特許第6741407号(P6741407)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6741407
(24)【登録日】2020年7月29日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20200806BHJP
【FI】
   G01N21/956 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-160600(P2015-160600)
(22)【出願日】2015年8月17日
(65)【公開番号】特開2017-40480(P2017-40480A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】宮廻 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】金沢 浩生
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−520370(JP,A)
【文献】 特開2013−234969(JP,A)
【文献】 特開2007−049021(JP,A)
【文献】 特開2001−028383(JP,A)
【文献】 特開平03−285339(JP,A)
【文献】 特開平04−112551(JP,A)
【文献】 特開2000−019717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 − G01N 21/958
H01L 21/66
G01B 11/00 − G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠陥検査装置であって、
レーザ光を出射して、基板の主面に前記レーザ光のスポットを形成する出射部と、
前記スポットからの散乱光を受光して、前記散乱光の強度を取得する受光部と、
前記主面上において前記スポットを移動するスポット移動機構と、
少なくとも前記スポット近傍における酸素濃度または酸素量を周囲の空気よりも低減する雰囲気調整部と、
を備え、
前記受光部が、
前記基板の前記主面に垂直、かつ、前記スポットに重なる中心軸を中心とする回転楕円体状のミラーを有し、前記スポットからの前記散乱光が反射する集光器と、
前記集光器からの光が集光する検出器と、
を備え、
前記雰囲気調整部が、前記集光器の下端と前記基板の前記主面との間に配置され、前記スポット近傍に向けて窒素ガスを噴出するノズルを備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥検査装置であって、
前記雰囲気調整部が、
少なくとも前記基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内を減圧する減圧機構と、
を備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の欠陥検査装置であって、
前記受光部にて取得される前記散乱光の強度に基づいて、前記主面の欠陥を検出する欠陥検出部をさらに備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板等の基板の主面における欠陥を検査する欠陥検査装置が利用されている。例えば、特許文献1の装置では、ウエハ上に形成される照明エリアをスキャンしつつ、照明エリアから散乱される光をセンサへと導き、当該センサにおける出力を用いてウエハ上の欠陥が検出される。
【0003】
なお、特許文献2において電子顕微鏡に搭載される光学顕微鏡では、暗視野照明ユニットより出射されたレーザが、試料が配置された真空槽内へ導かれる。また、試料からの散乱光が対物レンズ、結像光学系等を介して固体撮像素子に導かれて試料の像が結像される。これにより、固体撮像素子では、試料を示す画像が取得される。また、特許文献3の表面検査装置では、エキシマレーザからレーザビームをウエハへと出射し、ウエハからの光をCCDによって光強度に応じた電気信号に変換することにより、ウエハ表面を示す画像が取得される。特許文献3の装置では、光学部材表面に硫酸アンモニウムが付着するのを防止するため、密閉容器にウエハおよび光学部材を収容し、内部に不活性ガスが供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2014−524033号公報
【特許文献2】特開2011−106974号公報
