(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6741223
(24)【登録日】2020年7月29日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】継手管の製造方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
B21D 39/20 20060101AFI20200806BHJP
B21D 41/02 20060101ALI20200806BHJP
B21D 22/02 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
B21D39/20 C
B21D41/02 Z
B21D22/02 F
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-61961(P2016-61961)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-170509(P2017-170509A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】奥田 丞志
【審査官】
永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−282973(JP,A)
【文献】
特開2011−016140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/20
B21D 22/02
B21D 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動自在な押圧部材を備えた加工装置を使用し、かつ前記押圧部材を前進させて管体の先端部を軸長方向に押圧することにより、前記管体の先端部の外周にフランジ状のビード部を形成するビード部形成工程と、
前記管体のうち、前記管体に外嵌されたリング状のスペーサに対応する箇所に、半径方向外方に突出して前記スペーサに係合する突出部を形成するスペーサ固定工程と、
を有しており、
前記ビード部および前記突出部が設けられている継手管を製造するための方法であって、
前記加工装置として、中心軸周りに複数のセグメントに分割された拡縮変形可能部を有する拡管用の割型パンチと、前記拡縮変形可能部の内側に挿入され、かつ前記割型パンチに相対して移動することによって前記拡縮変形可能部を拡縮可能とするマンドレルと、前記押圧部材の前面部からその前方に突出するように前記押圧部材に取付けられ、かつ前記割型パンチとの相互間に前記拡縮変形可能部の拡縮変形を許容する半径方向の隙間が形成されるように前記割型パンチに外嵌されている円筒状部材と、をさらに備えた加工装置を使用し、
前記押圧部材を前進させて前記ビード部形成工程を実行する際には、前記管体内に前記円筒状部材を配置させて、前記管体の前記ビード部から前記スペーサに到る領域が、前記管体の半径方向内方側に変形することを防止するとともに、
前記割型パンチを前記管体内に進入させ、かつ前記押圧部材および前記円筒状部材の前進を停止させた状態において、前記マンドレルを前記割型パンチに相対させて前進させることにより前記拡縮変形可能部の外径または外幅を拡大させ、前記スペーサ固定工程を実行することを特徴とする、継手管の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の継手管の製造方法であって、
前記スペーサの内周面部には、前記管体の軸長方向に間隔を隔てて位置し、かつ半径方向内方に向けて突出する一対の内向き凸部と、これら一対の内向き凸部どうしの間に形成された内向き凹部とが設けられており、
前記スペーサ固定工程においては、前記突出部を断面円弧状に形成し、かつ前記内向き凹部に進入させる、継手管の製造方法。
【請求項3】
管体の先端部から離間した箇所にリング状のスペーサを外嵌させた状態で前記管体をクランプ保持可能なクランプ装置と、
前記管体の軸長方向に往復動自在な押圧部材を備え、かつこの押圧部材の前進時には、前記管体の先端部を軸長方向に押圧して前記管体の先端部の外周にフランジ状のビード部を形成可能とされた加工装置と、
を備えており、
前記加工装置は、
中心軸周りに複数のセグメントに分割された拡縮変形可能部を有する拡管用の割型パンチと、
前記拡縮変形可能部の内側に挿入され、かつ前記割型パンチに対して相対移動することによって前記拡縮変形可能部を拡縮可能とするマンドレルと、
前記押圧部材の前面部からその前方に突出するように前記押圧部材に取付けられ、かつ前記割型パンチとの相互間に前記拡縮変形可能部の拡縮変形を許容する半径方向の隙間が形成されるように前記割型パンチに外嵌されている円筒状部材と、
