【実施例】
【0025】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0026】
本実施例は、河川、海、湖等の水域上に架設される橋梁1の補修・補強工事の対象となる橋脚1aの周囲に作業用のドライエリアを形成する仮締切り工法に、本発明の橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体の設置工法を適用した場合である。
【0027】
具体的には、本実施例における仮締切り工法は、河川、海、湖等の水域上に架設される橋梁1の工事対象の橋脚1aの周囲に仮締切り構造体2を設置して橋脚1aと水域を仕切り、仮締切り構造体2内の水を排水して橋脚1aの周囲にドライエリアを形成するものであり、より具体的には、(1)通路用足場形成工程、(2)作業用足場形成工程、(3)作業用足場吊り替え工程、(4)下部側仮締切り構造体構築工程、(5)下部側仮締切り構造体設置工程、(6)作業用足場降下工程、(7)上部側仮締切り構造体構築工程及び(8)ドライエリア形成工程を有するものである。
【0028】
以下、本実施例の仮締切り工法の上記(1)〜(8)の各工程について、施工手順に沿って詳述する。
【0029】
(1)通路用足場形成工程
本実施例の通路用足場形成工程は、
図2に示すように、橋梁1の一側の陸地に設置した櫓状、階段状若しくはスロープ状の足場からなる出入部10から橋梁1の補修・補強工事の対象となる橋脚1aの近傍(手前)までの間、橋梁1に沿って作業者が陸地と作業用足場4とを行き来するための通路となる通路用足場3を形成する工程である。
【0030】
具体的には、本実施例の通路用足場形成工程は、複数の吊り足場体7を用い、この吊り足場体7を橋梁1の橋桁1bに吊設すると共に連設して、この橋桁1bに沿って通路用足場3を延設形成している。
【0031】
また、本実施例は、この通路用足場3の形成に折り畳み自在且つ組み立て分解自在な吊り足場体7を用いており、この吊り足場体7は、折り畳み分解自在に構成された枠体7Aと、この枠体7Aに敷設する足場板7Bとからなるものである。
【0032】
具体的には、枠体7Aは、
図13に示すように、複数(例えば四本)の梁部材7aと、この梁部材7aの端部が水平回動自在且つ着脱自在に連結される梁連結部材7bと、梁部材7aの回動軸となると共にこの梁部材7aと梁連結部材7bとの連結を保持する連結保持軸7cとを備え、梁部材7aの端部に設けられている軸挿通孔7dと、梁連結部材7bに設けられている軸挿通孔7eとを連通状態にして軸挿通連通孔を形成し、この軸挿通連通孔に連結保持軸7cを挿入配設することで組み立て形成することができ、この組み立て形成された状態で軸挿通連通孔に挿通配設されている連結保持軸7cを抜き取ることで梁連結部材7bから梁部材7aを分離して撤去することができるように構成されている。
【0033】
即ち、本実施例の通路用足場形成工程は、出入部10を足場にして、この出入部10に梁部材7aと梁連結部材7bと連結保持軸7cにより折り畳み状態にした枠体7Aを組み付け形成し、この折り畳み状態で組み付け形成した枠体7Aを水平回動操作して展開状態にし、この展開状態の枠体7Aに足場板7Bを敷設すると共に、この枠体7Aに橋桁1bから吊下した吊設具11(例えば足場チェーン等)を連結して、通路用足場3となる最初の吊り足場体7を形成し、次いで、この最初の吊り足場体7を足場にしてこの最初の吊り足場体7を形成している枠体7Aに、更に梁部材7aと梁連結部材7bと連結保持軸7cを用いて折り畳み状態の新たな枠体7Aを組み付け形成し、この折り畳み状態で組み付け形成した新たな枠体7Aを水平回動操作して展開状態にし、この展開状態の枠体7Aに足場板7Bを敷設すると共にこの枠体7Aに橋桁1bから吊下した吊設具11を連結して最初の吊り足場体7に連設される新たな吊り足場体7を形成し、この新たな吊り足場体7を連設する作業を繰り返して通路用足場3を橋桁1bに沿って延設してゆくものである。
【0034】
