【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コンテンツ産業の現状について書店を例に取れば、1990年代の終わりに日本において2万3000店ほどあった書店は、2018年には約1万2000店にまで減少したと言われている。このようなコンテンツ業界にあって、最も苦しい立場にあるのは、各種コンテンツを制作する創作者、歌手、コンテンツを製作する中小企業などの広い意味でのクリエイターであると言われている。
【0005】
その理由は、以下の通りである。
(A)個人又は中小企業が作成した文章、写真、音楽、映像などのコンテンツを無料で提供する場合は、個人又は中小企業のホームページを作成して提供すれば良い。しかしながら、個人又は中小企業がそれらのコンテンツに対する正当な対価を得ようとすると、実際上は、iphone(登録商標)やGoogle(登録商標)などの既存の大手コンテンツ提供サイトを利用する形態を取らざるを得ない現状がある。このような既存の大手コンテンツ提供サイトはクリエイターの望む自分たちの独自のコンテンツの見せ方や、自分たちを支持してくれるファンの囲い込みを考えた場合、システム的に非常に制約が多いという課題があった。
【0006】
(B)インターネット上においてコンテンツを提供すると、不正コピーによる拡散が多くなり、コンテンツの価値が低くなる傾向がある。コンテンツを見る人に制限をかける方法は、ユーザが設定した暗証番号やスマートフォンのユーザ番号などを取得して、公開サイトではない閉じたサイト内に誘導する必要がある。しかし、個人又は中小企業のクリエイターが、テレビ局の番組や閲覧回数の極めて多い大手インターネットサイトに広告を出すことは資金的に難しい場合が多い。
つまり、多くの個人又は中小企業に属するクリエイターは、多くの人に自分の存在を知らしめることを望んでいるが、一般の人を課金サイトに誘導することは、極めて難しいことが各種レポートにおいて報告されている。
その理由は、現実に存在する本や物等に金銭を払うことには違和感を感じない人でも、無料で見ることが普通であるインターネット空間においては、クリエイターが提供したコンテンツから、一般の人がお金を支払うということに同意することが極めて少ないからである。
以上、結論として、資金力のない個人又は中小企業のクリエイター自身が、創作物を作った自らの努力の正当な報酬として、多くの人や自分のコンテンツを愛するファンから経済的な利益を得る方法は現実には存在しなかったのである。
【0007】
(C)個人又は中小企業に属するクリエイターが苦しい立場にいることとは直接的には関係はないが、以下のような課題も近年、指摘されている。
即ち、人気アイドルグループにおいては楽曲の入ったコンパクトディスク等を購入することで握手会への参加ができるような手法が行われている。しかし、握手の回数を増やすために、購入したコンパクトディスクが大量に廃棄されて、環境汚染の課題になっていることも生じている。
本発明の目的は、上記従来技術が有する課題を解決できる非接触型ICタグを用いたコンテンツ提供物を開発することにある。
本発明の他の目的は、個人又は中小企業等の弱い立場にあるクリエイターが自らの努力に対する正当な報酬を得ることができるように、既存の本やコンパクトディスクなどとは違う、高度ネットワーク時代に即した新しいコンテンツ提供物を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る非接触型ICタグを用いたコンテンツ提供物は、
コンテンツ情報の誘導情報を記載した非接触型ICタグと、
タグ読取書込み面と、
他の面と、
前記タグ読取書込み面と前記他の面からなる開閉面を開閉自在に支持する開閉部と、
を少なくとも有するコンテンツ提供物であって、
前記タグ読取書込み面は、片面側から前記非接触型ICタグ、電磁波吸収材層、電磁波防止材層の順に配置し、他方面側に少なくとも前記電磁波防止材層を配置し、
前記開閉部を開けることで、前記片面側のタグ読取書込み面を露出させ、
前記開閉部を閉じることで、前記タグ読取書込み面を前記電磁波防止材層で囲まれた状態にすることを特徴とする。
