(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動部は、前記当接部材を鉛直方向上向きに駆動する、又は前記ホルダを鉛直方向下向きに駆動することで、前記当接部材を前記試験片の下面に当接させる、請求項1に記載の材料試験装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、材料の機械特性を測定する試験方法として、ダンベル形状の試験片の両端に引張荷重を加えて試験片の引張強度を測定する引張試験方法が知られている。しかし、この引張試験方法では、試験片をダンベル形状に加工する必要があるため、経年劣化した現場の構造物から採取した材料や熱分析後の試料等、材料が僅かな大きさしか無い場合には試験片を作製することができなかった。
【0005】
上記したスモールパンチ試験方法では、試験片の大きさが通常直径5〜10mm程度の薄板状であるため、材料が僅かな大きさしか無い場合であっても試験片を作製することが可能となる。しかしながら、特許文献1、特許文献2のスモールパンチ試験方法では、試験時において、予め試験片上に配置しておいた鋼球をパンチャー(ロッド)によって試験片に押し当てている。このため、試験片が特に強度が低い材料で構成されている場合、試験前に鋼球の自重によって試験片に外力が加わり、試験結果に誤差が生じる虞がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであって、低強度及び低剛性の試験片に対しても測定誤差を小さく抑えることができる材料試験装置及び材料試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の材料試験装置は、平板状の試験片の周縁部が固定される固定部を有するホルダと、前記試験片の中央部に当接する球面を有する当接部材と、前記試験片と前記球面との間に間隔をあけた状態で前記当接部材を保持可能な保持部材と、前記当接部材によって前記試験片が押圧されるように前記当接部材又は前記ホルダを駆動する駆動部と、前記当接部材に加わる荷重及び前記試験片の変位を測定する測定部と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、材料試験装置のホルダの固定部に試験片の周縁部を固定し、当接部材によって試験片が押圧されるように、駆動部によって当接部材又はホルダを駆動することで、当接部材の球面によって試験片の中央部を押圧して試験片に荷重を付加する。このとき、当接部材に加わる荷重及び試験片の変位を測定部によって測定することで、試験片の機械特性を測定することができる。
【0009】
ここで、例えば材料試験前の段階において、保持部材によって当接部材を球面と試験片との間に間隔をあけた状態で保持することができる。このため、材料試験前に試験片に当接部材の球面が当接して試験片に外力が加わることを抑制することができ、材料試験の測定誤差を小さく抑えることができる。なお、当接部材における球面は、試験片に当接する側が球面であれば足り、例えば当接部材の先端が半球体形状とされている構成を含む。
【0010】
請求項2に記載の材料試験装置は、請求項1に記載の材料試験装置において、前記駆動部は、前記当接部材を鉛直方向上向きに駆動する、又は前記ホルダを鉛直方向下向きに駆動することで、前記当接部材を前記試験片の下面に当接させる。
【0011】
上記構成によれば、駆動部によって当接部材を鉛直方向上向きに駆動する、又はホルダを鉛直方向下向きに駆動することで、当接部材を試験片の下面に当接させる。このため、当接部材を試験片の上面に当接させる構成と比較して、保持部材は重力を利用して当接部材を球面と試験片との間に間隔をあけた状態で保持することができる。
【0012】
請求項3に記載の材料試験装置は、請求項1又は2に記載の材料試験装置において、前記当接部材は鋼球である。
【0013】
上記構成によれば、当接部材が鋼球であるため、当接部材のどの面が試験片に当接したとしても当接面が球面となる。このため、当接部材の当接面のみが球面とされている構成と比較して、確実に球面を試験片に当接させることができるとともに、鋼球を交換するだけで当接面を試験片の材質や大きさ、厚さ等に応じた適切な材質及び寸法とすることができる。