なお、本実施例の通路用足場3は、吊り足場体7同士が枠体7Aの一部を共有する連設構造になっているため、必ずしも全ての吊り足場体7に吊設具11を連結して橋桁1bから吊設した状態にする必要は無く、吊設する吊り足場体7は適宜設定されるものとする。
【0035】
(2)作業用足場形成工程
本実施例の作業用足場形成工程は、前述した通路用足場形成工程の次に行う工程であり、
図2に示すように、通路用足場形成工程で形成した通路用足場3に連設するようにして、工事対象の橋脚1aの周囲に仮締切り構造体2を構築する際の足場となる作業用足場4を形成する工程である。
【0036】
具体的には、通路用足場形成工程における通路用足場3を形成する際に用いる吊り足場体7と同じ吊り足場体7を用いて作業用足場4を形成してゆく。
【0037】
より具体的には、先に形成した通路用足場3の端部、具体的には、通路用足場3を形成している吊り足場体7の枠体7Aの端部に、通路用足場3を足場にして、通路用足場形成工程での作業と同様に、梁部材7aと梁連結部材7bと連結保持軸7cにより折り畳み状態の枠体7Aを組み付け形成し、この折り畳み状態で組み付け形成した枠体7Aを水平回動操作して展開状態にし、この展開状態の枠体7Aに足場板7Bを敷設すると共にこの枠体7Aに橋桁1bに設けた昇降機能付き吊設具6(例えばチェーンブロック)を連結して、作業用足場4となる最初の吊り足場体7を吊設形成し、次いで、この最初の吊り足場体7を足場にしてこの最初の吊り足場体7を形成している枠体7Aに、更に梁部材7aと梁連結部材7bと連結保持軸7cを用いて折り畳み状態の新たな枠体7Aを組み付け形成し、この折り畳み状態で組み付け形成した新たな枠体7Aを水平回動操作して展開状態にし、この展開状態の枠体7Aに足場板7Bを敷設すると共にこの枠体7Aに橋桁1bに設けた昇降機能付き吊設具6を連結して最初の吊り足場体7に連設される新たな吊り足場体7を吊設形成し、この新たな吊り足場体7を連設する作業を繰り返して、
図14に示すように、工事対象の橋脚1aの周囲に作業用足場4を形成してゆく。
【0038】
なお、通路用足場形成工程及び作業用足場形成工程において、吊り足場体7を用いて通路用足場3及び作業用足場4を形成する際、
図15に示すように、複数の枠体7Aを折り畳み状態で連設形成し、その後、いずれか一体の枠体7Aを水平回動操作して展開状態にすることで、連設する他の枠体7Aを個別に展開操作しなくても、この水平回動操作した枠体7Aの展開動作に連動して同時に展開状態にすることができ、効率良く通路用足場3及び作業用足場4を形成してゆくことができる。
【0039】
(3)作業用足場吊り替え工程
本実施例の作業用足場吊り替え工程は、前述した作業用足場形成工程の次に行う工程であり、作業用足場形成工程において橋梁1の橋桁1bに吊設形成した作業用足場4を橋脚1aに設けた受替え梁5に吊り替える工程である。
【0040】
即ち、この作業用足場吊り替え工程は、作業用足場4を橋桁1bから橋脚1aに設けた受替え梁5に吊り替えることにより、重量物である仮締切り構造体2を作業用足場4上で構築した際の荷重が橋桁1bに加わることを回避し、加重による橋桁1bへの悪影響が生じず、安心して作業用足場4上で仮締切り構造体2を構築することを目的として行われるものである。
【0041】
具体的には、本実施例の作業用足場吊り替え工程は、
図3に示すように、通路用足場3を介して受替え梁形成部材5a(受替え梁5を分解状態にしたもの)を作業用足場4に搬入した後、昇降機能付き吊設具6の操作により作業用足場4の一部若しくは全体を上昇させ、この上昇させた作業用足場4を利用して、受替え梁形成部材5aを用いて、
図16に示すように、工事対象の橋脚1a上に受替え梁5(本実施例では図示するようにトラス梁を採用)を設け、
図4に示すように、この橋脚1aに設けた受替え梁5に作業用足場4を形成する吊り足場体7を吊り替え前と同様、昇降機能付き吊設具6を用いて昇降自在に吊り替え吊設する。
【0042】
また、本実施例の作業用足場吊り替え工程においては、吊り替え作業完了後、昇降機能付き吊設具6を操作して、
