(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、実施の形態の乾燥装置10の概要を模式的に示した図である。
【0021】
図1に示すように、乾燥装置10は、燃焼室20と、燃焼室20から排出された乾燥用ガスによって被乾燥物Wを乾燥させる乾燥室60と、乾燥装置10を制御する制御部90とを備える。この乾燥装置10は、燃焼室20で生成した燃焼ガスを乾燥装置10に導入し、乾燥装置10に導入した燃焼ガスの一部を燃焼室20に戻す循環式の乾燥装置である。
【0022】
燃焼室20は、内部空間を有する筐体である。燃焼室20の一端20aには、バーナ30が備えている。バーナ30において燃料と空気を燃焼させることで生成した燃焼ガスが燃焼室20の内部に広がる。この燃焼ガスは、被乾燥物Wを乾燥させる乾燥用ガスとして機能する。
【0023】
燃焼室20の他端20bには、内部の燃焼ガスを排出するための出口開口(図示しない)を有する。燃焼室20内の他端20b側には、例えば、
図1に示すように、断面に亘ってフィルタ21が設けられている。
【0024】
このフィルタ21は、出口開口に向かって流れる燃焼ガス中の異物を除去する。フィルタ21としては、例えば、ポーラス体、不織布、メッシュ材などが使用される。これらは、例えば、合成繊維や金属繊維などから構成される。異物としては、例えば、空気中の塵、鉄粉、塗料などが挙げられる。
【0025】
バーナ30は、ケーシング31と、保炎器32と、燃料供給系統40と、空気供給系統50とを備える。
【0026】
ケーシング31は、筐体で構成され、燃焼室20の一端20aに貫通するように固定されている。ケーシング31の燃焼室20側は開口し、この開口部には、保炎器32が備えられている。
【0027】
保炎器32は、火炎を保持して安定した燃焼を維持する。保炎器32の下流側には火炎が形成される。
【0028】
燃料供給系統40は、燃料供給源41から供給された燃料(ガス燃料)をバーナ30内に供給する燃料供給管42を備える。燃料供給管42の一端は、バーナ30に連結され、他端は、燃料供給源41に連結されている。
【0029】
燃料供給管42には、バーナ30に供給する燃料の流量を調整する燃料流量調整弁43が介在している。また、燃料供給管42には、例えば、燃料流量調整弁43を挟むように、燃料供給管42における燃料の流れを遮断する遮断弁44、45が介在している。
【0030】
また、例えば、遮断弁45と燃料供給源41との間には、燃料供給管42を流れる燃料の流量を検出する燃料流量計46が介在している。
【0031】
空気供給系統50は、空気源から供給された空気をバーナ30内に供給する。ここでは、空気源として吸気ファン51を備えた一例を示している。吸気ファン51においては、例えば、ファンモータ52を制御してファン回転数を調整することで、バーナ30に供給される空気流量が調整される。
【0032】
吸気ファン51には、例えば、吸気ファン51の回転数を検出するファン回転数計53が備えられている。吸気ファン51は、例えば、シロッコファンやターボファンなどで構成される。
【0033】
ここでは、空気源として吸気ファン51を備えた一例を示したが、空気源は、バーナ30に空気を供給するものであればよい。なお、他の空気源を用いた場合においても、バーナ30に供給される空気の流量を調整する流量調整部、およびバーナ30に供給される空気の流量を検出する流量計を備える。
【0034】
ここで、バーナ30の燃焼方式は、特に限定されるものでなく、拡散燃焼方式であっても、予混合燃焼方式であってもよい。
【0035】
拡散燃焼方式の場合には、保炎器32に燃料と空気が別個に供給される。そして、保炎器32の下流側で燃料と空気が混合しながら燃焼し、保炎器32の下流側には拡散火炎が形成される。
【0036】
予混合燃焼方式の場合には、例えば、ケーシング31内で燃料と空気が混合され、保炎器32に導かれる。そして、保炎器32の下流側には予混合火炎が形成される。
【0037】
乾燥室60は、燃焼室20から排出された乾燥用ガスによって被乾燥物Wを乾燥させる。乾燥室60は、例えば、
図1に示すように、直線状に延設されている。なお、
図1は、乾燥室60の水平断面を上方から見たときの図である。
【0038】
