【文献】
Magnetic Resonance in Chemistry,2000年,Vol.38, No.2,p.115-122
【文献】
Magnetic Resonance in Chemistry,2007年,Vol.45, No.7,p.572-577
【文献】
Journal of American Chemical Society,1990年,Vol.112, No.6,p.2194-2216
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記鉄系化合物が、シュウ酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトネート、塩化鉄(III)、過塩素酸鉄(II)、鉄(II)フタロシアニン、酢
酸鉄(II)、塩化鉄(II)、およびテトラフルオロホウ酸鉄(II)から成る群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
ひずみが大きい環(highly ring-strained)であるにもかかわらず、ビシクロ[1.1.1]ペンタンは、非常に安定である。単離されたビシクロ[1.1.1]ペンタンの最初の例は、1964年にWiberg(Wiberg et al. Tetrahedron Lett.1964, 531-4)によって報告された。しかしながら、難しく、低い収率の化学的性質により、ビシクロ[1.1.1]ペンタン分野の発展は、緩やかであった。約20年後、生産性の高いBCPへの経路が、Wiberg(Wiberg et al. J.Am.Chem. Soc. 1982, 104, 5239-40)により発見され、Sziemes(Semmler et al. J. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 6410-11)により、ひずみが大きい環の[1.1.1]プロペランを出発物質として利用する経路がさらに開発された。
【0010】
ビシクロ[1.1.1]ペンタンは、(立体的)形状および(電気的)極性等の特有な特性を有し、ひずみの大きい環が、橋頭炭素上の置換基に対する電子吸引性効果を生む。例えば、1−ビシクロ[1.1.1]ペンチルアミンは、tert−ブチルアミンと比べて著しく低い塩基性である(共役酸のpKaは、1−ビシクロ[1.1.1]ペンチルアミンでは8.6であり、対して、tBuNH
2では11.0である)。同様に、1−カルボキシビシクロ[1.1.1]ペンタンは、ピバル酸よりも酸性である(pKaは、1−カルボキシビシクロ[1.1.1]ペンタンでは4.09であり、対して、ピバル酸では5.05である)。これらとその他の特性は、BCPが、有機化学の構成要素として重要な用途が見出される可能性を示唆している。それでも、一部のBCPの合成における進歩があったにもかかわらず(例えば、Bunker et al., Org.Lett.2011, 13, 4746-4748を参照)、さらなるBCP構成要素、および公知のBCP系化合物のためのコスト効率の良い合成が必要とされている。
【0011】
略語
本明細書で使用される場合、以下の用語は、以下に示すように定義される。
用語 定義
EtOAc 酢酸エチル
THF テトラヒドロフラン
NMP N−メチル−2−ピロリドン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
MTBE メチル(tert−ブチル)エーテル
【0012】
定義
基が「置換されていてもよい」ものとして記載されている場合は常に、その基は、示された1以上の置換基による非置換型または置換型であり得る。同様に、基が「非置換型または(もしくは)置換型」として記載されている場合に、置換されているならば、置換基は、示された1以上の置換基から選択されている。置換基が全く示されていないならば、示された「置換されていてもよい」または「置換型」基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、(ヘテロシクリル)アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、シアノ、ハロゲン、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アミノ、一置換型アミノ基、および二置換型アミノ基からそれぞれ独立して選択された1個以上の基で置換されていることを意味する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「a」と「b」が整数である「C
a〜C
b」は、基の中の炭素原子の数を指す。示された基は、「a」〜「b」(「a」と「b」を含む)の炭素原子を含み得る。従って、例えば、「C
1〜C
4アルキル」基は、1〜4の炭素原子を有する全てのアルキル基、すなわち、CH
3−、CH
3CH
2−、CH
3CH
2CH
2−、(CH
3)
2CH−、CH
3CH
2CH
2CH
2−、CH
3CH
2CH(CH
3)−および(CH
3)
3C−を指す。「a」および「b」が全く指定されていないならば、これらの定義において記載されている最も広い範囲が想定される。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、完全飽和の脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、分枝または直鎖であってもよい。分枝アルキル基の例として、限定はされないが、イソブロピル、sec−ブチル、t−ブチル等が挙げられる。直鎖アルキル基の例として、限定はされないが、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル等が挙げられる。アルキル基は、1〜30の炭素原子を有し得る(本明細書においてアルキル基が記載されている場合は常に、「1〜30」等の数値の範囲は、与えられた範囲の各整数を指し、例えば、「1〜30の炭素原子」は、アルキル基が、1の炭素原子、2の炭素原子、3の炭素原子等、30の炭素原子を含む、30までの炭素原子からなり得ることを意味するが、本定義は、数値の範囲が指定されていない場合の用語「アルキル」についても当てはまる)。アルキル基は、1〜12の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルであってもよい。また、アルキル基は、1〜6の炭素原子を有する低級アルキルでもあり得る。アルキル基は、置換型または非置換型であってもよい。
【0015】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、炭素二重結合を含む2〜20の炭素原子の一価の直鎖ラジカルまたは分子鎖ラジカルを指し、例えば、限定はされないが、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル等が挙げられる。アルケニル基は、非置換型または置換型であってもよい。
【0016】
本明細書で使用される用語「アルキニル」は、炭素三重結合を含む2〜20の炭素原子の一価の直鎖ラジカルまたは分子鎖ラジカルを指し、例えば、限定はされないが、1−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル等が挙げられる。アルキニル基は、非置換型または置換型であってもよい。
【0017】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」は、完全飽和の(二重結合または三重結合を全く含まない)単環炭化水素系または多環炭化水素系を指す。環が二環以上の多環から成る場合、環は、互いに、縮合、架橋、またはスピロの形式で連結していてもよい。シクロアルキル基は、環の中に3〜10の原子を含むことができ、または、環の中に3〜8の原子を含むことができる。シクロアルキル基は、非置換型または置換型であってもよい。典型的なシクロアルキル基としては、決して限定はされないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの環の中に1以上の二重結合を含む単環炭化水素系または多環炭化水素系を指すが、1より多い二重結合がある場合、二重結合は、全環に亘って完全に非局在化したπ電子系を形成することはない(そうでなければ、本明細書で定義されるように、基は、「アリール」である)。シクロアルケニル基は、環の中に3〜10の原子を含むことができ、または、環の中に3〜8の原子を含むことができる。環が二環以上の多環から成る場合、環は、互いに、縮合、架橋、またはスピロの形式で連結していてもよい。シクロアルケニル基は、非置換型または置換型であってもよい。
【0019】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキニル」は、少なくとも1つの環の中に1以上の三重結合を含む単環炭化水素系または多環炭化水素系を指す。1より多い三重結合がある場合、三重結合は、全環に亘って完全に非局在化したπ電子系を形成することはない。シクロアルキニル基は、環の中に3〜10の原子を含むことができ、または、環の中に3〜8の原子を含むことができる。環が二環以上の多環から成る場合、環は、互いに、縮合、架橋、またはスピロの形式で連結していてもよい。シクロアルキニル基は、非置換型または置換型であってもよい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」は、−ORの式を指し、式中、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール(アルキル)、(ヘテロアリール)アルキル、または(ヘテロシクリル)アルキルである。アルコキシの非限定的な例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、1−メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n−ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシ、およびベンズオキシ(benzoxy)が挙げられる。アルコキシは、置換型または非置換型であってもよい。