【0014】
請求項4に記載の材料試験装置は、請求項3に記載の材料試験装置において、前記保持部材は、前記鋼球を芯出し状態で支持する凹部が長手方向一端側の端面に形成されたロッドである。
【0015】
上記構成によれば、ロッドの長手方向一端側の端面に鋼球を芯出し状態で支持する凹部が形成されているため、ロッドに対する鋼球の位置がずれたりロッドから鋼球が落下したりすることを抑制することができる。なお、「芯出し状態」とは、鋼球の中心がロッドの中心軸上に位置する状態を示す。
【0016】
請求項5に記載の材料試験装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の材料試験装置において、前記ホルダは、互いの対向面にそれぞれ形成された前記固定部の間に前記試験片を狭持する第1ホルダ及び第2ホルダを備えており、前記第1ホルダの前記固定部及び前記第2ホルダの前記固定部の少なくとも一方には、前記対向面から突出する突起が形成されている。
【0017】
上記構成によれば、試験片を狭持する第1ホルダの対向面及び第2ホルダの対向面の固定部の少なくともどちらか一方に突起が形成されている。このため、例えば突起を試験片に食い込ませる等、突起により試験片を保持することにより、ホルダから試験片が外れることを抑制することができる。
【0018】
請求項1に記載の材料試験装置は、
さらに、前記ホルダを収容するハウジングを備え、前記ホルダは前記ハウジングに軸受を介して回転可能に保持されている。
【0019】
上記構成によれば、ホルダがハウジングに軸受を介して回転可能に保持されている。このため、例えばハウジングへのホルダの収容時や当接部材による試験片の押圧時等にホルダにねじりモーメントが生じた際に、試験片が固定されているホルダが試験片とともにハウジングに対して回転する。このため、ねじりモーメントが試験片に作用することを抑制することができる。
【0020】
請求項6に記載の材料試験方法は、構造物から採取した材料又は熱分析後の試料から平板状の試験片を作製し、
軸受によって回転可能に支持されたホルダの固定部に試験片の周縁部を固定し、球面を有し、前記球面と前記試験片との間に間隔をあけた状態で保持されている当接部材を、前記試験片を押圧する方向に駆動し、前記当接部材の前記球面によって前記試験片の中央部を押圧することで前記試験片に荷重を付加し、前記当接部材に加わる荷重及び前記試験片の変位を測定することで、前記試験片の機械特性を測定する。
【0021】
上記構成によれば、駆動前の段階において、当接部材は球面と試験片との間に間隔をあけた状態で保持されている。このため、材料試験前に試験片に当接部材の球面が当接して試験片に外力が加わることを抑制することができ、低強度かつ小さな材料又は試料から作製した試験片に対しても機械特性を精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように、本発明によれば、低強度及び低剛性の試験片に対しても測定誤差を小さく抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る材料試験装置及び材料試験方法について、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0025】
<構成>
本実施形態の材料試験装置10は、
図1に示すように、鉛直方向に並んで配置された第1ホルダ12及び第2ホルダ14からなる金属製のホルダ16と、ホルダ16を収容する金属製のハウジング18と、を備えている。
【0026】
第1ホルダ12は、中央に鉛直方向に沿って形成された貫通孔20を有する円筒形状とされており、第1ホルダ12の鉛直方向上部は、外径が鉛直方向下部の外径より小さくされた縮径部12Aとされている。同様に、第2ホルダ14は、中央に鉛直方向に沿って形成された貫通孔22を有する円筒形状とされており、第2ホルダ14の鉛直方向下端部は、外径が鉛直方向上端部の外径より小さくされた縮径部14Aとされている。
【0027】
