特許第6741514号(P6741514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6741514
(24)【登録日】2020年7月29日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】プレス成形の最適化方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/00 20060101AFI20200806BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20200806BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20200806BHJP
【FI】
   B21D22/00
   G06F17/50 612H
   G06F17/50 680C
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-157569(P2016-157569)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2018-24002(P2018-24002A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 健次
(72)【発明者】
【氏名】柏木 聖紘
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 達也
(72)【発明者】
【氏名】濱▲崎▼ 浩佑
【審査官】 藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−136880(JP,A)
【文献】 特開2014−046336(JP,A)
【文献】 特開2009−045627(JP,A)
【文献】 特開2006−281281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/00
G06F 30/10
G06F 30/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工により孔を有する素材を折り曲げて穴を有するフランジ部を形成するプレス成形の最適化方法において、
仮素材形状を設定する仮素材形状設定ステップと、
プレス加工の解析モデルを作成する解析モデル作成ステップと、
前記解析モデルを用いて前記仮素材形状に対する押込量と押込回数からなるプレス条件を決定するプレス条件決定ステップと、
前記解析モデルとプレス条件を用いてスプリングバックを考慮したプレス加工解析により素材形状を決定する素材形状決定ステップと、
を有し、
前記プレス条件決定ステップは、前記フランジ部の高さに基づいて設定された最大押込量より小さい所定の第1押込量により前記解析モデルを用いたシミュレーションを行い、予め設定された第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生したと判定されると、前記第1押込量を減少して前記解析モデルを用いたシミュレーションを再度行い、前記第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、
前記第1割れクライテリアの割れ判定により割れが発生しないと判定されると、前記最大押込量から前記第1押込量を減算した第2押込量により前記解析モデルを用いたシミュレーションを行い、前記第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生したと判定されると、前記第2押込量を減少して前記解析モデルを用いたシミュレーションを再度行い、割れが発生しないと判定されるまで、次の押込量を設定していくことで、1回の押込量と押込回数を決定する、
ことを特徴とするプレス成形の最適化方法。
【請求項2】
前記第2押込量を設定した後、プレス加工によって生じた加工品の残留ひずみを除去するシミュレーションを実施することを特徴とする請求項1に記載のプレス成形の最適化方法。
【請求項3】
前記第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生しないと判定されると、複数設定した前記押込量の合計値が前記最大押込量に到達したかどうかを判定し、前記押込量の合計値が前記最大押込量に到達していないと判定されると、次の押込量を設定する一方、前記押込量の合計値が前記最大押込量に到達したと判定されると、ここまでに設定した複数の押込量と押込回数を最適なプレス条件として決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレス成形の最適化方法。
【請求項4】
設定されたプレス条件に基づいて前記解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工のシミュレーションを行い、予め設定された第2割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生したと判定されると、前記第2割れクライテリアによる割れ判定で割れが発生しない素材形状を予測により変更して前記解析モデルを用いたシミュレーションを行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプレス成形の最適化方法。
【請求項5】
