特許第6741406号(P6741406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6741406
(24)【登録日】2020年7月29日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】車両用シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20200806BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20200806BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20200806BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   B60N2/58
   B60N2/64
   B68G7/05 C
   A47C27/14 A
   A47C27/14 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-150715(P2015-150715)
(22)【出願日】2015年7月30日
(65)【公開番号】特開2017-30434(P2017-30434A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年6月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 文
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−061224(JP,A)
【文献】 特開平07−001588(JP,A)
【文献】 特開2010−088702(JP,A)
【文献】 特開2003−326598(JP,A)
【文献】 特開平03−258530(JP,A)
【文献】 特開2005−261581(JP,A)
【文献】 特開2013−059881(JP,A)
【文献】 特公平01−030507(JP,B2)
【文献】 特公昭59−040037(JP,B2)
【文献】 米国特許第04715916(US,A)
【文献】 米国特許第04722760(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C27/14
B68G 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンパッドの表面を表皮とカバーパッドと裏基布とで構成されるトリムカバーで覆って形成したクッションシートまたはシートバックを有する車両用シートであって、
前記クッションシートまたはシートバック前記ウレタンパッドには前記トリムカバーと一緒に押し付け型の形状が転写された凹部が形成されており、前記凹部の内部を含めた前記ウレタンパッドと前記トリムカバーとが接触する面はホットメルト接着剤により接着されており、前記ホットメルト接着剤接着された前記ウレタンパッドの前記トリムカバーが接着された面及びその近傍の部分において前記ウレタンパッドの前記凹部の底の部分は前記底の周囲の部分と比べてより大きく収縮した層が形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
車両用シートの製造方法であって、凸部が形成された型の上にトリムカバーを載置し、前記トリムカバーの上にホットメルト接着剤を載置し、前記凸部が形成された型に載置し前記トリムカバーと前記ホットメルト接着剤を加熱し、前記加熱した前記トリムカバーと前記ホットメルト接着剤にウレタンパッドを押し付けることにより、前記型に形成された凸部形状を前記ウレタンパッドと前記トリムカバーに転写して前記ウレタンパッドに凹部を形成するとともに、前記凹部の内部を含めて前記ウレタンパッドと前記トリムカバーとの接触面を前記ホットメルト接着剤により接着することを特徴とする車両用シートの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の車両用シートの製造方法であって、前記凸部が形成された型に押付ける前記ウレタンパッドの表面は、前記凹部に対応する凹みがなく、平坦に形成されていることを特徴とする車両用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用シート及びその製造方法に関する従来技術として、特許文献1には、要約の欄に、位置決めピンや位置決め用のプレートを用いることなく縫製カバーとパッドとを簡単かつ確実に接着形成することができ、しかも未接着部を発生させるおそれがない表皮接着シートの製造方法として、成形下型に突設プラグ上に裏面にホットメルトフィルムを貼着してなる袋状の縫製カバーの縫合部をセットして真空吸引し、これにより縫製カバーを製品形状にプリフォームしたうえ、その表面にパッドを圧着して接着成型することが記載されている。また、縫製カバーの天板部の展開長をパッドの天板部の展開長よりも短くしておくことにより、プリフォームの際に縫製カバーの縫い足を一定方向に倒すことができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−1588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている従来の縫製カバー(トリムカバー)をパッド(ウレタンパッド)に接着成型する方法においては、予め深溝が成形されたパッドと、このパッドの深溝の形状に合わせた突起部が成形された下型を用いて、パッドを縫製カバーに圧着して接着成型している。
【0005】