ハウジング18は、鉛直方向に並んで配置された上側ハウジング28及び下側ハウジング30を備えており、上側ハウジング28及び下側ハウジング30は、第1ホルダ12及び第2ホルダ14をそれぞれ収容する凹部28A、30Aを有している。また、上側ハウジング28に形成された雌ネジ部28Bと下側ハウジング30に形成された雄ねじ部30Bとが螺合することにより、上側ハウジング28と下側ハウジング30とが固定されている。
【0028】
第1ホルダ12の縮径部12Aの外周面及び第2ホルダ14の縮径部14Aの外周面には、軸受24、26がそれぞれ嵌め込まれている。そして、軸受24、26を介して第1ホルダ12が上側ハウジング28の凹部28Aに、第2ホルダ14が下側ハウジング30の凹部30Aに、それぞれホルダ16の中心軸P周りに回転可能に収容されている。
【0029】
第1ホルダ12の第2ホルダ14に対向する対向面12B(鉛直方向下端面)、及び第2ホルダ14の第1ホルダ12に対向する対向面14B(鉛直方向上端面)は、互いに水平方向に延びている。また、対向面12B、14Bにおける貫通孔20、22の開口部20A、22Aの周縁部分は、それぞれ固定部32、34とされている。
【0030】
さらに、
図2(A)に示すように、固定部32、34には、第1ホルダ12及び第2ホルダ14の対向面12B、14Bから突出する複数(本実施形態では3つ)の突起36、38がそれぞれ形成されている。
【0031】
突起36、38は、
図2(B)に示すように、貫通孔20、22の開口部20A、22Aの周縁に沿って全周にわたって形成されている。また、突起36、38は、
図2(A)に示すように、ホルダ16の中心軸P方向に沿った断面において直角三角形形状とされている。
【0032】
具体的には、突起36、38は、第1ホルダ12及び第2ホルダ14の対向面12B、14Bから突起36、38の頂点へ向かってホルダ16の径方向外側へ傾斜する傾斜面36A、38Aと、第1ホルダ12及び第2ホルダ14の対向面12B、14Bから突起36、38の頂点へ向かって鉛直方向に延びる直交面36B、38Bと、を有している。
【0033】
上側ハウジング28及び下側ハウジング30の螺合により、
図1、
図2(A)に示すように、第1ホルダ12の固定部32と第2ホルダ14の固定部34との間には、試験片Sの周縁部が狭持される。なお、試験片Sは、後述するように、一例として金属材料より軟質のウレタン等の樹脂材料からなり、円形の平板状に加工されている。
【0034】
また、第2ホルダ14の貫通孔22内には、保持部材の一例としてのロッド40と、ロッド40の鉛直方向上端面(長手方向一端側の端面)に載置された当接部材の一例としての鋼球42とが挿入されている。
【0035】
ロッド40は、貫通孔22の内径より外径が小さくされた金属製の円柱形状の部材であり、中心軸がホルダ16の中心軸Pに重なるように配置されている。また、ロッド40の鉛直方向上端面には凹部44が形成されており、凹部44の内周面44Aは、鉛直方向下端側(長手方向他端側)に向かうに従ってロッド40の中心軸に近づくように直線状に傾斜する傾斜面(円錐面)とされている。
【0036】
鋼球42は、貫通孔22の内径より直径が小さく、かつロッド40の外径より直径が大きくされており、鉛直方向下側の部分がロッド40の凹部44内に嵌まっている。なお、鋼球42は、ロッド40の凹部44の内周面44Aに沿って移動することにより、芯出し状態、すなわち中心がロッド40の中心軸上に位置する状態で保持されている。また、鋼球42は、ロッド40の鉛直方向上端面に載置された状態において、試験片Sとの間に間隔をあけた状態で保持されている。
【0037】
図1に示すように、ロッド40の鉛直方向下端部には駆動部46が連結されている。駆動部46は、例えば図示しないポンプやシリンダ等を備える油圧シリンダであり、ポンプによって作動油に圧力を加えてシリンダ内に作動油を送り出すことにより、油圧によってロッド40を鉛直方向上向き、すなわち試験片Sを押圧する方向に駆動する。
【0038】
また、ロッド40の鉛直方向下端部には、ロードセル48が取付けられている。ロードセル48は、ロッド40に加わる荷重(圧力)を測定して電気信号に変換する。同様に、ロッド40の鉛直方向上端部には、変位センサ50が設けられている。変位センサ50は、例えばレーザ変位計であり、レーザによってロッド40の変位を測定して電気信号に変換する。
