特許第6741224号(P6741224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6741224継手管の製造方法およびこれに適する加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6741224
(24)【登録日】2020年7月29日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】継手管の製造方法およびこれに適する加工装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 41/02 20060101AFI20200806BHJP
   B21D 19/08 20060101ALI20200806BHJP
   B21D 39/20 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   B21D41/02 D
   B21D19/08 E
   B21D39/20 D
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-61968(P2016-61968)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-170510(P2017-170510A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】奥田 丞志
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 秀行
【審査官】 永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−016458(JP,A)
【文献】 特開平10−332059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 41/02
B21D 19/08
B21D 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体の軸長方向の少なくとも一部分を軸長方向に圧縮することにより、前記管体の外周にフランジ状のビード部を形成する圧縮工程を有しており、
前記管体に少なくとも1つの前記ビード部が形成されている継手管を製造するための方法であって、
前記圧縮工程の前に、拡管装置を用いて前記管体をその内側から半径方向外方に押圧し、前記管体に半径方向外方に膨らんだ膨らみ部を形成する拡管工程を有しており、
前記圧縮工程においては、前記膨らみ部を前記管体の軸長方向に圧縮し、
前記拡管工程は、前記管体の拡管対象部分よりも前記管体の先端側および基端側の両領域を、2つのクランプ部材を用いてクランプした状態で実行し、
前記圧縮工程における前記膨らみ部の圧縮は、前記2つのクランプ部材の少なくとも一方を、他方側に接近させるように移動させることにより行なうことを特徴とする、継手管の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の継手管の製造方法であって、
前記膨らみ部は、前記膨らみ部の幅方向両端部から幅方向中心部に進むほど大径となる断面円弧状であり、かつ前記管体の周方向に一連に繋がって形成された環状である、継手管の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の継手管の製造方法であって、
前記拡管工程においては、前記膨らみ部として、複数の膨らみ部を形成し、
前記圧縮工程においては、前記複数の膨らみ部のそれぞれを前記管体の軸長方向に同時に圧縮し、
前記ビード部として、複数のビード部を有する継手管を製造する、継手管の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の継手管の製造方法であって、
前記拡管装置として、
中心軸周りに複数のセグメントに分割された拡縮変形可能部を有し、かつこの拡縮変形可能部には、この拡縮変形可能部の他の部分よりも外径または外幅が部分的に大きくされた複数の凸状部が軸長方向に並んで設けられている割型パンチと、
前記拡縮変形可能部の内側に挿入された状態で前記管体の軸長方向に変位することによって前記複数のセグメントを半径方向外方に押動可能な楔部を有するマンドレルと、
を備えたものを使用し、
前記拡管工程においては、前記拡縮変形可能部の複数の凸状部によって前記管体をその内側から半径方向外方に押圧する、継手管の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の継手管の製造方法であって、
