特許第6741277号(P6741277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6741277硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖及びその調製法と施用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6741277
(24)【登録日】2020年7月29日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖及びその調製法と施用
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/10 20060101AFI20200806BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20200806BHJP
   A61K 31/727 20060101ALI20200806BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20200806BHJP
【FI】
   C08B37/10
   A61P35/04
   A61K31/727
   A23L33/10
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-534943(P2018-534943)
(86)(22)【出願日】2015年12月30日
(65)【公表番号】特表2019-501263(P2019-501263A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】CN2015099901
(87)【国際公開番号】WO2017113197
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2018年8月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518230854
【氏名又は名称】シェンツェン ヘパリンク ファーマスーティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN HEPALINK PHARMACEUTICAL GROUP CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】リ, リ
【審査官】 高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−522823(JP,A)
【文献】 再公表特許第2005/092348(JP,A1)
【文献】 特表2012−526099(JP,A)
【文献】 特開2012−051926(JP,A)
【文献】 特表2005−504067(JP,A)
【文献】 特表2013−512904(JP,A)
【文献】 特表2009−538386(JP,A)
【文献】 特表2014−511929(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103288981(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103788232(CN,A)
【文献】 特表2015−514098(JP,A)
【文献】 特開平03−210302(JP,A)
【文献】 特開昭59−133201(JP,A)
【文献】 Maurice Petitou et al.,Journal of Biological Chemistry,1988年,Vol 263,No.18,8685-8690
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の混合物であって、該硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖分子がその非還元末端にヘパリナーゼによる酵素分解から生じた不飽和二重結合を含有し、ウロン酸誘導体及びグリコシルアミン誘導体を含み、式I:
【化1】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びRが独立してSO又はHであり、R’、R’及びR’が独立してCOCH又はSOであり、nが1〜3であり、
各二糖単位内のスルホン基の数が平均2以上であり、各二糖単位内のアセチル基の数が平均0.5以下であり、
式I中のウロン酸がグルクロン酸又はイズロン酸であり、
式I中に含有されるカルボキシル及び/又はスルホン基と塩を形成する陽イオンがNa、K又はCa2+からなる群から選択される)
によって表される構造を有する、硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の混合物。
【請求項2】
各二糖単位内グルコサミン中6位及び3位におけるスルホン基の数がいずれも平均0.5以上である、請求項1に記載の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の混合物。
【請求項3】
硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の硫酸化度が40〜60%である、請求項1又は2に記載の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の混合物。
【請求項4】
以下のステップ:
(1)ヘパリナーゼでヘパリンを分解し、分離し精製してヘパリン由来オリゴ糖を得るステップ、及び
(2)ステップ(1)中で得たヘパリン由来オリゴ糖を硫酸化試薬で硫酸化して硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の混合物を得るステップを含み、