【0039】
ロードセル48及び変位センサ50によって材料試験装置10の測定部が構成されている。また、材料試験装置10は、駆動部46を制御するとともに、ロードセル48及び変位センサ50から出力された電気信号を検出して記憶し、データ処理を行う制御部52を備えている。
【0040】
<試験方法>
材料試験装置10によって材料試験を行う場合、まず、試験対象である試験片Sを作製する。試験片Sは、熱分析装置によって熱分析した後の試料をそのまま用いることが可能である。また、現場に設置されている樹脂製の構造物から採取した材料を、例えば円形の平板状に加工することで試験片Sを作製することも可能である。本実施形態では、一例として、ウレタン樹脂材料を切削して平板状に加工した後、直径5mmの円盤状に打ち抜いたものを試験片Sとして用いている。
【0041】
次に、下側ハウジング30の凹部30Aに軸受26を介して第2ホルダ14を嵌め込み、第2ホルダ14の対向面14Bに試験片Sを載置する。そして、試験片Sの上に第1ホルダ12を載置することで、第1ホルダ12の固定部32及び第2ホルダ14の固定部34によって試験片Sを狭持する。
【0042】
その後、軸受24を介して第1ホルダ12に上側ハウジング28を嵌め込み、上側ハウジング28の雌ネジ部28Bを下側ハウジング30の雄ねじ部30Bに螺合することで、
図1に示すように、材料試験装置10に試験片Sを固定する。
【0043】
このとき、試験片Sが金属より軟質のウレタン樹脂で構成されているため、
図3(A)に示すように、第1ホルダ12の固定部32及び第2ホルダ14の固定部34に形成されている突起36、38の頂点が、試験片Sの周縁部の上面及び下面にそれぞれ食い込む。なお、試験片Sをホルダ16に固定した段階において、鋼球42は駆動部46に連結されたロッド40によって試験片Sとの間に間隔をあけた状態で保持されている。
【0044】
次に、
図1に示す駆動部46によってロッド40を鉛直方向上向きに駆動して、
図3(B)に示すように、鋼球42を試験片Sの下面の中央部に当接させる。そのまま、
図3(C)に示すように、鋼球42によって試験片Sを押圧することで試験片Sに荷重を付加し、
図1に示す駆動部46によって、試験片Sが破断する位置までロッド40をさらに鉛直方向上向きに駆動する。
【0045】
鋼球42が試験片Sに当接してから試験片Sが破断するまでの間のロッド40に加わる荷重、すなわち鋼球42に加わる荷重を
図1に示すロードセル48で測定し、ロッド40の変位、すなわち鋼球42の変位を
図1に示す変位センサ50で測定することで、試験片Sの機械特性を測定する。
【0046】
<作用及び効果>
本実施形態では、試験片Sがウレタン樹脂で構成されているため、金属材料で構成されている試験片と比較して、小さい外力で試験片Sが大きく変形(変位)する。また、ハウジング18へのホルダ16の収容時や鋼球42による試験片Sの押圧時に生じるホルダ16の中心軸P周りのねじりモーメントにより、試験片Sが変形(変位)し易い。
【0047】
しかしながら、本実施形態によれば、試験片Sを押圧する前の段階(材料試験前の段階)において、鋼球42はロッド40によってホルダ16に固定された試験片Sとの間に間隔をあけた状態で保持されている。このため、試験片Sを押圧する前に試験片Sに鋼球42が当接して試験片Sに外力が加わることを抑制することができ、試験片Sが低強度及び低剛性の材料又は試料から作製されている場合であっても、材料試験の測定誤差を小さく抑え、試験片Sの機械特性を精度よく測定することができる。
【0048】
また、ホルダ16が、ハウジング18に対して軸受24、26を介して中心軸P周りに回転可能とされているため、試験片Sにねじりモーメントが生じた際に、試験片Sとともに試験片Sが固定されているホルダ16がハウジング18に対して回転する。このため、ねじりモーメントが試験片Sに作用することを抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、駆動部46によってロッド40を鉛直方向上向きに駆動することで、鋼球42を試験片Sの下面に当接させている。このため、ロッド40を鉛直方向下向きに駆動して鋼球42を試験片Sの上面に当接させる構成と比較して、ロッド40は重力を利用して鋼球42を試験片Sとの間に間隔をあけた状態で容易に保持することができる。