この方法によれば、パッドには予め深溝を形成する工程が必要であり、深溝を形成するための手段(深溝の型)を、深溝の形状に応じた数だけ揃えておかなければならず、多品種の生産を行う場合に、段取りの時間が多くなり、これを短縮することが課題となっていた。
また、品種ごとにパッドの形状が異なる場合、異なるパッド形状に対応した数の型部品と、接着成型工程で用いる下型部品の総数が、車両用シートの品種が多くなるに伴って多くなり、これらの型部品を保管するスペースが大きくなってしまうという課題があった。
【0006】
また、パッドに形成された深溝と、下型の突起部との位置を合せるための機構が必要であり、接着成型工程で用いる装置の構成が多少複雑になっていた。
【0007】
車両用シートの意匠表現として車両用シートの表面に凹形状を形成する場合があるが、この凹形状を形成する場合にも、ウレタンパッド形成時に凹形状に対応した専用の型を用いて形成すると、凹形状ごとの専用の型を準備しなければならず、型の管理に多くのスペースが必要となってしまう。
【0008】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決して、ウレタンパッド形成時に専用の型を用いてウレタンパッドに凹部を形成することなく、縫製カバーをウレタンパッドの接着成型する工程で下型に形成したパターンをウレタンパッドに転写することでウレタンパッドに凹部を形成することができるようにして、より少ない型部品を用いて、比較的短い工程で、ウレタンパッドを縫製カバーに圧着して接着成型することを可能にする車両用シート及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した従来技術の課題を解決するために、本発明では、ウレタンパッドの表面を表皮とカバーパッドと裏基布とで構成されるトリムカバーで覆って形成したクッションシートまたはシートバックを有する車両用シートにおいて、クッションシートまたはシートバックのウレタンパッドにはトリムカバーと一緒に押し付け型の形状が転写された凹部が形成されており、凹部の内部を含めたウレタンパッドとトリムカバーとが接触する面はホットメルト接着剤により接着されており、ホットメルト接着剤接着されたウレタンパッドのトリムカバーが接着された面及びその近傍の部分においてウレタンパッドの凹部の底の部分は底の周囲の部分と比べてより大きく収縮した層が形成されている。
また、上記した従来技術の課題を解決するために、本発明では、車両用シートの製造方法
において、凸部が形成された型の上にトリムカバーを載置し、子のトリムカバーの上にホットメルト接着剤を載置し、前記凸部が形成された型に載置し前記トリムカバーと前記ホットメルト接着剤を加熱し、前記加熱した前記トリムカバーと前記ホットメルト接着剤にウレタンパッドを押し付けることにより、型に形成された凸部形状をウレタンパッドとトリムカバーに転写して、ウレタンパッドに凹部を形成するとともに、凹部の内部を含めてウレタンパッドとトリムカバーとの接触面をホットメルト接着剤で接着した。


【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウレタンパッドを形成する工程で凹部形状に応じた専用型を不要にして型部品の種類を削減すると共に、ウレタンパッドの成形とトリムカバーの貼り付けとを1工程で行うことができるようになり、工程数を削減できるようにした。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係る車両用シートの斜視図である。
図2】本発明の実施例1に係る車両用シートの図1のA−A断面図である。
図3】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドの断面図である。
図4】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドとトリムカバーとを貼り合せるための下型の正面図である。
図5A】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドとトリムカバーとを貼り合せる工程を示す図で、下型にトリムカバーを載置した状態を示す下型の正面の断面図である。
図5B】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドとトリムカバーとを貼り合せる工程を示す図で、下型に載置したトリムカバーの上にシート状の接着剤を置いた状態を示す下型の正面の断面図である。
図5C】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドとトリムカバーとを貼り合せる工程を示す図で、トリムカバーの上にシート状の接着剤を載置した下型の上方にウレタンパッドを搬送してきた状態を示す下型とウレタンパッドの正面の断面図である。
図5D】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドとトリムカバーとを貼り合せる工程を示す図で、ウレタンパッドを下降させて下型の突起部分にウレタンパッドが当たり始めた状態を示す下型とウレタンパッドの正面の断面図である。
図5E】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドとトリムカバーとを貼り合せる工程を示す図で、ウレタンパッドを下降させて下型の突起部分にウレタンパッドが当たり始めた状態を示す下型とウレタンパッドの正面の断面図である。
図5F】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドとトリムカバーとを貼り合せる工程を示す図で、ウレタンパッドとウレタンパッドに接着されたトリムカバーとを上昇させて下型から外した状態を示す下型とウレタンパッドの正面の断面図である。