図5に示すように、作業用足場4を元の高さ位置(通路用足場3と同じ高さ位置)よりも降下させて、作業用足場4と橋梁1(橋桁1b)との間の高さ空間を広げ、次工程の下部側仮締切り構造体構築工程における下部側仮締切り構造体2aの構築空間を確保している。なお、作業用足場4の降下位置は構築する下部側仮締切り構造体2aの高さにより適宜変更可能なものとする。
【0043】
(4)下部側仮締切り構造体構築工程
本実施例の下部側仮締切り構造体構築工程は、前述した作業用足場吊り替え工程の次に行う工程であり、作業用足場吊り替え工程において橋桁1bから橋脚1aに設けた受替え梁5に吊り替え吊設した作業用足場4上で、仮締切り構造体2の下部側となる下部側仮締切り構造体2aを構築する工程である。
【0044】
具体的には、先ず、予め作業者が手で持って運搬することができる程度の大きさに形成された下部側仮締切り構造体2aを形成するための底板形成部材や周壁形成部材(ライナープレート)等の下部側用の仮締切り構造体形成部材を陸地から通路用足場3を介して作業用足場4まで作業者が持ち運び搬入する。
【0045】
次いで、この作業用足場4に搬入した下部側用の仮締切り構造体形成部材を作業用足場4上で組み立てて、
図6に示すように、作業用足場4上に下部側仮締切り構造体2aを構築する。
【0046】
より具体的には、作業用足場4上に、工事対象の橋脚1aを囲繞するように平面視リング状の底板部を形成し、この底板部の外周縁部に沿って所定高さの周壁部を立設形成して、有底筒状の下部側仮締切り構造体2aを構築する。
【0047】
(5)下部側仮締切り構造体設置工程
本実施例の下部側仮締切り構造体設置工程は、前述した下部側仮締切り構造体構築工程の次に行う工程であり、下部側仮締切り構造体構築工程において作業用足場4上に構築した下部側仮締切り構造体2aを水域中に設置する工程である。
【0048】
具体的には、先ず、作業用足場4上に構築した下部側仮締切り構造体2aを昇降移動させるための昇降装置8(例えば平衡保持用天秤とチェーンブロックで構成される昇降装置)を工事対象の橋脚1aに設け、この昇降装置8と下部側仮締切り構造体2aとを連結し、この昇降装置8により下部側仮締切り構造体2aを上昇させ、作業用足場4に対して浮上状態にする。なお、昇降装置8は、受替え梁5に設けても良い。
【0049】
次いで、
図7及び
図17に示すように、作業用足場4に下部側仮締切り構造体2aが通過可能な大きさの開口部9を、吊り上げ浮上させた下部側仮締切り構造体2aの真下に、作業用足場4(具体的には、作業用足場4を形成している吊り足場体7)を撤去して形成する。
【0050】
具体的には、先ず、開口部形成領域(撤去領域)の中心部に位置する吊り足場体7の足場板7Bを取り外して枠体7Aを露出させ、枠体7Aを足場側に引き寄せて折り畳み状態にし、この折り畳み状態にした枠体7Aの軸挿通連通孔に挿通配設されている連結保持軸7cを抜き取り、梁連結部材7bから梁部材7aを取り外し撤去し、次いで、この撤去した吊り足場体7に連設している別の吊り足場体7を同様の手順で撤去する。
【0051】
次いで、昇降装置8を操作して、
図8に示すように、作業用足場4に形成した開口部9を介して下部側仮締切り構造体2aを降下させ、この下部側仮締切り構造体2aを水域中に設置する。なお、図示しないが、この下部側仮締切り構造体2aを降下させる際、橋脚1aと下部側仮締切り構造体2aの夫々にガイドレールを設け、このガイドレールに沿って降下させることで、下部側仮締切り構造体2aを安定状態で水域中に降下させることができる。
【0052】
(6)作業用足場降下工程
本実施例の作業用足場降下工程は、前述した下部側仮締切り構造体設置工程の次に行う工程であり、下部側仮締切り構造体設置工程において水域中に設置した下部側仮締切り構造体2a上に仮締切り構造体2の上部側となる上部側仮締切り構造体2bを直接積み上げ形成(構築)する際の足場となる作業用足場4を、下部側仮締切り構造体2aの上部位置付近まで降下させる工程である。
【0053】
具体的には、降下させる作業用足場4は、前工程の下部側仮締切り構造体設置工程において下部側仮締切り構造体2aを降下させるために形成した開口部9を開口させたままとし、作業用足場吊り替え工程において作業用足場4に連結した昇降機能付き吊設具6の操作により降下させる。
