディジタルフィルタ324は、光電脈波信号を特徴づける周波数以外の成分、すなわちノイズを除去し、S/Nを向上するためのフィルタリングを行う。より詳細には、光電脈波信号は0.1〜数十Hz付近の周波数成分が支配的であるため、ローパスフィルタやバンドパスフィルタ等のアナログフィルタ322、及びディジタルフィルタ324を用いてフィルタリング処理を施し、上記周波数範囲の信号のみを選択的に通過させることによりS/Nを向上する。
【0053】
なお、拍動成分の抽出のみを目的とする場合、すなわち、波形等を取得する必要がない場合には、ノイズ耐性を向上するために通過周波数範囲をより狭くして拍動成分以外の成分を遮断してもよい。また、アナログフィルタ322とディジタルフィルタ324は必ずしも両方備える必要はなく、アナログフィルタ322とディジタルフィルタ324のいずれか一方のみを設ける構成としてもよい。なお、アナログフィルタ322、ディジタルフィルタ324によりフィルタリング処理が施された光電脈波信号は、2階微分処理部325へ出力される。
【0054】
2階微分処理部325は、光電脈波信号を2階微分することにより、2階微分脈波(以下「加速度脈波」という)を取得する。取得された加速度脈波は、ピーク検出部326へ出力される。なお、光電脈波の立ち上がり点は変化が明確でなく検出しにくいことがあるため、加速度脈波に変換してピーク検出を行うことが好ましいが、2階微分処理部325を設けることは必須ではなく、省略した構成としてもよい。
【0055】
ピーク検出部326は、信号処理部320によりフィルタリング処理が施された光電脈波信号(加速度脈波)のピークを検出する。なお、ピーク検出部326は、脈拍間隔の正常範囲内においてピーク検出を行い、検出したすべてのピークについて、ピーク時間、ピーク振幅等の情報をRAM等に保存する。
【0056】
ピーク補正部328は、信号処理部320における光電脈波信号の遅延時間を求める。ピーク補正部328は、求めた光電脈波信号の遅延時間に基づいて、ピーク検出部326により検出された光電脈波信号(加速度脈波)のピークを補正する。補正後の加速度脈波のピークは、脈拍数等計測部330に出力される。
【0057】
脈拍数等計測部330は、ピーク補正部328により補正された加速度脈波のピークの間隔から脈拍数を求める。また、脈拍数等計測部330は、脈拍間隔や、脈拍間隔変化率なども算出する。
【0058】
なお、取得された脈拍数や、脈拍間隔、脈拍間隔変化率などの計測データは、無線通信モジュール60を介して、例えば、PCや、ディスプレイを有する携帯型音楽プレーヤ、又はスマートフォン等に送信される。なお、その場合には、計測結果や検出結果に加えて、計測日時等のデータも送信することが好ましい。
【0059】
次に、把持型脈波測定装置1の使用方法について説明する。この把持型脈波測定装置1を用いて光電脈波信号を検出し、脈拍数などを計測する際には、
図1に示されるように、把持型脈波測定装置1を右手の親指と他の4本の指で握る。
【0060】
また、使用者が、本体部10を把持する際に、親指をストッパ部11に当たるまで、すなわち
図1の例では右側から左側へ動かして、窪み17に親指の腹部を当てることにより、親指の指先を光電脈波センサ2に接触させる。
【0061】
そうすることにより、光電脈波センサ2によって親指の指先から光電脈波信号が取得される。そして、信号処理部310により脈拍数等が測定される。なお、脈拍数等の測定方法については上述した通りであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0062】
このようにして、使用者は、把持型脈波測定装置1を把持するだけで、光電脈波信号や脈拍数などを検出・計測することができる。なお、検出・計測された光電脈波信号や脈拍数などの情報は、無線通信モジュール60によって外部の機器に送信される。
【0063】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、配線基板30が取付けられ、発光素子21及び受光素子22それぞれに対応付けて一対の開口部104,105が形成されるとともに、少なくとも当該一対の開口部104,105の間に設けられた遮光部101を有する筐体10を備えている。そして、遮光部101は、筐体10の配線基板30と対向する面に設けられ、遮光性及び可撓性を有し、配線基板30が筐体10に取り付けられたときに、配線基板30と当接して変形する遮光部材102を含んでいる。そのため、この可撓性を有する遮光部材102が配線基板30に接触して変形することにより、遮光部101と配線基板30との間に隙間が生じることを防止でき、発光素子21から受光素子22に直接入射する迷光を確実に遮断することができる。また、遮光部材102が可撓性を有するため、配線基板30に付与される押圧を十分小さくすることができる。よって、配線基板30上に実装されている電子部品の接続不良等の不具合が生じることを防止できる。その結果、測定時に配線基板に作用する押力を抑制して、配線基板30に実装されている実装部品の接続不良等を防止しつつ、生体を透過せずに受光される迷光を低減することが可能となる。また、比較的簡便かつ安価に遮光構造を実現することができる。