前記管体を前記2つのクランプ部材によってクランプする際には、前記管体の先端部寄り領域が前記2つのクランプ部材よりも前方に突出した状態としておき、
前記圧縮工程において、前記2つのクランプ部材の少なくとも一方を、他方側に接近させるように移動させる動作は、押圧装置を利用して前記一方のクランプ部材を押圧して行なわせ、かつ押圧時には、前記管体の先端部も前記押圧装置によって押圧することにより、前記管体の先端部の外周にフランジ状の追加のビード部を形成し、
前記ビード部に加えて、前記追加のビード部をさらに備えた継手管を製造する、継手管の製造方法。
【請求項6】
管体をクランプ保持可能なクランプ装置と、
前記管体を拡管可能な拡管装置と、
前記管体の先端部を基端部側に押圧可能な押圧装置と、
を備えており、
前記クランプ装置は、メインクランプ部材と、このメインクランプ部材よりも前記管体の先端部寄りの領域をクランプし、かつ前記メインクランプ部材に相対して前記管体の軸長方向に移動可能なサブクランプ部材と、を備えており、
前記拡管装置は、前記管体のうち、前記メインクランプ部材によってクランプされた箇所と前記サブクランプ部材によってクランプされた箇所との相互間に位置する非クランプ部を拡管し、半径方向外方に膨らんだ膨らみ部を形成可能とされており、
前記押圧装置は、前記管体の先端部寄り領域が前記サブクランプ部材よりも前方に突出した設定状態において、前記管体の先端部および前記サブクランプ部材のそれぞれを前記管体の基端部側に同時に押圧可能とされており、
前記押圧装置による押圧動作により、前記非クランプ部は前記サブクランプ部材と前記メインクランプ部材との相互間において圧縮され、前記膨らみ部をフランジ状のビード部として形成可能であるとともに、前記管体の先端部寄り領域は前記押圧装置と前記サブクランプ部材との相互間において圧縮され、フランジ状の追加のビード部として形成可能とされていることを特徴とする、加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水流通用などの各種の配管部材や流体機器などとの接続が図られる継手管を好適に製造するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
継手管の具体例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の継手管は、管体の外周に、偏平なフランジ状のビード部が複数設けられた構成を有している。ビード部は、管体をその軸長方向に圧縮することによって形成されている。このような構成によれば、複数のビード部どうしの間に、シール用のOリングを装着して、その位置決めを図ることが可能であり、Oリングを位置決めするための専用部材を別途用いる必要をなくすことが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、前記従来技術においては、前記したフランジ状のビード部を形成する方法として、まず管体の互いに離れた箇所を2つのクランプ部材によってクランプし、かつそれら2つのクランプ部材を接近させることにより、前記管体を軸長方向に圧縮する手段が採用されている。ところが、このような手段によれば、ただ単に管体に対して軸長方向の圧縮力を加えるだけであるため、管体を半径方向外方に各所略均等な状態で膨らむように変形させることは容易ではない。ビード部を形成するには、かなり大きな圧縮力が必要である。また、圧縮力が管体に対して不均一な状態で作用した場合には、ビード部が歪んだ形状に形成されたり、あるいは管体の中心から偏った位置に形成されるといった不具合も生じ易い。このような不具合は、管体の厚みが大きく、管体が変形し難い場合には、一層顕著となり、歩留りが悪くなる。
【0005】
さらに、従来においては、複数のビード部を形成する場合には、ビード部を個々に形成しており、たとえば2つのビード部を形成する場合には、管体の2箇所を2つのクランプ部材を用いて軸長方向に圧縮させる作業を2回繰り返している。その際、1回目の作業と2回目の作業とでは、クランプ部材による管体のクランプ位置を変更する必要がある。