(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6741210
(24)【登録日】2020年7月29日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】指針式計器装置
(51)【国際特許分類】
G01D 13/22 20060101AFI20200806BHJP
G01D 11/28 20060101ALI20200806BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
G01D13/22 101
G01D11/28 P
B60K35/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-101291(P2016-101291)
(22)【出願日】2016年5月20日
(65)【公開番号】特開2017-207419(P2017-207419A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横山 才二
【審査官】
榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−162388(JP,A)
【文献】
特開2009−156668(JP,A)
【文献】
特開2012−107973(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101407178(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/28
G01D 13/22
G01D 13/28
G12B 11/04
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指標部を有する表示板と、前記指標部を指示する指針と、前記指針を動作させる軸部と、前記指針を光輝させるための照明光を発する発光素子と、を備えた指針式計器装置であって、前記指針は、前記照明光を受光する受光部及び前記照明光によって光輝する指示部を有する指示部材と、前記指示部材が挿通されるスリット部を有すると共に前記受光部を覆う不透明なカバー部材と、前記スリット部から前記照明光が漏れることを防止する遮光部を有する基部と、を有し、前記遮光部は、前記スリット部に挿入される第一の遮光壁と、前記内周面に対向し前記スリット部に挿入されない第二の遮光壁と、を有し、
前記第二の遮光壁の第二の遮光壁底面は、前記カバー部材の外周面の外周面底面よりも前記表示板から離れた位置に設定され、前記外周面底面と前記表示板との隙間から漏れる前記照明光による前記外周面の周りのハレーション照明と、前記遮光部に相当する箇所の前記隙間から漏れる前記照明光によるハレーション照明と、前記スリット部の前記第二の遮光壁底面の下から漏れる前記照明光によるハレーション照明と、が同等レベルになる、ことを特徴とする指針式計器装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記外周面から突出した前記指示部材を覆う鞘状カバー部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の指針式計器装置。
【請求項3】
前記基部は、前記鞘状カバー部の下側で前記指示部を支持する受け部を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の指針式計器装置。
【請求項4】
前記外周面と前記遮光壁が同系色である、ことを特徴とする請求項1及至3のいずれか1項に記載の指針式計器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用計器に採用される指針式計器装置に関し、特に光源の点灯により指針が光輝するタイプの指針式計器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指針照明機能を有する指針式計器装置では、表示板および該表示板の背面に配置された導光体に整合して形成された開口を貫通する回転軸に指針が、その基部で取り付けられている。導光体の開口縁部から該導光体上の表示板の開口縁部を経て照明光が指針の受光部に案内され、この照明光は指示部材を輝かせることにより、指針の視認性を高めると共に装飾性を高める。
【0003】
回転軸が結合される指針の基部には、照明光の漏れを防止するためのカバー部材が装着される。このカバー部材には下縁に開放するスリットが設けられ、このスリット内を指針の指示部材が挿通するようにカバー部材が指針の基部を覆い、また該指針の前記回転軸が挿通する表示板の開口縁部を覆うように装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3305297号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このカバー部材の下縁と表示板との間隙から照明光が漏れ出ると、この漏れ光が引き起こすハレーション照明によって装飾効果が損なわれてしまう。特に指針が貫通するカバー部材のスリット下縁の間隙からの漏れ光は、強いハレーション照明を引き起こす。このカバー部材のスリット下縁からの漏れ光は、指針下で観察されることから、計器の斜め方向から観察され易く、そのため車両の助手席から特に目立つことになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、この様な点に鑑みなされたもので、指標部1aを有する表示板1と、前記指標部1aを指示する指針5と、前記指針5を動作させる軸部3aと、前記指針5を光輝させるための照明光を発する発光素子2aと、を備えた指針式計器装置であって、前記指針5は、前記照明光を受光する受光部13及び前記照明光によって光輝する指示部12を有する指示部材10と、前記指示部材10が挿通されるスリット部21を有すると共に前記受光部13を覆う不透明なカバー部材20と、前記スリット部21から前記照明光が漏れることを防止する遮光部31を有する基部30と、を有し、