【0064】
本実施形態によれば、遮光部101の配線基板30と対向する面の、少なくとも発光素子21と受光素子22との間に凹部103が形成され、遮光部材102が、筐体10に形成された凹部103の底部に設けられており、凹部103の周縁部が、筐体10に配線基板30が取り付けられたときに、配線基板30と接しないように構成されている。そのため、可撓性を有する遮光部材102が配線基板30に接触して変形する際に、例えば、当該遮光部材102の一部が筐体10と配線基板30との間に挟まれることにより、筐体10と配線基板30との間に隙間が生じ、高さ方向の寸法が変化することを防止でき、高さ方向の寸法が変化することに起因する測定精度の悪化を防止することが可能となる。また、比較的大きな外力が加えられた場合には、凹部103の周縁部が配線基板30に接触することにより、それ以上の遮光部101等の変形が抑制され、センサ2の破損を防止することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、遮光部101に形成された凹部103が、開口部から底部にかけて、2段の段付き形状に形成されているため、可撓性を有する遮光部材102が配線基板30に接触して変形する際に、例えば、当該遮光部材102の一部が筐体10と配線基板30との間に挟まれることをより確実に防止することができる。よって、遮光部材102の一部が筐体10と配線基板30との間に挟まれることにより、筐体10と配線基板30との間に隙間が生じ、高さ方向の寸法が変化することを防止でき、高さ方向の寸法が変化することに起因する測定精度の悪化をより確実に防止することが可能となる。
【0066】
本実施形態によれば、筐体10の開口部104,105を覆うように設けられた透光性を有するカバー40を備えている。このように、筺体10の開口部104,105が透光性を有するカバー40によって塞がれるため、比較的簡便に筺体10内部に水分やほこりなどが侵入して不具合を起こすことを防止することが可能となる。また、外部からの押圧に対して強い構造とすることが可能となる。
【0067】
本実施形態によれば、発光素子21の発光領域の全周縁部と、発光素子21の周囲に設けられた筐体10の開口部104の全周縁部とを通るすべての仮想線L15が、カバー40の端部の側面と交わらないように、かつ、受光素子22の受光領域の全周縁部と、受光素子22の周囲に設けられた筐体10の開口部105の全周縁部とを通るすべての仮想線L16が、カバー40の端部の側面と交わらないように、開口部104,105が形成されている。そのため、発光素子21から出射された光がカバー04の端部に入射し難くなる。また、カバー40の端部で反射された迷光が受光素子22に入射し難くなる。よって、生体を透過せずに、カバー40の中を通って伝達され、受光される迷光をより効果的に低減することが可能となる。
【0068】
本実施形態によれば、筐体10の発光素子21及び受光素子22が配設されている領域が周囲の面よりも窪んでいる。そのため、例えば指先の腹部を窪みに当てることにより、目視することなく、指先を確実に光電脈波センサ2上に合わせることができる。特に、指先を置く位置が触覚で分かるため、指先の横方向及び縦方向の位置ばらつきを抑えることができ、安定した測定を行うことが可能となる。さらに、例えば親指の指先で測定する場合、親指の第一関節を伸ばした状態で長時間保持すると疲れてくるが、光電脈波センサ2が周囲の面よりも窪んでいるために、親指が適度に曲げられた状態となり疲れ難くなる。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、生体センサとして光電脈波センサを例に挙げたが、光電脈波センサに限られることなく、例えば、近接センサや酸素飽和度センサ、血流センサ、分光センサなどであってもよい。
【0070】
上記実施形態では、遮光部101に形成された凹部103が、開口部から底部にかけて、2段の段付き形状に形成されていたが、その段数は2段には限られることなく、1段でも、3段以上であってもよい。
【0071】
上記実施形態では、遮光部材102を発光素子21と受光素子22との間に配設したが、遮光部材102を発光素子21及び/又は受光素子22の周囲に配設する構成としてもよい。
【0072】
上述した実施形態では、遮光カバー13が固定されていたが、遮光カバー13は揺動可能としてもよい。