(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記グリースは、前記増ちょう剤を10〜25質量%、前記亜リン酸エステルを0.2〜5質量%、前記エーテル系化合物を0.2〜5質量%および酸化パラフィンを0.5〜10質量%含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用転動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、保持器の形状を工夫することによって、軸受の剛性を低下させることなく低トルク化を図っている。しかしながら、特許文献1の発明には、例えば、次の課題がある。
・保持器に切欠きが形成されているため、保持器の強度が低下する。
・軸受の使用中に外方部材の軌道面に対して保持器の突起部が衝突を繰り返すと、突起部が摩耗してしまい、軌道面と突起部との間に油膜を形成できずトルクが増大する。
【0006】
そこで、本発明の目的は、回転トルクの増大を抑えながら、剛性を向上させることができる車両用転動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明の車両用転動装置は、外輪部および内輪部と、前記外輪部と前記内輪部との間に設けられた転動体と、前記外輪部および前記内輪部における前記転動体の転動面に配置されたグリースとを含み、前記転動面に対する前記転動体の隙間が負隙間に設定されており、前記グリースは、ポリαオレフィンを含み、40℃における動粘度20〜60mm
2/sである基油と、脂環式アミンおよび芳香族アミンの混合アミンと、ジイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレア系化合物を含む増ちょう剤と、亜リン酸エステル、エーテル系化合物および酸化パラフィンを含む添加剤とを含有し
、前記基油は、トラクション係数が0.02以下であり、流動点が−50℃以下である(請求項1)。
また、本発明の車両用転動装置は、外輪部および内輪部と、前記外輪部と前記内輪部との間に設けられた転動体と、前記外輪部および前記内輪部における前記転動体の転動面に配置されたグリースとを含み、前記転動面に対する前記転動体の隙間が負隙間に設定されており、前記グリースは、ポリαオレフィンを含み、40℃における動粘度20〜60mm2/sである基油と、脂環式アミンおよび芳香族アミンの混合アミンと、ジイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレア系化合物を含む増ちょう剤と、亜リン酸エステル、エーテル系化合物および酸化パラフィンを含む添加剤とを含有し、前記エーテル系化合物は、分子の末端に少なくとも一つのヘテロ原子を有する5員環からなる極性基を有する(請求項2)。
【0008】
本発明の車両用転動装置では、前記基油は、トラクション係数が0.02以下であり、流動点が−50℃以下であることが好ましい(請求項3)。
本発明の車両用転動装置では、
前記負隙間の範囲が、−0.06mm〜−0.1mmであることが好ましい(請求項4)。
【0009】
本発明の車両用転動装置では、前記グリースは、前記増ちょう剤を10〜25質量%、前記亜リン酸エステルを0.2〜5質量%、前記エーテル系化合物を0.2〜5質量%および酸化パラフィンを0.5〜10質量%含有することが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用転動装置によれば、グリースが、動粘度が20〜60mm
2/s(40℃)のポリαオレフィンを基油として含むため、転動体の回転トルクを低減することができる。したがって、転動体と、外輪部および内輪部の転動面との間の内部隙間の負の値の絶対値を大きくしても回転トルクを比較的小さく抑えておくことができる。そのため、回転トルクの増大を抑えながら、剛性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るハブユニット1を示す断面図である。なお、
図1の左右方向をハブユニット1の軸方向といい、
図1の左側を軸方向外側、右側を軸方向内側という。
本発明の車両用転動装置の一例としてのハブユニット1は、例えば、自動車の車輪を車体側の懸架装置に対して回転自在に支持するものである。ハブユニット1は、転がり軸受2と、転がり軸受2の軌道輪部材となるハブホイール3と、ハブホイール3と一体的に設けられた円環状のフランジ部4とを含む。この実施形態のハブホイール3およびフランジ部4の素材は、例えば、熱間鍛造により形成されている。
【0013】
ハブホイール3は、断面円形状の小径部7と、小径部7の軸方向内側の端部が径方向外側に屈曲変形されたかしめ部8と、小径部7よりも径が大きく当該小径部7から軸方向外側に向かって連続して設けられた断面円形状の大径部9とを含む。ハブホイール3の大径部9には、その外周面から径方向外側に延びる上記フランジ部4が折り曲げ形成されている。
【0014】
転がり軸受2は、例えば、複列玉軸受で、内周面に一対の外輪軌道面(転動面)11a,11bを有する外輪11と、内周面がハブホイール3の小径部7の外周面7aに密接するように挿嵌された内輪部材12とを備えている。そして、内輪部材12は、その外周面に軸方向内側の外輪軌道面11aに対向する内輪軌道面(転動面)13aを有しており、ハブホイール3の大径部9は、その外周面に軸方向外側の外輪軌道面11bに対向する内輪軌道面(転動面)13bを有している。