【特許文献3】特開2001−235430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基板の検査において、より微小な粒径のパーティクルを検出する、すなわち、パーティクルの検出精度を向上するために、主面上に照射されるレーザ光の強度を高くすることが考えられる。高強度のレーザ光の照射により、微小な粒径のパーティクルからの散乱光の量が増加し、このようなパーティクルが検出可能となる。しかしながら、レーザ光の強度を高くすると、基板の主面上においてパーティクルが成長する現象が、本願発明者により確認された。基板上には高精細なパターンが形成されるため、パーティクルの成長は、好ましくない。したがって、レーザ光の強度を高くしてパーティクルの検出精度を向上するには、レーザ光の照射による主面上のパーティクルの成長を抑制する手法が必要となる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、レーザ光の照射により主面上のパーティクルが成長することを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、欠陥検査装置であって、レーザ光を出射して、基板の主面に前記レーザ光のスポットを形成する出射部と、前記スポットからの散乱光を受光して、前記散乱光の強度を取得する受光部と、前記主面上において前記スポットを移動するスポット移動機構と、少なくとも前記スポット近傍における酸素濃度または酸素量を周囲の空気よりも低減する雰囲気調整部とを備え、前記受光部が、前記基板の前記主面に垂直、かつ、前記スポットに重なる中心軸を中心とする回転楕円体状のミラーを有し、前記スポットからの前記散乱光が反射する集光器と、前記集光器からの光が集光する検出器とを備え、前記雰囲気調整部が、前記集光器の下端と前記基板の前記主面との間に配置され、前記スポット近傍に向けて窒素ガスを噴出するノズルを備える。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の欠陥検査装置であって、前記雰囲気調整部が、少なくとも前記基板を収容するチャンバと、前記チャンバ内を減圧する減圧機構とを備える。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項1または2に記載の欠陥検査装置であって、前記受光部にて取得される前記散乱光の強度に基づいて、前記主面の欠陥を検出する欠陥検出部をさらに備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レーザ光の照射により主面上のパーティクルが成長することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】欠陥検査装置の構成を示す図である。
図2】検査ユニットの構成を示す図である。
図3】基板の検査の流れを示す図である。
図4】不活性ガスの噴出を省略した場合における検査の繰り返しによるパーティクル数の変化を示す図である。
図5】検査ユニットの他の例を示す図である。
図6】検査ユニットのさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る欠陥検査装置1の構成を示す図である。欠陥検査装置1は、半導体基板等の基板9の主面上の欠陥を検出する。当該欠陥は、主としてパーティクルであり、欠陥検査装置1は、パーティクル測定器(または、パーティクルカウンタ)とも呼ばれる。欠陥検査装置1にて検出される欠陥には、主面上のピット等、パーティクル以外の欠陥が含まれてよい。本実施の形態における基板9は、例えばシリコンにて形成される。
【0016】
欠陥検査装置1は、キャリア保持部11と、基板搬送部12と、検査ユニット2と、制御部10とを備える。キャリア保持部11は、キャリア90を保持する。キャリア90は、複数の基板9を積層して収容可能な収容器であり、フープとも呼ばれる。基板9は、例えば円板状である。基板搬送部12は、キャリア保持部11と検査ユニット2との間に配置される。キャリア保持部11に載置されたキャリア90内の未検査の基板9は、基板搬送部12により、検査ユニット2内に搬入される。また、後述の検査後の基板9は、基板搬送部12により、検査ユニット2から搬出され、キャリア90内に戻される。
【0017】
図2は、検査ユニット2の構成を示す図である。検査ユニット2は、出射部3と、受光部4と、スポット移動機構5と、雰囲気調整部6とを備える。スポット移動機構5は、ステージ51と、回転機構52と、移動機構53とを備える。ステージ51は、例えば、吸引吸着により基板9を水平状態にて保持する。回転機構52は、基板9の主面91に垂直な回転軸J1を中心としてステージ51を回転する。移動機構53は、回転機構52、ステージ51および基板9を、基板9の主面91に沿う一の方向に移動する。