【0050】
また、ロッド40の鉛直方向上端面に凹部44が形成されており、凹部44の内周面44Aが傾斜面とされている。このため、鋼球42の中心がロッド40の中心軸上に位置するようにロッド40の凹部44内において鋼球42を芯出し状態とすることができ、ロッド40に対する鋼球42の位置がずれたりロッド40から鋼球42が落下したりすることを抑制することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、当接部材として鋼球42を用いているため、鋼球42のどの面が試験片Sに当接したとしても当接面が球面となる。このため、試験片Sに当接する当接面のみが球面とされている当接部材を用いる構成と比較して、確実に球面を試験片Sに当接させることができ、材料試験の精度を高めることができる。また、鋼球42を交換するだけで、当接面を試験片Sの材質や大きさ、厚さ等に応じた適切な材質及び寸法とすることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、第1ホルダ12の固定部32及び第2ホルダ14の固定部34にそれぞれ突起36、38が形成されており、突起36、38の頂点を試験片Sに食い込ませることで試験片Sを固定部32、24に固定している。
【0053】
このため、現場で採取した僅かな大きさの材料から試験片Sを作製した場合や、熱分析装置に入るように小さく加工した試料から試験片Sを作製した場合等、試験片Sの直径が小さい場合であっても、突起36、38によって試験片Sの周縁部を保持することにより、材料試験中にホルダ16から試験片Sが外れることを抑制することができる。
【0054】
さらに、突起36、38が、ホルダ16の径方向外側へ傾斜する傾斜面36A、38A、及び鉛直方向に延びる直交面36B、38Bを有する直角三角形形状とされている。このため、突起36、38上に載置された試験片Sが鋼球42によって押圧された際に、試験片Sの径方向内側へのずれを突起36、38の直交面36B、38Bによって抑えることができ、試験片Sが小さい材料又は試料から作製されている場合であっても、試験片Sの機械特性を精度よく測定することができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る材料試験装置及び材料試験方法について、
図4を用いて説明する。なお、ハウジング18やロードセル48、変位センサ50等の第1実施形態と同様の構成については、図示及び説明を省略する。
【0056】
<構成>
図4に示すように、本実施形態の材料試験装置60は、水平方向に並んで配置された第1ホルダ62及び第2ホルダ64からなる金属製のホルダ66を備えている。また、第1ホルダ62及び第2ホルダ64は、中央に水平方向に沿って形成された貫通孔68、70を有する円筒形状とされている。
【0057】
第1ホルダ62の第2ホルダ64に対向する対向面62A、及び第2ホルダ64の第1ホルダ62に対向する対向面64Aは互いに鉛直方向に延びている。また、第1実施形態のホルダ16と同様に、対向面62A、64Aにおける貫通孔68、70の周縁部分は、複数の突起72、74がそれぞれ形成された固定部76、78とされており、固定部76、78には試験片Sが保持される。
【0058】
また、第2ホルダ64の貫通孔70内には、当接部材の一例としてのピン80が挿入されている。ピン80は、貫通孔70の内径より外径が小さくされた金属製の円柱形状の部材であり、中心軸がホルダ66の中心軸Pに重なるように配置されている。さらに、試験片Sに対向するピン80の長手方向一端側の端部は半球体形状とされており、試験片Sに当接するピン80の当接面80Aが球面とされている。
【0059】
また、第2実施形態では、駆動部46がピン80の保持部材を兼ねており、駆動部46によってピン80を水平方向に駆動するとともに、駆動前の段階において、ピン80を当接面80Aと試験片Sとの間に間隔をあけた状態で保持している。
