(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリ塩化ビニル系樹脂(A)が、実質的に未架橋のポリ塩化ビニル系樹脂(A―1)及びゲル分率20〜50質量%の架橋ポリ塩化ビニル系樹脂(A−2)からなり、両者の配合比率が(A−1):(A−2)=50〜90:50〜10(質量比)である、請求項1又は2に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル系樹脂は、柔軟性、透明性に優れた樹脂としてフィルム及びシートに成形され幅広く使用されている。中でも衣料等の包装、カードケース、クリヤーケース、テーブルクロス等の雑貨分野の用途として多く使用されている。そして、これらの用途に使用する際に、ポリ塩化ビニル系樹脂に柔軟性を付与するため、可塑剤が使用されている。
【0003】
しかしながら、ポリ塩化ビニル系樹脂に可塑剤を使用すると、粘着性を示す。たとえば、フィルムやシートなどに成形した場合は、フィルムやシートの表面が粘着性を示し、ロール状に巻いたフィルムやシートは表面同士が相互に付着し易く、またフィルムやシートの加工時には、重ねたフィルムやシート同士の剥がれが悪く、生産性を低下させたり、製品段階でブロッキングが発生するという問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、従来より、フィルムやシートの表面にエンボス加工を施したり、固体微粒子を配合することによって、表面を粗面化し、フィルムやシートの粘着性を減少させ作業性を向上させるという方法や、フィルムやシートを加工する段階で、澱粉等のスリップ剤を散布して、粘着を防止するという方法が用いられてきた。
【0005】
上記スリップ剤を用いる方法として、フィルムやシートの表面にスリップ性能を付与した塗布層を設けることにより、スリップ性を有する技術が用いられている。
例えば、特許文献1には、滑り性の優れた塗布層として、有機重合体と澱粉粒子と有機アミド化合物を混合した被膜層を設ける技術が提案されている。
また、特許文献2には、耐ブロッキング性、易滑性に優れたシ−ト又はフィルムとして、澱粉を水及び/又はアルコールと混合した懸濁液を細霧乃至微霧にして、シ−ト又はフィルムの表面に塗布する技術が提案されている。
【0006】
しかし、フィルムやシートにエンボス加工を施したり、固体微粒子を配合することによって、粘着性を減少させるという方法には、フィルムやシートの透明性を損ない、包装材やクリアケース等、内容物への視認性が悪くなるという問題があった。また、スリップ剤として、澱粉等を散布して粘着を防止するという方法では、最終製品とする前には、澱粉を除去する工程が必要であり手間がかかるという問題がある。
【0007】
特に、特許文献1及び2のように、粘着防止用の塗布層を形成するためにフィルムやシートの表面にスリップ剤を散布する場合には、使用したスリップ剤の澱粉等の微粉末が空気中に飛散して作業環境を著しく悪くする恐れがあったり、2次加工時の融着性能に不具合が発生したり、塗布後のフィルムやシートをロール状に巻き取り保管することにより、塗布層とは反対側のフィルムやシートの表面が粗され、透明性が損なわれるという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、ゲル分率が6〜20質量%のポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、可塑剤(B)20〜40質量部、及びカルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C)を含有することを特徴とするポリ塩化ビニル系樹脂組成物である。
以下、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物及び該樹脂組成物からなるシート又はフィルムについて詳細に説明する。なお、本明細書において、好ましいとされている規定は任意に採用することができ、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましいと言える。
【0014】
[ポリ塩化ビニル系樹脂組成物]
<ポリ塩化ビニル系樹脂(A)>
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、(A)成分として、ポリ塩化ビニル系樹脂が使用される。
本発明に使用するポリ塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルを主モノマーとする種々のポリマーであって、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルモノマーと種々の共重合体が挙げられる。塩化ビニルモノマーとの共重合体としてはウレタン−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル共重合体が挙げられる。
塩化ビニルモノマー単独重合体、塩化ビニルモノマー共重合体は1種類のみで使用してもよく、2種以上を混合して使用しても良い。
【0015】
ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定するものではないが、加工性、成形性の点からJIS K6721に基づいた平均重合度が700〜1700であることが好ましく、800〜1500であることがより好ましく、900〜1300であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明に使用するポリ塩化ビニル系樹脂(A)は、ゲル分率が6〜20質量%であることを要す。ゲル分率が6質量%未満であると、スリップ性が低下するので好ましくない。また、ゲル分率が20質量%を超えると、透明性が低下するので好ましくない。ゲル分率は8〜18質量%であることが好ましく、10〜15質量%であることがより好ましい。
【0017】