【0018】
出射部3は、2つの光源部31a,31bと、複数のミラー321,322,323とを備える。各光源部31a,31bは、高強度のレーザ光(例えば紫外線のレーザ光)を出射する。光源部31aからのレーザ光は、ミラー321,322を介して基板9の一の主面91上に照射される。なお、ミラー322は、後述の集光器431の内部に配置されており、当該集光器431には、ミラー321からミラー322へと向かうレーザ光が通過する開口が形成される。ミラー322から基板9の主面91へと向かうレーザ光の経路は、主面91に垂直である。このように、光源部31aからのレーザ光は基板9に垂直な方向から主面91に照射され、主面91に当該レーザ光のスポットが形成される。
【0019】
光源部31bからのレーザ光は、ミラー323を介して基板9の主面91上に照射される。ミラー323から基板9の主面91へと向かうレーザ光の経路は、主面91に対して鋭角に傾斜する。このように、光源部31bからのレーザ光は基板9に対して傾斜した方向から主面91に照射され、主面91に当該レーザ光のスポットが形成される。主面91上において、光源部31aからのレーザ光のスポット、および、光源部31bからのレーザ光のスポットはおよそ同じ位置に形成される。検査ユニット2では、例えば2つの光源部31a,31bのうちの一方が選択的に利用される。以下の説明では、2つの光源部31a,31bのうち、選択された一方により主面91上に形成されるレーザ光のスポットを単に「レーザ光のスポット」と呼ぶ。また、レーザ光は集光した状態で主面91上に照射される。
【0020】
受光部4は、2つの検出器41a,41bと、レンズ421と、複数のミラー422,423と、集光器431と、アパーチャ板432とを備える。レンズ421は、主面91に垂直な方向において主面91上のレーザ光のスポットと重なる位置、すなわち、レーザ光のスポットの真上に配置される。レーザ光のスポットは、レンズ421の光軸J2上に位置する。
【0021】
後述するように、レーザ光のスポットは主面91上を連続的に移動する。レーザ光のスポットが主面91上の欠陥の位置を通過する際に、レーザ光のスポットの全体から、光軸J2に対して比較的小さい角度にて散乱した散乱光がレンズ421に入射する。レンズ421を通過した光は、ミラー422,423を介して検出器41aへと導かれ、検出器41aの受光面において集光する。検出器41aでは、当該散乱光の強度(全強度)が取得され、当該強度を示す信号が制御部10の欠陥検出部100に出力される。
【0022】
集光器431は、回転楕円体状のミラーを有し、レンズ421の周囲を囲む。集光器431の中心軸は、レンズ421の光軸J2におよそ一致する。レーザ光のスポットの全体から、光軸J2に対して比較的大きい角度にて散乱した散乱光が集光器431にて反射する。集光器431からの光は、アパーチャ板432を通過し、検出器41bの受光面において集光する。検出器41bでは、受光した光の強度が取得され、当該強度を示す信号が欠陥検出部100に出力される。本実施の形態では、検出器41aとミラー423との間、および、検出器41bとアパーチャ板432との間に、偏光子411a,411bが設けられる。
【0023】
検査ユニット2では、回転機構52が基板9を回転軸J1を中心として回転しつつ、移動機構53が、回転軸J1とレンズ421の光軸J2とを含む面上にて主面91に沿う方向に回転機構52を移動する。実際には、およそ回転軸J1上に主面91上のレーザ光のスポットが配置された状態から、基板9が回転しつつ移動機構53が回転機構52を緩やかに、かつ、連続的に移動する。これにより、レーザ光のスポットが主面91上における螺旋状の経路を連続的に移動(走査)する。当該経路の各位置では、検出器41a,41bにて取得される散乱光の強度に基づいて、主面91の欠陥の有無が欠陥検出部100により検出される。
【0024】
雰囲気調整部6は、チャンバ61と、ノズル62と、ガス供給部63とを備える。ノズル62の先端は、集光器431の下端と、基板9の主面91との間に配置される。ノズル62には、弁631を介してガス供給部63が接続される。ガス供給部63が、ノズル62に不活性ガスを供給することにより、ノズル62からレーザ光のスポット近傍に向けて不活性ガスが噴出される。これにより、レーザ光のスポット近傍が不活性ガスによりパージされる。不活性ガスとして、例えば窒素ガスが例示される。
【0025】