をさらに備えており、
前記押圧部材が前進して前記ビード部の形成動作が実行されるときには、前記管体内に前記円筒状部材が配置されて、前記管体の前記ビード部から前記スペーサに到る領域が、前記管体の半径方向内方側に変形することの防止が図られるとともに、
前記割型パンチが前記管体内に進入し、かつ前記押圧部材および前記円筒状部材の前進が停止した状態において、前記マンドレルが前記割型パンチに相対して前進することにより前記拡縮変形可能部の外径または外幅が拡大し、前記管体のうち、前記管体に外嵌されたスペーサに対応する部分を半径方向外方に突出させることが可能な構成とされていることを特徴とする、継手管製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水流通用などの各種の配管部材や流体機器などとの接続が図られる継手管を好適に製造するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
継手管の具体例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の継手管は、管体の先端部の外周に、フランジ状のビード部が形成されているとともに、前記ビード部から離間した箇所には、リング状のスペーサが外嵌されて固定されている。前記ビード部は、管体の先端部寄り領域をその軸長方向に圧縮することによって形成されている。前記スペーサの固定は、管体のうち、前記スペーサに対応する箇所を拡管し、この拡管された部分をスペーサの内周面部に係合させることにより図られている。
このような構成の継手管は、ビード部とスペーサとの相互間に、シール用のOリングを装着し、かつその位置決めを図ることが可能であり、Oリングを位置決めするための専用部材を別途用いる必要をなくすことが可能である。また、スペーサは、継手管を他の配管部材に接続してその抜け止めを図る場合に、適当な係合部材を係合させるための部分として利用することもできる。
【0003】
しかしながら、従来においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
すなわち、従来においては、管体の先端部のビード部を形成する工程と、スペーサの固定を図るための拡管工程とは、個別に行なわれているのが実情である。このため、継手管の製造効率は、さほど良好ではなく、製造効率を高め、製造コストを低減する上で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4973275号公報(
図3,
図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、フランジ状のビード部および外嵌されたスペーサに係合する突出部を備えた継手管を、効率良く適切に製造することが可能な継手管の製造方法、およびこの製造方法の実施に適する継手管製造装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明の第1の側面により提供される継手管の製造方法は、往復動自在な押圧部材を備えた加工装置を使用し、かつ前記押圧部材を前進させて管体の先端部を軸長方向に押圧することにより、前記管体の先端部の外周にフランジ状のビード部を形成するビード部形成工程と、前記管体のうち、前記管体に外嵌されたリング状のスペーサに対応する箇所に、半径方向外方に突出して前記スペーサに係合する突出部を形成するスペーサ固定工程と、を有しており、前記ビード部および前記突出部が設けられている継手管を製造するための方法であって、前記加工装置として、中心軸周りに複数のセグメントに分割された拡縮変形可能部を有する拡管用の割型パンチと、前記拡縮変形可能部の内側に挿入され、かつ前記割型パンチに相対して移動することによって前記拡縮変形可能部を拡縮可能とするマンドレルと、
前記押圧部材の前面部からその前方に突出するように前記押圧部材に取付けられ、かつ前記割型パンチとの相互間に前記拡縮変形可能部の拡縮変形を許容する半径方向の隙間が形成されるように前記割型パンチに外嵌されている円筒状部材と、をさらに備えた加工装置を使用し、前記押圧部材を前進させて前記ビード部形成工程を実行する際には、