【0015】
また、転がり軸受2は、外輪軌道面11aと内輪軌道面13aとの間、および外輪軌道面11bと内輪軌道面13bとの間にそれぞれ転動自在に2列に配置された複数の玉からなる転動体14と、これらの2列に配置された転動体14をそれぞれ周方向に所定の間隔で保持する一対の保持器15とを含む。
転動体14は、外輪軌道面11a,11bおよび内輪軌道面13a,13bに対して負の(アキシアル)隙間が与えられた状態で組み付けられている。この転動体14に対する負隙間は、例えば、内輪部、この実施形態ではハブホイール3の大径部9および内輪部材12を軸方向に締め付ける(予圧を高くする)ことによって設定されている。この実施形態では、転動体14の負隙間の範囲は比較的小さく、例えば、−0.06mm〜−0.1mm、好ましくは、−0.08mm〜−0.1mmであってもよい。負隙間は、例えば、上記特許文献2〜5に開示された方法によって設定されていてもよい。また、その隙間量(予圧量)は、例えば、特許文献2の段落[0010]〜[0020]、特許文献3の段落[0010]〜[0018]、特許文献4の段落[0018]〜[0033]および特許文献5の段落[0022]〜[0027]に開示された方法に従って測定すればよい。
【0016】
また、転がり軸受2は、ハブホイール3と外輪11との間に形成される環状空間を軸方向両端から密封するシール部材16を含む。このシール部材16で密封された環状空間16a内には、グリースGが封入されている。グリースGは、環状空間16a内において外輪軌道面11a,11bおよび内輪軌道面13a,13bに行き渡っており、これらの軌道面11a,11b,13a,13bに潤滑性を付与する。
【0017】
さらに、転がり軸受2は、外輪11の外周面11cから径方向外側に延びる軸受フランジ17を有している。軸受フランジ17には、その厚み方向に貫通する複数のボルト孔17aが形成されている。このボルト孔17aにはハブボルトBが挿通され、懸架装置のナックル51に螺合されている。これにより、軸受フランジ17はナックル51に固定されている。
【0018】
図2は、フランジ部4を示す斜視図であり、
図3は、フランジ部4を示す正面図である。
図2および
図3において、フランジ部4は、その周方向に所定間隔をあけて形成された複数(この実施形態では5個)の肉厚部21を有している。各肉厚部21は、軸方向内側の端面が隆起するように形成されているとともに、
図3の正面視において径方向に放射状に延びて形成されている。また、各肉厚部21は、周方向に所定の幅W(以下、周方向幅Wという)を有している。
【0019】
各肉厚部21のそれぞれの径方向外側には、前記周方向幅Wの略中央部において厚さ方向に貫通する一個のボルト孔22が形成されている。各ボルト孔22には、
図1に示すように、ホイールやブレーキディスクを取り付けるためのハブボルトBがそれぞれ圧入によって固定されている。したがって、ボルト孔22の直径d(
図3参照)は、ハブボルトBを圧入可能な寸法に設定されている。
【0020】
次に、ハブユニット1に封入されたグリースGの組成について説明を加える。
グリースGは、基油、増ちょう剤および添加剤を含有している。
基油としては、ポリαオレフィンを含み、40℃における動粘度20〜60mm
2/s(40℃)である合成油が使用される。ただし、グリースGは、鉱油等の他の基油を含んでもよい。
ポリαオレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)およびそれらの水素化物が挙げられる。
【0021】
基油の物性については、次の範囲が好ましい。すなわち、動粘度(JIS K 2283に準拠)は、20〜60mm
2/s(40℃)であり、好ましくは、25〜55mm
2/s(40℃)である。基油の動粘度が上記の範囲であれば、70〜100mm
2/s(40℃)程度の基油が用いられたグリースに比べて、軸受の摺動部の摩擦抵抗を小さくすることができる。また、流動点(JIS K 2269に準拠)は、好ましくは、−50℃以下であり、さらに好ましくは、−70℃〜−50℃である。基油の流動点が上記の範囲であれば、低温環境下(例えば、−40℃以下)においてグリースGの流動性を確保できるので、軸受の摺動部に基油を行き渡らせやすくすることができる。したがって、低温フレッティングの抑制効果を向上させることができる。また、トラクション係数は、例えば、0.02以下であり、好ましくは、0.001以上、0.01以下である。基油のトラクション係数が上記の範囲であれば、グリースGのトルクを低減することができる。なお、トラクション係数は、例えば、基油をDisk on Rollerにて、面圧0.5GPa、周速0.5m/sec、滑り率3%の条件で測定することができる。
【0022】
また、基油の配合量は、グリースG全量に対して、好ましくは、60〜90質量%であり、さらに好ましくは、65〜88質量%である。
増ちょう剤としては、脂環式アミンおよび芳香族アミンの混合アミンと、ジイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレア系化合物が使用される。ウレア系化合物としては、例えば、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ポリウレア化合物(ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物を除く)等のウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン等のウレタン化合物またはこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、ジウレア化合物が使用される。この組み合わせのウレア化合物であれば、フレッティングの発生を低減することができる。