【0054】
なお、本実施例の作業用足場降下工程においては、
図9に示すように、水域中に設置した下部側仮締切り構造体2aの上端部と作業用足場4とがほぼ面一状態となるように降下移動させているが、例えば、下部側仮締切り構造体2aの上部が作業用足場4の開口部9からやや突出状態となる高さ位置まで作業用足場4を降下させても良い。
【0055】
(7)上部側仮締切り構造体構築工程
本実施例の上部側仮締切り構造体構築工程は、前述した作業用足場降下工程の次に行う工程であり、下部側仮締切り構造体設置工程において水域中に設置した下部側仮締切り構造体2a上に仮締切り構造体2の上部側となる上部側仮締切り構造体2bを直接積み上げ形成(構築)する工程である。
【0056】
具体的には、
図10に示すように、先ず、作業用足場降下工程において下部側仮締切り構造体2aの上部位置に合わせて降下移動させた作業用足場4を足場にして下部側仮締切り構造体2aの上端部上に直接、周壁形成部材を直接積み上げ構築してゆき上部側仮締切り構造体2bを構築する。
【0057】
より具体的には、例えば構築途中の上部側仮締切り構造体2bの高さがある程度の高さに到達したら、この構築途中の上部側仮締切り構造体2bの上端部位置に合わせて作業用足場4を上昇し、再び、この構築途中の上部側仮締切り構造体2b上に更に上部側仮締切り構造体2bを構築するための周壁形成部材を積み上げ構築してゆき、以降、上部側仮締切り構造体2bが所定の高さになるまで同様の作業を繰り返して、上部側仮締切り構造体2bを構築する。
【0058】
次に、
図11に示すように、この完成した仮締切り構造体2の浮上を防止するための浮上防止用部材12を橋脚1aに設け、この浮上防止用部材12で仮締切り構造体2の上端部を押さえ、仮締切り構造体2の浮上を防止する。
【0059】
このように、本実施例の上部側仮締切り構造体構築工程は、下部側仮締切り構造体2aを直接、下部側仮締切り構造体2a上に構築してゆくから、従来工法において行われていた上部側仮締切り構造体2bを構築する際の下部側仮締切り構造体2aを降下させるために作業用足場4に開口した開口部9の閉口作業、作業用足場4上で構築した上部側仮締切り構造体2bを昇降させる上部側仮締切り構造体昇降操作及び上部側仮締切り構造体2bを降下させるために作業用足場4に開口部9を形成する開口部形成作業等の上部側仮締切り構造体2bを構築する際の付帯作業が不要になり、上部側仮締切り構造体構築工程が簡易になり、更に、作業進捗に合わせて作業用足場4の高さ位置を調整することで、構築作業時に梯子等の使用が不要となり安全に効率的に作業を行うことができる。
【0060】
(8)ドライエリア形成工程
本実施例のドライエリア形成工程は、前述した上部側仮締切り構造体構築工程の次に行う本実施例の仮締切り工法における最終工程であり、水域中に設置した仮締切り構造体2の底部の橋脚貫通孔(図示省略)と橋脚1aとの間に形成される隙間に対して止水処理を施すと共に、仮締切り構造体2内に入り込んでいる水を排水して、この仮締切り構造体2内に作業用のドライエリア(非水域エリア)を形成する工程である。
【0061】
具体的には、先ず、止水シートやゴム製の止水チューブ等の止水手段(図示省略)を、仮締切り構造体2の底部の橋脚貫通孔と橋脚1aとの間に形成される隙間に配設し閉塞状態にしてこの隙間からの入水を防止する止水処理を行う。
【0062】
次いで、この止水処理完了後に、
図12に示すように、仮締切り構造体2内の水をポンプ等の排水装置13を用いて排水して、この仮締切り構造体2内に作業用のドライエリアを形成する。
【0063】
なお、本実施例は、このドライエリア形成工程においても図示するように作業用足場4を所望の位置に移動させて、この作業用足場4を足場にして作業を行うことで、安全且つ効率的に作業を行うことができる。
【0064】
また、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。