乾燥室60は、ケーシング61と、搬送装置62と、ダクト70と、噴出ノズル71とを備える。
【0039】
ケーシング61は、乾燥室60の外郭を構成する。乾燥室60が
図1に示すように直線状に延設される場合、ケーシング61は、筒状形状を有する。
【0040】
搬送装置62は、乾燥処理される被乾燥物Wを乾燥室60内で移動する。この搬送装置62は、乾燥室60の幅方向の中央に、乾燥室60の延設方向に亘って備えられている。搬送装置62は、例えば、コンベアチェーンなどで構成される。搬送装置62上には、被乾燥物Wが配置される。
【0041】
ダクト70は、例えば、搬送装置62を挟むように、乾燥室60内の両側に乾燥室60の延設方向に亘って備えられている。ダクト70は、例えば、内部が空洞の筐体形状を有している。なお、ここでは、2つのダクト70を対向配置した一例を示したが、ダクト70は、いずれか一方のみでもよい。
【0042】
また、ダクト70として、乾燥室60のケーシング61の側壁に沿って設けられた一例が示されているが、この配置構成に限られない。例えば、ダクト70は、搬送される被乾燥物Wの上方または下方に設けられてもよい。
【0043】
ダクト70の搬送装置62側の表面には、噴出ノズル71が設けられている。噴出ノズル71は、例えば、
図1に示すように、乾燥室60の延設方向に等間隔に配置される。噴出ノズル71は、両端が開口した筒体である。
【0044】
噴出ノズル71は、ダクト70の内に連通し、ダクト70内に導入された乾燥用ガスを搬送装置62側の乾燥空間63に噴出する。そして、噴出ノズル71から噴出された乾燥用ガスは、搬送装置62上の被乾燥物Wに衝突する。噴出ノズル71の通路断面形状(噴出ノズル71の軸方向に対して垂直な断面形状)は、特に限定されるものではない。噴出ノズル71の通路断面形状として、例えば、円形、矩形などが挙げられる。
【0045】
図1では、前述したように、所定の水平断面における噴出ノズル71の配置構成を示している。このような噴出ノズル71の配置構成は、ダクト70の高さ方向(
図1の紙面に垂直な方向)に複数段設けられてもよい。
【0046】
ダクト70は、導入配管80を介して燃焼室20に連通している。導入配管80の一端は、燃焼室20の出口開口(図示しない)に連結され、導入配管80の他端は、ダクト70に連結されている。
図1に示すように2つのダクト70を備える場合、導入配管80は、それぞれのダクト70に連結するように二股に分岐している。
【0047】
ここで、導入配管80のダクト70との連結位置は、特に限定されるものではなく、ダクト70内の乾燥用ガスの流れが均一になるように設定される。すなわち、各噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの流速(流量)が一定になるように、導入配管80のダクト70との連結位置は設定される。
【0048】
また、導入配管80のダクト70との連結部は、一箇所に限らず、複数あってもよい。連結部が複数ある場合、導入配管80他端側は、複数に分岐される。
【0049】
なお、二股に分岐する導入配管80のそれぞれに、例えば、ダクト70内に導入する乾燥用ガスの流量を調整するための流量調整弁を備えてもよい。この場合、流量調整弁は、制御部90によって制御される。
【0050】
導入配管80には、導入配管80を介して燃焼室20からダクト70に乾燥用ガスを導入し、かつ後述する戻り配管85を介して乾燥室60から燃焼室20に乾燥用ガスを戻すために、循環ファン81が介在している。
【0051】
循環ファン81においては、例えば、ファンモータ82を制御してファン回転数を調整することで、ダクト70に供給される乾燥用ガスの流量が調整される。また、循環ファン81には、例えば、循環ファン81の回転数を検出するファン回転数計83が備えられている。循環ファン81は、例えば、シロッコファンやターボファンなどで構成される。
【0052】
例えば、循環ファン81の回転数を制御することで、噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの速度(流量)が調整される。
【0053】
ここで、
図1に示すように、循環ファン81と導入配管80が二股に分岐する分岐部80aとの間の導入配管80から分岐管100が分岐している。この分岐管100は、導入配管80を流れる乾燥用ガスの一部を大気中に排出する。