前記遮光部31は、前記スリット部21に挿入される第一の遮光壁31aと、前記内周面23に対向し前記スリット部21に挿入されない第二の遮光壁31bと、を有し、
前記第二の遮光壁31bの第二の遮光壁底面31cは、前記カバー部材20の外周面22の外周面底面27よりも前記表示板1から離れた位置に設定され、前記外周面底面27と前記表示板1との隙間5bから漏れる前記照明光L1による前記外周面22の周りのハレーション照明と、前記遮光部31に相当する箇所の前記隙間5bから漏れる前記照明光L1’によるハレーション照明と、前記スリット部21の前記第二の遮光壁底面31cの下から漏れる前記照明光L2によるハレーション照明と、が同等レベルになるものである。
【0007】
(削除)
【0008】
(削除)
【0009】
また、本発明は、前記カバー部材20は、前記外周面22から突出した前記指示部材10を覆う鞘状カバー部26を有するものである。
【0010】
また、本発明は、前記基部30は、前記鞘状カバー部26の下側で前記指示部12を支持する受け部35を有するものである。
【0011】
また、本発明は、前記外周面22と前記遮光壁31が同系色であるものである。
【発明の効果】
【0012】
指示部材が挿通されるスリット部から表示板へ光漏れすることを防止し、カバー部材の周囲の一部に強いハレーション照明が引き起こされることを抑制し、照明品質を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付
図1乃至
図6に基づいて、本発明の一実施形態を説明する。指針式計器装置は、
図1に示す様に自動車の走行速度を指示する速度計を形成している。
【0015】
指針式計器装置は、表示板1と、表示板1の背後に配設される回路基板2と、回路基板の背後に搭載されるステッピングモータ(駆動本体)3と、回路基板2の前面に配設され表示板1を支持するケース体4と、表示板1の前面で回路基板2の前面に突き出たステッピングモータ3の駆動軸(軸部)3aにより回転駆動される指針5と、を備えている。
【0016】
表示板1は、透光性樹脂からなる薄板状の基材に透光性着色層、遮光層、光拡散層等を印刷することによって速度計の目盛、数字等からなる指標部1aを形成したものである。この指標部1aは、指針5の指示部12によって指示される。
【0017】
回路基板2は、平板状のガラスエポキシ系基材に配線パターンを形成した硬質プリント基板からなる。また、回路基板2には、前面に発光ダイオード(発光素子)2a、発光ダイオード2b等が実装されている。
【0018】
発光ダイオード2aは、トップビュー型のLED(Light Emitting Diode)からなるものであり、赤色の照明光を発して指針5を光輝するものである。発光ダイオード2bは、トップビュー型のLEDからなるものであり、白色の照明光を発して表示板1の指標部1aを透過照明する。
【0019】
ケース体4は、白色の樹脂からなるものであり、発光ダイオード2a及び駆動軸3aを囲む様に囲い壁4aを有し、囲い壁4aの先端に囲い壁先端部4bを有している。
【0020】
囲い壁4aは、発光ダイオード2aが発した照明光が指標部1a側へ照射されることを防ぐと共に、発光ダイオード2bが発した照明光が受光部13に入射することを防止している。
【0021】
囲い壁先端部4bは、筒状で表示板1の前面へ突出し、発光ダイオード2aが発した照明光を受光部13に導くと共に、発光ダイオード2aが発した照明光が外周面底面27と表示板1との隙間5bから直接漏れることを防止している。また、囲い壁先端部4bは、筒状の外側位置に図示しないフック状の係止部を有し、表示板1を係止固定する。
【0022】
図3に示す様に、指針5は、各種の合成樹脂及び金属材料によって形成されており、指示部材10と、カバー部材20と、基部30と、おもり40とを有している。
【0023】
指示部材10は、透光性樹脂からなるものであり、発光ダイオード2aが発した照明光を受光部13から受光し、反射面11で指示部12へ反射している。
【0024】
指示部12は、外周面22から半径方向に突出し、線状に徐々に細くなる形状をしている。指示部12の下面には赤色ホットスタンプ箔からなる反射層が形成され、この反射層で反射面11からの反射光により光輝し、指示部開口部24から視認される。
【0025】
カバー部材20は、遮光性の不透明な樹脂からなるものであり、下面が開口する略円筒形状をしたカップ状の外周面22で受光部13や反射面11が視認されないように覆っている。また、カバー部材20は、内周面23に設定された図示しないリブにより、おもり40を圧入固定する。
【0026】
外周面22は、外周面22から半径方向に伸長し、指示部12の前面と、両側面と、先端とを覆う鞘状カバー部26を有する。鞘状カバー部26は、指示部12からの照明光を視認するために開けられた指示部開口部24と、指示部12の先端と受け部35の先端とを重ねて挟持固定する先端固定部25とを有している。
【0027】
また、カバー部材20は、鞘状カバー部26の下側に外周面22の一部が指示部材10をカバー部材20に挿通するために切り取られたスリット部21を有する。
