【実施例】
【0014】
[気泡式液面計の概要]
図6において、符号150は船体を示しており、船体150には貨物の収容室160が設けられている。図示の例では、船体150はタンカーであって、収容室160は液体、例えば原油などを収容する空間になっている。収容室160の天井部分には気泡式液面計を設置するためのスタンドピース115が固定されており、スタンドピース115から給気管110が収容室160の底面に向かって垂下している。給気管110の下端部は収容室160の底面近くまで延びていて、給気管110の下端部には開閉ユニット1が取り付けられている。
【0015】
開閉ユニット1は、給気管110の下端部を開閉するもので、液体を検出するまでは給気管110の下端部を閉鎖し、液体を検出すると給気管110の下端部を開放する。すなわち、給気管110の下端部が液体に没するまでは開閉ユニット1によって給気管110の下端部が閉鎖される。液面が給気管110の下端部より上がって給気管110の下端部が液体に没すると、開閉ユニット1が給気管110の下端部を開放し、気泡式液面計としての動作を開始させる。
【0016】
[開閉ユニットの具体的な構成]
図1乃至
図3に示すように、開閉ユニット1は、その基体としての役割を持つ直方体状の枠体10を有している。枠体10は、前板11、底板12、天板13、背板14、両側板15で構成されている。枠体10には、
図4、
図5に示す開閉機構100が組み付けられて開閉ユニット1を構成している。開閉ユニット1は、枠体10を前記収容室160の底面近くに固定することによって設置される。枠体10を構成する上記各板の少なくとも一つには孔あるいは隙間が形成されて、内部に前記原油などの液体が流入することができる構造になっている。
【0017】
上記開閉機構100は枠体10の前板11の内面側に取り付けられている。
図2、
図4、
図5において、開閉機構100は、枠体10の前板11の内面側に密着して固定される支持部材70を中心に、台座31、開閉弁45、ジョイント50、L字形レバー60などを有してなる。
【0018】
図2に示すように、台座31は支持部材70に形成されている孔を支持部材70の内面(
図2において左側の面)側から外側に向かって貫通している。台座31に形成されている雄ねじにナット35が締結されている。台座31の鍔部とナット35で支持部材70と枠体10の前板11を挟持することにより、台座31が支持部材70とともに枠体10の前板11に固定されている。
【0019】
図2に示すように、台座31にはその中心軸線に沿って空気出入口30が形成されている。台座31の
図2における左側の面は、後で説明する開閉弁45との接触面となっていて、この台座31の接触面に開閉弁45が面接触することにより、台座31の空気出入口30を閉鎖する。
【0020】
台座31の外端部(
図2において右端部)の内周には雌ねじ32が形成され、この雌ねじ32にはジョイント50の一端部の雄ネジがねじ込まれて、台座31にジョイント50が結合されている。ジョイント50はL字形に曲がっていて、一端部は台座31から水平方向に突出し、他端部は垂直に立ち上がって、
図6で説明した前記給気管110との接続部52となっている。ジョイント50の内部には中心軸線に沿って空気流路51が形成され、空気流路51は上記空気出入口30に連通している。
【0021】
図4、
図5に示すように、支持部材70の内面側にはフロート支持板75が固着されている。フロート支持板75の両側部はそれぞれ直角状に折り曲げられ、フロート支持板75は平面形状が「コ」の字状になっている。フロート支持板75の両側部の折り曲げ部は互いに平行になっていて、一対の軸受部76となっている。
【0022】
上記一対の軸受部76によって軸65が水平方向に支持されている。軸65の外周には管軸66が軸65の周りに回転可能に挿入されている。管軸66にはその長さ方向の中心部でL字形レバー60が固着されている。L字形レバー60の一方の腕部61は長く、他方の腕部62は短くなっていて、これらの腕部61,62の境界部分が管軸66に固着されている。
【0023】
L字形レバー60の一方の腕部61にフロート20が取り付けられている。フロート20の外周は、上記腕部61の先端に向かって径が小さくなる緩やかな円錐面になっている。フロート20は、その中心軸線に沿ってL字形レバー60の一方の腕部61によって貫通され、かつ、内部空間が密閉されて上記腕部61に結合されている。
【0024】
L字形レバー60の他方の腕部62は、管軸66から前記台座31の側方まで下方に伸びていて、上記腕部62の台座31との対向面に開閉弁45が固着されている。開閉弁45は、L字形レバー60の回転位置によって、前述のように台座31の接触面に面接触する態様と、台座31の接触面から離間した態様をとる。
【0025】
L字形レバー60の回転位置はフロート20の位置によって決まり、フロート20の位置は枠体10内に液体が流入している場合と流入していない場合とで異なる。
図2に示す態様は枠体10内に液体が流入していない場合で、フロート20は自然状態にあってその重力で下降し、L字形レバー60は軸65を中心に