本発明に使用するポリ塩化ビニル系樹脂(A)のゲル分率を6〜20質量%とする方法は、特に限定されるものではないが、例えば、塩化ビニルモノマーを用いてポリ塩化ビニル系樹脂を製造する際の重合時や重合後に、架橋剤を使用することにより所定のゲル分率のポリ塩化ビニル樹脂を得ることができる。例えば、塩化ビニルモノマーを用いて重合後、実質的に未架橋のポリ塩化ビニル系樹脂を得て、その後、架橋剤を添加することで所定のゲル分率を有するポリ塩化ビニル樹脂を得ることができる。
【0018】
前記架橋剤としては、例えば、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルマレエート、ジビニルベンゼン等のジアリル化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3─ブチレンジメタクリレート等のジメタクリレート化合物、ジエチングリコールジアクリレート、1,3─ブチレンジアクリレート等のジアクリレート化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリアクリレート化合物、テトラメチロールメタントリアクリレート等が挙げられる。
【0019】
また、本発明に使用するポリ塩化ビニル系樹脂(A)は、実質的に未架橋のポリ塩化ビニル系樹脂(A−1)と架橋ポリ塩化ビニル系樹脂(A−2)を併用して用いることにより、規定のゲル分率を有するポリ塩化ビニル樹脂(A)とすることもできる。
【0020】
前記架橋ポリ塩化ビニル系樹脂(A−2)は、実質的に未架橋のポリ塩化ビニル系樹脂(A−1)が部分的に架橋されているものを言う。なお、前記実質的に未架橋のポリ塩化ビニル系樹脂(A−1)とは、ゲル分率が1質量%未満であるポリ塩化ビニル系樹脂であるものを示す。
【0021】
本発明に使用するポリ塩化ビニル系樹脂(A)が、実質上未架橋のポリ塩化ビニル系樹脂(A−1)と架橋ポリ塩化ビニル系樹脂(A−2)とを併用して用いる場合、実質上未架橋のポリ塩化ビニル系樹脂(A−1)と架橋ポリ塩化ビニル系樹脂(A−2)の配合比率は、(A−1):(A−2)が質量比で50〜90:50〜10、好ましくは60〜80:40〜20とすることが望ましい。また、架橋ポリ塩化ビニル系樹脂(A−2)のゲル分率は、20〜50質量%であることが好ましく、25〜50質量%であることがより好ましく、30〜50質量%であることが更に好ましい。このような架橋ポリ塩化ビニル系樹脂(A−2)の具体例としては、(株)カネカ製「Kシリーズ」、「XELシリーズ」などが挙げられる。
【0022】
ゲル分率の測定は、塩化ビニル系樹脂が3質量%となるようにテトラヒドロフランに添加し、50℃で撹拌溶解後、同温度で30分間静置し、不溶解物を沈殿させ、上澄みを取り除いたものに、再度樹脂溶解時に使用した量のテトラヒドロフランを投入し、再溶解を行う。同操作を2回繰り返した後、残ったテトラヒドロフラン不溶解物に過剰のメタノールを投入し、ろ紙を用いて吸引濾過を行い、ろ紙上に残った樹脂を60℃で7時間乾燥後、乾燥重量を計測することで、テトラヒドロフラン溶解前の塩化ビニル系樹脂中に含まれる、架橋ゲル分の質量分率を計算して求めることができる。
また、ゲル分率が既知である2種以上のポリ塩化ビニル系樹脂を混合して用いる場合、該ポリ塩化ビニル系樹脂混合物のゲル分率は、既知のゲル分率とその混合質量比率から比例計算により求めることができる。
【0023】
<可塑剤(B)>
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、可塑剤(B)を含有する。本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物に使用される可塑剤(B)としては、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブトキシエチル、アジピン酸ビス(ブチルトリグリコール)等のアジピン酸エステルやアジピン酸ポリエステルに代表されるアジピン酸系可塑剤;エポキシ化アマニ油、液状エポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤;トリフェニルホスフェート、トリキシリルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;ジオクチルセバケート、トリメリット酸エステル、クエン酸エステル、安息香酸エステル等のその他の可塑剤を挙げることができる。
【0024】
なかでも、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブトキシエチル、アジピン酸ビス(ブチルトリグリコール)等のアジピン酸系可塑剤は、本発明で使用するカルボン酸縮合物の部分エステル化合物との相性が良く、より好ましいスリップ性能を付与することができる。
【0025】
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、ゲル分率が6〜20%のポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、可塑剤(B)を20〜40質量部含有することを要す。可塑剤(B)が20質量部未満であると、柔軟性が低下し、成形加工性が悪化する。また、可塑剤(B)が40質量部を超えると、フィルムやシートに成形加工する際にべたつきが多くなり好ましくない。可塑剤(B)は、25〜40質量部が好ましく、30〜40質量部がより好ましい。
【0026】
<カルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C)>