図6】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドとトリムカバーとを貼り合せる工程を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドとトリムカバーとの凹部形状が形成された箇所の断面図である。
図8A】本発明の実施例2に係る車両用シートのウレタンパッドとトリムカバーとを貼り合せるための下型で、押し付け部を複数の部品で構成する例を示す下型の正面図である。
図8B】本発明の実施例2に係る車両用シートのウレタンパッドとトリムカバーとを貼り合せるための下型で、押し付け部を複数の部品で構成する他の例を示す下型の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
車両用シートのシートバック及びクッションシートは、ポリウレタンで形成されたウレタンパッドの表面に、表皮とカバーパッドと裏基布とで構成されるトリムカバーを貼り付けて形成されている。この車両用シートに用いられるウレタンパッドは、熱硬化性の特性を有し、加熱することにより収縮して硬化する性質を持っている。
【0013】
本発明では、この特性を利用して、ウレタンパッドの表面にトリムカバーを貼り付ける際にウレタンパッドを高温に保った型に押し当てて加熱して型に形成された凸形状のパターンをウレタンパッドに転写してウレタンパッドに凹部を成形すると同時に、その成形した凹部にトリムカバーを挿入して固定するようにしたものである。
【0014】
これにより、ウレタンパッドを形成する工程で凹部成型用の専用型を不要にして型部品の種類を削減すると共に、ウレタンパッドの成形とトリムカバーの貼り付けとを1工程で行うことができるようになり、工程数を削減できるようにした。
【0015】
以下に、本発明の実施例を、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明で対象とする車両用シートである乗用車用シート1の基本的な構成を示す。乗用車用シート1は、クッションシート2、シートバック3、ヘッドレスト4、サイドサポート5を備えている。クッションシート2及びシートバック3には、意匠表現として周囲に対して一部凹んだ凹部(エンボス加工部)30が形成されている。
【0017】
図1に示した例では、凹部(エンボス加工部)30がクッションシート2とシートバック3との両方に形成した例を示したが、何れか一方だけに形成する場合もあり、またクッションシート2とシートバック3とで形成する凹部(エンボス加工部)30の数や大きさ、形状が異なる場合もある。
【0018】
図2は、図1に示したシートバック3のA−A断面の矢視図を示す。シートバック3の断面は、ウレタンパッド31、表面を覆うトリムカバー32で形成されている。ウレタンパッド31には意匠用の凹形状30が形成されており、この凹部30の表面もトリムカバー32で覆われている。
【0019】
従来、この凹部30は、型を用いてウレタンパッド31を加工してウレタンパッド31に凹部30を形成した後に、トリムカバー32を貼り付ける工程においてトリムカバー32の側に型を用いて型とウレタンパッド31に形成された凹部30との位置を合せ、トリムカバー32をウレタンパッド31に貼り合せると同時にトリムカバー32の一部をウレタンパッド31に形成された凹部30に嵌め込んでいた。
【0020】
これに対して、本実施例においては、ウレタンパッド31には図3に示すように、凹部30が形成されていない状態でトリムカバー32との貼り付けを行い、この貼り付けの工程において、トリムカバー32の側に設けた型を用いてウレタンパッド31に凹部30を形成すると同時にトリムカバー32を貼り付けるようにした。
【0021】
図4に、トリムカバー32の側に設けた型(下型)40の断面構造を示す。下型40は、押し付け部41と加熱部43とを有し、押し付け部41には、ウレタンパッド31に凹形状30を形成するための突起部42が形成されている。また、加熱部43には、外部の図示していない水蒸気供給源からから高温の水蒸気を導入するための導入穴44、導入した高温の水蒸気を通す通路45、通路45内の水蒸気を押し付け部41の裏面に供給する供給穴46が設けられており、外部から導入した高温の水蒸気で押し付け部41を加熱できるように構成されている。
【0022】
下型は、熱伝導率が高い金属(例えばステンレス)で形成されている。
【0023】
押し付け部41の表面(図4における上面)の形状は、押し付ける相手側である図3に示したウレタンパッド31の表面形状に合わせてある。
【0024】
本実施例では、図4に示した下型40にトリムカバー32とシート状接着剤を載せた状態で下型40の加熱部43に高温の水蒸気を供給し押し付け部41を加熱し、図3に示したウレタンパッド31を下型40に押付けることで、ウレタンパッド31に凹部30を形成すると共にウレタンパッド31の表面にトリムカバー32を貼り付けるようにしたものである。
【0025】
本実施例によるウレタンパッド31の表面へのトリムカバー32の貼り付けの手順を図5A乃至図5F及び図6のフロー図を用いて説明する。
【0026】
まず、図5Aに示すように、下型40の押し付け部41の上に、トリムカバー32を供給する(S601)。次に、図5Bに示すように、押し付け部41上に供給したトリムカバー32の上にシート状接着剤(ホットメルト接着剤)51を載せる(S602)。
【0027】
この状態で、外部の図示していない水蒸気供給源から高温の水蒸気を、導入穴44から下型40の加熱部43の通路45内に導入する(S603)。通路45に内部に導入された高温の水蒸気は、多数の供給穴46を通って押し付け部41の裏面に供給されて、押し付け部41を加熱する。これにより、押し付け部41に形成された突起部42も加熱される。押し付け部41の裏面に供給された水蒸気は、押し付け部41の裏面と加熱部43との間に形成された通路(図示せず)を通って外部に排出される。