ステップ(1)中のヘパリナーゼがヘパリナーゼIである、請求項1〜のいずれか一項に記載の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の混合物の調製法。
【請求項5】
ステップ(1)においてヘパリナーゼでヘパリンを分解するとき、Tris−HClバッファー、pH7.0を加える必要がある、請求項に記載の調製法。
【請求項6】
ステップ(1)中で加えるヘパリナーゼの量が18〜23IU/ヘパリン1gである、請求項又はに記載の調製法。
【請求項7】
ステップ(1)中のヘパリナーゼによるヘパリン分解に関する温度が8℃〜25℃であり、ステップ(1)中の分解に関する時間が10〜20時間である、請求項のいずれか一項に記載の調製法。
【請求項8】
ステップ(1)中のヘパリナーゼによるヘパリンの分解が、分解後に6分間、95℃での不活性化を含む、請求項のいずれか一項に記載の調製法。
【請求項9】
ステップ(1)中の分離が限外濾過を含み、前記限外濾過が10kDaの限外濾過遠心分離用チューブを用いて実施され、ステップ(1)中の精製がカラムクロマトグラフィーによる分離及び精製である、請求項のいずれか一項に記載の調製法。
【請求項10】
ステップ(2)中の硫酸化の前に、ステップ(1)中で得たヘパリン由来オリゴ糖に膨張処理を施し、
膨張処理に使用する溶媒がDMFである、請求項のいずれか一項に記載の調製法。
【請求項11】
ステップ(2)中の硫酸化試薬が(CHN・SOであり、
ヘパリン由来オリゴ糖1gに対して、硫酸化試薬の量が1〜10gであり、
ステップ(2)中の硫酸化に関する温度が60℃〜120℃であり、
ステップ(2)中の硫酸化に関する時間が1〜12時間である、請求項10のいずれか一項に記載の調製法。
【請求項12】
以下のステップ:
(1)Tris−HClバッファー、pH7.0であるバッファー内で8時間〜24時間4℃〜37℃において、15〜25IU/ヘパリン1gの量で加えるヘパリナーゼIでヘパリンを分解し、分解後に5〜10分間95℃で不活性化し、10kDaの限外濾過遠心分離用チューブを用いて限外濾過し、次いでカラムクロマトグラフィーにより分離し精製してヘパリン由来オリゴ糖を得るステップ、及び
(2)ステップ(1)中で得たヘパリン由来オリゴ糖を1〜12時間60℃〜120℃において硫酸化試薬で硫酸化して硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の混合物を得るステップを含む、請求項に記載の調製法。
【請求項13】
抗腫瘍転移の使用のための、請求項1〜のいずれか一項に記載の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗腫瘍薬の分野に存し、硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖及びその調製法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は人間の健康に対する主たる脅威であり、更に深刻なことに、例えば肝臓がん及び肺がん等の悪性腫瘍は転移する傾向がある。現在、腫瘍転移を阻害するための薬物は存在せず、腫瘍転移の治療は難しくなり、したがって腫瘍転移はがん患者の最も重大な死因となる。2つのプロセスが、腫瘍細胞の侵入及び移動を実施するのに非常に重要である。1つは細胞外マトリックス(ECM)と基底膜(BM)により形成された障壁を介しての破壊であり、もう1つは新たな血管の形成である。ECMとBMは腫瘍細胞の侵入及び転移に対する障壁であり、悪性腫瘍細胞はECMとBMを介して循環系に侵入し、蔓延し転移するはずである。このプロセス中、ECM及びヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG)の様々な成分の分解が必須である。ヘパラナーゼ(HPA)は、現在哺乳動物において見られヘパラン硫酸(HS)を切断することができる唯一のエンド−β−D−グルクロニダーゼである。HPAはHSの特異的構造を識別し、HPAはHS側鎖を完全には切断せず、10〜15糖単位の短い糖鎖として分解されるHS側鎖中の特定部位におけるグリコシド結合のみを切断する。更にHS側鎖は、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、モルフォゲン及び血液凝固因子タンパク質等の様々な生物活性分子と結合することができる。HPAはHSを分解して、腫瘍血管形成、並びに腫瘍増殖、侵入及び転移を促進し得る活性増殖因子を放出する。したがって、HPAは腫瘍細胞の侵入及び転移において重要な役割を果たし、HPA阻害剤の研究及びスクリーニングによって、人間はがん治療の可能性がある薬物を探し求める新たな方向に向かっている。
【0003】
長い間、臨床的エビデンスはヘパリンに抗腫瘍効果があることを示し、近年、低分子量ヘパリン補助型抗腫瘍療法に関する臨床試験が行われている。長期の研究後、ヘパリンの抗腫瘍効果は産業界で広く認識及び理解されており、それは主に腫瘍転移を阻害することによって実現することができ、in vivoのヘパラナーゼ活性を阻害することによって更に実現することができる。
【0004】
ヘパリンは、伝統的な抗凝固因子として、その抗凝固活性に関して主に使用される。しかしながらヘパリンは、その構造多様性のため広範囲の生物活性を有する。ヘパリンの非抗凝固施用では、その抗凝固活性が共通の重大な副作用である。このように、ヘパリンの抗凝固活性は抗腫瘍転移の施用における主たる不利な要因であり、それは出血等の副作用を引き起こす傾向がある。ヘパリンの非抗凝固活性の施用に関する研究における重要な一態様は、ヘパリンの基本構造を維持しながらの抗凝固活性の破壊である。抗腫瘍転移に関して、ヘパリンはヘパラナーゼに対する高い阻害活性を有するが、腫瘍増殖の阻害、及び細胞レベルでの腫瘍細胞の侵入と接着に対する阻害活性に対して有意な影響はなく、マウスの抗腫瘍転移実験において良くない結果を得て、したがって腫瘍転移の発生を有意に阻害することができない。その主な理由はヘパリンの特異性が高くないことである可能性があり、したがってヘパリンは様々な内在物質と相互作用する可能性があり、ヘパラナーゼと結合するその能力は低下する可能性がある。