本明細書において「タグ読取書込み面」とは、読取り、書込みの少なくとも一つの処理を行える面を言う。つまり、読取りだけの面、書込みだけの面、読取りと書込みの両方を行える面の何れか一つであればよい。また、「タグ読取書込み面」の「面」とは、本などの面のみならず、非接触型ICタグの存在する領域だけを示す場合もある。
「非接触型ICタグ」には、例えばRFタグ、NFCタグ、ICタグ等が含まれる。
前記他の面は、タグ読取書込み面であってもよく、また、タグを取り付けず、電磁波防止材層だけがある面などの各種の構成が採用できる。
なお、電磁波防止材層は電磁波反射層としても認識できるものである。
この構成であれば、非接触型ICタグ、電磁波吸収材層の順に配置することで、非接触型ICタグの読取精度を著しく高めることができる。
開閉部を開いた状態ではタグ読取書込み面が露出して、内部側からタグ情報を読み取ることができるので、コンテンツを提供する各種手段等にアクセスすることができる。
また、開閉部を閉じた場合は、電磁波防止材層の存在によって、外部からタグ情報を読み取ることができない状態にすることができ、安全性を高めることができる。
つまり、本発明であれば、タグを読み取れる状態と読み取れない状態とを開閉部によって簡単に選択できる利点がある。
また、タグにはコンテンツ情報の誘導情報が記憶されているので、コンテンツを販売等する人にとっては、個人や会社を宣伝し、好適なコンテンツ拡散手段として機能することができる。
さらに、必要であれば、コンテンツ提供物の外面に印刷などの手段によってコンテンツに関する情報を提供できるので、コンテンツに関する情報を広く告知することができる。
【0009】
本発明に係る他の実施形態は、前記電磁波防止材層を凹部形状に形成し、その凹んだ部分に前記非接触型ICタグを収容したことを特徴とする。
この構成であれば、非接触型ICタグを外部から読み取れなくするための電磁波防止材層の面積を減らすことができて、製造コストを低減できる。
本発明に係る他の実施形態は、前記非接触型ICタグが受動型のタグであり、前記非接触型ICタグに対して読取手段を0mm〜30mmの範囲に接近させないと読み取れない構成になっていることを特徴とする。
なお、非接触型ICタグからコンテンツ提供物の外縁までの長さを前記可読距離(30mm)より大きくすれば、簡単な構成で安全性を向上できる。
この構成であれば、コンテンツ提供物に対して遠隔の位置にある読取装置では、タグ情報が読み取られることを防止することができるので、開閉部を開いた状態でも情報漏洩に対する安全性を高めることができる。
【0010】
本発明に係る他の実施形態は、前記タグ読取書込み面は、少なくとも閉じた状態と開いた状態とを取り得る前面部、裏面部の少なくとも一方から構成され、
前記前面部、前記裏面部の少なくとも一つの内側面を前記タグ読取書込み面に設定し、
前記前面部と前記裏面部と前記開閉部のそれぞれの外側面に前記電磁波防止材層を設けたことを特徴とする。
この構成であれば、コンテンツ提供物を例えば、略本形(略箱本形状を含む)に構成にすることができる。
本発明に係る他の実施形態は、前記コンテンツ提供物を出し入れする開口を備えたケースを設け、
前記ケースの全外側面に前記電磁波防止材層を設けたことを特徴とする。
この構成であれば、電磁波防止材層が複数層存在することになるので、安全性を高めることができる。
【0011】
本発明に係る他の実施形態は、前記開閉部の面を前記タグ読取書込み面に設定としたことを特徴とする。
この構成であれば、開閉部の内側面、外側面の少なくとも一方をタグ読取書込み面に設定できるので、コンテンツ提供物の形態の多様性を高めることができる。
本発明に係る他の実施形態は、複数の印刷された頁を前記前面部と前記裏面部の間に有していることを特徴とする。
前記印刷頁には、コンテンツ内容の案内に関する情報を含めることができる。
この構成であれば、コンテンツ情報の誘導情報を記載した非接触型ICタグを有していても、開閉部の間に一般の本のようにコンテンツに関する情報を記載することで、普通の本のように楽しむことができる。なお、その印刷頁において、コンテンツ提供サイトなどの誘導情報に関する説明、例えば費用の説明なども行うことができる。