前記管体内に前記円筒状部材を配置させて、前記管体の前記ビード部から前記スペーサに到る領域が、前記管体の半径方向内方側に変形することを防止するとともに、前記割型パンチを前記管体内に進入させ、かつ前記押圧部材および前記円筒状部材の前進を停止させた状態において、前記マンドレルを前記割型パンチに相対させて前進させることにより前記拡縮変形可能部の外径または外幅を拡大させ、前記スペーサ固定工程を実行することを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、ビード部形成工程とスペーサ固定工程との2つの工程が同時に実行されるばかりか、前記した2つの工程は、1つの加工装置に具備された押圧部材やマンドレルをともに前進させることによって行なわせており、複雑な動作機構や、煩雑な動作制御も不要とすることが可能である。このようなことから、フランジ状のビード部および外嵌固定されたスペーサを備えた継手管を、効率良く適切に、かつ容易に製造することができ、継手管の製造コストを低減することが可能である。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記スペーサの内周面部には、前記管体の軸長方向に間隔を隔てて位置し、かつ半径方向内方に向けて突出する一対の内向き凸部と、これら一対の内向き凸部どうしの間に形成された内向き凹部とが設けられており、前記スペーサ固定工程においては、前記突出部を断面円弧状に形成し、かつ前記内向き凹部に進入させる。
【0010】
このような構成によれば、スペーサに大きな位置ずれやガタツキを生じないように、管体の突出部分とスペーサを適切に係合させることができる。
【0011】
本発明の第2の側面により提供される継手管製造装置は、管体の先端部から離間した箇所にリング状のスペーサを外嵌させた状態で前記管体をクランプ保持可能なクランプ装置と、前記管体の軸長方向に往復動自在な押圧部材を備え、かつこの押圧部材の前進時には、前記管体の先端部を軸長方向に押圧して前記管体の先端部の外周にフランジ状のビード部を形成可能とされた加工装置と、を備えており、前記加工装置は、中心軸周りに複数のセグメントに分割された拡縮変形可能部を有する拡管用の割型パンチと、前記拡縮変形可能部の内側に挿入され、かつ前記割型パンチに対して相対移動することによって前記拡縮変形可能部を拡縮可能とするマンドレルと、
前記押圧部材の前面部からその前方に突出するように前記押圧部材に取付けられ、かつ前記割型パンチとの相互間に前記拡縮変形可能部の拡縮変形を許容する半径方向の隙間が形成されるように前記割型パンチに外嵌されている円筒状部材と、をさらに備えており、前記押圧部材が前進して前記ビード部の形成動作が実行されるときには、
前記管体内に前記円筒状部材が配置されて、前記管体の前記ビード部から前記スペーサに到る領域が、前記管体の半径方向内方側に変形することの防止が図られるとともに、前記割型パンチが前記管体内に進入し、かつ前記押圧部材および前記円筒状部材の前進が停止した状態において、前記マンドレルが前記割型パンチに相対して前進することにより前記拡縮変形可能部の外径または外幅が拡大し、前記管体のうち、前記管体に外嵌されたスペーサに対応する部分を半径方向外方に突出させることが可能な構成とされていることを特徴としている。
【0012】
このような構成の継手管製造装置によれば、本発明の第1の側面により提供される継手管の製造方法を好適に実施することができ、本発明の継手管の製造方法について述べたのと同様な効果が得られる。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は、本発明の継手管製造装置の一例を示す平面断面図であり、(b)は、(a)のIb−Ib断面図である。
【
図2】(a)は、
図1に示す継手管製造装置の動作状態の例を示す側面断面図であり、(b)は、(a)の要部拡大断面図である。
【
図3】
図1の継手管製造装置において用いられる割型パンチおよびマンドレルの一例を示す側面図である。
【
図4】(a)は、
図1(b)のIVa−IVa拡大断面図であり、(b)は、(a)の動作状態の一例を示す拡大断面図である。
【
図5】
図2に示す工程を経て製造された継手管、およびその使用例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
〔継手管の構成〕
図5は、本発明の製造対象となる継手管、およびこれを用いた管継手構造の一例を示している。
同図において、継手管1は、銅またはその他の金属製の管体10(継手管本体部)の先端部の外周に、偏平なフランジ状のビード部12(フレア部と称される場合もある)が形成され、かつビード部12から離間した位置に、リング状のスペーサ8が外嵌固定された構成である。
スペーサ8の内周面部には、半径方向内方に向けて突出する一対の内向き凸部80が管体10の軸長方向に間隔を隔てて形成され、かつそれら一対の内向き凸部80の相互間には、内向き凹部81が設けられている。管体10のうち、スペーサ8の内側部分には、断面円弧状に突出した環状の突出部11が形成され、かつこの突出部11が内向き凹部81内に進入(係合)している。このような係合構造により、スペーサ8の位置決め固定が図られている。ビード部12とスペーサ8との相互間には、シール用のOリング98が装着されている。