したがって、従来においては、複数のビード部を形成する際の作業効率が悪いといった不具合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2974134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、管体の外周にフランジ状のビード部が形成された継手管を、従来よりも容易かつ適切に製造することが可能な継手管の製造方法、およびこの製造方法の実施に適する加工装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される継手管の製造方法は、管体の軸長方向の少なくとも一部分を軸長方向に圧縮することにより、前記管体の外周にフランジ状のビード部を形成する圧縮工程を有しており、前記管体に少なくとも1つの前記ビード部が形成されている継手管を製造するための方法であって、前記圧縮工程の前に、拡管装置を用いて前記管体をその内側から半径方向外方に押圧し、前記管体に半径方向外方に膨らんだ膨らみ部を形成する拡管工程を有しており、前記圧縮工程においては、前記膨らみ部を前記管体の軸長方向に圧縮し、前記拡管工程は、前記管体の拡管対象部分よりも前記管体の先端側および基端側の両領域を、2つのクランプ部材を用いてクランプした状態で実行し、前記圧縮工程における前記膨らみ部の圧縮は、前記2つのクランプ部材の少なくとも一方を、他方側に接近させるように移動させることにより行なうことを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、管体のビード部が形成される部分は、圧縮工程が実行される前に、予め拡管工程によって管体の半径方向外方に膨らんだ膨らみ部として形成されているため、前記圧縮工程において、管体を半径方向外方に膨らませることが困難化するといったことを適切に解消または抑制することが可能である。前記の膨らみ部をフランジ状のビード部として形成するのに必要な圧縮力も小さくすることが可能である。また、圧縮力が管体に対して不均一な状態に作用した場合に、ビード部が歪んだ形状や、管体の中心から偏った位置に形成されるといった不具合も生じ難くすることが可能である。このようなことから、ビード部を備えた継手管を、従来よりも容易かつ適切に製造し、歩留りをよくすることが可能である。
またこのような構成によれば、拡管工程および圧縮工程の双方を実行する場合に、管体を2つのクランプ部材によってクランプさせたままでよく、作業効率をよくすることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記膨らみ部は、前記膨らみ部の幅方向両端部から幅方向中心部に進むほど大径となる断面円弧状であり、かつ前記管体の周方向に一連に繋がって形成された環状である。
【0012】
このような構成によれば、前記膨らみ部を軸長方向に圧縮した際に、フランジ状のビード部を管体の全周にわたって略均一な形状に形成することの一層の容易化ならびに確実化を図ることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記拡管工程においては、前記膨らみ部として、複数の膨らみ部を形成し、前記圧縮工程においては、前記複数の膨らみ部のそれぞれを前記管体の軸長方向に同時に圧縮し、前記ビード部として、複数のビード部を有する継手管を製造する。
【0014】
このような構成によれば、複数のビード部を有する継手管を効率よく製造することが可能である。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記拡管装置として、中心軸周りに複数のセグメントに分割された拡縮変形可能部を有し、かつこの拡縮変形可能部には、この拡縮変形可能部の他の部分よりも外径または外幅が部分的に大きくされた複数の凸状部が軸長方向に並んで設けられている割型パンチと、前記拡縮変形可能部の内側に挿入された状態で前記管体の軸長方向に変位することによって前記複数のセグメントを半径方向外方に押動可能な楔部を有するマンドレルと、を備えたものを使用し、前記拡管工程においては、前記拡縮変形可能部の複数の凸状部によって前記管体をその内側から半径方向外方に押圧する。
【0016】
このような構成によれば、構成が比較的簡易な拡管装置を用いて、管体に複数の膨らみ部を同時に、かつ適切に形成することが可能である。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記管体を前記2つのクランプ部材によってクランプする際には、前記管体の先端部寄り領域が前記2つのクランプ部材よりも前方に突出した状態としておき、前記圧縮工程において、前記2つのクランプ部材の少なくとも一方を、他方側に接近させるように移動させる動作は、押圧装置を利用して前記一方のクランプ部材を押圧して行なわせ、かつこの押圧時には、前記管体の先端部も前記押圧装置によって押圧することにより、前記管体の先端部の外周にフランジ状の追加のビード部を形成し、前記ビード部に加えて、前記追加のビード部をさらに備えた継手管を製造する。
【0020】
このような構成によれば、ビード部に加えて、管体の先端部に追加のビード部が形成された継手管を、効率よくかつ適切に製造することができる。
【0021】