【0028】
基部30は、遮光性の不透明な樹脂からなり、円盤形状部32がカバー部材20の内側に蓋のように格納され、図示しない円盤形状部32から突き出たピンに指示部材10に設けられた一対の穴部14が挿入され指示部材10を嵌合設置すると共に、円盤形状部32でおもり40を支持する。
【0029】
円盤形状部32は、内周面23に設定された一対のフック28と裏面で係合し、カバー部材20とで指示部材10と、おもり40とを挟持固定する。また、円盤形状部32は、裏面で筒状に伸びる指針挿入部(ボス部)33を有し、穴部にステッピングモータ3の駆動軸3aを圧入する。
【0030】
また、円盤形状部32は、指示部12の下面位置で、一部が半径方向にスリット部21を通過する様に円盤形状部32から先端固定部25まで伸長し、鞘状カバー部26の下面に蓋をするように形成される受け部35を有し、反射面11からの反射光が表示板1側へ漏れることを防止している。また、円盤形状部32は、受光部13を貫通するように開けられた受光部開口34を有し、発光ダイオード2aが発した照明光を受光部13に導く。
【0031】
おもり40は、金属材料を加工してなるものであり、カバー部材20と基部30の間に配設され、指針5のバランス重心位置が指針5の回転中心位置に近くなるように設計される。
【0032】
図2に示す様に、指針5を照明する発光ダイオード2aが発した照明光の全てが受光部13で受光されるわけではなく、受光部13の受光面積の関係でその大半は各面で反射され最終的に隙間5bから漏れて漏れ光L1が発生し、表示板1を照射し外周面22の周りがハレーション照明となる。また、スリット部21では、発光ダイオード2aが発した照明光の一部が各面で反射されスリット部21から漏れて漏れ光L2が発生し、表示板1を照射しハレーション照明となる。
【0033】
この漏れ光L2は、囲い壁先端部4bと内周面23との間で減衰される漏れ光L1に対し、内周面23で減衰されないので漏れ光L1よりも光量が大きく、漏れ光L2により発生するハレーション照明は漏れ光L1によるハレーション照明より大きく目立ち全体が違和感あるハレーション照明となり商品性を阻害してしまう。
【0034】
そこで本発明では、円盤形状部32は、スリット部21からの漏れ光L2を防止するために、少なくとも一部が内周面23に対向するように形成される裏面に突き出した遮光部31を有する。
【0035】
本実施形態の遮光部31は、
図4及び
図5に示す様に、スリット部21に相当する箇所に隙間を埋めるように形成された第一の遮光壁31aを有し、外観上の外周面22の欠陥を補う。部品寸法精度の関係上スリット部21の縁部と第一の遮光壁31aの縁部との間には一対の隙間5aが生じる。
【0036】
また、遮光部31は、第一の遮光壁31aの内側面からL字状に伸びて隙間5aを通過し、内周面23に対向するように形成されたスリット部21に挿入されない一対の第二の遮光壁31bを有する。
【0037】
図3及び
図6に示す様に、第二の遮光壁31bの第二の遮光壁底面31cは、外周面22の外周面底面27よりも表示板1から離れた位置に設定し、漏れ光L1と漏れ光L2の光量を調整している。遮光壁31に相当する箇所では漏れ光L1は、第二の遮光壁31bにより囲い壁先端部4bとの隙間5cが狭くなるので、隙間5bより漏れる際に漏れ光L1よりも減衰された漏れ光L1’となり、表示板1を照射するハレーション照明となる。漏れ光L2は、第二の遮光壁底面31cの高さまでは遮光され、第二の遮光壁底面31cの下から漏れる漏れ光L2’となり、表示板1を照射しハレーション照明となる。
【0038】
この漏れ光L1’によるハレーション照明と漏れ光L2’によるハレーション照明が、漏れ光L1によるハレーション照明と同等レベルになるように第二の遮光壁底面31cの位置を設定することで、外周面22の全周から均一に見えるようなハレーション照明としている。
【0039】
つまり、第一の遮光壁31aの形状は変更する必要がないので、指針5の外観を損なうことなくハレーション照明の照明品質を高めることが可能な指針式計器装置を提供できる。
【0040】
また、本実施形態は、外周面22の色と遮光壁31の色とを塗装又は材料着色等により同系色に設定することにより、外観上の商品性を高めることが可能な指針式計器装置を提供できる。
【0041】
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0042】
例えば、本実施形態の遮光部31は、第一の遮光壁31aと、一対の第二の遮光壁31bを有していたが、デザイン上不要であれば第一の遮光壁31aが無く、第二の遮光壁31bが繋がって一体と成した形体でもよい。
【0043】
また、カバー部材20は、指示部12の前面と、両側面と、先端を覆う鞘状カバー部26を有していたが、デザイン上不要であれば指示部12の先端は覆わない形体でもよいし、鞘状カバー部26自体を有しない形体でもよい。
【0044】
また、基部30は、受け部35を有していたが、反射面11からの反射光が表示板1側へ漏れる事が許容できれば必要無い。
【0045】
また、囲い壁4aは、囲い壁先端部4bを有していたが、代わりに遮光性のカラー部材等を用いる等は必要無い。
【符号の説明】
【0046】
1 表示板
1a 指標部
2a 発光ダイオード(発光素子)
3a 駆動軸(軸部)
5 指針
10 指示部材
12 指示部
13 受光部
20 カバー部材
21 スリット部
22 外周面
23 内周面
26 鞘状カバー部
27 外周面底面
30 基部
31 遮光部
31a 第一の遮光壁
31b 第二の遮光壁
31c 第二の遮光壁底面
35 受け部