【0060】
<試験方法>
材料試験装置60によって材料試験を行う場合、第1実施形態と同様に、第1ホルダ62の固定部76及び第2ホルダ64の固定部78によって試験片Sを狭持する。なお、試験片Sをホルダ66に固定した段階において、ピン80はクランプ82によって当接面80Aと試験片Sとの間に間隔をあけた状態で保持されている。
【0061】
次に、駆動部46によってピン80を水平方向一端側(
図4における右側)に駆動して、ピン80の当接面80Aによって試験片Sの端面(
図4における左端面)の中央部を押圧することで試験片Sに荷重を付加する。
【0062】
第1実施形態と同様に、ピン80の当接面80Aが試験片Sに当接してから試験片Sが破断するまでの間のピン80に加わる荷重、及びピン80の変位を図示しないロードセルと変位センサで測定することで、試験片Sの機械特性を測定する。
【0063】
<作用及び効果>
本実施形態では、当接部材が円柱形状のピン80とされているため、当接部材が鋼球である第1実施形態の構成と比較して、当接部材の取り扱いが容易となる。すなわち、当接部材を第1ホルダ62の貫通孔68内に挿入したり、当接部材を試験片Sとの間に間隔をあけた状態で保持したりすることが容易となる。
【0064】
また、本実施形態によれば、駆動部46によってピン80を駆動するとともに、ピン80を試験片Sとの間に間隔をあけた状態で保持することができる。このため、駆動部46とは別に保持部材を設ける構成と比較して、部品点数を減らすことができる。
【0065】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る材料試験装置及び材料試験方法について、
図5を用いて説明する。なお、ハウジング18やロードセル48、変位センサ50等の第1実施形態、第2実施形態と同様の構成については、図示及び説明を省略する。
【0066】
<構成>
図5に示すように、本実施形態の材料試験装置90は、鉛直方向に並んで配置された第1ホルダ92及び第2ホルダ94からなる金属製のホルダ96を備えている。また、第1ホルダ92及び第2ホルダ94は、中央に鉛直方向に沿って形成された貫通孔98、100を有する円筒形状とされている。
【0067】
第1ホルダ92の第2ホルダ94に対向する対向面92A、及び第2ホルダ94の第1ホルダ92に対向する対向面94Aは互いに水平方向に延びている。また、第1実施形態、第2実施形態のホルダ16、66と同様に、対向面92A、94Aにおける貫通孔98、100の周縁部分は、複数の突起102、104がそれぞれ形成された固定部106、108とされており、固定部106、108には試験片Sが保持される。
【0068】
また、第2ホルダ94の貫通孔100内には、保持部材の一例としてのロッド110と、ロッド110の鉛直方向下端面(長手方向一端側の端面)に保持された当接部材の一例としての磁性体からなる鋼球112とが挿入されている。
【0069】
ロッド110は、貫通孔100の内径より外径が小さくされた円柱形状の部材であり、中心軸がホルダ96の中心軸Pに重なるように配置されている。また、ロッド110は、全体又は鋼球112と接する部分である鉛直方向下端部がフェライト磁石等の磁力を有する材料で構成されている。
【0070】
さらに、ロッド110の鉛直方向下端面には凹部114が形成されており、凹部114の内周面114Aは、鉛直方向上端側(長手方向他端側)に向かうに従ってロッド110の中心軸に近づくように傾斜し、かつ鋼球112の外面に沿って湾曲する傾斜面(球面)とされている。
【0071】
鋼球112は、貫通孔100の内径より直径が小さく、かつロッド110の外径より直径が大きくされており、ロッド110の鉛直方向下端面に磁力によって吸着(磁着)されている。このとき、鋼球112は、ロッド110と接する部分である鉛直方向上側の部分がロッド110の凹部114内に嵌まるとともに、芯出し状態、すなわちロッド110の凹部114の内周面114Aに沿って中心がロッド110の中心軸上に位置する状態で保持されている。また、鋼球112は、ロッド110によって試験片Sとの間に間隔をあけた状態で保持されている。
【0072】
<試験方法>