本発明の第2の側面により提供される加工装置は、管体をクランプ保持可能なクランプ装置と、前記管体を拡管可能な拡管装置と、前記管体の先端部を基端部側に押圧可能な押圧装置と、を備えており、前記クランプ装置は、メインクランプ部材と、このメインクランプ部材よりも前記管体の先端部寄りの領域をクランプし、かつ前記メインクランプ部材に相対して前記管体の軸長方向に移動可能なサブクランプ部材と、を備えており、前記拡管装置は、前記管体のうち、前記メインクランプ部材によってクランプされた箇所と前記サブクランプ部材によってクランプされた箇所との相互間に位置する非クランプ部を拡管し、半径方向外方に膨らんだ膨らみ部を形成可能とされており、前記押圧装置は、前記管体の先端部寄り領域が前記サブクランプ部材よりも前方に突出した設定状態において、前記管体の先端部および前記サブクランプ部材のそれぞれを前記管体の基端部側に同時に押圧可能とされており、前記押圧装置による押圧動作により、前記非クランプ部は前記サブクランプ部材と前記メインクランプ部材との相互間において圧縮され、前記膨らみ部をフランジ状のビード部として形成可能であるとともに、前記管体の先端部寄り領域は前記押圧装置と前記サブクランプ部材との相互間において圧縮され、フランジ状の追加のビード部として形成可能とされていることを特徴としている。
【0022】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される継手管の製造方法を効率よく、適切に実施することが可能となる。また、ビード部に加えて、追加のビード部をさらに備えた継手管を製造することが可能である。
【0023】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)は、本発明の継手管の製造方法において用いられる拡管装置の一例を示す平面断面図であり、(b)は、(a)のIb−Ib断面図である。
図2図1の拡管装置において用いられる割型パンチおよびマンドレルの一例を示す側面図である。
図3】(a)は、図1(b)のIIIa−IIIa拡大断面図であり、(b)は、(a)の動作状態の一例を示す拡大断面図である。
図4】(a)は、本発明の継手管の製造方法における拡管工程の一例を示す側面断面図であり、(b)は、(a)の要部拡大断面図である。
図5】本発明の継手管の製造方法における圧縮工程を実行するための加工装置の一例を示す側面断面図である。
図6】(a)は、図5に示す加工装置を用いて実行される圧縮工程の一例を示す側面断面図であり、(b)は、(a)の要部拡大断面図である。
図7図4および図6に示す工程を経て製造された継手管を用いて構成される管継手構造の一例を示す要部断面図である。
図8】(a)〜(c)は、本発明の方法によって製造される継手管の他の例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
〔継手管の構成〕
図7は、本発明の製造対象となる継手管、およびこれを用いた管継手構造の一例を示している。
同図において、継手管1は、銅またはその他の金属製の管体10(継手管本体部)の外周に、2つのビード部11、および1つの追加のビード部12(フレア部と称される場合もある)が形成された構成である。ビード部11および追加のビード部12は、いずれも管体10の半径方向外方に突出した偏平なフランジ状であり、これらの相互間には、シール用のOリング98が装着され、ビード部11および追加のビード部12によってOリング98の脱落防止が図られている。
【0027】
管継手構造Dは、連結対象管体90の端部に形成されたソケット部91に、継手管1が挿入された構成であり、ビード部11とソケット部91のフランジ部91aとの両部分は、係合部材92の係合片92a,92bに係合し、かつこれら係合片92a,92bの相互間に挟まれている。このことにより、ソケット部91からの継手管1の抜け止めが図られ、連結対象管体90と継手管1との接続状態が適切に維持される。管継手構造Dは、たとえば給湯装置における湯水流通用の配管部に適用されるが、これに限定されないことは勿論である。
【0028】
〔継手管の製造方法に用いられる加工装置〕
前記した継手管1は、後述する拡管工程、および圧縮工程を経て製造される。その際、たとえば図1に示すクランプ装置A、拡管装置B、および図5に示す押圧装置Cを組み合わせた加工装置が用いられる。これらの構成を、以下に説明する。
【0029】
図1において、クランプ装置Aは、管体10をクランプするためのメインおよびサブのクランプ部材3A,3Bを備えている。メインおよびサブのクランプ部材3A,3Bは、いずれも上下方向において2分割されており、管体10をその上下両側からクランプ可能である。サブクランプ部材3Bは、メインクランプ部材3Aに相対して管体10の軸長方向に移動可能であり、拡管装置Bから荷重を受けていない通常状態においては、バネ20の弾発力によってクランプ装置Aの前方側に押圧され、ストッパ部21に当接した状態にある。この状態においては、メインクランプ部材3Aの前壁部30と、サブクランプ部材3Bの後壁部31との間に隙間が形成され、管体10のメインおよびサブのクランプ部材3A,3Bによってそれぞれクランプされている領域どうしの間には、非クランプ部13(クランプ部材3A,3Bによってクランプされていない領域)が設けられるようになっている。