【0054】
分岐管100には、排気する乾燥用ガスの流量を調整するための流量調整部101が備えられている。この流量調整部101は、例えば、ダンパなどで構成される。このダンパは、手動で調整するものであっても、制御部90によって制御されるものであってもよい。
【0055】
なお、ここでは、予め手動によって調整されたダンパの一例を示す。ダンパは、例えば、一定の流量の乾燥用ガスが大気中に排出されるように調整されている。
【0056】
乾燥室60の乾燥空間63は、戻り配管85を介して燃焼室20に連通している。戻り配管85の一端は、乾燥室60の乾燥空間63と連通するようにケーシング61に連結されている。戻り配管85の一端は、例えば、乾燥室60の乾燥空間63と連通するようにケーシング61の上部に連結される。
【0057】
なお、戻り配管85は、ダクト70内を貫通しないように配管される。すなわち、戻り配管85は、ダクト70内を流れる乾燥用ガスに接触しないように配管される。ここで、戻り配管85の一端を複数に分岐して、乾燥空間63の複数の位置から乾燥用ガスを吸引するようにしてもよい。
【0058】
戻り配管85の他端側には、戻り配管85から分岐する分岐管86を有する。分岐管86の一方の端部は、例えば、大気開放されている。この分岐管86は、戻り配管85を介して乾燥室60から燃焼室20に戻る乾燥用ガスに、大気(空気)を導入するための配管である。すなわち、分岐管86の大気開放側の端部から大気を吸い込み、戻り配管85に導入する。
【0059】
分岐管86には、戻り配管85に導入する空気の流量を調整するための流量調整部87が備えられている。この流量調整部87は、例えば、ダンパなどで構成される。このダンパは、手動で調整するものであっても、制御部90によって制御されるものであってもよい。
【0060】
なお、ここでは、予め手動によって調整されたダンパの一例を示す。ダンパは、例えば、一定の流量の空気が戻り配管85に導入されるように調整されている。
【0061】
戻り配管85の他端は、燃焼室20の側壁に連結されている。戻り配管85の他端が連結される側壁位置は、例えば、
図1に示すように、燃焼室20の長手方向(燃焼室20の一端20a側から他端20b側へ向かう方向)において、フィルタ21とバーナ30との間となるように設定される。これによって、戻り配管85を通って燃焼室20内に循環された乾燥用ガスは、再び燃焼室20から導入配管80に導入される際、フィルタ21を通り異物が除去される。
【0062】
ここで、乾燥室60の噴出ノズル71の通路には、噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの温度を検出する温度検出部72が設けられている。温度検出部72は、例えば、熱電対などで構成される。なお、温度検出部72は、噴出ガス温度検出部として機能する。
【0063】
なお、温度検出部72は、例えば、ダクト70内に設けられてもよい。この場合、温度検出部72によってダクト70内を流れる乾燥用ガスの温度が検出される。ここで、ダクト70内の乾燥用ガスの温度は、噴出ノズル71の通路を流れる乾燥用ガスの温度とほぼ等しい。そのため、ダクト70内を流れる乾燥用ガスの温度を噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの温度とみなすことができる。
【0064】
また、温度検出部72を複数個所に設けてもよい。そして、各温度検出部72からの出力に基づいて算出された平均温度を噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの温度としてもよい。
【0065】
戻り配管85の通路には、燃焼室20内に戻される乾燥用ガスの温度を検出する温度検出部88が設けられている。温度検出部88は、例えば、熱電対などで構成される。温度検出部88は、戻り配管85における熱損失を考慮すると、例えば、戻り配管85における乾燥室60に近い側に設けられることが好ましい。なお、温度検出部88は、戻りガス温度検出部として機能する。
【0066】