前記第2割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生しないと判定されると、前記解析モデルを用いたシミュレーション後の素材形状の精度が予め設定された目標値以内にあるかどうかを判定し、前記シミュレーション後の素材形状の精度が予め設定された目標値以内にないと判定されると、前記素材形状の精度が前記目標値以内となる素材形状に変更して前記解析モデルを用いたシミュレーションを行うことを特徴とする請求項4に記載のプレス成形の最適化方法。
【請求項6】
前記シミュレーション後の素材形状の精度が前記目標値以内にあると判定されると、前記シミュレーション後の素材形状を最適な素材形状として決定することを特徴とする請求項5に記載のプレス成形の最適化方法。
【請求項7】
仮成形型形状を設定する仮成形型形状設定ステップと、前記解析モデルを用いてスプリングバックを考慮した成形型形状を決定する成形型形状決定ステップとを設けることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプレス成形の最適化方法。
【請求項8】
プレス加工により孔を有する素材を折り曲げて穴を有するフランジ部を形成するプレス成形の最適化装置において、
初期押込み量と仮素材形状を入力する入力部と、
前記入力部から入力された前記初期押込み量と前記仮素材形状に基づいて解析モデルを用いたシミュレーションを行うことで押込量と押込回数からなるプレス条件とスプリングバックを考慮した素材形状を求める演算部と、
前記演算部が求めた前記プレス条件でシミュレーションされた素材形状に対して第1割れクライテリアにより割れ判定を行うと共に前記演算部が求めたスプリングバックを考慮した素材形状に対して第2割れクライテリアにより割れ判定を行い、前記第1割れクライテリアにより割れが発生したと判定されると前記プレス条件を変更して再度シミュレーションを行うと共に、前記第2割れクライテリアにより割れが発生したと判定されると前記素材形状を変更して再度シミュレーションを行う一方、前記第1割れクライテリア及び前記第2割れクライテリアにより割れが発生しないと判定されると前記プレス条件と前記素材形状を決定する判定部と、
を備え、
前記演算部は、前記フランジ部の高さに基づいて設定された最大押込量より小さい所定の第1押込量により前記解析モデルを用いたシミュレーションを行い、前記判定部は、予め設定された第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生したと判定されると、前記第1押込量を減少して前記解析モデルを用いたシミュレーションを再度行い、前記第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、
前記第1割れクライテリアの割れ判定により割れが発生しないと判定されると、前記最大押込量から前記第1押込量を減算した第2押込量により前記解析モデルを用いたシミュレーションを行い、前記第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生したと判定されると、前記第2押込量を減少して前記解析モデルを用いたシミュレーションを再度行い、割れが発生しないと判定されるまで、次の押込量を設定していくことで、1回の押込量と押込回数を決定する、
ことを特徴とするプレス成形の最適化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材をプレス成形して成形品を製造するとき、最適なプレス条件や素材形状を決定するプレス成形の最適化方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、板材をプレス加工して所定形状の製品を製作するとき、事前に、有限要素法などを用いてシミュレーションを実施し、プレス加工時に割れなどが発生しない素材形状、押込回数、金型形状などを推定することが一般に行われている。例えば、下記特許文献1に記載された見込み金型形状作成方法及び装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−020000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の見込み金型形状作成方法及び装置では、金型形状作成工程を実施した後、スプリングバック後形状を取得し、プレス成形品と当接する金型部分についての金型見込み量を取得し、金型見込み量に基づいて金型形状を修正するものである。ところが、プレス加工時に素材に割れなどを発生させない要因としては、金型だけではなく、素材の形状に応じた場合が多く、素材形状の最適化が求められている。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するものであり、プレス加工により製作された製品の高精度化及び素材の最適形状化における解析時間の短縮化を図るプレス成形の最適化方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明のプレス成形の最適化方法は、仮素材形状を設定する仮素材形状設定ステップと、プレス加工の解析モデルを作成する解析モデル作成ステップと、前記解析モデルを用いて前記仮素材形状に対する押込量と押込回数からなるプレス条件を決定するプレス条件決定ステップと、前記解析モデルとプレス条件を用いてスプリングバックを考慮したプレス加工解析により素材形状を決定する素材形状決定ステップと、を有することを特徴とするものである。