【0005】
CN101824100Aは、以下の構造式:
【化1】

を有し、血管平滑筋細胞の増殖を予防する用途がある、ヘパリン由来オリゴ糖ドデカマーを開示する。しかしながら、その発明のオリゴ糖には、腫瘍細胞の接着と移動を阻害する有意な能力はない。
【0006】
CN104764847Aは、N−アセチル化構造を含むヘパリン由来オリゴ糖を調製する方法を開示し、以下の4つの六糖断片と3つの八糖断片がこの参照文献中に開示される:
【数1】
【0007】
その発明は、N−アセチル化構造を含むヘパリン由来オリゴ糖の調製及び構造確認における難点に対処しているだけで、in vivoヘパラナーゼ阻害活性の有意な改善は達成していない。
【0008】
このように、当技術分野では、in vivoヘパラナーゼ阻害活性及び低い抗凝固活性を有するヘパリン由来オリゴ糖を得ることが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術の欠点に対処するため、本発明の目的は、硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖及びその調製法と使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を遂行するため、以下の技術的解決策を本発明において利用する。
【0011】
第1の態様では、本発明は、その非還元末端にヘパリナーゼによる酵素分解から生じた不飽和二重結合を含有し、ウロン酸誘導体及びグリコシルアミン誘導体を含み、式I:
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びRが独立してSO又はHであり、R’、R’及びR’が独立してCOCH又はSOであり、nが1〜3である)
によって表される構造を有する硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖を提供する。
【0012】
本発明中、nは1〜3、すなわち1、2、又は3である。n=1のとき硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖は硫酸化ヘパリン由来六糖であり、n=2のとき硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖は硫酸化ヘパリン由来八糖であり、n=3のとき硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖は硫酸化ヘパリン由来十糖である。
【0013】
本発明の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の構造中には二重結合が存在し、したがってこれは約232nmでの紫外線領域中に強い吸収ピークがあり、ヘパリン由来オリゴ糖の定性及び定量決定に非常に都合よく利用することができる。
【0014】
本発明の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖は、ヘパラナーゼ及び腫瘍転移に対する優れた阻害活性を有する。それは短い糖鎖及び低分子量を有し、抗凝固活性は全くない。一方、硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖は高い特異性を有し、したがってヘパラナーゼを特異的に阻害し腫瘍転移を阻害することができる。
【0015】
本発明の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖では、式I中、各二糖単位内のスルホン基の数は平均2以上であり、例えば各二糖単位内のスルホン基の数は平均2、3、4、又は5であってよく、各二糖単位内のアセチル基の数は平均0.5以下であり、例えばそれは0.5又は0.4であってよく、各二糖単位内グルコサミン中6位及び3位におけるスルホン基の数はいずれも平均0.5以上であり、例えばそれは0.5、0.8、1、1.5、又は2であってよい。
【0016】
各二糖単位内の基(例えばスルホン基、アセチル基、又はグルコサミン中6位及び3位におけるスルホン基)の数は、ヘパリン由来オリゴ糖全体中のスルホン基の数を各二糖単位に平均化することによって得られる数を指し、例えば硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖中に合計2個のアセチル基が存在する場合、各二糖単位内のアセチル基の数は平均0.5である。
【0017】
式I中のウロン酸は、グルクロン酸又はイズロン酸であることが好ましい。
【0018】
式I中に含有されるカルボキシル及び/又はスルホン基と塩を形成する陽イオンは、Na、K又はCa2+からなる群から選択されることが好ましい。
【0019】
前述の構造式中、グルクロン酸におけるカルボキシル又はスルホン基は負に帯電しており、したがって一般に特定陽イオン、典型的にはNa、K及びCa2+と塩を形成する。
【0020】
硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖は、以下の構造を有する化合物:
DP6、ヘパリン由来六糖誘導体:
ΔU3S−ANS3S−I−ANS3S−G3S−ANS3S6S
ΔU3S−ANS−I3S−ANS3S−G3S−ANS3S6S
ΔU2S3S−ANS3S6S−I3S−ANS3S−G2S3S−ANS3S6S
ΔU2S3S−ANS3S6S−I3S−ANS3S6S−G3S−ANS3S6S
ΔU2S3S−ANS3S6S−I3S−ANS3S6S−G2S3S−ANS3S6S