ここで、分岐管86を介して空気が導入される位置よりも上流側(乾燥室60側)における戻り配管85の通路を流れる乾燥用ガスは、乾燥室60の乾燥空間63内の乾燥用ガスの温度とほぼ等しい。そのため、分岐管86を介して空気が導入される位置よりも上流側(乾燥室60側)における戻り配管85の通路を流れる乾燥用ガスの温度を乾燥空間63内の乾燥用ガスの温度とみなすことができる。
【0067】
乾燥空間63内から戻り配管85によって吸引した乾燥用ガスの温度を温度検出部88によって検出することで、乾燥空間63内において乾燥用ガスの温度を一点計測するよりも、乾燥空間63内における乾燥用ガスの平均温度に近い値を検出することができる。
【0068】
さらに、例えば、戻り配管85の一端を複数に分岐して、乾燥空間63の複数の位置から乾燥用ガスを吸引することで、温度検出部88において乾燥空間63内の平均温度により近い値を検出することができる。
【0069】
制御部90は、例えば、演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)などの記憶手段、出入力手段などを主に備えている。CPUでは、例えば、記憶手段に格納されたプログラムやデータベースなどを用いて各種の演算処理を実行する。この制御部90が実行する処理は、例えば、マイクロコンピュータなどのコンピュータ装置などで実現される。
【0070】
出入力手段は、外部機器から電気信号を入力したり、外部機器に電気信号を出力する。具体的には、出入力手段は、例えば、燃料流量調整弁43、遮断弁44、45、燃料流量計46、ファンモータ52、82、ファン回転数計53、83、温度検出部72、88などと各種信号の出入力が可能に接続されている。
【0071】
なお、出入力手段は、イグナイタ(図示しない)などのバーナ30の各機器や、搬送装置62などの乾燥室60の各機器とも、各種信号の出入力が可能に接続されている。また、出入力手段は、例えば、運転の開始や停止などの入力操作を行う操作パネル(図示しない)などと各種信号の出入力が可能に接続されている。
【0072】
記憶手段には、例えば、燃料流量に対する吸気ファン51の設定回転数のデータベースなどが記憶されている。また、記憶手段には、例えば、バーナ30や乾燥室60を制御するための各種データベースなどが記憶されている。
【0073】
制御部90は、例えば、温度検出部72、88からの出力信号に基づいて、例えば、燃料流量調整弁43、ファンモータ52などを制御する。なお、制御部90における制御は、これらに限られるものではない。制御部90は、例えば、乾燥装置10の運転動作全体を制御することができる。
【0074】
次に、乾燥装置10の作用について説明する。
【0075】
ここでは、乾燥装置10の運転開始時から被乾燥物Wの乾燥が可能となるまでの立ち上げ運転時の作用について主に説明する。
【0076】
制御部90は、操作パネル(図示しない)などの外部スイッチから運転開始に係る信号を入力したと判定した場合、吸気ファン51、循環ファン81を作動させる。
【0077】
吸気ファン51が作動することで、外気がバーナ30に供給される。また、循環ファン81が作動することで、導入配管80を介してバーナ30内の空気が乾燥室60のダクト70に導入される。この際、分岐管100を介して、導入配管80を流れる空気のうちの所定量が大気中に排出される。
【0078】
ダクト70に導入された空気は、噴出ノズル71から乾燥空間63に噴出される。また、燃焼室20内の空気が循環ファン81によって吸引されるため、燃焼室20内の圧力は、乾燥室60の乾燥空間63の圧力よりも低くなる。そのため、乾燥空間63の空気は、戻り配管85を通り燃焼室20に導かれる。
【0079】
この際、分岐管86の大気開放側の端部からも空気が吸引される。そして、分岐管86を介して、所定量の空気が戻り配管85に導入される。
【0080】
続いて、制御部90は、バーナ30のイグナイタ(図示しない)を作動させる。そして、制御部90は、遮断弁44、45を開くとともに、燃料流量調整弁43を所定開度に開き、燃料(ガス燃料)をバーナ30に供給する。
【0081】
遮断弁44、45および燃料流量調整弁43が開いたことで、燃料は、燃料供給源41から燃料供給管42を通りバーナ30に供給される。燃料が燃料供給管42を通過する際、燃料は、燃料流量計46によって流量が計測され、燃料流量調整弁43によって流量が調整される。
【0082】