【0007】
従って、解析モデルを用いて仮素材形状に対する押込量と押込回数からなるプレス条件を決定すると共に、解析モデルを用いてスプリングバックを考慮した素材形状を決定することで、プレス加工により製作された製品の精度を向上することができると共に、素材の最適形状化における解析時間を短縮することができる。
【0008】
本発明のプレス成形の最適化方法では、最大押込量より小さい所定の第1押込量により前記解析モデルを用いたシミュレーションを行い、予め設定された第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生したと判定されると、前記第1押込量を減少して前記解析モデルを用いたシミュレーションを再度行い、前記第1割れクライテリアにより割れ判定を行うことを特徴としている。
【0009】
従って、第1押込量により解析モデルを用いたシミュレーション結果に基づいて第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生したと判定されると、第1押込量を減少して再度シミュレーションして割れ判定を行うことで、1回の押込量を適正量に設定することができる。
【0010】
本発明のプレス成形の最適化方法では、前記第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生しないと判定されると、前記最大押込量から前記第1押込量を減算した第2押込量により前記解析モデルを用いたシミュレーションを行い、前記第1割れクライテリアにより割れ判定を行うことを特徴としている。
【0011】
従って、第1押込量でのシミュレーション結果で割れが発生しないと、第2押込量を設定してシミュレーションを行うことで、複数回の押込量を適正量に設定することができる。
【0012】
本発明のプレス成形の最適化方法では、前記第2押込量を設定した後、前記解析モデルを用いた前記素材の残留ひずみを除去するシミュレーションを実施することを特徴としている。
【0013】
従って、素材の残留ひずみを考慮したシミュレーションを実施することで、高精度な割れ判定を行うことができる。
【0014】
本発明のプレス成形の最適化方法では、前記第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生しないと判定されると、複数設定した前記押込量の合計値が前記最大押込量に到達したかどうかを判定し、前記押込量の合計値が前記最大押込量に到達していないと判定されると、次の押込量を設定する一方、前記押込量の合計値が前記最大押込量に到達したと判定されると、ここまでに設定した複数の押込量と押込回数を最適なプレス条件として決定することを特徴としている。
【0015】
従って、複数の押込量の合計値が最大押込量に到達したとき、ここまでに設定した複数の押込量と押込回数を最適なプレス条件として決定することで、最適なプレス条件を容易に設定することができる。
【0016】
本発明のプレス成形の最適化方法では、設定されたプレス条件に基づいて前記解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工のシミュレーションを行い、予め設定された第2割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生したと判定されると、割れない素材形状に変更して前記解析モデルを用いたシミュレーションを行うことを特徴としている。
【0017】
従って、スプリングバックを考慮したプレス加工のシミュレーションを行った結果に基づいて割れ判定を行うことで、高精度の素材形状を設定することができる。
【0018】
本発明のプレス成形の最適化方法では、前記第2割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生しないと判定されると、前記シミュレーション後の素材形状の精度が予め設定された目標値以内にあるかどうかを判定し、前記シミュレーション後の素材形状の精度が予め設定された目標値以内にないと判定されると、前記素材形状の精度が前記目標値以内となる素材形状に変更して前記解析モデルを用いたシミュレーションを行うことを特徴としている。
【0019】
従って、シミュレーション後の素材形状の精度が目標値以内にないとき、素材形状を変更して再度シミュレーションを行うことで、素材形状の精度を容易に目標値以内に設定することができる。
【0020】
本発明のプレス成形の最適化方法では、前記シミュレーション後の素材形状の精度が前記目標値以内にあると判定されると、前記シミュレーション後の素材形状を最適な素材形状として決定することを特徴としている。
【0021】
従って、シミュレーション後の素材形状の精度を目標値と比較して最適な素材形状を決定することで、プレス加工により製作された製品の精度を向上することができる。
【0022】
本発明のプレス成形の最適化方法では、仮成形型形状を設定する仮成形型形状設定ステップと、前記解析モデルを用いてスプリングバックを考慮した成形型形状を決定する成形型形状決定ステップとを設けることを特徴としている。
【0023】
従って、解析モデルを用いてスプリングバックを考慮した成形型形状を決定することで、プレス加工により製作された製品の精度を向上することができる。
【0024】