ΔU2S3S−ANS3S6S−I2S3S−ANS3S6S−G2S3S−ANS3S6S
DP8、ヘパリン由来八糖誘導体:
ΔU3S−ANS3S−I−ANS3S−I3s−ANS6S−G3S−ANS3S6S
ΔU3S−ANS−I3S−ANS3S−I3S−ANS6S−G3S−ANS3S6S
ΔU2S3S−ANS3S6S−I3S−ANS3S−I3S−ANS6S−G2S3S−ANS3S6S
ΔU2S3S−ANS3S6S−I3S−ANS3S6S−I3S−ANS6S−G3S−ANS3S6S
ΔU2S3S−ANS3S6S−I3S−ANS3S6S−I3S−ANS6S−G2S3S−ANS3S6S
ΔU2S3S−ANS3S6S−I2S3S−ANS3S6S−I2S3S−ANS6S−G2S3S−ANS3S6S
DP10、ヘパリン由来十糖誘導体:
ΔU3S−ANS3S−I−ANS3S−I−ANS6S−I−ANS6S−G3S−ANS3S6S
ΔU3S−ANS−I3S−ANS3S−I3S−ANS6S−I3S−ANS6S−G3S−ANS3S6S
ΔU2S3S−ANS3S6S−I3S−ANS3S−I3S−ANS6S−I3S−ANS6S−G3S−ANS3S6S
ΔU2S3S−ANS3S6S−I3S−ANS3S6S−I3S−ANS6S−I3S−ANS6S−G2S3S−ANS3S6S
ΔU2S3S−ANS3S6S−I2S3S−ANS3S6S−I2S3S−ANS6S−I2S3S−ANS6S−G2S3S−ANS3S6S
ΔU2S3S−ANS3S6S−I2S3S−ANS3S6S−I2S3S−ANS3S6S−I2S3S−ANS3S6S−G2S3S−ANS3S6S
のいずれか1つである、又はその少なくとも2つの組合せであることが好ましい。
【0021】
上記の構造中、ΔUは
【化3】

を表し、Iはα−L−イズロン酸を表し、Gはβ−D−グルクロン酸を表し、Aはα−D−グルコサミンを表す。NSはアミノ基におけるスルホン基を表し、2S、3S、6S等は糖環上の2−O、3−O、及び6−O位におけるスルホン基を表す。
【0022】
第2の態様では、本発明は、以下のステップ:
(1)ヘパリナーゼでヘパリンを分解し、分離し精製してヘパリン由来オリゴ糖を得るステップ、及び
(2)ステップ(1)中で得たヘパリン由来オリゴ糖を硫酸化試薬で硫酸化して硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖を得るステップを含む、第1の態様において記載した硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の調製法を提供する。
【0023】
本発明の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の調製法において、ステップ(1)中のヘパリナーゼはヘパリナーゼIである。
【0024】
本発明の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の調製法において、ステップ(1)においてヘパリナーゼでヘパリンを分解するとき、バッファー、好ましくはTris−HClバッファー、pH7.0を加える必要がある。
【0025】
ステップ(1)中で加えるヘパリナーゼの量は、15〜25IU/ヘパリン1g、例えば16IU/ヘパリン1g、16.5IU/ヘパリン1g、17IU/ヘパリン1g、17.5IU/ヘパリン1g、18IU/ヘパリン1g、18.5IU/ヘパリン1g、19IU/ヘパリン1g、19.5IU/ヘパリン1g、20IU/ヘパリン1g、21.5IU/ヘパリン1g、22IU/ヘパリン1g、23IU/ヘパリン1g又は24IU/ヘパリン1g、及び好ましくは18〜23IU/ヘパリン1gであることが好ましい。
【0026】
ステップ(1)中のヘパリナーゼによるヘパリン分解に関する温度は、4℃〜37℃、例えば5℃、8℃、10℃、12℃、15℃、18℃、20℃、22℃、25℃、28℃、30℃、32℃、35℃又は37℃、及び好ましくは8℃〜25℃であることが好ましい。
【0027】
ステップ(1)中の分解に関する時間は、8〜24時間、例えば9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間又は23時間、及び好ましくは10〜20時間であることが好ましい。
【0028】
ステップ(1)中のヘパリナーゼによるヘパリンの分解は、分解後に5〜10分間、例えば5.5分間、6分間、6.5分間、7分間、7.5分間、8分間、8.5分間、9分間、9.5分間又は9.8分間、好ましくは5〜8分間、及びより好ましくは6分間、95℃での不活性化を含むことが好ましい。
【0029】
ステップ(1)中の分離は限外濾過、好ましくは10kDaの限外濾過遠心分離用チューブを用いた限外濾過を含むことが好ましい。
【0030】
ステップ(1)中の精製はカラムクロマトグラフィーによる分離及び精製であることが好ましい。
【0031】
カラムクロマトグラフィーによる分離後、濃縮、脱塩及び凍結乾燥等の方法によってヘパリン由来オリゴ糖を得る。
【0032】
本発明の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の調製法において、ステップ(2)中の硫酸化の前に、ステップ(1)中で得たヘパリン由来オリゴ糖に膨張処理を施す。
【0033】
膨張処理に使用する溶媒はDMFであることが好ましい。
【0034】
ステップ(2)中の硫酸化試薬は(CHN・SOであることが好ましい。
【0035】
ヘパリン由来オリゴ糖1gに対して、硫酸化試薬の量は1〜10g、例えば1.2g、1.5g、2g、2.5g、3g、3.5g、4g、4.5g、5g、5.5g、6g、6.5g、7g、7.5g、8g、8.5g、9g、9.5g又は9.8gであることが好ましい。
【0036】