バーナ30に導入された空気および燃料は、保炎器32に導かれ、イグナイタによって着火される。なお、着火時において、制御部90は、記憶手段に記憶された着火時に係るデータベースに基づいて、ファンモータ52および燃料流量調整弁43に制御信号を出力する。これによって、バーナ30には、着火に最適な燃料流量および空気流量が供給される。
【0083】
また、制御部90は、記憶手段に記憶された着火時に係るデータベース、燃料流量計46からの出力信号、ファン回転数計53からの出力信号に基づいて、着火時における設定燃料流量および設定空気流量になるように、燃料流量調整弁43およびファンモータ52を制御する。
【0084】
バーナ30における燃焼が開始すると、循環ファン81の吸引によって、バーナ30内の乾燥用ガス(燃焼ガス)が導入配管80内に吸引される。導入配管80内に吸引された乾燥用ガスは、乾燥室60のダクト70に導入される。この際、分岐管100を介して、導入配管80を流れる乾燥用ガスのうちの所定量が大気中に排出される。
【0085】
ここで、制御部90は、噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの流速が設定流速になるように、ファン回転数計83からの出力信号に基づいて、ファンモータ82を制御する。
【0086】
ダクト70に導入された乾燥用ガスは、噴出ノズル71から乾燥空間63に噴出される。また、燃焼室20内の乾燥用ガスが循環ファン81によって吸引されるため、燃焼室20内の圧力は、乾燥室60の乾燥空間63の圧力よりも低くなる。そのため、乾燥空間63の乾燥用ガスは、戻り配管85を通り燃焼室20に導かれる。
【0087】
この際、前述したように、分岐管86の大気開放側の端部からも空気が吸引される。そして、分岐管86を介して、所定量の空気が戻り配管85に導入され、燃焼室20に導かれる。
【0088】
戻り配管85を介して燃焼室20に導入された乾燥用ガスおよび空気は、バーナ30における燃焼によって生成した燃焼ガスと混合し、導入配管80内に吸引され、乾燥室60のダクト70に導入される。
【0089】
このように、燃焼室20において生成された乾燥用ガスの一部は、乾燥室60を経て燃焼室20に循環される。
【0090】
ここで、分岐管86を介して導入される空気の流量は、分岐管100を介して大気中に排出される燃焼ガスの流量と同じである。
【0091】
このように分岐管86から大気を導入し、分岐管100から乾燥用ガスの一部を排出するのは、乾燥用ガスの循環系統内における揮発性有機化合物(VOC)の濃度の増加を抑制するためである。これによって、爆発などの事故を防止できる。なお、揮発性有機化合物は、例えば、塗料などに含まれる。
【0092】
次に、乾燥装置10の立ち上げ運転時における乾燥室60の乾燥空間63の温度制御について説明する。
【0093】
図2は、実施の形態の乾燥装置10の立ち上げ運転時における乾燥室60の乾燥空間63の温度制御処理のフローチャートである。
【0094】
バーナ30における燃焼が開始すると、制御部90は、温度検出部88から出力された信号に基づいて、乾燥用ガスの温度が所定温度に達したか否かを判定する(ステップS100)。
【0095】
ここで、所定温度とは、例えば、噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの設定温度に対して5〜30%低い温度である。すなわち、例えば、噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの設定温度が180℃の場合、所定温度は、126〜171℃の範囲内の温度となる。
【0096】
なお、所定温度のより好ましい範囲は、例えば、噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの設定温度に対して5〜10%低い温度である。
【0097】
所定温度を噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの設定温度に対して5〜30%低い温度とすることで、以後の温度上昇過程において、乾燥用ガスの温度が、設定温度を大きく超える変化をすることを防止できる。すなわち、所定温度を上記温度範囲とすることで、以後の温度調整において、より迅速に設定温度に調整することができる。