【0017】
管継手構造Dは、連結対象管体90の端部に形成されたソケット部91に、継手管1が挿入された構成であり、スペーサ8の一端部とソケット部91のフランジ部91aとの両部分は、係合部材92の係合片92a,92bに係合し、かつこれら係合片92a,92bの相互間に挟まれている。このことにより、ソケット部91からの継手管1の抜け止めが図られ、連結対象管体90と継手管1との接続状態が維持される。管継手構造Dは、たとえば給湯装置における湯水流通用の配管部に適用されるが、これに限定されないことは勿論である。
【0018】
〔継手管製造装置〕
図1に示す継手管製造装置Sは、クランプ装置Aと、加工装置Bとを組み合わせて構成されている。
クランプ装置Aは、管体10にスペーサ8が外嵌された状態で、この管体10をクランプして固定保持可能であり、管体10を上下両側からクランプ可能な上側および下側のクランプ部材3(3a,3b)を備えている。
【0019】
加工装置Bは、管体10の先端部を押圧する押圧装置としての機能と、管体10を拡管する拡管装置としての機能を兼備している。具体的には、この加工装置Bは、ベース部材40、拡管用の割型パンチ5、マンドレル41、位置決めピン42、押圧部材6(押圧用ダイ)、およびこの押圧部材6を支持する支持部材44などを備えている。ベース部材40は、不図示の油圧シリンダなどのアクチュエータに取り付けられており、このことにより加工装置Bの全体は、クランプ装置Aに対向する水平方向(管体10の軸長方向)に往復動自在である。
【0020】
割型パンチ5は、管体10をその内部から半径方向外方に押圧するための筒状の部材であり、その内部にはマンドレル41がスライド可能に挿入されている(
図3も参照)。割型パンチ5には、その長手方向に沿って複数のスリット50が形成されている。このことにより、
図4に示すように、割型パンチ5は、その中心軸周りにおいて複数のセグメント51aに分割され、この割型パンチ5のうち、軸長方向先端寄り部分は、半径方向に拡縮変形可能な拡縮変形可能部51となっている。この拡縮変形可能部51の先端部外周には、凸状部52が形成されている。凸状部52は、その外周面が滑らかな凸状曲面であり、
かつ拡縮変形可能部51の周方向に延びる略環状(スリット50の位置で途切れている)である。
【0021】
マンドレル41の先端部は、たとえば円錐状とされ、先端部から基端部側に進むほど直径または幅が増大する楔部41aとして形成されており、この楔部41aは、割型パンチ5の拡縮変形可能部51の内側に位置している。このため、マンドレル41を割型パンチ5に相対させて前進させると、
図4(a)から
図4(b)に変化するように、楔部41aによって複数のセグメント51aを半径方向外方に押動可能である(
図2も参照)。
【0022】
図1において、マンドレル41は、押さえ部材45を利用してベース部材40の前面部に固定されているのに対し、割型パンチ5は、ベース部材40の前方側に往復動可能に設けられた可動部材46に保持され、かつその後面部は押さえ部材47によって押さえられている。可動部材46は、バネ48によって前方に押圧付勢されている。このため、加工装置Bの前進時において、
図2に示すように、位置決めピン42がクランプ部材3の前壁部30に当接し、位置決めピン42や可動部材46のそれ以上の前進が阻止された時点で、割型パンチ5もそれ以上前進しないこととなり、割型パンチ5は、スペーサ8とオーバラップする箇所に位置決めされる。
【0023】
一方、ベース部材40およびこのベース部材40に固定連結された部材は、位置決めピン42がクランプ部材3の前壁部30に当接した後において、
図1に示す寸法Lだけさらに前進することが可能である。このことにより、
図2に示すように、マンドレル41は割型パンチ5に相対して前進し、割型パンチ5の先端部の外径または外幅を拡大させる。この動作により、管体10を拡管し、前記した突出部11を形成することが可能である。マンドレル41の前記した前進時には、押圧部材6も同様に前進させることが可能である。
【0024】
押圧部材6は、ビード部12を形成するための部分であり、その前壁部60には、周壁および側壁を形成する凹部61が形成されている。管体10の先端部寄り領域がクランプ部材3の前方に突出した状態において、押圧部材6が前進した際には、凹部61の側壁が管体10の先端部を軸長方向に押圧可能である。この押圧により、管体10の先端部寄り領域は、半径方向外方に膨らむように変形する。この変形部分の周囲は、凹部61の周壁部によって覆われるとともに、前記変形部分は、管体10の軸長方向において、凹部61の側壁とクランプ部材3の前壁部30との両者によって挟圧される。このことにより、管体10の先端部寄り領域を、