【0030】
拡管装置Bは、ベース部材40、拡管用の割型パンチ5、マンドレル41、位置決めピン42、この位置決めピン42用のガイド43、およびこのガイド43を支持する支持部材44などを備えている。ベース部材40は、不図示の油圧シリンダなどのアクチュエータに取り付けられており、このことにより拡管装置Bの全体は、クランプ装置Aに対向する水平方向に往復動自在である。
【0031】
割型パンチ5は、管体10をその内部から半径方向外方に押圧するための筒状の部材であり、その内部にはマンドレル41がスライド可能に挿入されている(図2も参照)。割型パンチ5には、その長手方向に沿って複数のスリット50が形成されている。このことにより、図3に示すように、割型パンチ5は、その中心軸周りにおいて複数のセグメント51aに分割され、この割型パンチ5のうち、軸長方向先端寄り部分は、半径方向に拡縮変形可能な拡縮変形可能部51となっている。この拡縮変形可能部51には、たとえば2つの凸状部52が隣接して形成されている。各凸状部52は、滑らかな凸状曲面であり、拡縮変形可能部51の周方向に延びる略環状(スリット50の位置で途切れている)である。
【0032】
マンドレル41の先端部は、たとえば円錐状とされ、先端部から基端部側に進むほど直径または幅が増大する楔部41aとして形成されており、この楔部41aは、割型パンチ5の拡縮変形可能部51の内側に位置している。このため、マンドレル41を割型パンチ5に相対させて前進させると、図3(a)から図3(b)に示すように、楔部41aによって複数のセグメント51aを半径方向外方に押動可能である(図4も参照)。図1において、マンドレル41は、押さえ部材45を利用してベース部材40の前面部に固定されているのに対し、割型パンチ5は、ベース部材40の前方側に往復動可能に設けられた可動部材46に保持され、かつその後面部は押さえ部材47によって押さえられている。可動部材46は、バネ48によって前方に押圧付勢されているが、図4に示すように、位置決めピン42がメインクランプ部材3Aの前壁部30に当接した際には、バネ48の弾発力に抗し、ベース部材40側に後退可能である。このことにより、マンドレル41は、割型パンチ5に相対して前進し、割型パンチ5の先端部の外径または外幅を拡大させる。
【0033】
図5において、押圧装置Cは、ホルダ60に押圧用のパンチ61が連結固定され、かつこのパンチ61の先端寄り部分にダイ62が外嵌された構成である。ホルダ60は、拡管装置Bのベース部材40と同様に、不図示の油圧シリンダなどのアクチュエータに取り付けられており、このことにより押圧装置Cの全体は、クランプ装置Aに対向する水平方向に往復動自在である。パンチ61は、段部61aを有しており、この段部61aによって管体10の先端部を水平方向に押圧可能である。
【0034】
ダイ62は、パンチ61の前進時に、追加のビード部12の形成を補助する役割を果たすとともに、クランプ装置Aのサブクランプ部材3Bを管体10の基端部側に押圧するための部材である。このダイ62は、押圧用パンチ61にスライド可能に外嵌され、かつバネ63によって常時前方に押圧付勢されている。ダイ62の先端面には、凹部62aが形成されており、パンチ61によって管体10の先端部を押圧して変形させる際には、この変形部分の周囲が凹部62aの内周面によって覆われるとともに、前記変形部分の一側面側は凹部62aの側壁によって押圧されるようになっている。このことにより、管体10の先端部寄り領域を、図6(b)に示すように圧縮し、追加のビード部12を形成可能である。
【0035】
クランプ装置Aは、追加のビード部12の形成時には、サブクランプ部材3Bがダイ62によって押圧されて後退するようになっている。このことにより、管体10の非クランプ部13(後述する膨らみ部11aの形成箇所)は、メインおよびサブのクランプ部材3A,3Bの相互間において圧縮され、ビード部11を形成可能である。その際、サブクランプ部材3Bの後壁部31がメインクランプ部材3Aの前壁部30に当接することにより、サブクランプ部材3Bの一定以上の後退が阻止されるようになっている。
【0036】
〔継手管の製造方法〕
継手管1を製造するには、まず管体10についての拡管工程を実行する。この拡管工程