ステップ(2)中の硫酸化に関する温度は60℃〜120℃、例えば63℃、65℃、70℃、73℃、75℃、78℃、80℃、83℃、85℃、88℃、90℃、93℃、95℃、98℃、100℃、115℃、118℃又は120℃であることが好ましい。
【0037】
ステップ(2)中の硫酸化に関する時間は1〜12時間、例えば1.5時間、2時間、2.3時間、2.5時間、2.8時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、10.5時間、11時間又は11.5時間であることが好ましい。
【0038】
本発明中、ヘパリン由来オリゴ糖の硫酸化度は、ヘパリン由来オリゴ糖の硫酸化試薬に対する比、反応温度、及び反応時間を制御することにより制御することができ、様々な程度の硫酸基置換があるヘパリン由来オリゴ糖を得ることができる。
【0039】
本発明中、硫酸化試薬を用いてステップ(1)中で得たヘパリン由来オリゴ糖を硫酸化した後、反応混合物に後処理を施し精製する必要がある。すなわち、反応混合物に10倍体積の精製水を加えて沈殿を溶かし、100〜500Daの分子量カットオフがある透析用バッグに移し、3日間の透析後P10カラムで脱塩し、陽イオン交換カラムで陽イオン不純物を除去する前に濃縮し、高純度NaOH、KOH又はCa(OH)等で中和し、凍結乾燥又はエタノール沈殿前に濃縮し、相当する硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖を得る。
【0040】
本発明の好ましい技術的解決策として、本発明の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の調製法は、以下のステップ:
(1)Tris−HClバッファー、pH7.0であるバッファー内で8時間〜24時間4℃〜37℃において、15〜25IU/ヘパリン1gの量で加えるヘパリナーゼIでヘパリンを分解し、分解後に5〜10分間95℃で不活性化し、10kDaの限外濾過遠心分離用チューブを用いて限外濾過し、次いでカラムクロマトグラフィーにより分離し精製してヘパリン由来オリゴ糖を得るステップ、及び
(2)ステップ(1)中で得たヘパリン由来オリゴ糖を1〜12時間60℃〜120℃において硫酸化試薬で硫酸化して硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖を得るステップを含む。
【0041】
本発明の調製法を利用して、様々な硫酸化度の硫酸化オリゴ糖を得ることができる。硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖のそれぞれの糖鎖は、その非還元末端におけるヘパリナーゼによる酵素分解の除去反応から生じた二重結合を含有する。その構造中に二重結合が存在するため、オリゴ糖は約232nmでの紫外線領域中に強い吸収ピークがあり、ヘパリン由来オリゴ糖の定性及び定量決定に非常に都合よく利用することができる。二重結合は、ヘパリン由来オリゴ糖の硫酸化中は実質的に変化しない。ヘパリン自体には強く特徴的な吸収ピークはなく、したがってヘパリン物質は単にDMB染色等によって検出することはできるが、しかしながら低い感受性を有し複合系に順応し得ない。このように、二重結合の存在によってヘパリン由来オリゴ糖及びその誘導体の検出が非常に容易になり、生物学的代謝プロセスの検出においても重要な役割を果たし得る。
【0042】
第3の態様では、本発明は、抗腫瘍転移用医薬品の製造における、第1の態様において記載した硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の使用を提供する。
【0043】
本発明の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖は、ヘパラナーゼ及び腫瘍転移に対する優れた阻害活性を有し、腫瘍の治療用の抗腫瘍医薬品の製造用、並びに腫瘍転移の予防及び阻害用の抗腫瘍薬物として、又は抗腫瘍活性成分として使用することができる。
【0044】
本発明の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖において、様々なスルホン化度のヘパリン由来六糖、ヘパリン由来八糖及びヘパリン由来十糖は、いずれも有意な阻害活性を有する。同じスルホン化度では、異なる鎖長がヘパラナーゼに対する異なる阻害活性をもたらし、阻害活性レベルは、詳細にはスルホン化ヘパリン由来六糖<スルホン化ヘパリン由来十糖<スルホン化ヘパリン由来八糖である。同じ鎖長では、ヘパリン由来オリゴ糖の異なる硫酸化度がヘパラナーゼに対する異なる阻害活性をもたらし、詳細には低硫酸化(10〜40%)ヘパリン由来オリゴ糖<高硫酸化(60〜90%)ヘパリン由来オリゴ糖<中硫酸化(40〜60%)ヘパリン由来オリゴ糖である。硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の構造中、グリコシルアミン中の6位におけるスルホン化及びグリコシルアミン中の3位におけるスルホン化が、よりヘパラナーゼ阻害活性に貢献する。
【0045】
従来技術と比較して、本発明は以下の有利な効果を得る。
【0046】
本発明の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖はヘパラナーゼ及び腫瘍転移に対する優れた阻害活性を有し、短い糖鎖及び低分子量を含み、抗凝固活性は全くなく、抗凝固活性及び出血リスクはない。本発明の調製法は、in vitroでのヘパラナーゼに対する高い阻害活性、ヘパリンの活性より4〜5倍高い細胞接着及び移動に対する阻害活性、及びヘパリンの活性より2〜3倍高いマウスにおけるin vivo抗腫瘍転移活性を有し、したがって優れた抗腫瘍転移効果及び高い特異性を有する、硫酸化度が制御可能な硫酸化オリゴ糖を調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の実施例1におけるBio−GelP−10(2.5×100cm)クロマトグラフィー用カラムによるヘパリン由来オリゴ糖の分離の結果を示すグラフである。