【0012】
本発明に係る他の実施形態は、前記前面部、前記裏面部、前記開閉部の少なくとも一つにおいて、前記タグ読取書込み面に凹部を設け、前記凹部内に前記非接触型ICタグ、前記電磁波吸収材層、前記電磁波防止材層を収容したことを特徴とする。
この構成であれば、凹部を設けることで、非接触型ICタグ、電磁波吸収材層、電磁波防止材層を積層しても前面部、裏面部、開閉部の平面から突出しない構成にすることができ、見栄えを良くできる。
本発明に係る他の実施形態は、前記電磁波防止材層に囲まれることによって外部から読取ることができない外部読取りできない非接触型ICタグとともに、前記前面部、前記裏面部、前記開閉部のいずれかの一部に前記電磁波防止材層が設けられていない電磁波防止材層不在領域を形成し、前記電磁波防止材層不在領域が設けられた部分に外部読取り用非接触型ICタグを設けたことを特徴とする。
この構成であれば、コンテンツ提供物を開けなくても興味を持ったファンや一般の人に外部読取り用非接触型ICタグからクリエイターなどの情報を提供することができる。コンテンツ提供物を購入する人がいなくても、書店などにおいて、クリエイターに興味を持つ一般人に対して、各種情報を提供することができる。即ち、本発明に係るコンテンツ提供物が存在するだけで、街路に設けられた広告看板、広告塔のような機能を発揮できる。
【0013】
本発明に係る他の実施形態は、前記外部読取りできない非接触型ICタグに対応するコンテンツ情報の第1誘導情報と、前記外部読取り用非接触型ICタグに対応するコンテンツ情報の第2誘導情報とが異なり、前記第1誘導情報によって得られるコンテンツと、前記第2誘導情報によって得られるコンテンツとを異ならせたことを特徴とする。
この構成であれば、コンテンツ提供物において、前記2種類の非接触型ICタグに基づいて誘導するコンテンツを異ならせることで、コンテンツの見せ方を工夫することが簡単に行える。
本発明に係る他の実施形態は、前記第2誘導情報によって得られるコンテンツのレベルを、前記第1誘導情報によって得られるコンテンツのレベルに比べて低く設定したことを特徴とする。
この構成であれば、無料で得られるコンテンツ情報は、支払を有するコンテンツよりもレベルを低いものにすることで、対価的に妥当なものにできる。また、無料で得られるコンテンツ情報を見ることで、より一層、支払を有するコンテンツをファンは見たいと考えることが多いので、広告手段としても有効である。
【0014】
本発明に係る他の実施形態は、前記前面部と前記裏面部と前記開閉部を上製本仕様に構成したことを特徴とする。
この構成であれば、コンパクトディスクとは違った現物としての高級感を出すことができ、インターネット空間とは違い、ファンは現実に対価を支払うことに抵抗感がなくなる。
本発明に係る他の実施形態は、複数の非接触型ICタグを用いたコンテンツ提供物があり、同種系統のコンテンツが複数ある場合に、複数の非接触型ICタグに記憶された前記誘導情報に同種系統のコンテンツであるという同種系統情報が記載されていることを特徴とする。
この構成であれば、シリーズで出るコンテンツ内容、例えば、漫画であれば第1巻、第2巻、…、第N巻において、第1巻を買った読者に対して割引することが容易にできる。また、アイドルのアルバム集であれば、第1集〜第3集を買った人には、アイドルとの交流会に無料に参加できるなどの特典を与えることでファンに対するきめ細やかなサービスを行うことが可能になる。なお、本発明のように、例えば、本の形態を取り得るコンテンツ提供物をインターネットで視聴できるサイトへのアクセス権を与える構成であれば、コンパクトディスクの廃棄等の問題は生じない。
本発明に係る他の実施形態は、前記タグ読取書込み面において、少なくとも前記非接触型ICタグの配設領域を覆う電磁波防止材層シールを設けたことを特徴とする。
この構成であれば、開閉部によって開いた状態でも電磁波防止材層シールを除去しない限り、タグの読取りも書込みもできないので、より安全性を高めることができる。