図2において反時計方向に回転して開閉弁45が台座31の当接面に面接触している。この態様では空気出入口30が開閉弁45で閉鎖されている。
【0026】
枠体10内に液体が流入すると、フロート20がその浮力で上昇し、L字形レバー60は軸65を中心に
図2において時計方向に回転して開閉弁4が台座31の当接面から離間し、空気出入口30を開放する。
【0027】
図4、
図5に示す開閉機構100は、
図2に示すように支持部材70が枠体10の前板11の内面側に固着され、ジョイント50、台座31などが上記前板11から外側に突出した態様で取り付けられている。
【0028】
図6において、前記スタンドピース115からは、前記給気管110に連通するパイプ117が引き出され、パイプ117は室170に引き込まれて制御部120につながっている。制御部120は、圧縮空気を生成するコンプレッサの空気タンクとつながっている。
【0029】
コンプレッサは、加圧ポンプと、この加圧ポンプで生成された圧縮空気を貯える上記空気タンクを有する。制御部120は空気タンクに蓄えられている圧縮空気の給気管110への供給、停止を制御する。コンプレッサの制御は、上記空気タンクの圧縮空気が所定の空気圧に保たれるように自律的に行われる。
【0030】
制御部120は給気管110内の空気圧を検出する圧力センサを有し、圧力センサの出力信号から、収容室160に収容されている液面のレベルを算出する。また、制御部120からは、上記圧力センサの出力信号が出力され、出力信号は指示計125に入力されてこの出力信号に対応した液面レベルが表示される。上記出力信号はまた、二つのコンパレータ130,140に入力されるようになっている。
【0031】
図6に示す例では、液面が収容室160の底面から20cmに達するまでは給気管110の下端部は開閉ユニット1の前記開閉弁45で閉鎖されている。液面が収容室160の底面から20cmに達したときに開閉ユニット1が作動し、前記給気管110の下端部を開放する。給気管110の下端部が開放されると、給気管110内の気圧が急激に低下し、この気圧の低下を制御部120内のセンサで検出し、この検出信号によって、給気管110の下端部が液面下に没したことを表示乃至は警報する。また、上記検出信号が出力された時点から、以下に説明するように気泡式液面計として動作する。
【0032】
[気泡式液面計としての動作]
給気管110の下端部が液面下に没した後は、一般の気泡式液面計と同様に、給気管110内の気圧を圧力センサで検出することによって測定することができる。給気管110内の気圧は、給気管110の下端部が液面から没した深さに応じて高くなり、この圧力の変化に対応して圧力センサの検出出力が変化する。この圧力センサの検出出力を制御部120において給気管110の下端部が液面から没した深さに対応した電気信号に変換し、この電気信号に対応した値を指示部125で表示することにより、液面のレベルを表示することができる。
【0033】
ただし、
図6で説明したように、給気管110の下端部は貨物の収容室160の底面より上に設置される。
図6に示す例では収容室160の底面より20cm上に設置されている。そこで、制御部120は圧力センサの出力信号に基づいた液面からの深さ信号に20cmを加算し、これを収容室160の底面からの液面レベルとして指示部125で表示する。時々刻々と変化する液面レベルに応じて給気管110の気圧が変化するので、この気圧の変化に応じた液面レベルを表示することができる。
【0034】
[浸水検出装置としての動作]
前記開閉ユニット1を用いて、これを浸水検出装置として機能させることができる。
図6に示す貨物の収容室160が、液体が収容されていない室、あるいは液体以外の例えば石炭や粉体など収容室である場合を想定する。
図1乃至
図5に示すジョイント50を介して外部の圧縮空気供給経路を開閉ユニット1に接続する。そして、圧縮空気供給経路には圧力センサを配置し、圧力センサは検出回路に接続する。圧力センサは、半導体素子からなるものであってもよいし、いわゆる気圧計といわれる伝統的な計器、その他であってもよい。
【0035】
石炭などの鉱石類や粉体、食物類などを収容する収容室における浸水を検出する場合、開閉ユニット1を構成する枠体10内に水が進入することができる構造である必要がある。その一方、枠体10内に石炭や粉体などの積み荷は進入できないような構造にする必要がある。また、石炭や粉体などの積み荷の重圧によって枠体10が変形しないように頑丈な構造にする必要がある。そこで、例えば枠体10の大半を頑丈な金属で制作して一部に窓孔を形成し、窓孔を目の細かい金属製のメッシュで覆うなどの工夫を施す。
【0036】
浸水検出装置の基本構成および動作は
図6に示す液面計と大差がない。前記圧縮空気供給経路は給気管110に相当し、前記検出回路は制御部120内に配置することができる。枠体10内に水が流入していないときは、前述のように開閉弁45が空気出入口30を閉鎖し、空気出入口30に連通する圧縮空気供給経路は高い空気圧に維持される。上記圧力センサは高い空気圧に対応した検出信号を出力し、この出力信号を処理する検出回路からは、浸水していることを表す信号は出力されない。