【0021】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、全環に亘って完全に非局在化したπ電子系を有する、炭素環式(全てが炭素の)単環系または芳香族多環系(2つの炭素環が化学結合を共有している縮合環系を含む)を指す。アリール基の中の炭素原子の数は、変わり得る。例えば、アリール基は、C
6〜C
14アリール基、C
6〜C
10アリール基、またはC
6アリール基であり得る。アリール基の例として、限定はされないが、ベンゼン、ナフタレン、およびアズレンが挙げられる。アリール基は、置換型または非置換型であってもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、1以上のヘテロ原子(例えば、1、2、または3のヘテロ原子)、すなわち、窒素、酸素、および硫黄が非限定的な例として挙げられる炭素以外の元素を含む、単環芳香族系または多環芳香族系(完全に非局在化したπ電子系を有する環系)を指す。ヘテロアリール基の環の中の原子の数は、変わり得る。例えば、ヘテロアリール基は、環の中に4〜14の原子を含むことができ、環の中に5〜10の原子を含むことができ、環の中に5〜6の原子を含むことができる。さらに、用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つのアリール環と少なくとも1つのヘテロアリール環、または少なくとも2つのヘテロアリール環等の2つの環が、少なくとも1つの化学結合を共有する、縮合環系を含む。ヘテロアリール環の例として、限定はされないが、フラン、フラザン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フタラジン、ピロール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、チアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、インドール、インダゾール、ピラゾール、ベンゾピラゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、プリン、プテリジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、およびトリアジンが挙げられる。ヘテロアリール基は、置換型または非置換型であってもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」または「ヘテロ脂環式(heteroalicyclyl)」は、3員環、4員環、5員環、6員環、7員環、8員環、9員環、10員環から18員環までの単環系、二環系、および三環系を指し、炭素原子は、1〜5のヘテロ原子と共に前記環系を形成する。ヘテロ環は、所望により1以上の不飽和結合を含んでもよいが、不飽和結合は、全環に亘って完全に非局在化したπ電子系が生じないように位置する。ヘテロ原子は、炭素以外の元素であり、例えば、限定はされないが、酸素、硫黄、およ
び窒素が挙げられる。本定義が、ラクタム、ラクトン、環状イミド、環状チオイミド、および環状カルバメート等のオキソ系およびチオ系を含むように、ヘテロ環は、1以上のカルボニル官能基またはチオカルボニル官能基をさらに含んでもよい。環が二環以上の多環から成る場合、環は、互いに、縮合またはスピロの形式で連結していてもよい。さらに、ヘテロ脂環(heteroalicyclic)の中のどの窒素も、四級化されていてもよい。ヘテロシクリル基またはヘテロ脂環式(heteroalicyclic)基は、非置換型または置換型であってもよい。このような「ヘテロシクリル」基または「ヘテロ脂環式(heteroalicyclyl)」基として、1,3−ジオキシン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジオキソラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン、1,3−オキサチアン、1,4−オキサチイン、1,3−オキサチオラン、1,3−ジチオール、1,3−ジチオラン、1,4−オキサチアン、テトラヒドロ−1,4−チアジン、2H−1,2−オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、トリオキサン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン、モルホリン、オキシラン、ピペリジンN−オキシド、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ピロリドン、ピロリジオン、4−ピペリドン、ピラゾリン、ピラゾリジン、2−オキソピロリジン、テトラヒドロピラン、4H−ピラン、テトラヒドロチオピラン、チアモルフォリン、チアモルフォリンスルホキシド、チアモルフォリンスルホン、およびそれらのベンゾ縮合類似体(例えば、ベンズイミダゾリジノン、テトラヒドロキノリン、3,4−メチレンジオキシフェニル)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0024】
本明細書で使用される場合、「アラルキル」および「アリール(アルキル)」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結されたアリール基を指す。アラルキルの低級アルキレン基およびアリール基は、置換型または非置換型であってもよい。例として、ベンジル、2−フェニルアルキル、3−フェニルアルキル、およびナフチルアルキルが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアラルキル」および「ヘテロアリール(アルキル)」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結されたヘテロアリール基を指す。ヘテロアラルキルの低級アルキレン基およびヘテロアリール基は、置換型または非置換型であってもよい。例として、2−チエニルアルキル、3−チエニルアルキル、フリルアルキル、チエニルアルキル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソキサゾリルアルキル、およびイミダゾリルアルキル、およびそれらのベンゾ縮合類似体が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0026】
「(ヘテロ脂環式(heteroalicyclyl))アルキル」および「(ヘテロシクリル)アルキル」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結されたヘテロ環基またはヘテロ脂環式(heteroalicyclylic)基を指す。(ヘテロ脂環式(heteroalicyclyl))アルキルの低級アルキレンおよびヘテロシクリルは、置換型または非置換型であってもよい。例として、テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル、(ピペリジン−4−イル)エチル、(ピペリジン−4−イル)プロピル、(テトラヒドロ−2H−チオピラン−4−イル)メチル、および(1,3−チアジナン−4−イル)メチルが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0027】
「低級アルキレン基」は、直鎖状−CH
2−つなぎ(tethering)基であり、「低級アルキレン基」は、分子断片を自身の末端の炭素原子を介して連結するように結合を形成する。例として、メチレン(−CH
2−)、エチレン(−CH
2CH
2−)、プロピレン(−CH
2CH
2CH
2−)、およびブチレン(−CH
2CH
2CH
2CH
2−)が挙げられるが、これらに限定はされない。低級アルキレン基は、低級アルキレン基の1つ以上の
水素を置換することによって、および/または同じ炭素上の両方の水素をシクロアルキル基(例えば、
【化2】
)で置換することによって、置換され得る。
【0028】
本明細書で使用される用語「カルボニル」は、C=O(すなわち、炭素と酸素の二重結合)を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「アシル」は、カルボニル基を介して置換基として連結された水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、およびヘテロシクリル(アルキル)を指す。例として、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ベンゾイル、およびアクリルが挙げられる。アシルは、置換型または非置換型であってもよい。
【0030】
本明細書で使用される用語「アミノ」は、−NH
2を指す。
【0031】
「一置換型アミノ」基は、「−NHR」基であって、Rが、本明細書で定義されるようなアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、またはヘテロシクリル(アルキル)であり得る、「−NHR」基を指す。一置換型アミノは、置換型または非置換型であってもよい。一置換型アミノ基の例として、−NH(メチル)、−NH(フェニル)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0032】
「二置換型アミノ」基は、「−NR
AR
B」基であって、R
AおよびR