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、前記可塑剤(B)と共にカルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C)を含有することを要す。前記カルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C)としては、例えば、炭素数30〜60のダイマー酸若しくはトリマー酸、又はこれらの無水物を、モノアルコール類やモノエポキシ化合物によりエステル化して得られる化合物を挙げることができる。エステル化率は、10〜90%が好ましく、酸価は10mg/KOH以上のものが好ましい。エステル化率がこの範囲外の場合は、連続気泡が得られにくい。又、カルボン酸縮合物の部分エステル化合物の分子量(GPCポリスチレン換算で重量平均分子量)としては、1000〜20000程度が好ましい。
【0027】
ここで、モノアルコール類やモノエポキシ化合物としては、飽和脂肪族、不飽和脂肪族、脂環式化合物、芳香族のアルコール類やエポキシ化合物を挙げることができる。分子内にエーテル基を含むアルコール類やエポキシ化合物でもよい。具体的には、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、炭素数12以上のアルキルグリシジルエーテル、炭素数12以上の分岐アルキルのアルコール、オキソアルコールポリエチレンオキサイドエーテル、分子量200〜1200程度のアルコキシキシポリアルキレングリコール等を挙げることができる。ここで、アルコキシキシポリアルキレングリコールとしては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール等を挙げることができる。
【0028】
カルボン酸縮合物の部分エステル化合物は、市販品を用いることができる。市販品としては、BYK−P4100(ビッグケミー・ジャパン社製)等を挙げることができる。
【0029】
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、ゲル分率が6〜20%のポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、カルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C)を0.05〜1.0質量部含有することが好ましく、0.1〜0.7質量部含有することがより好ましく、0.15〜0.5質量部含有することが更に好ましい。
カルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C)の含有量を0.05質量部以上とすることで、フィルムやシートに成形した際にスリップ性能をより優れたものとすることができ、1.0重量部以下とすることによりブリードアウトによる不具合を抑制することができ、成形性がより優れたものとなる。
【0030】
<その他の添加剤>
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において必要に応じて、安定剤、滑剤、帯電防止剤、耐候助剤、着色剤等公知の添加剤を含有してもよい。
【0031】
前記安定剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2−エチルヘキソイン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸錫、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等の金属石鹸;鉛白、塩基性珪酸鉛、三塩基性硫酸鉛、三塩基性亜リン酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、シリカゲル共沈珪酸鉛、ノルマルサリチル酸鉛等の鉛系安定剤;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジブチル錫メルカプチド等の有機錫系安定剤;バリウム−亜鉛複合安定剤、カルシウム−亜鉛複合安定剤、アルミニウム−マグネシウム−亜鉛複合安定剤、カドミウム−バリウム−亜鉛複合安定剤、カドミウム−バリウム−鉛複合安定剤、カルシウム−マグネシウム−亜鉛複合安定剤等、エポキシ化植物油、ビスフェノール型エポキシ化合物、エポキシ基含有アクリルポリマー等のエポキシ化合物を使用することができ、2種以上を混合して使用することもできる。
【0032】
上記の滑剤としては、例えば流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィン、低分子量ポリエチレン等の純炭化水素系;ハロゲン化炭化水素系;高級脂肪酸、オキシ脂肪酸等の脂肪酸系;脂肪酸アミド、ビス脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド系;脂肪酸の低級アルコールエステル、グリセリド等の脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸のポリグリコールエステル、脂肪酸の脂肪族アルコールエステル(エステルワックス)等のエステル系;金属石鹸、脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、脂肪酸とポリグリコール、ポリグリセロールの部分エステル等を挙げることができる。中でも、高温分解阻害機能に優れた脂肪酸の低級アルコールエステル、グリセリド等の脂肪酸の多価アルコールエステル及びその部分エステルが特に好ましい。これらは、単独で用いることもできるし、また、2種以上を組合せて併用することもできる。
【0033】
上記の帯電防止剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミン、アミドの硫酸塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリールスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタレンスルホン酸塩類及びこれらの混合物等を挙げることができる。カチオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルピリジウム塩及びこれらの混合物等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類及びこれらの混合物等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤と、アニオン性界面活性剤あるいはカチオン性界面活性剤との混合物でもよい。両性界面活性剤としては、イミダゾリン型、高級アルキルアミノ型(ベタイン型)、硫酸エステル、リン酸エステル型、スルホン酸型等を挙げることができる。中でも、高温分解阻害機能が低い非イオン性界面活性剤が好ましく、特にその中でもソルビタンアルキルエステル類がより好ましい。