また、本発明のプレス成形の最適化装置は、初期押込み量と仮素材形状を入力する入力部と、前記入力部から入力された前記初期押込み量と前記仮素材形状に基づいて解析モデルを用いたシミュレーションを行うことで押込量と押込回数からなるプレス条件とスプリングバックを考慮した素材形状を求める演算部と、前記演算部が求めた前記プレス条件でシミュレーションされた素材形状とスプリングバックを考慮した素材形状に対して割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生したと判定されると前記プレス条件と前記素材形状を変更して再度シミュレーションを行う一方、割れが発生しないと判定されると前記プレス条件と前記素材形状を決定する判定部と、を備えることを特徴とするものである。
【0025】
従って、解析モデルを用いて仮素材形状に対する押込量と押込回数からなるプレス条件を決定すると共に、解析モデルを用いてスプリングバックを考慮した素材形状を決定するので、プレス加工により製作された製品の精度を向上することができると共に、素材の最適形状化における解析時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のプレス成形の最適化方法及び装置によれば、解析モデルを用いて仮素材形状に対する押込量と押込回数からなるプレス条件を決定すると共に、解析モデルを用いてスプリングバックを考慮した素材形状を決定するので、プレス加工により製作された製品の精度を向上することができると共に、素材の最適形状化における解析時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、第1実施形態のプレス成形の最適化装置を表すブロック構成図である。
図2-1】図2−1は、プレス成形装置を表す概略図である。
図2-2】図2−2は、プレス成形装置による成形品を表す概略図である。
図3図3は、第1実施形態のプレス成形の最適化方法を表すフローチャートである。
図4図4は、プレス条件の決定方法を表すフローチャートである。
図5図5は、素材形状の決定方法を表すフローチャートである。
図6図6は、変形限界線図を表すグラフである。
図7図7は、第2実施形態のプレス成形の最適化方法における金型形状の決定処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るプレス成形の最適化方法及び装置の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0029】
[第1実施形態]
第1実施形態のプレス成形の最適化方法及び装置は、板材をプレス加工して所定形状の製品を製作するとき、事前に、有限要素法などを用いてシミュレーションを実施し、プレス加工時に割れやしわなどが発生しないプレス条件や素材形状を推定するものである。
【0030】
図2−1は、プレス成形装置を表す概略図、図2−2は、プレス成形装置による成形品を表す概略図である。
【0031】
図2−1に示すように、プレス成形装置20は、所定の位置に固定されたダイ21と、ダイ21の上方に配置されて昇降可能なパンチ22とから構成されている。ダイ21は、凹部21aが形成され、パンチ22は、凹部21aに対向する凸部22aが形成されている。素材31は、中央に孔32が形成されており、この孔32は、凹部21aや凸部22aよりも小さいものとなっている。なお、凹部21a、凸部22a、孔32の形状は、円形や多角形、または異形であってもよい。また、素材31は、孔32がなくてもよい。
【0032】
そして、素材31をダイ21上に載置し、凹部21a上に孔32が配置されるように位置決めし、この状態でパンチ22を下降する。すると、パンチ22の凸部22aが素材31を介してダイ21の凹部21aに嵌入することで、素材31は、図2−2に示すように、孔32の周囲が折り曲げられることで、フランジ部42と孔43を有する成形品(製品)41が製作される。
【0033】
第1実施形態では、孔32を有する素材31をプレス加工して製品41を製作するとき、事前に、解析によるシミュレーションを実施し、プレス加工時に割れやしわなどが発生しないプレス条件と素材形状を推定する。
【0034】
図1は、第1実施形態のプレス成形の最適化装置を表すブロック構成図である。
【0035】
図1に示すように、第1実施形態のプレス成形の最適化装置10は、解析装置11を備えており、この解析装置11は、入力部12と、表示部13と、記憶部14とが接続されている。また、解析装置11は、演算部15と、判定部16とを備えており、演算部15は、第1演算部15Aと第2演算部15Bを有し、判定部16は、第1判定部16Aと第2判定部16Bを有している。
【0036】
入力部12は、プレス加工を実施するときの初期押込み量(ダイ21の凹部21aに対するパンチ22の凸部22aの嵌入量)と、孔32を有する素材31の仮素材形状を入力するものである。
【0037】
解析装置11は、入力された初期押込み量や仮素材形状に基づいて、例えば、有限要素法(FEM)解析の解析モデルを形成し、この解析モデルを用いて最適なプレス条件と素材形状を推定する。表示部13は、解析装置11が推定した最適なプレス条件と素材形状を表示し、記憶部14は、解析装置11が逐次演算して求めた各種データや後述する割れクライテリアなどを記憶する。
【0038】
第1演算部15Aは、製品41のフランジ部42の高さに基づいて設定された最大押込量より小さい所定の第1押込量により解析モデルを用いてシミュレーションを行うものである。第1判定部16Aは、第1押込量により解析モデルを用いたシミュレーションした加工品(素材形状)に対して予め設定された割れクライテリア(第1割れクライテリア)により割れ判定を行うものである。ここで、加工品に割れが発生すると判定したとき、第1演算部15Aは、第1押込量から所定量を減少して第1押込量を再設定し、前述と同様に、再設定した第1押込み量により解析モデルを用いたシミュレーションを再度行う。