は、図4に示すように、拡管装置Bを管体10に向けて前進させることにより行なう。なお、管体10をクランプ装置Aにセッティングする際には、管体10の拡管対象部分を非クランプ部13としておく。割型パンチ5の拡縮変形可能部51を、非クランプ部13の内側に配置させた状態において、マンドレル41を前進させると、拡縮変形可能部51の外径または外幅が増大し、管体10の拡管が行なわれる。この拡管により、管体10には、幅方向両端部から中央部側に進むほど外径が大きくなる断面円弧状の2つの膨らみ部11aが並んで形成される。
【0037】
前記した拡管工程後における圧縮工程は、図5および図6に示すように、クランプ装置Aに前記した管体10を配置させたまま、その前方には、拡管装置Bに代えて、押圧装置Cを配置させて実行する。より具体的には、図6に示すように、押圧装置Cを前進させ、パンチ61の一部を管体10内に進入させつつ、段部61aによって管体10の先端部を軸長方向に押圧する。これと同時に、ダイ62を利用してサブクランプ部材3Bも押圧する。すると、先に述べた2つの膨らみ部11aは、半径方向外方への膨らみ量がさらに増大するように変形してからメインおよびサブのクランプ部材3A,3Bによって挟圧され、偏平なフランジ状の2つのビード部11として形成される。一方、管体10の先端部寄り領域は、半径方向外方に膨らんでからダイ62の凹部62aの側壁部とサブクランプ部材3Bとの間で挟圧され、偏平なフランジ状の追加のビード部12として形成される。
【0038】
前記した一連の作業工程によれば、2つのビード部11は、拡管工程によって形成された2つの膨らみ部11aを圧縮することによって形成されるため、そのような膨らみ部11aを設けることなく、単に管体10を軸長方向に圧縮させるだけの場合と比較すると、ビード部11の形成の円滑化ならびに容易化を図り、ビード部11が歪んだ状態に形成されるなどの虞も少なくすることが可能である。さらに、圧縮工程において管体10を圧縮するのに必要な力も小さくすることが可能である。
【0039】
また、前記した圧縮工程においては、押圧装置Cのパンチ61およびダイ62を1回前進させる作業により、2つの膨らみ部11aのそれぞれをビード部11として同時に形成し得るとともに、追加のビード部12も同時に形成することができる。したがって、作業効率がよく、製造コストの低減化を図ることが可能である。その他、管体10の拡管工程から圧縮工程に移行する際、管体10はクランプ装置Aにクランプさせたままでよく、管体10を他のクランプ装置に移し替えるような必要はない。このため、作業効率を一層よくすることができる。
【0040】
図8は、本発明の他の実施形態を示している。
同図(a),(b)に示すように、フランジ状のビード部11は、3つ、またはそれ以上の数で並べて形成した構成、あるいは1つのみ設けた構成とすることが可能であり、その具体的な数は2つに限定されない。したがって、ビード部11を形成するために拡管工程で形成される膨らみ部11aの具体的な数も限定されない。
同図(c)に示す構成においては、管体10の先端部近傍に、追加のビード部12が形成されていない。本発明においては、このような構成とすることも可能である。
【0041】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る継手管の製造方法の各工程の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に変更自在である。本発明に係る加工装置の各部の具体的構成も、種々に設計変更自在である。
【0042】
拡管装置としては、割型パンチをマンドレルによって拡縮させるタイプものに限定されず、たとえば流体圧を利用して割型パンチ(割型ダイ)を拡縮させるようなタイプのものを用いることも可能である。管体に形成した膨らみ部を軸長方向に圧縮させるための手段としては、前記した押圧装置とは異なる構成の押圧装置を用いることが可能である。
本発明でいう継手管は、その材質や、直状管、曲状管(L字管、U字管など)の種別を問わない他、具体的な長さなども限定されない。たとえば、熱交換器を構成する比較的長寸法の伝熱管の端部に、フランジ状のビード部を形成した上で、この部分を他の配管部材との接続に用いる場合、この伝熱管は、本発明でいう継手管の概念に含まれる。継手管を利用して構築される管継手構造の具体的な構成も限定されない。
【符号の説明】
【0043】
A クランプ装置
B 拡管装置
C 押圧装置
1 継手管
10 管体
11 ビード部
11a 膨らみ部
12 追加のビード部
13 非クランプ部
3A,3B メインおよびサブのクランプ部材(2つのクランプ部材)
41 マンドレル
41a 楔部
5 割型パンチ
51 拡縮変形可能部
51a セグメント(拡縮変形可能部の)
61 パンチ(押圧装置の)
62 ダイ(押圧装置の)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8