【0037】
枠体10内に水が流入すると、前述のようにフロートが水に浮いて上昇し、L字形レバー60が
図2において時計方向に回転することにより、開閉弁45が空気出入口30を開放する。空気出入口30の開放により、空気出入口30に連通する圧縮空気供給経路の圧縮空気が空気出入口30から漏れ、圧縮空気供給経路の空気圧が低下する。この空気圧の低下を上記圧力センサが検出してそれに対応した検出信号を出力し、この出力信号を処理する検出回路から浸水警報を発する。
【0038】
[レベル検知器としての動作]
前記開閉ユニット1を用いて、これをレベル検知器として機能させることができる。レベル検知器は、液面が一定のレベルに達するとこれを検出して信号あるいは警報を発するものである。
図6は、前述のように液面計として動作するとともにレベル検知器としても動作する実施例を示している。
図6に示す例では、レベル検知器として動作する場合は、液面が50cmに達したときおよび2.0mに達したときに信号乃至は警報を発するようになっている。
【0039】
図6において、開閉ユニット1は、前述の通り、液面が収容室160の底面から20cmに達したときに開閉ユニット1が作動し、前記給気管110の下端部を開放するように構成されている。前記コンパレータ130,140のうち一方のコンパレータ130のリファレンス入力端子は、30cmの液面レベルであるときに制御部120から出力される検出信号レベルに設定されている。他方のコンパレータ140のリファレンス入力端子は、1.8mの液面レベルであるときに制御部120から出力される検出信号レベルに設定されている。
【0040】
前述のように、給気管110内の気圧は、給気管110の下端部が液面から没した深さに応じて高くなる。液面が収容室160の底面から50cm、従って給気管110の下端部から30cmに達したとき、制御部120からコンパレータ130に入力される信号レベルがリファレンス入力端子の信号レベルに達する。これによりコンパレータ130の出力信号が反転し、液面が50cmに達した旨の信号乃至は警報を発する。
【0041】
液面が収容室160の底面から2.0m、従って給気管110の下端部から1.8mに達したとき、制御部120からコンパレータ140に入力される信号レベルがリファレンス入力端子の信号レベルに達する。これによりコンパレータ140の出力信号が反転し、液面が2.0mに達した旨の信号乃至は警報を発する。
【0042】
[気泡式液面計および浸水検出装置の実施例の効果]
本発明に係る気泡式液面計の実施例によれば、給気管110の下端部が液面下に没するまでは給気管110の下端部が開閉ユニット1の開閉弁45によって閉鎖される。したがって、圧縮空気の消費量の増大、圧縮空気の放出音の発生、コンプレッサの無駄な動作による電力の浪費、コンプレッサの寿命の短縮といった、従来の気泡式液面計に見られる様々な不具合を解消することができる。
【0043】
本発明に係る気泡式液面計の実施例は、液体を検出するまでは給気管110の下端部を閉鎖する開閉ユニット1を有している。開閉ユニット1は、液体を検出すると給気管110の下端部を開放し、給気管110内の気圧を低下させるため、この気圧の低下を検出することによって浸水検出装置を構成することができる。
【0044】
図1乃至
図3からわかるように、開閉ユニット1は、フロート20と開閉弁45とジョイント50を主たる部品とした比較的簡単な構成であり、液面計や浸水検出装置の設置を必要とする空間に嵩張ることなく設置することができる。
【0045】
開閉ユニット1の枠体10には、
図2に示すように、フロート20などを含む開閉ユニット1の動作確認窓18を設けるとよい。開閉ユニット1が正常に動作して開閉弁45が空気出入口30を閉鎖しているとき、動作確認窓18を開き、指先でフロート20を持ち上げると、開閉弁45が空気出入口30を開き、空気出入口30から圧縮空気が漏れる。このときに生じる音によって開閉ユニット1が正常に動作していることを確認することができる。
【0046】
液体がないにもかかわらずフロート20が浮き上がったままになっており、あるいは、フロート20が浮上しない位置にあるのに圧縮空気が漏れる音がしていると、開閉ユニット1の動作が異常であると判断することができる。
【0047】
[変形例]
図示の実施例では、フロート20の構成を中空構造のものとして説明したが、水などの液体に対して浮力を有するものであれば中空構造のものに限らない。例えば、発泡スチロールでフロートを構成してもよい。また、フロートの形状も任意で、例えば球状のものであってもよい。
【0048】
図示の実施例では、フロート20をL字形レバー60の一方の腕に装着し、L字形レバー60の回転によって空気出入口30を開閉する構造になっていたが、このような構造に限られるものではない。例えば、フロートは直線的に上下動する構成にし、フロートの下降によって直接的に空気出入口を閉鎖し、フロートの浮力による上昇で空気出入口を開放するようにしてもよい。