【0034】
前記耐候助剤としては、有機カルボン酸銅、銅キレート錯化合物、無機銅化合物が好ましい。有機カルボン酸銅としては、ステアリン酸銅、パルミチン酸銅、ラウリン酸銅、オクチル酸銅、酢酸銅、安息香酸銅、p−t−ブチル安息香酸銅、1,2−ヒドロキシステアリン酸銅、マレイン酸銅、ナフテン酸銅などが挙げられる。銅キレート錯化合物は、ジメチルチオカルバメート銅、ジブチルチオカルバメート銅等のジアルキルチオカルバメート銅やジアルキルジチオリン酸銅などが挙げられる。無機銅化合物としては、塩化銅、硫酸銅、炭酸銅、酸化銅、水酸化銅等などが挙げられる。
【0035】
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、ゲル分率が6〜20%のポリ塩化ビニル系樹脂(A)、可塑剤(B)、カルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C)及び必要に応じて用いられるその他の添加剤を混合するのに用いる混合機、又は混練するのに用いる混練機は、実質的に配合物を均一に混合、混練出来る装置なら特に限定されるものではない。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサ−、リボンブレンダー、プラネタリーミキサー等が挙げられ、混練機としては、例えば、単軸押出機、2軸押出機、ロールミル、バンバリーミキサー、ニーダー、インテンシブミキサー等加熱しながら剪断力下で混練できるものが挙げられる。本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、粉末状であってもペレット状であっても良い。
【0036】
[シート又はフィルム]
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物をシート成形又はフィルム成形することにより、本発明のシート又はフィルムとすることができる。
本発明のシート又はフィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、0.05〜3.0mmが好ましく、0.07〜2.0mmがより好ましく、0.1〜1.0mmが更に好ましく、とりわけ0.1〜0.8mmが好ましい。なお、本発明のシートとフィルムとの区別は、日本工業規格で規定されているものを適用し、厚みが0.25mm未満のものをフィルムとし、厚みが0.25mm以上のものをシートとする。
【0037】
本発明におけるシート又はフィルムの成形方法としては、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を使用し、公知の成形方法を用いることができる。例えば、カレンダー成形やTダイによる押出成形を行うことによりシートやフィルムに成形することができる。また、インフレーション成形を行うことによりインフレーションフィルムに成形することができる。連続的にシート又はフィルムを製造する方法としては、いずれの成形方法も適しているが、特に本発明においてはカレンダー成形法が適している。
【0038】
[多層シート又は多層フィルム]
また、本発明におけるシート又はフィルムを用いて多層シート又は多層フィルムとする場合は、前記ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるシート又はフィルムを有していれば良く、その他の層として、例えば、汚れ防止や傷付き防止等の表面処理による機能を持ったコート層を設けて多層シート又は多層フィルムとすることができる。
このような機能を持ったコート層に使用される樹脂としては、例えば、透明なアクリル系樹脂やウレタン系樹脂を挙げることができる。
【実施例】
【0039】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の測定評価は以下に示す方法で行った。また、実施例及び比較例で使用した材料は、下記の通りである。
【0040】
<全光線透過率の評価>
日立製作所(株)製の分光光度計UV−3500を用いて、得られたシートの波長555nmの全光線透過率(%)を測定した。この数値が高いほど透明性に優れる。
【0041】
<静摩擦係数の評価>
JIS K7125(プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法)に従い、静摩擦係数を測定した。この数値が低いほどスリップ性に優れる。
【0042】
<裁断時の滑り性評価>
得られたシートを10cm角サイズにカットし、シートを6枚重ねる。次に、重ねたシートの表面中央部に金属定規を当て、シートがズレないように抑え、カッターナイフを使用して1度のカットで6枚すべてを2等分に裁断する。その後、金属定規の抑えを解除し、6枚のシートがバラける状態を観察した。
評価は以下の基準で実施した。
◎:シートがブロッキングせずバラける状態
○:シートが若干ブロッキングするがバラける状態
×:シートがブロッキングし、バラけない状態
【0043】
<実施例及び比較例で使用した材料>
1.ポリ塩化ビニル系樹脂(A)
・A−1(1);未架橋のポリ塩化ビニル系樹脂(大洋塩ビ(株)製「製品名;TH―1000」、ゲル分率;0質量%、平均重合度;1000)
・A−2(1);架橋ポリ塩化ビニル系樹脂((株)カネカ製「K10M」、ゲル分率;43質量%、可溶分の平均重合度;1080)