【0023】
脂環式アミンとしては、例えば、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられ、芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、p−トルイジン等が挙げられる。
また、ジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、飽和および/または不飽和の直鎖状、または分岐鎖の炭化水素基を有するジイソシアネートが挙げられ、具体的には、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。また、脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。
【0024】
また、ウレア系化合物の原料として脂環式アミンおよび芳香族アミンの混合アミンが使用される場合、脂環式アミンと芳香族アミンとの配合割合(質量比)は、好ましくは、脂環式アミン:芳香族アミン=55:45〜99:1であり、さらに好ましくは、60:40〜95:5である。
そして、混合アミンとジイソシアネート化合物は、種々の方法と条件下で反応させることができる。増ちょう剤の均一分散性が高いジウレア化合物が得られることから、基油中で反応させることが好ましい。また、反応は、混合アミンを溶解した基油中に、ジイソシアネート化合物を溶解した基油を添加して行ってもよいし、ジイソシアネート化合物を溶解した基油中に、混合アミンを溶解した基油を添加して行ってもよい。これらの反応における温度および時間は、特に限定されず、通常のこの種の反応と同様でよい。反応温度は、混合アミンおよびジイソシアネートの溶解性、揮発性の点から、60℃〜170℃が好ましい。反応時間は、混合アミンとジイソシアネートの反応を完結させるという点と製造時間短縮による効率化の点から0.5〜2.0時間が好ましい。
【0025】
また、増ちょう剤の配合量は、グリースG全量に対して、好ましくは、10〜25質量%であり、さらに好ましくは、12〜23質量%である。
添加剤としては、必須成分として、亜リン酸エステル、エーテル系化合物および酸化パラフィンが挙げられ、任意成分として、極圧剤、防錆剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、染料、色相安定剤、増粘剤、構造安定剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤等の各種添加剤が挙げられる。極圧剤としては、硫黄系化合物(ジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)等)や塩素系化合物(塩素化パラフィン等)、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)、モリブデンジチオフォスフェート(MoDTP)などの有機Mo化合物等が任意成分として使用されてもよい。
【0026】
亜リン酸エステルとしては、例えば、トリイソプロピルホスファイト、ジイソプロピルホスファイト、ジフェニルハイドロジエンホスファイト等が挙げられる。特には、ジフェニルハイドロジエンホスファイトが好ましい。
また、亜リン酸エステルの配合量は、グリースG全量に対して、好ましくは、0.2〜5質量%であり、さらに好ましくは、0.3〜4質量%である。
【0027】
エーテル系化合物が必須成分として使用される。エーテル系化合物としては、好ましくは、分子中に極性基を有するエーテル系化合物が挙げられ、さらに好ましくは、分子の末端に極性基を有するエーテル系化合物が挙げられ、とりわけ好ましくは、分子の末端に少なくとも一つのヘテロ原子を有する5員環からなる極性基を有するエーテル系化合物が挙げられる。エーテル系化合物が極性基を有していれば、軸受の軌道表面(金属表面)との反応によって形成された、極性を有する亜リン酸エステルに由来する表面膜に対して、当該極性基が引き寄せられて吸着し易くなるので、りん系化合物の表面膜上にエーテル系化合物の油性膜を良好に形成することができる。
【0028】
分子の末端に少なくとも一つのヘテロ原子を有する5員環からなる極性基を有するエーテル系化合物としては、例えば、次の一般式(1)で示されるスルホラン誘導体が挙げられる。
【0030】
(式中、R
1は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R
2およびR
3は、それぞれ、水素または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
また、エーテル系化合物の配合量は、グリースG全量に対して、好ましくは、0.2〜5質量%であり、さらに好ましくは、0.5〜4質量%である。
酸化パラフィンが必須成分として使用される。酸化パラフィンとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックスを酸化して得られたもの等が挙げられる。また、酸化パラフィンの配合量は、グリースG全量に対して、好ましくは、0.5〜10質量%である。