Bが、独立して、本明細書で定義されるようなアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、またはヘテロシクリル(アルキル)であり得る、「−NR
AR
B」基を指す。二置換型アミノは、置換型または非置換型であってもよい。二置換型アミノ基の例として、-N(メチル)
2、-N(フェニル)(メチル)、-N(エチル)(メチル)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0033】
用語「ハロゲン原子」または「ハロゲン」は、本明細書で使用される場合、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素等の元素周期表の7列の放射性安定原子のいずれか1つを意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」は、1つ以上の水素原子がハロゲンで置換されたアルキル基(例えば、モノハロアルキル、ジハロアルキル、およびトリハロアルキル)を指す。このような基として、クロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1−クロロ−2−フルオロメチル、および2−フルオロイソブチルが挙げられるが、これらに限定はされない。ハロアルキルは、置換型または非置換型であってもよい。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシアルキル」は、1つ以上の水素原子がヒドロキシ基で置換されたアルキル基を指す。ヒドロキシアルキル基の例として、2−ヒドロキ
シエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、および2,2−ジヒドロキシエチルが挙げられるが、これらに限定はされない。ヒドロキシアルキルは、置換型または非置換型であってもよい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アルコキシアルキル」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結されたアルコキシ基を指す。例として、アルキル−O−(CH
2)n−が挙げられ、式中、nは、1〜6の範囲内の整数である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「アシルアルキル」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結されたアシルを指す。例として、アリール−C(=O)−(CH
2)n−、およびヘテロアリール−C(=O)−(CH
2)n−が挙げられ、式中、nは、1〜6の範囲内の整数である。アシルアルキルは、置換型または非置換型であってもよい。
【0038】
本明細書で使用される場合、「アミノアルキル」は、低級アルキレン基を介して置換基として連結された、置換されていてもよいアミノ基を指す。例として、H
2N−(CH
2)n−、(CH
3)
2N−(CH
2)n−、および(CH
3)(フェニル)N−(CH
2)n−が挙げられ、式中、nは、1〜6の範囲内の整数である。
【0039】
本明細書で使用される場合、「アリールチオ」は、RS−を指し、Rは、アリールであり、限定はされないが、フェニル等である。アリールチオは、置換型または非置換型であってもよい。
【0040】
本明細書で使用される場合、「アルキルチオ」は、「−SR」基を指し、Rは、アルキルであり、例えば、C
1〜6アルキルである。アルキルチオは、置換型または非置換型であってもよい。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ハロアルコキシ」は、1つ以上の水素原子が、ハロゲンで置換された−O−アルキル基(例えば、モノハロアルコキシ、ジハロアルコキシ、およびトリハロアルコキシ)を指す。このような基として、クロロメトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、1−クロロ−2−フルオロメトキシ、および2−フルオロイソブトキシが挙げられるが、これらに限定はされない。ハロアルコキシは、置換型または非置換型であってもよい。
【0042】
「スルホニル」基は、「SO
2R」基を指し、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール(アルキル)、(ヘテロアリール)アルキル、または(ヘテロシクリル)アルキルであり得る。スルフェニルは、置換型または非置換型であってもよい。
【0043】
置換基の数が指定されていない場合(例えば、ハロアルキル)、1つ以上の置換基が存在してもよい。例えば、「ハロアルキル」は、1つ以上の同じハロゲン、または異なるハロゲンを含み得る。別の例として、「C
1−C
3アルコキシフェニル」は、1つ、2つ、または3つの原子を含む、1つ以上の同じアルコキシ基または異なるアルコキシ基を含んでもよい。
【0044】
本明細書で使用される場合、ラジカルは、単独の電子である不対電子を有する種を示し、前記ラジカルを含む前記種は、他の種と共有結合していることができる。従って、その意味において、ラジカルは、必ずしもフリーラジカルではない。むしろ、ラジカルは、大型分子の特定の部分を示す。用語「ラジカル」は、用語「基」と交換可能に使用され得る。
【0045】
1つ以上のキラル中心を有する本明細書に記載のあらゆる化合物において、絶対立体化学が、明確に示されていない場合、各中心は、独立して、R配置、またはS配置、またはその混合であり得ることが理解される。従って、本明細書に与えられる化合物は、エナンチオマーとして純粋であってもよく、エナンチオマーに富んでいて(enantiomerically enriched)もよく、ラセミ混合物であってもよく、ジアステレオマーとして純粋であってもよく、ジアステレオマーに富んでいて(diastereomerically enriched)もよく、または立体異性混合物であってもよい。また、EまたはZとして定義され得る幾何異性体を生成する、1つ以上の二重結合を有する本明細書に記載のあらゆる化合物において、各二重結合は、独立して、E、Z、またはそれらの混合であり得ることが理解される。
【0046】
本明細書に開示される化合物が、満たされていない価を有する場合、価は、水素、または水素−1(プロチウム)および水素−2(デューテリウム)等の水素の同位体で満たされることが理解されるべきである。
【0047】
値の範囲が与えられている場合、上限および下限、ならびに範囲の上限と下限の間の各間の値が、本実施形態内に包含されることが理解される。
【0048】
方法
本明細書に開示される一部の実施形態は、[1.1.1]プロペラン;第8族遷移金属化合物;水素化物源;および、ビシクロ[1.1.1]ペンタンが置換基で置換されるように、前記置換基の全部または一部を与え得る試薬、を混合することを含み得る、置換型ビシクロ[1.1.1]ペンタン化合物の製造方法に関する。
【0049】
本明細書に記載されているように、官能化ビシクロ[1.1.1]ペンタンは、[1.1.1]プロペランから鉄系化合物を使用して製造され得る。鉄介在性反応過程は、その全体が本明細書中に援用される、Leggans et al., Org. Lett., 2012, 14(6), 1428-1431, Ishikawa, H., et al., J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 4904-4916, Barker, T. J. et
al., J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 13588-13591 および Lo et al., J. Am. Chem. Soc., 2014, 136(4), 1304-1307に記載されているように、オレフィンの反応で成功することが示されているが、水素化物を添加し、[1.1.1]プロペランを官能化して、官能化ビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成させる、鉄が介在する(または第8族遷移金属が介在する)過程は、知られていない。
【0050】
置換型ビシクロ[1.1.1]ペンタン化合物を製造するための基本的な合成経路をスキーム1および2に示し、本明細書に記載する。本明細書に示され記載される経路は、例示のためだけのものであり、いかなる意味においても、特許請求の範囲を限定することを意図してはおらず、特許請求の範囲を限定することと解釈されてはならない。当業者は、開示される合成の変更を認めることと、本明細書の開示に基づく代替経路を考案することができるであろう。全てのこのような変更と代替経路は、特許請求の範囲内にある。
スキーム1
【化3】
【0051】
スキーム1に示すように、置換型ビシクロ[1.1.1]ペンタン化合物について、水素化物源は、示された水素に寄与し、試薬は、R
1またはR
1の一部に寄与する。本明細書に与えられるように、様々な第8族化合物、試薬、および水素化物源を使用して、置換型ビシクロ[1.1.1]ペンタン化合物を形成し得る。
【0052】
[1.1.1]プロペランは、様々な方法を介して製造され得る。適当な方法は、その全体が本明細書中に参照して援用される、Shtarev et al., J.Am.Chem. Soc. 2001, 123,
3484-3492、およびLynch et al., Org. Synth. 1998, 75, 98-105に記載されている。適当な方法の一例をスキーム2に示す。
スキーム2
【化4】
【0053】
金属化合物