【0098】
ステップS100の判定で、温度検出部88によって検出された乾燥用ガスの温度が所定温度に達していないと判定した場合(ステップS100のNo)、制御部90は、バーナ30の出力を増加させる(ステップS101)。
【0099】
具体的には、制御部90は、燃料流量調整弁43に開度を大きくする出力信号を出力し、ファンモータ52に回転数を増加させる出力信号を出力する。すなわち、制御部90は、バーナ30に供給される燃料流量および空気流量を増加させる。これによって、バーナ30の出力が増加し、乾燥室60の乾燥空間63における乾燥用ガスの温度が上昇する。そして、戻り配管85を流れる乾燥用ガスの温度が上昇する。
【0100】
ステップS101の処理を実行後、再びステップS100の処理を実行する。
【0101】
ステップS100の判定で、温度検出部88によって検出された乾燥用ガスの温度が所定温度に達していると判定した場合(ステップS100のYes)、制御部90は、温度検出部72から出力された信号に基づいて、乾燥用ガスの温度が許容設定温度か否かを判定する(ステップS102)。
【0102】
ここで、許容設定温度とは、噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの設定温度±2℃の範囲をいう。すなわち、許容設定温度は、「噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの設定温度−2℃」以上「噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの設定温度+2℃」以下の範囲となる。
【0103】
乾燥用ガスの温度を許容設定温度に維持することで、被乾燥物Wを温度斑なく、適切な温度で均一に加熱することができる。これによって、乾燥用ガスから受ける被乾燥物Wの受熱量を一定に維持して、被乾燥物Wを所定温度まで安定して昇温させることができる。
【0104】
ステップS102の判定で、温度検出部72によって検出された乾燥用ガスの温度が許容設定温度であると判定した場合(ステップS102のYes)、制御部90は、バーナ30の現状の出力を維持する(ステップS103)。
【0105】
具体的には、制御部90は、燃料流量調整弁43の現状の開度を維持し、ファンモータ52の現状の回転数を維持する。すなわち、制御部90は、バーナ30に供給される燃料流量および空気流量のそれぞれを現状の流量に維持する。この状態では、乾燥室60の噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの温度が許容設定温度に維持されている。
【0106】
ステップS103の処理後、制御部90は、ステップS102の処理を実行する。
【0107】
ステップS102の判定で、温度検出部72によって検出された乾燥用ガスの温度が許容設定温度でないと判定した場合(ステップS102のNo)、制御部90は、温度検出部72によって検出された乾燥用ガスの温度が許容設定温度の下限値よりも低いか否かを判定する(ステップS104)。
【0108】
ステップS104の判定で、温度検出部72によって検出された乾燥用ガスの温度が許容設定温度の下限値よりも低いと判定した場合(ステップS104のYes)、制御部90は、バーナ30の出力を増加させる(ステップS105)。
【0109】
なお、バーナ30の出力を増加するための制御は、ステップS101の制御のとおりである。バーナ30の出力を増加することで、噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの温度が上昇する。
【0110】
ステップS105の処理を実行後、再びステップS102の処理を実行する。
【0111】
ステップS104の判定で、温度検出部72によって検出された乾燥用ガスの温度が許容設定温度よりも低くない、すなわち、許容設定温度の上限値よりも高いと判定した場合(ステップS104のNo)、制御部90は、バーナ30の出力を減少させる(ステップS106)。
【0112】