【0031】
そして、グリースGは、例えば、必須成分としての基油、ウレア系化合物(増ちょう剤)、亜リン酸エステル、エーテル系化合物および酸化パラフィン、さらに必要に応じてその他の添加剤を混合し、撹拌した後、ロールミル等を通すことによって得ることができる。
以上、ハブユニット1によれば、グリースGが、動粘度が20〜60mm
2/s(40℃)のポリαオレフィンを基油として含むため、転動体14の回転トルクを低減することができる。したがって、転動体14と、外輪軌道面11a,11bおよび内輪軌道面13a,13bとの間の内部隙間の負の値の絶対値を大きくしても回転トルクを比較的小さく抑えておくことができる。そのため、ハブユニット1の回転トルクの増大を抑えながら、剛性を向上させることができる。また、内部隙間の負の値の絶対値を大きくすることによって、フレッティング性も向上させることができる。
【0032】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、他の実施形態で実施することもできる。
例えば、上記の実施形態では、(複列)玉軸受によって構成された転がり軸受2にグリースGが封入された例を説明したが、グリースGが封入される軸受は、転動体として玉以外のものが使用された針軸受、ころ軸受等、他の転がり軸受であってもよい。
【0033】
また、グリースGが封入された軸受は、上記のハブユニット1の他、サスペンションユニット、ステアリングユニット等、他の車両用転動装置に搭載されていてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0034】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
・実施例1および比較例1
<グリースの準備>
実施例1のグリースとして、基油が合成油(ポリαオレフィン)であり、かつ基油の動粘度が30mm
2/s(40℃)、トラクション係数が−0.0063および流動点が−65℃であるグリースを準備した。このグリースは、グリース全量基準で基油を81質量%、増ちょう剤となるウレア系化合物を15質量%、亜リン酸エステル(ジフェニルハイドロジェンホスファイト)を1質量%、スルホラン誘導体(前記一般式(1)において、R
1が炭素数8のアルキル基、R
2、R
3が水素の化合物)1質量%および酸化パラフィン(石油系酸化ワックス)2質量%を含有する。用いたウレア系化合物は、脂環式アミン(シクロヘキシルアミン)と芳香族アミン(p―トルイジン)を質量比70:30で混合し、ジイソシアネート化合物(ジフェニルメタンジイソシアネート)と反応させたものである。
【0035】
一方、比較例1のグリースとして、基油が鉱油であり、かつ基油の動粘度が70mm
2/s(40℃)、トラクション係数が−0.0063および流動点が−65℃であるグリースを準備した。このグリースは、グリース全量基準で基油を81質量%、増ちょう剤となるウレア系化合物を15質量%、亜リン酸エステル(ジフェニルハイドロジェンホスファイト)を1質量%、スルホラン誘導体(前記一般式(1)において、R
1が炭素数8のアルキル基、R
2、R
3が水素の化合物)1質量%および酸化パラフィン(石油系酸化ワックス)2質量%を含有する。用いたウレア系化合物は、芳香族アミン(p―トルイジン)をジイソシアネート化合物(ジフェニルメタンジイソシアネート)と反応させたものである。
【0036】
<転がり軸受の組立て>
上記グリースが封入される転がり軸受2を、
図1の構成に従って組み立てた。組み立ての際、内輪部材12の内周面に対するハブホイール3のかしめ部8のかしめ量を調節することによって転動体14に加えられる予圧を調節した。これにより、実施例1および比較例1のそれぞれについて、アキシアル隙間(内部隙間)が−0.025mm、−0.04mm、−0.055mmおよび−0.08mmの転がり軸受2を作製した。なお、実施例1としては、下記剛性値の測定のため、アキシアル隙間(内部隙間)が−0.03mm、−0.05mm、−0.06mm、−0.08mmおよび−0.1mmの転がり軸受も作製した。
【0037】
<評価>
(1)軸受(回転)トルクの測定
実施例1および比較例1の各転がり軸受を、回転速度800rpm、ラジアル荷重5.65kN、室温の条件下で回転させ、回転1h後のトルク値を測定した。結果を
図4に示す。
図4に示すように、内部隙間が同じ値では、実施例1の軸受(▲)が比較例1の軸受(●)に比べて回転トルクが約40%程度低減できることがわかった。
(2)剛性値の測定
実施例1の各転がり軸受に対して、互いに同条件でタイヤ接地点位置にアキシアル荷重を加えてモーメント荷重を負荷し、内外輪の相対傾き角を測定した。
【0038】
結果を
図5に示す。
図5では、内部隙間が−0.05mmの剛性値を100%とし、その剛性値に対する相対値を示している。
図5に示すように、内部隙間の負の値の絶対値を大きくすればするほど軸受の剛性値を向上できることがわかった。
図4の結果と合わせると、実施例1では内部隙間の負の値の絶対値を大きくしても(例えば、−0.08mm)回転トルクを比較的小さく抑えておくことができるので、内部隙間の負の値の絶対値を大きく設定することによって、回転トルクの増大を抑えながら、軸受の剛性を向上させることができる。