当業者は、第8族が以下の元素:鉄、ルテニウム、オスミウム、およびハッシウムを含むことを理解する。いくつかの実施形態において、第8族遷移金属化合物は、鉄系遷移金属化合物であり得る。遷移金属化合物の酸化状態は、変わり得る。例えば、いくつかの実施形態において、鉄の酸化状態は、Fe(II)であり得、このとき、第8族遷移金属化合物は、Fe(II)系遷移金属化合物である。その他の実施形態において、鉄の酸化状態は、Fe(III)であり得、このとき、第8族遷移金属化合物は、Fe(III)系遷移金属化合物である。第8族遷移金属化合物は、塩、溶媒和物(一溶媒和物(mono-solvates)および過溶媒和物(per-solvates)を含む)、または水和物(一水和物および過水和物(per-hydrates)を含む)であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、第8族遷移金属化合物は、第8族金属に結合および/または配位している1つ以上のリガンドを含み得、このとき、第8族遷移金属化合物は、第8族遷移金属錯体である。本明細書で使用される場合、用語「リガンド」は、当業者が理解しているような通常の意味で本明細書で使用され、キレートまたは配位化合物の中の中心原子と結合している基を指す。適当なリガンドの例として、バソフェナントロリン、フタロシアニン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、5,10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン、トリシクロヘキシルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィニル)ヘキサン、エチレンビス(ジフェニルホスフィン)、N,N’−エチレンビス(サリチルイミン)、ベンゾイン、およびアセチルアセトネートが挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態において、1つより多いリガンドが、第8族遷移金属錯体中に存在し得る。いくつかの実施形態において、第8族遷移金属錯体は、鉄系遷移金属錯体であり得る。
【0055】
本明細書に記載の方法において使用される第8族遷移金属化合物の量は、変わり得る。いくつかの実施形態において、第8族遷移金属化合物は、化学量論量で存在し得る。その他の実施形態において、第8族遷移金属化合物は、触媒量で存在し得る。さらなる他の実施形態において、第8族遷移金属化合物は、過剰量で存在し得る。適当な第8族遷移金属化合物の例として、以下が挙げられる。シュウ酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトネート、塩化鉄(III)、過塩素酸鉄(II)、鉄(II)フ
タロシアニン、酢酸鉄(II)、塩化鉄(II)、テトラフルオロホウ酸鉄(II)。第8族遷移金属化合物は、市販されている、かつ/または、第8族遷移金属化合物は、当業者に知られている方法を使用して製造され得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、第8族遷移金属化合物(鉄遷移金属化合物等)は、10mol%〜70mol%の範囲内で存在し得る。いくつかの実施形態において、第8族遷移金属化合物(鉄遷移金属化合物等)は、20mol%〜60mol%の範囲内で存在し得る。いくつかの実施形態において、第8族遷移金属化合物(鉄遷移金属化合物等)は、30mol%〜50mol%の範囲内で存在し得る。いくつかの実施形態において、第8族遷移金属化合物(鉄遷移金属化合物等)は、約30mol%の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、第8族遷移金属化合物(鉄遷移金属化合物等)は、約50mol%の量で存在し得る。
【0057】
試薬
様々な試薬を使用して、置換基の全部または一部をビシクロ[1.1.1]ペンタン化合物に与え得る。いくつかの実施形態において、試薬は、求電子試薬として機能することができ、求核試薬を捕捉することができる。その他の実施形態において、試薬は、炭素ラジカル種のラジカル補足剤として機能して、置換型BCPを与えることができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬は、LG
1−R
1の構造を有すことができ、式中、R
1は、[1.1.1]プロペランの炭素に結合し、LG
1は、脱離基である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「脱離基」は、化学反応において他の原子または基と置換され得る、あらゆる原子または基を指す。さらに具体的に言うと、いくつかの実施形態において、「脱離基」は、求核置換反応で置換される原子または基を指す。いくつかの実施形態において、「脱離基」は、強酸の共役塩基である、あらゆる原子または基である。適当な脱離基の例として、トシレート、メシレート、スルホニル、およびハロゲン(例えば、I、Br、およびCl)が挙げられるが、これらに限定はされない。脱離基の非限定的な特性と例は、例えば、Organic Chemistry, 2
nd ed., Francis Carey (1992)の328〜331ページ;Introduction to Organic Chemistry, 2
nd ed., Andrew Streitwieser and Clayton Heathcock (1981)の169〜171ページ;および、Organic Chemistry, 5
th ed., John McMurry (2000)の398および408ページに見られ、これらは全て、脱離基の特性と例を開示するという限定的な目的のために、本明細書中に参照して援用される。
【0060】
いくつかの実施形態において、LG
1は、置換されていてもよいスルホニル、置換されていてもよいホスホネート、アルカリ金属、または遷移金属であり得る。様々な置換されていてもよいスルホニルおよび置換されていてもよいホスホネートが適当である。いくつかの実施形態において、置換されていてもよいスルホニルは、置換されていてもよいトシルであり得る。いくつかの実施形態において、置換されていてもよいホスホネートは、置換されていてもよいジ(アルキル)シアノホスホネート(例えば、ジ(エチル)シアノホスホネート)であり得る。
【0061】
LG
1−R
1の構造を有する試薬の非限定的な例として、トシルアジド、スルホニルアジド、アジ化リチウム、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、アジ化セシウム、アジ化亜鉛、シアン化トシル、塩化トシル、チオシアン酸カリウム、シアン酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、(E)−(フェニルスルホニル)メタナールO−ベンジルオキシム、(E)−N−(ベンジルオキシ)−1−(フェニルスルホニル)メタンイミドイルシアニド、シアノリン酸ジエチル、tert−ブチルイソシアネート、および置換されていてもよいスルホニルオキシムが挙げられる。
【0062】
その他の実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬は、R
1A−R
1Bの構造を有することができ、式中、R
1Bは、[1.1.1]プロペランの炭素と結合し、さらなる変換を経てR
1を形成し、R
1Aは、副産物を形成する。R
1A−R
1Bの例は、酸素分子である。酸素分子の1つの酸素原子は、[1.1.1]プロペランの炭素と結合し、もう1方の酸素は、酸化物の副産物(例えば、シラノキシ(silanoxy)副産物)を形成する。R
1A−R
1Bの構造を有する、置換基の全部または一部を与え得る試薬のさらなる例は、置換されていてもよいオキサジリジンである。
【0063】
さらなる他の実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬は、R
1の構造を有し得る。これらの試薬について、試薬の全原子は、[1.1.1]プロペランの炭素を増やして、置換型BCPを形成し得る。この種類の試薬の例は、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)である。
【0064】
またさらなる他の実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬は、置換されていてもよいR
1−C
2〜10アルケニルの構造を有し得る。いくつかの実施形態において、R
1−C
2〜10アルケニルは、非置換型であり得る。その他の実施形態において、R
1−C
2〜10アルケニルは、置換型であり得る。いくつかの実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬は、置換されていてもよいR
1−C
2〜6アルケニルの構造を有し得る。
【0065】
水素化物源
様々な試薬は、水素を[1.1.1]プロペランに与えるように使用され得る。本明細書で使用される場合、「水素化物源」は、H−またはHラジカル(H・)を与え得る試薬である。適当な水素化物源は、水素化物を[1.1.1]プロペラン、または第8族遷移金属化合物の金属中心に転移させて、金属−水素化物錯体を与え得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、水素化物源は、金属系水素化物源であり得る。例として、アルカリ金属系水素化物、およびアルカリ金属系ホウ水素化物(水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム等)が挙げられるが、これらに限定はされない。その他の実施形態において、水素化物源は、非金属系水素化物源であり得る。非金属系水素化物源の例として、シラン(例えば、フェニルシランおよびメチルジフェニルシラン)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、および置換されていてもよいボラン(BH
3、BH
3錯体、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN)、およびイソピノカンフェイルボラン等)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0067】