【0039】
また、第1判定部16Aが割れクライテリアによる割れ判定の結果、割れが発生しないと判定したとき、第1演算部15Aは、最大押込量から第1押込量を減算した第2押込量を設定し、第1押込量と第2押込量により解析モデルを用いたシミュレーションを行う。第1判定部16Aは、第1押込量と第2押込量により解析モデルを用いたシミュレーションした加工品に対して割れクライテリアにより割れ判定を行う。
【0040】
第1判定部16Aは、割れクライテリアにより割れ判定による複数回の押込量を設定し、複数設定した押込量の合計値が最大押込量に到達したかどうかを判定するものである。即ち、第1判定部16Aは、各押込量の合計値が最大押込量に到達するまで、第1演算部15Aが押込量の設定を行い、各押込量の合計値が最大押込量に到達すると、ここまでに設定した複数の押込量と押込回数を最適なプレス条件として決定する。
【0041】
一方、第2演算部15Bは、仮素材形状の素材31に対して、第1判定部16Aにより決定されたプレス条件に基づいて解析モデルを用いたスプリングバックのシミュレーションを行うものである。第2判定部16Bは、仮素材形状の素材に対してプレス条件に基づいて解析モデルを用いたスプリングバックをシミュレーションした加工品に対して、予め設定された割れクライテリア(第2割れクライテリア)により割れ判定を行うものである。ここで、加工品に割れが発生すると判定したとき第2演算部15Bは、割れない素材形状に変更し、前述と同様に、変更された素材形状の素材に対してプレス条件に基づいて解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工のシミュレーションを再度行う。
【0042】
第2判定部16Bは、シミュレーション後の素材形状における加工品の精度が予め設定された目標値以内にあるかどうかを判定するものである。ここで、シミュレーション後の素材形状における加工品の精度が予め設定された目標値以内にないと判定されると、第2演算部15Bは、シミュレーション後の素材形状における加工品の精度が目標値以内となる素材形状に変更し、前述と同様に、変更された素材形状の素材に対してプレス条件に基づいて解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工のシミュレーションを再度行う。
【0043】
第2判定部16Bは、シミュレーション後の素材形状における加工品の精度が目標値以内にあると判定すると、このときの素材形状を最適な素材形状として決定する。
【0044】
ここで、上述したプレス成形の最適化装置10による第1実施形態のプレス成形の最適化方法について説明する。図3は、第1実施形態のプレス成形の最適化方法を表すフローチャート、図4は、プレス条件の決定方法を表すフローチャート、図5は、素材形状の決定方法を表すフローチャート、図6は、変形限界線図を表すグラフである。
【0045】
図3に示すように、ステップS11にて、オペレータは、入力部12を用いて孔32を有する素材31の仮素材形状を入力することで、素材形状を仮設定する。ステップS12にて、演算部15は、素材31をプレス成形するときにプレス条件と素材形状を最適化するための解析モデルを作成する。そして、ステップS13にて、第1演算部15A及び第1判定部16Aは、解析モデルを用いて仮素材形状に対する押込量と押込回数からなるプレス条件を決定する。また、ステップS14にて、第2演算部15B及び第2判定部16Bは、解析モデルを用いてスプリングバックを考慮した素材形状を決定する。そして、ステップS15にて、表示部13は、決定したプレス条件と素材形状を表示する。
【0046】
プレス条件の決定処理において、図4に示すように、ステップS21にて、最大押込量L=Liと仮定する。ここで、iは、プレス回数(押込回数)である。ステップS22にて、第1押込量(初期押込み量)Lを設定し、この第1押込量Lにより解析モデルを用いたシミュレーションを行う。なお、第1押込量Lは、0より大きく、最大押込量Lをより小さいものであり、経験値や事前のシミュレーション、実験などにより求めてもよい。
【0047】
ステップS23にて、第1押込量Lにより解析モデルを用いてシミュレーションした加工品に対して割れクライテリアを用いた割れ判定を行う。この割れクライテリアは、例えば、図6に示すような変形限界線図(FLD)を用いて実施する。最小主ひずみの増減に対して、絞り領域と張出領域で最大主ひずみが増加する引張圧縮限界境界が設定されると共に、成形限界(破断限界)境界が設定されており、引張圧縮限界境界と成形限界境界との間に割れがない適正領域Aが設定されている。ステップS23では、第1押込量Lにより解析モデルを用いてシミュレーションした加工品のひずみが割れクライテリアにおける適正領域A内にあるかないかを判定する。なお、この割れクライテリアは、1つではなく、複数設定してもよく、割れ判定を行う処理ごとに変更してもよい。
【0048】