【0028】
次に、図5Cに示すように、上型60で保持されたウレタンパッド31を、図示していない搬送手段で下型40の上部に配置し(S604)、図示していない手段で上型60を矢印の方向に移動(下降)させる(S605)。
【0029】
上型60が下降を続けると、図5Dに示すように、まず下型40の突起部42が、その上部のトリムカバー32とシート接着剤51を介して接触する。この時突起部42は加熱部43から送り出される高温の水蒸気で加熱されており、ウレタンパッド31のうち、トリムカバー32とシート接着剤51を介して突起部42と接した部分は加熱されて収縮する(S606)。
【0030】
上型60はさらに下降を続け、上型60に保持されたウレタンパッド31は下型40の押し付け部41と全面的に接触するまで下降して図5Eに示す状態になる(S607)。この状態では、高温の水蒸気で加熱された押し付け部41により加熱されてウレタンパッド31及びトリムカバー32は収縮する。同時に、加熱されたシート接着剤51によりウレタンパッド31にトリムカバー32が接着されるとともに、ウレタンパッド31には、下型40の突起部42に対応する形状が転写され、突起部42の形状に相当する凹部30が形成される(エンボス加工)(S608)。この時、トリムカバー32は、下型40の突起部42に引っ張られて凹部30の内部に入りシート接着剤51でウレタンパッド31に接着されるので、ウレタンパッド31に形成された凹部30の表面は、トリムカバー32で覆われることになる。
【0031】
上型60でウレタンパッド31を下型40に所定の時間押付けて、凹部30の内面を含めたウレタンパッド31のトリムカバー32で覆われる面全面を確実に接着した後、図示していない外部の水蒸気供給源から加熱部43への高温の水蒸気の供給を停止し(S609)、図5Fに示すように、表面にトリムカバー32が接着されたウレタンパッド31を保持した状態で、上型60を矢印の向きに上昇させてウレタンパッド31を下型40から離し(S610)、図示していない搬送手段でウレタンパッド31を所定の場所へ搬送して(S611)、一連の動作が終了する。
【0032】
このようなプロセスを経ることにより、図2に示したような断面形状を有するバックシート3が形成される。
【0033】
図7に、凹部30が形成された部分のウレタンパッド31とトリムカバー32の断面図を示す。ウレタンパッド31は、トリムカバー接着時に高温の水蒸気が供給された下型40から熱を受けて、下型40に近い部分、すなわちトリムカバー32が接着された面及びその近傍の部分には加熱され加圧されて収縮した層312が形成されている。更に、凹部30の底の部分は周囲と比べてより大きく収縮した層313が形成されている。これに対して下型40からある程度離れた部分は、熱による影響を受けずに元の状態を保った層311が形成されている。
【0034】
なお、上記した実施例においては、下型40に対して上型60が下降する構成で説明したが、逆に上型60に対して下型40を上昇させて凹部の形成と接着とを行うようにしてもよい。
【0035】
また、上記した実施例においては、接着剤としてシート状接着剤(ホットメルト接着剤)51を用いた例について説明したが、本実施例はこれに限られるものではなく、スプレー状の接着剤、または液状の接着剤を用いるようにしてもよい。またこの場合、スプレー状の接着剤、または液状の接着剤をウレタンパッド31の側に塗布するようにしてもよい。
【0036】
本実施例によれば、ウレタンパッドに凹部形状を形成してその表面にトリムカバーを貼り付ける場合に、ウレタンパッド単体での成型工程を不要にしてウレタンパッドの成形とトリムカバーの貼り付けとを1工程で行うことができるようになり、工程数を削減できるようになった。
【0037】
また、ウレタンパッドに予め凹部形状を成形することを不要としたので、ウレタンパッド形成時に凹部形状に応じた専用の型を用意する必要がなくなり、ウレタンパッド形成用の型の種類を減らすことができるようになった。
【実施例2】
【0038】
実施例1においては、下型40の押し付け部41を1部品で形成したが、本実施例においては、押し付け部41−1または41−2を複数の部品で構成する。
【0039】
すなわち、図7A及び図7Bに示すように、押し付け部41−1又は41−2を加熱部43に対して着脱可能な構造とし、押し付け部41−1又は41−2を例えば3つの部材411,412,413又は、411,412,414で構成する。このように、押し付け部41−1又は41−2を複数の部材で構成し、図7Aに示した下型40−1と図7Bに示した下型40−2の場合のように、部品411と412とを共通化して部品413と414とを取り換えることで、下型40−1または下型40−2を構成し、ウレタンパッド31に形成する凹部(エンボス形状)30の形状に対応することができるようにした。
【0040】
本実施例による下型を用いたウレタンパッド31とトリムカバー32との貼り付け及び凹部30の形成方法は実施例1で説明した方法と同じであるので、説明を省略する。
【0041】
押し付け部41−1又は41−2をこのように構成することにより、ウレタンパッド31に形成する凹部(エンボス形状)の形状に対応する押し付け部の部品を小型化することができ、型部品の省資源化と低コスト化、及び部品保管場所の省スペース化を実現することができる。
【符号の説明】
【0042】
1・・・車両用シート 2・・・クッションシート 3・・・シートバック 30・・・凹部 31・・・ウレタンパッド 32・・・トリムカバー 40・・・下型 41・・・押し付け部 43・・・加熱部 60・・・上型。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7
図8A
図8B