水素化物源試薬は、販売業者から入手すること、および/または当業者に知られている方法を使用して製造することができる。重水素化された均等物もまた、販売業者から入手すること、および/または、例えば、その全体が本明細書中に参照により援用される、Keinan et al., J.Org.Chem., 1987, 52, 2576-2580、およびHarvey et al., J.Am. Chem. Soc., 1957, 79, 1437-1439に記載されているように、市販の試薬を使用して製造することができる。いくつかの実施形態において、本明細書中で与えられる方法は、水素化物源の第1の部分、および水素化物源の第2の部分を加えることを含み得る。
【0068】
[1.1.1]プロペラン、第8族遷移金属化合物、水素化物源、および置換基の全部または一部を与え得る試薬の量は、変わり得る。いくつかの実施形態において、[1.1.1]プロペラン、第8族遷移金属化合物、水素化物源、および置換基の全部または一部を与え得る試薬のうち1つ以上は、他の1つ以上の上記化合物よりも多いことがあり得る。いくつかの実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬は、[1.1.
1]プロペランおよび/または水素化物源よりも多いことがあり得る。その他の実施形態において、水素化物源は、[1.1.1]プロペランおよび/または置換基の全部または一部を与え得る試薬よりも多いことがあり得る。さらなる他の実施形態において、[1.1.1]プロペランは、水素化物源および/または置換基の全部または一部を与え得る試薬よりも多いことがあり得る。上回る量は、変わり得る。例えば、上回る量は、約1.5倍以上、約2倍以上、約3倍以上、または約4倍以上であり得る。いくつかの実施形態において、水素化物源の量に対する[1.1.1]プロペランの量は、約0.75当量〜約2当量の範囲内にあり得る。いくつかの実施形態において、水素化物源の量に対する[1.1.1]プロペランの量は、約1当量〜約1.5当量の範囲内にあり得る。いくつかの実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬の量に対する[1.1.1]プロペランの量は、約0.8当量〜約4当量の範囲内にあり得る。いくつかの実施形態において、置換基の全部または一部を与え得る試薬の量に対する[1.1.1]プロペランの量は、約1.2当量〜約3当量の範囲内にあり得る。その他の実施形態において、[1.1.1]プロペラン、第8族遷移金属化合物、水素化物源、および置換基の全部または一部を与え得る試薬のうち1つ以上は、他の1つ以上の上記化合物とほぼ等しいモル数であり得る。
【0069】
[1.1.1]プロペラン、第8族遷移金属化合物、水素化物源、および置換基の全部または一部を与え得る試薬の各々を混合する順序もまた、変わり得る。例えば、第8族遷移金属化合物を、置換基の全部または一部を与え得る試薬と混合し、次いで、[1.1.1]プロペランおよび水素化物源を加えることができる。あるいは、[1.1.1]プロペランを置換基の全部または一部を与え得る試薬の前に加えることができる。
【0070】
追加の化合物
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、1つ以上の追加の化合物を含み得る。例えば、本明細書に記載の方法は、開始剤として作用し得る追加の化合物も含み得る。開始剤は、反応性のラジカル種を生成させて、反応を促進し得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、捕捉化合物として作用し得る化合物も含み得る。例として、捕捉化合物は、本明細書に記載の方法で形成される1つの化合物の副産物と結合でき、副反応の数、および/または反応の間に形成される副産物の量を減らすことができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、添加剤として作用し得る追加の化合物もまた含み得る。本明細書で使用される場合、「添加剤」は、反応性の化合物の再生を促進する。例えば、添加剤は、反応性の遷移金属化合物を再生し得る。本明細書に記載の方法で使用され得る適当な追加の化合物として、例えば、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)、メチルモルホリンオキシド、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、酸素、過ヨウ素酸ナトリウム、臭素酸銀、クロロギ酸銀、硝酸セリウムアンモニウム、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、Oxone(登録商標)、3−クロロ過安息香酸等が挙げられる。添加剤の一例は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)である。
【0073】
1つ以上の追加の化合物は、本明細書に与えられる方法において、本明細書に記載の方法の様々な場面で含まれ得る。同様に、本明細書に与えられる方法において、様々な量の1つ以上の追加の化合物が含まれ得る。本明細書に与えられる方法に含まれる追加の化合物のタイミングと量は、当業者の知識の範囲内にある。
【0074】
溶媒
本明細書に記載の方法において、様々な溶媒を使用することができる。いくつかの実施形態において、溶媒は、アルコール系溶媒であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法において、共溶媒を使用することができる。適当な溶媒および共溶媒として、エタノール、メタノール、イソプロパノール、H
2O、THF、NMP、DMF、DMSO、MTBE、CH
3CN、CH
2Cl
2、トルエン、またはジオキサン、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態において、溶媒は、H
2Oであり得る。その他の実施形態において、溶媒は、THFであり得る。さらなる他の実施形態において、溶媒は、エタノールであり得る。またさらなる他の実施形態において、溶媒は、メタノールであり得る。いくつかの実施形態において、溶媒は、Et
2Oであり得る。いくつかの実施形態において、共溶媒の組み合わせは、H
2OおよびTHFであり得る。その他の実施形態において、共溶媒の組み合わせは、Et
2OおよびMeOHであり得る。いくつかの実施形態において、溶媒は、イソプロパノールであり得る。
【0075】
時間および温度
本明細書に与えられる方法を、様々な温度で実施し得る。さらに、温度を、方法の間、低下および/または上昇させることができる。いくつかの実施形態において、温度は、約−5℃〜約30℃の範囲内であり得る。いくつかの実施形態において、温度は、室温(約25℃)であり得る。その他の実施形態において、温度は、約0℃であり得る。いくつかの実施形態において、温度は、30℃より高温であり得る。その他の実施形態において、温度は、0℃未満であり得る。
【0076】
本明細書に記載の方法によって、時間も変わり得る。例えば、本明細書に与えられる方法の時間は、約30分〜約3時間の範囲内にあり得る。いくつかの実施形態において、時間は、約10時間〜約24時間の範囲内にあり得る。いくつかの実施形態において、時間は、約8時間〜約12時間の範囲内にあり得る。
【0077】
本明細書に与えられるように、BCPに最初に結合されるR
1は、さらなる変換を経て、他のR
1基を形成し得る。例えば、R
1基は、当業者に知られている方法を使用して還元されて、他のR
1基を形成し得る。さらなる変換の例として、酸化、付加、脱離、濃縮、カップリング、メタセシス、加水分解、アミノリシス、転位、環化(cyclization)、芳香族化、環化(annulation)、断片化、置換、転移、同族体化、多成分反応、および上記のうちいずれかによる組み合わせが挙げられる。具体的な例として、アジドは、当業者に知られている方法を使用して還元されて、アミノ基を形成し得る。適当な変換のさらなる例は、Richard C.Larock Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations (2
nd Ed., Wiley, John & Sons, Inc., Nov. 1999);およびJerry March, (Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure (6
thEd., Wiley, John & Sons, Inc., Jan. 2007)に与えられている。
【0078】
化合物
本明細書に開示される一部の実施形態は、式(I)の化合物に関する。
【化5】
式中、R
1は、−N
3、ハロゲン、−CN、−CF
3、−OH、−SCN、−NCO、−NO、−C(=NOR
2)(CN)、−CH(=NOR
2)、−COH、置換されていて
もよいC
1〜30アルキル、置換されていてもよいC
2〜30アルケニル、置換されていてもよいC
2〜30アルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル、置換されていてもよいシクロアルキニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール(C
1〜6アルキル)、置換されていてもよいヘテロアリール(C
1〜6アルキル)、置換されていてもよいヘテロシクリル(C
1〜6アルキル)、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアルコキシアルキル、置換されていてもよいアシルアルキル、置換されていてもよいアミノアルキル、置換されていてもよいヒドロキシアルキル、置換されていてもよいハロアルキル、置換されていてもよいハロアルコキシ、置換されていてもよいアリールチオ、または置換されていてもよいアルキルチオであり得;かつ、R