チャンバ61は、出射部3、受光部4、スポット移動機構5、および、ノズル62を収容する。チャンバ61には、基板9が通過可能な開口部611、および、開口部611の開閉を行う開閉機構612(図1参照)が設けられる。基板搬送部12による基板9のチャンバ61内への搬入時、および、基板9のチャンバ61外への搬出時には、開閉機構612により開口部611が開放される。後述する基板9の検査の際には、開閉機構612により開口部611が閉塞され、チャンバ61が密閉される。
【0026】
図3は、欠陥検査装置1における基板9の検査の流れを示す図である。基板9の検査では、まず、キャリア90内に保持された検査対象の基板9が、基板搬送部12により検査ユニット2のチャンバ61内に搬入され、図2のステージ51上に載置される(ステップS11)。このとき、基板9に設けられたノッチ等の位置決め部が、ステージ51上に設けられたピン等に当接することにより、ステージ51上の基板9の向きが調整される。続いて、ガス供給部63からノズル62への不活性ガスの供給が開始され、ノズル62から不活性ガスが連続的に噴出される(ステップS12)。これにより、レンズ421の光軸J2と重なる主面91上の位置近傍、すなわち、レーザ光の出射時における主面91上のスポット近傍において、単位体積当たりの酸素量または酸素濃度(酸素の割合)が、欠陥検査装置1の周囲の空気よりも低くなる。
【0027】
不活性ガスの噴出が開始されると、出射部3において選択された一方の光源部31a,31bからのレーザ光の出射、および、スポット移動機構5による主面91上のレーザ光のスポットの移動が開始される(ステップS13)。受光部4の検出器41a,41bでは、主面91上のスポットの位置にパーティクルやピット等の欠陥が存在する場合に、スポットからの散乱光が受光され、当該散乱光の強度が取得される。当該強度を示す信号は欠陥検出部100に出力される。
【0028】
欠陥検出部100では、所定値以上の散乱光の強度が受光部4にて取得された際に、欠陥の存在が検出される(ステップS14)。詳細には、回転機構52による基板9の回転角度、および、移動機構53による回転機構52の移動位置を示す信号が、欠陥検出部100に常時入力されており、当該散乱光が発生した基板9上の位置、および、当該散乱光の強度から推定される欠陥の大きさが記憶される。欠陥検出部100では、例えば、散乱光の強度と、欠陥の大きさとの関係を示すテーブルが予め準備されている。実際には、所定値以上の散乱光の強度が受光部4にて取得される毎に、欠陥の位置および大きさが記憶される(すなわち、欠陥が検出される。)。
【0029】
レーザ光のスポットが、主面91上の検査すべき領域の全ての位置を通過すると、レーザ光のスポットの移動が停止されるとともに、出射部3からのレーザ光の出射も停止される(ステップS15)。また、ノズル62からの不活性ガスの噴出も停止される(ステップS16)。そして、ステージ51上の基板9が、基板搬送部12によりチャンバ61外に搬出され、キャリア90内に戻される(ステップS17)。
【0030】
次に、欠陥検査装置1により基板9の検査を行う際に、仮に、ノズル62からの不活性ガスの噴出を省略した場合の基板9への影響について述べる。ここでは、ノズル62およびガス供給部63を省略した比較例の欠陥検査装置により、同じ基板9を繰り返し検査した際に検出されるパーティクル数の変化を調べた。図4は、不活性ガスの噴出を省略した場合における検査の繰り返しによるパーティクル数の変化を示す図である。本実験では、出射部3から出射されるレーザ光の強度を3通りに変更した。図4では、最も高い強度のレーザ光を用いた場合のパーティクル数の変化を線L1,L2にて示し、2番目に高い強度のレーザ光を用いた場合のパーティクル数の変化を線L3にて示し、最も低い強度のレーザ光を用いた場合のパーティクル数の変化を線L4にて示している。
【0031】
線L1〜L4のいずれにおいても、検査の繰り返し回数の増大に従ってパーティクル数が増加する。また、線L1,L2の傾きはほぼ同じであり、線L3,L4の傾きよりも格段に大きい。さらに、線L3の傾きは、線L4の傾きよりも僅かに大きい。このように、出射部3から出射されるレーザ光の強度が高いほど、検査の繰り返し回数に対するパーティクル数の増加率(変化率)が高くなる。
【0032】
図4から、検出限界よりも小さいパーティクル(例えば、シリコンやメタルにて形成されるパーティクル)が、検査の繰り返しにより、検出可能なサイズまで大きくなっている(成長している)と考えられる。このようなパーティクルは、エネルギー分散型X線分析(EDX)により酸素を多く含むことが確認されている。したがって、比較例の欠陥検査装置では、レーザ光のスポットの周囲に存在する酸素の影響により、主面91上のパーティクルが成長すると考えられる。実際には、同じ強度のレーザ光を用いる場合でも、基板毎にパーティクル数の増加率は相違する。なお、比較例の欠陥検査装置を、クリーンドライエアを供給する空間内に配置して基板9の検査を行う場合でも、主面91上のパーティクルは成長する。