即ち、ステップS23では、第1押込量Lにより解析モデルを用いてシミュレーションした加工品のひずみが割れクライテリアにおける適正領域A内になく、割れがあると判定(No)されると、ステップS24にて、第1押込量Lから所定量を減少して第1押込量Lを再設定する。そして、ステップS22にて、再設定した第1押込み量Lにより解析モデルを用いたシミュレーションを再度行う。そして、ステップS23にて、再設定された第1押込量Lにより解析モデルを用いたシミュレーションした加工品に対して割れクライテリアにより割れ判定を再び行う。ここで、再び、加工品に割れがあると判定(No)されると、ステップS24に戻り、第1押込量Lを再設定し、前述と同様の処理を実施する。
【0049】
ステップS23にて、第1押込量Lにより解析モデルを用いてシミュレーションした加工品のひずみが割れクライテリアにおける適正領域A内にあり、割れがないと判定(Yes)されると、ステップS25にて、最大押込量Liの合計値ΣLiが最大押込量Lに到達したかどうかを判定する。ここで、最大押込量Liの合計値ΣLiが最大押込量Lに到達していないと判定(No)されると、ステップS26にて、第1押込量Li+1を最大押込量Liの合計値ΣLiとし、最大押込量Lから第1押込量Lを減算した第2押込量Lを設定する。
【0050】
ステップS27では、必要に応じてプレス加工によって生じた加工品におけるひずみ(圧縮応力、引張応力)を除去するシミュレーションを実施する。この場合、例えば、応力除去を目的とした熱処理のシミュレーションを実施する。
【0051】
そして、ステップS22に戻り、設定した第2押込量Lにより解析モデルを用いたシミュレーションを行う。その後、前述と同様に、ステップS23,S24,S25,S26,S27の処理を繰り返し行う。
【0052】
ステップS25にて、複数設定した最大押込量Liの合計値が最大押込量Lに到達したと判定(Yes)されると、ステップS28にて、ここまでに設定した複数の押込量とプレス回数を最適なプレス条件として決定する。
【0053】
一方、素材形状の決定処理において、プレス条件の決定処理で最適なプレス条件が決定されると、図5に示すように、ステップS31にて、このプレス条件で、仮素材形状の素材31に対して、解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工のシミュレーションを行う。即ち、素材をプレス加工すると、加工後にスプリングバックが発生し、加工品が素材形状に戻るような変形をする。ここで、このスプリングバックによる戻り量を考慮したシミュレーションを行う。ステップS32にて、仮素材形状の素材に対してプレス条件に基づいて解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工をシミュレーションした加工品に対して、割れクライテリアにより割れ判定を行う。この割れクライテリアは、プレス条件の決定処理で使用した図6に示すものを使用すればよい。
【0054】
即ち、ステップS32では、仮素材形状の素材に対してプレス条件に基づいて解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工をのシミュレーションした加工品のひずみが割れクライテリアにおける適正領域A内になく、割れがあると判定(No)されると、ステップS33にて、割れない素材形状を予測し、ステップS34にて、予測した素材形状により解析モデルを修正(メッシュモーフィーングなど)する。具体的には、素材31における孔32の形状や形成位置などを修正する。そして、ステップS31にて、修正した素材形状に対して解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工のシミュレーションを再度行う。そして、ステップS32にて、修正された素材形状の素材に対してプレス条件に基づいて解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工をシミュレーションした加工品に対して、割れクライテリアにより割れ判定を行う。ここで、再び、加工品に割れがあると判定(No)されると、ステップS33に戻り、割れない素材形状を再予測し、前述と同様の処理を実施する。
【0055】
ステップS32にて、スプリングバックをシミュレーションした加工品のひずみが割れクライテリアにおける適正領域A内にあり、割れがないと判定(Yes)されると、ステップS35にて、シミュレーション後の素材形状における加工品の精度が予め設定された目標値以内にあるかどうかを判定する。この目標値とは、製品41となる加工品の寸法公差でよく、また、寸法公差より厳しい値であってもよい。
【0056】
ここで、シミュレーション後の素材形状における加工品の精度が目標値以内にないと判定(No)されると、ステップS36にて、加工品の精度が目標値以内となる素材形状を予測し、ステップS34にて、予測した素材形状により解析モデルを修正する。そして、ステップS31にて、修正した素材形状に対して解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工のシミュレーションを再度行う。そして、ステップS32にて、修正された素材形状の素材に対してプレス条件に基づいて解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工をシミュレーションした加工品に対して、割れクライテリアにより割れ判定を行う。ここで、再び、加工品に割れがあると判定(No)されると、ステップS33に戻り、割れない素材形状を再予測し、前述と同様の処理を実施する。
【0057】
ステップS35にて、シミュレーション後の素材形状における加工品の精度が目標値以内にあると判定(Yes)されると、ステップS37にて、ここまでに設定した素材形状を最適な素材形状として決定する。