2は、(C
1〜C
10)アルコキシ、置換されていてもよいC
1〜30アルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル、置換されていてもよいシクロアルキニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール(アルキル)、置換されていてもよいヘテロアリール(アルキル)、置換されていてもよいヘテロシクリル(アルキル)、置換されていてもよいアミノアルキル、または置換されていてもよいアルキルアミノであり得る。
【0079】
本明細書に記載の1つ以上の方法を使用して、式(I)の化合物を得ることができる。例えば、いくつかの実施形態において、R
1は、−N
3、ハロゲン、−CF
3、−CN、−CF
3、−OH、−SCN、−NCO、−NO、−C(=NOR
2)(CN)、−CH(=NOR
2)、または−COであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の方法を使用して、式(I)の化合物を得ることができ、式中、R
1は、置換されていてもよいC
1〜30アルキル、置換されていてもよいC
2〜30アルケニル、置換されていてもよいC
2〜30アルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル、置換されていてもよいシクロアルキニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール(C
1〜6アルキル)、置換されていてもよいヘテロアリール(C
1〜6アルキル)、置換されていてもよいヘテロシクリル(C
1〜6アルキル)、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアルコキシアルキル、置換されていてもよいアシルアルキル、置換されていてもよいアミノアルキル、置換されていてもよいヒドロキシアルキル、置換されていてもよいハロアルキル、置換されていてもよいハロアルコキシ、置換されていてもよいアリールチオ、または置換されていてもよいアルキルチオであり得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、R
1は、−N
3であり得る。その他の実施形態において、R
1は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、および/またはI)であり得る。さらなる他の実施形態において、R
1は、−CNであり得る。いくつかの実施形態において、R
1は、−CF
3であり得る。またさらなる他の実施形態において、R
1は、OHであり得る。いくつかの実施形態において、R
1は、−SCNであり得る。その他の実施形態において、R
1は、−NCOであり得る。さらなる他の実施形態において、R
1は、−NOであり得る。またさらなる他の実施形態において、R
1は、−C(=NOR
2)(CN)および/または−CH(=NOR
2)であり得る。いくつかの実施形態において、R
1は、−COHであり得る。その他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいC
1〜30アルキルであり得る。例えば、R
1は、−CH(CO
2H)(NHBoc)等の置換されていてもよいC
1〜4アルキルであり得る。さらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいC
2〜30アルケニルであり得る。またさらなる他の実施形態に
おいて、R
1は、置換されていてもよいC
2〜30アルキニルであり得る。いくつかの実施形態において、R
1は、置換されていてもよいシクロアルキルであり得る。その他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいシクロアルケニルであり得る。さらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいシクロアルキニルであり得る。またさらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアリールであり得る。いくつかの実施形態において、R
1は、置換されていてもよいヘテロアリールであり得る。その他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいヘテロシクリルであり得る。置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルの例として、それぞれ、置換されていてもよい単環アリール、置換されていてもよい単環ヘテロアリール、および置換されていてもよい単環ヘテロシクリルが挙げられるが、これらに限定はされない。さらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアリール(C
1〜6アルキル)であり得る。またさらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいヘテロアリール(C
1〜6アルキル)であり得る。いくつかの実施形態において、R
1は、置換されていてもよいヘテロシクリル(C
1〜6アルキル)であり得る。その他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアルコキシであり得る。さらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアシルであり得る。またさらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアミノであり得る。いくつかの実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアルコキシアルキルであり得る。その他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアシルアルキルであり得る。さらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアミノアルキルであり得る。またさらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいヒドロキシアルキルであり得る。いくつかの実施形態において、R
1は、置換されていてもよいハロアルキルであり得る。その他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいハロアルコキシであり得る。さらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアリールチオであり得る。またさらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアルキルチオであり得る。いくつかの実施形態において、R
1は、非置換型アミノアルキルであり得る。いくつかの実施形態において、R
1は、置換型アミノアルキル、例えば−CH(NH
2)(CO
2H)であり得る。
【0081】
本明細書に与えられるように、R
2は、様々な基であり得る。例えば、R
2は、(C
1〜C
10)アルコキシ、置換されていてもよいC
1〜30アルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルケニル、置換されていてもよいシクロアルキニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール(アルキル)、置換されていてもよいヘテロアリール(アルキル)、置換されていてもよいヘテロシクリル(アルキル)、置換されていてもよいアミノアルキル、または置換されていてもよいアルキルアミノであり得る。いくつかの実施形態において、R
2は、置換されていてもよいベンジルであり得る。いくつかの実施形態において、OR
2は、カルビミドイル(carbimidoyl)シアニド、カルバルデヒドオキシム、(ベンジルオキシ)カルビミドイル(carbimidoyl)シアニド、またはカルバルデヒドO−ベンジルオキシムであり得る。
【0082】
式(I)の化合物の非限定な例として、以下が挙げられる。
【化6】
【0083】
いくつかの実施形態において、R
1は、−N
3にはなり得ない。その他の実施形態において、R
1は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、および/またはI)にはなり得ない。さらなる他の実施形態において、R
1は、−CNにはなり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、−CF
3にはなり得ない。またさらなる他の実施形態において、R
1は、OHにはなり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、−SCNにはなり得ない。その他の実施形態において、R
1は、−NCOにはなり得ない。さらなる他の実施形態において、R
1は、−NOにはなり得ない。またさらなる他の実施形態において、R
1は、−C(=NOR
2)(CN)および/または−CH(=NOR
2)にはなり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、−COHにはなり得ない。その他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいC
1〜30アルキルにはなり得ない。さらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいC
2〜30アルケニルにはなり得ない。またさらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいC
2〜30アルキニルにはなり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、置換されていてもよいシクロアルキルにはなり得ない。その他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいシクロアルケニルにはなり得ない。さらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいシクロアルキニルにはなり得ない。またさらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアリールにはなり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、置換されていてもよいヘテロアリールにはなり得ない。その他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいヘテロシクリルにはなり得ない。さらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアリール(C
1〜6アルキル)にはなり得ない。またさらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいヘテロアリール(C
1〜6アルキル)にはなり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、置換されていてもよいヘテロシクリル(C
1〜6アルキル)にはなり得ない。その他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアルコキシにはなり得ない。さらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアシルにはなり得ない。またさらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアミノにはなり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアルコキシアルキルにはなり得ない。その他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアシルアルキルにはなり得ない。さらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアミノアルキルにはなり得ない。またさらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいヒドロキシアルキルにはなり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、置換されていてもよいハロアルキルにはなり得ない。その他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいハロアルコキシにはなり得ない。さらなる他の実施形態において、R
1は、置換されていてもよいアリールチオにはなり得ない。またさらなる他の実施形態において、R
1は、置換
されていてもよいアルキルチオにはなり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、非置換型C
1〜30アルキルにはなり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、非置換型アミノアルキルにはなり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、置換型アミノアルキルにはなり得ない。いくつかの実施形態において、R
1は、置換されていてもよい
【化7】
にはなり得ない。
【0084】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、
【化8】
にはなり得ない。その他の実施形態において、式(I)の化合物は、
【化9】
にはなり得ない。さらなる他の実施形態において、式(I)の化合物は、
【化10】
にはなり得ない。またさらなる他の実施形態において、式(I)の化合物は、
【化11】
にはなり得ない。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、
【化12】
にはなり得ない。その他の実施形態において、式(I)の化合物は、
【化13】
にはなり得ない。
【0085】
置換型ビシクロ[1.1.1]ペンタン化合物を製造するためのさらなる詳細を、表1に与える。
【化14】
【表1-1】
【表1-2】
【0086】
スキーム3:アミン
【化15】
1−アジドビシクロ[1.1.1]ペンタンの還元を、当業者は、水素化(H
2,10%
Pd/C)、移動水素化、またはトリフェニルホスフィンと水を用いるシュタウディンガー還元等の条件[またはRichard C. Larock(上述)に記載の条件]を利用して実施し、1−ビシクロ[1.1.1]ペンチルアミンを生じさせ得る(スキーム3)。
【0087】
スキーム4:アルデヒド
【化16】
適当な化学試薬を用いたビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルボニトリルの還元[例えば、March(上述)に記載のように;(例えば水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)等の穏やかな水素化アルミニウム試薬の後に酸性の水性条件、または塩化スズ(II)/HClの後に酸性の水性条件(スチーブン反応等)]により、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルバルデヒドが生成し得る(スキーム4)。
【0088】
スキーム5:メチルアルコール
【化17】
(March(上述)およびLarock(上述)により記載されているような(例えば、LiAlH
4、NaBH
4等の))適当な試薬を用いたさらなる還元により、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イルメタノールが生成し得る(スキーム5)。
【0089】
スキーム6:メチルアミン
【化18】
ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルボニトリルの還元を、(March(上述)およびLarock(上述)により記載されているような(例えば、水素化リチウムアルミニウム、パラジウム触媒/水素、白金触媒/水素、ラネーニッケル/水素、ジボラン等の))適当な化学試薬を用いて実施して、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イルメタンアミンを生成させ得る(スキーム6)。
【0090】
当業者であれば、例示としてのスキームと実施例で説明されている手順を、所望の生成物に到達するように変更する方法が分かることに留意すべきである。
【実施例】
【0091】
実施例1:基本手順
1ppmのBHT(10mMの最終濃度)を含む、無水EtOH、無水MeOH、または無水MeOHおよび無水Et
2Oの2:1混合物中のFe(acac)
3の溶液(30mol%または50mol%)を製造し、N
2下で2分間攪拌した。[1.1.1]プロペ
ラン(1当量、Et
2O中の溶液として)および置換基の全部または一部を与え得る適当な試薬(1.2〜3当量)を加えて、次いでPhSiH
3(1.0〜1.5当量)を加えた。室温(RT)で一夜攪拌後、生成物を含む混合物を濃縮して所望の化合物を得、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによりさらに精製するか、または単離または精製をせずに対応する誘導体を生成させるために生成物を次の段階へと進めさせた。
【0092】
実施例2:ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルボニトリル:
【化19】
ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルボニトリルを、基本手順に従って、置換基の全部または一部を与え得る適当な試薬として4−メチルベンゼンスルホニルシアニド(TsCN)を使用して、製造した。
1H NMR (400 MHz, MeOH-d
4) δ 2.40 (s, 1 H), 2.31 (s, 6 H).
【0093】
実施例3:ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イルメタンアミン:
【化20】
ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イルメタンアミンを、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルボニトリルを無水Et
2Oに溶解し(0.090M)、0℃に冷却することにより製造した。THF中のLAHの2M溶液(5.3当量)を攪拌しながら滴下した。30分後、EtOAc(2mL)を加えて0℃で溶液をクエンチした。混合物を元の体積の30%に濃縮し、Si−Tosic酸樹脂のカラムにロードした。MeOHをカラムに注入し、次いで、MeOH中の1N NH
3で所望の化合物を溶離した。元の体積の10%に溶液を濃縮し、次いで、ジオキサン中の4N HClで酸性化し、乾燥するまで濃縮して、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イルメタンアミンを得た。
1H NMR (400 MHz, MeOH-d
4) δ 2.97 (s, 2 H), 2.57 (s, 1 H), 1.90 (s, 6 H); LC/MS (APCI) m/z 98.1 [C
6H
11N+H]
+.