【0033】
これに対し、欠陥検査装置1では、雰囲気調整部6により、レーザ光のスポット近傍における局所的な酸素濃度または酸素量が周囲の空気よりも低減される。これにより、レーザ光の照射により主面91上のパーティクルが成長することを抑制することができる。その結果、欠陥検査装置1では、高強度のレーザ光を用いてパーティクル等の欠陥の検出精度を向上することが、パーティクルの成長を抑制した状態で実現することができる。また、主面91上のレーザ光のスポット近傍にノズル62を配置することにより、レーザ光のスポット近傍における酸素濃度または酸素量を、少ない流量の不活性ガスにより効率よく低減することができる。
【0034】
図2の検査ユニット2では、密閉された内部空間を形成するチャンバ61内に基板9を配置することにより、清浄な空間にて基板9の検査を行うことができる。また、チャンバ61内に不活性ガスを供給することにより、チャンバ61内の圧力が大気圧よりも高くなり、周囲の不要物がチャンバ61内に入り込むことを抑制することができる。図2の検査ユニット2では、チャンバ61は厳密に密閉される必要はない。また、ノズル62を有する検査ユニット2の設計によっては、チャンバ61が省略されてもよい。
【0035】
図5は、検査ユニット2の他の例を示す図である。図5の検査ユニット2では、図2の検査ユニット2においてレーザ光のスポット近傍に設けられるノズル62に代えて、ノズル62aがチャンバ61に設けられる。ノズル62aは、例えばチャンバ61の側壁に取り付けられる。他の構成は、図2の検査ユニット2と同じであり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0036】
図5の検査ユニット2を有する欠陥検査装置1では、図3のステップS12において、ノズル62aからの不活性ガスの噴出が開始される。すなわち、ガス供給部63により、ノズル62aを介してチャンバ61内に不活性ガスが供給される。このとき、不活性ガスの流量は、図2の検査ユニット2における流量よりも多い。そして、不活性ガスの供給開始から所定時間経過すると、出射部3からのレーザ光の出射、および、基板9上のレーザ光のスポットの移動が開始され(ステップS13)、主面91上に欠陥が存在する場合に、当該欠陥が検出される(ステップS14)。レーザ光のスポットが主面91の全体を通過すると、レーザ光のスポットの移動、出射部3からのレーザ光の出射、および、不活性ガスの噴出(供給)が停止される(ステップS15,S16)。
【0037】
以上のように、図5の検査ユニット2では、雰囲気調整部6のガス供給部63によりチャンバ61内に不活性ガスが供給される。これにより、チャンバ61内における酸素濃度、すなわち、基板9の周囲における酸素濃度を、チャンバ61外の空気よりも低減することが容易に実現される。その結果、レーザ光の照射により主面91上のパーティクルが成長することを抑制することができる。図5の検査ユニット2では、不活性ガスの供給開始から所定時間経過して、チャンバ61内における酸素濃度がある程度低下した後に、不活性ガスの流量が低減、または、不活性ガスの供給が停止されてもよい。また、チャンバ61内の酸素濃度を測定する酸素濃度計が取り付けられ、チャンバ61内の酸素濃度が、周囲の酸素濃度よりも低い所定の範囲内となるように、不活性ガスの供給のON/OFFが制御されてもよい(後述の図6の検査ユニット2において同様)。
【0038】
図6は、検査ユニット2のさらに他の例を示す図である。図6の検査ユニット2では、図5の検査ユニット2において、減圧機構64が追加される。減圧機構64は、弁641を介してチャンバ61のガス排出口613に接続される。減圧機構64は、雰囲気調整部6に含まれる。
【0039】
図6の検査ユニット2を有する欠陥検査装置1では、チャンバ61内に基板9が搬入されて開閉機構612(図1参照)により開口部611が閉塞された後(図3:ステップS11)、減圧機構64によるチャンバ61内の減圧が開始される(ステップS12)。減圧機構64による減圧開始から所定時間経過すると、出射部3からのレーザ光の出射、および、基板9上のレーザ光のスポットの移動が開始され(ステップS13)、主面91上に欠陥が存在する場合に、当該欠陥が検出される(ステップS14)。レーザ光のスポットが主面91の全体を通過すると、レーザ光のスポットの移動、出射部3からのレーザ光の出射、および、減圧機構64による減圧が停止される(ステップS15,S16)。そして、ガス供給部63によりチャンバ61内に不活性ガスが供給されてチャンバ61内の圧力がおよそ大気圧に戻された後、基板9がチャンバ61から搬出される(ステップS17)。本処理例では、ガス供給部63からエア等の他のガスがチャンバ61内に供給されてよい。