【0058】
このように第1実施形態のプレス成形の最適化方法にあっては、仮素材形状を設定する仮素材形状設定ステップと、プレス加工の解析モデルを作成する解析モデル作成ステップと、解析モデルを用いて仮素材形状に対する押込量と押込回数からなるプレス条件を決定するプレス条件決定ステップと、解析モデルとプレス条件を用いてスプリングバックを考慮したプレス加工解析により素材形状を決定する素材形状決定ステップとを有している。
【0059】
従って、解析モデルを用いて仮素材形状に対する押込量と押込回数からなるプレス条件を決定すると共に、解析モデルを用いてスプリングバックを考慮した素材形状を決定することで、プレス加工により製作された製品の精度を向上することができると共に、素材の最適形状化における解析時間を短縮することができる。
【0060】
第1実施形態のプレス成形の最適化方法では、最大押込量より小さい所定の第1押込量により解析モデルを用いたシミュレーションを行い、予め設定された第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生したと判定されると、第1押込量を減少して解析モデルを用いたシミュレーションを再度行い、第1割れクライテリアにより割れ判定を行う。従って、1回の押込量を適正量に設定することができる。
【0061】
第1実施形態のプレス成形の最適化方法では、第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生しないと判定されると、最大押込量から第1押込量を減算した第2押込量により解析モデルを用いたシミュレーションを行い、第1割れクライテリアにより割れ判定を行う。従って、複数回の押込量を適正量に設定することができる。
【0062】
第1実施形態のプレス成形の最適化方法では、第2押込量を設定した後、解析モデルを用いた素材の残留ひずみを除去するシミュレーションを実施する。従って、高精度な割れ判定を行うことができる。
【0063】
第1実施形態のプレス成形の最適化方法では、第1割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生しないと判定されると、複数設定した押込量の合計値が最大押込量に到達したかどうかを判定し、押込量の合計値が最大押込量に到達していないと判定されると、次の押込量を設定する一方、押込量の合計値が最大押込量に到達したと判定されると、ここまでに設定した複数の押込量と押込回数を最適なプレス条件として決定する。従って、最適なプレス条件を容易に設定することができる。
【0064】
第1実施形態のプレス成形の最適化方法では、設定されたプレス条件に基づいて解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工のシミュレーションを行い、予め設定された第2割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生したと判定されると、割れない素材形状に変更して解析モデルを用いたシミュレーションを行う。従って、高精度の素材形状を設定することができる。
【0065】
第1実施形態のプレス成形の最適化方法では、第2割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生しないと判定されると、シミュレーション後の素材形状の精度が予め設定された目標値以内にあるかどうかを判定し、シミュレーション後の素材形状の精度が予め設定された目標値以内にないと判定されると、素材形状の精度が目標値以内となる素材形状に変更して解析モデルを用いたシミュレーションを行う。従って、素材形状の精度を容易に目標値以内に設定することができる。
【0066】
第1実施形態のプレス成形の最適化方法では、シミュレーション後の素材形状の精度が目標値以内にあると判定されると、シミュレーション後の素材形状を最適な素材形状として決定する。従って、プレス加工により製作された製品の精度を向上することができる。
【0067】
また、第1実施形態のプレス成形の最適化装置にあっては、初期押込み量と仮素材形状を入力する入力部12と、入力部12から入力された初期押込み量と仮素材形状に基づいて解析モデルを用いたシミュレーションを行うことで押込量と押込回数からなるプレス条件とスプリングバックを考慮した素材形状を求める演算部15と、演算部15が求めたプレス条件でシミュレーションされた素材形状とスプリングバックを考慮した素材形状に対して割れクライテリアにより割れ判定を行い、割れが発生したと判定されるとプレス条件と素材形状を変更して再度シミュレーションを行う一方、割れが発生しないと判定されるとプレス条件と素材形状を決定する判定部16とを備えている。
【0068】
従って、解析モデルを用いて仮素材形状に対する押込量と押込回数からなるプレス条件を決定すると共に、解析モデルを用いてスプリングバックを考慮した素材形状を決定するので、プレス加工により製作された製品の精度を向上することができると共に、素材の最適形状化における解析時間を短縮することができる。
【0069】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態のプレス成形の最適化方法における金型形状の決定処理を表すフローチャートである。なお、本実施形態の基本的な構成は、上述した第1実施形態とほぼ同様の構成であり、図1を用いて説明すると共に、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0070】