図2】本発明の実施例1における同一重合度を有するヘパリン由来オリゴ糖の分子量分布を示すグラフである。
図3】本発明の実施例1において得たヘパリン由来十糖のUPLC−MSにおける全体イオンスペクトルである。
図4】本発明の実施例1において得たヘパリン由来十糖のUPLC−MSにおける全体イオンスペクトル(一部分)、及び対応するピークの属性である。
図5】ヘパリン由来八糖(A)及び40%硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖(B)のHSQCスペクトル及び対応する一次元水素スペクトルを示す図である(δHppm6.1〜3.165/δCppm112〜52.6)。
図6】ヘパラナーゼに対する硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の阻害活性の結果を示すグラフである。
図7】HeLa細胞の細胞接着に対する硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の阻害活性の結果を示すグラフである。
図8】HeLa細胞の細胞移動に対する硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の阻害活性の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の技術的解決策を、以下の具体的実施形態によりここで更に例証する。当業者によって理解され得るように、実施例は単に本発明の理解を助長するために与えられ、本発明に関して限定的であると考えるべきではない。
【実施例】
【0049】
実施例1.ヘパリン由来オリゴ糖の調製
24gのヘパリンを採取し、240mLのTris−HClバッファー溶液を加え、それを攪拌して溶かし、480IUのヘパリナーゼIを加え、均質状態まで攪拌し、16時間10℃で酵素反応を施した。反応が終了した後、反応混合物を6分間の不活性化のため95℃まで加熱し、10kDaの限外濾過遠心分離用チューブを用いて限外濾過した。Bio−GelP−10(2.5×100cm)クロマトグラフィー用カラム及び溶離剤として0.2MのNHHCOを用いて濾過物を分離し、1.75〜2.15倍のカラム体積分画を回収しヘパリン四糖混合物を得て、1.35〜1.75倍のカラム体積分画を回収しヘパリン由来六糖混合物を得て、1.05〜1.35倍のカラム体積分画を回収しヘパリン由来八糖混合物を得て、0.85〜1.05倍のカラム体積分画を回収しヘパリン由来十糖混合物を得て、0.75〜0.85倍のカラム体積分画を回収しヘパリン由来十二糖混合物を得た。ロータリーエバポレーションによりNHHCOを除去した後、対応するヘパリン由来オリゴ糖を凍結乾燥によって得た。
【0050】
Bio−GelP−10(2.5×100cm)クロマトグラフィー用カラムによるヘパリン由来オリゴ糖の分離を示すグラフである図1中に示したように、P10カラムによる分離後、ヘパリン由来オリゴ糖は異なる分子量に基づき異なるピークに分離されることを見ることができ、ピークの先端で分画を回収することによって異なる重合度を有するオリゴ糖を得ることができる。
【0051】
図2は、同一重合度を有する得られたヘパリン由来オリゴ糖の分子量分布を示す。オリゴ糖の分子量分布ピークは急激で対称的であることをグラフから見ることができ、オリゴ糖の分子量分布は狭い範囲内にあったことを示し、一方で分子量分布は十二糖から四糖に徐々に減少し、これらのオリゴ糖が品質要件に見合うことを示した。
【0052】
ヘパリン由来オリゴ糖の構造をUPLC−MS等の手段によって特徴付けし検証した。例えば、図3は本発明中で得たヘパリン由来十糖のUPLC−MSにおける全体イオン質量スペクトルであり、図4はヘパリン由来十糖の全体イオンスペクトルにおける対応するピークの属性を示すグラフであり、(x、y及びzの具体的な値をグラフ中に与える)ΔUx、y、zにおいて、xはオリゴ糖鎖中の糖単位の数を表し、yはオリゴ糖鎖中のスルホン基の全数を表し、zはオリゴ糖鎖中のアセチル基の全数を表し、LRは連結領域を表す。図4中の構造属性によれば、ヘパリン由来十糖中、オリゴ糖は大部分がヘパリン由来十糖であり、わずか一部分のみが高硫酸化ヘパリン由来八糖である。前述の特徴結果は、オリゴ糖の調製は成功であり純度要件に見合うことを示す。
【0053】
実施例2.20%〜80%硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖の調製
0.54gのヘパリン由来オリゴ糖の出発物質を計量し、反応フラスコに移し、25mLの無水DMFを加え、攪拌して溶かした。攪拌しながら、0.86gの(CHN・SOを計量し、前述の溶液に徐々に加え、10分間攪拌した。反応フラスコには適切にキャップを付け、油浴中に80℃で置き4時間攪拌した。室温まで冷却放置する前に反応を停止させた。固体は90mLの精製水中に溶かし、pHは2MのNaOHでほぼ中性に調節した。100〜500Daの分子量カットオフがある透析用バッグに溶液を移し、3日間の透析後、BaClを用いて透析物を検出し、多量のサルフェートラジカル(sulfate radicals)がその中に存在するかどうか決定した。存在しない場合、最初にpHを2MのNaOHで中性に調節し、ロータリーエバポレーターで約10mLに濃縮した。混合物はP2カラムに充填し、精製水で溶出し、溶出液はフラクションコレクターを用いて回収した。232nmにおける吸光度を検出してヘパリン由来八糖誘導体の位置を決定し、回収した溶液はBaClを用いて検出して多量のサルフェートラジカルがその中に存在するかどうか決定し、ヘパリン由来八糖硫酸化誘導体の無塩分画を回収した。この物質を約10mLに濃縮し、Dowex陽イオン交換カラムに充填し、精製水で溶出し、溶出液はフラクションコレクターを用いて回収し、232nmにおける吸光度を検出してヘパリン由来八糖誘導体の位置を決定した。ヘパリン由来八糖誘導体を含む分画を回収し、0.1M高純度NaOH溶液を用いてpH7.0に慎重に調節し、濃縮し凍結乾燥して20%硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖を得た。