【0094】
実施例4:ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルバルデヒド:
【化21】
DCM中のビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルボニトリル(1.0当量)の溶液(0.3M)を−10℃に冷却し、DIBAL−H(1.4当量)の1.0M溶液で処理した。2時間後、溶液を1N HClで−10℃でクエンチし、室温で10分間攪拌させた。ロッシェル塩の10%水溶液を加え、層がはっきりと分離するまで混合物を攪拌した
。混合物をDCM(4×)で抽出し、まとめた有機相を乾燥し(Na
2SO
4)、次いで濃縮してビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルバルデヒドを得た。
1H NMR (400 MHz,
CDCl
3) δ 9.48 (s, 1 H), 2.53 (s, 1 H), 2.08 (s, 6 H).
【0095】
実施例5:ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イルメタノール:
【化22】
ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルバルデヒドを、本明細書で実施例4で記載されているように製造した。ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルバルデヒドを、MeOH(0.3M)に再溶解し、0℃に冷却した。NaBH
4(1.2当量)を一度に加え、懸濁液を室温に温まらせた。混合物を1時間攪拌し、
1H NMR分光法でモニタリングした。H
2Oを加えて混合物をクエンチし、Et
2Oで抽出した。まとめた有機相を乾燥し(Na
2SO
4)、濃縮して、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イルメタノールを油として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 3.70 (s, 2 H), 2.53 (s, 1 H), 1.74 (s, 6 H).
【0096】
実施例6:2−(ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イル)−2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)酢酸:
【化23】
THF中のビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルバルデヒド(1当量)の粗溶液(0.6M)を0℃でMeOH中のアンモニア(15当量)の7N溶液で処理した。次いで、TMSCN(1.5当量)で溶液を処理し、完了するまで得られた混合物を50℃で攪拌した。完了後すぐに混合物を室温に冷却し、乾燥するまで濃縮した。残渣を6N HCl水溶液(0.3M)に再溶解し、次に、4.5時間かけて100℃へ加熱した。混合物を室温に冷却し、pH試験紙で塩基性になるまで固体のNaHCO
3を加えてクエンチした。飽和NaHCO
3水溶液とジオキサン(2:1)で溶液をさらに希釈した。Boc無水物(1.2当量)を加え、混合物を室温で一夜攪拌した。混合物を1N HClで酸性化し、EtOAc(4×)で抽出した。まとめた有機層を乾燥し(Na
2SO
4)濃縮して暗色油を得、これを逆相クロマトグラフィー(ISCO C18,H
2O w/0.1%ギ酸/ACN w/0.1%ギ酸)でさらに精製して、2−(ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イル)−2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)酢酸を白色固体として得た。生成物は、溶液中で、5.5:1の回転異性体の混合物として存在する。主な回転異性体:
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.44 (s, COOH, 1 H), 6.94 (d, J = 8.0 Hz, 1 H), 3.90 (d, J = 8.0 Hz, 1 H), 2.44 (s, 1 H), 1.77-1.67 (m, 6 H), 1.38
(s, 9 H); LC/MS (APCI) m/z 142.1 [C
12H
19NO
4-C
5H
9O
2+H]
+.
【0097】
実施例7:2−アミノ−2−(ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イル)酢酸塩化水素:
【化24】
酢酸エチル中の2−(ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イル)−2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)酢酸(1当量)の溶液(0.2M)をジオキサン中の4N HCl(10当量)で処理した。混合物を一夜攪拌した。(LCMSによりモニタリングした)完了の後すぐに、混合物を減圧下で濃縮し、Et
2Oで粉末化して、2−アミノ−2−(ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イル)酢酸塩化水素を白色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 13.75 (br s, COOH, 1 H), 8.32 (br s, NH, 3 H), 3.93 (s, 1 H), 2.50 (s, 1 H), 1.85-1.78 (m, 6 H); LC/MS (APCI) m/z 142.1 [C
7H
11NO
2+H]
+.
【0098】
実施例8:(Z)−N−(ベンジルオキシ)ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルビミドイル(carbimidoyl)シアニド:
【化25】
(Z)−N−(ベンジルオキシ)ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルビミドイル(carbimidoyl)シアニドを、基本手順に従って、置換基の全部または一部を与え得る適当な試薬として(E)−N−(ベンジルオキシ)−1−(フェニルスルホニル)メタンイミドイルシアニドを使用して、製造した。生成物を異性体(E/Z)の混合物として単離した。主な異性体:
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.40 - 7.30 (m, 5H), 5.25 (s, 2H), 2.55 (s, 1H), 2.08 (s, 6H).少量の異性体:
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.40 - 7.30 (m, 5H), 5.22 (s, 2H), 2.51 (s, 1H), 2.19 (s, 6H).
【0099】
実施例9:(E)−ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルバルデヒドO−ベンジルオキシム:
【化26】
(E)−ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルバルデヒドO−ベンジルオキシムを、基本手順に従って、置換基の全部または一部を与え得る適当な試薬として(E)−(フェニルスルホニル)メタナールO−ベンジルオキシムを使用して、製造した。LC/MS (APCI) m/z 202.1 [C
13H
15NO+H]
+.
【0100】
実施例10:1−アジドビシクロ[1.1.1]ペンタンおよびビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−アミン:
【化27】
1−アジドビシクロ[1.1.1]ペンタンを、基本手順に従って、置換基の全部または一部を与え得る適当な試薬としてトシルアジドを使用して、製造した。MeOH/Et
2O中の粗アジドにHCl(37%水溶液、1.2当量)を加え、次いで、Pd/C(20mol%)を加えた。混合物をH
2雰囲気下で一夜攪拌した。混合物を乾燥するまで濃縮し、次に、EtOAcとH
2Oとの間に分離した。水層を塩基性にし、次に、EtOAcで抽出した。有機層をジオキサン中の4N HClで酸性化した。混合物を乾燥するまで濃縮し、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−アミンを得た。ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−アミン:LC/MS (APCI) m/z 84.1 [C
5H
9N+H]
+.
【0101】
実施例11:1−アジドビシクロ[1.1.1]ペンタンおよび1−(ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イル)−4−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール:
【化28】
1−アジドビシクロ[1.1.1]ペンタンを、本明細書で実施例10で記載されているように製造した。反応の完了後、EtOAcとH
2Oを加えた。有機層を分離した。粗アジドを含む有機層に、CuI(20mol%)、フェニルアセチレン(1.5当量)を加え、次に、Et
3N(2当量)を加えた。16時間後、反応物を乾燥するまで濃縮し、次に、カラムクロマトグラフィーにより精製して、1−(ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イル)−4−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾールを得た。H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.84 - 7.82 (m, 2H), 7.74 (s, 1H), 7.45 -7.40 (m, 2H), 7.35 - 7.30 (m, 1H), 2.74 (s, 1H), 2.44 (s, 6H); LC/MS (APCI) m/z 212.10 [C
13H
13N
3+H]
+.
【0102】
上記では、明確化と理解という目的のために、例示と実例として、少し詳しく記載したが、当業者は、本開示の精神から逸脱することなく、様々な多くの変更をなし得ることを理解するであろう。従って、本明細書に開示された形態は、例示のためだけのものであり、本開示の範囲を限定することを意図してはおらず、むしろ、本発明の真の範囲と精神に沿った全ての変更と代替も含むことを意図することを、明確に理解するべきである。