具体的には、制御部90は、燃料流量調整弁43に開度を小さくする出力信号を出力し、ファンモータ52に回転数を減少させる出力信号を出力する。すなわち、制御部90は、バーナ30に供給される燃料流量および空気流量を減少させる。これによって、バーナ30の出力が減少して、噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの温度が低下する。
【0113】
ステップS106の処理を実行後、再びステップS102の処理を実行する。
【0114】
ここで、例えば、ステップS102およびステップS103における処理において、温度検出部72によって検出された乾燥用ガスの温度が許容設定温度に維持された状態が所定時間維持されたときには、制御部90は、乾燥装置10の立ち上げ完了と判定してもよい。
【0115】
そして、乾燥装置10の立ち上げ完了後、乾燥装置10内に被乾燥物Wが導入される。すなわち、被乾燥物Wが配置された搬送装置62が駆動され、被乾燥物Wの乾燥工程が実行される。
【0116】
乾燥工程では、搬送装置62によって被乾燥物Wが乾燥空間63を移動する。この際、噴出ノズル71から噴出した乾燥用ガスが被乾燥物Wに衝突して、被乾燥物Wを適正な温度に加熱する。そして、例えば、被乾燥物Wの表面に塗布された塗布剤を乾燥する。
【0117】
なお、立ち上げ運転処理後の乾燥処理工程においても、ステップS102以降の処理が実行される。これによって、乾燥処理工程時に、噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの温度が許容設定温度から逸脱したときでも、バーナ30の出力を調整することで、許容設定温度に調整することができる。
【0118】
なお、上記した乾燥装置10の温度制御において、例えば、制御部90は、操作パネル(図示しない)などの外部スイッチから運転停止に係る信号を入力したと判定した場合、乾燥処理に係る動作を終了する。
【0119】
具体的には、例えば、制御部90は、遮断弁44、45を閉じ、バーナ30における燃焼を停止する。
【0120】
上記したように、実施の形態の乾燥装置10では、乾燥装置10の立ち上げ運転時において、戻り配管85を流れる乾燥用ガスの温度、換言すると乾燥室60の乾燥空間63の平均温度に近い温度、または噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの温度に基づいて、バーナ30の出力調整が行われる。
【0121】
このように、乾燥装置10では、乾燥装置10の立ち上げ運転において、運転開始から戻り配管85を流れる乾燥用ガスの温度が所定温度に達するまでは、バーナ30の出力調整は、戻り配管85を流れる乾燥用ガスの温度に基づいて行われている。そして、戻り配管85を流れる乾燥用ガスの温度が所定温度に達した後は、バーナ30の出力調整を行う基準の温度を噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの温度に切り替える。
【0122】
運転開始から戻り配管85を流れる乾燥用ガスの温度が所定温度に達するまで、乾燥空間63における乾燥用ガスの温度に基づいてバーナ30の出力を調整することで、乾燥空間63における乾燥用ガスの温度を設定温度に近い温度(例えば、噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの設定温度に対して5〜30%低い温度)に調整することができる。
【0123】
これによって、乾燥装置10内の熱容量の大きな構造物を十分に加熱することができる。
【0124】
また、上記したように乾燥室60の乾燥空間63の乾燥用ガスの温度は、設定温度に近い温度になっている。そのため、噴出ノズル71から噴出される乾燥用ガスの温度に基づいてバーナ30の出力を調整しても、適正な温度の乾燥用ガスを被乾燥物Wに衝突させることができる。
【0125】
これによって、乾燥用ガスから受ける被乾燥物Wの受熱量を一定に維持して、被乾燥物Wを所定温度まで安定して昇温させ、最適な乾燥を行うことができる。
【0126】
なお、ここでは、直線状に延設された乾燥室60を例示したが、この構成に限られない。例えば、乾燥室は、ターンテーブル上に被乾燥物を配置して、被乾燥物を回転させながら乾燥する構成であってもよい。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。