【0054】
0.54gのヘパリン由来オリゴ糖の出発物質に関して、表1中に示したように反応の出発物質における(CHN・SOの供給量を調節すること、及び反応温度と反応時間を調節することによって、制御可能な形式で、示した硫酸化度を有するヘパリン由来オリゴ糖を得ることができる。
【表1】
【0055】
例えば、以下に示したような反応条件及び供給量の調節によって、対応する硫酸化度を有するヘパリン由来オリゴ糖を得ることができる。
【0056】
(CHN・SOの量を1.67gに調節し、反応温度は90℃に調節し、反応時間は4時間に調節し、残りの手順は同一で、40%硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖を得た。
【0057】
(CHN・SOの量を3.34gに調節し、反応温度は90℃に調節し、反応時間は6時間に調節し、残りの手順は同一で、60%硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖を得た。
【0058】
(CHN・SOの量を5.01gに調節し、反応温度は100℃に調節し、反応時間は8時間に調節し、残りの手順は同一で、80%硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖を得た。
【0059】
図5は、ヘパリン由来八糖(A)及び40%硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖(B)のHSQCスペクトル及び対応する一次元水素スペクトルを示す(δHppm6.1〜3.165/δCppm112〜52.6)。硫酸化反応後、ヘパリン由来八糖のシグナルピークが有意に変化し、天然ヘパリンと異なる構造の存在を示す多くの新たなシグナルが存在することをグラフから見ることができ、これは硫酸化誘導体の予想と一致する。
【0060】
実施例3.40%及び60%硫酸化ヘパリン由来八糖のヘパラナーゼ阻害活性
硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖のヘパラナーゼ阻害活性を、参照文献[Hammond E,Li CP,FerroV.Development of a colorimetric assay for heparanase activity suitable for kinetic analysis and inhibitor screening.Anal.Biochem.2011;396:112−116]中に記載された方法で決定した。詳細には、実験手順は以下の通りであった。
【0061】
試験群の反応溶液は、40mMの酢酸ナトリウムバッファー(pH5.0)、100mMのフォンダパリヌクス、及び特定濃度の硫酸化ヘパリン由来八糖を含んでおり、対照群の反応溶液中では、硫酸化ヘパリン由来八糖の濃度と同じSST0001対照に硫酸化ヘパリン由来八糖を置き換えた。試験群又は対照群の反応溶液100μLを96ウエルプレート中の各ウエルに加え、ヘパラナーゼを140pMの最終濃度までそれぞれ加えて反応を開始した。96ウエルプレートはテープで密封し、37℃で2〜24時間インキュベートした。反応が終了した後、0.1M NaOH中1.69mM WST−1を含有する溶液100μLを加えて反応を停止させた。96ウエルプレートを再度密封し、60℃で60分間インキュベートした。室温まで冷却した後、584nmにおける吸光度値を測定した。作用物質の阻害率は以下の方法に従い計算した:
阻害率=(1−試料の吸光度値/対照の吸光度値)×100%
【0062】
前述の方法に従い測定した硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖のヘパラナーゼ阻害活性を図6中に示す。ヘパラナーゼに対する40%硫酸化ヘパリン由来八糖(Hep8−40%)の半数最大阻害濃度(IC50)は43ng/mLであり、ヘパラナーゼに対する60%硫酸化ヘパリン由来八糖(Hep8−60%)の半数最大阻害濃度(IC50)は57ng/mLであったことをグラフから見ることができる。
【0063】
実施例4.20%及び60%硫酸化ヘパリン由来八糖の細胞接着アッセイ
この実施例中では、以下の方法を利用して20%及び60%硫酸化ヘパリン由来八糖の細胞接着を決定した。
【0064】
(1)基底膜のコーティング:それぞれ滅菌2回蒸留水で2溶液を調製し、10g/LのBSA(1%)、及び50mg/Lのマトリゲル(Matrigel)、1:8希釈、マトリゲルはそれぞれ50μL/ウエルで96ウエル培養プレートに加え、4℃で一晩インキュベートした;
【0065】
(2)基底膜の水和:残留液を培養プレートから吸引し、10g/LのBSAを含有する50μLの無血清培地を各ウエルに加え、37℃で30分間放置した。
【0066】
(3)細胞の調製:正常培養したHeLa細胞を採取し、PBSで3回洗浄し、細胞は(薬剤を加えず対応する体積のPBSのみ加えた)対照群と(ヘパリンと硫酸化ヘパリン由来八糖をいずれも62.5μg/mLの濃度で加えた)試験群に分け、24時間培養した。
【0067】
(4)細胞の接種:ステップ(3)中で24時間正常培養した又はヘパリン/HSオリゴ糖誘導体を用いて処理した腫瘍細胞を採取し、0.5mLのパンクレアチンで消化する前にPBSで3回洗浄した。消化は注意深くモニタリングし、消化後、5mLの培養培地を加え、細胞は全体ピペッティングにより分散させ単細胞懸濁液を形成した。細胞を計数し、細胞懸濁液の濃度を計数結果に従い調節して1mLあたり10個細胞の細胞密度を得た。細胞懸濁液はマトリゲルをコーティングした96ウエル培養プレートにウエルあたり100μL接種し、試料は三連で処理した;