材料試験装置90によって材料試験を行う場合、第1実施形態、第2実施形態と同様に、第1ホルダ92の固定部106及び第2ホルダ94の固定部108によって試験片Sを狭持する。なお、試験片Sをホルダ96に固定した段階において、鋼球112はロッド110によって試験片Sとの間に間隔をあけた状態で保持されている。
【0073】
次に、図示しない駆動部によってロッド110及び鋼球112を鉛直方向下向きに駆動して、鋼球112によって試験片Sの上面の中央部を押圧することで試験片Sに荷重を付加する。
【0074】
第1実施形態、第2実施形態と同様に、鋼球112が試験片Sに当接してから試験片Sが破断するまでの間のロッド110に加わる荷重(鋼球112に加わる荷重)、及びロッド110の変位(鋼球112の変位)を図示しないロードセルと変位センサで測定することで、試験片Sの機械特性を測定する。
【0075】
<作用及び効果>
本実施形態では、鋼球112が磁性体とされ、ロッド110が磁力を有する材料で構成されているため、鋼球112をロッド110の鉛直方向下端面に磁力によって吸着させることができる。このため、ロッド110によって、鋼球112を試験片Sとの間に間隔をあけた状態で鉛直方向下向きに保持することが可能となる。
【0076】
また、本実施形態によれば、ロッド110の鉛直方向下端面に凹部114が形成されており、凹部114の内周面114Aが湾曲面とされている。このため、鋼球112の中心がロッド110の中心軸上に位置するように、鋼球112をロッド110の凹部114の内周面114Aに沿って芯出し状態とすることができる。
【0077】
(その他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能である。また、第1〜第3実施形態の構成は適宜組み合わせることができる。
【0078】
例えば、第2実施形態ではピン80を水平方向一端側に駆動し、第3実施形態ではロッド110を鉛直方向下向きに駆動していたが、第1実施形態と同様に、ピン80やロッド110を鉛直方向上向きに駆動して試験片Sの下面に押し当てる構成としてもよい。
【0079】
また、第1〜第3実施形態では、第1ホルダ12、62、92及び第2ホルダ14、64、94によって試験片Sの両面を狭持する構成とされていたが、試験片Sの保持方法は上記実施形態には限られず、試験片Sの片面のみをホルダ16、66、96によって保持する構成としてもよい。
【0080】
また、例えば第1実施形態では、ロッド40を駆動することによって鋼球42を試験片Sに押し当てていた。しかし、駆動部46をホルダ16側に設け、駆動部46によって試験片Sが保持されたホルダ16を駆動することによって試験片Sを鋼球42に押し当てる構成としてもよい。ホルダ16側を駆動させる、すなわちロッド40側を駆動させないことで、ロッド40に対する鋼球42の位置がずれたりロッド40から鋼球42が落下したりすることをより抑制することができる。
【0081】
さらに、第1実施形態において、材料試験装置10のホルダ16の周囲に、制御部52で制御され、加熱機能及び冷却機能の少なくとも一方を有する図示しない温度制御装置を設け、試験片Sを任意の温度に保持しながら、又は試験片Sの温度を変化させながら材料試験を行ってもよい。
【0082】
また、第3実施形態では、鋼球112を磁力によってロッド110の鉛直方向下端面に吸着(磁着)させる構成とされていた。しかし、例えばロッド110の鉛直方向下端面に開口する小さな貫通孔をロッド110内に形成し、空気を吸引して貫通孔内を負圧にすることで、ロッド110の鉛直方向下端面に鋼球112を吸着させる構成としてもよい。
【0083】
また、第1実施形態では、試験片Sが金属材料より軟質のウレタン樹脂で構成されていたが、試験片Sはウレタン樹脂より硬質なエポキシ樹脂や金属材料等、どのような材料で構成されていてもよい。なお、試験片Sが硬質な材料で構成されている場合、ホルダ16の突起36、38は試験片Sに食い込む必要は無く、突起36、38によって試験片Sが保持されていればよい。
【0084】