第2実施形態は、第1実施形態のプレス成形の最適化方法でプレス条件と素材形状を決定した後、金型形状の決定処理を行うものである。
【0071】
即ち、図7に示すように、金型形状の決定処理において、ステップS41にて、所定のプレス条件及び素材形状で、仮金型形状(ダイ21、パンチ22)に対して、解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工のシミュレーションを行う。ステップS42にて、仮金型形状に対してプレス条件に基づいて解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工をシミュレーションした加工品に対して、割れクライテリアにより割れ判定を行う。
【0072】
即ち、ステップS42では、仮金型形状に対してプレス条件に基づいて解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工をシミュレーションした加工品のひずみが割れクライテリアにおける適正領域A内になく、割れがあると判定(No)されると、ステップS43にて、割れない金型形状を予測し、ステップS44にて、予測した金型形状により解析モデルを修正(メッシュモーフィングなど)する。そして、ステップS41にて、修正した金型形状に対して解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工のシミュレーションを再度行う。そして、ステップS42にて、修正された金型形状の素材に対してプレス条件に基づいて解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工をシミュレーションした加工品に対して、割れクライテリアにより割れ判定を行う。ここで、再び、加工品に割れがあると判定(No)されると、ステップS43に戻り、割れない金型形状を再予測し、前述と同様の処理を実施する。
【0073】
ステップS42にて、スプリングバックを考慮したプレス加工をシミュレーションした加工品のひずみが割れクライテリアにおける適正領域A内にあり、割れがないと判定(Yes)されると、ステップS45にて、シミュレーション後の素材形状における加工品の精度が予め設定された目標値以内にあるかどうかを判定する。
【0074】
ここで、シミュレーション後の素材形状における加工品の精度が目標値以内にないと判定(No)されると、ステップS46にて、加工品の精度が目標値以内となる金型形状を予測し、ステップS44にて、予測した金型形状により解析モデルを修正する。そして、ステップS41にて、修正した金型形状に対して解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工のシミュレーションを再度行う。そして、ステップS42にて、修正された金型形状に対してプレス条件に基づいて解析モデルを用いたスプリングバックを考慮したプレス加工をシミュレーションした加工品に対して、割れクライテリアにより割れ判定を行う。ここで、再び、加工品に割れがあると判定(No)されると、ステップS43に戻り、割れない金型形状を再予測し、前述と同様の処理を実施する。
【0075】
ステップS45にて、シミュレーション後の金型形状における加工品の精度が目標値以内にあると判定(Yes)されると、ステップS47にて、ここまでに設定した金型形状を最適な金型形状として決定する。
【0076】
このように第2実施形態のプレス成形の最適化方法にあっては、仮成形型形状を設定する仮成形型形状設定ステップと、解析モデルを用いてスプリングバックを考慮した成形型形状を決定する成形型形状決定ステップとを設けている。
【0077】
従って、解析モデルを用いてスプリングバックを考慮した成形型形状を決定することで、プレス加工により製作された製品の精度を向上することができる。
【0078】
なお、上述した実施形態では、最適なプレス条件を決定してから最適な素材形状を決定するように処理したが、最適な素材形状を決定してから最適なプレス条件を決定するように処理してもよい。また、最適なプレス条件を決定してから最適な素材形状を決定した後、再び、最適なプレス条件の決定処理や最適な素材形状の決定処理を行ってもよい。
【0079】
また、上述した実施形態にて、ステップS23にて、第1押込量Lにより解析モデルを用いてシミュレーションした加工品のひずみが割れクライテリアにおける適正領域A内にあり、割れがないと判定(Yes)されると、ステップS25に移行したが、例えば、第1押込量Lを増加する処理を行ってもよい。
【0080】
また、上述した実施形態では、プレス条件の決定処理にて、押込み回数ごとに金型を変更せずに対応したが、金型を変更して対応するようにしてもよい。
【0081】
また、上述した実施形態では、割れクライテリアとして、変形限界線図(FLD)を用いて割れ判定を実施するものとしたが、別の割れクライテリアを適用したり、複数の割れクライテリアを併用したりしてもよい。また、プレス条件の決定処理と素材形状の決定処理を別の割れクライテリアとして適用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 プレス成形の最適化装置
11 解析装置
12 入力部
13 表示部
14 記憶部
15 演算部
15A 第1演算部
15B 第2演算部
16 判定部
16A 第1判定部
16B 第2判定部
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7