【0068】
(5)細胞の培養:細胞を37℃において1時間二酸化炭素インキュベーター内で培養し、各ウエル中の培養液を廃棄した後PBSで1回洗浄した。次いでウエルあたり200μLの新たな培養培地を加え、プレートを観察し写真撮影した。
【0069】
(6)検出:10μLのCCK−8色素溶液を各ウエルに加え、プレートは37℃において3時間二酸化炭素インキュベーター内でインキュベートし、多機能性マイクロプレートリーダーで読み取った。ヘパリン対照群を参照として、阻害率を以下の式に従い計算した。
阻害率=(1−処理群の吸光度値/対照群の吸光度値)×100%
【0070】
前述の方法に従うと、HeLa細胞接着に対するヘパリンの阻害率は8.3%であり、HeLa細胞接着に対する20%硫酸化ヘパリン由来八糖(Hep8−20%)の阻害率は45.3%であり、HeLa細胞接着に対する60%硫酸化ヘパリン由来八糖(Hep8−60%)の阻害率は37.9%であった。
【0071】
実施例5.40%及び60%硫酸化ヘパリン由来八糖の細胞移動アッセイ
この実施例中では、以下の方法により40%及び60%硫酸化ヘパリン由来八糖で細胞移動を測定した。
(1)試験前に、トランスウエル(Transwell)チャンバーを24ウエルプレート中に置き、600μLのDMEM液体培地を下部チャンバーに加え、100μLのDMEM液体培地を上部チャンバーに加え、チャンバーは更なる使用のためインキュベーター内に一晩放置した;
(2)細胞の調製:対数増殖期中のHeLa細胞を採取し、パンクレアチンで消化し、細胞濃度を計算し、細胞は(ヘパリン又はヘパリン由来オリゴ糖を加えず対応する体積のPBSのみ加えた)対照群と(ヘパリンと硫酸化ヘパリン由来八糖をいずれも62.5μg/mLの濃度で加えた)試験群に分けた。2.5%BSAを含有する無血清DMEM培地及び対応するヘパリン由来オリゴ糖を含有する無血清、2.5%BSA DMEM培地で細胞を希釈し、細胞濃度を1mLあたり2.5×10個細胞に調節した。
(3)5%FBSを含有する800μLの培養培地をトランスウエルチャンバーの下部チャンバーに加えた。
(4)ステップ(2)中の400μLの細胞懸濁液をトランスウエルチャンバーの上部チャンバーに加えた。
(5)チャンバーを8時間5%CO下で37℃において、インキュベーター内でインキュベートした。
(6)上部チャンバー中の液体を注意深く除去し、チャンバー膜の内部表面をコットンスワブで軽く拭いて非移動細胞を除去した。チャンバー膜の損傷を回避するため、作業は穏やかでなければならないことに留意しなければならない。
(7)400μLの細胞染色液を含有する別の24ウエルプレートにチャンバーを移し、細胞は10分間室温で染色した。
(8)トランスウエルチャンバーを蒸留水で3〜5回軽く洗浄し、自然乾燥させるため室温で放置した。
(9)細胞は顕微鏡下で計数し写真撮影した。
(10)別のクリーンな24ウエルプレートにチャンバーを移し、200μLの細胞溶解液を各ウエルに加え、チャンバーはシェーカー上に置いた。
(11)室温で10分間のインキュベーション後、100μLの細胞溶解液を96ウエルプレートに加え、吸光度値を560nmで読み取った。ヘパリン対照群を参照として、移動率及び阻害率を以下の式に従い計算した:
移動率=処理群の吸光度値/対照群の吸光度値×100%
阻害率=[1−(処理群の接着率/対照群の接着率)]×100%
【0072】
前述の方法に従った細胞接着の結果は図7中に示し、HeLa細胞移動に対するヘパリンの阻害率は12.6%であり、HeLa細胞移動に対する40%硫酸化ヘパリン由来八糖(Hep8−40%)の阻害率は57.3%であり、HeLa細胞移動に対する60%硫酸化ヘパリン由来八糖(Hep8−60%)の阻害率は43.5%であることを示す。
【0073】
実施例6.40%及び60%硫酸化ヘパリン由来八糖の抗腫瘍転移活性
この実施例中では、以下の方法に従い40%及び60%硫酸化ヘパリン由来八糖の抗腫瘍転移活性を決定した。
【0074】
B16−BL6マウスメラノーマ細胞(2×10個)を、尾静脈を介してC57BL/6マウスに注射し、マウスは、群あたり10マウスで、(ヘパリン由来オリゴ糖を加えず対照としてPBSを利用した)対照群と(それぞれのマウスに200μg、40%硫酸化ヘパリン由来八糖を加えた)試験群に分けた。3週間後、マウスを解剖し、マウスの肺をブアン液中に固定し、マウスの肺中の腫瘍の数を計算した。本発明者らは、ルシフェラーゼ標識B16−BL6マウスメラノーマ細胞を利用することによりIVIS−200蛍光イメージングシステムを介して、週に1回転移性腫瘍の形成を検出した。2.5mgフルオレセインの腹腔内注射後10分で写真を撮影した。
【0075】
前述の方法に従った抗腫瘍転移活性の結果は図8中に示す。マウスにおける腫瘍転移に対するヘパリンの阻害率は17.3%であり、マウスにおける腫瘍転移に対する40%硫酸化ヘパリン由来八糖(Hep8−40%)の阻害率は65.1%であり、マウスにおける腫瘍転移に対する60%硫酸化ヘパリン由来八糖(Hep8−60%)の阻害率は56.2%であることをグラフから見ることができる。
【0076】
ここで本出願人は、本発明における前述の実施例は、本発明の硫酸化ヘパリン由来オリゴ糖、その調製法及び使用を例証するために提供するが、本発明は前述の実施例に限定されない、すなわち、本発明が実現を前述の実施例に依存しなければならないことを意味するわけではないことを言及する。本発明に対する任意の変更、本発明における利用材料の同等の交換及び補助成分の追加、並びに具体的実施形態の選択等は、本発明の保護及び開示範囲内にあり得ることは、当業者によって理解されるはずである。
図1
図2
図3
図4
図5(A)】
図5(B)】
図6
図7
図8