また、第1実施形態では、第1ホルダ12及び第2ホルダ14にそれぞれ軸受24、26が嵌め込まれていたが、第1ホルダ12及び第2ホルダ14のどちらか一方のみに軸受が嵌め込まれていてもよい。さらに、上側ハウジング28及び下側ハウジング30に、第1ホルダ12及び第2ホルダ14が軸受24、26を介さずに直接収容されていてもよい。
【0085】
さらに、第1実施形態では、上側ハウジング28及び下側ハウジング30を互いに螺合することで、上側ハウジング28と下側ハウジング30との間に収容された第1ホルダ12及び第2ホルダ14を互いに固定していた。
【0086】
しかし、例えば第1ホルダ12に貫通孔が形成されたフランジを設け、第2ホルダ14に雌ネジ部が形成されたフランジを設け、ボルトを貫通孔に挿入して雌ネジ部に螺合させる、もしくは、第2ホルダ14の雌ネジ部を貫通孔とし、両貫通孔に挿入したボルトにナットを螺合することにより、第1ホルダ12及び第2ホルダ14を互いに固定してもよい。
【0087】
このような構成とすることで、第1ホルダ12及び第2ホルダ14を固定する際に、第1ホルダ12及び第2ホルダ14にねじりモーメントが生じることを抑制することができる。その他、第1ホルダ12及び第2ホルダ14にねじりモーメントが生じることを抑制することができる固定方法であれば、図示しないクリップで第1ホルダ12及び第2ホルダ14を狭持する方法等、任意の固定方法を用いることができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明の実施例1、2、及び比較例1について
図6を用いて具体的に説明する。なお、以下の実施例1、2及び比較例1では、
図1に示す第1実施形態の材料試験装置10と同様の構成の材料試験装置を用いて試験片の材料試験を行った。
【0089】
試験片は、未劣化のウレタン樹脂からなる平板状の材料片を、コルクポーラ等の工具を用いて直径5mm、厚さ1mmの円盤状に打ち抜くことで作製した。また、試験片を保持する第1ホルダの固定部の幅を0.75mm、貫通孔の内径を3.5mmとした。なお、鋼球を保持するロッドの外径、及び第2ホルダの貫通孔の内径は、鋼球の直径に合わせて適宜設定した。
【0090】
(実施例1)
実施例1では、鋼球の直径を2.0mmとして材料試験を複数回行った。なお、試験片Sに付加する荷重は、試験片Sの平面内の点対称引張モードの荷重である。ロードセルによって測定した試験片に加わる荷重と、変位センサによって測定した試験片の変位を
図6(A)に示す。
図6(A)から分かるように、直径5mmの試験片の下面に直径2.0mmの鋼球を押し当てることによって荷重変位曲線を得ることができ、試験片の機械特性を得ることができた。
【0091】
(実施例2)
実施例2では、鋼球の直径を2.5mmとして材料試験を複数回行った。ロードセルによって測定した試験片に加わる荷重と、変位センサによって測定した試験片の変位を
図6(B)に示す。
図6(B)から分かるように、直径5mmの試験片の下面に直径2.5mmの鋼球を押し当てることによって荷重変位曲線を得ることができ、試験片の機械特性を得ることができた。
【0092】
(比較例1)
比較例1では、鋼球の直径を3.0mmとして材料試験を複数回行った。ロードセルによって測定した試験片に加わる荷重と、変位センサによって測定した試験片の変位を
図6(C)に示す。比較例1では、
図6(C)に示すように、荷重変位曲線が段々状となり、所望の荷重変位曲線を得ることができなかった。
【0093】
すなわち、鋼球によって押圧されて変形した試験片が第1ホルダの貫通孔の内周面に接触し、試験片に鋼球による押圧力以外の荷重が加わってしまうため、鋼球の影響のみによる荷重変位曲線を得ることができなかった。
【0094】
実施例1、2、及び比較例1より、第1ホルダの貫通孔の内径を3.5mm、試験片を直径5mm、厚さ1mmとした場合、鋼球の直径を3.0mmより小さくすることで所望の荷重変位曲線を得ることができることが確認できた。
【0095】
なお、鋼球の直径が試験片の厚さよりも小さい場合、負荷モードが試験片を針で突いた場合のような穿孔による破壊モードになってしまい、引張モードでは無くなってしまう。すなわち、鋼球の直径が試験片の厚さよりも小さい場合、所望の荷重変位曲線を得ることができないため、鋼球の直径を1.0mmより大きくすることが好適である。