図2(b)に示すように圧縮し、ビード部12を形成可能である。押圧部材6には、この押圧部材6の前進時に管体10内に進入する円筒状部材68が取り付けられているが、この円筒状部材68は、管体10の先端部が押圧された際に、管体10の先端部寄り領域が半径方向内方に変形することを阻止し、半径方向外方に膨らむように変形することを確実化し、安定してビード部12を形成するための部材である。また、円筒状部材68は、ビード部12とスペーサ8の相互間に設けられたOリング装着部が変形することも防止している。
【0025】
〔継手管の製造方法〕
継手管1を製造するには、
図1に示した管体10およびスペーサ8の設定状態において、
図2に示すように、押圧部材6の前壁部60がクランプ部材3の前壁部30に当接するまで加工装置Bを前進させる。この加工装置Bの前進により、ビード部12を形成するビード部形成工程と、スペーサ8に係合する突出部11を形成するスペーサ固定工程とが同時に実行される。
【0026】
具体的には、ビード部形成工程は、押圧部材6に形成された凹部61の側壁によって管体10の先端部を押圧する動作を含む。この動作により、既述したように、管体10の先端部寄り領域を半径方向外方に膨らむように圧縮し、かつこの圧縮変形を凹部61の側壁
とクランプ部材3の前壁部30との両者によって挟み付けて、ビード部12を形成することができる。一方、スペーサ固定工程は、拡管用の割型パンチ5に相対させてマンドレル41を前進させる動作を含む。この動作により、既述したように、拡縮変形可能部51の外径または外幅を増大させて管体10を拡管し、スペーサ8に係合する突出部11を形成することができる。
【0027】
前記した製造方法によれば、
図5に示した継手管1を適切に製造することができる。加工装置Bを管体10に向けて前進させるだけで、前記したビード部形成工程とスペーサ固定工程とを同時に実行することができるため、継手管1の製造作業の容易化ならびに迅速化を図り、生産性の向上ならびに製造コストの低減を好適に図ることが可能である。また、継手管製造装置Sの全体の構成も簡素なものとし、生産設備のコストも低減することができる。スペーサ8の内向き凹部81には、突出部11を隙間の少ない状態で進入させることができるために、スペーサ8のガタツキや位置ずれなどを適切に抑制することも可能である。
【0028】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る継手管の製造方法の各工程の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に変更自在である。本発明に係る継手管製造装置の各部の具体的な構成も、種々に設計変更自在である。
【0029】
本発明において、管体の突出部は、管体の半径方向外方に突出した形態とされ、かつスペーサと係合するように形成されていればよい。スペーサは、管体に外嵌されたリング状の部材であればよい。また、スペーサは、管体の突出部と係合させるための凹部が内周面部に形成された構成とすることが好ましいものの、これに限定されない。
加工装置の押圧部材は、管体の先端部を押圧可能な部材であればよく、ブロック状の形態に限らない。また、押圧部材は、複数の部材を組み合わせて構成することもできる。
本発明でいう継手管は、その材質や、直状管、曲状管(L字管、U字管など)の種別を問わない他、具体的な長さなども限定されない。たとえば、熱交換器を構成する比較的長寸法の伝熱管の端部に、本発明が意図する構成が適用されることにより、他の配管部材などとの接続が図られる管継手構造を構成し得る場合、この伝熱管は、本発明でいう継手管の概念に含まれる。継手管を利用して構築される管継手構造の具体的な構成も限定されない。
本発明におけるスペーサの固定とは、管体に形成された突出部と係合することによって、なんらかの位置決め規制が図られた状態を意味しており、スペーサが位置ずれなどを全く生じないように管体に強固に固定される場合に限定されるものではない。余り好ましくはないが、スペーサに多少の位置ずれやガタツキなどを生じていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
A クランプ装置
B 加工装置
S 継手管製造装置
1 継手管
10 管体
11 突出部
12 ビード部
41 マンドレル
41a 楔部
5 割型パンチ
51 拡縮変形可能部
51a セグメント(拡縮変形可能部の)
6 押圧部材
8 スペーサ
80 内向き凸部
81 内向き凹部