【0040】
以上のように、図6の検査ユニット2では、雰囲気調整部6の減圧機構64によりチャンバ61内が減圧される。これにより、チャンバ61内における酸素量、すなわち、基板9の周囲における酸素量を、周囲の空気よりも低減することが容易に実現される。その結果、レーザ光の照射により主面91上のパーティクルが成長することを抑制することができる。図6の検査ユニット2では、減圧機構64による減圧開始から所定時間経過して、チャンバ61内の圧力がある程度低下した後に、減圧機構64の減圧動作が停止されてもよい。また、チャンバ61内の圧力を測定する圧力計が取り付けられ、チャンバ61内の圧力が、大気圧よりも低い所定の範囲内となるように、減圧機構64のON/OFFが制御されてもよい。
【0041】
図6の検査ユニット2では、減圧機構64によるチャンバ61内の減圧に並行して、ガス供給部63によりチャンバ61内に不活性ガスが供給されてもよい。この場合、基板9の周囲における酸素濃度および酸素量を低減することができる。その結果、レーザ光の照射により主面91上のパーティクルが成長することをさらに抑制することが実現される。基板9の検査に並行して、ガス供給部63および減圧機構64の双方を駆動する検査ユニット2では、ガス供給部63に接続されるノズル62a、および、減圧機構64に接続されるガス排出口613は、チャンバ61において、ステージ51を挟んで互いに対向する2つの壁部にそれぞれ設けられることが好ましい。レーザ光のスポット近傍に設けられるノズル62を有する図2の検査ユニット2に、減圧機構64が設けられ、基板9の検査の際に、チャンバ61内の減圧、および、レーザ光のスポット近傍への不活性ガスの供給が行われてもよい。
【0042】
上記欠陥検査装置1では様々な変形が可能である。
【0043】
上述のように、図2の検査ユニット2では、レーザ光のスポット近傍における酸素濃度または酸素量が低減され、図5および図6の検査ユニット2では、チャンバ61の内部空間全体における酸素濃度または酸素量が低減される。したがって、欠陥検査装置1では、雰囲気調整部6により、少なくともレーザ光のスポット近傍における酸素濃度または酸素量が周囲の空気よりも低減されることが重要であるといえる。
【0044】
チャンバ61では、基板9、スポット移動機構5、並びに、出射部3および受光部4の一部のみが収容され、光源部31a,31bや、検出器41a,41bがチャンバ61の外部に配置されてもよい。この場合、光源部31a,31bから基板9へと向かうレーザ光が透過する透光部、および、基板9から検出器41a,41bへと向かう光が透過する透光部が、チャンバ61の壁部に設けられる。また、出射部3および受光部4の全部が、チャンバ61の外部に配置されてもよい。さらに、後述するように、出射部3および受光部4が移動する場合には、基板9のみがチャンバ61内に収容されてもよい。このように、チャンバ61が、少なくとも基板9を収容することにより、ガス供給部63または減圧機構64を用いて、基板9の周囲における酸素濃度または酸素量を容易に低減することが可能となる。
【0045】
欠陥検査装置1では、2つの光源部31a,31bの双方からレーザ光を出射しつつ基板9の検査が行われてもよい。
【0046】
主面91上においてレーザ光のスポットを移動するスポット移動機構は、回転機構52および移動機構53の組合せ以外により実現されてよい。例えば、ステージ51を、主面91に平行かつ互いに直交する2方向に移動する機構がスポット移動機構として用いられてもよい。また、出射部3および受光部4を、一体的に主面91に沿う方向に移動するスポット移動機構が設けられてもよい。この場合、位置が固定された基板9の主面91上においてレーザ光のスポットが移動する。
【0047】
欠陥検査装置1にて検査される基板は半導体基板には限定されず、ガラス基板や他の基板であってもよい。
【0048】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0049】
1 欠陥検査装置
3 出射部
4 受光部
5 スポット移動機構
6 雰囲気調整部
9 基板
61 チャンバ
62,62a ノズル
63 ガス供給部
64 減圧機構
91 主面
100 欠陥検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6