2.可塑剤(B)
・B−1:アジピン酸系可塑剤((株)ジェイ・プラス製「製品名;DINA」、ジイソノニルアジペート)
・B−2:フタル酸系可塑剤((株)ジェイ・プラス製「製品名;DOP」、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート)
3.カルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C)
・C−1:ビックケミー・ジャパン(株)製「BYK−P4100」
4.ステアリン酸[スリップ剤(滑剤)]:(新日本理化(株)製「製品名;ステアリン酸2000」)
【0044】
実施例1
未架橋のポリ塩化ビニル系樹脂[A−1(1)]70質量部、架橋ポリ塩化ビニル系樹脂[A−2(1)]30質量部、アジピン酸系可塑剤(B−1)32質量部、カルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C−1)0.35質量部、エポキシ化大豆油5質量部及びBa−Zn系安定剤2質量部からなる原料をヘンシェルミキサーを用いて混合し、次いで180℃で7分間、バンバリーミキサーで混練りした。得られた混練物をカレンダー成形にて、2本ロールを用い、厚さ0.4mmのシートを作製した。なお、(A)成分として用いたポリ塩化ビニル系樹脂[A−1(1)]と架橋ポリ塩化ビニル系樹脂[A−2(1)]の合計量中のゲル分率は、12.9%である。得られたシートについて評価を行い、結果を表1に示す。
【0045】
実施例2
可塑剤(B)としてフタル酸系可塑剤(B−2)を用い、その含有量を35質量部に変更した以外は実施例1と同様の条件でシートを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
実施例3
未架橋のポリ塩化ビニル系樹脂[A−1(1)]を75質量部及び架橋ポリ塩化ビニル系樹脂[A−2(1)]を25質量部に変更した以外は、実施例1と同様の条件でシートを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
実施例4
未架橋のポリ塩化ビニル系樹脂[A−1(1)]を66質量部及び架橋ポリ塩化ビニル系樹脂[A−2(1)]を34質量部に変更した以外は、実施例1と同様の条件でシートを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
実施例5
カルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C−1)を0.20質量部に変更した以外は、実施例1と同様の条件でシートを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
実施例6
カルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C−1)を0.45質量部に変更した以外は、実施例1と同様の条件でシートを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
実施例7
アジピン酸系可塑剤(B−1)を38質量部に変更した以外は、実施例1と同様の条件でシートを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
比較例1
ポリ塩化ビニル系樹脂(A)として、ポリ塩化ビニル系樹脂[A−1(1)]のみを用い100質量部とした以外は、実施例1と同様の条件でシートを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
比較例2
可塑剤(B)としてフタル酸系可塑剤(B−2)を用い、その含有量を35質量部に変更した以外は、比較例1と同様の条件でシートを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
比較例3
カルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C−1)を使用しないこと以外は、比較例2と同様の条件でシートを作製し、シートの表面にスリップ剤(ニッカ(株)製「ニッカリコAS−100S」)を150mg/m
2を篩にて均一に散布した。その評価結果を表1に示す。
【0054】
比較例4
カルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C−1)を使用しないこと以外は、実施例1と同様の条件でシートを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
比較例5
カルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C−1)に変えて、ステアリン酸を0.5質量部用いたこと以外は、実施例1と同様の条件でシートを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
比較例6
未架橋のポリ塩化ビニル系樹脂[A−1(1)]を90質量部、架橋ポリ塩化ビニル系樹脂[A−2(1)]を10質量部に変更し、カルボン酸縮合物の部分エステル化合物(C−1)を使用しないこと以外は、実施例1と同様の条件でシートを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1より、実施例1〜7で得られたシートは、裁断時の滑り性が良好で、静摩擦係数の値も小さく、全光線透過率に優れている結果が示されている。特に、可塑剤(B)として、アジピン酸系可塑剤を使用した場合、静摩擦係数がより低くなり、裁断時の滑り性も優れることが示されている。
一方、比較例1、2、4、5及び6で得られたシートは、静摩擦係数の値が大きく、裁断時の滑り性が劣ることが示されている。また、比較例3では、裁断時滑り性が良好で静摩擦係数の値も小さく、スリップ性は良好であるが、フィルム表面にパウダーを散布したため全光線透過率の値が低下し、透明性に劣ることが示されている。